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2020.7.25~28 世界における科学の進歩と固定的な考え方に固執する日本の遅れ (2020年7月29日、8月3、6、8日追加)

                   2020.7.9毎日新聞  厚労省  2020.4.5朝日新聞

(図の説明:1番左の図は、東京都の《検査で確認された》新規感染者数だが、左から2番目の図のように、検査数が少ないため確認されていなかった感染者が多く、検査数を少し増やしたら確認された新規感染者が増えたというのは、当たり前なのである。この間、検査もせず、まともな医療行為もしないまま、厚労省が国民に押し付けたのが、右から2番目の「新しい生活」の図だ。このうち、手洗いや咳エチケットは新型コロナ対策に限らず前から必要だったことで、全員を新型コロナ感染者と見做した身体的間隔の維持や換気は現代生活にマッチしない。また、働き方改革も現実的でない職種が多く、1番右の要請を護らない企業があるとして新型コロナ特別措置法改正を望む声があるが、国民の権利制限をする前に、行政はミスなく仕事すべきだ)

(1)日本政府が新型コロナで無策を通した本当の理由は何か?
1)本気になっていない新型コロナ対策
 東京都で、*1-1のように、「7月20日、新型コロナ感染者が新たに168人確認され、7月の累計が3354人に上って、入院・療養先が調整中の患者が501人に上った」等々の報道が繰り返されているが、ダイヤモンドプリンセス号の時から既に6カ月も経過しているため、この間、何をやっていたのかと思うだけだ。

 今でもPCR検査数を抑えており、早期診断・早期治療の努力はなく、軽傷者の隔離のために抑えていたホテルは6月末で契約解除したというから、「①行政は妨害こそすれ協力はしない」「②新型コロナ感染のモデルはスペイン風邪と同じ」「③国民はアマビエにでも助けてもらって団結して頑張れ」と言っているのと同じであって、これは、ウイルスや人間の全遺伝子が簡単に読めるようになった現代の医療から程遠い。

 そして、それを、病床不足や医療崩壊という医療側の責任にしているのも問題だ。仮に医療崩壊が起これば、それは、これまで的外れた抑制ばかりしてきた厚労省・財務省の医療行政の失敗であるため、政府・与党(特に厚労族議員)・行政は、その責任をどうとって、どう改善するかを問題にしなければならないのである。

2)新型コロナ特措法の改正は不要である
 政府は、*1-2のように、全国知事会の緊急提言を受けて休業要請と補償をセットで実施すべく、休業要請に従わない事業者への罰則規定を含む新型コロナ特別措置法改正を行う国・地方自治体の権限強化を行う検討に入ったそうだが、検査をして陽性患者を特定することもなく、特定業種で働く人全体を感染力のある陽性患者と看做して休業要請するのは、予防ではなく差別に由来した暴力である。

 そのため、検査数を増やして通常の医療を行わなかった目的の一つは、この新型コロナ特措法の強化で、ひいては緊急事態条項を加える憲法改悪を行うことだと思わざるを得なくなった。従って、このような無茶を可能にする新型コロナ特措法変更や緊急事態条項を加える憲法改悪には徹底して反対しなければならない。

3)保健所職員の増員は不要である
 保健所は、*1-3のように、「新型コロナ感染者の急増で行動履歴確認や濃厚接触者調査に追われ、感染を疑う市民からの健康相談も増えて業務が急増し、増強した職員分の倍くらい業務が増えたので、今後さらに職員を増やしたい」とのことだが、検査をするか否かの判断に保健所を通すのがネックであり、他の検査能力を眠らせたままでもあるため、これを解消するのが本質的解決である。

 つまり、これまで効率の悪い仕事をしてきた保健所職員の増員は、役所によくある焼け太りであり、さらに血税を使って効率の悪い役所に人員増強を行って無駄遣いするのではなく、まともな医療に戻すことこそ最も重要なことである。

(2)世界は火星探査の時代になったが、日本は?



(図の説明:1番左は、水をたたえていた太古の火星と現在の火星の様子、右の2つは、NASAが発表した現在の火星表面で、土や水の凍った場所が見られる)

1)火星探査機の打ち上げ
 アラブ首長国連邦(UAE)初の火星探査機「Hope」を搭載した三菱重工のH2Aロケットが、*2-1のように、2020年7月20日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、火星に向かう軌道に予定通り投入されて打ち上げが成功した。アラブ首長国連邦と三菱重工の両方に祝意と敬意を表する。

 Hopeは2021年2月に火星に到達する予定で、UAEの先端科学相でHopeミッションを率いるサラ・アル・アミリ氏は、「全世代にとって支えとなる出来事」「UAEの子どもたちが、自分にとって支えとなる計画・新たな現実・新たな可能性を持って目覚め、さらに貢献して世界に大きな影響を与えることができるようになることを嬉しく思う」とBBCニュースに述べられたそうで、その理想も素晴らしい。その点、日本は、子どもたちに、どういう教育をしているのか、大いに疑問である。

 この後、中国が、7月23日に火星探査機「天問1号」の打ち上げ、アメリカも、火星探査機「パーサヴィランス」を打ち上げる予定だそうで、その探査結果に注目したい。

2)火星への興味の数々
 UAEが火星を目指す理由は、「①火星の大気の仕組みを解明して今までにない科学を生み出すこと」「②火星がどのように大半の大気や水を失ったかの理解を深めること」「③UAEやアラブ地域全体で、より多くの若者に学校や高等教育で科学を学びたいと思わせること」などだそうで、これは日本でも重要なことである。

 また、UAEは「まね事」の科学をするのではなく、火星でエネルギーが大気中をどのように移動するかを上から下まで一日中全ての季節を通じて調べ、大気の温度に大きな影響を与えるちりなどの特徴を追跡し、大気の上部にある水素と酸素の中性原子の動きについても調べるそうだ。

 これらの原子は、太陽からのエネルギー粒子によって火星の大気が侵食されていく過程で重要な役割を果たしている疑いがあり、火星史の初期には明らかに存在していた水のほとんどが失われている理由を説明できるからだそうだが、地球に近くて似ている火星への興味は尽きない。

3)火星の移住に必要な人数は何人か
 アメリカの起業家イーロン・マスク氏が率いる民間宇宙企業スペースXは、*2-2のように、火星の植民を視野に入れた宇宙船「スターシップ」の開発を進め、火星で入植者が自立して生活するために最低必要な人数は110名であることを導き出したそうだ。これは、仏ボルドー工科大学のジャン-マルク・サロッティ教授の“100名規模”とほぼ一致しており、かなり正確だ。

 そして、諸外国はここまで考えて試算しているということを、日本人は忘れてはならない。

(3)遺伝子の変異と生物の進化
 新型コロナで一般の人にもなじみになったウイルスは、*3-1・*3-2のように、人類の祖先の細胞に入り込んで一体化し、「進化の伴走者」にもなったそうだ。確かに、母親のおなかの中で、母親にとっては「異物(本人以外の細胞)」であるはずの赤ちゃんを守る胎盤は、ウイルスの身の守り方に似ている。

 ウイルスは、生物の免疫細胞の攻撃を避けて縄張りを作れるため、これをやられると、生物のゲノムの一部と化した「内在性ウイルス」にまではならなくても、しばらく人体の中で静かにしていたウイルスが、免疫が弱くなった時に活発に活動し始めるということもありそうだ。

(4)それでは、恐竜は絶滅したのか?

 
      デイノケイルス(恐竜)            ハシビロコウ(鳥)
(図の説明:左の3つは、恐竜のデイノケイルスだが、重心の位置から考えて1番左の立ち方が自然で、左から2番目・3番目の立ち方では、重心が地についた足の上に来ないため、長時間立っていることは不可能だ。また、左から3番目の図のサイズの筋肉では、大きな骨格を動かすのに不十分であるため、筋肉の量や付き方も考え直す必要がある。これに対し、右から2番目のハシビロコウの骨格は重心が地についた足の真上に来る自然な立ち方で、1番右の生きたハシビロコウは鳥であり、顔は恐竜並みに怖いが、長い腕は翼になっている)

    
  ダチョウ     フラミンゴ      タンチョウヅル     ハクチョウ

(図の説明:鳥には、恐竜と同様に首が長く頭の小さいものが多い。また、立っている時は、地につく2本の足の上に重心がくる姿勢だ。そして、水中の獲物をとっている姿勢は、左から2番目のフラミンゴが典型的で、泳ぐハクチョウも首が長い)

 進化は、DNAの変異がランダムに起こって多様な生命が生まれ、そのうち子孫を残すのにより適した個体が多くの子孫を残す形で次第に種を形成するものである。従って、種の形成は、一つの個体内ではなく、多くの世代交代が行われる間に起こるものだ。

 それなら、恐竜はどうかと言えば、水の中を中心に生活した種は、水の中で捕食して子孫を残すのに適した身体の構造を持ち、陸上で生活するものは、そこで捕食して子孫を残すのに適した身体の構造を持ったに違いない。そして、その中には、寒冷地や空に進出してそれに適応した身体を持ったものもいるだろう。

 そのうち空に進出したものが飛ぶ鳥であり、陸上だけで通せた種が飛ばない鳥やハ虫類になったと思われるため、*4の恐竜研究も、化石だけでなく遺伝子を比較して系統樹を作るべき時代になった。そのため、法医学やDNAの専門家が恐竜を研究すると新発見できるかもしれない。

 私自身は、骨格の比較をすれば、大きさや洗練度は異なるものの、恐竜と鳥類は類似点が多いと前から思っていた。つまり、“恐竜”という命名が、生物の分類を誤らせたのである。

 私は、恐竜は、鳥の骨盤を持つ鳥盤類とトカゲの骨盤を持つ竜盤類の2つ(もしくはもっと多く)のグループに分かれると思うが、ティラノサウルスは手足の形から羽の生えた飛べない鳥類に近い恐竜だったと思う。中国で発掘された化石のティラノサウルスの祖先には羽毛が生えており、それはティラノサウルスの標本の首、腰、尻尾にウロコがあることを否定すべきものでもなく、その部分はウロコの方が便利だったか、まだ明確に分かれていなかったのだと思われる。なお、鳥類の羽には、どうみてもウロコから進化したように見えるものがよくある。

 「鳥は恐竜そのものであり、恐竜は絶滅したという考えは捨てなければならず、恐竜は絶滅していないことを受け入れなければならない」というのに、私は賛成だ。つまり、約6600万年前の隕石衝突により白亜紀を終焉に導いた大量絶滅時代を生き延び、その後、多様化した恐竜の中に鳥類がいたのだ。

・・参考資料・・
<日本が新型コロナで無策を通した理由は?>
*1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN7N71Y8N7NUTIL027.html?_requesturl=articles%2FASN7N71Y8N7NUTIL027.html&pn=4 (朝日新聞 2020年7月20日) 東京、501人が療養先「調整中」 宿泊施設不足も一因
 東京都では20日、新型コロナウイルスの感染者が新たに168人確認され、12日連続で100人を超えた。7月の累計はすでに3354人に上る。感染者数が高止まりする中、都が入院・療養先を「調整中」として計上する患者が20日時点で501人に上り、1日時点の5・1倍に膨れ上がっている。都は毎日、入院患者や重症者、宿泊療養、自宅療養、退院者の人数を公表している。どの項目にも属さない場合、都は「調整中」として人数を公表している。調整中の増加について、都は「行き先が決まっているが、事務手続き上、公表に至っていない感染者が多い」と説明する。都によると、感染確認の報告を受けた保健所と、感染者の居住地の保健所との間でやり取り中で、事務手続きが終わっていないケースが多いことに加え、ホテルを活用した宿泊療養施設の不足も一因だという。都は5ホテル(約1150人分)を確保していたが、6月の感染者は減少傾向にあり、ホテルとの契約を一部、6月末で終了した。だが、7月に一気に増加に転じ、新たな契約も結んだが、現在の受け入れは2ホテル(約260人分)にとどまり、156人分は埋まっている。入院患者も20日時点で920人に上り、1日(280人)の3・3倍まで増えている。都が入院患者向けに確保できている病床数は15日時点で約1500床にとどまり、都が13日までに確保を目指していた2800床には遠く及ばない。多くの病院ではすでに入院中の患者の病棟を移すなどして対応中だ。都の担当者は「2800床を確保するにはまだ時間がかかるが、病床が不足している状態ではない」と強調する。感染者を受け入れている都内の病院の医師の一人は「民間病院は人手も限られ、都が公表している病床数すべてが迅速に受け入れられるわけではない。数字以上に都内の医療現場は逼迫(ひっぱく)し始めている」と警鐘を鳴らす。

*1-2:https://www.chugoku-np.co.jp/news/article/article.php?comment_id=663481&comment_sub_id=0&category_id=1206 (中国新聞 2020/7/19) 新型コロナ特措法改正へ 政府、国と地方の権限強化
 政府は新型コロナウイルスの感染拡大に対応する新型コロナ特別措置法を改正する方向で本格的な検討に入った。菅義偉官房長官が19日のフジテレビ番組で法改正の必要性を明言した。東京などでの感染者急増を踏まえ、予防のため国と地方自治体の権限を強化する判断に傾いた。菅氏は最終的には特措法に基づく休業要請と補償をセットで実施すべきだとの考えを表明。全国知事会も緊急提言で、休業要請に従わない事業者への罰則規定を含む法改正を要請した。菅氏が法改正や補償の必要性を公言するのは初めて。早ければ次期国会で、国や知事の休業や検査に関する権限を強める可能性がある。

*1-3:https://mainichi.jp/articles/20200710/k00/00m/040/320000c (毎日新聞 2020年7月10日) 連日200人超は第2波か 保健所「手いっぱいだ」 病院「もう少し先か」
 新型コロナウイルスの感染者が急増している。東京都内では2日連続で200人を超え、過去最多を更新した。これは「第2波」の始まりなのか。病院や保健所は危機感を強める。「想像以上に増えている。今は目の前の仕事で手いっぱいだ」。新宿区保健所の担当者は10日、逼迫(ひっぱく)しつつある状況を明かした。歌舞伎町など「夜の街」では、ホストクラブなどによる集団検査が進み、同区ではすでに900人の感染が確認された。保健所はそのたびに行動履歴の確認や濃厚接触者の調査に追われる。区役所の別部署や都から応援を受けて職員を増員してきたが、感染を疑う市民からの健康相談も増え、業務は急増しているという。担当者は「(人員を)増強した分の倍くらい(業務が)増えている。今後さらに職員が増えればいいが……」と不安げだ。東京23区内の別の保健所では、先月に1日20~30件程度だった健康相談が、7月に入って3倍以上に増えた。(以下略)

<火星探査の時代>
*2-1:https://www.bbc.com/japanese/53460998 (BBC 2020年7月20日) UAEの火星探査機、種子島から打ち上げ成功 アラブ諸国初
 アラブ首長国連邦(UAE)初の火星探査機「Hope」を搭載したH2Aロケットが20日午前6時58分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。火星に向かう軌道に予定通り投入され、打ち上げは成功。火星の気象や気候を調査するための約5億キロの旅が始まった。火星探査機「Hope」の打ち上げは先週、悪天候のため2度中止されていた。HopeはUAEの建国50周年となる2021年2月に火星に到達する予定。UAEの先端科学相でHopeミッションを率いるサラ・アル・アミリ氏は、ロケットが無事に上空へ上っていくのを見たときの興奮や安堵(あんど)感を述べた。また、51年前のこの日にアポロ11号が月面着陸した時にアメリカに与えたのと同じ影響を、UAEにもたらしたと述べた。「目の当たりにしたすべての人を、さらに前進しさらに大きな夢を描くよう刺激する、全世代にとって支えとなる出来事だった」と、アル・アミリ氏はBBCニュースに述べた。「UAEの子どもたちが7月20日の朝、自分にとって支えとなる計画や新たな現実、新たな可能性を持って目覚め、子どもたちがさらに貢献し、世界に大きな影響を与えることができるようになることを、本当にうれしく思う」。UAEの探査機は、今月に火星へ向かう3つのミッションのうちの1つ。アメリカと中国はいずれも、表面探査機の準備の後期段階に入っている。
●なぜUAEは火星を目指すのか
 UAEは宇宙探査機の設計や製造の経験が少ないにも関わらず、アメリカやロシア、欧州諸国、インドだけが成功していることに挑戦している。あえてこれに挑戦したことにUAEの野心が表れている。アメリカの専門家の指導を受けたUAEのエンジニアたちは、わずか6年で非常に高度な探査機を完成させた。この探査機が火星に到達し、火星の大気の仕組みを解明して今までにない科学を生み出すことが期待されている。特に、科学者たちは火星がどのように大半の大気や水を失ったのか理解を深めることにつながると考えている。火星探査機Hopeは、インスピレーションを得るための手段と捉えられている。UAEやアラブ地域全体で、より多くの若者に学校や高等教育で科学を学びたいと思わせることが期待されている。Hopeは、UAE政府が石油とガス依存から脱却し、知識経済を基盤とした未来に向けて国を動かしていく意図を示しているとする多数のプロジェクトのうちの1つ。しかし火星となると、相変わらずリスクは高い。これまでに火星を目指した全てのミッションの半数は失敗に終わっているからだ。Hopeプロジェクト・ディレクターのオムラン・シャラフ氏は、危険性を認識しているものの、自分の国が挑戦するのは正しいことだと主張する。「これは研究開発ミッションであり、もちろん失敗はつきものだ」と、シャラフ氏はBBCニュースに述べた。「しかし国家としての進歩に失敗するという選択肢はない。ここで最も重要なのは、UAEがこのミッションから得た能力と可能性、そしてこの国にもたらした知識だ」
●UAEはどうやってプロジェクトを進めたのか
 UAE政府はプロジェクトチームに対し、外国の大企業から宇宙探査機を購入せず、自分たちで作らなければならないと指示した。つまり、必要な経験を持つアメリカの大学と提携することを意味していた。UAEとアメリカのエンジニアや科学者たちは一緒に、宇宙探査機システムと、火星を調査する3つの搭載機器の設計と製作を行った。探査機の製作の大半が米コロラド大学ボルダー校の大気宇宙物理学研究所(LASP)で行われた一方で、ドバイのモハメド・ビン・ラシドスペースセンター(MBRSC)でもかなりの作業が進められた。LASPのブレット・ランディン氏は、UAEが今や自分たちで別のミッションを行える素晴らしい状態にあると考えている。「探査機への燃料補給のプロセスは教えられるが、自分で脱出用スーツを着て、重さ800キロの揮発性の高いロケット燃料を貯蔵タンクから探査機へ運ばない限り、実際にどういうものなのかは理解できない」と、シニア・システムエンジニアのランディン氏は述べた。「UAEの推進エンジニアたちは今やそれを成し遂げ、次回宇宙探査機を作る際にどうすればいいのかをわかっている」
●Hopeは火星で何をするのか
 UAEは「まね事」のような科学をしたいわけではなかった。火星へ行って、他国がすでにしてきた測定を繰り返したくはなかった。だからUAEは火星探査計画分析グループ(MEPAG)と呼ばれるアメリカ航空宇宙局(NASA)諮問委員会を訪れ、UAEの探査機が現在の知識にどんな有益な研究を加えられるのかを尋ねた。MEPAGの助言はHopeの目的を形作った。UAEの探査機は火星でエネルギーが大気中をどのように移動するかを、上から下まで、一日中、全ての季節を通じて調べることになっている。Hopeは火星で、大気の温度に大きな影響を与えるちりなどの特徴を追跡する予定。また、大気の上部にある水素と酸素の中性原子の動きについても調べる。これらの原子が、太陽からのエネルギー粒子によって火星の大気が侵食されていく過程で、重要な役割を果たしている疑いがあるからだ。火星史の初期には明らかに存在していた水のほとんどが失われている理由を説明できるだろう。観測データを収集するために、Hopeは火星の高度約2万2000キロから約4万4000キロの赤道に近い軌道に入ることとなる。「1日のどの時間帯にも火星のあらゆる部分を見てみたいという強い望みが、この巨大な楕円形の軌道へたどり着くこととなった」と、Hopeミッションのコア・サイエンスチームを率いるLASPのデイヴィッド・ブレイン氏は説明した。「このような選択をすることで、例えば異なる時間帯に活動するオリンポス山(太陽系最大の火山)の上を飛行できるようになる。またある時には火星が私たちの下で自転しているのを見られるようになる。「火星の円形画像を撮影できるだろう。カメラにはフィルターがついているので、こうした画像を科学的に分析できる。言うなれば、異なるゴーグルをかけて全体像を見るようなものだ」
(英語記事 UAE launches historic first mission to Mars)

*2-2:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/07/post-93885.php (Newsweek 2020年7月6日) 火星の移住に必要な人数は何人だろうか? 数学モデルで算出される
<「他の惑星で自立的に生活するためには、何人が必要か」という問いに仏ボルドー工科大学の研究者は、独自の数学モデルによって算出した......>
 アメリカの起業家イーロン・マスクが率いる民間宇宙企業スペースXでは、火星の植民を視野に入れた宇宙船「スターシップ」の開発がすすめられている。言うまでもなく、他の惑星への植民はたやすいことではない。入植者が自活するために、どのように現地の資源を取り出すのか、そのためにはどのような設備やスキルが必要となるのか、といった様々な課題を解決する必要がある。
●火星で入植者が自立して生活するために最低必要な人数は110名
 仏ボルドー工科大学のジャン-マルク・サロッティ教授は、その第一段階として「他の惑星で自立的に生活するためには、何人が必要か」という問いにフォーカスし、独自の数学モデルによって、火星で入植者が自立して生活するために最低必要な人数は110名であることを導き出した。この算出結果は、100名規模の搭乗を想定しているスターシップともほぼ一致している。サロッティ教授の数学モデルは「現地で利用可能な資源」と「入植者の生産キャパシティ」という2つの要素をベースとしている。マスク氏が主張するように「宇宙船を通じて資源を火星に継続的に届けられる」との楽観的な見解もあるが、サロッティ教授は「資源や技術をどれだけ地球から火星に運び込めるかを予測するのは不可能だ」との考えから、この数学モデルでは、火星外からの資源の供給を考慮していない。
●タスクを複数の人々で分担して1人あたりに必要となる時間を減らす
 また、この数学モデルでは、タスクを複数の人々で分担して1人あたりに必要となる時間を減らす「シェアリング・ファクター」を前提とし、自立して生活するための人間活動を、生態系マネジメント、エネルギー生産、冶金や化学といった工業、建設およびメンテナンス、育児や家事、教育などの社会活動という5つのドメインに分類したうえで、自立した生活を維持するために必要な時間と入植者が実際に利用できる時間を比較した。その結果、110名いれば、時間の半分を、育児や健康管理、文化的な活動といった社会活動に充てられることがわかった。サロッティ教授は、2020年6月16日に「サイエンティフィック・リポーツ」で公開された研究論文で「火星を例にあげ、数学モデルを用いて、他の惑星で生存に必要な入植者数と生活様式を導き出すことができた。この手法によって、生存のために最適な戦略の評価、比較、議論ができるようになるだろう」と述べている。(以下略)

<遺伝子の変異と生物の進化>
*3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200531&ng=DGKKZO59745450Z20C20A5MY1000 (日経新聞 2020.5.31) 驚異のウイルスたち(2)人類と共存「進化の伴走者」、感染で遺伝子内に 胎盤や脳発達
 地球上にはいろいろなウイルスがいる。人類の進化にもウイルスが深くかかわってきた。太古のウイルスが人類の祖先の細胞に入り込み、互いの遺伝子はいつしか一体化した。ウイルスの遺伝子は今も私たちに宿り、生命を育む胎盤や脳の働きを支えている。新型コロナウイルスは病原体の怖さを見せつけた。過酷な現実を前に、誰もが「やっかいな病原体」を嫌っているに違いない。ウイルスが「進化の伴走者」といわれたら、悪い印象は変わるだろうか。母親のおなかの中で、赤ちゃんを守る胎盤。栄養や酸素を届け、母親の「異物」であるはずの赤ちゃんを育む。一部の種を除く哺乳類だけが持つ、子どもを育てるしくみだ。「哺乳類の進化はすごい」というのは早まった考えだ。この奇跡のしくみを演出したのはウイルスだからだ。レトロウイルスと呼ぶ幾つかの種類は、感染した生物のDNAへ自らの遺伝情報を組み込む。よそ者の遺伝子は追い出されるのが常だが、ごくたまに居座る。生物のゲノム(全遺伝情報)の一部と化し、「内在性ウイルス」という存在になる。内在性ウイルスなどは、ヒトのゲノムの約8%を占める。ヒトのゲノムで生命活動などにかかわるのは1~2%程度とされ、ウイルスが受け渡した遺伝情報の影響は大きい。見方によっては、進化の行方をウイルスの手に委ねたといっていい。哺乳類のゲノムに潜むウイルスは注目の的だ。東京医科歯科大学の石野史敏教授は、ヒトなど多くの哺乳類にある遺伝子「PEG10」に目をつけた。マウスの実験でPEG10の機能を止めると胎盤ができずに胎児が死んだ。PEG10は、哺乳類でも卵を産むカモノハシには無く、どことなくウイルスの遺伝子に似る。状況証拠から「約1億6000万年前に哺乳類の祖先にウイルスが感染し、PEG10を持ち込んだ。これがきっかけで胎盤ができた」とみる。胎盤のおかげで赤ちゃんの生存率は大幅に高まった。ウイルスが進化のかじ取りをしていた証拠は続々と見つかっている。哺乳類の別の遺伝子「PEG11」は、胎盤の細かい血管ができるのに欠かせない。約1億5000万年前に感染したウイルスがPEG11を運び、胎盤の機能を拡張したようだ。ウイルスがDNAに潜むのには訳がある。「生物の免疫細胞の攻撃を避け、縄張りも作れる」(石野教授)。ウイルスは生きた細胞でしか増えない。感染した生物の進化も促し、自らの「安住の地」を築きたいのかもしれない。東海大学の今川和彦教授は「過去5000万年の間に、10種類以上のウイルスが様々な動物のゲノムに入り、それぞれの胎盤ができた」と話す。ヒトや他の霊長類の胎盤は母親と胎児の血管を隔てる組織が少ない。サルの仲間で見つかる遺伝子「シンシチン2」は、約4000万年前に感染したウイルスが原因だ。さらにヒトやゴリラへ進化する道をたどった一部の祖先には、3000万年前に感染したウイルスが遺伝子「シンシチン1」を送り込んだ。初期の哺乳類はPEG10が原始的な胎盤を生み出した。ヒトなどではシンシチン遺伝子が細胞融合の力を発揮し、胎盤の完成度を高めた。本来のシンシチン遺伝子はウイルスの体となるたんぱく質を作っていたが、哺乳類と一体化すると役割を変えた。父親の遺伝物質を引き継ぐ赤ちゃんを母親の免疫拒絶から守る役目を担っているとみられる。石野教授は「哺乳類は脳機能の発達でもウイルスが進化を助けた」と指摘する。「複雑になった脳の働きを、ウイルスがもたらす新たな遺伝子が制御しているのだろう」。ウイルスが「進化の伴走者」と言われるゆえんだ。ウイルスの影響がよくわかる植物の研究がある。東京農工大学や東北大学などのチームはウイルスがペチュニアの花の模様を変える様子をとらえた。花びらの白い部分が、ゲノムに眠るパラレトロウイルスが動き出すと色づく。ダリアやリンドウでも似た現象がある。東京農工大の福原敏行教授は「一部はウイルスの仕業かもしれない」と語る。哺乳類のように進化の一時期に10種類以上の遺伝子がウイルスから入った例は見つかっていない。哺乳類も、形や機能の進化にウイルスを利用してきたのだろう。進化の歴史を隣人として歩んできたウイルスと生物の共存関係は今後も続く。

*3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20200531&c=DM1&d=0&nbm=・・ (日経新聞 2020.5.31) 内在性ウイルス、進化研究の手掛かりに
 生物の生殖細胞に入ったウイルスがDNAの一部となった塩基配列。「内在性ウイルス様配列」とも呼ぶ。遺伝情報として子孫に伝わり、進化の過程で体の形や色、臓器や組織の機能を変える役割を果たしてきた。脊椎動物の場合、レトロウイルスがもとになった内在性レトロウイルスが多い。レトロウイルスは感染した動物のDNAに組み込まれやすい。他にもボルナウイルスなどが脊椎動物のDNAで見つかっている。様々な動物の間で特定の内在性ウイルスの有無を比べれば、そのウイルスが侵入した時期が分かる。そのため内在性ウイルスは「ウイルスの化石」とも呼ばれ、ウイルスの進化を研究する手掛かりになる。

<“恐竜”は絶滅したのか>
*4:https://books.j-cast.com/2019/07/21009447.html (Bookウォッチ 2019/7/21) 恐竜はいまも身近なところで私たちと同居している!
 NHKがこのところ、恐竜をテーマにした番組を相次いで放送している。東京・上野公園の国立科学博物館で開催中の「恐竜博2019」(2019年10月14日まで)のプロモーションの一環でもあるが、日本が実は「恐竜王国」であったという新事実を知り、興味を持った人も多いだろう。本書『恐竜の教科書』(創元社)は、イギリスの恐竜研究者であるダレン・ナイシュ(サイエンスライター、古生物学者)とポール・バレット(ロンドン自然史博物館研究員)が執筆。北海道で発見された「むかわ竜」などの発掘調査で有名な小林快次・北海道大学総合博物館教授らが監訳した最新の「恐竜の教科書」である。
●最新研究で覆る定説
 小林さんが「監訳者序文」で、最近の恐竜研究のスピードの速さについて、こう書いている。「これまで『定説』とされてきたことが、あっという間に古くなり、これまで考えもつかなかった恐竜の新しい像が唱えられる。そうかと思うと、2つの説を行ったり来たりして、いつまでたっても決着がつかないものもある」。恐竜は鳥の骨盤を持った鳥盤類とトカゲの骨盤を持った竜盤類の2つのグループに分かれるという定説があったが、2017年にイギリスの研究チームから異論が出たという。かなり専門的なことになるのでここでは触れないが、小林さんは「恐竜の進化の大きな流れを解釈する上での定説が根本から覆ったことになり、衝撃的な提案だった」としている。一方、2つの説を行ったり来たりしている例に、ティラノサウルスの羽毛問題があるという。中国で発掘された化石からティラノサウルスの祖先には、羽毛が生えていることが分かった。しかし、ティラノサウルスの標本の首、腰、尻尾にウロコが生えている研究成果が2017年に発表され、まだ羽毛問題は決着がついていないそうだ。本書の構成はこうなっている。第1章「歴史、起源、そして恐竜の世界」、第2章「恐竜の系統樹」、第3章「恐竜の解剖学」、第4章「恐竜の生態と行動」、第5章「鳥類の起源」、第6章「大量絶滅とその後」。
●鳥は恐竜である
 本書が強調するのは恐竜と鳥との関係である。著者はこう断言している。「鳥が恐竜そのものだということは、研究上重要な知見である。恐竜は絶滅したという考えは捨てなければならず、恐竜は絶滅していないということを受け入れなければならない」。恐竜の3つのグループのうち獣脚類に含まれるグループの1つが、約6600万年前に白亜紀を終焉に導いた大量絶滅を生き延び、その後爆発的に多様化した。その生き残りが鳥類だというのである。第5章、第6章でこのことを詳しく説明している。そしてこう結んでいる。「今日、私たちは、恐竜が現在も生息している動物であることを知っている。この数十年間の恐竜研究で明らかになった重要な事実の1つが、恐竜は6600万年前に絶滅していないということだ。彼らは、私たちのそばで暮らしており、私たちを取り巻く環境の中で重要な存在だ。そして、いくつかの種は、私たちがペットとして飼ったり、食料にしたりしていて、日常生活において重要な位置を占めている」。今日から、鳥を見る目が変わってきそうだ。疑問を持つ人にはぜひ本書を読んでいただきたい。豊富な写真と図版はオールカラーなので、小学生が見ても楽しめる。本欄では、小林さんが書いた『ぼくは恐竜探険家!』(講談社)、『モンゴル・ゴビに恐竜化石を求めて』(東海大学出版部)などを紹介済みだ。

<1枚309円の布マスク配布と感染症が想定外だった病院再編計画 ← 厚労省>
PS(2020年7月29日追加):*5-1のように、政府(厚労省)は、7月下旬から介護施設等に布マスク約8千万枚を配るそうだが、その費用は247億円に上るため、単価は309円/枚になり、これは使い捨てマスクの3倍以上する(現在は、50枚入使い捨てマスクが2,000円以下)。さらに、その布マスクは、海外生産したものを随意契約で購入しているため、国内の景気や技術力の向上には全く役に立たず、単なる大きな無駄遣いになっている。
 一方で、新型コロナのPCR検査や医療保険は変にケチっているため、国民全員を陽性と看做して自粛・休業させることとなり、これによる倒産回避のための莫大な無駄遣いも発生した。さらに、検査の技術開発を妨げ、治療薬の承認も行わず、日本の医療産業の質の向上を阻んでいるのが厚労省なのだ。
 その上、昨年は、*5-2のように、「病院再編で虎の尾を踏んだ」として厚労省に同情的な記事が少なくなかったが、厚労省は地方自治体が経営する公立病院や日赤などの公的病院を、心疾患、脳卒中、救急など9分野の高度医療について、2017年6月のレセプト(診療報酬明細書)データを分析し「診療実績が乏しい」「代替する民間病院が近くにある」などの基準を基に、統廃合の必要があるとして、424の病院を公表したのだそうだ。確かに、感染症は医療の「基本のキ」であるため、高度医療には入らないが、「基本のキ」であるからこそ感染症も考慮して病院に余裕を持たせておかないのは驚くばかりだ。また、普段は需要が小さくても必要な診療科もあり、それを置いておけるのが公的病院であり、さらに、団塊世代のすべてが75歳以上の後期高齢者となる2025年を睨めばこそ、リハビリテーションに進む前に高度急性期・急性期の医療が必要なのであるため、ここまで愚かな厚労省が企画しては困るわけである。

*5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/45197 (東京新聞 2020年7月28日) 布マスク8千万枚配布へ 介護施設対象、厚労省
 新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、政府が布マスク約8千万枚を7月下旬から介護施設などに配ることが27日、厚生労働省への取材で分かった。春から続く布マスク配布事業の一環で、9月までの配布完了を目指している。厚労省によると、対象は介護施設や障害者施設、児童施設、幼稚園、保育所などで、職員や利用者が使うことを想定。4月から約2千万枚、6月から約4千万枚を配布しており、今回は第3弾に当たる。「アベノマスク」とやゆされた全世帯向けとは別の事業だが、素材や形状は同じだ。

*5-2:://www.nikkei.com/article/DGXMZO51218300R21C19A0000000/ (日経新聞 2019/10/23) 「オレは聞いてない」 病院再編、虎の尾踏んだ厚労省
 宮仕えの身なら一度や二度は覚えがあろう。そんな話は聞いていないという上役のひと言で、実現間近だと思っていたプロジェクトが仕切り直しになる――。9月下旬、厚生労働省は地方自治体が経営する公立病院と日赤などの公的病院について、再編や統廃合を議論する必要があるとみている424の病院を名指しして公表した。心疾患、脳卒中、救急など9分野の高度医療について、2017年6月のレセプト(診療報酬明細書)データを分析し「診療実績が乏しい」「代替する民間病院が近くにある」などの基準をもとに選び出した。これが文字どおり「聞いていない」問題を引き起こした。名指しされた側の大半が424の名前を唐突に出してきたと受けとめたのだ。再編や統廃合について、各病院をかかえる自治体や医療圏での議論の材料にしてほしいという厚労省の意図は、たちどころに吹き飛んでしまった。「ウチは閉鎖対象なのか」(リストに載った病院の院長)、「なぜ民間病院の名前は出さないのか」(該当する自治体の首長)、「地域住民や患者に説明できないじゃないか」(地方議会の議員)といった抗議の声が同省に相次いだ。名指しされた側の被害者意識は、今なお増幅している。たしかに唐突感はあった。筆者も日経電子版が424病院のリストを載せたのをみて初めて知り、取るものも取りあえず担当課に取材に行った。だが説明を聞くと、準備を重ねて公表にいたった経緯がみえてきた。安倍政権は6月に閣議決定した骨太の方針2019に次のような趣旨を盛り込んでいた。「すべての公立・公的病院に関する具体的な対応方針について、診療実績のデータを分析し、その内容が民間病院に担えない機能に重点化され、(中略)医療機能の再編や病床数の適正化に沿うよう国が助言や集中支援する」。高度急性期・急性期という病院機能に着目した客観的なデータは、関係者を交えた同省主宰の「地域医療構想に関するワーキンググループ」の議論に基づくものだった。ワーキンググループに出された資料は厚労省のウェブサイトに掲載されているし、公表までに時間がかかる難点はあるが議事録も公開している。問題意識をもって一連の議論をフォローしてきた関係者にしてみれば、出るべくして出てきたリストだった。戦後ベビーブーム期に生を受けた団塊世代のすべてが75歳以上の後期高齢者になる2025年をにらみ、病院の機能を高度急性期・急性期主体から、リハビリテーション向けの回復期や長期入院の慢性期主体に移行させる必要性は、多くの医療関係者が意識している。リストの公表はその導火線になるはずだったが「聞いていない」問題に発展した以上、厚労省の意図は二の次にされ、一気に政治的な色彩を帯びてしまった。慌てた同省は、10月中に全国5ブロックで説明会を開くべくセットした。「意見交換会と言わなければおしかりを受ける」という気の使いようだ。11月には特に強い要望が出た県の担当部局に、手分けして個別に説明に赴くことにしている。17日に福岡市内で開いた九州ブロックの説明会では、橋本岳副大臣が冒頭にあいさつし「住民のみなさまの不安を招いてしまったことを、われわれとしても反省しています」と低姿勢で臨んだ。それでも「聞いていない」側は収まる風がない。18日付の本紙九州経済面は、名指しされた国立病院機構大牟田病院(大牟田市)の関係者が「職員や患者は病院がなくなるのではないかと不安に思っている。風評被害を払拭するメッセージを出してほしい」と求めたと伝えている。また公立種子島病院(鹿児島県南種子町)の担当者は「医師不足で困っているのに、若い医師が来てくれるか」などと訴えた。公立病院再編の必要性を唱えてきたある識者は「たしかに名指しされた病院は若くて腕がいい医師を集めにくくなるかもしれないが、それによって自治体の首長は再編・統廃合にいや応なく向き合わざるを得なくなるのではないか」と語る。リストの公表にはショック療法の意味合いがあるとみているわけだ。もちろん厚労省は再編を押しつける立場にない。民間病院では代替機能を果たしにくい災害医療やへき地医療を担っている公立・公的病院もあり、一律に再編対象にするのが難しいケースも出てくるだろう。議論の素材として出したリストだったが、地方政界や医療界を巻きこむ事態に発展し、戸惑いが隠せないといったところだ。心配なのは、厚労省がめっぽう政治に弱い官庁である点だ。行政官として理にかなった政策だと信じて出したものも、与党幹部や首相官邸がダメを出すと、たちどころに萎縮してしまう傾向が否めない。消費税収を積み立てたファンドを使ってリストラされる関係職員の退職金を割り増しするのも、政治的な妥協ではないか。公立・公的病院の再編・統廃合はほとんどの自治体の首長が遅かれ早かれ直面する難題だ。高齢化は待ってくれない。「聞いていない」と言われてひるむのではなく「いま聞いたのだから、いいじゃないですか」と言い返すくらいの気概を厚労省に持ってほしい。

<賢い選択をすべき>
PS(2020年8月3日追加):*6-1のように、沖縄県は新型コロナの感染拡大を防ぐために、8月1日~15日の期間に緊急事態宣言を出し、①沖縄本島全域で不要不急の外出 ②県境をまたぐ往来 ③観光による県外からの来県 を自粛し、④県内でのイベントの開催も中止・延期などをするように県民に求めたそうだが、検査・隔離・治療などの最も重要な医療行為を行わず、漠然と全員の活動を縮小させるのは経済の疲弊が大きい割に効果が薄い。特に沖縄の場合は、移動に航空機か船を使わなければならないため、空港や港で乗客全員に短時間で結果の出る検査を行えば、陽性者を隔離して治療することが可能なのである。さらに、イベントも入る前に短時間で結果の出る検査を行い、受益者が自費負担すればよく、検査もせずに莫大な協力金を支給して、営業時間を短縮させたり、接待・接触を伴う夜の街を標的に休業要請したりするのは、科学的根拠は乏しく経済的負担が大きい。また、携帯アプリを活用して自由な筈の個人の行動を追跡するのも、それ自体が目的なのではないかと思うくらい不合理だ。
 また、*6-2-1のように、ダイヤモンドプリンセス号の時から既に6カ月も経過しているのに、未だに「国内のPCR検査が目詰まり」などと言っているのは、クラスター以外は検査や治療をしない方針を決めた専門家会議と厚労省の政策の誤りであるため、それによって被害を受けた国民は責任追及した方がよいくらいで、そのくらいしないと厚労省の方針は変わらない。さらに、「唾液の方が鼻の粘液より5倍もウイルスが多い」というのは、米国で3月に発見されていたのに、日本ではまだ「唾液による検査は精度が低い」などと言って今でも防護服を着て鼻の粘液で検査しているのなら、日本は技術革新を牽引するどころかキャッチアップすらできずに無駄遣いしている国なのである。 
 民間企業では、*6-2-2のように、医師の判断に縛られずに自前で従業員に検査を受けさせる動きが広がり始めたそうだが、安全に働くためには定期的なPCR検査か抗体検査が必要であるため、会社が負担して検査拠点と連携し、検査結果を速やかに出せる体制を整えるのがよい。さらに、GoToキャンペーンなどによる国間・県間移動時も、空港や駅でチェックインする前に速やかに結果の出る検査を行うことを条件にするのがよいと思う。
 このような中、6カ月も検査数を制限したまま、*6-3-1のように、「休業要請に罰則と補償の規定を加えるべきだ」という大きな声に押されて、政府は新型コロナ対策の特別措置法を改正する検討に入ったそうだが、職業差別的な営業停止を要請する前に、的を得た予防を徹底し、私権を制限せずに経済を廻した方が、国民の福利が大きく、財政への負担は小さい。
 また、*6-3-2のように、埼玉県知事は新型コロナウイルスのPCR検査について、学校・病院・接待を伴う飲食店等のうち複数の感染者が発生して集団感染の可能性が高いと判断された施設は検査対象を拡大する方針を出したが、これはクラスター対策であってこれまでと同じだ。3~4月に速やかに陽性者を隔離しなかったため、無症状の新型コロナ患者が市中に多くいる現在では、健康診断にPCR検査を取り入れ、陽性者は陰性になるまで隔離して治療する対応が必要なのである。


   2020.7.10東京新聞  2020.7.24朝日新聞     2020.6.25Qtere

(図の説明:左と中央の図のように、関東で再燃し始めた新型コロナによる死者数は、右図のように、日本・韓国・中国などの東アジアでは著しく低い。そして、検査不足のため、仮にこの10倍の死者数がいたとしても欧米よりかなり低く、その理由は生活習慣・交差免疫・遺伝的特質などだと推測されている。そして、この大騒ぎの中、2018年に日本におけるインフルエンザ死者数が3,325人だったのと比較して、2020年7月20日に1,000人を超えたと言われる新型コロナ死者数は約1/3なのである)

*6-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1166374.html (琉球新報 2020年8月1日) 沖縄県が緊急事態宣言 本島全域で外出自粛要請、15日まで 那覇飲食店は時短営業
 玉城デニー知事は31日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、県の警戒レベルを4段階中の第3段階「感染流行期」に引き上げ、県独自の緊急事態宣言を出した。緊急事態宣言の期間は8月1日から15日。期間中は沖縄本島全域で不要不急の外出を自粛するよう県民に求める。県境をまたぐ不要不急の往来も自粛するよう要請し、観光など県外からの来県は慎重な判断を求めた。医療体制を守るため、離島への移動も最小限にし、期間中の県内イベントの開催についても中止や延期、規模縮小の検討を呼び掛けた。緊急事態宣言は4月に引き続き2回目。玉城知事は31日の新たな感染者数が過去最多の71人を確認し、7月に入ってからの累計感染者数が253人になったことを挙げ、「爆発的な感染拡大がみられる」と述べた。感染拡大のスピードが想定を上回っており、感染者を受け入れる病床数が逼迫(ひっぱく)していることから、玉城知事は「重大な局面を迎えていることを県民に伝え、感染拡大防止に取り組むため宣言を発出した。何としても医療崩壊を食い止めなければならない」と訴え、県民一人一人の感染防止策の徹底を呼び掛けた。中南部を中心に感染が広がっており、特に那覇市の感染者数が115人に上ることなどから、接触や「3密」の場を減らすために、期間中は市内の飲食店の営業時間を午前5時から午後10時までにするよう求めた。営業時間短縮に協力する店舗には10万円の協力金を支給する。県はこれまでクラスター(感染者集団)が発生している那覇市の松山地域に店舗を構える接待・接触を伴うスナックなどに同期間、休業要請を実施することを決めている。キャバレーやナイトクラブ、ライブハウス、スナックなどを対象とし、応じた事業者には協力金20万円を支給する。20、30代以下の若年層への感染が多いことから、携帯電話のアプリなどを活用した感染防止対策や新しい生活様式の実践を呼び掛けた。

*6-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200801&ng=DGKKZO62191010R00C20A8EA2000 (日経新聞 2020.8.1) PCR 目詰まり再び、感染急増、拡充求める声
 新型コロナウイルスの感染が再拡大するなか、国内のPCR検査の拡充が進まない。1日の検査能力は4月に比べて2倍超の約3万5千件にとどまる。医師が感染の疑いが強いと判断しなければ検査できない「第1波」と同じ状況では、経済活動などの本格回復はおぼつかない。「また検査に目詰まりが出てきている。経済にも影響する」。31日、政府のコロナ対策の分科会後の記者会見で、尾身茂会長は政府に検査能力のさらなる向上を求めた。4月ごろの第1波では発熱などの症状が続いても保健所などが検査を断る事例が問題になった。当時は検査能力が1日1万件程度に限られ、検査対象を感染の疑いが強い人に絞り込んでいた。その後に検査能力は高まったが、7月に入って感染者は急増。再び検査の上積みを求める声が強まっている。日本臨床検査医学会で新型コロナ対策を担当する柳原克紀・長崎大教授は大規模クラスター(感染者集団)の発生に備え、「今の10倍以上に能力を高めるべきだ」と語る。目詰まりの根本には医師の判断を前提とした国の方針がある。唾液によるPCR検査が可能になり、医師が関与しない検査もしやすくなっている。唾液の採取は医師でない人もできるからだ。ただ鼻の粘液に比べて唾液による検査は精度が低いとされ、実施件数は広がりを欠く。保健所や地方衛生研究所の1日あたりの検査能力も4月から7月までで約2千件しか増えていない。民間検査会社の能力も増えたとはいえ1万8千件超にとどまり、欧米には見劣りする。

*6-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200801&ng=DGKKZO62191070R00C20A8EA2000 (日経新聞 2020.8.1) 企業、自前で検査の動き
 企業の間では医師の判断に縛られず、自前で従業員に検査を受けさせる動きが広がり始めた。日本ペイントホールディングスは31日、国内の全社員約4千人のうち希望者にPCR検査を順次実施すると発表した。検査費用は会社が負担する。伊藤忠商事は東京女子医科大病院と連携し、検査結果を即日に出せる体制を整えた。「関東地方の社員を対象に安心して働ける体制を整えた」という。日立製作所は一部の社内診療所で、業務で海外に渡航する社員に検査ができる体制を構築した。三菱商事も社内診療所に加え、外部の検査機関も活用して社員に対する検査を実施している。保健所による感染症法に基づく検査や、医師による医療保険での検査は感染の疑いが強い人に限られ、公費が投入される。一方、企業が安全目的などで従業員に行う検査は全額自己負担で公費はゼロだ。それでも自前の検査が広がるのは、無症状を含めた感染者が全国で急増する中、「社員の安心・安全を確保する」(日本ペイントホールディングス)ためだ。こうした対応をできる企業は多くない。6月下旬に日本経済新聞社が85社を対象にした調査では、全体の約7割の60社が社員向けPCR検査の「実施の予定がない」と答えた。理由は「検査費用が高い」「検査を受ける場所が見つからない」が多かった。コンビニエンスストアの店舗従業員を含め約20万人が働くローソン。検査の重要性は認識しているが現時点では検討しない。「検査費が廉価になることや公的補助が出ることを望む」(同社)。介護や保育など日常生活の維持に必要な従事者(エッセンシャルワーカー)はより切実だ。「職員が公費で検査を受けられる体制を整えてほしい」。高齢者向け福祉施設、こぐれの里(東京・練馬)の担当者は訴える。入居者への感染を防ぐため約40人の職員の一部は普段から外出を控える。施設側が検査を受けさせることを検討したものの、費用負担の重さから二の足を踏む。

*6-3-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/554680 (佐賀新聞 2020.7.31) コロナ特措法改正、早急に国会で議論を
 政府は新型コロナウイルス対策の特別措置法を改正する検討に入った。感染拡大防止のための休業要請に罰則と補償の規定を加えるべきだとした全国知事会の要請に呼応した。緊急事態宣言なしで知事が営業停止を要請できるようにすることなども検討するという。私権制限を強める内容で慎重な吟味が必要だが、第2波と呼ぶべき局面を迎え時間の余裕はない。法改正できるのは唯一の立法機関である国会だけであり、野党4党は憲法53条に基づき臨時国会召集を要求する方針だ。政府は「新しい法律は必要」(菅義偉官房長官)と言うなら早急に国会での議論に応じるべきだ。現行法の問題点は(1)要請・指示に強制力がなく私権制限への補償もない(2)国と都道府県の権限・役割の分担が不明確―に集約される。緊急事態宣言を発令するのは国(首相)で各種要請をするのは知事だ。特措法45条は、宣言を受けて知事が個人に外出自粛、店舗などに休業を要請、指示できると規定。従わない場合は店舗名などを公表できる。一方、24条は宣言なしでも知事が団体や個人に協力要請できると定めている。知事の要請には二つルートがあるわけだが、いずれも従わない場合の罰則、従った際の補償はない。知事会の要求は第一に、罰則を設けて権限を強化し、国が財政支援する休業補償を明文化することだ。次に、緊急事態宣言なしで知事が営業停止を要請できるようにすること。これに関しては、知事が独自に実施を判断するのは難しいため、統一基準を政府がつくるべきだとする一方、知事に国との事前協議を求めている現行の対処方針は知事権限を形骸化するとして見直しを主張している。3点目は、緊急事態宣言の対象を都道府県ではなく市町村単位に細分化することだ。いずれも知事の法執行を後押しするため、都道府県が希望するのは一定の合理性があるとも言える。だが、これら知事会の要求を全て盛り込んだ法改正が妥当なのかは疑問がある。例えば、緊急事態宣言対象の市町村は国が決め、休業要請の対象期間・業種は知事が決めるというのは、すみ分けが難しくないか。宣言なしで知事が営業停止を求める権限を持てば、国と知事の「二重権力」になりかねない。逆に言えば、出ても出なくても効果は同じとなり、緊急事態宣言が有名無実化しかねない。一方で、宣言発令の権限を知事に移譲すればいいとの議論にもなり得る。百出する議論をきちんと整理して法律に落とし込まなければ、法改正によって、かえって混乱が増しかねない。また政府が進める特措法以外の現行法の積極適用による対策強化も議論が必要だ。「警察が足を踏み入れる形で厳しくやる」(菅官房長官)として警察が風営法に基づきホストクラブの時間外営業などを取り締まる際、コロナ予防の点検も行うという。厚生労働省も建築物衛生法による立ち入り調査を検討する。こうした法執行は越権行為、公権力乱用につながり社会を萎縮させかねない。政府は直ちに国会で野党のチェックを受けるべきだ。さらに言えば、議論の混迷はリーダーシップ不在の証左だ。安倍晋三首相は「緊急事態宣言を出す状況にはない」と立ち話で言うだけでなく、政府方針をきちんと説明し疑問に答えてほしい。

*6-3-2:https://www.saitama-np.co.jp/news/2020/07/28/08_.html (埼玉新聞 2020年7月28日) <新型コロナ>集団感染の可能性…施設の検査対象を拡大へ 市長会議で方針 別の店や利用者らにも
 県内各市長と知事、県幹部が行政課題について意見交換する市長会議が27日、さいたま市内で行われた。会合で大野元裕知事は新型コロナウイルスのPCR検査について、学校や病院、接待を伴う飲食店などで複数の感染者が発生し、集団感染の可能性が高いと判断された施設では、検査対象を拡大する方針を明らかにした。これまでは感染が確認された場合、原則として濃厚接触者に限り検査を実施してきたが、大野知事は取材に対し「市町村や県が迷いなく、効果的に検査を行える体制を作る」と話した。無症状者の検査は県ではこれまで、原則として濃厚接触者に限定し、保健所が濃厚接触者を特定し、PCR検査を実施してきた。厚労省は今月15日、都道府県などに対し、感染症法に基づく新たな検査の対象者として、濃厚接触やクラスター(感染者集団)連鎖が生じやすいと考えられる特定の地域や集団、組織などを含めることを通知している。県はこの指針に基づき新たに対象となる例として、医療機関や高齢者施設であれば職員や入院患者、入所者まで広げ、保育所や幼稚園であれば職員や園児、小・中学校、高校では同じ学級やクラブに所属する職員や児童生徒、職場では感染者と同じ部署(フロア)に属する職員や利用者らまで拡大する。接待を伴う飲食店では同じビルの別の店の従業員、利用者にも実施する。会議には県内40市の全市長が参加。県から、新型コロナウイルスの県内の発生動向や検査体制強化や病床確保計画など、第2波への備えが説明されたほか、「疑い患者」の円滑な救急搬送受け入れ体制構築による「たらい回し」防止への県独自の取り組みなどが紹介された。出席した市長からは県に対し、家族に感染者、濃厚接触者がいる人を集団でどう扱うかといったことや、集団検査が始まった際の情報管理、県と市の個人情報保護と発表の在り方などについて質問や意見が出された。会議後、県市長会会長で熊谷市の富岡清市長は記者団に対し「新型コロナウイルス対策を含め意見交換し、検査枠拡大などコンセンサスが得られた。県と市町村が一体となり、課題に取り組む土台ができた」と話した。

<メディアの意図的な誤報は何故か?>
PS(2020年8月6、8日追加):大阪府、大阪市、府立病院機構大阪はびきの医療センターが、8月4日、新型コロナウイルス感染者が殺ウイルス効果のあるポビドンヨードを含むうがい薬でうがいをしたら、唾液検査で陽性となる割合が減ったという研究結果を発表すると、*7-1をはじめとして、メディアで言いがかりのような非難が始まった。しかし、「厚労省が承認していないから、効果がない」とは言えず(そのような薬は多い)、唾液の中にウイルスがおり、味覚障害を起こすのなら、口腔内だけでもウイルスを減らせば自分の免疫への負荷を減らせるので、予防効果も治療効果もあるだろう。また、「完全に効かないから、効かない」とも言えず、買い占めをするのは人の倫理の問題であって発表者の責任ではない。さらに、イソジンは、あわてて買わなくても普段から置いてあってよいようなうがい薬であり、これに加えてアルコールを含む口腔洗浄液も効果があると思われる(やりたくない人には、決して薦めない)。
 このような中、*7-2のように、アビガン投与の臨床試験結果についても、マスコミは意図的に有効性が確認できないというニュースを流したが、情報発信元の藤田医科大学の発表は、「入院初日から投与したグループと6日目から投与したグループとの間に有意差が見られない。両方のグループも全員ウイルスが2から3日後に消失した」「投与と非投与との比較はしていない」ということだったそうだ。中等症・重症の患者に偽薬を服用させる研究など人道的にできないため、投与と非投与との比較をしていないだけであり、それによって「アビガンの有効性は示されなかった」という結論にはならない。これについては、東大病院の観察研究に基づいた「重症コロナ患者へのフサン・アビガン併用療法の有効性示唆(日本医事新報社)」という記事が自然で、軽症ならアビガンだけでもよさそうだ。
 それでは、何故、メディアが前向きの予防薬・検査・治療薬を否定ばかりして後ろ向きの自粛を求め続けるのかを考えれば、①『必ず第2派が来る』とした専門家会議の予言をあてさせたい ②家にこもってTVを見ていて欲しい ③新型コロナにかこつけて「新しい生活様式」を普及させたい ④私権の制限をしたい ⑤何でもいいから首相はじめ政治家を批判したい など、新型コロナの鎮静化(これが国民の利益)とは異なる目的があると考えざるを得ない。
 なお、2020年8月7日、*7-3のように、厚労省は「①都道府県が推計した今後の流行時に必要となる1日あたりの最大検査件数は全国で計約5万6千件にのぼる」「②検査可能な件数は7月末時点で少なくとも30都道府県が最大想定を下回っている」「③民間機関等への外部委託や近隣自治体との連携で対応してほしい」等と発表したそうだが、①については、最大検査件数が全国で計約5万6千件になるというのはむしろ甘い。何故なら、人口84百万人のドイツは、感染者の早期発見に繋げるため、*7-4のように、7月9日時点でPCR検査を週110万件行えるまでの検査態勢強化を続け、他の国も検査を増やしており、これが現代の正攻法だからだ。そのため、②については、3月初旬ならまだわかるが、それから5ヶ月も経過した今では何を言っているのかと思われ、③の民間機関等への外部委託が可能であることも2、3月から言われていたのだ。さらに、近隣自治体との連携は、2月に和歌山県が行ったことだ。にもかかわらず、日本では融通をきかせず検査をケチったため、市中に蔓延させてかえって莫大な費用がかかった。そのため、市中蔓延は、厚労省と保健所の責任であって、国民の責任では全くない。

*7-1:https://www.asahi.com/articles/ASN8465THN84PTIL01M.html (朝日新聞 2020年8月4日) 「うがい薬で唾液中のコロナウイルス減少」吉村知事会見
 大阪府と大阪市、府立病院機構大阪はびきの医療センター(大阪府羽曳野市)は4日、新型コロナウイルスの感染者に殺ウイルス効果のあるうがい薬でうがいをしてもらったところ、唾液(だえき)の検査で陽性となる割合が減ったとの研究結果を発表した。府などは肺炎などの重症化の予防につながる可能性があるとして、本格的な研究を始める。政府が効果などを認めていないため、吉村洋文知事は「薬事法(現・医薬品医療機器法)上、効果があるとはいえない」とした上で、「(殺ウイルス効果のある)『ポビドンヨード』を含むうがい薬は『イソジン』などとして市販されているので、うがいを励行してほしい」と呼びかけた。センターの松山晃文・次世代創薬創生センター長によると、研究は府内で宿泊療養している軽症や無症状の患者41人を対象に実施。ポビドンヨードを含んだうがい薬で1日4回うがいした人の唾液のPCR検査の陽性率は、1日目は56・0%で、4日目は9・5%に減った。うがいをしなかった人は、それぞれ68・8%、40・0%だったという。松山氏は「コロナは鼻やのどの奥で増える。今回、唾液だけでやっているので、これで患者を治せるわけではない」とした。「ウイルスを含んだ唾液が肺に入ることで肺炎を起こすケースがある。唾液中のウイルス量を減らすことで重症化が抑制され、人にうつしにくくなるのではないか」とも説明。今後は対象者2千人を目指して研究を続けるとした。効果が薄い場合の責任について記者団に問われると、吉村知事は「僕が責任を取るのは研究結果。結果は保証したい。コロナに完全に効く薬はなく、それに対して責任取るとか取らないとか、そういうものじゃない」とした。会見で吉村知事は「買い占めはしないでください」と訴えたが、大阪市中央区のドラッグストアでは会見後の午後4時半過ぎ、イソジンを含むうがい薬を置く棚だけが空になっていた。男性店長は「1時間ほど前に売り切れました」。約30個あったうがい薬が10分ほどの間に売り切れたという。「本来は風邪が流行する冬場に売れる商品。コロナの予防にはなるかもしれないですが……」。新型コロナウイルスの影響で1家族に1個と限定して販売していたという。自転車で店に駆けつけた男性(40)は、売り切れた棚の前で立ち尽くし、「テレビ番組でうがい薬が取り上げられているのを見た妻に頼まれて買いに来た。本当に効くのか分からないが、念のため、あれば安心できるかなと思って」。肩を落とし、携帯電話で妻に報告した。

*7-2:https://ameblo.jp/study-houkoku/entry-12610511562.html (Ameblo) アビガン投与の臨床試験結果に関するマスコミの誤報
 7月10日の各報道はアビガン投与の臨床試験の結果、有効性が確認できないとニュースを流していた。情報発信元の藤田医科大学の発表を読むと、記者は取材していないが読解力不足なのだろうと思われる。または意図的な捏造か?
 下記藤田医科大学の発表を読めば、「入院初日から投与したグループと6日目から投与したグループとの間に有意差が見られない。両方のグループも全員ウイルスが2から3日後に消失していた。」「投与と非投与との比較はしていない」と言うことだろうと解釈できる。各報道は、この発表を「有効性確認できず」と発表していた。共同に至っては「投与した感染者と未投与の感染者で投与6日目までを比較したところ」と完全に読み間違っている。NHKは「臨床研究は「初日から最長で10日間アビガンを投与するグループ」と、「最初の5日間は投与せず入院6日目以降に投与するグループ」で比較して調べています。」と正しく理解しているが「明確な有効性確認できず」と誤った印象のタイトルを付けている。以前より、アビガンの臨床試験については、否定的な論調の記事が多い。なお、7月6日の東大の発表では、アビガンとフサンの併用により、集中治療室で治療を受けた11人のうち10人が平均16日で人工呼吸器が不要になったと有効性を示唆している。(日本医事新報社)
*藤田医科大学発表:ファビピラビル(アビガン)特定臨床研究の最終報告について(https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv0000006eya.html)
<報道>
○共同:アビガン、有効性示されず
 藤田医大(愛知県)は10日、全国の医療機関が参加した新型コロナウイルス感染症の治療薬候補アビガンの臨床研究で、投与した感染者と未投与の感染者で投与6日目までを比較したところ、回復が早い傾向はみられたものの、統計的に明らかな差はなかったと発表した。この研究では、明確な有効性は示されなかった。ウェブ上で記者会見した研究責任者の土井洋平教授は「ウイルス消失や、解熱しやすい傾向はみられた」と説明。研究参加者が89人と少なかったため統計的な差が出なかったのではないかとした上で「日本の流行状況では、この規模の研究が限界」との見解を示した。(https://www.47news.jp/news/new_type_pneumonia/5000060.html)
○NHK:「アビガン」明確な有効性確認できず 藤田医大など 新型コロナ
 新型コロナウイルスの治療薬の候補として期待されている「アビガン」について、患者に投与する臨床研究で明確な有効性は確認できなかったなどとする結果を愛知県にある藤田医科大学などのグループが発表しました。藤田医科大学などのグループは、ことし3月からインフルエンザ治療薬の「アビガン」を軽症や無症状の入院患者、88人に投与し、有効性や安全性を確かめる臨床研究を行っていて、10日、オンラインでの会見で結果を公表しました。臨床研究は「初日から最長で10日間アビガンを投与するグループ」と、「最初の5日間は投与せず入院6日目以降に投与するグループ」で比較して調べています。発表によりますと、「初日から投与したグループ」では6日目までにウイルスが検出されなくなった患者は66.7%でしたが、「5日間投与しなかったグループ」では56.1%でした。また熱が下がるまでにかかった平均の日数は、初日から投与すると2.1日、5日間投与しなかった場合は3.2日だったということです。研究グループは、入院初日から投与した方がウイルスがなくなったり、熱が下がったりしやすい傾向は見られたものの、統計的に明確な有効性は確認できなかったとしています。一方、重大な副作用は確認できなかったということです。土井洋平教授は「早く改善する傾向はあり、有効性がなかったという結論ではないと思う。国には依頼があればデータを提供していきたい」と話しています。
○厚労省「申請するかどうかは製薬企業の判断」
 「アビガン」について藤田医科大学の臨床研究の結果が示されたことを受け、厚生労働省は、「今回の結果をどう扱うのかや、新型コロナウイルスの治療薬としての承認を今後申請するかどうかは製薬企業の判断だ。申請された場合は厚生労働省として改めて審議する必要がある」とコメントしています。
○富士フイルム「発表内容を精査 治験は継続」
 「アビガン」については、薬を開発した富士フイルムのグループ会社が新型コロナウイルスの治療薬として、国の承認を目指した治験を進めています。今回の臨床研究の結果について、富士フイルムは「藤田医科大学の発表内容を精査しています。企業として行っている治験は現在も継続していて、引き続き行っていきます」とコメントしています。(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200710/k10012508371000.html)
○日経
 アビガン「有効性確認できず」藤田医科大、新型コロナ(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61378960Q0A710C2I00000/)
○ロイター
 アビガンの臨床研究、統計的な有意差みられず=藤田医科大学(https://jp.reuters.com/article/avigan-idJPKBN24B0R0)
○日本医事新報社
 重症コロナ患者へのフサン・アビガン併用療法の有効性示唆─東大病院の観察研究で(https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=15071)

*7-3:https://www.asahi.com/articles/DA3S14579954.html (朝日新聞 2020年8月8日) 検査能力不足、30都道府県 7月末時点 全国、最大5.6万件必要 新型コロナ
 新型コロナウイルスのPCRなどの検査について、厚生労働省は7日、都道府県が推計した今後の流行時に必要となる1日あたりの最大検査件数は、全国で計約5万6千件にのぼると発表した。朝日新聞の調査では、検査可能な件数は7月末時点で、少なくとも30都道府県が最大想定を下回っていた。
厚労省は6月、検査体制の強化が欠かせないとして、3~5月の国内の流行時の患者数、重症化率などをもとに患者の推計モデルを提示。それに基づき、都道府県が流行時に必要な最大の検査数を推計し、体制を整えるよう求めていた。厚労省によると、最大検査件数の推計は計5万5933件(豪雨災害の影響で熊本県は含まず)。朝日新聞が各都道府県に7月末時点での検査能力を聞いたところ、回答があった46都道府県で計4万2203件(民間検査機関の活用を含む)。4月7日に東京都などに緊急事態宣言が出た時点の検査可能件数の1・1~23・9倍と、各地で検査能力は強化されていた。ただ、7月末時点で検査可能件数が、推計された最大必要件数以上だったのは15県。今春の流行時には、検査能力の限界のためにPCR検査を受けられない例が頻発したが、感染者が急増すると今後も同様の事態が起こる懸念がある。厚労省は、機器の導入などにより9月末までに全国で最大計約7万2千件のPCR検査や抗原検査ができるようになると見込む。だが都道府県への取材では、全国の自治体が一斉に機器導入を目指していて納期が遅れているケースもあり、備えには課題が残る。厚労省の担当者は、現状で検査能力が足りていない自治体について「民間機関などへの外部委託や近隣の自治体との連携で対応してほしい」と求めている。

*7-4:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200709/k10012505371000.html (NHK 2020年7月9日) 独研究所所長「PCR検査は週110万件に態勢強化」新型コロナ
 ドイツ政府の新型コロナウイルス対策を担当する国立ロベルト・コッホ研究所の所長が日本メディアの取材に応じ、感染者の早期発見につなげるためPCR検査を週に110万件行えるまでに検査態勢の強化を続けてきたことを強調しました。ドイツの国立ロベルト・コッホ研究所のロタール・ウィーラー所長は、8日、都内の日本記者クラブで開かれたドイツ大使館の記者会見に、オンラインで参加しました。ドイツでは日本時間の8日午後6時現在、新型コロナウイルスへの感染が確認された人が19万人に上り、死者は9000人を超えていますが、一時は1日で6000人を越えていた新たな感染者数は最近では数百人の水準で推移しています。会見でウィーラー所長はドイツの施策について説明し、感染者の早期発見につなげるため現在ではPCR検査を週に110万件行えるまでに検査態勢の強化を続けてきたことを強調しました。また、ウィーラー所長は「追跡アプリなどのデジタル技術を駆使しながら、地域の状況を把握している保健所の態勢を強化することが非常に重要だ」と述べ、地域の機関も含めて国全体で対応能力を向上させ対策を進めて行くことが必要だと指摘しました。

| 教育・研究開発::2016.12~ | 12:47 PM | comments (x) | trackback (x) |

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