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2020,04,19, Sunday
![]() 2019.1.6毎日新聞 2018.12.21時事 2019.12.20朝日新聞 2020.4.10東京新聞 (図の説明:1番左の図のように、日本の税収による歳入は毎年増える歳出よりも小さいため、国債残高は年毎に大きくなっている。左から2番目の図は、国の税収に占める税の種類だ。2020年度予算案は新型コロナ流行前に作成されたが、右から2番目の図のように、約103兆円であり、これに加えて、1番右の図のように、新型コロナによる経済対策を約108兆円行っている) (1)2020年度予算は約103兆円で過去最大だった *1-1-1・*1-1-2のように、2020年度予算は過去最大の約103兆円で成立し、その中の予備費に新型コロナ対策の一部が入っている。 一般会計の歳出総額は2019年度の101.5兆円より1.2%増の約103兆円と8年連続過去最大を更新し、新型コロナ対策にも予備費5000億円から緊急経済対策の一部に充てるそうだ。さらに、新型コロナに対応する経済対策のため、2020年度補正予算案の編成に着手し、その金額は(3)のように108兆円にもなるため、2020年度の予算は、合計211兆円になる。余程、金が余っているのだろう(皮肉)。 そして、一般会計の歳出総額については、年金・医療・介護などの社会保障費が5.1%増えて約36兆円となったから全体を押し上げたと説明されている。しかし、年金・医療・介護の費用増加は高齢者割合の増加によってあらかじめ予測できていたため、発生主義で引当金を引き当てておくことが必要だったのであり、それをやっておかなかったのは、国(厚労省・財務省)の責任である。そのため、世代間対立を作って、その責任を社会保障の負担増・給付減として高齢者に押し付けているのは、契約違反であると同時に責任逃れも甚だしい。 さらに、歳出の無駄遣いが多い割には、「教育費は高いのに、教育インフラは貧弱」という日本の状況は、毎年のように行われる景気対策で国から棚ぼた式に降ってくる金を当てにするような勉強不足でプライドのない国民を大量に作っているため、この悪循環を断ち切るには「教育内容の充実」や「教育環境の整備」が欠かせない。にもかかわらず、「社会保障費は、消費税で賄わなければならない」などという社会保障を人質にした根拠のない世界でも類を見ない消費税増税のずる賢い言い訳の真実性を確かめもせず、馬車馬よろしく足並みを揃えて財務省の政策宣伝をしてきたメディアの質も問われる。 なお、歳出の財源となる税収は約63兆円と見込まれ、差額の148兆円は国債の増加で賄うそうだが、国債の返済は、①資源国のような国の税外収入獲得 ②資源や過去に作られた資産などの国の資産の有効活用 ③本物の無駄遣い排除 ④借りた当事者か一般国民による返済 によるほかにはないことを忘れてはならない。なお、国がお金を増刷してお金の価値を薄めるのは、全国民に知らないうちに負担させているため、④に入る。 (2)新型コロナの性格と緊急事態宣言 安倍首相は、*1-3-1のように、新型コロナの世界的な拡大について「第3次世界大戦は核戦争になるだろうと考えていたが、このコロナウイルス拡大こそ第3次世界大戦だと認識している」語られたそうだ。私も、「第3次世界大戦は核戦争になるだろう」と考えていたが、このようなウイルスを使えば宣戦布告が不要で、責任者も不明にできるため、(人道には反するが)武器としては確かに便利だ。 そして、この新型コロナは、感染した当初は発症せずに次々と感染し、しばらくすると宿主を重篤にして死に至らしめるため、(高齢者・持病のある人・難民などの)健康弱者を殺すのによくできたウイルスだ。そして、新型コロナ蔓延後の厚労省の対応やメディアの報道を見ていると、もしかしたらアメリカの他の同盟国か日本がばら撒いたウイルスではないかと思うくらいで、社会保障費を削減したがっている日本の厚労省・財務省も、大いに動機がありそうだ。 そのような状況の下、*1-3-2のように、安倍首相は4月7日、感染が急拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県に、4月7日から5月6日までの緊急事態宣言を出されたが、何故かメディアにはそれより強い制限を望む声が多く、首相は、*1-3-3のように、4月16日に対象地域を全都道府県に拡大された。そのため、新たに対象となった地域の知事が法的根拠のある外出自粛要請をすることが可能となったが、私は、地域差があるので、これで十分だと考える。 今回の新型コロナ感染騒動について私が異常だと思うのは、治療するために最大の努力を注がず、外出自粛や店舗閉鎖などの国民生活への制限ばかりを進めようとしていることだ。これによって、医療体制が逼迫しているという説明の下、トリアージを行って助ける命の選別を行い、国民経済への甚大な被害を緩和するためとして多大な補正予算を組むことも可能になった。 さらに、新型コロナのクラスター追跡にかこつけて、国民を追跡するコロナ感染追跡アプリを解禁したが、これはいつでも情報を開示できる上、選挙妨害にも使えるため、偏った監視社会への入り口になることを忘れてはならない。日本国民は、それを望んでいるのか? (3)緊急事態宣言による約108兆円の追加経済対策 事業総額約108兆円という過去最大の経済対策が、*1-2-1のように閣議決定され、このうち政府が実際に支出する財政支出は約40兆円で、経済への打撃を抑え、雇用を維持する目的の現金給付や資金繰り対策がその柱だそうだ。 そして、企業の資金繰り対策としては、*1-2-2のように、45兆円規模の政府系金融機関による無利子融資や減収企業に対する給付金を作った。また、外出自粛や休業要請で収入が激減して生活に困窮する人が増えているため、*1-2-3のように、家計向けの現金給付として一律10万円(3人家族なら合計30万円)を給付することになった。しかし、収入が激減していない人もいるため、一律10万円の給付を不要な人は請求しない選択ができる制度にした方がよい。 また、政府は中小企業や個人事業主向けの資金繰り対策として「持続化給付金」と呼ぶ現金給付と減収世帯向けの「生活支援臨時給付金」に6兆円を投じて5月からの支給を目指し、このほか税金や社会保険料の支払いを原則1年猶予したり、民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子で融資する仕組みを設けたりもするそうだが、最終的に①誰に ②どういう理由で ③何をするのか ④手続きすべき人 ⑤その予算 を、わかりやすい一覧表にして欲しい。 しかし、新型コロナへの効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」の備蓄や人工呼吸器、マスクの生産支援にも予算を付けたのはよいが、早期発見して早期治療を行えば他の経済対策はいらなくなるのに、ここで備蓄に重きを置くのはやはり不自然である。 (4)治療薬、汎用性ワクチンなど 2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞された本庶佑京都大学特別教授は、*1-4-1のように、新型コロナウイルスについて、①PCR検査の大幅増 ②東京圏、大阪圏、名古屋圏などでの完全外出自粛 ③外国で有効性が示された治療薬の早期導入 を提言しておられた。私も、②を始めとする予防も重要だが、①のように検査を大幅に増やし、③のように外国で有効性が示された治療薬は早期に導入すべきだと考える。 そのような中、日本の厚労省は、怠慢で承認を遅らせたり、頭が固くて科学的根拠のない理由で承認しなかったりして、日本発の新薬も日本では実用化できず、優秀な研究者が日本を離れることを余儀なくされており、もったいないこと甚だしい。 そして、*1-4-2に、④新型コロナ感染拡大が続く中、世界では治療薬開発が急ピッチで進む ⑤製薬会社は既存薬を転用することで開発期間を短くして早期の市場投入を目指す ⑥回復した患者の血液成分を使った治療法も試されている ⑦既存の医療技術・手法の掘り起こしも進む ⑧新型コロナの猛威を止めるには迅速な審査や承認を可能にする仕組みも欠かせないが、日本は「先駆け審査指定制度」を使っても、承認に最短6カ月程度かかる 等が記載されているのは、今更ながらの事実である。 しかし、*1-4-3の「血漿療法」は、感染早期だけでなく重症になった患者にも効くものの、血液を提供した人の他の感染症が移るリスクとの比較秤量をすべきなのだ。 なお、コロナウイルス自身が変異したり、人為的に変異させてバイオテロに使ったりする可能性もあるので、ワクチンは汎用性の高いものを作って欲しい。「BCG接種をしている国で新型コロナによる死亡者が少ない傾向がある」そうだが、BCG接種する国は、予防としていろいろなワクチンを投与する予防政策の進んだ国なのではないか? 例えば、日本なら、インフルエンザワクチンを投与していたり、65歳以上は肺炎球菌のワクチンを投与していたりするため、コロナウイルスへの抗体や肺炎を起こす他の細菌への抗体のある人が多いという具合である。 米国では、*1-4-4のように、スタンフォード大の研究チームが、4月19日までに西部カリフォルニア州サンタクララ郡の住民を対象に新型コロナの抗体検査を行い、感染した人は4月初めに2.5~4.2%で、確認されている感染者の50~85倍に及んでいる可能性があり、この推計を基にした致死率は0.1~0.2%と算出したそうだ。また、その検査はドライブスルーの検査場を3カ所設けて4月3~4日に実施したため、検査を受けるには車も必要で、被験者には一定の偏りが生じ得るとしている。疫学調査は、このように真実を追及するために行い、母集団の偏りも認識しておくものだ。 (5)国民の暮らし 新型コロナの蔓延が始まる前から、消費税増税・実質的な年金カット・社会保険料の負担増・物価上昇などで、高齢者を中心として暮らし向きは悪くなった。*2-1は、総務省の家計調査で、1世帯当たりの消費支出が昨年10月の消費税増税後、今年1月まで4カ月連続マイナスだったと記載している。 私は、「経済活性化のために、消費すべきだ」という政策は人を幸福にしないが、国民が自らの福利を増加させるために消費することは必要だと考える。しかし、例えば美容院は、実質目減りした所得の中で、節約されやすい業種らしく、消費税増税後にぐっと客が減り、コロナ蔓延以降は客が途絶えた。が、なくなられては困る業種だ。 そのため、*2-2のように、自民・公明両党の税制調査会が、2020年4月2日、新型コロナの影響を緩和する税負担軽減措置をまとめ、需要減に苦しむ中小・零細企業の納税猶予を決めたが、消費税減税については議論しなかったそうだ。ただし、この消費税減税案は、経済活性化のための時限措置として消費税を減税して消費と駆け込み需要を喚起するという詐欺のようなことを意図しており、国民生活を向上させることを意図しているわけではないため、将来の生活を考える国民がこれで需要を誘発されることはないと思われる。 また、*2-3のように、2020年度の年金額は昨年度比0.2%のプラス改定となったが、消費税が2%上がり、それに応じて物価は2%以上あがったことから、実質目減りしている。この状況は、「マクロ経済スライド」と呼ばれる賃金や物価の変化から少子高齢化に伴う調整率を差し引いて改定率を決めるルールが作られたことによって起こっており、「マクロ経済スライド」の根拠に合理性はないが、何が何でも高齢者への給付を減らすことが目的で作られた制度だ。 一方、高齢者の健康保険料・介護保険料は上昇が続き、2020年4月から働くシニアを対象とする雇用保険料の徴収もあるそうだ。しかし、親や配偶者に介護が必要となり、仕事を休んで従事する場合は「介護休業給付金」を受け取れるとのことである。 このような中、*2-3のように、介護を家族で抱え込まずに社会全体で支え合うという理念で、(私が提案して)始まった介護保険制度が2020年4月で20年を迎えたが、未だに40歳以上の人しか介護保険制度に加入できない。しかし、この20年で社会の意識改革は進み、サービスの利用者は2000年は149万人だったが、2019年は487万人と3倍になっている。 しかし、「介護保険の維持・存続について懸念する」と答える自治体は多く、問題点は、①介護現場の人手不足 ②費用の膨張 ③財源の確保 だそうだ。①の人手不足は、外国人労働者を入れて賃金を上げすぎないようにしないと、②のように費用は膨張するがサービスは減るという日本独特の行き詰まり産業になる。そうなると、③の財源確保にも嫌気のさす人が増える。 つまり、これまでの国の見直しは、被介護者よりも介護制度を守ることを優先して「負担増」「サービス減」を繰り返し、当初は利用者の所得に関係なく1割だった自己負担割合を一定の収入がある人は2割とし、次に現役並みに所得が高い人は3割に引き上げたが、介護サービスの方は、特別養護老人ホームの新規入所者を要介護3以上に限定し、要支援1、2を対象者とした訪問介護・通所介護は全国一律の介護保険から切り離して市区町村の事業に移したものである。 このため、「介護の社会化」を目指しているのに、高齢者が高齢者をケアする「老老介護」が広がり、介護疲れによる虐待や介護離職も増えているが、せっかく慣れてくれた外国人労働者は国に追い返しながら、「介護需要に人材確保が追いつかない」と言っているわけだ。 ここで、*2-4のように、日経新聞は「会社員にズシリ、社会保険料30%時代、団塊世代が75歳に、迫る2022年危機」という見出しで、「医療・介護・年金の合計保険料が給与に占める比率が2022年度に労使合計で30%に迫り、人生100年時代のマイナス面も見えている」としている。つまり、社員が直接給与から支払うのは半分の15%だが、それでも親を養い家族介護していた時代より大変だと言っているのである。 さらに、「介護保険制度の対象を全世代に広げ、介護保険料の支払いを平等にして保険料を引き下げよう」という記述はなく、「健保連は団塊の世代が75歳になり始める年を『2022年危機』と位置付け、現役世代の重い負担を見直すよう国に改革を求めた」としている。 結論として、「高齢者は年金・医療・介護費の増加で現役世代の重荷になるから、人生100年時代バラ色ではない」と言い続けてきているのであり、このように利己的で冷たい主張の出所を考えれば、日本の国会議員・財務省・厚労省の中には、新型コロナウイルスを歓迎している人が多いように思われるわけである。 (6)社会保障財源と(本物の)無駄遣いの排除 1)資源で税外収入を稼ぐ ![]() 2018.9.25エコノミスト 2019.4.22エコノミスト 2019.9.18Livedoor (図の説明:左図のように、サウジアラビアは石油収入で歳入の約7割を賄い、残りの3割を非石油収入で賄っている。それには、中央の図のように、サウジアラビアの恵まれた油田があり、右図のように、現在は世界有数の原油生産量を誇っているが、「ビジョン2030」と呼ぶ将来を見据えた経済構造高度化構想も打ち出している) 歳出の財源となる国の収入は、(1)に書いたように、①資源国のような国の税外収入獲得 ②資源や過去に作られた資産などの国の資産の有効活用 ③本物の無駄遣いの排除 ④税収 などがあり、国債は借金であるため、国がこれらの収入から返済するのが正道だ。 このうち、①については、サウジアラビアを例にすると、*3-1-2のように、国営石油企業サウジアラムコから得る石油収入で歳入の約7割を賄い、残りの3割を非石油収入で賄っているが、所得税・法人税・消費税などの課税はない。しかし、地球環境維持のため世界が化石燃料の使用を控えていることで、ここ数年は原油価格の低迷や不安定な値動きが続き、ムハンマド皇太子は、2016年4月、石油依存の経済構造を脱却しようと「ビジョン2030」と呼ぶ経済構造高度化構想を打ち出した。 そして、サウジアラムコは、油田開発・石油精製・石油化学を一貫操業する巨大企業となり、これまでフレアとして燃やしていたLNGも世界最大の輸出国となることを表明して、今後10年間でLNGに1500億ドルを投資するとして構造改革に取り組んでいる。私は、資源を金に換えて国民生活を豊かにしようと努力しているサウジアラビアは、世界一高い価格で資源を買い漁って国民に迷惑をかけている日本よりも、(民主主義の問題はあるものの)経済政策においてずっと賢くて偉いと思う。 2)豊富な再エネを使えない日本 1)のように書くと、「日本は資源のない国だから・・」と100年1日の如き決まり文句の反論が出るが、欧州では、*3-1-1のように、太陽光発電の電力で水素を製造し、既存の天然ガスパイプラインで輸送して産業や発電に活用する大規模な「グリーン水素パイプライン計画」が始まろうとしており、これは、これまでパイプラインを建設してきた欧州で生き残るための工夫だそうだ。 日本はパイプラインがないため、豊富な再エネを使って発電し、蓄電や送電線を使っての送電を行えば、全く有害物質を出さずに電力を資源にすることができる。にもかかわらず、日本の会社が、オーストラリアの褐炭をガス化して水素を作り、それを日本に運ぶサプライチェーンを作ろうとしたり、外国の再エネで作った水素をわざわざアンモニアにして日本に運んで発電に使う計画を立てたりしているのは、意味が分かっていない「馬鹿」としか言いようがない。そもそも、今後の日本は、何を売ってエネルギーを買うつもりなのか? 3)豊富な森林資源も利活用できない日本 日本に豊富な森林資源を手入れして環境を護ろうと森林環境税を作っても、*3-2のように、それを山林・田畑・緑地帯・藻場などの緑地面積に応じて自治体に配分するのではなく、人口に応じて配分すれば、「緑地を増やして手入れしよう」ではなく「木を切って緑地を壊し、人口を増やそう」という動機づけになり、「森林整備」に使われる分は税収配分額の35%にしかならず、本末転倒だろう。つまり、管理している森林が少なく、CO₂を多く排出してO₂をあまり作らない大都市が、森林環境税を多く配分してもらう理由はないのである。 また、終戦復興期・高度経済成長期に造林した森林が、*3-3のように、伐採期を迎えて稼ぎ時になり、民有林の伐採や植林を担う森林組合には、地球温暖化防止の観点からも期待が大きい。しかし、①森林組合員の高齢化が進み ②女性の登用も遅れており ③相続を機に所有者が把握できなくなる事例も相次ぎ ④組合活動も滞りがちだそうだ。 しかし、林野庁が、森林所有者と同居していない複数の子を「推定相続人」として正組合員になる道を開くのは、森林の維持管理にむしろマイナスではないかと思う。何故なら、昔から「田を分ける者」を「田分者(たわけもの)」と言い、その理由は、所有権を細分化することにより生産性を下げるとともに、人数が増えることによって経営意思決定を遅くするからである。 さらに、固定資産税は市区町村が課税しているため、山林に相続が生じた場合は相続者を特定して固定資産税の支払者を決めなければ、固定資産税を徴収できない。そのため、相続者の義務である登記の変更もせず、所有者が不明なまま固定資産税も払わずに打ち捨て、所有者が分からなくなってしまった森林を作るのは、市区町村の怠慢にすぎない。そのため、所有者が不明で連絡がつかず、固定資産税も払っていないような森林なら、一定期間を過ぎた後は市区町村が収容して公有林として利活用すればよいだろう。 4)国民の財産である国有財産の安価な払い下げ 森友学園問題とは、2016年6月20日、安倍首相夫人が名誉校長となっていた「森友学園」に、財務省が大阪府豊中市の国有地を払い下げた際、土地の鑑定評価額は9億5,600万円だったのに、ゴミ撤去費用という名目で8億2,200万円を割り引き、1億3,400万円という極めて安い価格で売却した事件だ。 野党は、「安倍首相夫人の知り合いだから1個人に国民の財産である国有財産を極めて安い価格で売却し、国民に損害を与えた」として、“えこひいき”とか“忖度”として来る日も来る日も長時間の追求を続け、安倍首相が「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と言われたのだが、私は、あの言い方は本当に知らなかったのだと思った。 もちろん、1個人や1法人に国有財産を安く払い下げたり無料で使わせたりするのは、他の国民に損害を与えるためよくない。しかし、これまで見てきたように、日本の行政府が、国有林の使用権や年金資産で購入したホテルなどの膨大な金額の国有財産を二束三文や無料で1個人や1法人に譲るのは、(残念ながら)よくあることだ。これが生じる理由は、国が国有財産を資産として認識し、国民の財産として管理し、それを増やしたり有効活用したりする発想を持っていないからで、これが本当の問題点であり論点なのである。 それでは、何故、たった8億円(211兆円の1/263,750)の値引きだけが、予算委員会で長時間をとって追及されたのかと言えば、それは安倍首相を引きずりおろすための権力闘争だからだ。その権力闘争の中で、*3-4の近畿財務局の担当職員だった赤木俊夫さんが犠牲になられたわけだが、私は、政策に正面から反論するのではなく、権力闘争のためのゴシップづくりに専念するメディアや政治家は、民主主義社会の国民のためにならないため評価しない。 5)歳出の中の膨大な無駄遣い 私も、*3-5のように、時代が代わって防衛ニーズも変化している中、もっと安価で効果的な代替案はいくつも考えられるため、強引な辺野古新基地建設は基地建設ありきの血税の無駄遣いだと思っている。そして、各地で琉球新報のように無駄遣いを1つ1つつぶしていけば、かなりの財源を捻出でき、本当に必要なことに使える筈だ。 ・・参考資料・・ <国家予算> *1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57307490X20C20A3MM8000/ (日経新聞 2020/3/27) 2020年度予算が成立 過去最大の102兆円 予備費、新型コロナ対策に 2020年度予算が27日の参院本会議で可決、成立した。一般会計の歳出総額は19年度当初に比べ1.2%増の102兆6580億円で、8年連続で過去最大を更新した。新型コロナウイルスの感染拡大に対応するため、予備費として盛り込んだ5000億円から今後策定する緊急経済対策の財源を充てる。政府は20年度予算の成立を受け、新型コロナに対応する経済対策を盛り込んだ20年度補正予算案の編成に着手する。一般会計の歳出総額が100兆円を超えるのは2年連続。総額の35%を占める医療・年金などの社会保障費が5.1%増えて35兆8608億円となり全体を押し上げた。高齢化に伴う社会保障費の自然増のほか、19年10月の消費税増税の税収分を活用する教育無償化や低年金者の支援給付金などが加わった。新型コロナへの対応では既に策定した2回の緊急対応策の財源として19年度予算の予備費から約2800億円を使った。今後策定する経済対策にはまず20年度予算の予備費を充て、これから策定する20年度補正予算とあわせて財源とする。安倍晋三首相は参院本会議に先立つ27日の参院予算委員会の締めくくり質疑で、経済対策について「わが国経済への甚大な影響のマグニチュードに見合うだけの必要かつ十分な、強大な経済財政政策を講じていかねばならない」と述べた。 *1-1-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019121301392&g=eco&utm_source=・・ (時事 2019年12月13日) 一般会計、102兆円台後半 税収63兆円台に―20年度予算案 政府は13日、2020年度予算案の一般会計総額を102兆円台後半とする方向で調整に入った。19年度当初予算の101.5兆円を上回り、過去最大で、2年連続で100兆円を超える。財源となる税収は63兆円台となる見通しだ。社会保障費や防衛費がいずれも過去最高額となる見込みで、歳出総額を押し上げる。社会保障費では、高齢化に伴う医療・介護費の増加や、消費税増税に伴う幼児教育・保育の無償化に必要な経費の増加分が主な要因だ。防衛費も宇宙、サイバーなど新領域での対処能力強化で膨張する。 *1-2-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57787830X00C20A4EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/4/7) 108兆円経済対策、雇用維持に向け過去最大規模 事業総額108.2兆円という過去最大の経済対策が7日、閣議決定された。政府が実際に支出する財政支出でも39.5兆円と過去最大だが、事業総額の規模の大きさがひときわ目立つ。現金給付や資金繰り対策が柱となる。経済の打撃を抑え、雇用を維持する目的で巨額の支出となった。6日夕に安倍晋三首相が表明する直前まで、明らかにされていた対策の規模は「リーマン危機後の対策を上回る規模」というもの。60兆円超が一つの目安だったため、100兆円を超える額が急に表明されたことに驚く向きも多かった。増えた分はどこから来たのか。新たに加わったのは、企業向けに打ち出された税や社会保険料の支払い猶予の26兆円分だ。2019年12月に打ち出された19年度補正予算の未執行分19.8兆円(財政支出ベースで9.8兆円)も加えられた。税や社会保険料は政府が肩代わりするわけではないため、原則1年の猶予期間が終われば企業が負担する必要がある。これまでにない措置だったため総額に加えられるか不明だったが、足元の企業の資金繰り支援に直接関わることから加算されることになった。売り上げが急減した企業でも雇用を維持できるように配慮した。19年度の補正予算ももともと消費増税による需要の落ち込みや東京五輪・パラリンピックに対応するものだ。緊急事態宣言が発令されたなかでどこまでが執行されるかは不透明だが、今後の経済を下支えするとの理由から合算された。もっとも、政府による財政支出の総額は新たに追加された分だけでも財政支出ベースで29.2兆円に上る。「かさ増し分」を差し引いても、過去の経済危機時より大型の財政措置がとられたことになる。財政支出の内訳をみると、雇用の維持や企業の事業継続に関わる部分は合計10.6兆円と大きな部分を占めた。具体的には中小企業や個人事業主向けの給付金2.3兆円や減収世帯向けの給付金4兆円だ。民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子の融資をする仕組みにも2.7兆円を付けた。新型コロナの感染拡大が長期化した場合にも、手を打った。感染症の対策予備費として1.5兆円を計上。今後急な支出が必要になった場合に備えた。企業向けには財政投融資を活用した日本政策投資銀行の「新型コロナリバイバル成長基盤強化ファンド(仮称)」を創設。企業に対して総額1000億円規模で出資できる仕組みも作った。課題はこうした緊急対策を緊急事態宣言が発令されたなかで迅速に執行できるかどうかだ。融資相談や給付金の窓口で発生している人手不足の問題を早期に解決し、足元で経済の底割れを回避するための手段を講じる必要がある。 *1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200408&ng=DGKKZO57765930X00C20A4MM8000 (日経新聞 2020.4.8) 資金繰り支援45兆円 政府が緊急経済対策決定 政府は7日夕の臨時閣議で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急経済対策を決定した。事業規模は過去最大の108兆円。このうち企業の資金繰り対策は45兆円規模となる。政府系金融機関による無利子融資や減収企業に対する給付金などで急速に深刻化する企業の財務基盤を支える。家計向け現金給付は月収減などの要件を満たした世帯に30万円を支給する。対策を盛り込んだ補正予算案は4月中の成立を目指す。2020年度本予算で対応する分を含めた財政支出の総額は39.5兆円でこちらも過去最大となる。このうち今回の補正予算に対応する16.8兆円を国債発行でまかなう。14.4兆円が赤字国債になる。資金繰り対策では中小企業や個人事業主向けの「持続化給付金」と呼ぶ現金給付や減収になった世帯向けの「生活支援臨時給付金」に合計6兆円を投じる。世帯向けは約1300万世帯分の予算を確保。政府は5月からの支給を目指すとしているが、手続きが煩雑で自治体によっては支給が夏ごろになる可能性もある。このほか税金や社会保険料の支払いを原則1年間猶予したり、民間金融機関が自治体の制度融資を使って実質無利子で融資する仕組みを設けたりする。制度融資を受け付ける自治体の窓口が人手不足に陥っていることなどに対応する。経済対策は新型コロナの感染防止を最優先に掲げた。需要が低迷を続けるなかでも企業や家計が破綻しないように手当てする一方、新型コロナへの効果が期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」の備蓄や人工呼吸器、マスクの生産支援にも予算を付けた。新型コロナの感染拡大収束後は観光業などの需要喚起策に乗り出す。旅行商品やイベントのチケットを購入した人などにクーポン券などを出す。サプライチェーン(供給網)の再構築のために海外拠点を国内に回帰させる企業にも補助を出す。 *1-2-3:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200418/KP200417ETI090013000.php (信濃毎日新聞 2020.4.18) 一律10万円給付 国民目線欠いた責任重く 政府、与党が新型コロナウイルスの感染拡大を受け、全国民に一律10万円を給付する検討を始めた。補正予算案に盛り込んでいた減収世帯対象の30万円の給付は取り下げる。安倍晋三首相はこれまで、一律給付には否定的な考えを示していた。閣議決定した予算案を組み替えるのは極めて異例である。コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や休業の要請で、収入が大幅に減少して生活に困窮する人たちが増えている。迅速に支援することが必要だ。それなのに政府の対応はスピード感に欠けている。政府内で現金給付案が浮上したのは3月中旬だ。現在の補正予算案が順調に成立したとしても、支給開始は5月になる予定だった。予算案の組み替えで、国会提出は1週間程度遅れる。成立は5月1日にずれ込む可能性がある。支給開始はさらに遅れる。減収世帯を対象にした30万円の給付は、要件が複雑で分かりにくい。世帯主を対象として、共働きが増えている実情にも配慮していなかった。対象は全世帯の2割にとどまり、不公平感から国民の批判が高まっていた。一律給付は野党などが当初から求めていた案だ。富裕層が対象になることや、給付総額が膨らむなどの問題もあるため、与党も一度は減収世帯対象で合意していた。それが一転したのは、支持者離れを懸念した公明党などが強硬に一律給付を主張したためだ。安倍首相はきのうの記者会見で「緊急事態宣言を行い、全国に広げていく中で、国民が乗り越えていくには一律給付が正しいと判断した」と唐突な方針変更の理由を述べ、判断の遅れを陳謝した。最初に緊急事態を宣言したのは補正予算案を閣議決定した7日だ。当初から感染拡大や外出自粛で国民生活が困難になることは分かっていたはずだ。状況を見誤って混乱し、後手に回った政府の責任は重い。一律給付で給付の総額は当初の約4兆円から12兆円超に膨れ上がる。財源は赤字国債が想定されている。補正予算案を組み替えるなら、終息後の消費喚起策など当面は必要ない項目を削除して、歳出抑制に努めるべきだ。麻生太郎財務相はきのうの会見で「要望される方、手を挙げる方に配る」との考えを示している。首相の一律給付の方針と異ならないか。これ以上の混乱は認められない。早急に調整して方針を決め、国民に説明する必要がある。 *1-3-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14444769.html (朝日新聞 2020年4月17日) 首相、コロナ拡大を「第3次世界大戦」 面会した田原総一朗氏、明かす 新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴う混乱について、安倍晋三首相が「第3次世界大戦」と表現していたことがわかった。首相と面会したジャーナリストの田原総一朗氏が14日、自身のブログで明らかにした。田原氏は10日に首相官邸を訪れ、首相と面会した。田原氏のブログによると、首相は「第3次世界大戦は核戦争になるであろうと考えていた。だがこのコロナウイルス拡大こそ、第3次世界大戦であると認識している」と語ったという。田原氏が、「緊急事態宣言はなぜ遅れたのか」と問うと、首相は財政への悪影響を理由に「ほとんどの閣僚が反対していた」と明らかにしたという。田原氏は、閣僚による財政悪化への懸念を「平時の発想」と指摘。首相がこうした「平時の発想」から、感染拡大を戦争ととらえる「戦時の発想」に転換したことで、宣言を出すに至ったと分析している。 *1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200408&ng=DGKKZO57766680X00C20A4MM8000 (日経新聞 2020.4.8) 緊急事態宣言を発令 首相「接触8割減を」、東京など7都府県、経財相「地域追加も」 新型コロナ 安倍晋三首相は7日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部で特別措置法に基づく緊急事態宣言(総合2面きょうのことば)を発令した。感染が急拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県が対象で実施期間は7日から5月6日まで。宣言が出たことで7都府県の知事は外出自粛や営業休止を要請する法的な裏付けを得たが各知事の判断は揺れている。米欧では強制力がある外出禁止令を出す例がある。イタリアも罰金付きの外出制限を出したが感染者の増加が鈍化するまで時間がかかった。日本の外出自粛要請は強制力がないため住民の自発的な対応が不可欠になる。今回の宣言で感染爆発を防げるかは未知数だ。首相は7日夜、首相官邸で66分間、記者会見した。「もはや時間の猶予はないとの結論に至った」と説明した。「国民生活、国民経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある。経済は戦後最大の危機に直面している」と強調した。いまのペースで感染拡大が続けば感染者が2週間後に1万人、1カ月後には8万人を超えるとの見通しを示した。「緊急事態を1カ月で脱出するには人と人との接触を7割、8割減らすことが前提だ」と協力を求めた。ホテルなどの協力を得て関東で1万室、関西で3千室を確保したと話した。感染拡大防止策を講じ、保育所や学童保育は規模を縮小して開くと説明した。地方には「重症化リスクが高い高齢者もたくさんいる」と指摘し、対象地域の都市部から地方への移動を控えたり、原則として自宅で仕事をしたりすることを呼びかけた。バーやナイトクラブ、カラオケ、ライブハウスへの出入りも自粛するよう訴えた。西村康稔経済財政・再生相は同日の国会答弁で対象地域は「必要があれば追加を考えたい」と語った。宣言の対象に入らなかった福井県の杉本達治知事は同日「緊急事態宣言直前の状況だ。医療体制は逼迫している」と訴えた。人の外出や往来を減らせなければ感染拡大が続き、宣言の対象地域の追加や期間延長が現実味を帯びる。発令を受け7都府県の知事は住民に外出自粛などを求める。知事は娯楽施設など人が集まる施設の使用を制限するよう求めたり、学校の休校を要請したりできる。強制力はないが、事業者が正当な理由なく応じなければ「要請」より強い「指示」を出して事業者の名前も出せる。発令後も鉄道やバスなど公共交通機関は運行を続ける。食料品や医薬品などの生活必需品を扱うスーパーマーケットやドラッグストアも営業する。最低限の生活を維持した上で人と人が接触する機会を減らす狙いだ。 *1-3-3:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020041601001482.html (東京新聞 2020年4月16日) 安倍首相、全国に緊急事態宣言 7都府県から拡大、5月6日まで 安倍晋三首相は16日、新型コロナウイルスの感染増加に対応する緊急事態宣言の対象地域を全都道府県に拡大した。7日に発令した東京、大阪など7都府県から対象地域を追加。新たに対象となった地域の知事は、法的根拠のある外出自粛要請が可能となった。期間は5月6日まで。感染拡大に歯止めをかけ、医療崩壊を防ぐには、大型連休中を含めた人の移動を全国一斉に抑える必要があると判断した。16日夜に効力が発生した。緊急事態宣言は改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく私権制限を伴う措置。海外のような都市封鎖(ロックダウン)は想定していない。 *1-4-1:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200413-00000006-ykf-soci (夕刊フジ 2020.4.13) ノーベル賞・本庶氏、新型コロナ対策で緊急提言! 病態解明と治療薬につながる研究「100億円投入せよ」 2018年にノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶佑(ほんじょ・たすく)京都大学特別教授(78)が11日朝、日本テレビ系情報番組「ウェークアップ!ぷらす」に生出演し、新型コロナウイルス研究への「100億円」投入を訴えるなど、緊急提言した。「個人的には、一番厳しいやり方が効果がある。中途半端でダラダラやると長くなる。できれば、短期間でコントロールできるのが望ましい」。本庶氏は、人の動きへの規制について、こう語った。「医療崩壊」を防ぐために、「1カ月の完全外出自粛」も提言している。免疫とがん細胞と結びつけるタンパク質「PD-1」を発見し、がん免疫治療薬「オプジーボ」の開発につなげた、世界的な免疫療法の権威。新型コロナウイルスについても、以下のように主張している。(1)PCR検査の大幅増(2)東京圏、大阪圏、名古屋圏などで完全外出自粛(3)外国で有効性が示される治療薬の早期導入。本庶氏は「多くの人が不安に思っているのは死者が多いこと。死亡率は5%を超える。インフルエンザは0・1%。(新型コロナウイルスは)最後に免疫不全で、あっという間になくなってしまう」と指摘した。ワクチンや特効薬の開発が注目されるが、「このタイプのウイルスは、ワクチンができにくい。製薬企業も大規模投資はリターンがないので、尻込みする」といい、インフルエンザ治療薬「アビガン」や、8日に国内での臨床実験が開始された「トリシズマブ」の導入を提言した。最後に本庶氏は「(日本政府が)100億円を研究者に対する、病態解明と治療薬につながる研究に出していただければと信じている」と締めくくった。 *1-4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200419&ng=DGKKZO58240640Y0A410C2MM8000 (日経新聞 2020.4.19) 新型コロナ治療薬 開発急ピッチ、世界で治験650件 有効性なお見極め 新型コロナウイルス感染拡大が続くなか、世界で治療薬開発が急ピッチで進んでいる。製薬会社は既存薬を転用することで開発期間を短くし、早期の市場投入を目指す。回復した患者の血液成分を使った治療法も試されており、既存の医療技術・手法の掘り起こしも進む。新型コロナの猛威を止めるには、迅速な審査や承認を可能にする仕組みも欠かせない。新型コロナ治療薬の開発は待ったなしだ。米国の臨床試験登録データベースによると、18日時点、世界で650以上のコロナの治験が登録されている。治療薬、ワクチンや再生医療など様々な研究が進む。17日の米株式市場で、米医薬大手ギリアド・サイエンシズの株価が約10%急騰した。ギリアドのエボラ出血熱の治療薬候補だった「レムデシビル」が新型コロナ重症患者の回復につながったとのリポート内容が伝わったためだ。レムデシビルはエボラの治療薬として有効性が低いとして開発が中断された薬だ。富士フイルムホールディングスの「アビガン」も別の病気の治療薬として開発された。いずれも新型コロナウイルスが体内で増殖するのを防ぐ効果があると報告されている。ギリアドは5月にもレムデシビルの初期治験データを得られるとしている。有効性が確認できれば米食品医薬品局(FDA)に対して承認を申請し、早ければ夏にかけて米国の医療現場で使える可能性がある。一方、アビガンは日米で治験を開始。最短で6月末までに治験を終え、早くて年内にも市場に出てくるとの観測がある。新型コロナ特有の症状が、重症の肺炎だ。その肺炎重症化を抑制する効果があるとされるのがリウマチ治療薬だ。スイス・ロシュの「アクテムラ」や仏サノフィなどの「ケブザラ」がそのリウマチ新薬だ。アクテムラは4月から治験をスタート。9月までに治験終了を見込んでおり、米国で今秋の承認を目指し動いている。ケブザラは2021年3月に治験終了を見込み、承認はその1~2カ月後になるとの観測がある。新型コロナ治療では既存の治療法も応用されている。コロナから回復した患者の血液を使う「血漿(けっしょう)」を投与する治療法だ。国内では国立国際医療研究センターが早ければ4月中にも試験的な治療を試みる方針だ。回復者の血漿の成分を活用した「血漿分画製剤」では、武田薬品工業が米CSLベーリングと組み開発を進める。年内の実用化を目指している。世界の製薬会社や研究所が新型コロナ治療薬開発に既存の薬や技術を応用するのは、有効性が確認されればすぐに医療現場で使えるようになるからだ。新薬をゼロから開発し、実用化するには10年近くかかる。既存薬は安全性確認など時間のかかる作業が終わっているため、短期間で薬として使える可能性がある。現在、既存薬で新型コロナ薬として期待されているのは十数種類。治験で有効性が確認できれば、各国の規制当局への承認申請に進む。「治療薬承認に向けあるゆる障壁を取り除く」。米トランプ大統領が新型コロナ薬の早期承認を公言しており、有効性が確認された薬があれば1カ月程度で承認される可能性がある。欧州や英国でも規制当局が新型コロナ治験支援や条件付きでの迅速承認を準備している。一方、日本は承認審査スピードを速める「先駆け審査指定制度」(総合2面きょうのことば)があるが最短で6カ月程度だ。日本は薬価が決まるのにも1~2カ月かかり、海外に比べ時間がかかる。18日には国内で新型コロナ感染者が1万人を超えた。世界でコロナ感染者は200万人、死者は15万人に達する。治療薬への期待は過熱気味で、米国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長は「(薬の効果は)科学的に有効性を証明しなければいけない。間違った希望は持たないでほしい」と呼びかける。有効性を見極めつつ、副作用リスクや供給能力を慎重に判断する必要性もある。 *1-4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200419&ng=DGKKZO58237600Y0A410C2EA5000 (日経新聞 2020.4.19) 血漿療法、月内にも試験 新型コロナ治療へ国内で 新型コロナに対する治療法は、既存薬の転用だけではない。コロナから回復した患者の血液を使う「血漿(けっしょう)療法」という治療法もある。国内でも早ければ4月中にも試験的な投与が始まる。血漿は血液から赤血球や白血球などを取り除いた成分のことで、「アルブミン」や「グロブリン(抗体)」といったたんぱく質が含まれる。このうちグロブリンには様々な性質があり、血漿から分離し精製することで免疫不全の治療や重度の感染症治療に使える医薬品となる。実はこの仕組みは日本の近代医学の父、北里柴三郎博士が世界で初めて確立した。今回の新型コロナでは、回復した人の血液の中にはコロナを排除する免疫(抗体)が存在するケースがある。この成分を重症患者に投与すれば体内のウイルスを排除するのに役立つことが期待される。中国でも重症患者に対する血漿療法で回復した人がいるとする報告が出ており、米食品医薬品局(FDA)も血漿投与を認め、カナダでも大規模な臨床研究が始まった。日本でも国立国際医療研究センターが早ければ4月中にも試験的な治療を試みる方針だ。回復者の血液を使った血漿製剤で製薬企業も動き始めた。先頭を走るのは血漿分画製剤の世界大手、武田薬品工業だ。血漿療法には別の感染症にかかるといったリスクもあり、副作用や合併症の危険性もある。聖路加国際病院救急部の一二三亨副医長は「治療法がない感染症にも応用でき、理論的には感染早期に投与すると高い効果が期待できる」と話す。 <暮らし> *2-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/596450/ (西日本新聞 2020/3/31) 暮らし向き4年ぶりマイナス域 総務省の家計調査によると、1世帯当たりの消費支出は昨年10月の消費税増税後、今年1月まで4カ月連続マイナスと低迷している。今回、福岡の生活者の暮らし向きについて調査した結果、1年前より暮らし向きが「良くなった」「どちらかというと良くなった」の割合から、「悪くなった」「どちらかというと悪くなった」の割合を減じた「暮らし向き判断指数」は、昨年から5・7ポイント低下のマイナス2・0ポイントとなり、2015年以来のマイナス域を記録。福岡でも増税後の消費マインド低下がうかがえる結果となった。 *2-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020040201087&g=eco (時事 2020年4月3日) コロナ対策、消費減税を一蹴 冷え込む需要、さらに混乱―与党税調 自民、公明両党の税制調査会は2日、新型コロナウイルスの影響を緩和する税負担軽減措置をまとめた。需要減に苦しむ中小・零細企業の納税猶予を打ち出す一方で、与野党を問わず多くの議員が訴えていた消費税減税は見送られた。コロナの影響が色濃い消費の喚起へ「税率ゼロ」の主張もあったが、国民の混乱を招くとの懸念が強く、与党税調として消費減税は「まったく議論しなかった」(幹部)と一蹴した。自民党の若手有志は3月30日、政府が検討している大型経済対策に消費税減税を盛り込むよう要望。趣旨に賛同した党内議員は100人を超えたといい、各地で顕在化した飲食や宿泊などの需要急減に強い危機感を唱えた。経済対策に反映させるため、政府が3月中下旬に集中開催した民間ヒアリングでも「経済を活性化させるためなら、消費減税の効果が大きい」(外食大手首脳)との声が上がった。コロナ禍で人、モノ、カネの移動が大幅に制約される「緊急事態宣言」が俎上(そじょう)に載るなど景気の先行きに暗雲が漂う。時限措置として思い切った減税による消費喚起と駆け込み需要の誘発効果も取り沙汰されたが、雲散霧消した。前回2014年4月に消費税率8%へ引き上げた際には大幅な需要変動が起きた。昨年10月の消費税増税では回避しようと、政府・与党が飲食料品の軽減税率やキャッシュレス決済時のポイント還元制度などに巨費投入を決めた経緯もある。今回の与党税調でも、ただでさえ需要が冷え込む中、「短期間での税率変更はかえって国民が混乱する」との認識が支配した。財務省は現行税率10%への引き上げを2度延期した安倍政権に「相当身構えた」(幹部)が杞憂(きゆう)に終わった。 *2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57305810X20C20A3PPE000/ (日経新聞 2020/3/29) 年金、新年度「実質目減り」 介護保険料は大幅増も もうすぐ4月。新年度入りに伴って、シニアが受け取る公的年金の金額や現役世代らが納める社会保険料などが切り替わる。これらの改定は、世帯収入の増減やそれを踏まえた消費動向にも影響してくる。いつどうなるかを知り、家計の運営に生かしたい。まずは年金から。2020年度の年金額は昨年度比0.2%のプラス改定となった。自営業者らが加入する国民年金(満額)は月6万5141円と133円増え、主に会社員だった人が受け取る厚生年金(夫婦2人分の標準額)は同22万724円と458円増える。2年連続のプラスだが、増える金額はわずかだ。 ■物価ほど増えず 昨秋に消費税が2%上がったことを考えれば、0.2%の増額はいかにも少ない。なぜなら、改定の際の2つのルールで増加率が削られ、物価ほど増えない「実質目減り」が続くからだ(図A)。1つは賃金や物価の変化に応じて本来の改定率を決める基本ルール、そしてそこから少子高齢化に伴う調整率を差し引く「マクロ経済スライド」だ。基本ルールでは、新たに年金をもらい始める人は賃金、いったんもらい始めたらその後は物価に連動するのが原則だが、04年からもらい始めた人も経済環境によっては賃金に合わせるようになった。これによって本来の改定率は物価より小さくなる場合が増えた。状況によってはさらにスライド率が差し引かれ、年金の伸びが抑えられる。20年度は物価が0.5%上がったが、賃金は0.3%だった。基本ルールに沿って本来の改定率は賃金の0.3%となった。さらにスライド率の0.1%が引かれ、最終的な改定率は0.2%になった。日本年金機構は年金受給者に対し、6月に新しい年金額の通知書を送付する。2カ月分まとめて払うので、4、5月分が6月15日に振り込まれる予定。今後「年金は物価ほど増えないことを頭に入れておきたい」(ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫主任研究員)。現役世代が納める保険料はどうか。厚生年金の保険料は17年9月から、給与水準(標準報酬月額)に対する比率が18.3%(労使合計)で固定された。このため保険料は増えないと思っている会社員もいるようだが固定されたのはあくまで料率。これに報酬を掛けて計算する保険料は昇給すれば増える場合がある。また、今年9月には標準報酬月額の上限が改定される見通し。月収など実際の報酬が63.5万円以上あると標準報酬月額の等級が上がり、保険料負担が企業、本人それぞれで年3.3万円増える(図B)。保険料の負担を減らすには、計算の際に用いるこの標準報酬月額の等級を下げればよいのだが、「会社員に名案はなかなか見当たらない」と社会保険労務士の永山悦子氏は話す。よく言われるのが、残業を調整して4~6月の給料を減らすこと。通常はこの3カ月の平均の報酬で標準報酬月額を出し、9月から1年間適用する。だが、実際には会社員が残業をコントロールして等級を下げるのは難しい。近年は働き方改革で残業も減っている。交通費も標準報酬月額に含まれるので、会社の近くに引っ越せば下がるという人もいるが、家賃などの出費が増えたら逆効果だ。自営業者らが払う国民年金保険料は130円増えて1万6540円となる。 ■雇用保険でも徴収 健康保険料と介護保険料は上昇が続いている。介護では給料など報酬額に比例して保険料が決まる「総報酬割」を4年かけて段階的に増やしており、最終年度の20年度は全面導入となる(図C)。報酬が高い人が多くいる健保組合の負担が増え、料率が大きく上がるところも出てくる。健保と介護は料率改定が3月(実際の保険料に反映されるのは4月の給料からが多い)で、標準報酬月額は9月(同10月)となる。このため「春は料率、秋は標準報酬月額の改定によって、年2回保険料が変わる場合がある」と社会保険労務士の篠原宏治氏は話す。4月から変わる制度では働くシニアを対象とする雇用保険料の徴収がある。雇用保険は失業した際の生活を保障する制度(図D)。17年から65歳以上の社員も条件を満たせば適用対象になったが、これまで保険料は免除されていた。被保険者の負担は0.3%(一般の事業)で、月額では数百円程度という人が多そうだ。標準報酬月額ではなく、給料から天引きされるので保険料の金額は毎月変わる。以前は一度しかもらえなかった「高年齢求職者給付金」は、失業を繰り返したとしても求職活動をするたびに受け取れるようになっている。「65歳未満は雇用保険から失業給付などを受けると特別支給の老齢厚生年金が支給停止になったが、65歳以上はこの給付金をもらっても年金額に影響はない」(永山氏)という。親や配偶者に介護が必要になり、仕事を休んで従事する場合は「介護休業給付金」を受け取れることも知っておきたい。 *2-3:https://www.kochinews.co.jp/article/358500/ (高知新聞社説 2020.4.4) 【介護保険20年】持続可能性が問われる 介護を家族で抱え込まず、社会全体で支え合う―。そんな理念で始まった介護保険制度が、4月で20年を迎えた。「介護の社会化」は40歳以上の人が支払う保険料と税金、利用者の自己負担で賄う制度だ。介護の必要度合いを軽い方から「要支援1、2」「要介護1~5」と7段階に分類。訪問介護や通所介護(デイサービス)など、在宅や施設への入所といった多様なサービスを選べるようになった。この20年で社会の意識改革が進み、サービス利用者は2000年の149万人から19年は487万人と3倍になった。制度は定着したといえるだろう。その一方で、世界有数のスピードで進む高齢化は、介護現場の人手不足などさまざまなほころびを見せ始めた。制度の持続可能性に黄信号が点滅している。共同通信が3月、都道府県庁所在地と政令市の計52自治体に実施したアンケートによると、回答があった50自治体のうち、介護保険の維持、存続について1自治体を除いて全てが「懸念する」と答えた。制度の問題点を聞いた設問では、介護現場の人手不足、費用の膨張、財源の確保の順で多かった。人手不足の中でもヘルパー不足は深刻な状況に陥っている。一般的に介護職員は、重労働の割には賃金が安いといわれる。2月公表の政府資料では、全産業平均に比べて月額9万円程度低い。新規採用が難しい上に、離職率も高い。政府はおおむね3年に1度、制度を見直してきた。段階的に賃金の引き上げを実施してきたが、焼け石に水の状態だ。自治体アンケートでは賃上げの財源として国の税金を増やすべきだとの意見が目立った。これまでの国の見直しは、制度を守ることを優先するあまり、「負担増」と「サービスの縮小」の繰り返しに終わってきた。当初は利用者の所得に関係なく1割だった自己負担割合を、一定の収入のある人は2割とし、次には現役並みに所得が高い人は3割に引き上げた。サービスの面では、特別養護老人ホーム(特養)の新規入所者を原則、要介護3以上に限定。また、要支援1、2を対象者とした訪問介護と通所介護は、全国一律の介護保険から切り離し、市区町村の事業に移した。「介護の社会化」を目指しながら、高齢者が高齢者をケアする「老老介護」も広がっている。介護疲れから虐待に発展する事件や、介護を理由にした離職も増えている。介護需要に人材確保が追いつかない。高齢の夫婦のみの世帯も増えている。介護する人への支援を強化するには、自治体が要望する国の税金投入も考えるべきだ。小手先の改革を繰り返しても、サービスが低下しては本末転倒だろう。制度開始の原点に立ち戻り、持続可能性を高める道を探りたい。 *2-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57061100R20C20A3K15200/ (日経新聞 2020/3/22) 会社員にズシリ 社会保険料30%時代、団塊世代が75歳に 迫る「2022年危機」 医療・介護・年金の合計保険料が給与に占める比率が30%に迫っている。改めて聞くと負担の大きさに驚く会社員も多いだろう。三大社会保険料はなぜこんなに上がっているのか。中身を知ると「人生100年」のマイナス面も見えてくる。 ■労使合計 社会保険料が急上昇 健康保険組合連合会(健保連)は昨年まとめた「今、必要な医療保険の重点施策」の中で1つの推計を示した。大企業の会社員らが負担する医療・介護・年金の三大社会保険料は2022年度に合計額が給与水準(標準報酬)の30%を超える。これは労使を合計した平均値で、社員が直接給与から払うのは半分ほどだが、それでも大きな負担だ。健保連は団塊の世代が75歳になり始めるこの年を「2022年危機」と位置付け、現役世代の重い負担を見直すよう国に改革を求めた。「全組合の平均が30%に乗るというのは負担増が伝わりやすい数字。現役世代に自分たちの負担を知ってほしいし、高齢者にも知ってほしい。そしてみんなでどうしたらよいか考える必要がある」と健保連の田河慶太理事は話す。一般に会社員は社会保険料などが天引きされたあとの手取りの給料に目が向かいがち。「保険料の負担増加に気付きにくく、しっかり訴えた方がよいと考えた」と続けた。健保連の試算では、全国約1400の健保組合の平均の医療の保険料率は22年度に9.8%となり、19年度比で約0.6ポイント増える。介護は同2.0%と同0.4ポイント増加する。これに厚生年金(18.3%)を加えると30.1%となる。組合によってはすでに30%に乗っているところもある。中小企業の会社員が入る全国健康保険協会(協会けんぽ)では19年度で平均が30%を超えている。原因は高齢化に伴う医療・介護費の増加と、アンバランスな負担の構造にある。年間の医療費は42.6兆円、介護費は10.2兆円(ともに18年度)に上り、年々増え続けている。特に大きいのが、より多くの医療・介護を必要とする75歳以上の後期高齢者の増加だ。この世代は年金以外の収入が少なく、医療・介護の多くを国と現役世代が賄う仕組みになっている。医療ではこれら高齢者への拠出金が膨らみ、介護では費用の約4分の1を現役世代が負担している。人生100年時代に向けて、国は高齢者らも活躍できる社会づくりを掲げるが、社会保険料の面から考えるとバラ色とはいえない。医療・介護費の増加は続き、負担に歯止めが掛かりそうもないからだ。年金には「マクロ経済スライド」という給付を抑制する仕組みがあるが、医療や介護にはない。健保連の推計では三大保険料の合計は25年度には31%に上がる。国が18年に公表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」では、健保組合の医療・介護の1人当たりの保険料率は、医療が最大で11.2%、介護が2.6%(計画ベース)となる。仮に年金が18.3%のままなら、保険料の合計は最大で32%台に上がることになる。 <財源と無駄遣い> *3-1-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200405&ng=DGKKZO57629330T00C20A4TM3000 (日経新聞 2020.4.5) 欧州でグリーン水素パイプライン計画 太陽光発電の電力で水素を製造して既存の天然ガスパイプラインで輸送、産業や発電に活用する大規模な「グリーン水素パイプライン計画」が欧州で始まろうとしている。2050年までに脱炭素を目指す欧州連合(EU)の長期目標に沿う。計画のまとめ役を担う仏ソラドベント社(本社パリ)の創業者、ティエリー・ルペック氏に計画の内容や背景を聞いた。 ――どのような計画ですか。 天然ガスパイプラインを管理・運営するガスTSO(系統運用者)からの依頼で、競争力のあるグリーン水素の生産、輸送、消費の大規模な企業コンソーシアムを結成している。スペインに60万キロワット級の電解工場を建て、太陽光発電の電力で水素を製造する。これをTSOが保有する既存のパイプラインで消費地に運ぶ。ユーザーは化学や肥料、鉄鋼などの工場、発電所、工業用熱生産だ。天然ガスと石炭を代替する」「最初のプラントはいずれ100万キロワット級に拡張する計画だ。重要なのは液化天然ガス(LNG)に対抗できる競争力を持てるかだ。そのために早期の大規模化を狙う。50年までに100万Btu(Btuは英国熱量単位)あたり7.5ドルを目指す。スペインに続いて、欧州とパイプラインがつながるアルジェリアやチュニジアでの太陽光発電による水素製造を視野に入れている」 ――なぜまずスペインなのか。 「スペインは固定価格買い取り制度(FIT)で太陽光発電が急増した後、制度廃止などで停滞していた。しかし太陽光発電のコストが十分に下がったため再び建設ブームが始まっている。問題は電力網が満杯で発電事業者に系統接続の権利があっても容易につなげない。余裕のある電力で水素をつくることで太陽光発電の変動性を解消し電力系統の安定運用に資する」 ――天然ガスパイプラインに水素を流すにはパイプラインの改修が必要になるのでは。 「送ガス網への設備投資については、この1年でTSO自身の認識に大きな変化があった。既存の設備で天然ガスとのブレンドでも100%水素でも輸送可能だと姿勢を変えた。コンプレッサーなど一部設備は改修が必要だが、パイプラインを作り直す必要はない」 ――見方が変わったのはなぜ。 「生き残りだ。欧州は脱炭素に向けて動いている。TSOはガスの生産と消費を結ぶ『中流』の事業だが、天然ガスの供給も消費も減っていく。パイプラインが座礁資産になる。グリーン水素の輸送を担い資産価値を復活させ、雇用も維持したいと経営者たちは考えた。グリーンなエネルギーを望む顧客が増え、その要望に応えることが生き残るために不可欠だと判断したのだ」 ――コンソーシアムに参加する企業は。 「スペインのエナガス、イタリアのスナム、フランスのGRTガスとテレガ、ドイツのOGE、ベルギーのフラクシス、オランダのガスユニなどのTSOが中心だ。これらのTSOは『ガス・フォー・クライメット』という団体を組織している。ほかに電解装置のメーカーや太陽光発電のデベロッパーなどが参画する。欧州投資銀行(EIB)やほかの投資銀行、投資家からも私たちの計画は支持されている」 ――脱炭素を掲げるEUの取り組みは非常に野心的だが、達成可能か。 「達成できなければ私たちは非常に困った状況に陥る。前向きに考え、どう達成するかという問いを発すべきだ。欧州の目標が野心的に過ぎ、達成できなかったことは過去にもある。目標や規制は大事だが、起業家や投資家が動かなければ脱炭素は困難だ。世界最大規模の機関投資家であるノルウェー政府年金基金はエナガスの大株主だが、グリーン水素に強い関心をもつ。いま投資家が動き始めている」 # # # ルペックさんに会うのは2年ぶり。以前にインタビューしたときは仏大手電力エンジーの副社長だった。グリーン水素のためベンチャーに転じた。グリーン水素のプロジェクトは日本でもいくつかある。川崎重工業はオーストラリアの褐炭ガス化でもたらされる水素を日本に運ぶサプライチェーンを構想、液化水素タンカーを建造している。東京ガスは自然エネルギーの電力でつくった水素をアンモニアにして日本に運び発電などに使う計画を公表している。また千代田化工建設などはブルネイで調達した水素をメチルシクロヘキサンという化学物質に反応させ液体にして運び、消費地で水素に分離するというシステムを提案し実証に挑む。 *3-1-2:https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20190507/se1/00m/020/048000c (エコノミストオンライン 2019年4月22日) サウジアラムコ起債に応募殺到 LNG、石油化学でも影響力増大=岩間剛一 サウジアラビアの国営石油企業サウジアラムコに、世界の債券投資家の注目が集まっている。サウジの実力者ムハンマド皇太子が推し進める経済構造改革の原資として予定していたサウジアラムコのIPO(新規株式公開)は断念に追い込まれたが、次善の策として打ち出したサウジアラムコの債券発行計画に対し、運用難に悩む債券投資家の応募が殺到。サウジアラムコは当初予定よりも調達資金を積み増し、まさに面目躍如といったところだ。サウジアラムコにとっては今回が世界の債券市場へのデビューとなる。ロイター通信などによれば、サウジアラムコは3年、5年、10年、20年、30年の年限に分けて起債し、100億ドル(約1兆1000億円)を調達する予定だった。ところが、フタを開けてみると投資家からの応募が殺到し、4月9日時点で1000億ドルを超えたという。これを受けて、サウジアラムコは起債額を120億ドルへと積み増した。驚くのは、その発行条件である。債券発行時の利回りは信用力の高い米国債を基準に決められ、ブルームバーグなどによれば、サウジアラムコ10年債の利回りは米国債に105ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上乗せした水準となった。この利回りの水準は同じ年限のサウジ国債を12.5bp下回っており、サウジアラムコが持つ豊富な原油埋蔵量や収益力の高さが、債券市場では政府(ソブリン)よりも高く評価された結果といえる。 ●米アップルの1・8倍 実際、サウジアラムコの業績は驚異的だ。サウジアラムコが4月1日、初の起債を前に投資家向けに開示した財務情報によれば、2018年のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は2240億ドル(約24兆6000億円)、純利益は1111億ドル(約12兆円)とケタ違いの規模だった。純利益は上場企業で世界最大の米アップル(595億ドル、18年9月期)の1.8倍を超え、同じ石油企業の米エクソンモービル(208億ドル、18年12月期)の5倍以上に達する。サウジアラムコの強みは、サウジの石油・天然ガス開発を独占していることにある。サウジは南米ベネズエラに次ぐ、世界第2位の原油埋蔵国だが、超重質油で生産コストの高いベネズエラの原油と異なり、軽質であるうえに生産コストが1バレル当たり4ドル程度に過ぎない。世界最大の産油国となった米国のシェールオイルの生産コスト(1バレル当たり30ドル超)と比較しても、極めて高いコスト競争力を持った世界一の優良原油である(図)。サウジアラムコは債券発行で調達した資金を手元資金と合わせて、世界的化学メーカーに成長した国営企業サウジ基礎産業公社(SABIC)の買収に充てる。その企業価値は1000億ドル(約11兆円)にのぼり、株式の7割は政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド」(PIF)が保有する。サウジアラムコがSABICを買収すれば、7兆円以上の資金が政府の経済構造改革の原資となる。サウジ政府はもともと、企業価値が2兆ドル(約220兆円)ともされるサウジアラムコの株式のうち、5%をニューヨーク、ロンドン両証券取引所へ上場し、1000億ドル(約11兆円)の調達をもくろんでいた。だが、サウジの原油埋蔵量などは重要な国家機密であり、どこまでサウジアラムコの財務状況が開示されるのかが不透明だった。サウジ側は両証取に上場基準の緩和を求めるなどしたが、受け入れられることはなかった。加えて、昨年10月に起きたサウジ人著名記者の殺害事件により、サウジ政府とムハンマド皇太子が国際社会から非難され、欧米諸国の証券市場や金融機関の支援を得ることが難しくなった。そこで、サウジ政府はIPOを断念し、開示の基準が緩い債券発行へと方針転換する。世界的な低金利環境が続く中、投資家は相応の金利が見込める優良・大型の投資先を渇望していた。また、株主責任を負う株式への直接投資とは異なり、債券投資は国際社会の非難も浴びにくいという事情もあった。 ●構造改革の「先兵」に サウジは政府歳入の7割近くを石油収入に依存する。だが、ここ数年は原油価格の低迷や不安定な値動きが続き、昨年12月に発表した19年の政府予算は5年連続の赤字を見込む。そのため、サウジ政府は増税や補助金の削減など財政健全化に取り組むが、国民に不満が高まって王族支配の根幹すら揺らぎかねない。そうした危機感を背景に、ムハンマド皇太子が16年4月、石油依存の経済構造を脱却しようと打ち出したのが「ビジョン2030」と呼ぶ経済構造高度化構想である。ビジョン2030では、数値目標を掲げて製造業や中小企業の振興など経済多角化を目指すとしたが、その原資として当初期待していたのがサウジアラムコのIPOだった。そのIPOが頓挫したことで経済構造改革の行方も危ぶまれたが、サウジアラムコの起債によって評価を一変させた。また、サウジアラムコはSABIC買収により、油田開発から、石油精製、石油化学と、上流から下流まで一貫操業する巨大企業となり、サウジ政府の改革を資金面で支える先兵ともなる。サウジアラムコは、さらに野心的な目標を掲げる。LNG(液化天然ガス)の輸出プラントを持たず、これまでは原油生産に随伴する天然ガスはフレアとして燃やすだけだったが、アミン・ナセルCEO(最高経営責任者)は昨年11月、30年までに世界最大のLNG輸出国となることを表明。今後10年間で天然ガスに1500億ドルを投資するとし、敵対するLNG大国のカタールやイランを脅かす姿勢を鮮明にした。サウジアラムコは石油化学部門も強化しており、今年2月には中国・遼寧省で中国企業とエチレン生産能力が年間150万トン、石油精製能力が日量30万バレルに達する総額100億ドルの石油精製・石油化学コンビナート建設で合意した。また、中国や韓国、インドネシアなどアジア諸国の製油所にも出資し、貴重な原油輸出先と位置づけるアジア諸国の囲い込みを図っている。債券市場やLNG、石油化学にまで及ぶサウジアラムコの影響力は、もはやとどまるところを知らない。 *3-2:https://mainichi.jp/articles/20200331/ddn/003/010/012000c (毎日新聞 2020年3月31日) 森林環境税の使途、「森の整備」は35% 先行配分、74自治体調査 安倍政権が創設した森林環境税について、全国の道府県庁所在市と政令市、東京23区(計74自治体)の2019年度の使途を調べたところ、最大の目的である「森林整備」に使われるのは、税収配分の見通し額の35%にとどまることがわかった。大都市は管理する森林が少なく、国産材を利用した公共事業に充てるケースが多い。森の荒廃防止を掲げて納税者1人につき年1000円を徴収する新税のひずみが早くも浮かんだ。森林環境税の徴収は24年度からだが、政府は早急な災害対策のために森林整備が急務だとして、別の財源を準備。19年度から先行的に、譲与税として自治体への配分を始めた。 *3-3:https://www.agrinews.co.jp/p50423.html (日本農業新聞 2020年3月31) 森林組合法改正案 役割発揮へ体質強化を 民有林の本格的な利用期を迎え、伐採や植林を担う森林組合の活性化が課題になっている。地球温暖化防止の観点からも期待が高い。山村を支える人々の利益につながるように、組合員の拡大や若返りなどにより森林組合の体質強化を急ぐべきだ。森林組合は、森林所有者である組合員の委託を受けて植林や下刈り、間伐、主伐など山の作業全般的を担う。全国に620余りあり、組合員は151万人に及ぶ。農業との兼業も多い。山村住民の高齢化に伴って組合員の高齢化と減少が進み、総会や総代会などへの参加も減っている。女性の登用も遅れ、正組合員に占める割合は10%、役員に占める割合は0・5%と低水準だ。相続を機に所有者が把握できなくなる事例も相次ぎ、組合活動も滞りがちだという。一方、民有林は、終戦復興や高度経済成長期に造林した森林が主伐期を迎えている。これからが稼ぎ時である。せっかくの財を「宝の持ち腐れ」にしてはならない。また、切った後に植林をしないと山が荒れる。植林から伐採まで計画的に取り組む森林組合の役割は重要度を増す。山村に富をもたらすこの時機を逸してはならない。林野庁は、森林組合法の改正案を今国会に提出し体質強化を後押しする。森林所有者と同居していない子どもら「推定相続人」に正組合員になれる道を開き、人数制限も撤廃する。組合員の若返りと女性の参画を進め、組合活動の活性化を促したい考えだ。総会や理事会での論議も活発になると期待される。森林所有者が将来分からなくなるのを防ぐことにもつながる。問題は実効性だ。親元を離れて暮らす「推定相続人」に、森林管理や組合活動への関心を高め積極的に参加してもらうにはどうするか。また、組合員数が多くなった一部林家の発言力が高まることを懸念する声もある。国会審議では、こうした点について丁寧な論議が必要だ。改正案では一部の事業を他の森林組合などに継承できるようにする「吸収分割の制度」や、新たな連合会を設置して事業を継承できる「新設分割の制度」を設ける。小規模な組合が多様な連携で林産物の輸出など事業拡大を目指すという方向性は一定に理解できるが、リスクも伴う。組合員の理解が不可欠だ。政府は、所在が不明な森林所有者に代わって森林組合が管理できるようにしたり、国有林の樹木を採取できる権利を林業経営者に与えたりする法制度を整備し、本格的な利用期に備えている。また地球温暖化防止や国土保全、水の涵養(かんよう)といった森林の公益的な機能を維持するため、森林環境税を財源にした森林の管理制度を創設し、課税に先行して自治体への資金の譲与を開始した。森林管理の中心的な担い手として、森林組合の役割は一層重要となる。国民の期待に応えられるよう、森林組合改革への一層の取り組みが期待される。 *3-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/594829/ (西日本新聞社説 2020/3/25) 森友学園問題 なぜ再調査をしないのか 決裁文書の改ざんという前代未聞の不祥事は一体、誰が何のために引き起こしたのか。疑惑の真相解明に向けた新たな契機としなければならない。学校法人「森友学園」の国有地売却問題で財務省近畿財務局の担当職員だった赤木俊夫さんが、同省理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)元国税庁長官の指示で決裁文書の改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、遺族が国と佐川氏に損害賠償を求めて提訴した。遺族は赤木さんの手記や遺書も公表した。この問題が発覚したのは2017年2月だ。安倍晋三首相や昭恵夫人の関与も取り沙汰され、首相は同17日の衆院予算委員会で「私や妻が関わっていれば、首相も国会議員も辞める」と断言していた。手記によれば、近畿財務局の上司から赤木さんに初めて改ざんの指示があったのは、この首相答弁の9日後だった。赤木さんは「全て佐川局長の指示です。学園に厚遇したと受け取られる疑いの箇所は全て修正するよう指示があったと聞きました」としている。手記は関係者が実名で記され、日時や会話のやりとりなど具体的な情報や動きが詳述されている。改ざんに手を染めることへの抵抗と苦悩とともに「財務省が真実に反する虚偽の答弁を貫いていることが最大の原因」「うそにうそを塗り重ねるという、通常ではあり得ない対応」と所属組織を告発している。何より驚かされるのは、こうした遺書や手記を突き付けられても、首相や麻生太郎財務相が「再調査の必要はない」と開き直っていることだ。その論拠は財務省が18年6月に公表した調査報告書と「齟齬(そご)がない」「新事実がない」からだという。財務省の報告書は理財局長だった佐川氏が「方向性を決定づけた」としてはいる。しかし、具体的な指示や動機、背景には踏み込んでいない。いわば核心部分の曖昧さは麻生財務相が当時、いみじくも「それが分かれば苦労しない」と述懐した通りだ。財務省の一局長だけの判断で国会と国民を欺く決裁文書改ざんが可能なのか。そんな疑問も改めて湧く。そもそも財務省の調査は内部調査にすぎず、身内による聞き取りの限界が指摘されていた。ここは第三者機関で再調査するのが当然ではないか。国会にも注文したい。立法府もまんまと財務省に「だまされた」問題である。与野党の別なく、国政調査権を駆使して政府と財務省の姿勢をただすべきだ。「刑事訴追の恐れがある」として証人喚問で肝心な部分の証言を拒んだ佐川氏の再喚問が必要なのは言うまでもない。 *3-5:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1103589.html (琉球新報社説 2020年4月8日) 辺野古軟弱地盤工事 基地建設ありきを改めよ また計画のずさんさが露呈した。血税の無駄遣いをこれ以上、許してはならない。新型コロナウイルスの感染拡大で経済が大打撃を受けている中ではなおさらだ。名護市辺野古の新基地建設を巡り、軟弱地盤の改良工事に向けて政府が設置した有識者会議「技術検討会」の説明資料に20カ所のミスが判明した。護岸の安定性に関する数値の間違いに加え、計算結果が正しく反映されていない図表、粘性土の強度を示すグラフにも修正箇所があった。間違ったデータを基に審議していたことは大きな問題だ。軟弱地盤を巡っては、防衛省が3月までに少なくとも6件の護岸・岸壁工事の発注を打ち切っていたことも判明している。うち5件は護岸や岸壁そのものの建設に至っていないにもかかわらず、一部の工事や地質調査などに使われた経費として6件で計約303億円が業者に支出された。軟弱地盤が明らかになった影響で護岸建設を先送りせざるを得ないのが理由だ。この宙に浮いた多額の税金の使途について防衛省は詳細に説明する責任がある。無駄遣いになった経費があれば、極めて重大な問題だ。防衛省は本紙の取材に対し一部事業の最終支払額を3桁も間違え、224億7785万9千円を2億9214万円と説明していた。護岸本体には着工せず浮具や調査などに当初契約の約1・4倍の支出をしていた。税金の使い方が極めて乱暴だ。ここまでミスが続けば、政府の説明の信頼性は完全に失われたと言っていい。新基地建設ありきでなりふり構わず工事を進める姿勢が原因だろう。事業の可否判断や評価の基になるデータがずさんなのだから、事業を中止して再調査や検証をすべきである。辺野古を調査した専門家が防衛省のデータや検討会の審議の在り方を疑問視して質問状を送っても、政府、検討会のいずれも再検討を拒否した。このやり方は、通常の公共工事の進め方から逸脱している。行政をゆがめる手法だ。辺野古の新基地建設を巡っては、軟弱地盤以外にも、米国が設定した飛行場周辺の高さ制限の逸脱や活断層など、建設計画策定後に新しい事実が次々と判明した。政府は総工費を当初の2・7倍に上る9300億円、完成までの期間は12年に試算を変更した。巨額の税金を使ってまで工事を強行するのは、県との裁判を有利に進め、埋め立ては止められないという既成事実をつくるためだろう。基礎的データの修正や計画変更が相次ぐずさんな工事に膨大な血税を投じるのはばかげている。県が設けた専門家会議は辺野古に固執せず在沖米軍基地を県外・国外へ分散することが「近道」と提唱している。新型コロナ対策で多額の財政支出が必要な中、辺野古新基地は最大の無駄遣いと言える。政府は基地建設ありきの強硬姿勢を改め、建設を即刻断念すべきだ。 <10万円の給付とふるさと納税> PS(2020年4月23日追加):*4-1のように、広島県の湯崎知事が、「緊急経済対策として県職員が国から受け取る現金10万円を、県の対策事業の財源に活用したい」という考えを表明して波紋を広げたが、私も、公務員やサラリーマンの多くは、新型コロナ感染防止のための外出自粛や休業要請で所得が減るわけではないため、現金10万円を受け取った上で、困っていない人は自主的に寄付してよいと思う。その際、*4-2-1・*4-2-2のように、農漁業は政府の臨時休校要請で学校給食が停止し、農畜産物の供給が混迷して牛乳・野菜の販売が滞っているため、これらを返礼品にして「ふるさと納税(居住地の自治体でも可)」を募ったらどうか? 公務員の皆さんは、各自治体の政策や返礼品を比べつつ、自分の自治体でさらに工夫できる余地を考えれば、次に活かせると思う。 *4-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042202000275.html (東京新聞 2020年4月22日) <新型コロナ>職員の「10万円」 県財源に 「給付から寄付」念頭 広島知事発言波紋 広島県の湯崎英彦知事は二十一日、緊急経済対策として県職員が国から受け取る現金十万円を、県の対策事業の財源に活用したい考えを表明した。自主的な寄付として募り、新たに設ける基金に積み立てる手法などを念頭に、仕組み作りを急ぐ。国による十万円の給付は全ての国民を対象に五月から始まる見通しで、湯崎知事の突然の発言は波紋を広げている。県職員連合労働組合の大瀬戸啓介中央執行委員長は「驚いている。新型コロナの感染防止で職員は懸命に働き、家庭状況もさまざまだ。一律の対応を求められるのかなどを注意深く見守る」と話した。湯崎知事は休業要請の協力金について発表した記者会見で、県職員が受け取る十万円の扱いについて言及した。協力金や他の対策に多額の費用がかかるとの見通しを説明。「必要な財源が圧倒的に足りない。捻出する時に、今回(国から)給付される十万円を活用することで、聖域なく検討したい」と強調した。具体的な仕組みについては「まさに検討しなければならない」と述べ、制度設計を急ぐとした。県職員が受け取った十万円を積み立てる基金を新たに創設し、事業費に充てる方策かという問いには「そういうイメージだ」と応じた。県によると、知事が任命権を持つ県職員は四千四百五十一人(四月一日時点)。全職員から十万円を集めると、四億四千五百万円余りとなる。 *4-2-1:https://www.agrinews.co.jp/p50200.html (日本農業新聞 2020年3月5日) 学校給食停止 産地、業者の救済不可欠 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けた政府の臨時休校要請で学校給食が停止し、農畜産物の供給が混迷している。牛乳や野菜の販売でキャンセルが相次ぐ。このままでは産地や関連事業者の売り上げ減少は必至。政府の支援が欠かせない。春休みを前に学校給食は例年より2週間早く停止した。影響が大きいのは給食向け牛乳(学乳)だ。国内の飲用向け生乳生産量(年間約400万トン)の1割近くを占める。仕向け量が多い関東では10万トンを学乳に供給するが、2週間で7500トンもの生乳が行き先を失う恐れがある。指定団体には、メーカーから取引休止の連絡が相次ぐ。北海道から都府県への生乳移送もキャンセルが発生している。乳業業界は、加工原料乳に振り向けようと対応に追われる。しかし、乳製品工場は人員の確保が難しく、処理能力にも限りがある。観光客の大幅落ち込みが響き、土産用の加工品の需要が低下している。酪農家は影響の長期化を不安視する。文部科学省によると、学校給食の1人1食当たりの食品別摂取量(2017年度)は、牛乳が200グラムで最多。野菜類が91グラムと続き、米や果実など幅広く供給している。全国学校給食会連合会によると、給食のメニューや調達する食材は1カ月前に決めているところが多く、影響は広がる見通しだ。JA東京むさし小平支店は、地元の小学校や中学校の学校給食センターに食材を提供してきたが、3月分の野菜などの契約4500キロが全てキャンセルとなった。食材を供給する他のJAからは「学校給食は安定した単価で買い取ってもらっていた」と影響を懸念する。給食向け食材に占める国産割合は76%、地元食材に限っても26%に及ぶ。農畜産物の重要な販売先で、産地は安定した取引が見込める。給食は児童や生徒が国産食材の魅力に触れる。食育の観点からも重要だ。新型コロナ問題で農畜産物の売り先がなくなり、取引価格の低下や廃棄する事態になれば、給食を支える産地や関連事業者にとって大きな痛手となる。政府の支援が求められる。萩生田光一文科相は「関係省庁と連携し、事例に応じて具体的な対応を検討していく」と発言。生乳を加工原料乳に仕向けると牛乳より販売価格が安くなるが、江藤拓農相は「(減収分は)何らかの手だてをしたい」と支援に前向きな姿勢を示した。産地や業者が今後も事業を継続できるよう、政府は早急に救済の具体策を示すべきだ。一斉休校で子どものいる家庭では自宅で過ごす時間が長くなる。給食や外食の機会が減った分、家庭での消費が高まっている。行き先を失った農畜産物の廃棄は何としても避けたい。農水省はホームページで牛乳や牛肉、野菜、切り花といった農畜産物の家庭での消費を呼び掛けている。窮状にある産地を応援する輪を広げていこう。 *4-2-2:https://www.agrinews.co.jp/p50599.html (日本農業新聞 2020年4月21日) [新型コロナ] 緊急事態宣言で需給緩和 生乳 家庭消費拡大を メーカーに支援策 農水省 農水省は20日、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた緊急事態宣言に伴い、業務用の牛乳乳製品需要が減退したことで、「生乳需給が大幅な緩和局面に入った」と厳しい認識を示した。産地で生乳が増産傾向となる一方、全国的な一斉休校に伴い需要の低迷が続く。「家庭用消費の一層の拡大を図ってほしい」と訴え、バターやチーズの増産で需給調整に協力する乳業メーカーへの支援策も示した。同省は同日に臨時の記者会見を開いた。乳業メーカーからの聞き取りを基に、生クリームなど業務用の牛乳乳製品の落ち込み分を算出すると、3月は2割減、緊急事態宣言発令後の4月は5~7割の減少を見込んだ。乳製品を主に作る北海道は、4月だけで生乳換算で7~9万トンの業務用需要がなくなるとした。同省は6月中旬にかけての需給調整は予断を許さないとの認識を示す。在庫が潤沢な脱脂粉乳へは、生乳から仕向けられる量に限界があるとする。できる限り家庭内で牛乳・乳製品の消費を増やし、行き場を失う生乳の発生を未然に防ぐことを目標に掲げた。具体的には、18歳未満の子どもが週1回コップ1杯分(200ミリリットル)牛乳を飲む量を増やすことで、学校給食の1週間分(9500トン)の約4割に相当する生乳が消費されると試算。インターネット交流サイト(SNS)やホームページなどで、「もうあと1杯、もうあと1本飲んでもらいたい」と、家庭での購入を促す考え。合わせて、チーズやバター、全粉乳などの製造を増加することで、需給調整に協力するメーカーには19億円の予算を措置し、生乳1キロ当たり数円の支援を行うと表明。「事業の具体的な要綱については、近日中に明らかにする」(牛乳乳製品課)としている。 <日本の製造業と医療> PS(2020年4月24日追加):*5-1-1のように、埼玉県の50代と70代の男性が自宅待機中に容体悪化で死亡する事例が発生したが、そもそも厚労省が作った“軽症者”の定義がおかしく、急性疾患である感染症に自宅療養を優先するという判断も変だったのである。本来は、学校閉鎖した3月上旬には、医師・看護師が常駐するホテルを準備して速やかに検査・治療・療養を行う体制にすべきだったし、それは可能だった筈だ。にもかかわらず、死人を出すまで動かないのが日本の行政の怠慢で、それに加えて「子育ての関係で自宅療養を選択せざるを得ない人」というのは、家事や子どもの世話が外出を伴う重労働であることを考えれば、厚労省の言う“軽症”の感染症を抱えた人は不可能なのである。 このような中、*5-1-2のように、米国NY州で無差別サンプリングによる抗体検査を実施した結果、陽性が約14%で、州全体で26万3000人確認されている感染者数は実際にはその10倍の約270万人となり、大都市のニューヨーク市では21.2%が陽性だそうだ。日本は、未だに「抗体検査の信頼性が100%ではないので・・」などという馬鹿なことを言っている人がいるが、何もわからないよりは多少の誤差があっても概要がわかった方がずっとましなのである。また、*5-1-3のように、英オックスフォード大学の研究チームが、2020年4月23日、新型コロナウイルスのワクチン候補を使った臨床試験を開始し、世界中では少なくとも5例の治験が行われており、ドイツも、2020年4月22日、ビオンテックが開発する新型コロナワクチンの治験を認可したそうだ。日本では、また厚労省が何とかかんとか言って、新型コロナの流行が終息した頃にワクチンが認可されるかもしれないが、それでは意味がなく、*5-2-1のようなことがいつまでも解決されずに続くのだが、これが日本の医療行政の現状なのである。 さらに、*5-2-2・*5-2-3のように、政府が配布を進める布マスクのようなローテク製品でさえ、虫・髪の毛・糸くずの混入やカビの付着など不良品が相次ぐ始末だ。マスクに他の細菌やウイルスがついていれば有害であるため、製造工程の衛生管理は重要だ。そのため、私は送ってきたらまず洗浄・除菌してから使おうと思っていたが、それにしてもこの布マスクは、政府が国内の商社など納入業者5社(興和:54億8000万円、伊藤忠商事:28億5000万円、マツオカコーポレーション:7億6000万円、3社の合計90億9000万円)を通して中国・ベトナム・ミャンマーから調達したのだそうだ。厚労省は、それぞれの調達枚数を明らかせず、「開示すれば、マスクの単価を計算できることになり、今後の調達などに影響を及ぼす恐れがある」などと説明しているそうだが、①マスクさえ外国に発注しなければ作れず ②管理もせずに衛生管理の悪い環境で制作させ ③単価は国民に公表できないほど高い というのが、(あまりに情けないものの)日本の製造業の現状と言わざるを得ないようだ。 ![]() 2020.4.24読売新聞 2020.4.8毎日新聞 2020.4.8東京新聞 (図の説明:左図は、抗体検査によるニューヨーク州の推定新型コロナ感染者数で、予防しにくい階層・人種の感染者割合が高いことがわかる。中央の図は、行動制限をした場合の東京・大阪の予想感染者数推移で、右図は、行動制限を続けた場合の経済への打撃とその対策だ) *5-1-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/515852 (佐賀新聞 2020.4.24) 埼玉死亡受けホテル療養移行急ぐ、自宅待機の患者数把握も 加藤勝信厚生労働相は24日の記者会見で、新型コロナウイルス感染症で自宅療養中の患者数を把握する考えを示した。埼玉県内の50代と70代男性が自宅待機中に容体が悪化して死亡する事例が発生したことを受けての対応。自治体が用意し、看護師らが常駐するホテルや宿泊施設での療養に速やかに切り替える。一方、埼玉県の大野元裕知事は24日、「このような事態に至ったわれわれの責任は重い」と記者団に述べた。基礎疾患のない軽症者や無症状者の自宅待機を認める方針を改め、原則としてホテルでの療養に切り替える。加藤氏は「自宅療養と宿泊療養の内訳について都道府県から情報を得るよう努力したい」と強調。子育ての関係で自宅療養を選択せざるを得ない人もいるとして「患者や家族へのフォローアップをしっかりするよう自治体にお願いしている」と述べた。施設の準備が整わなければ引き続き自宅を容認する。厚労省は今月2日、病床の逼迫による医療崩壊を避けるため、軽症や無症状感染者は宿泊施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県に通知。加藤氏は23日になってホテルや宿泊施設での療養を基本とすると方針転換した。厚労省はマニュアルを作成し、宿泊施設では保健師か看護師が日中は常駐し、医師も電話で対応することや、症状悪化時に適切に対応できるよう搬送手段や受け入れの医療機関と事前に調整するよう求めている。高齢者や妊婦、糖尿病などの基礎疾患がある人などは重症化のリスクが高いため、原則入院となる。 *5-1-2:https://news.biglobe.ne.jp/international/0424/0585979323/tbs_tab.html (TBS 2020.4.24) 米NY州抗体検査で陽性14%、感染者数 公式発表の10倍か アメリカ・ニューヨーク州で、新型コロナウイルスに感染したことがあるかを調べる抗体検査を実施した結果、陽性がおよそ14%だったことがわかりました。感染者の数が公式発表の10倍にのぼる可能性があるということです。ニューヨーク州のクオモ知事は23日、感染の実態を把握するため、アメリカで初めて実施した大規模な抗体検査の結果を発表しました。それによりますと、州内各地でおよそ3000人を無作為で抽出し、抗体検査をしたところ、全体の13.9%が陽性でした。大都市のニューヨーク市では21.2%が陽性で、5人に1人以上が感染していたことになります。州全体ではこれまで26万3000人の感染者が確認されていますが、抗体検査の感染率から、その10倍のおよそ270万人が感染した可能性があるということです。その場合、致死率は低くなり、感染者のおよそ0.5%になるとしています。 *5-1-3:https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2020/04/post-93231.php (Newsweek 2020年4月24日) オックスフォード大、新型コロナウイルスのワクチン治験開始 英オックスフォード大学の研究チームが23日、新型コロナウイルスのワクチン候補を使った臨床試験を開始した。ワクチンの有効性や副作用の有無を調べる。新型コロナワクチンを巡っては世界中で100種程度の候補が開発中で、少なくとも5例の治験が行われている。ドイツ当局は22日、バイオ医薬ベンチャーのビオンテックが開発する新型コロナワクチンの治験を認可した。[ロイター] *5-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200423&ng=DGKKZO58359930S0A420C2MM8000 (日経新聞 2020.4.23) 綱渡りの中小支援、33都道府県が協力金、資金難なお深刻 新型コロナウイルスの感染拡大で中小企業の資金繰り不安が増すなか、33の都道府県が休業協力金を給付することが分かった。先行する東京都は最大100万円の給付金の受け付けを22日に始めたが、関係書類をそろえるなどの手続きは煩雑で、支給まで2週間かかる。緊急事態宣言が5月7日以降も続いた場合、都が確保した960億円の予算は不足しそうだ。経済の土台をなす中小支援は綱渡りの状況だ。日本経済新聞が22日時点の状況を調べたところ、高知や沖縄など37都道府県が感染拡大を防ぐため休業要請を決めた。このうち33都道府県が要請に応じた事業者への協力金など支援策を用意する。先駆け事例となるのが都で、休業や時短営業の要請に応じた事業所や店舗に協力金を給付する。支給額は1店舗なら50万円、複数店舗なら100万円だ。この日は受け付け開始の午後3時以降、130回線ある都の問い合わせ用電話がひっきりなしに鳴り続けた。事業者が気にするのはそろえるべき書面だ。所定の申請書のほか、都が休業要請した11日以前に営業していたことを示す書類、営業に必要な免許や許可を得ていることが分かる書類などが必要だ。都は税理士や公認会計士などの専門家による事前の書面審査を奨励し、チェックが無ければ「支給まで時間を要する場合がある」とした。台東区の焼肉店経営者は22日にすぐ協力金を申請しようと準備していたが、専門家が見つからず断念。後日、税理士に相談したうえで郵送で申請することにした。この経営者は「個人で申請するのは難しい」と話す。デジタル対応の壁もある。都内でバーを営む女性経営者は22日、協力金の申請書類一式を、知り合いの税理士に送った。申請には「休業の状況が確認できる書類」が必要。店舗のホームページがあれば休業を告知する画面を印刷するだけで済むが、パソコンとは無縁だ。休業日を手書きした張り紙を急ごしらえし店舗のドアに貼り付けて写真を撮った。給付を受けてもビジネスが成り立つかは事業者による。都内に和食居酒屋など2店舗を持つ経営者は「100万円では家賃や人件費をまかなえない」と話す。4月に新店舗を開く予定だったため、3店舗分の費用がかかっている。今は夜間は店を閉めているが、固定費だけで毎月300万円以上かかるという。支給開始が5月7日以降となることも「翌週の資金繰りすら危うい中小には厳しい」(都内の弁護士)との指摘がある。申請できるのは都の休業要請に従う事業者だが、線引きが難しい場合もある。食料品の専門店を百貨店に展開している都内の中小企業は全店舗の7割近くとなる20店弱を休業中。一部は都ではなく百貨店の要請で休業しており「対象になるのかわからず困っている」(同社社長)。13万事業者の申請を念頭に960億円の予算を確保した協力金だが、緊急事態宣言を政府が延長した場合、都の休業要請も延びる見通し。事業者の資金繰り負担は増え、都幹部も「2回目の給付も想定しなければならない」と話す。日本の中小企業数は2016年時点で約358万社あり、大企業も含めた企業数全体の99%を占める。働く人は約3220万人と、大企業(約1460万人)が抱える雇用の2倍超だ。資金支援は財政力がある都が先行したが、その後に政府が総額1兆円の地方創生臨時交付金を協力金に充てることを決定した。二の足を踏んでいた自治体も一気に休業要請と協力金の創設に動き出したが、期間が長引けば財政負担も高まる。経済の痛みを最小限にとどめるためにも、実効性ある感染対策が不可欠だ。 *5-2-2:https://mainichi.jp/articles/20200421/k00/00m/040/185000c (毎日新聞 2020年4月21日) 虫混入、カビ付着…全戸配布用の布マスクでも不良品 政府、公表せず 新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、政府が配布を進める布マスクに、虫が混入するなど不良品が相次いで確認されている。厚生労働省は18日、妊婦向けの布マスクのうち1901件について不良品の事例を発表し、21日に妊婦向けマスクの配布中止を決定。しかし、政府のマスク等物資対策班の関係者によると、18日時点で全戸配布用に準備していたマスクでも不良品が発見されており、これについては公表していない。政府の衛生面での認識が問われるとともに、全戸配布のスケジュールにも影響しそうだ。布マスクは政府が一括して購入し、全国5000万世帯に2枚ずつ配布する計画で、約466億円が投じられる。先月下旬から、妊婦向けに50万枚▽高齢者の介護・福祉施設向けに1930万枚▽小中高校に800万枚――を優先的に配布。続いて感染者の多い東京都内などで全戸配布が始まっている。厚労省は18日、妊婦向けの布マスクに関して「変色している」「髪の毛が混入していた」「異臭がする」などの報告が相次ぎ、80市町村で1901件の報告があったと発表。大阪府内の自治体では、ガーゼの黄ばみや変色、ゴミの混入も確認。発表を受け、ツイッター上では「健康被害はないのか」「安心して使えない」などの不安の声が広がった。しかし、政府の対策班に配られた内部文書によると、18日時点で妊婦向け以外の全戸配布用に包装を始めた200万枚のうちでも、虫や髪の毛、糸くずの混入、カビの付着など200件の異物混入などの問題事例を確認。これについては公表しなかった。マスク配布を担当する厚労省経済課は、妊婦向け以外の不良品を非公表とした理由について「回答できない」とし、全戸向けのマスク配布については「現時点で中止は検討していない」としている。 × × 相次ぐ異物混入などの発覚を受け、政府は各都道府県に注意喚起の通達を出し、一部の業者が製作したマスクについては全品回収を始めた。マスクの製造企業名などは公表されていないが、政府関係者によると、国内の商社など納入業者5社が中国やベトナム、ミャンマーから調達している。(以下、略) *5-2-3:https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3961647.html (TBSNews 2020年4月22日) 政府配布の布マスク、3社から90億円あまり 新型コロナウイルス対策で全世帯に配布する布マスクについて、政府が大手商社など3社から、合わせて90億9000万円で調達していたことが明らかになりました。これは、社民党の福島みずほ党首が厚生労働省からの回答としてツイッターで明らかにしたもので、興和が54億8000万円、伊藤忠商事が28億5000万円、マツオカコーポレーションが7億6000万円でした。3社合わせて90億9000万円ですが、政府は、布マスクの費用を総額で466億円と説明しており、福島氏は差額についてさらに問い合わせるとしています。また厚生労働省は、それぞれの調達枚数も明らかにしておらず、「開示した場合、マスクの単価を計算できることとなり、今後の調達などに影響を及ぼす恐れがある」などと説明しています。布マスクをめぐっては、全国の妊婦のために配布した布マスクに汚れなどが相次いで見つかっていますが、厚生労働省は共産党の小池書記局長の問い合わせに対して、妊婦向けマスクの製造メーカーはこれら3社を含む4社であることを明らかにしています。 <日本の産業と農家の収益性> PS(2020年4月25、26、27日追加):*6-1に記載されている「①食料を供給し暮らしを支えているのは農業」「②大都市への人口集中の危険性を露呈」「③事態が収束すれば、農山村への田園回帰の流れはますます広がる」「④テレワークが広がり、分散型社会の必要性とその可能性を立証している」「⑤効率性・採算性による医療再編の動きを看過してはならない」「⑥キーワードは持続可能性」のうち、①は漁業も入るものの事実だ。また、大都市で生まれ育って並ぶこと自体に意義を感じるようになった集団を見ると、他にすることはないのかと思う。しかし、こういう人が多数派を占める②の状況は問題であるため、③④は必ず進めるべきだ。また、分散しなければ、災害時も考慮した⑥の持続可能性は、視野に入らない。そのインフラとなる⑤の医療再編は、本物の効率性・採算性は考えるべきだが、セキュリティーまで考慮したものでなければならないし、病気(特に急性疾患)への対応は時間との勝負なのである。 このような中、*6-2のように、日米貿易交渉は食料自給率を無視し、日本の産業は自動車と自動車部品さえあればよいかのような交渉をしているが、これもおかしい。今後、何を売って、どこから、どういう品質の食料を買うつもりなのか? “食料生産力”さえあれば、日頃から生産していなくても高品質のものを生産できると考えるのは、マスクの事例を見ればわかるとおり、甘すぎて馬鹿げた幻想にすぎない。 さらに、*6-3のように、国の登録品種から農家が「種取り・株分け」することを禁ずる改正種苗法案が国会の審議に入り、農家の自家増殖が一律禁止されるそうで、これは優良なブドウやイチゴの登録品種が海外に持ち出されにくくするためとされているが、優良品種の流出防止なら海外でも品種登録すればよく、海外で品種登録が認められない程度の“新”品種なら、日本の農家が自家増殖するのも自由であるべきだ。また、主要農作物種子法を「民間の開発意欲を阻害する」という理由で廃止し、国や都道府県の試験研究機関が保有する種苗に関する知見を海外企業も含む民間企業へ提供するよう求めているのは、これまで金を払って作ってきた国民の財産を無償で提供するもので、特許権の価値を無視したものである。 なお、*7-1のように、北海道は、4月23日、「北海道短期おしごと情報サイト」を立ち上げ、農家などの人手確保に悩む職種が求人情報を掲示し、休業等で短期的な仕事を求める人を結び付けて人手不足解消を支援するそうだ。外国人技能実習生が入国できない状況で、運送業・小売業も人手不足に拍車が掛かっているため、よいアイデアだと思う。また、牛乳や乳製品等の需給緩和については、牛乳・卵は免疫強化にも役立つので、2000ml入りの牛乳パックを作ったり、冷凍できる乳製品を作ったりするのがよいと思う。 また、農業の人手不足については、*7-2のように、鹿児島県鹿屋市の堀之内さんが、梅園地を中国人の岳淑芬さん(31歳、女性)と劉亜男さん(30歳、女性)に託す準備を進めているそうだ。2人は事務所の電話に滑らかな日本語で応えたり、パソコンに向かって売上・仕入のデータを入力できたり、現場で農作業の指示を出したり手本を見せたりもでき、やる気と誠意と能力があるという意味で人柄がよいのだろう。 農水省は、*7-3のように、新型コロナ感染拡大の影響で外国人技能実習生らが来日できずに人材確保が難航している農家を支援するため、代替人材を雇って労賃が予定を上回った場合の掛かり増し分を1時間500円を上限として、交通費、宿泊費、保険料とともに補助の対象とするそうだ。技能実習生の代わりに学生やJA職員らが援農する際の費用も支援し、これは農業高校・農業大学校・JAなどを対象とするそうだが、私は、大学生(特に農学・生物学・工学・栄養学専攻など)も良い経験になるため、入れた方がよいと思う。 ![]() (図の説明:左から、米作、ブドウ、りんご。田畑で並んでいる人などはおらず、農業はいつも人手不足。コミュニケーションは土や植物と行い、自然は美しい) ![]() (図の説明:上は、ふるさとチョイスで牛乳と卵から検索した写真。1番左はオホーツクの牛乳、左から2番目は高千穂牧場の乳製品、右から2番目はダチョウの卵を使ったアイスクリーム、1番右は抗生物質・薬品不使用の卵が80個も入った箱で、その豊かさに笑顔になった) *6-1:https://www.agrinews.co.jp/p50538.html (日本農業新聞 2020年4月14日) “国難”の先を見る 持続社会へ教訓学ぼう 国難を乗り切り、どんな社会を切り開くのか。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。社会のもろさが表明化し、恐怖と緊張、閉塞(へいそく)感が覆う。危機の中で、食料を供給し暮らしを支えているのが農業だ。大切さが改めて認識され始めた。“コロナ後”を見据え、農を基に持続可能な社会を考えたい。新型コロナウィルスの感染者の急増を受けて政府は、7都府県に対し一定の私権の制限が可能となる緊急事態宣言を出した。対象地域だけでなく全国の住民が不安な日々を余儀なくされ、外出自粛や入国制限などで、飲食店や観光を中心に地域経済は深刻な打撃を受けている。政府は万全の対策をスピード感を持って行うべきだ。コロナ禍から教訓を学び収束後の社会を展望することが、考えや行動、働き方を変え危機を乗り切ることにつながる。キーワードは持続可能性だ。感染者は東京都や大阪府などで急増。大都市への人口集中の危険性を露呈した。食品の買いだめも発生し、食料確保への都市住民の不安感も表面化。そんな今だからこそ、“ポストコロナ”を見つめる力を持ちたい。事態が収束すれば、農山村への田園回帰の流れはますます広がるだろう。今は行き来が難しいが、都市と農村の連帯が重要となってくる。さらに、多くの企業が在宅勤務に移行し、遠隔でも仕事ができるテレワークが広がっている。分散型社会の必要性と、それが可能であることを立証しているといえる。働く場所や時間を柔軟に選べるようにすることは働き方改革と、ライフスタイルや価値観に合った生き方ができる社会づくりにつながる。企業にとってもリスクを軽減できるという価値がある。「今こそ農業の底力を示す時だ」。こう意気込む農家がいる。農の価値や食料自給、流通の重要性を人々が感じている。お金があるから肉や野菜、米が食べられるのではない。土と水が、豊かな農村があり、技を持つ農家と、集出荷や物流、加工、販売に携わる人がいるからこそ、食べ物が手に入る。そして医療の大切さ。厚生労働省は公的医療機関の再編を促しているが、命に直結する問題である。効率性や採算性による再編の動きを看過してはならないと言える。感染源を巡る差別や、失業者の増加や賃金低下による所得格差の拡大などで、今後さらに社会の分断が深まる恐れがある。災害時に必要なのは助け合いだ。休校になった子どもに弁当が配られたり、需要が減った農畜産物の“応援消費”が活発になったりしている。分散型社会や農業・農村、流通、医療、助け合いの大切さなどコロナ禍の教訓はいくつもある。これらは暮らしの安全保障の基盤でもある。自制心と冷静さで外出を自粛しつつ、未来に目を向け、歩み始めよう。 *6-2:https://www.agrinews.co.jp/p50606.html (日本農業新聞 2020年4月22日) [新型コロナ] 日米協定 新型コロナ拡大が波及 予備協議先送り 日米貿易協定の追加交渉に向けた両国の予備協議の行方が不透明な状況となってきた。4月末までに協議を整える方針だったが、両国で新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化し、協議が進展していないことなどが影響している。米国大統領選も本格化し、追加交渉を巡る動きは先送りの様相が濃くなってきた。ただ、米国は依然として追加交渉に対する意欲を持っており、予断を許さない状況は続く。日米両首脳が昨年9月に署名した日米共同声明では、協定発効から4カ月以内に「関税や他の貿易上の制約、サービス貿易や投資に係る障壁、その他の課題」の中から交渉範囲を決める協議を終える方針を示している。このうち、関税について日本政府は「自動車、自動車部品以外は想定をしていない」(交渉を担った茂木敏充外相)としているが、関税交渉が始まれば双方の攻めと守りの品目の駆け引きは必至。農業分野が除外されるかは不透明だ。両政府は協議を「複数回行っている」(同)。ただ、交渉関係者によると日程調整などにとどまり、交渉範囲を具体化させる協議には至っていないとみられる。正式な予備協議は電話での対応も想定している。新型コロナも協議に影響を与えつつある。日本では感染者が1万人を超えたが、米国は世界で最も深刻で感染者は70万人、死者は4万人を超えた。首都ワシントンの外出制限で、交渉を担う米通商代表部(USTR)は担当者が出勤できないといい、在米日本大使館では感染者も出ている。日本政府関係者は「この1、2カ月は接触すらできていないのではないか」としている。交渉範囲を決める予備協議が進んだとしても、実際の交渉は、米国大統領選以降との見方が強い。既に選挙戦は本格化。トランプ大統領と、バイデン前副大統領の一騎打ちの構図が固まり、投開票まで半年余りとなっている。とはいえ、米政府は追加交渉への意欲は失っていない。3月31日に公表した外国貿易障壁報告書では日米協定を成果として誇示した一方、「全ての農産品をカバーしていない」と指摘。追加交渉への意欲を表明した。日本の米や豚肉の輸入制度などにも改めて懸念を示している。 *6-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020042502000153.html (東京新聞社説 2020年4月25日) 種苗法改正 農業崩壊にならないか 国の登録品種から農家が種取りや株分けをすることを禁ずる改正種苗法案が、大型連休明けにも国会の審議に入る。国民の命を育む食料の問題だ。コロナ禍のどさくさ紛れの通過は、許されない。現行の種苗法により、農産物の新しい品種を生み出した人や企業は、国に品種登録をすれば、「育成者権」が認められ、著作権同様、保護される。ただし、農家が種取りや株分けをしながら繰り返し作物を育てる自家増殖は、「農民の権利」として例外的に容認されてきた。それを一律禁止にするのが「改正」の趣旨である。原則容認から百八十度の大転換だ。優良なブドウやイチゴの登録品種が、海外に持ち出されにくくするためだ、と農林水産省は主張する。果たして有効な手段だろうか。もとより現政権は、農業に市場原理を持ち込むことに熱心だ。米や麦などの優良品種の作出を都道府県に義務付けた主要農作物種子法は一昨年、「民間の開発意欲を阻害する」という理由で廃止。軌を一にして農業競争力強化支援法が施行され、国や都道府県の試験研究機関が保有する種苗に関する知見を、海外企業も含む民間企業へ提供するよう求めている。そこへ追い打ちをかけるのが、種苗法の改正だ。対象となる登録品種は、今のところ国内で売られている種子の5%にすぎず、農家への影響は限定的だと農水省は言う。だが、そんなことはない。すでに種子法廃止などにより、公共種子の開発が後退し、民間種子の台頭が進んでいる。その上、自家増殖が禁止になれば、農家は許諾料を支払うか、ゲノム編集品種を含む民間の高価な種を毎年、購入せざるを得なくなる。死活問題だ。小農の離農は進み、田畑は荒れる。自給率のさらなる低下に拍車をかけることになるだろう。在来種だと思って育てていたものが実は登録品種だったというのも、よくあることだ。在来種を育てる農家は絶えて、農産物の多様性は失われ、消費者は選択肢を奪われる。そもそも、優良品種の流出防止なら、海外でも品種登録をした方が有効なのではないか。何のための「改正」なのか。種子法は、衆参合わせてわずか十二時間の審議で廃止になった。種苗法改正も国民の命をつなぐ食料供給の根幹にかかわる問題だ。今度こそ、十二分に議論を尽くしてもらいたい。 *7-1:https://www.agrinews.co.jp/p50617.html (日本農業新聞 2020年4月24日) 北海道がコロナ対策 農家に働き手仲介 サイトで休業者に 北海道は23日、農家に働き手を仲介するインターネットサイトを立ち上げた。農業など人手確保に悩む職種が求人情報を掲示し、ホテルや飲食店の休業などで短期的な仕事を求める人を結び付ける仕組み。新型コロナウイルス感染拡大の影響で深刻化している農家の人手不足解消を支援する。 ●SNSで需要喚起 立ち上げたのは「北海道短期おしごと情報サイト」。道が同日発表した新型コロナの感染拡大に伴う新たな経済対策の柱の一つとなる。道内では、観光客の激減で多くのホテルや飲食店などが従業員の雇用を続けるのが厳しい状況にある。一方、農業は定植などの繁忙期にもかかわらず、外国人技能実習生が入国できない産地があるなど、運送業や小売業などとともに人手不足に拍車が掛かっている。サイトでは人手不足に悩む道内の農家や企業などが、募集する仕事の場所や内容、時給、連絡先といった情報を登録する。登録するのは農業や運送業、小売業などを想定している。募集対象は6カ月以内の短期のアルバイト。情報は誰でも確認ができ、求人者に連絡を取り調整する。道が同日発表した新たな経済対策には、道産食品の消費拡大策も盛り込まれた。牛乳・乳製品については、小・中学校の臨時休校などで生乳需給が緩和し、乳製品の保管が限界に達してきている状況だ。そこで「SОS! 牛乳チャレンジ」と題した需要の喚起策に取り組む。牛乳を飲んでいる姿をインターネット交流サイト(SNS)に投稿し、フォロワーに牛乳の消費を呼び掛けてもらうという試み。牛乳が苦手な場合は、飲むヨーグルトやチーズでもよいという。同日開いた臨時の記者会見で鈴木直道知事は「私も近いうちに牛乳をがぶがぶ飲んで投稿したい」と話し、積極的な投稿を呼び掛けた。 *7-2:https://www.agrinews.co.jp/p50618.html (日本農業新聞 2020年4月24日) 育てた園地 荒れさせぬ 元技能実習生を後継者に 「大切なのは人柄」 鹿児島県鹿屋市の梅農家 堀之内辰男さん 鹿児島県鹿屋市の堀之内辰男さん(80)は、梅園地を中国人の岳淑芬さん(31)と劉亜男さん(30)に託す準備を進めている。2人は堀之内さんが10年以上前に受け入れた元技能実習生。後継者が見つからず悩んでいた堀之内さんのため、在留資格を取って日本に定住した。堀之内さんは「自分が造った園地を地域に残せる」と安堵(あんど)する。「はい、堀之内農園です」。事務所の電話に滑らかな日本語で応える。パソコンに向かえば売り上げや仕入れデータの入力作業もこなす。営業部長である岳さんの仕事だ。加工部長の劉さんは現場で農作業の指示を出す。日本人には日本語で、中国人実習生には中国語で。剪定(せんてい)などの手本を見せていく。どちらの仕事も以前は堀之内さんだけで担っていた。引退を見据え、2人に仕事を引き継いだ。「まだ危なっかしいところはあるけど、あと1、2年で任せられるかな」。堀之内さんは手応えを感じ、笑みを見せる。2人は2007年、堀之内農園に技能実習生としてやってきた。当時、堀之内さんは漁師をやめて就農したばかり。営農技術は他の農家ほど教えられない。代わりに2人の日本語習得に力を入れた。会話の練習をしたり、日本語検定の問題集を買いそろえたり。日本語学校に通って取得する日本語検定1級の資格が取れるほど、語学力は向上。周囲を驚かせた。当時は技能実習生への不当な扱いが問題になっていた時期。岳さんの同期実習生には逃げ出してしまった人もいる。「自分たちは本当に恵まれていた」。2人は感謝する。中国に帰ってからも堀之内さんと電話で近況を話していた岳さん。70歳を超えた堀之内さんに後継者がおらず、困っていることを知った。岳さんは迷った。通訳や翻訳の仕事に就きたかったからだ。それでも「恩返しをしたい」という気持ちが捨てられなかった。悩んだ末に一緒に研修を受けた劉さんを誘い、日本行きを決めた。二人は留学の在留資格を取り、私立鹿児島国際大学に進学した。国内の大学を卒業していると就労の許可も下りやすい。留学中に仕事をしてもらうことはできないが、堀之内さんは生活支援をしながら卒業を待った。二人が大学を卒業して今年で4年。岳さんは「技術・人文知識・国際業務」と書かれたカードを得意げに掲げる。専門的な知識を持った人だけが得られる在留資格だ。これまでは毎年更新が必要だったが、長く働いている実績から3年に1度で済むようになった。「日本農業の後継者として認めてもらっているようでうれしい」と岳さんは笑う。外国人を後継者にすることに周囲から批判や懸念の声もあった。だが、自分が造った園地を残すために迷わず進んできた。「正義感があって、ちゃんとした人柄なら民族なんて関係ない」。二人の働きぶりに堀之内さんは確信する。 *7-3:https://www.agrinews.co.jp/p50644.html (日本農業新聞 2020年4月27日) コロナ禍 技能実習生が来日不能 代替雇用の農家支援 時給や宿泊・保険…JA・学生援農も 農水省検討 農水省は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で外国人技能実習生らが来日できず、人材確保が難航している農家らの支援に乗り出す。代替人材を雇い、労賃などが当初の予定を上回った場合、掛かり増し分を一定水準で補助する考え。学生やJA職員が農家の援農に出向く場合にかかる経費なども補助対象とする。農家の生産規模の維持につなげる方針だ。来日の見通しが立たない農業関係の技能実習生や特定技能外国人は1900人に上り、人材確保は急務の課題となっている。同省は、2020年度補正予算案に「農業労働力確保緊急支援事業」として46億4600万円を計上。具体的な支援内容を固めた。予定していた技能実習生らが来日できなくなった農家や法人などを対象に、新たに募集するなどして代替人材を雇い入れる場合の掛かり増し経費を補助する。労賃は、当初予定を上回った額に対して、1時間500円を上限に補助する方針。交通費や宿泊費、保険料も補助の対象とする方向で検討している。4月1日までさかのぼって、支援申請できるようにする予定だ。人材募集にかかる経費も支援の対象となる。農家やJAなどが人材マッチングサイトに情報を掲載したり、ちらしを作ったりする際の費用を半額以内で補助する。技能実習生らの代わりに、学生やJA職員らが援農する際の費用も支援する。農業高校や農業大学校、JAなどが対象。実習として作業を手伝ったり、業務として現場に出向いたりする場合の交通費や宿泊費、保険料を実費で補助する。JAが職員に手当を支払った場合は、1日4000円程度を上限に支援する考えだ。一連の支援策の申請窓口は、全国農業会議所となる予定。具体的な申請方法は現在、調整している。詳細は今後、同省ホームページで動画を配信するなどして解説する。 <新型コロナの検査と治療> PS(2020年4月27日追加):*8-1-1のように、新型コロナに感染しているか否かを判断するPCR検査の結果がわかるまでに、4月初旬は1.8日を要したが4月18日時点には7.3日と延び、発症から7日以降に症状が悪化することから結果が分かった時には手遅れになっている。また、その間、陽性と知らずに市中にいる結果、潜在的感染者を増やすのに“貢献(皮肉)”もしている。こう書く理由は、検査の能力不足と言われているが、民間検査会社はPCR検査の能力に余裕がある上、*8-2-1のように、横浜市立大の研究チームが2020年3月9日に抗体を検出する新しい検査法を開発して15~30分で結果が分かるようになっている。さらに、*8-2-2のように、米国のAbbott社が開発した新型コロナの新検査法は、結果が出るまで5分で検査機関への往復も不要だ。また、*8-2-3のように、島津製作所が、2020年4月20日、検査時間を半分にする「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売もしている。 にもかかわらず、厚労省は、*8-1-2のように、2020年3月4日、「検査料の点数の取扱いについて」「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて」などを発出し、2020年3月6日からPCR検査のみを保険適用にしたが、「検査キット原価+防護服原価+検査活動」の合計である診療報酬に13,500円(1350点)、単なる郵送費に4,500円(1800点-1350点=450点)を設定しており、単なる郵送と比較して知識と訓練を要し危険を伴う検査活動に対して低すぎる単価を設定した。さらに、自己負担分や補助金額の処理は付加価値のない複雑さであり、「PCR検査を効率的に行うための会議」で、さらに時間がかかるようにした。つまり、厚労省は、新型コロナが市中に蔓延し始めてもクラスター潰しに専念し、効率的な検査と治療をする気はなかったと言わざるを得ないのだ。 さらに、治療については、*8-3のアビガンが有力候補だが、未だに「申請後の審査の期間を短縮して年内の承認をめざすが、緊急的な対応での特例扱いでどこまで早められるかは未知数」などと、ぼけたことを言っている。アビガンが胎児に奇形が生じる可能性があることについては、卵子は生まれた時から持っているものなので、出産を予定する女性と妊娠中の女性が使わなければよいのであって、その他の人は使ってよい。また、男性の精子は次々と作って捨てているものなので、アビガンを使ってすぐに子づくりをしなければよく、「使い方」は使用上の注意に書いてある筈だ。 このようにして、検査も治療もやろうと思えばできたのにせず、新型コロナを市中に蔓延させ、緊急事態宣言で経済活動を止め、その代償として、*9-1のような25兆円超にものぼる補正予算案を提出して財源を全て国債で賄うことになったのであるため、この責任は屁理屈を付けて国民に押し付けるのではなく、政治と行政で取るべきだ。そのため、解雇と再雇用の約束がセットになっていても失業保険を給付したり、*9-2の雇用調整助成金も失業保険から支払ったりすればよいだろう。 ![]() 2020.4.6 Our World in Date 中日新聞 2020.4.27佐賀新聞 (図の説明:左図のように、人口100万人あたりの日本の新型コロナ検査数は非常に少なく、これでは蔓延するのが当たり前で、真の新型コロナの感染者数も死亡者数も不明だ。また、「医療崩壊を防ぐ」と連呼しつつ、重症者を増やして感染者と医療従事者を犠牲にし、中央の図の緊急事態宣言によって国民に不便を強いた上、経済活動の停止で収入の道を絶った。それに対し、右図のように、国債を原資とした25兆円の経済対策を行うそうだが、政府の失敗の責任を国民への請求書の押し付けで解決する体質は、必ず変えなければならない) *8-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58426540T20C20A4MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200424_A (日経新聞 2020/4/23) 滞るコロナ検査、結果まで1週間 民間委託拡大カギ 新型コロナウイルスに感染しているかどうかを判断するPCR検査の体制が感染者の拡大傾向に追いつけていない。検査の実施が滞っており、発症から陽性が確定するまでの期間が1週間と長期化し始めた。検査の機能不全を背景にした陽性判明の遅れは重症化リスクを高めるほか、潜在的な感染者と他者との接触機会を増やしかねない。医療崩壊を避けながら感染拡大を防ぐためにも、国による民間への検査委託の拡大や簡易検査の後押しが必要だ。日本経済新聞がコンサルティング会社、ジャッグジャパン(東京)が収集した陽性事例のデータを基に分析したところ、発熱やせきなど新型コロナウイルスの症状が出てから検査で陽性が確定するまでの期間は、7日移動平均で4月18日時点が7.3日と4月初旬から1.8日延びた。感染者数の拡大が続き、検査が間に合わずに確定が遅れている可能性がある。厚生労働省は、重症化する人は発症から7日以降に肺炎症状が悪化するとしている。検査体制強化が課題となるなか、能力に余裕がある民間への検体検査の委託拡大が急務となっている。4月中旬に入ってからのPCR検査の実施数は、全国で1日当たり8000件前後が続く。うち民間の検査会社による受託件数は2000件ほどで、残りは国立感染症研究所(東京・新宿)や地方衛生研究所などの公的機関が担っている。民間検査数は2月下旬まではゼロの日もあった。みらかホールディングス(HD)など国内の主要な検査会社の検査能力の合計は1日当たり約4000件と見られており、能力を活用できていない。民間シフトを阻む一因にはスピードよりも実績を重んじる医療界の慣行がうかがえる。各自治体の指定病院は、検査を民間ではなく地方衛生研究所に委ねる傾向が目立つ。「感染症は国が担うものだという意識が強い」(検査会社)。長野では県が優先度に応じて民間か行政かの検査委託先を決める方針だが、こうした調整に乗り出す自治体はまだ少ない。民間が主に担ってきた軽症者の検体検査が増えにくい問題もある。現状では、熱が出て気分が悪いといった程度ではすぐには検査を受けられない。京都大学病院は15日、院内感染予防の視点から「無症状であっても公費でPCR検査を受けられるようにすべきだ」との声明を出した。民間側もPCR装置の調達に苦戦している。世界中で新型コロナの感染拡大が続いており「装置の争奪戦になっている」(国内検査会社)。香港や韓国では簡易キットも駆使した検査の大量実施が進む。日本でも楽天が20日、法人向けに新型コロナウイルスの感染の可能性が分かる自宅でできる検査キットを発売した。ただ日本医師会が22日に「採取の方法が不適切であれば結果は信頼できず混乱を招く」との意見を出すなど、医師を介さない検査は普及に壁がある。安倍晋三首相は6日、PCR検査の1日当たりの能力を2万件に倍増すると表明したが、進捗は遅く政府でも危機感が高まりつつある。「全国で同様の取り組みが広がるよう支援する」。加藤勝信厚労相は23日、東京都新宿区で地域の医師会が設置したPCR検査センターを視察した。検体検査はみらか傘下のエスアールエルに委託する。自民党の塩崎恭久元厚労相は「2月ごろから民間の検査機関を活用すべきだとの声は医療現場などにあった。政府がクラスター(感染者集団)潰しを重視しすぎて検査体制の強化が後手に回った」と指摘している。韓国やイタリアは、当初から大量の検査件数をこなした結果、軽症者が病院に押し寄せて医療キャパシティーがパンクしたという経緯があった。下表は各国の検査数、感染者数、死亡者数の比較だ。見れば分かるが他の国でも検査数と死亡者数はあまり相関性がない。検査対象の絞り込みは、社会全体の感染のフェーズに適した形で行うべきだ。しかし、その際にも検査のメリットとデメリットの冷静な見極めが必要なのは変わりない。「検査用キットや防護具、熟練した臨床検査技師などのリソースは有限で、すぐにそれらを急激に増やすことはできない。医師が病歴や身体所見などの情報から的確に絞り込んだ感染疑いのある人を対象とし、必要な検査を精度と安全性が確保できる環境で十分に行い、精度が担保できない環境での不必要な検査を乱発しないことが、検査が社会全体にもたらすアウトカム(結果)を上げるのには重要だ」と、日本臨床検査医学会名誉会員で日本感染症学会日本環境感染学会の評議員も務める、上尾中央総合病院の熊坂一成臨床検査科科長兼感染制御室室長は指摘する。新型コロナウイルスパンデミックは、日本と世界が持つ検査や健診についての認知のゆがみを浮き彫りにした。私たちは日頃から健診・検査とどう向き合えばいいのか。特集『健康診断のホント』全18回を通じて詳しく見ていこう。 *8-1-2:https://gemmed.ghc-j.com/?p=32688 (GemMed 2020.3.5) 新型コロナウイルス検出のためのPCR検査、3月6日から保険適用―厚労省 目次 ○1 検体の郵送等状況などに応じて、1800点または1350点を算定 ○2 都道府県等から「患者の自己負担分」を公費補助 ○3 「PCR検査を効率的に行うための会議」を設置し、地域で実施可能な検査数等把握を 新型コロナウイルス感染症疑い患者への診断、新型コロナウイルス感染症で入院している患者の退院可能性を判断するための検査(PCR)を3月6日から保険適用し、医師は「保健所の判断」を待たずに検査を実施することが可能とする。本検査は、感染症の発生状況、動向、原因究明のための積極的疫学調査に用いることはできない―。診療報酬上、▼検査所等の検体を郵送する場合には1800点(1万8000円)▼それ以外の場合には1350点(1万3500円)―とするが、「都道府県から医療機関等に検査を委託するもの」と取り扱い、患者の自己負担は求めないこととする―。なお、当面は院内感染防止・検査の精度管理の観点から、▼帰国者・接触者外来▼帰国者・接触者外来と同様の機能を持つと都道府県が認めた医療機関―においてPCR検査を実施することとする―。厚生労働省は3月4日に通知「検査料の点数の取扱いについて」や通知「新型コロナウイルス核酸検出の保険適用に伴う行政検査の取扱いについて」などを発出し、こうした点を明らかにしました。 ●検体の郵送等状況などに応じて、1800点または1350点を算定 中華人民共和国武漢市で発生したとみられる新型コロナウイルスが本邦でも猛威を振るい、各地で患者クラスター(集団感染)が生じ、残念なことに死亡例も発生しています。安倍晋三内閣総理大臣が全国の小学校・中学校・高等学校に休校を要請したり、イベント等の開催自粛要請を行うなど、国民生活にも大きな影響が出ており、政府は2月25日に政府は2月25日に「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」を決定。医療体制に関し、▼患者数増等を見据え、医療機関における病床や人工呼吸器等の確保を進める▼患者数が大幅に増えた状況では、一般医療機関の外来で、診療時間や動線を区分するなどの感染対策を講じた上で、新型コロナウイルス感染疑い患者を受け入れる▼高齢者や 基礎疾患を有する者では、重症化しやすいことを念頭におき、より早期・適切な受診につなげる▼風邪症状がない高齢者や基礎疾患を有する者等に対する継続的な医療・投薬等については、感染防止の観点から、「電話による診療等により処方箋を発行する」など、極力、医療機関を受診しなくてもよい体制を構築する―などの考えを明確化しています。そうした中で今般、新型コロナウイルス感染症を鑑別するための検査が保険適用されるに至ったものです。まず、「新型コロナウイルス感染症が疑われる患者」に対する診断の目的、あるいは「新型コロナウイルス感染症治療で入院している患者」の退院可能性判断の目的のために、患者の▼喀痰▼気道吸引液▼肺胞洗浄液▼咽頭拭い液▼鼻腔吸引液▼鼻腔拭い液―からの検体を用いて、新型コロナウイルス検出の薬事承認・認証を得ている体外診断用医薬品(「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」(国立感染症研究所)に記載、あるいはこれに準じたものに限る)で実施した場合に、次のように診療報酬を算定できます。 (1)検体を、「感染性物質の輸送規則に関するガイダンス 2013-14年版」(国立感染症研究所)記載のカテゴリーB感染性物質の規定に従い、検体を採取した医療機関以外の施設へ輸送して、検査を委託して実施した場合には1800点(D023【微生物核酸同定・定量検査】の12「SARSコロナウイルス核酸検出」(450点)の4回分) →この場合、レセプトの摘要欄に検査実施施設名を記載する (2)それ以外の場合には1350点(同の3回分) 「新型コロナウイルス感染症が疑われる患者」の診断目的で検査を実施した場合には、診断確定までに(1)(2)に沿った点数を1回に限り算定できます。ただし、発症後に「陰性」であったものの、「新型コロナウイルス感染症以外の診断がつかない」場合には、さらに1回、(1)(2)の沿った点数を算定できます。なお「検査が必要と判断した医学的根拠」をレセプトの摘要欄に記載することが必要です。また「新型コロナウイルス感染症治療で入院している患者」の退院可能性判断目的で検査を実施した場合には、1回に限り(1)(2)に沿った点数を算定できます。この場合には検査実施の日付とその結果をレセプトの摘要欄に記載することが求められます。 ●都道府県等から「患者の自己負担分」を公費補助 ところで、医療保険は「公費」「保険料」「患者負担」の3要素を財源としており、患者負担は年齢・収入によって1-3割に設定されています。患者負担徴収には「応益負担」(受益に応じた負担を行う)や「患者に医療保険財源は有限である」ことを知らせるなどの意味合いがあり、医療機関が自己判断で減免することは認められません。しかし、今般、厚労省は「帰国者・接触者外来を設置している医療機関等で実施する『保険適用された検査』は、都道府県から医療機関等に行政検査を委託するもの」と取り扱い、「患者負担を求めない」こととする考えを明確にしました。もっとも、その際には、医療機関で「患者負担分」の収入が減少してしまうため、減少分について「公的な補助」が行われます。 具体的には、次のような流れとなります。 ▽感染症指定医療機関等(▼感染症指定医療機関▼それ以外で都道府県知事の勧告によって新型コロナウイルス感染症患者を入院させる医療機関▼「帰国者・接触者外来を置く医療機関」「帰国者・接触者外来と同様の機能を有すると都道府県が認めた医療機関」―)が、都道府県等と委託契約を結ぶ(契約が3月6日以降となっても、3月6日から適用) ▽都道府県等から医療機関等を経由して、患者に対しPCR検査にかかる患者負担額相当を支給する(患者負担と相殺することが認められ、この場合、事実上「患者負担ゼロ」となる) 【補助金額】 ▽3割負担者 ・6歳(義務教育就学)から70歳まで・70歳以上のうち「現役並み所得」者 上記区分に沿って(1)では5850円、(2)では4500円 ▽2割負担者 ・6歳未満(義務教育就学前)・70-74歳 上記区分に沿って(1)では3900円、(2)では3000円 ▽1割負担者 ・75歳以上 上記区分に沿って(1)では1950円、(2)では1500円 ●「PCR検査を効率的に行うための会議」を設置し、地域で実施可能な検査数等把握を なお厚労省は、検査体制の充実を求めるとともに、検査実施体制の把握・調整等を行うための会議体設置を都道府県等に求めています。検査実施体制の把握・調整等を行うための会議体には、▼医師会▼病院団体▼感染症指定医療機関▼地方衛生研究所▼衛生検査所協会▼帰国者・接触者外来を設置する医療機関―などが参加。「地域でPCR検査実施が可能な機関(医療機関も含む)」「各機関で1日当たり実施可能な検査数」を把握したうえで、地域内で効率的にPCR検査を実施できるような対策・方向を検討し、関係者間で調整することが求められます。例えば「受診者が一部機関に偏ってしまい、検査が実施できない」といった事態を避けることが狙いです。こうした情報は、会議体から都道府県に、都道府県から厚労省に提供され、効率的な検査実施に向けたアドバイスにつなげられます。 *8-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/202003/CK2020031002000245.html (東京新聞 2020年3月10日) <新型コロナ>血清から抗体検出 横浜市立大が新検査法開発 横浜市立大の研究チームは九日、新型コロナウイルス感染の新検査法を開発したと発表した。血液から分離した血清を調べて、ウイルスに対抗して免疫がつくる抗体を検出する仕組み。検査キットが実用化されれば十五~三十分で結果が分かる。外部に委託せず、病院内で検査を行えるようになることが期待される。チームが新検査法を感染が分かっている患者六人に実施したところ、いずれも陽性反応が確認された。感染早期は抗体が見つかりにくいため、発症から七~十日経過した患者に有効という。現在行われているのは、遺伝子から感染を調べるPCR検査で、結果が出るまでに四~六時間程度待つ必要がある。病院から外部に検体を送る手間なども掛かるため、多くの検査を行うのが難しくなっている。 *8-2-2:https://jp.techcrunch.com/2020/03/28/2020-03-27-a-new-fda-authorized-covid-19-test-doesnt-need-a-lab-and-can-produce-results-in-just-5-minutes/ (TC 2020年3月28日) 5分間で陽性がわかるAbbottの新型コロナ検査、米食品医薬局が新たに認可 ヘルスケアテクノロジーのAbbottが開発した新型コロナウイルス(COVID-19)の新検査方法は、結果が出るまでの時間がこれまでで最速で、しかもその場でできるため検査機関への往復が必要がない。現在、全世界的なパンデミックを起こしている新型コロナウイルスを検査するこの方法は、米国のFDA(食品医薬局)から緊急時使用許可を受けており、来週から検査の生産を開始する。1日に5万件を検査できる。このAbbott ID NOW COVID-19という検査は、診断プラットフォームAbbott ID NOWを使用する。検査装置は小さな台所用品ほどのサイズで、陽性の結果は5分間、陰性は15分間以下で出る。臨床の現場や診療所などでも検査できるようになること、また検査とその結果が出るまでの時間が短くなることから、非常に有用な手段になる。他の国で使われてきた高速検査や、結果の精度を確認しないFDAの新しいガイドラインによる高速検査方法と違い、この検査は患者から採取した唾液や粘液を使う分子検査法を利用する。従って患者の体内にあるウイルスのRNAを同定でき、ウイルスの実際の存在を検出できる。これに対して、血液中に抗体を探す方法は、すでにウイルスのいない回復した患者の血液中の抗体も陽性として見つけるかもしれない。この検査の利用可能性に関する良いニュースは、検査に使用するAbbottのハードウェアID NOWが、米国ではすでに臨床現場即時遺伝子検査用として広く普及していることだ。ID NOWは医師のオフィスや救急病院、集中治療室などの医療施設に設置されていることが多い。Abbottによると、この新しい迅速検査と3月18日にFDAの緊急時使用認可を受けた施設での検査と合わせて4月には500万件の検査が可能になるという。検査が、新型コロナウイルスによるパンデミックに対処する上で初期の問題の1つだ。一定人口あたりの検査実施数で、他国に後れをとっていた。そのためウイルスの拡散とそれによる呼吸器疾患を正確に調べることもできなかった。患者は、検査まで待つ日数が長すぎると不満の声をあげており、接触の可能性が高くてそれらしき症状が出ていても、これまでは迅速な対応を受けることができなかった。 *8-2-3:https://www.shimadzu.co.jp/news/press/zfdyn69049lnnr8r.html (SHIMADZU 2020年4月10日) 煩雑な手作業を省き、検査時間を半分に、「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売 島津製作所は、4月20日にかねてより開発を進めていた「新型コロナウイルス検出試薬キット」を発売いたします。当面は国内のみの販売となりますが、5月以降の海外輸出も視野に入れて準備を進めてまいります。現状の遺伝子増幅法(PCR法)による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出では、鼻咽頭拭い液などの試料(検体)からRNAを抽出して精製する煩雑な作業が必要です。これが多数の試料を迅速に検査する際の妨げになってきました。本キットの使用によってRNAの抽出・精製工程が省けるため、検査に要する人手を大幅に削減でき、かつ2時間以上かかっていたPCR検査の全工程を従来の半分である約1時間に短縮できます。96検体用PCR装置を用いて、96検体を検査した場合でも1時間半以内で行えます。また、手作業を行わずに済むため、人為的なミスの防止にもつながります。「新型コロナウイルス検出試薬キット」は、当社独自のAmpdirect技術※1 をベースに国立感染症研究所のマニュアル※2 に沿って開発しました。同技術は「生体試料に含まれるたんぱく質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制できるため、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できる」というものです。島津製作所は、これまでにAmpdirect技術を用いて、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルスなどの病原体検出試薬を開発・販売しており、ここで培った技術を応用して新型コロナウイルス検出試薬の開発を行いました。 ※1 Ampdirectは島津製作所の登録商標です。 ※2 国立感染症研究所 「病原体検出マニュアル 2019-nCoV」(以下略) *8-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200427&ng=DGKKZO58518390W0A420C2NN1000 (日経新聞 2020.4.27) アビガン早期承認 未知数、スピード感で米欧に後れ 厚労省、特例の活用鈍く 新型コロナウイルス感染症の治療薬として期待が高まるアビガンの国内での早期承認が課題となっている。厚生労働省は申請後の審査の期間を短縮して年内の承認をめざすが、緊急的な対応での特例扱いでどこまで早められるかは未知数だ。もともと米欧などに比べ薬を現場で使えるようにするまでの仕組みが硬直的で、スピード感が劣る問題もある。アビガンは富士フイルム富山化学が抗インフルエンザウイルス薬として2014年に製造・販売の承認を得た。新型インフルの流行を念頭にした備蓄用で一般に流通はしていない。今の備蓄は200万人分。新型コロナでは1人の治療にインフルの3倍の量が必要とされ、コロナ患者では約70万人分に相当する。中国でいち早く新型コロナで治療効果を発揮した例がある。日本は現在100人規模の治験を進めており、政府はアビガンの備蓄を20年度中に現在の最大3倍にあたるコロナ患者200万人分に増やす方針だ。富士フイルムは設備の増強で9月には生産量を月30万人分に引き上げる。薬が患者に使えるようになるまでには大きく2つの段階がある。安全性や有効性を臨床試験で確かめる「治験」と、製薬会社の申請を受けて治験の結果を検証・評価する「承認審査」だ。市場投入を急ぐには承認審査の短縮が鍵を握る。インフル薬として承認済みのアビガンも、新型コロナでは投与量が3倍と大幅に異なるため安全性などを改めて確かめる必要がある。6月末までに順調に治験が終われば申請手続きに入る。日本では通常、承認審査に1年かかる。厚労省は13日、医薬品審査で新型コロナの治療薬を最優先に進めると明らかにした。審査期間を最大限短縮する特例の一つが15年に創設した「先駆け審査指定制度」。画期的な薬が開発された場合などに6カ月をメドに短縮できる。18年2月に塩野義製薬の抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」を申請から4カ月程度で承認した。アビガンは先駆けの指定を受けていない。加藤勝信厚労相は21日、新型コロナ治療薬の承認審査を「できる限り短期で対応したい」と述べた。先駆けの場合の6カ月に「こだわるつもりは全くない」とも語った。念頭にあるのは医薬品医療機器法に基づく措置だ。希少疾病用の医薬品など特に必要性が高いと認めた場合に最優先で審査できると定める。厚労省はこの特例を活用する構えだが、どこまで短縮できるかは未知数だ。米欧はスピード感と柔軟性がある。米国は国家の安全に重大な影響がある緊急時は米食品医薬品局(FDA)が未承認の医薬品でも使用を認める仕組みがある。通常は承認までに6カ月程度かかる薬でも短期間で使えるようになる。薬の場合は過去は2カ月程度の例があった。今回は約1カ月とみられ、検査キットなどはさらに早い。豚由来の新型インフルエンザが09年に流行した時はPCR検査キットを6日で許可した。日本との保険制度の違いなどから既存薬も別の病気の治療に使いやすい。米国がこうした対応をとるのは、炭疽(たんそ)菌などバイオテロ対策が念頭にあったためだ。テロや戦争という非常時には安全を最優先する名目で異例の対応も容認されやすい。今回の新型コロナへの対応を巡りFDAは3月に検査キットの申請を受理してから24時間以内で承認した。通常は数週間かかる手続きだという。欧州連合(EU)で医薬品を審査する欧州医薬品庁(EMA)も緊急承認の手続きがある。通常約210日の承認審査を約70日にする制度だ。一般的に医薬品の承認を規制当局に申請する場合、有効性や安全性、臨床試験などのデータをそろえて提出する必要がある。資料一式で10万ページ以上にもなる膨大な量だ。EMAの緊急承認では製薬会社が個々のデータができるとその都度、提出して審査を受ける。同時並行で審査が進むため、審査期間は大幅に短くなる。緊急対応が迫られる日本はアビガンの投与を望む患者らの不満が高まる。承認されない限りは研究目的での利用に限られる。病院が審査会などを開いて投与を認める手続きをとる必要がある。福岡市は国家戦略特区を活用してこの手続きを省略し、医師の判断で軽症段階から投与できるように厚労省に要望した。日本医師会からはアビガンの早期承認を求める声が上がる。政府内では緊急時に機動的に対応しない厚労省への不満は多い。厚労省が早期の承認に慎重な背景には1970~80年代の薬害エイズ事件の苦い記憶がある。アビガンは胎児に奇形が生じる可能性が指摘されており、副作用への目配りは欠かせない。同時に、いまは危機に備えた対応が迫られている。 *9-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/516805 (佐賀新聞 2020.4.27) 25兆円超の補正予算案提出、コロナ対策、30日成立へ 政府は27日、2020年度補正予算案を国会に提出した。新型コロナウイルスの緊急経済対策の実施に向け、歳出総額25兆6914億円を計上。全国民に現金10万円を給付するため、7日に一度決定した予算案を組み替え、8兆8857億円増額した。中小企業の資金繰り支援や医療体制の整備などの費用も計上し、財源は全て国債で賄う。与野党は30日に成立させる審議日程で合意している。補正予算案では、当初計画していた減収世帯への30万円給付を取り下げ、全国民に一律10万円を配る「特別定額給付金」を追加。事務経費を含めて12兆8803億円を計上した。早い自治体では、5月上旬にも支給を始める。中小企業に最大200万円、フリーランスを含む個人事業者に最大100万円を給付する「持続化給付金」には2兆3176億円を充てた。児童手当の受給世帯への子ども1人当たり1万円給付も手当てした。全世帯への布マスク配布や、人工呼吸器やマスクの生産支援を措置。新型コロナに効果が期待される新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の備蓄確保や、ワクチン開発支援も盛り込んだ。自治体向けの臨時交付金1兆円や新型コロナ予備費1兆5千億円に加え、感染終息後の消費喚起策を反映した。民間投資も含めた緊急経済対策の事業規模は、10万円給付の予算を加算し、117兆1千億円となっている。 *9-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/202004/CK2020042702000128.html (東京新聞 2020年4月27日) <コロナ緊急事態>県内のハローワーク 雇用助成金相談が急増 経営者、休業と雇用維持に苦心 新型コロナウイルスの感染拡大による休業要請や営業時間短縮を受け、県内のハローワークでは、休業などに伴う従業員への手当を国が助成する、雇用調整助成金を巡る相談が急増している。政府は二十五日、助成額をより強化することを発表。ただ、経営者側は、事業の存続と従業員の雇用の維持を両立させるため、対応に悩む。働く側からも雇用継続を不安視する相談が増えつつある。「外出自粛で新たな契約や受注が減っている。資金繰りが厳しい」。土浦市の土浦公共職業安定所(ハローワーク土浦)に、相談で訪れた市内の建築・不動産業の女性は、ため息交じりに状況をそう説明する。女性の会社は業務を続けるが、十人ほどの従業員の休みを週二日から四日に増やした。交代制で勤務してもらい、退社時間も一時間早めた。女性は「コロナが終息した後、すぐに通常業務に戻れるよう、従業員を確保しながら、会社の経営も守らなければならないのが難しい」と不安を口にした。ハローワーク土浦では、一日平均で三十件ほどの相談があり、女性のほかにも、経営者らが席で順番を待っていた。相談が増えているのは、中国人観光客の利用が多かったバスなどの観光業者らで、外出自粛が呼び掛けられるようになると、飲食や小売り、旅館業者にも広がっているという。雇用調整助成金は、雇用を守りながら事業を続けてもらう狙いで、新型コロナで休業や事業縮小を余儀なくされた経営者に対し、従業員に支払う休業手当を助成する。四月から六月までの休業などに適用される特例で、中小企業の場合、助成率を従来の三分の二から最大十割(一人一日当たり八千三百三十円を上限)に引き上げる。申請から一~二カ月程度で支給を受けられる。茨城労働局によると、相談は一月に開始し、二月上旬から増え始め、三月末からは急増。三月十日~四月十日の一カ月間で、県内の各ハローワークや労働局で約三千件の相談があった。また、茨城労働局は、求職状況の悪化も見込む。売り上げが落ち込んでいる飲食店のパート従業員などの在職者が、先行きの不安から求職相談するケースが増えている。一方で、求人募集する企業は減ってきているため、今後の有効求人倍率は減少するとみられる。茨城労働局職業安定課の担当者は「雇用情勢へのコロナの影響は、今後出てくるだろう」と話した。 <検査と治療を抑制した論理と新型コロナの蔓延> PS(2020年4月29日追加):ダイヤモンドが、2020年4月13日、*10-1のように、日本がコロナでPCR検査抑制を決めた論理を図解付きで、「①検査を増やせば感染の封じ込めに繋がるわけではない」「②感度・特異度が100%の検査は存在しないため、検査前に有病率の高い集団になるよう絞り込むのが、医師の診察・保健所・帰国者・接触者外来などの相談窓口の経由だ」「③まず医師が診察して発熱などの症状がある人を抽出し、その中から胸部X線画像などで新型コロナを疑わせる所見が確認できた人を抽出し、ここに濃厚接触者や渡航歴から感染の疑いがある人も含めて検査してようやく陽性的中率が高まる」「④検査数をむやみに増やすと、検査が患者にもたらす利点よりエラーの問題の方が大きくなる」「⑤現状で治療法がない新型コロナ肺炎は、検査で陽性となっても治療法が陰性の人と同じ対症療法であるため、偽陽性者を収容することによって重症患者のためのベッドが塞がれる」「⑥新型コロナの確定検査として今のところ唯一のPCR検査にはすご腕技術者が必要で、個人防護具を毎回着替えることも必要」「⑦最も大事なのは重症化を抑えて死亡率を上げないことなので、重症の人を正しく絞り込んで医療キャパシティーを空け、経路調査と接触調査を行ってクラスターを突き止め、クラスターをつぶすために検査するということを主眼に置くべきだ」と説明している。そして、この論理は、メディアで何度も報道されたものと類似しているため、厚労省及び専門家会議の公式見解なのだろう。 しかし、①⑤は、治療法は中国が早くから公表しており、*8-3のような治療薬もあるため、厚労省が屁理屈を言って承認しないのが問題なのである。また、②については、100%の検査は存在しないが、その対応法はあり、医師が必要と判断しても保健所・帰国者・接触者外来などの“相談窓口”が事務的に止めて、*10-3のような無念の孤独死の後に新型コロナ感染が判明しているようなことが問題なのである。より被害の大きいこちらに対する損害賠償は、厚労省(→国民の税金)がするつもりか?さらに、*10-2-4のように、厚労省は埼玉県で50代と70代の男性2人が自宅待機中に容体が悪化して死亡したことを受けて、4月28日、自宅療養中の患者に「表情・外見」「息苦しさ」「意識障害」などの12項目の症状がある場合は自治体に連絡することにしたそうだが、そのような状態になった時に自治体に連絡して時間を浪費することなどできないため、速やかに医師に相談すべきなのだ。さらに、③の要件は、重症の人とクラスターの中に入った無症状の人を混在させており、(もう長くは書かないが)科学的でも効率的でもないのだ。また、④⑤⑥⑦については、厚労省とその肝いりの専門家会議が、*10-2-1・*10-2-2・*10-2-3のように、何カ月も同じ後ろ向きのことを言っている間に、検査方法も*8-2-1、*8-2-2、*8-2-3のように短所を改善した方法が開発され、外国では承認されている。これが、日本の厚労省の問題点なのである。 さらに、*10-4に、「⑧首相は、新型インフルエンザ治療薬『アビガン』の活用を進める方針も示し、1月末から2月の初めに新型コロナウイルスの治療に有望だとの報告があったと言及し、(患者)本人にぜひ希望していただき、医師に『自分は使いたい』と言ってほしい」と語った」「⑨立憲民主党など野党5党は事業者の家賃負担を支援する法案を衆院に共同提出」と書かれている。しかし、⑧については、私のいとこ(45歳、男性)が入院して酸素吸入した後も頭が割れるように痛かったので、ウイルス性髄膜炎なども心配して担当医にアビガンを使ってくれるよう頼んだが、担当医に「重症ではないので、あなたには使えない」と言われた。しかし、アビガンは、軽症時に使わなければ効果が低いため、承認されていないことが問題なのだ。また、⑨の家賃については、そもそも日本企業は、家賃を払うために働いているかと思うほど収益に占める家賃の割合が高く、それが日本国内で仕事をしにくくしている理由の一つだ。にもかかわらず、バブルで収益還元価値よりも高くなりすぎた家賃(不動産価格)を1990年代に苦労して修正したのを、再び上昇させて喜んでいたのが馬鹿というほかないのである。 ![]() 2020.4.6 Our World in Date 2020.4.13ダイヤモンド(*10-1より) (図の説明:左図のように、日本の人口100万人あたりの新型コロナ検査数は著しく低い。また、中央の図のように、ダイヤモンドが、検査を抑制している理由を検査数を増やしても治療薬がないため死亡者は減らないからと説明している。さらに、右図のように、完璧な検査法はなく、新技術も見通し不良だとしている。しかし、このような硬直的な考え方が、新しい検査方法や治療薬の開発・実用化を妨害し、検査数の低下をもたらし、国民の命を無駄に失わせた上、膨大な経済対策を必要にさせているのだ) *10-1:https://diamond.jp/articles/-/234135?page=5 (ダイヤモンド 2020.4.13) 日本がコロナで「PCR検査抑制」を決めたロジックを完全図解 新型コロナウイルスの感染が世界に広がる中、注目を集めているのが“検査”だ。検査を増やせば感染の封じ込めにつながるという意見も多いが、そこには落とし穴がある。特集『健康診断のホント』(全18回)の#1では、日本が「PCR検査抑制」という戦略を採ったロジックを図解で分かりやすくお伝えする。 ●マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏が、楽天の三木谷浩史氏が「検査」に関心 希望する全ての人に新型コロナウイルスの検査を――。このような使命に燃える経営者が増えている。米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏は、自身の福祉財団で、米シアトル周辺地域の住民に向けて、家庭用の新型コロナ検査キットを配布する計画を発表した。自宅で鼻の内側を綿棒で拭って採取した検体をアマゾン配送網で検査センターに送ると、新型コロナへの感染の有無を調べられるという。日本でも「検査キット100万個を無料で配る」と孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長が発言(後に撤回)すれば、楽天の三木谷浩史会長兼社長も「日本は新型コロナ検査が遅れており、このままでは信頼感がなくなる。非対面やドライブスルーで検査し、まず初診はスマートフォンを使った遠隔医療を」と主張している。「検査を増やせば感染の実態が分かり、迅速な隔離と治療につなげられる。もっと検査を」という声は、日本でも世界でも、政治家、企業人、一般人の別を問わず多い。しかし、今回の新型コロナの流行や、感染者がどこにいるか分からない状態を生み出したその元凶の一端は、皮肉なことに「検査」にもあると考えられるのだ。新型コロナウイルスパンデミックは、日本と世界が持つ検査や健診についての認知のゆがみを浮き彫りにした。私たちは日頃から健診・検査とどう向き合えばいいのか。特集『健康診断のホント』全18回を通じて詳しく見ていこう。はなから頼りにされている検査だが、そもそもこの検査とは何か。感染している人を正しく陽性と判定する確率を「感度」、そして感染していない人を正しく陰性と判定する確率を「特異度」と呼ぶ。感度・特異度が100%の検査は存在しない。これが大前提だ。上図を見てほしい。左の20人中10人が感染している(有病率50%)状態で、感度70%、特異度90%の検査をしたとする。感染している10人のうち3人が陰性(偽陰性)、感染していない10人のうち1人が陽性(偽陽性)になる。この検査で陽性となった人の中で実際に感染している人の比率(陽性的中率)は88%だ。一方、検査を受ける人の数が多く有病率が9%と低い右の集団では、陽性的中率は41%に下がってしまった。陽性判定の半分以上が「ぬれぎぬ」を着せられたわけだ。病気の人を探したいのに当たりが半分以下では困る。ならば、検査前に有病率が高い集団になるよう絞り込まなければいけない。現在新型コロナの検査は医師の診察または保健所や帰国者・接触者外来などの相談窓口を経由して行うようになっている。「なかなか検査してくれない」とブーイングも上がるが、まさにこれは検査対象をフィルタリングしているのである。先の図のように、まず医師が診察し、全体の中から発熱などの症状がある人を抽出、さらにその中から胸部X線画像などで新型コロナを疑わせる所見が確認できた人を抽出する。ここに濃厚接触者や渡航歴から感染の疑いがある人も含めて検査。これでようやく陽性的中率が高まる。「検査を意味なく渋っている」のではない。病状のない人にまで検査を乱発すると見逃しやぬれぎぬを続出させるだけだ。正しい絞り込みなしに検査したところでまともに感染者は見つからない。検査の数を増やせば増やすほど偽陰性・偽陽性が増える。仮に1000万人に広げるとしよう。すると先の図で示した通り、有病率が全体の90%と高くとも、最大で360万人の偽陰性者、つまり「本当は感染しているのに誤った陰性結果に安心して野に放たれる人」をつくり出すことになる。ダイヤモンド・プリンセス号の乗客の検査でも、陰性証明書を手に安心して街に出た偽陰性の人から感染が広がったということがあった。これと同様のことが起きる。また「検査数をむやみに増やすと、検査が患者にもたらす利点よりエラーの問題の方が大きくなるのではないか」と東京大学公共政策大学院の鎌江伊三夫特任教授はみる。というのも、現状で治療法がない新型コロナ肺炎では、検査で陽性となると本人は隔離されるが、治療法は陰性の人と同じ対症療法だからだ。そのため偽陽性者を収容することによって、より重症の真陽性患者のために空けるべきベッドがふさがれるのも見逃せない。 ●機械だけじゃ無理、すご腕技術者が支えるPCR検査 ただし、きちんとしたフィルタリングの上で「検査数」を増やすべきなのは確かだ。それには何が必要か。まずは現行のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)検査について知る必要がある。新型コロナの確定検査として今のところ唯一のPCR検査。その工程は大きく四つに分かれる。まずは医師、看護師などが患者から検体を採取する。新型コロナの場合、ウイルスは肺に近い下気道の方にいるため、国立感染症研究所は気道からの吸引液か、鼻からスワブを突っ込み咽頭から液を拭い取る方法を推奨している。この作業自体も飛沫感染の危険を伴う。そのため個人防護具を着て1人終わるごとに毎回手順通りに着替えることが本来は必要になる。検体を他の検査機関に輸送するにも二次感染を防ぎ検体の品質を維持するため厳重な態勢が必要だ。冒頭のビル・ゲイツ財団が計画する「自分で検体を取って郵送する」やり方は大いに問題がある。検体が検査機関に到着すると、臨床検査技師の出番である。PCR検査では、検体前処理の図版中の写真のようにバイオハザード対応のキャビネットの中で、人手による前処理作業をすることが欠かせない。遺伝子検査業務は無資格者でもできるが、経験の浅い人がやると失敗や感染の危険がある。ここまでやっていよいよPCR反応にかける。DNAと試薬の入ったチューブを、温度の変化を繰り返しながらDNAを大量に増幅させ、見える形にしてようやく「陽性」と判定が出る。ここにたどり着くまでに数多くのハードルがあり、逆に言えば検査の工程上、落とし穴が多く偽陰性が出やすいということだ。検査精度を保ったまま検査数を増やすのは難しい。感染拡大を機にさまざまな新検査方式が登場してはいるが、大半は実用化に至っていない。迅速検査のイムノクロマトが普及すれば、クリニックで検査ができるようにはなるが、これは感度70%、特異度99%ほどといわれている現行のPCRよりも精度が落ちる見込みだ。また、感染の初期には使えない可能性も高い。そもそも、検査はなぜ行うのか。感染した個人の治療に役立て、社会の感染状況を科学的に分析するという二つの目的があるが「最も大事なのは重症化を抑え、死亡率を上げないこと。だから重症の人を正しく絞り込み、その分の医療キャパシティーを空ける。そして経路調査と接触調査を行い、クラスターを突き止め、つぶすために検査をするということを主眼に置くべきだ」と米国立衛生研究所・アレルギー感染症研究所博士研究員の峰宗太郎氏は指摘する。 *10-2-1:https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69146 (ミクスオンライン 2020/4/23) 新型コロナ専門家会議 「対策のフェーズが変わった」医療崩壊と重症化の防止に力点 政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議は4月22日、厚労省内で記者会見し、緊急事態宣言発出後の状況分析と現状の課題について提言した。副座長の尾身茂氏(地域医療機能推進機構理事長)は、医療提供体制とPCR検査体制について、「対策のフェーズが変わった」と述べ、「医療崩壊防止と重症化防止により死亡者数の最小化を図っていくかに力点を置く」と強調した。感染拡大で患者数が増加することに備えて、地域医師会と協力し、かかりつけ医が患者から直接相談を受ける体制を整える。かかりつけ医は必要に応じて地域医師会が運営する「コロナ検査センター(PCRセンター)」に検査を依頼。無症候者や軽症者は自宅療養、宿泊療養で対応する。一方、都道府県は感染症指定病院への受入れを重症・中等症の患者に割り当てるなど、地域で医療崩壊を起こさせないような連携体制の構築を求めた。 ◎感染者の増加のスピードに追いつかない 専門家会議はこの日の会見で、東京都など一部地域で「感染者の増加のスピードに追いついていない状況」となっていることに危機感を表明した。その上で、都道府県知事のリーダーシップのもと、①医療機関の役割分担の促進、②PCR等検査の実施体制の強化、③保健所体制の強化、④感染状況の共有、⑤搬送体制の整備-に取り組むよう要請した。また国に対しては、感染リスクと背中合わせでウイルスと闘っている医療従事者のために、感染防護具などの確保、検査試薬、検体採取スワブ等の資材の安定確保に最大限努力するよう要請した。 ◎患者の相談や受診に「かかりつけ医」が参画 地域医師会との協力体制構築を このうち医療機関の役割分担の促進では、地域医師会との連携を強く求めた。発熱症状などを訴える患者の相談や受診については、地域の「かかりつけ医」が参画するよう求めている。これまでの対応では、帰国者・接触者相談センターが窓口となっていたが、感染者が増加していることから、別途、地域の診療所等の活用による「2系統体制」を構築する。かかりつけ医がPCR検査の必要性を認めた場合は、地域の医師会が運営するコロナ検査センターに検査を直接依頼できる。これにより検査実施から結果までの時間を短縮できるほか、自宅療養、宿泊療養への患者の振り分けや、その後の療養指導などを地域の医師会と連携して行うことができる。すでに東京都医師会が「地域のPCRセンター」を最大47立ち上げることを表明している。この際のPCR検査については、保険診療として民間の検査会社を活用することができる。 ◎重症化リスクの高い人「day0、day1でも即座に相談を」尾身副座長 なお、この日は新型コロナウイルス感染症を疑う症状の定義で新たな見解を示した。高齢者や基礎疾患がある重症化リスクの高い人、妊婦については、「肺炎が疑われるような強いだるさ、息苦しさ、37.5℃以上の発熱が続くなどの症状が、ひとつでもある場合は、4日を待たずすぐに相談して欲しい」と呼びかけた。「day0(発熱初日)、day1(発熱1日後)でも即座に相談して欲しい」と強調した。毎日体温を測定するなどして、体調管理を行い、”普段と違う”というサインに自ら耳を傾ける必要性を指摘した。また小児については、小児科医による診察が望ましいとした。 ◎治療薬「重症化するリスクの高い患者に適切な治療薬を」 治療薬やワクチンについては現在、観察研究や治験が複数進行中。尾身副座長はこの重要性を強調したうえで、薬事承認まで一定の期間を要することから、「副作用等を慎重に検討しつつも、迅速に臨床での使用を検討することが必要」と指摘した。現在の投薬については、あくまで”緊急避難的な対応”として、「医師の判断による治療薬の投与は日本感染症学会の見解をもとに、医療機関で所定の手続きをとり、患者の同意を取得した上で、引き続き継続すべき」とした。また、重症化するリスクの高い患者に対して、重症化する前に適切な治療薬を選択することが必要とした。ただし、重症化する前の投与は、研究として行われるべきとした。また、重症な予兆を示唆する「重症化予測マーカー」の確立に向けて、研究班を立ち上げ、結果を早急に臨床現場で活用できるよう検討することを求めた。尾身副座長は、「重症化予防、死亡者をできるだけ減らしたいというのが最優先の課題」と述べ、重症化しやすい患者を同定し、適切な治療につなげることの重要性を強調した。 ◎「人との接触を8割減らす、10のポイント」を公表 このほか専門家会議は「人との接触を8割減らす、10のポイント」を公表した。具体的には、①ゴールデンウイークはオンライン帰省、②スーパーは1人または少人数で、③ジョギングは少人数、公園はすいた時間を、④待てる買い物は通販で、⑤飲み会はオンラインで、⑥診療は遠隔診療、定期受診は間隔を調整、⑦筋トレやヨガは自宅で動画を活用、⑧飲食は持ち帰り、宅配も、⑨仕事は在宅勤務、⑩会話はマスクをつけて-の実施を呼びかけ、ヒトとの接触機会を「最低7割、極力8割」まで減らすことを実践して欲しいと要請した。専門家会議はまた、正確な国民の感染状況を確認するため、抗体保有状況を確認する等の「血清抗体調査」を継続的に行う体制を整備する方針も盛り込んだ。 *10-2-2:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%・・ (Wikipediaより、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議メンバーを抜粋) 座長: 脇田隆字(国立感染症研究所所長) 副座: 長尾身茂(地域医療機能推進機構理事長) 構成員: 岡部信彦(川崎市健康安全研究所所長) 押谷仁(東北大学大学院医学系研究科教授) 釜萢敏(日本医師会常任理事) 河岡義裕 (東京大学医科学研究所感染症国際研究センターセンター長) 川名明彦(防衛医科大学医学教育部教授) 鈴木基(国立感染症研究所感染症疫学センターセンター長) 舘田一博(東邦大学医学部教授) 中山ひとみ(霞ヶ関総合法律事務所弁護士) 武藤香織(東京大学医科学研究所教授) 吉田正樹(東京慈恵会医科大学医学部教授) *10-2-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200428/k10012409751000.html (NHK 2020年4月28日) 緊急事態宣言「全国対象に期間延長を」日本医師会 常任理事 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言について、政府の専門家会議のメンバーで日本医師会の常任理事を務める釜萢敏氏は「感染者の減少が十分とは言えない」として、全国を対象としたまま、来月6日までの期間を延長すべきだという考えを示しました。日本医師会の釜萢常任理事は記者会見で、緊急事態宣言について「延長するかどうかを判断する大きな指標の1つは、各地の医療提供体制だ。医療資源の乏しい地域ではひとたび院内感染が発生すると一気にひっ迫した状況になるので、全国で感染者が増えないようにすることが必要だ」と指摘しました。そのうえで「宣言から3週間がたったが、当初狙っていたほどの感染者の減少には至っていない。対象を全国に拡大したのは、感染者が多い地域からの人の移動で感染を広げるリスクがあったからだが、その懸念はまだしばらく続く」と述べ、全国を対象としたまま、来月6日までの期間を延長すべきだという考えを示しました。 *10-2-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/517520 (佐賀新聞 2020.4.28) 厚労省、緊急性高い12症状公表、「胸の痛み」「脈がとぶ」 厚生労働省は28日、新型コロナウイルス感染症の軽症者や無症状の感染者がホテルなどの宿泊施設や自宅で療養する際、注意すべき緊急性の高い症状を公表した。「胸の痛みがある」「肩で息をしている」「脈がとぶ」といった12項目の症状。一つでも当てはまれば自治体の相談窓口か宿泊施設の看護師らにすぐに連絡するよう呼び掛けている。厚労省は埼玉県で50代と70代の男性2人が自宅待機中に容体が悪化して死亡したことを受け、軽症者や無症状者の療養先を原則ホテルや宿泊施設に切り替えた。ただ、施設の準備が整わないといった場合は、引き続き自宅療養を容認している。療養中に症状の変化に素早く気付いて対応できるよう、患者本人や家族に確認してもらいたい考え。「表情・外見」「息苦しさ」「意識障害」に分けて緊急性の高い症状を示している。具体的には「唇が紫色になっている」「ゼーゼーしている」「ぼんやりしている(反応が弱い)」「横になれない。座らないと息ができない」などを挙げている。軽症者は宿泊施設や自宅での療養中にウイルス量が増える可能性がある。そのため、自身で1日3~4回、朝昼晩や就寝前に症状をこまめに確認するよう求めている。 *10-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020042602000150.html (東京新聞 2020年4月26日) <新型コロナ>単身赴任男性、無念の孤独死 発熱6日後検査、死後コロナ判明 全国の警察が変死などとして扱った十五人が、新型コロナウイルスに感染していたことが判明した問題。そのうちの一人が、東京都世田谷区の社員寮で急死した五十代の男性会社員だった。単身赴任中の男性は発熱後、保健所に相談しようとしたものの電話がつながらず、PCR検査を受けられたのは発熱から六日後。検査結果が出たのは、命が失われた後だった。死に至るまでの状況を証言したのは、男性の友人。取材に「遺族が嫌がらせを受ける恐れがある」と、会社名など身元を特定する情報は報じないよう求めた。友人によると、男性が発熱したのは今月三日。その少し前から職場の上司に発熱とせきがあったため、男性は九州の自宅に残る妻に「新型コロナに感染したかもしれない」とLINE(ライン)でメッセージを送っていた。男性は世田谷保健所の相談センターに何度も電話したが、回線が混み合っていたためか、一度もつながらなかったという。男性が自宅待機していた七日、上司はPCR検査で陽性と判定された。男性は会社から「濃厚接触者に当たる可能性がある。検査を受けるように」と言われ、再び相談センターに電話したが、またしてもつながらなかった。かかりつけ医が保健所に連絡してくれたことで、男性は二日後の九日にようやく検査を受けられることに。だが、病院は検査を受ける人であふれていたようで、妻に「結果が出るまで一週間かかると言われた」とメッセージを送っている。入院することもなく寮に戻った男性。「せきがひどくて眠れない。胸が痛い」「薬局に薬を届けてもらった」。十日夜、妻にラインで状況を伝えた後、応答がなくなった。翌十一日、寮で暮らす同僚が部屋に様子を見に行くと、既に息絶えていた。警視庁玉川署は変死事案として捜査。妻が死因は新型コロナによる肺炎だと知ったのは、同署に呼ばれた十三日だった。密封された遺体は、防護服姿の署員によって葬儀会社の車に積み込まれ、妻との対面がかなわないまま火葬された。同行した友人は「明るくて健康なラガーマンだった。一人でいながら一向に保健所に電話がつながらず、どれほど不安だったか」と唇をかんだ。男性の妻は友人を通じて本紙に、「発熱もせきもあったのになかなか検査を受けられず、入院もできなかった。同じことが繰り返されぬよう、(行政などは)態勢をきちんと整えてほしい」との言葉を寄せた。 ◇ 世田谷区の感染者数は都内の市区町村で最多。保健所の相談センターに電話が殺到したことから、区は十三日、回線数を六回線に倍増させ、担当職員も六人から九人に増やした。 都医師会は今月中に、保健所の相談センターを通さなくても開業医らの判断で検査できる「PCRセンター」を都内に十カ所ほど開く考えを示している。 ◆50代男性 死亡の経過 4月3日 発熱。少し前から上司が発熱とせき。妻に「新型コロナに感染したかも」とライン。 保健所の相談センターに何度も電話したが、つながらず 7日 上司が陽性と判明。会社から検査を受けるように言われたが、相談センターに 電話つながらず 9日 ようやくPCR検査。「結果が出るまで1週間かかると言われた」と妻にライン 10日 夜「せきがひどくて眠れない。胸が痛い」などと妻にライン後、応答なくなる 11日 男性が自室で亡くなっているのを同僚が見つける 13日 新型コロナによる肺炎が死因だと、妻が警察から知らされる 電話殺到を受け、世田谷区が相談センターの態勢を強化 *10-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/517250 (佐賀新聞 2020.4.28) 首相、家賃支援で追加対策検討、アビガン活用に意欲、衆院予算委 安倍晋三首相は28日の衆院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた事業者への家賃支援を巡り、追加の対策を検討する意向を示した。自民党の岸田文雄政調会長の提案に対し、党の検討を受け止めると表明。「この状態がさらに延びることになれば当然、さらなる対策も考えなければならない。ちゅうちょなく、やるべきことをやる」と応じた。新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の活用を進める方針も示した。立憲民主党など野党5党は事業者の家賃負担を支援する法案を衆院に共同提出。首相は野党の動向も念頭に、家賃を巡る追加支援に前向きな姿勢を示したとみられる。首相は事業者などへの支援を巡り、手続きの迅速化を急ぐ意向も言明。「今はまさに非常時だ。多くの方々が経営を続けることができるかどうか、生きるか死ぬかの状況に直面している。今までの発想を変えなければならない」と述べた。岸田氏は企業が従業員を休ませた場合に支給する「雇用調整助成金」などを巡り、窓口対応の遅さを指摘。首相は自身の責任で改善を図るとした上で「危機を乗り越えることを最優先に、不正などは事後対応を徹底すればいい」と強調した。立民の枝野幸男代表は、金銭的に厳しい状況の大学生などへの支援に関し、中小企業や個人事業主向けの「持続化給付金」を適用すべきだと主張。首相は給付型奨学金や雇用調整助成金で対応できるとして慎重な考えを示した。首相はアビガンに関し、1月末から2月の初めに新型コロナウイルスの治療に有望だとの報告があったと言及。「(患者)本人にぜひ希望していただき、医師に『自分は使いたい』と言ってほしい」と語った。 <緊急事態宣言のさらなる延長と教育> PS(2020年4月30日、5月1、2、4《図》日追加):*11-1に「①東京都の4月28日の感染者は112人で、その4割弱の42人は感染経路不明」「②都市部を中心に新型コロナの収束の兆しが見えず、知事会の要請を受けて、政府が緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針」「③5月1日に開く政府専門家会議で状況分析する」「④専門家会議の座長を務める脇田国立感染症研究所長は、4月29日の参院予算委員会で、延長の是非を判断する材料として(i)感染の広がり (ii)接触削減などの行動変容 (iii)医療提供体制 の3点を挙げた」「⑤首相は『薬とワクチンの開発によって収束ということになる』と説明した」と書かれている。しかし、①の東京都は特に人混みが多く感染経路不明者が出るのは当たり前であるのに、③④の政府専門家会議と厚労省は、自分たちが三密の中で、いつまでもクラスター追跡に専念し、論文に書けない程度の統計数字の発表ばかり行って市中蔓延に至らしめ、検査も絞って⑤の治療に結び付けず、②の新型コロナ収束に失敗した張本人であるため、政府専門家会議は厚労省の代弁者ではなく、それこそITを使って各地で治療・研究の第一線で働いている医師や研究者の組織に変更する必要があるだろう。 さらに、*11-2のように、全国知事会は、新型コロナ対策に関する国政への提言をしてよいことだと思うが、緊急事態宣言を全国一律に延長するかどうかについては、感染状況が下の右図のように都道府県によって異なるため、それぞれの都道府県の判断に従った方がよく、むしろ全国知事会は検査の充実と治療薬の早期承認を要望された方が効果的だと思う。 なお、*11-2の「⑥休校する地域とそうでない地域で学力差が生じる懸念がある」「⑦この機に9月入学の欧米に合わせるべきだ」という意見については、私は、他の要素での格差も大きいので、①のように首都圏の公立校が不利になる格差だけを問題にするのは、むしろ不公平だと思う。そのため、護送船団方式でいっせいに不利にするのはむしろマイナスで、それぞれの不利について各自治体で解決法を考えるべきだと思う。また、⑦や*11-3-2の9月入学については、高校・大学はグローバル・スタンダードに合わせた方が留学・就職に便利だが、小中学校を何歳の何月から始めるかは各自治体が自らの不利をカバーするように考え、次第にBest Practiceに収れんさせるのがよいと考える。 文科省が、*11-3-1のように、「⑧新型コロナ感染拡大による休校を解除する際、優先度の高い小学1年・小学6年・中学3年の登校を先行するよう各自治体に求める方針を固めた」「⑨任意の分散登校を行い、学級ごとに登校時間をずらす・・」というのは、文科省の仕事としては小さすぎる。それより、これを機会に1学級の人数を標準30人に決め、そのための教員増加や感染症を広げず学業がはかどる空調を備えた学校施設への改修に補助を行う方がよいだろう。 なお、*11-4のように、安倍首相は新型コロナの感染拡大で長期化する学校休校を踏まえ、9月入学制を来年導入する可否の具体的検討に入り、教育界だけでなく社会全体に大きな影響を及ぼすとして各府省庁の事務次官に課題の洗い出しを指示されたそうだ。私も、欧米諸国・中国などと同じ秋入学にした方が便利だと思うが、小1児童の入学時期が秋になれば移行期4~8月は保育所等の受け入れ態勢が課題となる上、子どもの数が減って小学校はゆとりがあり、共働きが増えて保育園は不足しているため、この際、小学校入学年齢を英国と同じ5歳か約87%の子どもが幼稚園か保育園に入る3歳にするのがよいと思う。 ![]() (図の説明:左図は、新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真で、中央の図は、新型コロナウイルスをエアロゾルにした時の生存期間だ。これだけはっきり見えているウイルスを、「目に見えない敵」と表現するのは非科学的なのでやめた方がよい。また、右図が新型コロナウイルスの都道府県別感染者数で、《不完全な統計でも》人同士の距離が近くなる都会に多いことがわかる) ![]() 英国の義務教育制度 日米の教育制度 日本の幼稚園・保育園通園率 (図の説明:左図のように、英国は5歳の時に小学校に入学し、中央の図のように、日米は6歳の時に小学校に入学する。また、右図のように、日本では、3歳で幼稚園か保育園に通っている子どもが約87%おり、5歳では98%の子どもが幼稚園か保育園に通っている) *11-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200430&ng=DGKKZO58627330Q0A430C2PE8000 (日経新聞 2020.4.30) 新型コロナ、収束の兆し見えず、緊急事態宣言延長、知事会も要請 専門家会議あす開催 政府が緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針を固めたのは、宣言発令から3週間が過ぎても、都市部を中心に新規の感染者数が十分に下がらないためだ。全国の自治体からも全都道府県での延長を求める声が相次いでいる。新型コロナウイルスの感染拡大は収束の兆しがなおみえない。30日で緊急事態宣言を全国に広げて2週間になる。5月1日に開く政府の専門家会議で状況を分析する。新規感染者数は鈍化傾向にあるが、なお高止まっている。東京都は29日、新たに47人の感染が確認されたと発表した。前日の28日は112人で、その4割弱にあたる42人が感染経路が不明だった。1日の死者数も最多の9人だった。地方でも札幌市で過去最多に並ぶ26人に達するなど、一部の地域で高水準の新規感染者が確認されている。安定した収束傾向には至っていない。延長の対象地域を巡っては、全国知事会が29日にテレビ会議方式で開いた会合で全国一律で延長すべきだとの意見が多く出た。一部の地域で先行して宣言を解除すれば、都道府県境を越えてその地域に人が流入する可能性を懸念している。静岡県の川勝平太知事は会合で「県内は感染まん延期の直前だ。宣言延長では県境をまたぐ移動を防ぐためにも対象地域を限定すべきではない」と訴えた。秋田県の佐竹敬久知事は「大都市の感染拡大が収まらない限り、全国的なリスクは残る」と述べた。30日にも新型コロナ対策を担う西村康稔経済財政・再生相に緊急提言として提出する。29日の参院予算委員会には専門家会議の座長を務める脇田隆字・国立感染症研究所長が出席した。延長の是非を判断する材料として(1)感染の広がり(2)接触削減などの行動変容(3)医療提供体制――の3点を挙げた。現状の患者数が2週間前の感染状況を反映しているとされ、脇田氏は「ピークアウトしたかどうかまだ判断できない。1週間程度感染の状況を見て判断する」と話した。安倍晋三首相は29日、日本医師会の横倉義武会長と首相官邸で会い、医療現場の現状を巡り意見交換した。感染者数を抑制できなければ、医療現場の崩壊につながりかねないとの懸念は強い。これも延長判断の大きな理由になったとみられる。政府が緊急事態宣言を1カ月で終えるために掲げた「人と人の接触機会8割削減」という目標も達成できていない。NTTドコモのモバイル空間統計によると、28日の新宿周辺の人出は感染拡大前に比べて70.8%減少した。福岡市の天神周辺は58.9%減にとどまるなど、地方ではなお外出自粛が不十分だとの見方がある。首相は衆院予算委で緊急事態宣言の根拠となる改正特別措置法のさらなる改正に触れた。「今の対応や法制で十分に収束が見込まれないのであれば、当然新たな対応も考えなければならない」と指摘した。西村経財相は27日、自治体が特措法に基づく休業指示を出しても従わない事例が多発した場合に、法改正で罰則規定を設ける考えがあると言及していた。宣言を延長しても、収束のめどが立っているわけではない。首相は予算委で「薬とワクチンの開発によって収束ということになる」と説明した。米国で秋にもヒトへのワクチン接種が可能になるとの見通しを示し「日本も研究を加速させていきたい」と言明した。感染者が少数にとどまる県では全国を対象としたまま延長することへの慎重論もある。佐賀県の山口祥義知事は29日の全国知事会会合で「(感染者が多い)都市部に合わせるのではなく、地方それぞれの特性があっていいのではないか」と発言した。 *11-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200430/KT200429ETI090009000.php (信濃毎日新聞 2020年4月30日) 全国知事会 住民目線で国政に注文を 国の対策が後手に回る中、現場に近いところで指揮を執る知事の役割が重要性を増している。全国知事会が新型コロナウイルス対策に関する国政への提言を議論した。噴出する課題は医療、福祉、教育などあらゆる場面に及ぶ。地域における感染防止の課題や暮らしへの影響を国が把握し切れない状態は、今後も続くだろう。各知事は国政に対し、住民の目線で具体的な提案を重ねていかねばならない。全国知事会は、その先頭に立ってもらいたい。今回焦点になった一つは、緊急事態宣言を全国一律に延長するかどうかだ。一部の地域で解除すると、他の地域から人が移動して感染を広げる恐れがある。ただ、感染状況は都道府県によって開きがある。延長に伴う財政負担への懸念から否定的な知事もおり、温度差が目立った。一律延長の検討を国に求める方針を確認したものの、今後は、財政力の違いも踏まえどんな提言を示せるかが課題となりそうだ。知事会はこれまで、医療や検査の体制整備を国に求めてきた。既に独自の取り組みを進めている都道府県も多い。それぞれの経験を基に、有効な対策を共有する取り組みも重要になってくる。気になるのは、強権的な姿勢が目立ち始めた点だ。新型コロナ特措法に基づく休業要請に応じない事業者に罰則を設けるよう、法改正を求める声が出ている。支援策が不十分なまま、従わないのが悪い、と決め付ける雰囲気を社会に醸成するような対応が良い方向に向かうとは思えない。やむにやまれず営業する事業者がいれば、その声に耳を傾け、実効性ある対策を探っていくのが知事の役割ではないか。私権の制限には慎重であるべきだ。ここにきて知事の間で急速に盛り上がってきたのが、小中高校や大学の休校長期化を受けた9月入学制の導入論議である。長野県を含む17県の知事でつくる「日本創世のための将来世代応援知事同盟」などで賛成が相次いだ。休校する地域とそうでない地域で学力差が生じる懸念があり、この機に9月入学の欧米に合わせるべきだとの意見がある。一方、社会的な影響の大きさを考えて慎重な意見もある。一石を投じた意義はある。重要なのは現場に即して考える視点だろう。学校や家庭は子どもたちの学習機会を保障しようと努力を続けている。飛び越えて議論が進むことがあってはならない。 *11-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200501&ng=DGKKZO58653800Q0A430C2CC1000 (日経新聞 2020.5.1) 小1・小6・中3 優先登校 文科省指針 再開時、受験・「慣れ」配慮 文部科学省は新型コロナウイルス感染拡大による休校を解除する際、小学1年、小学6年、中学3年の登校を先行するよう各自治体に求める方針を固めた。1日にも開かれる政府の専門家会議の報告を踏まえ、同日中に全国に通知する指針に盛り込む。学校では感染拡大の原因となる3密(密閉・密集・密接)になりやすい。登校の一斉再開を避け、優先度の高い学年から段階的に再開することで、感染リスクを抑える狙いがある。萩生田光一文科相は30日の参院予算委員会で「段階的に必要最小限度の教育活動を開始することが重要だ」と指摘。「例えば任意の分散登校を行い、進学を控える最終学年から学習活動を開始するなど様々な工夫が考えられる」と述べた。小6と中3は受験や卒業を控えており、現状の学事日程では休校期間中の授業時間を次の学年で補えない。小1は集団生活に慣れ始める時期であることなどを考慮した。文科省はこれまでの指針で、学校を再開する場合は毎朝の検温や換気の徹底、マスク着用などの対策をとることを求めていた。今回の指針では学級ごとに登校時間をずらすことなども選択肢として盛り込む見通しだ。 *11-3-2:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20200501&c=DM1&d=・・ (日経新聞 2020.5.1) 小池・吉村知事が9月入学求める 共同でメッセージ 東京都の小池百合子知事と大阪府の吉村洋文知事は30日、学校の9月入学の導入などを求める共同メッセージを発表した。9月入学が多くの国で導入されていることを踏まえ「若者が世界で活躍するためにも重要だ」(吉村氏)と両知事が賛成の立場を示した。小池知事による生配信の動画サイトに吉村知事が出演し、共同メッセージを公表した。小池氏は「日本の教育が世界のスタンダードになっていくために中身の濃い議論をスピーディーに行うことが必要だ」と強調した。また、新型コロナウイルスの感染拡大防止策の一環として、休業に協力した事業者への家賃支援を迅速に法制化するよう国に要望した。改正新型インフルエンザ対策特別措置法で、防止対策を円滑に講じられるように自治体による裁量権の拡大も求めた。 *11-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/518770 (佐賀新聞 2020.5.1) 9月入学制、論点整理着手、来年導入、6月上旬にも方向性 安倍晋三首相は新型コロナウイルスの感染拡大で長期化する学校休校を踏まえ、9月入学制を来年導入する可否の具体的検討に入った。教育界だけでなく社会全体に大きな影響を及ぼすとして、首相官邸が各府省庁の事務次官に課題の洗い出しを指示した。政府筋が1日、明らかにした。論点整理を受け、6月上旬にも方向性をまとめたい考えだ。首相は国会で「選択肢として検討する」と答弁。「課題が解決されれば現実味を帯びる」(政府筋)との見方が出ている。9月入学案は、学習の遅れや、学校再開時期のばらつきが生じることへの不安解消策として浮上した。欧米諸国や中国などの秋入学に足並みをそろえ、海外留学や外国人留学生の受け入れ加速を狙う意味合いもある。一方、9月入学とした場合、4月を起点とする社会・経済システムとの整合を図る必要が生じる。3月卒業を前提に実施される国家試験の日程調整が求められるほか、企業採用へ影響する可能性もある。小1児童の入学時期が秋にずれ込めば、移行期の4~8月は保育所などの受け入れ態勢が課題となる。導入論に対し、自民、立憲民主両党では「難題が多い」として慎重姿勢が目立つ。一方、国民民主党は導入に向けた提言案をまとめている。政府と自治体側の擦り合わせも不可欠だ。9月入学は9年前に東京大学が検討を始めたものの、最終的に見送った経緯がある。菅義偉官房長官は5月1日の記者会見で「時々刻々と変化する事態を注視しながら、文部科学省を中心に必要な対応を前広に検討していきたい」と述べた。 <やはりおかしい“緊急事態”“医療崩壊”の連呼 ← 得したのは誰か?> PS(2020年5月3、8、9、10日追加):*12-1のように、専門家会議やメディアは、「①医療崩壊になりそう」「②医療体制が逼迫」と連呼し、「③緊急事態宣言を延長し」「④新たな生活様式の呼びかけ」たが、その根拠として「⑤実効再生産数(感染者1人が何人に感染させるかを示す値)を挙げ、⑤が1より大きければ流行は拡大し小さければ収束していくとした。 しかし、⑤については、*12-2のように、日本におけるPCR検査の割合は諸外国と比較して人口比で極端に低く、このような背景の下に机上で産出された西浦北大教授(理論疫学)の実効再生産数は、空想上の数字でしかなく(嘘だと思ったら、それを論文にして世界に発表してみればよい)、そこから出た結論も空想にすぎない。そして、検査数の増加スピードも著しく遅いため、患者を早期に発見し、薬を使って早期治療を行わない結果、重症化させて長期入院を必要とするようになり、②の医療体制の逼迫が起こるのである。また、西浦北大教授(理論疫学)の実効再生産数には、治療薬出現の効果も考慮されていない。 さらに、④の「新たな生活様式の呼びかけ」は、具体的には、i)3密回避 ii)手洗い iii)テレワーク だそうだが、i)は回避できない場合もあるため、病気の人は病欠したり、マスクをかけたり、職場の1人当たり面積にゆとりを持たせたり、席の配置を考えたりすべきなのである。また、ii)は新型コロナに限らず常識で、iii)のテレワークができるのは、どこででもできる仕事をしている人に限られ、家庭で仕事をすれば仕事と家庭生活の区別がつきにくく、生産性も落ちるので、私は勧めない。ただ、満員電車による通勤は感染症を広げるため、企業は都会に置くオフィスの就業者数を本当にそこでしか仕事ができない人に限り、職場内のテレワークを使って他の場所でもできる仕事は、自家用車で通勤できる地方に置いた方が、(子どもの教育も含めて)環境がよく、仕事がはかどり、生活費は安いため、人件費や賃貸料の削減に繋がるのである。 なお、PCR検査が増えない理由には、*12-3のように、陽性患者が出ると職場の同僚や家族まで中傷や偏見に晒されて事業経営に悪影響が出るため、検査を自粛するという行動もありそうだ。感染者本人を差別するのも罪だが、これらの一般の反応を作ったのは、「(治療薬については副作用ばかりを強調し)効果的な治療薬のない絶望的な病気で、繁華街でうつって周囲に迷惑をかける」という印象を植えつけたメディアの報道に大きな責任がある。 また、医療行為を行う前から、①②のように「医療崩壊」「医療体制の逼迫」と連呼し、日本の医療水準が後進国並みに低いかのような行動を国民に強いているのは、専門家会議や厚労省に問題があり、これは検査方法や治療薬の工夫を妨害した。そして、*12-4のように、日本政府は、新型コロナの治療薬として米ギリアド社の「レムデシビル」を米食品医薬品局(FDA)が認可したという理由で日本での早期承認に動いているが、情けないにもほどがあり、これによって日本の製薬会社は外国(特に米国)で開発して承認をとらなければ日本国内でも使用されないという状況を招いているのだ。さらに、大量生産の段階になると、アビガンのように日本はコストが高すぎて中国で生産しなければ利益が出ず、いくら紙幣を印刷して国民の預金価値を薄めて金を捻出しても、その金は他国の景気を回復させるだけという状況である。これは高付加価値の薬剤に限らず、*13のような食料・エネルギーにも及んでおり、「日本は、何を売って必要なものを買うつもりですか?」という問いを、再度、経産省に投げかけざるを得ない。 このように、不確かな数字を根拠に際限のない休業要請をした結果、社会経済活動が停止して破綻する事業者や解雇される雇用者も出ている。そのため、*12-5のように、大阪府は、入院患者のベッド使用率が一定の数値を下回るなどした場合に休業と外出自粛要請を段階的に解除するという独自基準を設ける方針を決めた。医療崩壊の危機をことさら叫んで受診を控えるように呼びかけていた(とんでもない)NHKの調査によっても、*12-6のように、病床数に占める入院中及び入院必要な患者数が100%を超えるのは東京都(131%)だけで、軽症者のホテル収容を実施しているのにその収容数は収容能力と比べて著しく低く、工夫もせずに「危機だ」「危機だ」と叫んでいるわけだ。また、50%以上100%未満は北海道(81%)、石川県(81%)、群馬県(71%)、福岡県(70%)、兵庫県(65%)、千葉県(61%)、滋賀県(58%)、奈良県(58%)、富山県(57%)、愛知県(57%)、埼玉県(56%)、沖縄県(56%)、京都府(51%)等の13道県しかなく、それでもホテルなどの宿泊施設に収容可能な軽症者がまだ病院にいることが多い。そのため、ホテルなどの宿泊施設における健康管理と病院との連携を充実させれば、病床数に占める入院中及び入院必要な患者数は逼迫しない筈なのである。これに加えて、*12-7のように、東京都は年代別の新型コロナによる死亡者数を公表し、「60代以上が9割で、男性が85人・女性が37人」としているが、これくらいのサンプル数でジャンル別の傾向はわからず、「死亡者は高齢者・持病のある人に多い」という馬鹿の一つ覚えの偏見を生むのに加担している(これも嘘だと思ったら、論文にして世界に発表してみればよい。症例数や検査割合の少なさ、考察の浅さに呆れられるだけだろう)。 なお、この騒ぎで得した人は、まず「携帯電話端末の位置情報を、どさくさに紛れて使えるようにした人」「テレワークの機材を生産している人」「テレワークを進めたかった人」などだが、その他については、読者にお任せしたい。 *12-8に、「新型コロナ感染者の療養先は自宅がホテル等の宿泊施設の2.3倍で、厚労省が軽症者や無症状者に宿泊施設の利用を優先してもらう方針を示しているのに、移行が進んでいない」と書かれている。しかし、「宿泊療養が時には受け入れてもらえない」というとんでもないこともあるのかもしれないが、東京(自宅療養者635人)・埼玉(自宅療養者354人)・大阪(自宅療養者332人)・千葉(自宅療養者約250人)・神奈川(自宅療養者約250人)・福岡(自宅療養者81人)はホテルの多い地域である上、全国の宿泊施設で1万2090室が受け入れ可能となっているのに約7%しか利用されていないのでは宿泊施設を準備した意味がないため、自宅療養を選んだ人に理由を聞いて改善すべきだ。病院入院後の回復期にホテル療養をした私のいとこの場合は、宿泊施設のホテルはシーツの交換が全くなく、部屋の掃除や洗濯も自分でしなければならず、下着やタオルが足りなくなっても当然外出できないため、病気の人に不潔な状態での我慢を強いる状態になっているようだった。 新型コロナ感染者のうち軽症者・無症状者の隔離と療養に充てるため、長崎県が8医療圏にそれぞれ設ける計画で内定したホテルの周辺住民が反対を表明し、選定が難航して宿泊施設が決まらないのだそうだ。しかし、*12-9のように、ホテルの活用は既に行われており、神奈川県では運営の一部を自衛隊が担当し、福岡県は人出が減っているJR博多駅前等のホテルを確保しており、医療圏毎に必要とも思われないので、できたところから始めればよいのではないか? 朝日新聞が、2020年5月10日の社説に、*12-10のように、「⑪米国が重症者向けに緊急使用を許可したレムデシビルを、厚生労働省はスピード承認した」「⑫治療薬の早期開発に期待を寄せる声は多いが、有効性や安全性を確かめる手続きをないがしろにするわけにはいかない」「⑬現場の医師が注目しているのは、国内のメーカーが開発し、新型インフルエンザ用に承認されているアビガンだ」「⑭アビガンの月内承認をめざしている首相に、京大の山中伸弥教授からさらなる前倒しに向けて『鶴のひと声』を求められる場面もあった」「⑮多くの患者はアビガンを使わずに回復しており、催奇性があるので前のめりになりすぎるのは禁物だ」「⑯対象から外れた患者が発言を頼りに投与を希望したら、その対応で現場の負担が増える」「⑰政府は40カ国以上にアビガンを無償提供すると表明したが、国内患者の健康に関わるだけでなく国際協力にもつながる薬だからこそ、手順を踏んで遺漏のないようにしたい」「⑱薬害の歴史を忘れることなく、コロナ禍に適切に対処しなければならない」と記載している。⑱から、この記事は、アビガンの早期承認を要望している人は催奇性という副作用を知らないか忘れているという前提の上に立っているが、⑬⑭の現場の医師や京大の山中教授が自分よりも薬の作用・効果と副作用を知らないと考えているのは無知の上に傲慢だ。また、⑮については、もちろんアビガンを使わずに回復した患者もいるが、それだけ回復に時間がかかり、重症化するリスクも高くなり、助けられるのに死亡した患者を犠牲にしたのである。また、⑯の手間より、重症化を防ぎ入院期間を短くしながら命を助ける効果の方が大きいから、⑬のように現場の医師が期待しているのだ。なお、⑫のように、国内での承認に時間ばかりかかるため、⑪のように、「外国で承認されたから、横並びで・・」などという情けない理由で承認したり、⑰のように、国内では使えないうちに海外に無償提供したりしなければならず、日本の開発関係者は国内で開発すると徒労に終わることが多すぎるのだ。「10万円、マスク来ぬうち、コロナ去り」はまだ笑い話にできるが、「アビガンも、承認せぬうち、コロナ去り」は、文系のドアホが人の命をないがしろにした結果であるため、とうてい笑い話にならない。 ![]() 2020.5.2朝日新聞 2020.4.26Yahoo 2020.4.29東京新聞 (図の説明:1番左の図のように、一人の患者が何人に感染させるかで新規感染者数が異なるそうだが、これは大数を正確に処理した結果として出るもので、個人が他人に感染させる数は職業・電車通勤の有無等によって大きく異なる。左から2番目は、緊急事態宣言による行動自粛によって感染の山を右にずらすという論理だが、PCA検査数が少なく感染者が市中を歩いている状態では感染者数はますます増え、それを治療しないことにより重傷者が増えて医療崩壊は早まる。右から2番目の図は、外出自粛や休業要請で事業者がいつまで持つかを質問した結果で、1番右の図は、外出自粛や休業要請により非正規労働者から解雇や雇い止めが始まっている様子だ) *12-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14463367.html (朝日新聞 2020年5月2日) (時時刻刻)くすぶる感染、長丁場 感染者減「期待に至らず」 専門家提言 新型コロナ 1日に政府の専門家会議がまとめた提言は新型コロナウイルスの新たな感染者は減っているとしつつも、減り具合が目指したほどではなく、医療体制も逼迫(ひっぱく)していると指摘した。長期の対応を迫られるなか、感染リスクが高い3密を避け、接触機会を減らした「新たな生活様式」の定着を呼びかけた。専門家会議が1日午後に開いた記者会見。尾身茂副座長は「感染者数は減少しているが、そのスピードは我々の期待するまでには至らなかった」と語った。緊急事態宣言直後の4月11日に全国の新たな感染者数が700人近くになったが、最近は200人ほどの日もある。ただ、1日に数十人だった3月上旬~中旬に比べると、まだ多い。減少ペースも「急増のペースに比べると緩やかに見える」と提言は指摘し、「大都市圏から人が移動したことで、地方に感染が拡大した」と分析した。感染が拡大しているかをみる重要な指標の一つが「実効再生産数」だ。感染者1人が何人に感染させるかを示す値で、1より大きければ流行は拡大し、小さいと収束していく。全国で2・0(3月25日時点)、東京で2・6(3月14日時点)だったが、4月10日時点では全国で0・7、東京で0・5まで下がった。厚生労働省クラスター対策班に参加する西浦博・北海道大教授(理論疫学)は、1を下回ったのは全国も東京も緊急事態宣言が出る前の4月1日ごろだったと説明。そのうえで、「全国的にみると、8割の接触機会の削減で求めていた水準には達していない」と指摘。目標とする0・5以下になることを確認していく必要があるとした。ただ、PCR検査の件数が限られ、とくに流行地域で感染者を把握しきれていないとの指摘もある。尾身さんも会見で「我々は感染の実態の一部を把握しているに過ぎない」と認めた。宣言の延長判断で重要なもう一つの要素が医療現場の逼迫だ。患者は平均2~3週間入院する。特に人工呼吸器が必要な重症患者の入院は長期化する。全国的に人工呼吸器が必要な患者はこの1カ月で3倍超に増えて約280人、人工心肺が必要な患者も約2・5倍に増えて約50人になっている。会見で、会議のオブザーバーを務める東京都立駒込病院の今村顕史・感染症センター長は「患者数が減っても重症重篤の患者でかなり病床が埋まっている。軽症者にも重篤になる人がいる。(医療現場の)負担は続いている」と話した。 ■続く通勤、接触減に限界 提言では、厚労省のクラスター対策班が分析する人同士の接触機会がどれくらい減ったかのデータが示された。西浦さんは「(政府目標の8割減を)達成できた所とできなかった所がまだらだった」と述べた。主要な駅周辺などを対象にして、携帯電話端末の位置情報をもとにその区域の人口密度と、同じ時間帯に同じ区域にいた人の数などから、計算式を使って割り出した。感染拡大前の1月17日と4月24日(ともに平日)を比べると、東京・丸の内周辺では夕方から夜間は81%減だが、渋谷駅周辺では昼間は49%減、夕刻から夜間は62%減と目標に満たなかった。大阪市の難波駅は同じく29%減と41%減だった。県境を越えた移動は、神奈川、千葉、埼玉の3県と東京との間の減少率は昼間35~41%と小さかった。西浦さんは「都心への通勤を続ける限りは、(強制ではない)自粛要請のレベルでは限界があることがわかった」などと語った。ただ個人の属性や行動パターンなどで大きく変わることがあり、精度や技術的課題は多いとも話した。 ■制限下の生活「定着を」 3密回避、手洗い、テレワーク 地域でメリハリ、緩和条件は示されず 新型コロナは世界に蔓延(まんえん)し、現状では根絶は困難だ。「一定期間はこの新たなウイルスとともに社会で生きていかなければならない」。提言は、対策が長丁場になることを覚悟しなければならないと呼びかけた。ウイルスの蔓延防止を最優先にしつつ、社会経済活動とどう両立させるか。提言では、地域ごとに対策にメリハリをつける考えを前面に出した。感染状況が厳しい地域では新たな感染者数が一定水準に減るまで、外出や営業の自粛要請などを続ける。十分減れば対策を緩められる対象にする。要件の一つは感染状況だ。新たな感染者数や感染者が増えるペースが一定水準にまで減り、感染把握に必要なPCR検査などがすぐできることを求める。もう一つの要件は医療の状況。新型コロナの患者を診るための医療機関の役割分担や、軽症者らに対応する宿泊療養施設の確保を挙げる。これらをもとに総合的に判断してもらうとした。ただ、対策を緩められる地域でも以前の生活に戻る状況は想定していない。感染拡大のリスクが高い密集・密閉・密接の「3密」を徹底的に避け、手洗いや他人との距離を保つのは不可欠。テレワークなども重要とする。全国的な大規模イベントも、感染対策が整わなければ中止などを求めるとしている。「長丁場を前提とした『新しい生活様式』の定着が必要だ」。会見で尾身さんは強調した。こうした対策で感染を抑え込みながら、早期診断と治療法の確立やワクチン開発を待つ狙いだ。ただ、対策を緩和する要件にある一定水準とはどの程度の減少なのかや、緩和できる対策の範囲は明らかでない。「新しい生活様式」も、人との接触が避けられない環境の人がいるなど、定着には課題がある。ただ、以前の生活に戻せば感染拡大がすぐに起きる可能性は、外部の研究者も指摘する。東京大の大橋順准教授(集団ゲノム学)の推計によると、人口10万人の都市の感染者数が50人になった時点で他人との接触頻度を8割減らすと、30日後には23人まで減少。だが、接触頻度が元に戻ると約15日で50人に戻った。大橋さんは「医療崩壊を防ぎ、ワクチンや治療法が開発されるまでの時間をかせぐためには、接触頻度を減らす努力を継続することが必要だ」と話す。 *12-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200503&ng=DGKKZO58692210R00C20A5EA2000 (日経新聞 2020.5.3) 検査目標 日本は独の14分の1 世界で拡充、米は1カ月で倍増 新型コロナウイルスで制限した経済活動の再開をにらみ、各国が検査の大幅増加へ動き出した。日本は1日2万件の検査を目標とするが他国との差は大きく、人口比ではドイツが日本の14倍、米国も同5倍の目標を掲げる。経済再開に向けて感染の実態把握は不可欠で、日本がこのまま検査を増やせなければ緊急事態宣言解除のハードルは高い。一部地域で爆発的感染が落ち着いてきたのを受け、各国は外出制限の出口戦略を練り始めた。感染の再拡大と医療崩壊を避けるには、検査を増やして感染拡大の兆しをつかむ体制が不可欠だ。米国は現在、1日23万件のペースで感染の有無を調べるPCR検査を実施している。5月中の目標として、4月中旬(1日15万件)の2倍の「週200万件(=1日29万件)」を掲げる。現在の新規感染者は平均で1日2万7千人程度。米政権は陽性率が10%に下がる程度まで検査を増やす計画で、感染者が現在と同じなら27万人を検査することになる。「感染者1人あたり平均5人の濃厚接触者が出る」(米厚生省幹部)とみており、接触者13万5千人にも検査が必要だ。合計40万5千人になり、感染者が現状のままだと検査件数はまだ足りない。米政権は外出制限の効果で感染者が今後減っていくことを想定する。接触者もあわせて十分な検査ができるくらい感染者が減った州から、飲食店の営業を条件付きで認めるなど、段階的に経済活動を再開する方針だ。フランス政府は5月11日から商店などを再開するのにあわせ、検査能力を現状の実施件数の5倍にあたる1日10万件に増やすと発表した。外出する人が増えることで新規感染者が最大で現状の2倍の1日3千人に伸び、濃厚接触者を25人と仮定。全員をカバーしたうえで、余裕をみた検査能力を確保する。ドイツは4月中に1日20万件、英国は同10万件を目標としていた。ドイツの直近の検査数は同7万件、検査能力は同14万件あるとするが、目標達成は遅れている。検査を増やすには、人員や医療品の確保が不可欠だ。米政権は大手薬局チェーンに検査場設置を要請。CVSヘルスは5月中に最大1千カ所で1日5万件を実施する。検査用の綿棒や試料は、非常時に大統領権限で企業に命令できる「国防生産法」で増産を求める。米は6、7時間かかるPCR検査に加え、その場で結果が出る15分程度の「抗原検査」の普及も急ぐ。ウイルス特有のたんぱく質(抗原)を検出するもので、過去に感染したことがあるか調べる「抗体検査」とは別だ。抗体検査は発症直後は診断しづらいため、抗原検査でPCRを補完する。日本政府は1日2万件を目標に掲げ、同1万5千件を実施できる体制を整えたとしている。ただ実際の検査件数は同8千~9千件にとどまる。人口比でも日本の検査目標は見劣りする。人口1人あたりの目標件数はドイツが日本の14倍、英仏が9倍、米国は5倍だ。他国は経済再開と検査拡充をセットにして出口戦略を立てており、日本の出遅れは否めない。検査の人手不足などを補おうと、日本政府は検体採取業務を歯科医師にも認めると決めたほか、ドライブスルー検査の実施を自治体に促すといった対策を講じる。ただ安倍晋三首相も国会答弁で「目詰まりや地域差がある」と認める。検査拡充で感染実態が把握できなければ、緊急事態宣言の解除はおぼつかない。経済活動の正常化にはさらに検査拡充が必要との試算もある。米ハーバード大は米国民全員が毎月2回検査できる1日2千万件の検査体制を提言する。一度陰性になっても安全と言えないためだ。シンガポールは当初封じ込めに成功したとみられていたが、外国人労働者の寮で感染が再び広がった。労働者の大規模検査が必要になり、人口570万人の同国の検査数は12万件を超えた。 *12-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/519100 (佐賀新聞 2020.5.3) <新型コロナ>病院襲う感染デマ 「おたくやろ」「来ないで」憶測で詰問、伊万里や嬉野 中傷、偏見…家族にも 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、佐賀県内でも中傷や風評被害が起きている。伊万里市ではデマを発端に、同じ職場の人やその家族までもが中傷や偏見にさらされ、職員の感染が確認された嬉野市の病院の関係者も差別的な行為を受けており、心を痛めている。「本当に怖い思いをした。憶測で情報を広めることが、どれだけ多くの人を傷付けることになるか知ってほしい」。伊万里市新天町にある山口病院理事長の藤邑(ふじむら)葉子さん(62)は訴える。3月31日、佐賀県が県内2例目の感染者を「伊万里市の60代女性で、福岡市に住む30代男性医師の母親」と公表した。「山口病院の藤邑さんでは…」。デマはその日のうちに広がり始めた。年代が一致し、20代の息子が佐賀県内の病院で研修医をしていることなどから類推されたようだ。「おたくやろ」。翌日以降、病院に問い詰めるような電話が十数件かかってきた。患者からも聞かれた。いくら否定しても「かん口令が敷かれとるとやろ」。来院者や運営する介護施設の利用者が激減した。風評被害は、職員やその家族にも広がった。看護師の子どもは保育所で他の園児と離された。入院患者や通所者の家族が、職場や塾に「来ないでほしい」と言われたという話も聞いた。藤邑さんは、地元のケーブルテレビで20日間以上「当院職員の感染ではございません」などと書いた静止画像を放送した。来院者に説明し、関係者には文書も送った。元気で健在だということをアピールするため、できるだけ外を出歩いた。市にも相談した。「やれることは全部やろうという思いだった」。外来事務職員の感染が確認された嬉野医療センターの看護師も差別的な扱いを受けた。買い出しに出掛けた店の駐車場で、車のダッシュボードにセンターの駐車証を置いていると「近寄らないで」という感じで手を払うそぶりをされた。別の店でも同じようなことがあった。看護師の母親は「娘は外出も、人との接触も最小限に抑えている。私も娘の家に食料品を届けても、会わずにドアノブに掛けて帰る。感染者が出た直後は病院にも非難の電話が多かったと聞く。医療従事者が、家族を含めて感染拡大を防ぐために必死に頑張っていることを分かってほしい」と話す。ナイトクラブで県内初のクラスター(感染者集団)が発生した武雄市は、職員がネットパトロールを重ねている。悪質なケースは把握していないが、感染者が確認されると「だれ」「どこの人」と、必ず電話がかかるという。対策本部は「県からは人を特定するような情報は入らないので『情報がない』と伝えるが、怒る人もいる。仮に知っていても教えることはない」と強調する。 *12-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200503&ng=DGKKZO58764440S0A500C2MM8000 (日経新聞 2020.5.3) 日本、レムデシビル特例承認へ 米の緊急認可受け 日本政府は2日、新型コロナウイルスの治療薬として米医薬大手ギリアド・サイエンシズの「レムデシビル」の使用に向けて施行令を改正した。米食品医薬品局(FDA)がレムデシビルの緊急使用を認可したのを受け日本も異例の早期承認に動く。トランプ米大統領は1日、FDAがレムデシビルの緊急使用を認可したと発表した。臨床試験(治験)で感染者の回復を早める効果を確認したとして重症患者への使用を認める。米国立衛生研究所(NIH)が4月29日に回復期間が短縮したとの暫定的な治験結果を公表しており、2日後の緊急認可となった。日本でレムデシビルが承認申請されれば「1週間程度で承認できる体制を整えるよう指示した」(加藤勝信厚生労働相)として、早ければ5月中にも特例承認が下りる可能性がありそうだ。 *12-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200503&ng=DGKKZO58767500S0A500C2MM8000 (日経新聞 2020.5.3) 大阪府、経済再開へ基準 病床使用率など 休業要請解除、 15日可否判断 大阪府は2日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業と外出自粛の要請について、解除する際の独自基準を設ける方針を決めた。入院患者のベッド使用率が一定の数値を下回るなどした場合、段階的に解除する。政府が緊急事態宣言を1カ月程度延長する方針を固めるなか、影響の大きい経済活動の再開に向けた出口戦略を明確に示す必要があると判断した。改正新型インフルエンザ対策特別措置法では、感染症対策で国と自治体が調整を行うことになっている。府は、政府が4日に発表する緊急事態宣言の延長を受けて5日に詳しい数値などを決める。ただ、大阪単独で解除に踏み切れば兵庫県や京都府など周辺自治体との人の往来が増し、感染が再び拡大する可能性もあり、今後、国や他の自治体との調整も必要になりそうだ。独自基準は2日の府コロナ対策本部会議で決めた。全国に先駆けた動きで、吉村洋文知事は会議終了後「社会経済活動を(通常に)戻すために基準を示す」と述べた。府は解除の基準の一つとして、医療機関のベッド数と入院患者数に基づく「病床使用率」を用いる方針。重症者向けは50%、中等・軽症者は60%を下回れば、段階的に解除する案を軸に検討。現在はいずれも下回るが、検査で陽性と確認された人の割合なども参考にしながら15日に解除の可否を判断する方針だ。府が独自基準を設ける背景には、事業者や府民から休業や外出自粛について理解と協力を得るためには解除に向けた目標設定が欠かせないとの判断がある。政府の専門家会議は1日、外出自粛などを緩和する判断材料として、新規感染者数が十分に抑えられていることや医療提供体制の確保などを挙げたが、具体的な数値は示されなかった。府内の感染者数は1600人超と東京都に次ぐ規模だが、1日までの直近1週間の新規感染者数は193人。4月上旬から3週連続で350~370人台だったのに比べると大きく減ったほか、感染経路不明の患者数の割合も下がっており、出口戦略を探りやすい環境が整ったとみている。事業者などへの休業要請を巡り、小池百合子都知事は2日、吉村知事らとのテレビ会議で「都としての出口戦略を検討したい」と述べた。 *12-6:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/ (NHK 2020年4月28日) 医療崩壊の危機、新型コロナ対応のベッド数と入院患者数データ 新型コロナウイルスに対応する医療体制について、NHKが全国の都道府県に取材したところ、入院患者の数が準備している病床数の8割を超えているところは、北海道・東京都・石川県の3都道県となっています。すでに27都道府県で、軽症者に宿泊施設などで療養してもらう対応をとるなどして病床がひっ迫する状況はやや緩和されましたが、専門家は今後も病床を増やすとともに宿泊施設などで療養する患者の健康を十分確認できる体制が必要だとしています。 ●新型コロナ対応のベッド数と入院患者数:NHK調べ 4月27日時点の最新データ ①都道府県 ②新型コロナ対応ベッド数 ③入院中の患者数(入院必要な人含む) ④ベッドに対する割合 ⑤軽症者はホテルに ①北海道 ②400 ③323 ④81% ⑤実施 ①青森県 ②38 ③8 ④21% ⑤準備中 ①岩手県 ②184 ③0 ④0% ⑤準備中 ①宮城県 ②388 ③27 ④7% ⑤実施 ①秋田県 ②105 ③9 ④9% ⑤準備中 ①山形県 ②150 ③28 ④19% ⑤準備中 ①福島県 ②113 ③49 ④43% ⑤実施 ①茨城県 ②151 ③68 ④45% ⑤実施 ①栃木県 ②130 ③40 ④31% ⑤準備中 ①群馬県 ②143 ③102 ④71% ⑤実施 ①埼玉県 ②457 ③254 ④56% ⑤実施 ①千葉県 ②471 ③288 ④61% ⑤実施 ①東京都 ②2000 ③2619 ④131% ⑤実施 ①神奈川県 ②1000 ③213 ④21% ⑤実施 ①新潟県 ②234 ③34 ④15% ⑤実施 ①富山県 ②205 ③116 ④57% ⑤実施 ①石川県 ②170 ③137 ④81% ⑤実施 ①福井県 ②114 ③48 ④42% ⑤実施 ①山梨県 ②80 ③22 ④28% ⑤実施 ①長野県 ②227 ③51 ④22% ⑤準備中 ①岐阜県 ②458 ③78 ④17% ⑤実施 ①静岡県 ②200 ③35 ④18% ⑤準備中 ①愛知県 ②350 ③198 ④57% ⑤実施 ①三重県 ②124 ③27 ④22% ⑤準備中 ①滋賀県 ②95 ③55 ④58% ⑤実施 ①京都府 ②213 ③109 ④51% ⑤実施 ①大阪府 ②900 ③423 ④47% ⑤実施 ①兵庫県 ②372 ③241 ④65% ⑤実施 ①奈良県 ②73 ③42 ④58% ⑤実施 ①和歌山県 ②124 ③29 ④23% ⑤準備中 ①鳥取県 ②322 ③2 ④1% ⑤準備中 ①島根県 ②225 ③20 ④9% ⑤準備中 ①岡山県 ②117 ③12 ④10% ⑤準備中 ①広島県 ②200 ③85 ④43% ⑤実施 ①山口県 ②320 ③15 ④5% ⑤準備中 ①徳島県 ②130 ③1 ④1% ⑤確保 ①香川県 ②43 ③20 ④47% ⑤確保 ①愛媛県 ②70 ③16 ④23% ⑤実施 ①高知県 ②74 ③17 ④23% ⑤実施 ①福岡県 ②300 ③211 ④70% ⑤実施 ①佐賀県 ②70 ③26 ④37% ⑤実施 ①長崎県 ②102 ③10 ④10% ⑤確保 ①熊本県 ②312 ③47 ④15% ⑤準備中 ①大分県 ②222 ③25 ④11% ⑤準備中 ①宮崎県 ②100 ③8 ④8% ⑤実施 ①鹿児島県 ②143 ③7 ④5% ⑤準備中 ①沖縄県 ②160 ③90 ④56% ⑤実施 NHKでは、全国の放送局を通じて27日時点の新型コロナウイルスに対応する病床や入院患者の数などについて都道府県に取材しました。それによりますと、新型コロナウイルスの患者が入院するために確保している病床の数は、全国合わせて1万2500床余りで、先週に比べておよそ1200床増えました。また現在の入院患者は少なくともおよそ6300人で、先週と比べるとおよそ350人減りました。さらに軽症者に宿泊施設などで療養してもらう対応をとっているところは、27都道府県となり、先週から10か所増えました。その結果、都道府県別に確保できている病床数に対して入院患者や入院などが必要な人の数が8割を超えているのは、先週から3か所減って、いずれも「特定警戒都道府県」の北海道と東京都、それに石川県の合わせて3都道県となりました。一方で、宿泊施設や自宅で療養や待機をしている人は、病床が確保できていない人たちも含めて24都道府県で2400人を超えています。 ●宿泊施設や自宅で療養や待機をしている人 ・大阪府 約600人 ・埼玉県 400人超 ・神奈川県 350人余 ・千葉県 300人近く ・東京都 200人近く ・福岡県 200人近く 埼玉県で自宅待機中だった患者が死亡したことを受けて、厚生労働省は軽症者などの療養は宿泊施設を基本とする方針に変えましたが、ほとんどの都道府県は、病院や宿泊施設での療養を原則とする対応にしているとしています。また、医療機関の役割分担を進めようと重症者と中等症の患者を診る「重点医療機関」をすでに定めているところは23府県で、検討や準備を進めているのが6都道県、18県は定めていないと回答しました。さらに懸念していることを聞いたところ、病床や宿泊施設の確保に加え、宿泊施設で軽症者のケアを行う医師や看護師の確保が難しいといった声や感染拡大が続くにつれ、新型コロナウイルスの患者以外の医療への影響が懸念されるといった声が出ています。また、引き続き、医療用のマスクやガウンなどが不足する中での院内感染対策も多くのところが課題に挙げました。感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は、「病床の状況は改善されてきたと見られるが、まだ十分ではない。医療資源が少ない地方で、感染者が一気に増えるおそれもあり、重症患者の治療を早く適切に行い亡くなる人を減らすために今後も医療機関が病床を増やし行政が支援することが必要だ。また、一般の人たちには、連休中も外出を控えるなど感染拡大を抑えるための協力をしてほしい」と話しています。また、宿泊施設などでの療養が増えてきていることについて、「はじめは軽症であっても、容体が急変することもある。自宅療養の場合には、息苦しさを感じるなど具合が悪くなったと感じたら保健所などに連絡してもらいたい。行政や医療機関が連絡体制を整えるなど、医師や看護師が患者の健康を十分確認できる体制をとる必要がある」と指摘しました。 *12-7:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200501/k10012415081000.html (NHK 2020年5月1日) 東京都 年代別の死亡者公表 60代以上が9割 新型コロナ 東京都は新型コロナウイルスに感染して死亡した人の年代別の内訳を公表し、60代以上が全体のおよそ9割を占めていることを明らかにしました。都内では新型コロナウイルスの感染が確認された126人が1日までに死亡しています。このうち、確認中の4人を除く122人について都が年代別の内訳を公表しました。それによりますと、 ▽30代以下と100歳以上で死亡した人はいなかった一方、 ▽40代が1人、 ▽50代が9人、 ▽60代が18人、 ▽70代が40人、 ▽80代が38人、 ▽90代で16人となっています。 60代以上が全体のおよそ9割を占め、中でも最も多い70代と次に多い80代だけで6割余りとなるなど、高齢者の死亡が多くなっています。これについて都は、複数の病院で集団感染が発生して持病のある人が感染したことや、高齢者が重症化しやすいことが要因とみています。性別で見ますと、▽男性が85人、▽女性が37人と、男性が女性の2倍以上となっていて、都は、流行の初期に男性が感染するケースが相次いだことや、たばこを吸うなど持病がある人が男性に多かったことなども要因の1つと見ています。都の福祉保健局は「死亡は高齢者に集中しているが、若い世代の人たちも感染拡大につながらないよう自制してほしい」と話しています。 *12-8:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58794080W0A500C2CE0000/ (日経新聞 2020/5/6) 新型コロナで自宅療養、宿泊施設の2倍超 移行進まず 厚生労働省は6日、新型コロナウイルスの感染者の療養先についての全国調査結果を発表した。4月28日時点で8711人の感染者のうち、自宅で療養している人は1984人だった。ホテルなどの宿泊施設の療養者の2.3倍に上る。厚労省は軽症者や無症状の人に自宅療養より宿泊施設の利用を優先してもらう方針を示しているが、移行は十分に進んでいない。加藤勝信厚労相は6日、「現場では宿泊療養がときには受け入れてもらえないという話も出ている」と報道陣に語った。調査によると、検査で陽性となった全国の感染者数(死亡者や回復した人を除く)は4月28日時点で8711人で、うち入院者が5558人で最多。自宅療養が1984人、宿泊施設での療養が862人だった。自宅療養を都道府県別にみると、東京が635人で最も多く、埼玉354人、大阪332人が続いた。千葉、神奈川は約250人で、福岡は81人。この6都府県以外は30人以下で、大半は0人だった。施設療養の最多も東京で198人だった。ほぼ同時期に行われた別の調査では、全国の宿泊施設で1万2090室が受け入れ可能となっており、約7%しか利用されていないことになる。東京など自宅療養が多い6都府県でも8%にとどまり、施設が使われていない状況だ。東京の担当者は「症状が軽い人は自宅での療養を望む人も多い」と話す。施設では家族への感染が防げるほか、看護師や保健師が24時間常駐して入院への切り替えもスムーズだとして「施設療養を積極的に利用してもらいたい」としている。感染者の多い自治体では、医療機関に肺炎になるなど中等症以上の治療に専念してもらうため、軽症者などは医師の判断で施設や自宅での療養に切り替えてきた。ただ、埼玉県では自宅待機者が死亡。厚労省は4月23日、容体急変に対応するため、自宅より施設療養を優先する通知を出した。 *12-9:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/606824/ (西日本新聞 2020/5/9) 軽症者ホテルの選定難航 長崎県、周辺住民の不安強く 新型コロナウイルス感染者で軽症と無症状の人たちの隔離、療養に充てるため、長崎県が借り上げる宿泊施設が決まらない。県内の8医療圏にそれぞれ設ける計画だが、長崎市内では“内定”したホテルの周辺住民が反対を表明するなど選定は難航しているもようだ。「宿泊療養施設の運営につきましては、県が万全を期して行ってまいります」。地元に配布された中村法道知事の名前入りの文書には、感染者は検査で2度の陰性が確認できないと退所できない、ごみの管理は徹底する-など運営方針が記されている。県は医療崩壊を防ぐため、102床の専門病床は重症者と中等症者用に確保し、症状が軽い人向けに宿泊施設を準備する。住民たちもその方針には賛成しているが、「居住エリアから離れた場所にしてほしい」「公共施設を活用してはどうか」との声が上がる。県担当課は医療機関が近くにあることを条件としており、安全確保に努める姿勢を示しているが、不安は解消されていない。県内では4月18日以降は新たな感染は確認されていない。だが停泊中のクルーズ客船で140人超のクラスター(感染者集団)が発生、県医師会が「医療危機的状況宣言」を出したことも住民の不安を強くしているようだ。県が応募した施設はベッド付きの洋室が50部屋以上(離島部は20部屋以上)あり、それぞれバスとトイレを備えることが条件。壱岐を除く7医療圏で計23施設(計2096部屋)の応募があり、目標の千人分は突破している。こうしたホテルの活用は他県でもみられ、神奈川県では運営の一部を自衛隊が担当。福岡県は「住宅地から離れ、外出自粛で人出が減っている」との理由で福岡市のJR博多駅前などのホテルを確保している。 *12-10:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14470582.html (朝日新聞社説 2020年5月10日) コロナ治療薬 前のめり排して着実に 新型コロナの治療薬としていくつかの薬が候補に挙がり、試験や研究が進められている。その一つで米国が重症者向けに緊急使用を許可したレムデシビルを、厚生労働省はスピード承認した。国内の審査を簡略化できる制度を使った異例の措置だ。当然ながら副作用の懸念もあり、投与した患者全員の追跡調査をして、慎重に効能を検証することが求められる。治療薬の早期開発に期待を寄せる声は多い。関係者は最善の努力を尽くして、これに応えてもらいたい。しかし、だからといって有効性や安全性を確かめる手続きをないがしろにするわけにはいかない。いま現場の医師が注目しているのは、国内のメーカーが開発し、新型インフルエンザ用に承認されているアビガンだ。新型コロナの治療薬としての承認をめざした治験が進んでいるが、それと並行して、多くの医療機関が参加する医学研究(臨床研究)も行われ、実際に患者に服薬してもらっている。安倍首相は4日の会見で「3千例近い投与が行われ、効果があるという報告も受けている」と述べ、月内の承認をめざす考えを示した。6日放映のネット番組では対談した京大の山中伸弥教授から、さらなる前倒しに向けて「首相の鶴のひと声」を求められる場面もあった。だが前のめりになりすぎるのは禁物だ。多くの患者はアビガンを使わずに回復している。アビガンを使って良くなった症例をいくら集めても、薬の効果を見極めるのは難しい。期待先行で評価するようなことがあってはならず、また、動物実験で重い副作用が報告されていることにも留意する必要がある。思い起こすのは、02年に世界に先駆けて日本で承認された抗がん剤のイレッサだ。「副作用の少ない夢の新薬」ともてはやされたが、販売直後からその副作用が原因とみられる死亡例が相次いだ。どんなタイプの患者に効果があるかなどの情報が不十分なまま、広く使われたことが深刻な被害を生んだ。首相が、病院の倫理委員会の承認が条件としつつ「希望すれば誰でも服用できる」と繰り返しているのも、混乱を招く恐れがある。全ての病院で処方できるわけではないし、対象から外れた患者が発言を頼りに投与を希望したら、その対応で現場の負担はさらに増えかねない。政府は40カ国以上にアビガンを無償提供すると表明した。国内患者の健康に関わるだけでなく国際協力にもつながる薬だからこそ、手順を踏んで遺漏のないようにしたい。薬害の歴史を忘れることなく、コロナ禍に適切に対処しなければならない。 *13:https://www.agrinews.co.jp/p50658.html (日本農業新聞 2020年4月29日) コロナと輸出制限 食料安保確立の契機に 新型コロナウイルスの感染拡大で農畜産物の消費が混乱し、農業者を苦しめている。食料の輸出制限が相次ぐ中で浮き彫りになったのは、食と農はひとつながりの関係にあることだ。国内生産が縮小すれば食の不安は増大する。食料の安定供給が揺らがないよう、国を挙げて生産基盤強化を急ぐべきだ。食料自給率37%(2018年度、カロリーベース)の日本にとって、日々の食卓をどう守るか考えざるを得ない事態だ。新型コロナの感染が地球規模で広がり食料貿易に影響が出ている。中でも輸出制限は輸入国の食料安全保障を脅かしかねない。世界最大の小麦輸出国ロシアは4~6月の穀物輸出量に制限を設けた。第5位の輸出国のウクライナも国内販売を優先し、輸出制限に踏み切る可能性がある。米では世界第3位の輸出国ベトナムが新たな輸出契約を3月下旬に停止した。国内の需給状況を確認する一時的な措置ともみられるが、同国政府は主食の確保に神経をとがらせる。農水省は、これらの国は主要な輸入先でないため「日本の食料輸入に影響が生じているとの情報は入っていない」とする。日米欧やロシアなど20カ国・地域(G20)は農相会議で「いかなる不当な制限的措置を回避する」ことを確認した。ただ、どんな場合が「不当」に当たるかは輸出国と輸入国で温度差があるだろう。自国民の食料確保を輸出より優先するのは政府の役割として当然ともいえる。輸出制限回避の担保を得たとは言い難い。また世界貿易機関(WTO)ルールは新たな輸出制限を設ける時はWTOに通知し、輸入国と協議することなどを定める。しかし輸出制限の歯止めとして実効性はあいまいだ。各国政府の意図と関係なく食料流通が止まる恐れもある。米国では食肉処理工場で感染が広がり、複数社が操業を停止した。同国の豚肉供給量の4、5%を占める工場も含まれ、食料品店では食肉が今後不足するだろうとの報道もある。世界最大の米の輸出国・インドでは、都市封鎖による混乱で輸出業者が新規契約の締結をやめている。グローバリゼーションで、効率性や安さを優先し食料の供給網を世界中に広げてきたことが一転、地球規模の感染拡大でリスクとなって現れつつある。日本では食料不安はまだ顕在化していない。国内で農業者が懸命に生産を続け、国民の食を守っているからだ。ただ外出自粛や休校、飲食店の休業などによる需要減と価格低下で、経営が苦境にある農業者も多い。食料の安定供給は瀬戸際にある。食料自給率が低い中で、生産力がさらに弱まれば食料不安が噴き出す恐れがある。消費者が農業者を支える番だ。輸入依存を見直し、食と農の結び付きを強めていく。その契機とすべきだ。そのために政府は、農業経営を継続できるよう支援するとともに、食料供給の実態を国民に伝えることが求められる。
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2020,03,28, Saturday
![]() 2020.3.27 2020.3.16 2020.3.12 2020.3.21 東京新聞 毎日新聞 中日新聞 毎日新聞 (図の説明:1番左の図は、2020年3月の世界における新型コロナウイルス感染者数推移で、左から2番目の図のように、中国では感染者数が頭打ちになったのに対し、中国以外では感染者数が等比級数的に増えている段階だ。右から2番目の図は、3月11日の世界の感染者が多い10ヶ国だが、検査数も影響しているようだ。1番右の図は、3月21日時点の日本国内の県別感染者数で、人口密集地帯に多いことがわかる) ![]() 2020.2.28 2020.3.23 2020.3.25 2020.3.8西日本新聞 東京新聞 朝日新聞 四国新聞 *1-2-5より (図の説明:1番左の図は、2020年3月27日時点の新型コロナウイルス感染者が多い国・地域の感染者数と死者数だ。日本では、左から2番目の基準で学校を再開するが、右から2番目のチェックリストに従ってチェックすることになった。このように、連日、新型コロナウイルスの予防策が報道され浸透した結果、1番右の図のように、インフルエンザ患者数も前年より6割減少するという効果があったそうだ) (1)新型コロナの感染・予防・治療について 1)欧米の感染者とその対応 新型コロナは、*1-1-4のように、中国で始まって多数の死者を出したため、世界でアジア人やマスク姿の人が差別されていたが、現在は、*1-1-1・*1-1-2のように、欧米で蔓延している。日本でも、武漢ウイルスと呼んで中国人を差別する論調が多かったが、人種差別だけでなく病気にかかった人(感染源という加害者である以前に感染させられた被害者)を差別するのも、知識と教養の欠如による人権侵害だ。 世界では、*1-1-1のように、3月26日20時現在、感染者47万人超、死者2万人超(イタリア7,500人超、スペイン3,600人超、米国1,000人超、フランス1300人超、英国460人超、オランダ350人超)であり、さらに、米国は、*1-1-2のように、3月下旬から感染者が急増して3月27日までに感染者が85,000人超となり、*1-1-3のように、全米の感染者数の3割がニューヨーク市に集中して病床や人工呼吸器が不足し、医療崩壊が懸念されているそうだ。 米国でマスクが普及しなかったのはドレスコードになかったからだそうだが、欧米は難民や外国人労働者の流入も多く、貧しくて栄養が十分でなかったり、予防の知識・意識・ツールが乏しかったり、医療へのアクセスが悪かったりする人も多いと思われる。そのため、今後は、年齢や持病の有無だけでなく、感染して亡くなった方の背景も調査した方が良いだろう。 このような中、日本では、花粉症を起こす杉花粉やフクイチ由来の放射性物質から防護する目的でマスクを常用している人が多く、栄養状態も全体としては悪くなく、予防の知識やツールもあるため、新型コロナやインフルエンザが流行しても、よほど意識の低い人でなければ一定の抵抗力はあると考える。 2)新興国(開発途上国)での感染と強制的対応 インドネシアのジャカルタでは、*1-1-5のように、3月20日までに369人が感染して32人が死亡し、感染者の6割が首都ジャカルタに集中しているため、州知事が3月20日に非常事態宣言を出して州内の全企業にオフィス利用の停止を強く求めたほか、娯楽施設の営業を禁止し、非常事態宣言中は州内に軍や警察が展開して住民の外出を事実上制限するそうだ。 また、インドでも、*1-1-6のように、3月24日、首相が国民向けにテレビ演説して、新型コロナの感染防止策として、3月25日から21日間、全土を封鎖すると表明している。インドやインドネシア等の新興国は、人口当たりの医師数や医療資源が乏しく、一般の衛生環境や教育・意識にもバラツキが大きいため、家にいる以外に予防手段がないというのは本当だろう。 3)日本での感染と対応 日本の感染症のわかりやすい歴史は、1822年に世界的大流行が九州(長崎?)から日本に及んで初めてコレラが日本で発生し、1858年や1862年にも大流行が発生し、1879年と1886年に死者が10万人の大台を超えたものだ。コレラの予防には、衛生の改善と清潔な水へのアクセスが必要なのだが、江戸(東京)や大阪に人口が集中し、上下水道等の衛生関係インフラが整っていなかった時代に、免疫のないところに外国からコレラ菌が入ってきて大流行になったのである。 現在の日本は、上下水道・衛生意識・医療などのインフラが整ってきている上、東大医科研のチームがコメに遺伝子組換技術を用いてコレラ毒素B鎖を発現させたコレラワクチン米を開発して常温保存可能な経口ワクチンを作っており、まだ臨床に応用されていないのが残念ではあるものの、よい技術を見つけているので、他の感染症にも応用が利きそうである。 つまり、人口が密集して衛生環境の良くない大都市で、開国やグローバル化により一般人が免疫を持っていない菌が入った場合に感染症が大流行しているのであり、新型コロナも似ているため、開発途上国や先進国大都市の衛生弱者にリスクが高いと思われる。 従って、外国で非常事態宣言を出したり、都市封鎖をしたりしたから、日本でも同様にしなければならないというわけではなく、*1-2-3のように、日本国内の感染者が3月25日午後10時までに1,269人に上り、東京都の感染者数が210人になって都道府県で初めて200人を超えたと書かれているものの、東京都の人口が13,935,645人(2019年9月1日現在)であることを考えると、感染者割合は(あまり検査していないせいかもしれないが)0%に近いのである。 また、*1-2-4のように、「新型コロナの感染拡大が、重大局面を迎えつつある」「爆発的な急増を防ぐ措置として、東京都と関東近県が週末の往来を自粛するよう住民に求めたのはやむを得ない」「緊急事態宣言を出す」「首都封鎖」などと言うのは、騒ぎ過ぎだろう。ただし、東京都は下水道が古くて容量が足りず、上水道も節水しすぎて不潔なくらいであり、通勤・通学で近県から満員電車という密閉空間で1日300万人近くが往来するため、日本国内では感染リスクが高い方にあたる。 そのため、東京や大阪などの大都市で新型コロナが蔓延しているからといって、全国一斉に休校や自粛をする必要はないと思う。 その新型コロナの感染が広がる一方で、*1-2-5のように、インフルエンザの患者数は前年と比較して6割減少しているそうだ。これは、新型コロナの感染予防で、手洗い・マスク着用・せきエチケットなどの取り組みが全国に浸透していったことが奏功しているそうで、これは、新型コロナの感染拡大防止にも繋がるものである。 なお、東京慈恵会医科大学の浦島教授が、*1-2-6のように、日本で新型コロナが感染爆発しない理由を挙げておられる。私は、これに加えて、ウイルスの弱毒化への変異があると思うが、その理由は、宿主を殺してしまえばウイルスは増殖できず、宿主を殺さない方向に変異したウイルスだけが次に感染する機会を得て増殖するからである。つまり、油断や楽観視は禁物だが、人権侵害になるほど騒ぎ過ぎる必要はないと思われるウイルスだ。 4)感染源特定と病人差別 *1-2-1のように、医師の新型コロナ感染が判明した和歌山県有田病院の病棟内をドローンで撮影しようとしたり、ふるさと納税に対する有田町の返礼品を拒んで“地元いじめ”をしたり、感染者が悪いことをした犯人であるかのように追跡したり、感染者を見下すような報道をしたり、患者の住所を教えてほしいという要求をしたりして、新型コロナ感染者いじめをしたのは、(自分は“普通”だから上だと思っている)日本人の知識や教養に欠ける病人差別だ。 5)治療差別 政府が、*1-2-2のように、(どのような病気であれ、病室に複数の人を収容するのは治療環境が悪すぎるが)感染症指定医療機関などに個室管理可能なベッドを1万2千床確保するのはよいことだ。ただ、厚労省は「爆発的感染拡大が起きれば、最悪で東京だけで1日4万5千人の感染者が出る」としているが、そもそも無症状や軽症者を病院に入院させておくことは他の病気ではありえない。感染防止のためなら、自宅やホテルなどの借り切りで、徹底して衛生管理すればよいと考える。 しかし、重症化した人には治療するのが医療先進国であり、ここで“トリアージ”と呼んで年齢による治療差別を行うのはよくない。さらに、コロナ感染については、その重症化しやすさについて、必要以上に年齢差別して報道しているように見える。 (2)ハンセン病差別 ![]() (図の説明:左図のように、ハンセン病は1947年に治療薬ができた後も隔離政策が続き、本人だけでなく家族も著しい差別を受けた。国の隔離政策の根拠となった「らい予防法」は1996年にやっと廃止されたが、その後も元患者や家族に対する差別は続いている。中央の図は、ハンセン病への対処の歴史であり、人権よりも国家の対面を重んじるために隔離政策をとったことがわかる。そして、右図のように、その判断には科学的根拠がなく、それこそ国家の恥である) 完治する病となり科学的根拠がなくなっても長く続いた隔離政策で、ハンセン病の元患者は、*2-2のように、社会からだけでなく家族からの偏見・差別・人権無視にも苦しんだ。例えば、元患者は家族に迷惑がかかるからと療養所内で偽名を使わせられ、隔離政策の誤りを国が認めた2001年の熊本地裁判決を機に実名に戻って故郷に帰ろうとしても家族が受け入れず、死んでも実家の墓に骨を引き取ってもらえないという状況があった。 しかし、これは、家族が率先して社会復帰の壁になったわけではなく、長く引き離された上に日本社会から受けたすさまじい家族差別もあったため起こったことである。そのため、国の責任が認められ、元患者に補償がなされ、差別されながら顧みられかった元患者の家族に対しても、2019年11月22日に「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律」が公布・施行され、名誉回復にも言及されたのは遅すぎたとしてもないよりはずっとましだったのである。 ハンセン病の元患者と家族は国の誤った政策により、*2-1のように、熊本地裁が指摘したとおり、人格形成や自己実現の機会が失われ、家族関係の形成を阻害されるという人生を台無しにされて取り返しのつかない「人生被害」を受けたのだから、国が賠償をするのは当然である。さらに、らい予防法廃止後も偏見や差別を除去しなかったことは驚きであると同時に憲法違反でもあるのに、この当たり前の判決が“画期的”なのである。 (3)「犯罪者≒精神障害者」とする精神障害者差別 1)責任能力の有無は本当の争点だったのか? ← 犯罪者を精神障害者に仕立て上げる日本の刑法の非科学性と精神障害者差別 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者45人を殺傷して殺人罪などに問われた植松被告の裁判員裁判が横浜地裁で開かれた。日本では、殺人が明白な場合の弁護側の方針は、*3-1のように、「精神病で判断力がなかった」という精神鑑定結果を出すことが多いが、ここで言われた大麻精神病などという精神病を私は聞いたことがない。 それにもかかわらず、弁護士がこういう弁護方針を採用する理由は、*3-5のように、刑法第39条に「心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と規定されているからで、その前提として、違法行為を行った者の責任を問うためには、責任能力(①事理弁識能力:物事の善し悪しが判断できる能力) ②行動抑制能力:自身の行動を律することができる能力)が必要とされているからだ。 そして、“心神喪失者”とは「精神障害者の中でも行為の善悪の判断が全くつかない人」、“心神耗弱者”とは「精神障害者の中で判断能力が著しくつきにくい状態の人」とされているが、現在の精神病に“心神喪失”や“心神耗弱”という医学的症状はない。つまり、刑法第39条は、1907年に施行された刑法の枠組みのまま使われており、そこには現在の精神病医学の概念は入っておらず、医学的に正しくないのである。 その上、刑法第39条は、「精神病者を、“平均人ならざる”ものであるため、“反社会的”で“危険な個人”である」と、精神医学とは全く関係なく位置付けており、法律で精神病患者を差別することになっている。そのため、“心神喪失”“心神耗弱”という言葉は正確に定義しなおし、そこに入れるべき人も検討し直すべきだ。さらに、「泥酔していたから」「薬物中毒だったから」というのは、「判断能力がなかった」等として責任を問わない理由にはならないと考える。 植松被告の弁護側は、*3-1のように、「植松被告は2015年頃から大麻を乱用するようになって問題行動が増え、『障害者は不幸をつくるから殺す』という考えに至ったのは大麻乱用による飛躍や病的高揚感があったからだ」と指摘しているが、横浜地裁判決は、差別的な主張を繰り返した植松被告の事件当時の刑事責任能力を認めて、求刑通りの死刑判決を言い渡した。 しかし、その裁判の進行中、検察側・弁護側・裁判所・メディアの報道は、「被告の障害者に対する差別的な考えが犯行を引き起こした」としていたが、その基になっている考え方が、非科学的な精神障害者差別そのものであることには、全く気を止めていなかった。 一方、*3-3の埼玉県熊谷市の強盗殺人事件では、罪に問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告に対して、東京高裁が「統合失調症の影響で心神耗弱状態だった」と判断して一審の死刑判決を破棄したが、「統合失調症による被害妄想→心神耗弱→強盗殺人」という論理にはそれこそ飛躍がある。そのため、東京高裁が被告の供述を持ち出して行動制御能力がないと結論づけたのは、真犯人ではないと気付いたからではないかと思うが、それなら真犯人を捕まえて罰すべきであり、刑法39条をこのように使えば、統合失調症患者にとってはいわれなき差別を助長されることになるわけだ。 そして、このような裁判や報道が繰り返された結果、*3-4のように、全国には首長部局に知的・精神障害者を1人も雇用していない自治体が少なくとも41%あり、全体の13%は一般職員(短時間を含む)の募集条件からも知的・精神障害者を除外するという雇用差別を行うことになり、知的障害者や精神障害者に雇用の機会が与えられないという実害が生じているのである。 2)本当の論点は、家族や社会のためではなく、本人が主体として差別されず尊厳を持って幸福に生きられるか否かである 裁判で「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」等と語った「津久井やまゆり園」事件の本当の論点が、植松被告の責任能力でないことは確かだ。しかし、本当の論点を語るのは難しい上に、いわれなき非難を浴びる可能性も高い。そのため、「気の毒だが、距離を置こう」と考えるのが普通の人だが、それでは何も解決せず、誰も今より幸福にすることができない。 そのような中、*3-4のように、重度身体障害があって18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村参院議員が、障害者本人の立場から「津久井やまゆり園」事件について述べられたのは、参考になる。木村議員が、「①彼が言っていることは皆さんにとっては耳慣れなくて衝撃的でしょうが、同じような意味のことを、私は子どもの頃、施設の職員に言われ続けました」「②19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれず、殺されていたのは私かもしれません」「③親が頼れるのは施設だけでしたが、私にとっては牢獄のような場所でした」「④食事を食べさせてもらえないこともありました」「⑤自由もプライバシーも制限され、希望すら失って決まった日常を過ごす利用者を見た人に偏見や差別の意識が生まれても不思議ではありません」と語っておられるのは、施設で人間としての尊厳を失って過ごすことを余儀なくされた経験のある本人にしか言えないことだろう。 また、「⑥私は、被告だから事件を起こしたとは思えません」「⑦私は親から施設に捨てられた歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました」「⑧公園デビューをした時、息子と子どもたちが砂場で遊んでいて、車いすに乗った私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまいました」「⑨小学校の授業参観で教室が狭くて他のお母さんたちが入れないので『詰めていいですよ』と言っても、半径1メートル以内には近寄ってきません」「⑩社会から排除することそのものが差別です」というのは、「津久井やまゆり園」事件で如何にも人道主義者であるかのように植松被告を批判している多くの人が無意識に行っている行為だ。 そして、「⑪福祉サービスは増えたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外」「⑫移動支援が自治体により差がある」「⑬重度障害を理由に普通学校への入学が認められない例もある」については、高齢者のみに偏らない訪問介護が必要であり、尊厳を失わずに生きられるための普通教育も重要で、こうした課題を解決できた時に、「津久井やまゆり園」事件は意味を持てるのである。 なお、重度障害者を家族や社会の都合ではなく、本人の幸福のためにどこまで治療して助けられるか、どこから本当の安楽死を認めるべきかという難しい論点も見逃されているが、これは、森鴎外の「高瀬舟」以来、日本では解決できていない重たすぎる課題である。 (4)後見制度について 税理士は、事業承継が困難な中小企業や相続が発生しそうな事業主に普段から接し、税務に関する代理・税務書類の作成・アドバイスなどをしているため、成年後見や任意後見のニーズを知る機会の多い専門職だ。また、税理士法の1条、2条に基づき、独立・公正な立場で税務代理や税務書類の作成を行い、顧客の求めに応じて財務書類の作成や記帳代行も行うため、税理士が蓄積してきた知識・経験は成年後見人や成年後見監督人にも役立つものである。そのため、関東信越税理士会が、2019年11月、「成年後見人等養成研修」を行い、私もそれに参加したが、内容や資料が充実して気合いの入ったものだった。 このような中、西日本新聞が、2019年11月26日、*4のように、「適正な類型をどう判断するか」「後見偏重の修正はこれからだ」と記載しており、私もそれに賛成だ。また、90代の父親から金を搾り取っている息子には呆れるが、そのように育てた父親にも責任の一部はあるし、他の兄弟とは異なる事情があるのかもしれないため、父親の本心をよく聞いた上で、遺産分割についての遺言を作っておいたらどうかと思う。 なお、私は、本人の意思を尊重する指針が出て、法定後見が本人の意向が尊重される方向に改正されたのは、日本国憲法も「第11条:国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」「第13条:すべて国民は個人として尊重され、生命・自由及び幸福追求に対する権利は、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重をする」と定めていることから、よかったと考えている。 従来の禁治産・準禁治産制度は、1898年に明治憲法下の明治民法で定められたもので、禁治産者・準禁治産者になると、その事実が公示され戸籍に記載されてプライバシーが侵害され、呼称が偏見や差別を生み、障害者本人の権利や利益の擁護はしておらず、障害者と取引を行った相手の取引の安全性も図られていなかったため、2000年の民法改正で本人の意思や自己決定権の尊重、ノーマライゼーションを理念として民法の成年後見制度が施行されたことはよかったのだ。しかし、これまで後見に慣れてきた専門家は、「後見にしておけば間違いない」という意識が強く、制度の利用が後見に偏りがちという欠点があるそうだ。 関東信越税理士会の「成年後見人等養成研修」の研修の終わりに課せられ、研修内容を基にして私が書いたレポートの一部が下のとおりだが、ここでも「精神障害」を一括して後見の必要な人と定義しているため、医学的症状と整合性がとれ人権に配慮した用語への修正が必要だ。 1)現在の後見制度の種類 (イ)法定後見制度(民法838条~876条の10) 従来の禁治産・準禁治産制度を、各人の判断能力や保護の必要性の程度に応じて、補助(新設)、保佐(準禁治産の改正)、後見(禁治産の改正)に改めたもので、被補助人・被保佐人・成年被後見人を支援するために、家庭裁判所が適当と認める者(補助人・保佐人・成年後見人)を選任して権限を付与するもので、開始時には裁判所が監督人を選任する。 ①補助(民法876条の6~876条の10) 「補助」は、比較的軽度な精神障害(認知症・知的障害・精神障害)がある人のための制度で、本人の重要な財産に影響を与える行為について、状況に応じて補助人に同意権や代理権を付与して保護を図るもので、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・保佐人・保佐監督人又は検察官が、裁判所に「補助開始の審判」を申立てることにより開始される。本人以外の者の申立てによって「補助開始の審判」を行う場合は、本人の同意を要する。申立により、家庭裁判所は、補助人を選任したり、当事者が選択した特定の法律行為に関して代理権や同意権を付与したり、代理権の追加・取消をしたり、補助の終了を行ったりする。 ②保佐(民法876条~876条の5) 「保佐」は、精神障害(認知症・知的障害・精神障害)により「事理を弁識する能力が著しく不十分な者」を対象とする制度で、一定の「重要な行為」について保佐人の同意を必要とすることで、本人が不利益を受けるのを防ごうとするものだ。保佐の開始も、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人、補助監督人又は検察官・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人・市町村長が、裁判所に「保佐開始の審判」を申立てることによって行われ、補助とは異なり本人の同意は不要で精神鑑定が必要である。 これにより、家庭裁判所は本人のために保佐人を選任し、「重要な行為」を行うには保佐人の同意が必要となり、「重要な行為」でなくとも同意権付与の審判を経れば保佐人に同意権を付与することができ、特定の法律行為については、当事者が選択したものについて保佐人に代理権を付与することができる。本人の判断能力の回復により保佐開始の原因が止んだ時は、家庭裁判所は本人・配偶者・四親等内の親族・保佐人・保佐監督人等の請求により、保佐開始の審判を取り消さなければならない。また、判断能力の減退又は回復により、後見開始又は補助開始の審判に移行する時は、審判の重複を避けるため、家庭裁判所は職権で保佐開始の審判を取り消す。 ③後見(民法843条~875条) 「後見」は、精神障害(認知症・知的障害・精神障害)により「事理を弁識する能力を欠く状況にある者」を対象とする制度で、自分の行動の意味や結果を理解できないため、単独で契約などを行った場合に不利益を被る恐れがある場合に、成年後見人が代わって契約等を行い、本人を保護する制度だ。後見の開始は、本人・配偶者・四親等内の親族・後見人・後見監督人・補助人、補助監督人又は検察官・任意後見受任者・任意後見人・任意後見監督人・市町村長が、裁判所に「後見開始の審判 」を申立てることによって行われ、本人の同意は不要だが、精神鑑定が必要である。 家庭裁判所は後見開始の審判において、本人(成年被後見人)のために成年後見人を選任し、成年後見人には幅広い権限が付与される。本人の判断能力回復により後見開始の原因が止んだ時は、家庭裁判所は本人・配偶者・四親等内の親族・成年後見人・後見監督人等の請求により、後見開始の審判を取り消さなければならない。また、判断能力の回復により、保佐開始又は補助開始の審判に移行する時も、審判の重複を避けるため、家庭裁判所は職権で後見開始の審判を取り消す。成年後見人は、本人の財産に関する法律行為について代理権、同意権又は取消権を付与され、本人のためにその職務を行うとともに、善管注意義務を負う。具体的には、その職務を行うにあたり、「意思尊重義務」「身上配慮義務」が求められる。 ④成年後見監督人等 2000年の改正により、成年後見人・保佐人・補助人の権限乱用に配慮し、成年後見制度の信頼性や安全性をより確実なものにするため、法定後見制度で家庭裁判所が必要と認めた場合は、成年後見人の職務を監督する者(個人・法人とも可)を選任できる旨の規定が設けられた。そのため、成年後見監督人等の職務は、i)成年後見人等の事務を監督する ii) 成年後見人等が死亡で欠けた場合に、遅滞なく後任者の選任を家庭裁判所に請求する iii)急迫な事情がある場合は、成年後見人等に代わって必要な処置をする iv) 成年後見人等と本人の利益が相反する場合は本人を代理する などだ。そのほか、成年後見監督人等は、いつでも成年後見人等の事務に関する報告を求めて成年後見人等の事務や本人の財産状況を調査することができ、本人の財産の管理、その他後見等の事務について必要な処分を命ずることを家庭裁判所に請求したり、監督過程で不正行為を知った場合には、成年後見人等の解任を家庭裁判所に請求したりすることができる。 (ロ)現在の任意後見制度(任意後見契約に関する法律) 任意後見制度は、2000年に施行された「任意後見契約に関する法律」で新設された制度で、本人が契約締結に必要な判断能力を有しているうちに、将来の判断能力低下に備えて任意後見人や支援の範囲等に関して公正証書により契約を行い、実際に判断能力が低下した時に、家庭裁判所による任意後見監督人の選任によってその契約の効力が生じる制度である。 ①任意後見制度の特徴 任意後見制度の特徴は、自らの意思で決める自己決定権の尊重と任意後見監督人の選任による信頼性の確保だ。 ②任意後見契約の締結 任意後見契約は、法務省令で定める公正証書によって代理権の有無・範囲を明確にして作成し、公証人が直接関与することによって委任者の真意による適法で有効な契約締結が担保することが意図され、登記所へは公証人が遺漏なく登記する。 ③任意後見契約の開始と任意後見監督人の選任 任意後見契約の締結後、本人の事務弁識能力が不十分な状態になった時は、本人の住所地を所管する家庭裁判所に対して、任意後見監督人の候補がいる場合にはその旨を記載し、通常は書面で審判の申立を行い、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して任意後見契約が開始される。この申立ができるのは、本人・配偶者・四親等内の親族・任意後見受任者のみである。 ④法定後見と任意後見契約の関係 任意後見契約が登記されている場合には、本人の自己決定権を尊重する観点から、法定後見の開始の申立がなされた時は、任意後見を優先して裁判所は原則として法定後見開始の申立を却下する。ただし、任意後見に与えられている代理権の範囲が狭すぎ、悪質な訪問販売による被害の恐れが強い場合など、本人の利益のために特に必要があると認められる場合には、例外的に法定後見開始の審判をすることができる。 ⑤任意後見制度の利用形態 任意後見制度の利用形態には、i) 本来型(任意後見契約を単独で結び、本人の判断能力が低下してから任意後見を開始するもの) ii) 移行型(任意後見契約と民法の委任契約・代理権授与契約による財産管理等に関する契約を同時に締結し、本人の判断能力が低下してから任意後見を開始するもの) iii) 即効型(判断能力が多少不十分だが契約締結時に意思能力はある者が、任意後見契約の締結と同時に任意後見監督人の選任を申立て、直ちに契約を発効させるもの) がある。 (ハ)後見登記制度 成年後見登記制度は、法定後見(補助・保佐・後見)及び任意後見に関する事柄を公示するための制度で、従来の禁治産宣告・準禁治産宣告の戸籍記載に代わる新たな方法として「後見登記に関する法律(平成11年法律152号)」に基づいて創設されたものだ。これは、後見に関する情報を「登記」という方法によって管理・証明し、この登記情報の開示を求めることができる者を限定することによって、取引の安全性と本人のプライバシー保護の両立を図ったものである。登記は、原則として裁判所書記官又は公証人の嘱託に基づいて行われ、申請に基づいて行われる登記は、変更又は終了の登記等の一部に限られる。 (二)2016年(平成28年)度の改正による影響 ①成年後見人が、家庭裁判所の審判を得て、成年被後見人宛の郵便物の転送を受けることが できるようになった(郵便転送。民法第860条の2,第860条の3) ②成年後見人が、成年被後見人の死亡後にも行うことができる事務(死後事務)の内容と その手続が明確化された(民法第873条の2) ・・参考資料・・ *1-1-1:https://digital.asahi.com/articles/ASN3V6SR3N3VUHBI01J.html (朝日新聞 2020年3月26日) 新型コロナ、死者2万人超 イタリアとスペインで半数に 世界で感染拡大する新型コロナウイルスによる死者数が26日、2万人を超えた。世界保健機関(WHO)や各国政府の発表をもとに集計している米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センターによると、イタリアが7500人超、スペインが3600人超で全体の半数以上を占めた。感染が急増している米国でも1千人を突破。世界の感染者数は同日午後8時現在で47万人を超えている。欧州での感染の中心となっているイタリア政府は25日、死者数が前日比で683人増え、7503人になったと発表した。感染者も7万4386人に達し、8万1千人超の中国に迫る勢いだ。イタリアでは移動の制限や公園の閉鎖などの措置が全土に広がっている。14日に政府が警戒事態を宣言したスペインでは死者数が前日より738人増えた。感染者数も4万9千人超となった。首都のあるマドリード州で被害が集中している。そのほかの死者数はフランスが1300人超、英国が460人超、オランダが350人超で、イタリア、スペインを含む欧州5カ国で計1万3千人超となり世界の死者数の6割を占める状況だ。 *1-1-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020032702000301.html (東京新聞 2020年3月27日) <新型コロナ>世界感染50万人超 米が中国抜き最多 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、新型コロナウイルスの感染者が二十六日、世界全体で五十万人を超えた。二十四日に四十万人に達したばかりで、二十日の二十五万人から一週間足らずで倍増。米国が初めて中国、イタリアを上回って世界最多となり、流行の拡大は新たな局面に入った。勢いは衰えず、終息の気配は見えない状態が続いている。三月は欧州で感染拡大が続いてきたが、下旬からは米国での感染者が急増し、二十七日までに八万五千人を超えた。中国は横ばいで推移、欧州ではイタリアで被害が最も大きい。世界全体の死者は二十五日に二万人を超え、二十六日時点で二万三千人に上っている。世界保健機関(WHO)の二十六日付状況報告によると、感染者の54%、死者の67%は欧州地域事務所管内(旧ソ連諸国を含む)に集中しており、三月に入り「パンデミック(世界的大流行)の中心地」(テドロスWHO事務局長)となったことを如実に反映している。同報告によると、前日からの新規感染者についても、欧州は世界全体の61%と多いが、単独で24%に上っているのが米国で、ここ数日は一日当たり一万人前後の増加が続いている。三億六千六百万人の人口を抱える米国での感染拡大防止策が効果を上げるか否かが、今後の世界的流行の情勢を左右することになる。二十一世紀に入ってからのコロナウイルスによる新たな感染症では、重症急性呼吸器症候群(SARS)が感染者約八千人で死者約八百人、中東呼吸器症候群(MERS)が感染者約二千五百人で死者約八百六十人の被害が出ている。 *1-1-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14418428.html (朝日新聞 2020年3月27日) 感染集中、NYの医療窮地 病床、14万床必要なのに5万床 新型コロナ 全米最大の都市、ニューヨーク(NY)市で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。全米の感染者数の3割が集中。病床や人工呼吸器の数が不足しており、医療崩壊が懸念されている。25日昼、NY市のジョン・F・ケネディ空港の出発ロビーには、感染を避けようと防護服に身を包んだり、大型ゴーグルを着けたりする乗客たちの姿があった。「NYで暮らすリスクはあまりにも高すぎる」。市内の金融機関勤務のアジア系男性がマスクを押さえながら語った。「NYからの逃避」という言葉が、たびたび報じられている。 市内で感染者が最初に確認されたのは今月1日だが、3週間あまりで約2万人まで増え、死者も280人に達した。デブラシオ市長は25日夕、会見で「NY市はこの危機の中心地だ」と危機感をあらわにし、「4月は、3月より厳しい状況になる」と語った。感染者が次々と確認される中、医療態勢の不備が懸念されている。NY市によると、最も多くの感染者が出ているクイーンズ地区の公立病院「エルムハースト・ホスピタル・センター」(545床)では24時間のうちに感染患者13人が死亡した。集中治療室がいっぱいになり他の病気の患者を別の医療機関に移し始めた。NY州のクオモ知事によると、州内では今後2~3週間で感染者数がピークを迎え、最大で推計14万床必要だが、州内には約5万3千床。NY市内の大型会議場を含む4カ所に仮設病院を作っているが、まだ足りない。人工呼吸器も、NY市だけで1万5千個必要だが、その6分の1しかないという。NY市当局の初期対応にも注目が集まる。デブラシオ氏は今月2日時点で「1200床のベッドを確保している」と強調し、「我々には対処する能力がある」と封じ込めに自信を見せていた。12日に緊急事態宣言。その後も、1866校ある市内の公立校は「給食に頼っている子どもも多い」と続けており、保護者や教員の要請を受け、16日に休校した。ニューヨーク・タイムズ紙は「デブラシオ氏は、日常生活を送るよう市民を促し続けた」と批判し、保健当局の複数の担当者が「市長が態度を改めない限り、辞任する」としていると伝えた。市の対応が後手に回った感は否めない。 *1-1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55420100Y0A200C2000000/ (日経新聞 2020/2/8) 新型肺炎、各地で広がるアジア人差別 NYで暴行被害 中国で多数の死者を出している新型コロナウイルスの拡大を受けて、世界各地でアジア人への差別が問題となっている。米ニューヨークの地下鉄の駅では男がマスクをつけたアジア系の女性に暴行を加える事件が発生した。SNS(交流サイト)の普及で差別的な発言やヘイトスピーチ(憎悪表現)が拡散しやすくなっており、冷静な対応が求められている。「マスクの中国人女性が暴行された」。ニューヨーク在住のトニー・ホー氏は4日、ツイッターに事件の様子をとらえた動画を投稿した。マンハッタンの地下鉄の駅内を走る女性の前に突然、男が立ちはだかり「俺に触るな」などと罵りながら傘や手でたたく様子が映っていた。ホー氏は「多くのアジア人は新型ウイルスが流行する前からマスクをつけているのに、急に脅威と感じるようになった」と嘆く。「アジア人が事件に巻き込まれても、その情報は広まらない。アジア人は従順で気が弱いと思っている」とも書き込んだ。移民に寛容なイメージの強い隣国カナダも例外ではない。トロント近郊の中国系住民が多く住む地区では、最近中国を訪れた家族のいる子どもをしばらく通学させないよう学校に求める署名運動が起きた。インターネット上で約1万人の署名が集まったが、学校側は「安全の確保という善意に基づいていたとしても、隔離を求めるのは人種差別だ」として要求を却下した。中国料理店のサイトへの人種差別的な書き込みや学校でのいじめなども報告されているという。欧州で初の感染者が確認されたフランスでも「アジア人には近づかないほうがいいと露骨に避けられた」などの声が上がっている。ジャーナリストのリンラン・ダオ氏はツイッターで「アジア人だからと侮辱され、公共交通機関から蹴り出される。これは冗談やネット上のヘイトではなく、現実に起こっていることだ」と訴えた。差別の対象となっているのは中国系住民だけではない。仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン」の公式アカウントがSNSに掲載した日本人女優の広告には「コロナウイルスか?」といった差別的なコメントが多数寄せられた。問題のコメントは現在は削除されているが、ルイ・ヴィトン側が1週間近く対応を怠ったとしてネット上では非難の声が上がっている。仏紙パリジャンは「中国人か韓国人かなんて分からないから、アジア人の横には座らない。差別ではなく予防だ」という市民の意見も紹介した。米紙ニューヨーク・タイムズは、日本でもツイッターで「中国人は日本に来るな」がトレンド入りしたことを取り上げた。同紙は「中国の経済・軍事力の成長がアジアの隣国や西欧諸国を不安にさせる中で、新型コロナウイルスが中国本土の人に対する潜在的な偏見をあおっている」と分析している。フランスでは「私はウイルスではない(#JeNeSuisPasUnVirus)」として、ツイッターで人種差別をやめるよう訴える投稿が相次いでいる。仏国立人口学研究所のヤーハン・チャン氏は地元メディアの取材に対し「学校や公共機関での教育活動が必要だ。アジア人への人種差別を止めるため、やるべきことがたくさんある」と述べた。国連のグテレス事務総長は4日に新型肺炎を巡り「人種を理由にした差別や人権侵害を懸念している」と発言した。 *1-1-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57057480R20C20A3I00000/ (日経新聞 2020/3/21) ジャカルタ、新型コロナで非常事態宣言 オフィス利用中止を要請 インドネシアの首都ジャカルタのアニス州知事は20日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて非常事態宣言を出した。州内の全企業にオフィス利用の停止を強く求めたほか、娯楽施設の営業を禁止した。人の移動を制限して感染拡大を食い止める狙いだが、ジャカルタには企業が集中していて、ビジネスに大きな影響が出ることは避けられない。当面、4月2日までの2週間を「災害非常事態」として、州内の全企業に原則としてオフィスを利用しないよう要請するほか、市内の映画館やバー、カラオケ店などの営業を禁止する。公共交通機関の運行も減らす。アニス氏は「責任のある態度とは、外での活動をすべてやめることだ」と述べ、住民に対して、仕事以外でも外出をしないよう求めた。インドネシアでは20日までに369人が感染し、32人が死亡した。感染者の6割がジャカルタに集中する。州政府は14日、全住民に対して外出しないように要請したが、強制力を伴わず、出勤を続ける住民も多かった。感染拡大が続くため、より強い対応が必要と判断した。非常事態宣言中は州内に軍や警察が展開して、住民の外出を事実上制限するという。周辺自治体も含めたジャカルタ首都圏には約3000万人が住む。ジャカルタ特別州だけでも個人企業もあわせて120万の企業が集まるインドネシアの経済の中心だ。首都の人の移動が大きく制限されることで、経済に大きな影響が出そうだ。 *1-1-6:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57193700V20C20A3000000/ (日経新聞 2020/3/25) インド、新型コロナで全土封鎖 25日から21日間 インドのモディ首相は24日、国民向けにテレビ演説し、新型コロナウイルスへの感染防止策として全土を25日から21日間、封鎖すると表明した。モディ氏は「ウイルスと戦うには社会的な距離を保つしかない。人々は外出が禁じられ、安全のため家で過ごしてほしい」と述べ、国民に外出を控えるよう呼びかけた。インドは22日に全土で外出禁止を命じ、その後は感染者が確認されていたデリーなどの75地区を31日まで封鎖する方針を示していた。モディ氏は「医療サービスが世界最高級とされたイタリアや米国でも感染拡大が防げていない。家にいる以外は手段がない」と強調し、一段と厳しい措置に踏み込むことを決めた。病院や検査機器などの医療インフラに対し、1500億ルピー(約2200億円)を拠出する考えも表明した。インドでは既に工場や航空便などが停止している。モディ氏は「経済的なコストが伴うが、ウイルスと戦うには断固とした措置が欠かせない」と言及。シタラマン財務相を中心に景気対策を検討しており、近く公表するとしている。 *1-2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020021601001755.html (東京新聞 2020年2月16日) “地元いじめ”に和歌山知事怒り ドローン撮影、返礼品拒否 外科医らの新型コロナウイルス感染が判明した和歌山県湯浅町の済生会有田病院の病棟内をドローンで撮影しようとしたり、ふるさと納税に対する町の返礼品を拒んだりするなどの“地元いじめ”が相次ぎ、仁坂吉伸知事が16日の記者会見で怒りをあらわにした。県によると、感染した外科医の担当病棟がある3階付近を飛ぶドローンが14日から連日確認されているほか、「ふるさと納税の返礼品の受け取りは拒否できるか」との問い合わせが町にあった。本来は健康上の不安を相談するための県の電話窓口に「病院の患者の住所を教えてほしい」との要求まで来たという。仁坂知事は「怒りを感じる」と訴えた。 *1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57239130V20C20A3EA2000 (日経新聞 2020.3.26) 入院 患者の選別カギに 世界の感染者数は3日間で10万人増えるなどペースが加速している。東京都も25日、41人の新規感染を確認し、今週末の不要不急の外出自粛を求めた。患者が急増した場合、数が限られる病床を重症者に優先的に振り向ける対応が求められる。政府は感染症指定医療機関などで個室管理可能なベッドを1万2千床確保する。ただ爆発的な感染拡大が起きれば、厚生労働省の最悪の想定では東京だけで1日4万5千人の感染者が出ると推計される。そうした場合、政府は病床は重症者などに使い、無症状や軽症者には自宅療養を求める方針。もっとも、こうした「トリアージ」が円滑にいくかは不透明だ。都内の新型ウイルス専門外来の医師は「レントゲンでは明らかに肺炎なのに、本人は元気なことがある。見極めは簡単ではない」と話す。都の担当者も「入院している軽症者に『帰ってください』と説得できるのか。都で宿泊施設を確保するなど対応が必要になるかもしれない」と悩む。愛知県は24日、医療機関外で無症状や軽症の約100人を受け入れられる施設を月内にも開設すると発表した。相模原市も重症者に向けた病床を確保しておくため、一部の軽症患者らに自宅待機を要請しているという。 ◇ 国内で25日に新型コロナウイルスの新規感染が確認されたのは午後9時現在78人で、感染者は41都道府県の1256人となった。東京都と北海道、愛知県でそれぞれ高齢者1人が死亡した。 *1-2-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55811680Z10C20A2I00000/ (日経新聞 2020.3.25) 新型コロナ、41都道府県で1269人感染 都で新規41人 (3月25日午後10時現在) 新型コロナウイルスの感染が国内で広がっている。各自治体などによると、国内での感染者は25日午後10時までに1日の感染確認として最多の91人の感染が新たに確認されて計1269人に上っている。東京都の感染者数は210人で、都道府県で初めて200人を超えた。感染確認は計41都道府県。このほか海外から入国して空港検疫で確認されたのは23人(25日正午現在)。手洗いの徹底など一人ひとりの感染症対策が重要となる。なお、前日午後10時より後に明らかになるなどした感染者や退院患者、死者は当日の新規分には含めていない。 *1-2-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200327&ng=DGKKZO57276430W0A320C2EA1000 (日経新聞 2020.3.27) 「首都封鎖」を防ぐために行動を見直そう 新型コロナウイルスの感染拡大が「重大局面」を迎えつつあるのは間違いない。感染者が急増している東京都と関東近県が週末の往来を自粛するよう住民に求めた。感染者の爆発的な急増(オーバーシュート)を防ぐ措置として、やむを得ない。今週に入り、東京都内の新たな感染者の報告数は24日から25日にかけて、2倍以上に急増した。海外渡航者を起点にした感染者集団(クラスター)が、すでにいくつも形成されている恐れがある。外務省は全世界を対象に不要不急の渡航中止を求めた。北海道は外出自粛の効果もあり爆発的な増加を免れた。首都圏もこれをモデルに感染者集団を抑え込む努力が不可欠だ。しかし、東京は通勤・通学で近県から1日300万人近くが行き来する。感染経路の特定が難しく、封じ込めは容易ではない。政府は26日、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく対策本部を設置し、いつでも緊急事態宣言を出せるようにした。緊急事態宣言の目的は医療の機能不全を防ぐことだ。感染者の増加を遅らせ、その間に医療態勢を整えて死者を増やさないようにする。そのための措置が、厳しい外出制限だ。緊急事態を宣言すれば各国の「都市封鎖」に近い状態になり、社会や経済の活動が一段と制約される。今はその一歩手前だ。「首都封鎖」という最悪の事態を招かないためにも、一人ひとりが今の状況を自覚し、外出や飲食を伴う集まりを自粛するなど行動を見直すことが重要だ。住民に協力を求めるには、国や自治体が情報開示を徹底して信頼を得る必要がある。最悪の場合、感染はどこまで広がりうるのか、行動制限や外出自粛でどの程度抑制できるのか、どんな条件を満たせば普段の生活に戻れるのか。明確でわかりやすい説明が信頼を育み、対策の効果を上げる。政府の専門家会議は19日に大都市圏で感染者の爆発的な急増が起こる可能性が高いと指摘していたが、そのメッセージが浸透していたとは言い難い。政府が学校の休校を解除すると決めたのも、誤った安心感を与えた可能性がある。特に若い世代に危機感が薄い傾向があり、伝え方に工夫が必要だ。危機対応では専門家の知見を踏まえて国民に行動を促すのが、政治家の役割だということを改めて肝に銘じてほしい。 *1-2-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/590238/ (西日本新聞 2020/3/8) インフル患者、前年から6割減 新型コロナで予防浸透 新型コロナウイルスの感染が広がる一方で、インフルエンザの患者数が急減している。医療機関の報告を基にした厚生労働省の推計によると、2020年の全国の累計患者数(3月1日時点)は、前年同期(約1024万人)の4割を切る約397万人で、600万人以上減少した。新型コロナウイルスの感染予防で手洗いやマスク着用などが徹底されたことが奏功しているようだ。厚労省がまとめた約5千の定点医療機関からの報告によると、20年の患者数のピークは1月6~12日の週で1医療機関当たり平均18・33人。前年ピークの週(1月21~27日)の57・09人を7割近く下回った。九州各県も同様の傾向で、今年ピークとなった週の患者数は、熊本県が15・99人で前年ピークより約7割減少。福岡(23・55人)や大分(26・59人)なども約6割減った。厚労省は昨年11月15日、例年並みだった前年より1カ月ほど早く全国的な流行が始まったと発表した。昨年9月~12月末までの患者数は約315万人で、前年同期の約106万人を大きく上回る勢いだった。だが、昨年12月以降、中国・武漢市で新型コロナウイルスの感染が急拡大。1月15日には国内初の感染者が確認され、マスク着用やせきエチケットなどの感染予防の取り組みが全国に浸透していったとみられる。厚労省感染症情報管理室の梅田浩史室長は「一人一人の感染予防意識が高まったことが要因で予防対策の効果が示された。新型コロナウイルスの感染拡大防止にもつながるだろう」と分析した。 *1-2-6:https://forbesjapan.com/articles/detail/33158 (Forbs JAPAN 2020/03/19) 日本で新型コロナが「感染爆発」しない理由 浦島充佳:東京慈恵会医科大学教授 3月11日、ドイツのメルケル首相は、「ドイツ国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染する可能性がある」と警戒を呼びかけた。こんなことが本当に起こりえるのだろうか?これが現実になった場合、感染者のうち1~2割が重症化し、入院治療が必要になること考えると、医療崩壊は免れないだろう。しかし、私はそうはならないと考える。その理由は新型コロナの感染拡大パターンにある。 ●新しい感染症が入ってくるとどうなる? メルケル首相の言葉は、新しい感染症に対する基本モデルに基づいている。ある感染者がその感染症に対する免疫を持たない集団に入ってきた場合、かなりの勢いで広がっていく。しかし、集団免疫という考え方がある。感染から回復し免疫を得た人々が「免疫の壁」として立ちはだかるようになり、未感染者が感染者から感染するのを阻止する形となるのだ。すると、一定の未感染者を残しながらも、感染拡大は停止する。ウイルスの感染力が弱まって感染拡大が止まるわけではない。 ●60%から70%が感染のカラクリ ある感染者がその感染症に免疫を全く持たない集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均の人数を「基本再生産数」と呼ぶ。これが1より大きければ感染は拡大し、1であれば感染は定常状態となり、1未満になれば感染は終息に向かう。新型コロナ、インフルエンザ、SARS の基本再生産数はだいたい2~3といわれている。計算式に当てはめると、基本再生産数が3のとき、集団免疫による感染拡大停止までに67%が感染することになる。メルケル首相が、「国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染可能性」を示唆した背景には、この計算があるのだろう。しかし、これは集団が新型コロナに対して全く免疫を持っていないという仮定に基づいている。 ●私たちは新型コロナウイルスへの免疫を持っている? 2009年にパンデミック化した新型インフルエンザを思い出してほしい。基本再生産数が3だったとしても国民の6~7割が感染するようなことはなかった。季節性インフルエンザに対する免疫が、新型インフルエンザにもある程度有効だったと私は考える。そもそも「新型」ではない「コロナウイルス」は、主に子供の風邪のウイルスとしてありふれたものである。これは「新型コロナウイルス」とは別物であり、多くの人が年に1,2回は感染している。そのため、子ども、子育て世代、小児科医などは新型コロナに対しても免疫を持っているかもしれない。また、新型コロナは8割が軽症である。無症状で経過する人も相当数いる。日本には春節前から多くの中国人が訪れていた。あくまで推測の域をでないが、既に日本人の多くが自分でも知らない間に感染しているかもしれない。そうであれば、先に示した集団免疫の作用で感染爆発は起こり難い。またメルケル首相の発言には「仮に政府が何も対策をとらなかったら」という仮定も入っている。しかし、日本も含め多くの国が既に強い対策に打って出ており、また人々は行動変容を起こし、大勢の人が集まるところに出かけることを控えている。よって、無防備に感染が拡大するとは考えにくい。新型コロナの感染拡大パターンは、次のようなものである。 ●新型コロナの感染パターン 3月9日夜、新型コロナ対策専門家会議の記者会見があり、新型コロナ対策専門家会議・尾身茂副座長が疫学的知見を発表している。感染症が進行中の集団の、ある時点における、1人の感染者から発生した二次感染の平均の数である、「実効再生産数」について述べている部分を引用する。「現時点において、感染者の数は増加傾向にあります。また、一定条件を満たす場所において、一人の感染者が複数人に感染させた事例が、全国各地で相次いで報告されています。しかし、全体で見れば、これまでに国内で感染が確認された方のうち重症・軽症に関わらず約80%の方は、他の人に感染させていません。また、実効再生産数は日によって変動はあるものの概ね1程度で推移しています」。新型コロナの基本再生産数は2〜3である。対して、実効再生産数は1。要するに、日本国内で感染が広がっている速さを示す実効再生産数は、現在、ウイルスの持つ感染力を示す基本再生産数を下回っているということだ。 ●新型コロナの感染状況をビジュアル化 実効再生産数が1ということは、10人の患者から新たに10人の二次感染患者が再生産されることになる。しかし、専門家会議は「80%が誰にも感染させていない」としている。例えば、新型コロナウイルス感染患者が10人いたとする。そのうち8人は誰にも感染させず、2人が感染させる。一旦感染すると2週間など長期にわたって咽にウイルスをもち感染力を保ったまま活動できてしまうので感染が拡大する。そのため実効再生産数が1であっても、患者数は増加し得る。では、感染を終息に向かわせるにはどうするべきか?図3のように、例えば2つのライブハウスでの感染をブロックできれば、10人から3人の患者しか発生しないので、やがて患者数は減っていく。だれがウイルスをもっているか判らなく、感染力も強く、致死率が高い。このような場合で、かつ感染拡大パターンを最初に示した基本モデルで考えると、感染拡大を止めるにはどうしても外出自粛、休校、移動制限、地域封鎖となってしまう。新型コロナの場合、確かにだれがウイルスをもっているか判らないことが、人々に大きな恐怖心を植え付けている。しかし、私達は今までの経験からクラスター(集団感染)を形成しやすい条件を知っている。それは、換気の悪い室内で、不特定多数と長時間会話したり、食事をしたときだ。 ●エアロゾル感染のリスクは「換気」で減らす 3月9日の専門家会議の記者会見で「みなさまにお願いしたいこと」として以下の点が指摘された。1. 換気の悪い密閉空間、2. 多くの人が密集、3. 近距離(互いに手を伸ばせば届く距離)での会話や発声 という3つの条件が同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。これを多くの市民が実施できれば、クラスター発生を予防でき、国が強権を発動せずとも感染は終息に向かうであろう。実際、諸外国と比べて日々の感染者数は数十人で収まっている。ただ、人は同じ説明を聞いても、何も気にせず日常生活を送れる人もいれば、家から一歩も出られない、仕事にも行けない人まで様々であろう。レストランで外食したり、会社で仕事をしたりというのは上記1・2・3にあてはまるからだ。そこで、人々の不安を少しでも解消し、対策の一助になればと思い、感染のメカニズムを解説したい。会話やくしゃみで飛沫が飛び散る。大きな飛沫は放物線を描いて地面に落ちる。しかし、目に見えないくらいの小さな飛沫粒子、いわゆるエアロゾルは数時間室内を空気のように浮遊する。大きな飛沫による感染は(3)の近距離での会話や発声に対応する。これは、お互いにマスクをしていれば予防できるし、マスクがない場合には1~2メートルなど距離を開ければ解消できる。エアロゾルによる感染は(1)の換気の悪い密閉空間に対応する。新型コロナウイルスは1時間で半減するものの、数時間は感染性を保ったままエアロゾルとして空中を浮遊することが最近アメリカの研究チームにより報告された。これは窓を開けて空気を入れ替えれば、解消される。外であれば、まず問題にならない。人数が数十人、数百人と多くなればなるほど、その中にウイルスをもった人がいる確率があがる。(2)の多くの人が密集というのは、このことを指している。しかし、新型コロナの発生がほとんどない地域では気にしなくてもよいかもしれない。「3つの条件が同時に揃う場所」を言い換えれば「1つの条件が解消されていれば避ける必要はない」ということである。例えば十分な換気をはかれればよいことになる。また十分な換気ができなければ、マスクをするか、距離をとればよいことになる。 ●今後の日本は如何に? 2月後半、1日の報告件数が10人、20人と増えだした。これに対して、日本政府は在宅勤務の推奨、大型のイベント自粛、休校を要請した。患者数の推移を海外と比較すると、日本は地域を封鎖したり、移動制限や外出自粛を強要したりすることもなく、何とかよく持ちこたえていると思う。これは政治決断の効果でもあり、日本人1人1人ができることをやっている成果であるとも思う。今後は、患者数の推移を慎重にみながら、屋外や換気を十分するといった条件で、社会活動を少しずつ再開してもよいのではないだろうか。とはいえ、大規模イベントや、今までクラスターのあった場所での活動の再開は慎重にするべきである。危機管理の基本は、初動において厳しい対応をして、様子を観ながら徐々に緩めるのが鉄則だ。 *1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200315&ng=DGKKZO56809510U0A310C2MM8000 (日経新聞 2020.3.15) 米欧、新型コロナ対策総動員 検査拡充や企業支援、米、非常事態で5兆円 新型コロナウイルスの感染が拡大する米国や欧州で、各国政府が緊急対策に動いている。トランプ米大統領は13日に国家非常事態を宣言し、最大5兆円超を投じてウイルス検査などを拡充することを決めた。欧州各国では医療体制の強化や企業の資金繰りの支援が広がる。感染拡大による社会の混乱や景気の失速を防ぐために、政策を総動員して対応にあたる。トランプ氏は13日、非常事態宣言によって「連邦政府の力を最大限に引き出す」と力説した。災害対策基金など最大500億ドル(約5兆4千億円)を地方政府に振り向ける。最大の柱はウイルス検査の見直しだ。米政権は規制を一時的に緩和し、スイス製薬大手ロシュが開発した24時間以内に4千件超を検査できるシステムを緊急で承認した。スーパーや薬局の駐車場での「ドライブスルー検査」も全米に広げる。米ジョンズ・ホプキンス大の集計では米の感染者は2100人を超え、死者は47人に達した。感染者は46州と首都ワシントンで確認し、ほぼ全米に広がっている。新型コロナで打撃を受けた企業や個人の支援も強化する。非常事態宣言により、新たに中小企業の支援に70億ドルのローンを提供できるようにした。戦略石油備蓄を積み増すため大量の原油を購入し、エネルギー会社も支援する。個人には学生ローンの利息支払いを免除する。14日には議会下院が野党・民主党の経済支援策も可決した。新型コロナの無償検査、有給の病気休暇、失業保険の拡充、低所得者向け食糧支援などを盛り込んだ。トランプ氏も法案に署名する考えで、近く成立する公算が大きい。感染者の広がりでは、欧州の置かれた状況はより深刻だ。感染者はイタリアが1万7千人超と中国に次いで多い。同国政府は最大250億ユーロ(約3兆円)程度の経済支援策を用意する計画だ。売り上げが大きく減った企業の支援、医療体制の拡充などに充てる。スペインでも感染者が5千人を超え、サンチェス首相は13日に非常事態を宣言した。政府が強制力を持って人の往来を制限したり、一定の物資を管理下に置いたりすることができるようになる。ドイツ政府は13日、新型コロナの感染拡大の影響を受けた企業の資金繰りを支援するため、総額に上限を設けない無制限の信用供与を実施すると発表。メルケル首相は同日「必要なことは何でもやるつもりだ」と語った。フランスは休校中の子供の世話などで欠勤せざるをえない従業員への給与補償、企業の納税の延期・一部免除などを順次実施する。こうした措置で数百億ユーロ(数兆円)の予算が必要になるとみられる。英国は2020年度の政府予算で300億ポンド(約4兆円)規模の経済対策を講じる方針だ。医療体制の強化や休業補償などにあてる。米国を中心に人の移動制限に加えて、財政政策も打ち出すことで、感染拡大と景気の落ち込みを食い止める狙いがある。 *1-3-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57209430V20C20A3MM8000 (日経新聞 2020.3.26) 現金給付、所得減世帯に 5月にも実施、経済対策50兆円超 GDPの1割 政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、5月にも所得が大幅に減少した世帯に現金を給付する検討に入った。条件が当てはまる1世帯に20万~30万円程度とする案がある。売り上げの急減が予想される飲食業や観光業は割引券や商品券を発行して支える。経済対策の事業規模(総合2面きょうのことば)は名目国内総生産(GDP)の1割にあたる56兆円超をめざす。海外でも米国やオーストラリアなどは新型コロナを巡る経済対策でGDPの1割近い財政出動に踏み切る構えで、日本も足並みをそろえる。リーマン・ショック後の事業規模56兆8000億円を上回る過去最大とする方針だ。海外では事業規模を先に表明することが多いが、日本が目標値を先行させるのは異例となる。日本は個別の政策を積み上げ、積算した規模を公表してきたためだ。新型コロナに伴う株安をにらみ、市場の動揺を抑える狙いがある。安倍晋三首相は2020年度予算案が成立する27日にも経済対策の編成を指示する。裏付けとなる補正予算案を4月上旬にも閣議決定し、下旬の成立を見込む。5月にも給付を始める。事業規模は国による直接支出に加え、融資に伴う金融機関の貸し出し分などを含めた額だ。給付の仕組みは今後詰める。新型コロナの感染拡大を理由とした所得減かを見極めるのは簡単ではない。所得をどの程度減らした世帯を対象にするかや所得制限をかけるかが制度設計の論点だ。フリーランスといった所得の把握が難しい人への対応も課題となる。日本の世帯数は約5300万あり、一定の所得水準を設けて約1000万世帯に絞り込むことも検討する。給付の手法は緊急小口資金の制度を参考にする。同制度は自治体の社会福祉協議会に申請書を出せば、個人の口座に現金が振り込まれる。全国民に配った定額給付金は総額2兆円規模に膨らんだ。多くが貯金に回り消費下支えの効果は乏しかったとの反省がある。雇用確保に向けては従業員を休ませるなどして雇用を維持する企業に支給する「雇用調整助成金」を拡充する。中小企業の場合、賃金相当額の3分の2の助成率を5分の4に引き上げる案が軸となる。従業員を解雇しなかった例では9割の助成も考える。新卒で入社する社員など雇用期間が短いケースでも助成の対象になるよう要件を緩め、内定取り消しが広がらないよう目配りする。飲食業や観光業の支援は消費者が外食や旅行などに支払う料金の一部を国が助成する制度を設ける。日本政府が19年末にまとめた26兆円規模の経済対策は公共事業を中心に執行が進んでいない。緊急的な対応として未執行分の一部も新型コロナ対策に活用する。これに今後編成する30兆円超の対策費を上乗せする。海外では米国はGDP比9.3%にあたる2兆ドル(約220兆円)規模の対策をとりまとめる。 *1-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200322&ng=DGKKZO57075100R20C20A3MM8000 (日経新聞 2020.3.22) 外食・旅行消費に助成 売り上げ急減で重点支援 緊急経済対策 政府は4月にまとめる新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策で、売り上げが急減している飲食業や観光業などを重点的に支える。消費者が外食や旅行に支払う料金の一部を国が助成する制度を検討する。この個人消費への助成策(総合2面きょうのことば)の関連予算は1兆円規模になる可能性がある。新型コロナが直撃している産業に的を絞って強力な支援を実施し、関連業界の雇用を維持する。訪日外国人の減少に加え、政府が要請している大規模イベントの自粛でスポーツ行事やコンサートなどを中止・延期する措置が相次ぐ。旅行や外食を控える動きも広がっており、関連業界は大きな打撃を受けている。政府は観光や飲食のほか、イベント関連支出なども助成の対象にする方向で検討する。飛行機や新幹線など公共交通機関も対象に含める可能性もある。利用者の国籍は問わない。焦点となる国の助成率は今後詰める。たとえば20%を助成することになった場合、飲食店で一定の条件を満たして1000円の食事をしたら800円を消費者が負担し、残りを国が助成することを想定する。助成の仕組みは、政府が各店舗や宿泊施設などで割引となるクーポンを発行したり、インターネット上のホテルや飲食店などの予約サービスを使って支払いをした際に、一部をポイントで還元したりする案がある。高齢者はお金と時間に余裕がある人も多く、高齢者に限って通常より高い補助率を設定して、消費を一段と促すことも想定している。実施期間などは新型コロナの状況をみて判断する。飲食業や観光業などでは、赤字に転落する中小企業が続出することが予想される。そうした中小企業は赤字の規模に応じ、前年度までに支払った法人税の一部を還付してもらうことができるようにもする。「繰り戻し還付」と呼ばれる制度で、災害時には還付対象の企業を広げる規定もある。国税庁は大規模感染症も災害に該当しうると判断している。 *1-3-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57269620W0A320C2MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200326_Y (日経新聞 2020/3/26) G7、新型コロナワクチン開発支援へ 研究機関に拠出 日米欧の主要7カ国(G7)の各政府は、新型コロナウイルスの世界的大流行(パンデミック)を受け、ワクチン開発支援で実績のある国際研究機関に数十億ドル規模を拠出する方向で調整に入った。民間では巨額の資金を出しにくいため、公的な資金を国際協調で集中させて早期の開発・実用化をめざす。中国やインドなど20カ国・地域(G20)に加盟する新興国にも参加を呼びかける。資金拠出の対象として検討しているのは、ノルウェーに拠点を置く官民連携でワクチン開発を推進する国際機関、感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)。日欧などの政府の拠出で2017年に発足した。エボラ出血熱のような世界規模の流行が生じる恐れのある新興感染症に対するワクチン開発推進を主な活動目的としている。今週実施したG20財務相・中央銀行総裁やG7財務相の電話やテレビの会議では、ワクチン開発を効率的に進めるため、先進国を中心に共同で財政支出する必要性で合意していた。日本政府も数百億円を軸に拠出を検討する。中国やインドなどG20加盟国にも協力を求めていく。CEPIは少なくとも20億ドルが必要と試算している。今回のような未知の感染症は流行が続くのか短期で終息するのか判断がつきにくいため、民間企業はワクチンの開発に巨額の資金を投じにくい。このため各国の政府が出し合ったお金をもとに、CEPIが企業や研究所、大学の開発を援助し、治験を加速する考えだ。コロナウイルスが原因の中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発を支援した実績があり、技術転用も期待できる。ワクチンは有効性を確認するための期間が治療薬よりも長く、開発に時間を要する。年単位の時間がかかることが一般的だ。CEPIが主体となって開発に成功した場合でも、日本で使うためには厚生労働省から承認を得ることが必要になるが、弾力的な運用も可能となりそうだ。厚労省は新型インフルエンザが流行した10年、輸入ワクチンについて手続きを簡略化する特例を承認した。 <ハンセン病差別> *2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM6X56YGM6XUTIL02G.html (朝日新聞 2019年6月29日) らい予防法違憲判決から18年、家族の被害にようやく光 ハンセン病の元患者の家族らが起こした訴訟で、熊本地裁はその苦しみを「人生被害」と指摘し、国に賠償を命じた。原告弁護団は高く評価し、今も消えない差別や偏見をなくす契機になればと期待する。一方、国側は今後の対応について明言を避けた。「画期的な判決だ。らい予防法廃止後も偏見と差別を除去しなかったことについて違法性を認めた」。判決後の記者会見で、弁護団の八尋光秀共同代表の表情は硬いままだったが、言葉は力強かった。就学拒否、結婚差別、就労拒否……。判決は、ハンセン病患者の家族について「人格形成や自己実現の機会が失われ、家族関係の形成が阻害された」と指摘した。国が患者の隔離政策を続けたことによって、家族までもが平穏に生活をする権利を侵害されたとして、明確に国の責任を認めた。ハンセン病は、らい菌による感染症。感染力は極めて弱いが、進行すると手足や顔に変形が起きうる。国は1931年に癩(らい)予防法を成立させ、患者の強制隔離政策を推進。戦後「らい予防法」と名を変えた法が廃止されたのは、半世紀以上が経った後の96年だった。元患者が起こした訴訟で熊本地裁は2001年、「予防法の違憲性は明らか」と断じたうえで、「60年以降、96年の法廃止まで、隔離の必要性が失われたことに伴う政策の抜本的な変換を怠った」と厚生相(当時)や国会の責任を認めた。28日の判決はこの判断を踏襲しつつ、96年以降も「偏見差別を取り除くため、正しい知識を普及する活動を行うべき義務を尽くさなかった」と、国の新しい責任を認定した。28日の判決は、人権啓発を担う法務相と、教育を担う文部相・文部科学相の責任に踏み込んだ点でも、01年の判決と異なる。予防法の廃止後も、法務相は「住戸や職場などへの働きかけがなく、活動として不十分だった」と判断。文部相は「教員に対し、誤った教育をしないよう適切な指導」や「差別の是正を含む人権啓発教育」が必要だったのに、怠ったと述べた。判決は一方で、02年以降は「不十分ながら、国などの人権啓発活動の効果が一定程度生じた」として、国の責任を認めなかった。01年の判決や政府の控訴断念、国会謝罪決議などの動きがあったことで、「02年以降は差別被害があっても、隔離政策が原因だったとはいえない」とした。今回の訴訟では、「不法行為を知ってから3年以内に提訴したか」という時効の起算点も争点だった。判決は、元患者の家族が鳥取地裁に起こした訴訟の判決が言い渡された15年を起算点とすることで、原告側の訴えを有効と認めた。鳥取地裁判決は請求を棄却しつつ、差別への対策を怠った国の過失に言及しており、熊本地裁への集団提訴のきっかけとなっていた。 ●救済への課題これから 元患者について国の責任を認めた、01年の判決確定から20年近く。なぜ、家族たちの苦しみに光が当たらなかったのか。「元患者に対する差別や偏見をどうなくしていくかが、あまりにも大きな課題だった。家族の問題までたどり着けなかった」。01年当時に厚生労働相で、控訴断念を決めた協議にも加わった坂口力さん(85)はこう振り返る。28日の判決の後には「家族に被害があったのは事実。裁判の結果にかかわらず、どう解決するかは、我々の大きな課題だ」と話した。家族訴訟弁護団共同代表の徳田靖之弁護士も、「差別と偏見に包まれ生きてきたから、元患者の家族であるという声を非常に上げづらかった」と説明する。元患者の訴訟に加わった遺族はわずかで、実名を公表できた人はほとんどいなかった。元患者の中には、「家族が悲惨な目に遭った。だからこの裁判をするんだ」と訴えた人がおり、弁護団も家族の被害は認識していたが、徳田弁護士は「自分たちが正面から採り上げ、提訴することを怠った」と悔やむ。ハンセン病に対する差別や偏見は根強く残る。13年には誤った認識を持った教員の授業を受けた小学生らが、「骨が溶ける病気」などと感想文を書き、教育委員会が翌年に謝罪したこともあった。28日の判決もこのことに触れ、「正確な知識に基づいた指導がなければ、社会から差別を除去することは困難だ」と指摘した。徳田弁護士は判決後の記者会見で、「国が総力を挙げて差別と偏見の解消に取り組まなければならないと認めたことは大きな前進」と述べ、こう強調した。「国に控訴させないという、大きなうねりを起こすことで、家族が置かれている状況を本質的に変えることが可能になるのでは」 ●求められる政治判断 ハンセン病について正しい情報を発信し、患者の家族への差別や偏見をなくすための義務を怠ったと認定された3省には、動揺が広がった。根本匠厚生労働相は記者団の取材に応じ、「国の主張が認められなかったと聞いている。今後の対応については、判決内容の詳細を確認した上で、各省庁と協議していきたい」と述べた。さらに質問を受けても「関係省庁と協議していきたい」と繰り返し、明言を避けた。厚労省内でも判決直後、担当部署の職員が慌ただしく出入りした。控訴するかどうかについて、ある職員は「判決は法務省や文科省の違法性にも触れている。我々だけでは決められないだろう」と話した。山下貴司法相は判決後、「判決内容を十分精査し、関係省庁と協議した上で、適切に対応する。ハンセン病をめぐる偏見・差別をなくし、理解を深めるための啓発活動を適切に実施する」とコメントした。一方、ある法務省幹部は「ここまで踏み込んで来るとは予想していなかった」と驚きを隠さない。「あまたある差別の中からハンセン病に的を絞った人権啓発を求めるのは、要求が高すぎる」と話した。文部科学省によると、人権教育を担う教師を対象とした研修会でハンセン病について説明するなどしてきた。担当者は「取り組みは裁判で示しているが、その上での判決。判決文をよく読んでみないと何とも言えない」と語る。元患者の裁判では原告の勝訴後、小泉純一郎首相(当時)が政治判断で控訴を断念し、判決を元に被害者の補償立法がなされた。元患者の家族についてはどうか。首相官邸関係者の一人は「まだ政治判断の段階ではない」と語る。菅義偉官房長官は28日午後の記者会見で「国の主張が認められなかったと報告を受けている。関係省庁で判決内容を精査した上で対応する」と述べるにとどめた。 *2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASMCB6GNCMCBUTIL1MP.html (朝日新聞 2019年11月16日) 加害者でなく被害者だった家族 ハンセン病差別の根深さ 長年にわたる国の隔離政策で、ハンセン病の元患者は社会からの偏見や差別に苦しんできた。裁判で国の責任が認められて元患者に補償がされた一方、差別にさらされながら顧みられてこなかったのが、元患者の家族たちだ。家族たちが起こした訴訟で、国に賠償を命じた熊本地裁の判決をきっかけに、家族への補償金支給を定めた補償法が15日に成立し、名誉回復に取り組むための法改正が実現した。元患者たちの取材を長く続けてきた北野隆一編集委員は、家族が起こした訴訟に当初、ある違和感を持っていた。それが「認識の浅さ」だったと思い知らされた経緯を振り返った。 ●「家族が社会復帰の壁」という思い違い ハンセン病の隔離を定めた「らい予防法」が1996年に廃止される前から、元患者への取材を続けてきたが、2016年に提訴された家族訴訟の取材は、初めは気が進まなかった。複数の元患者から「家族が社会復帰の壁になっている」と聞いていたからだ。元患者らは家族に迷惑がかかるからと療養所内で偽名を使っていたが、隔離政策を誤りとして国の責任を認めた01年の熊本地裁判決を機に実名に戻り、故郷に帰ろうとした。だが家族が受け入れず、死んでも実家の墓に骨を引き取ってもらえない――。そんな話だった。だが家族訴訟が結審した後の今年3月、東京で開かれた集会で原告らの話を聞き、私は自分の認識の浅さを思い知った。家族らがときに元患者に冷たく接したのは、日本社会から受けてきたすさまじい差別から身を守るためだった。家族は加害者というより、被害者だったということだ。社会の片隅で息を潜め、沈黙を続けていた家族の心を解きほぐすきっかけは、家族らが定期的に集まる「れんげ草の会」を、熊本で国宗直子弁護士が続けてきたことだった。その会で10年以上かけて家族らの話を聞いた福岡安則・埼玉大名誉教授と黒坂愛衣・東北学院大准教授が聞き書きを本にまとめたことで被害が可視化され、家族らの提訴に結びついた。成立したハンセン病家族補償法は前文で、家族が強いられた「苦痛や苦難」の重大性が認識されず、取り組みがされなかったことについて国会と政府が「深くおわびする」と明記した。知らなかったから許されるわけではないが、家族らが自ら差別の被害を語り始めた今は、もう見ぬふりはできない。補償法にうたわれた日本社会の偏見・差別を「根絶する決意」が問われているのは、国だけではない。 <「犯罪者≒精神障害者」とする精神障害者差別> *3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021102000137.html (東京新聞 2020年2月11日) 相模原殺傷公判 「大麻精神病が影響」弁護側の医師、鑑定否定 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら四十五人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元施設職員植松聖(さとし)被告(30)の裁判員裁判の第十三回公判が十日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれた。被告の精神状態を調べた工藤行夫医師が弁護側証人として出廷し「被告は大麻乱用による大麻精神病で、判断力が著しく低下していた」と述べ、大麻の影響はないとした精神鑑定結果を否定する考えを示した。工藤医師は、関係者の供述調書や植松被告との面接などを踏まえ、事件一年前の二〇一五年ごろ、被告が大麻を乱用するようになり、信号無視や速度違反、けんかなどの問題行動が増えた点に注目。「障害者は不幸をつくる」との思考から「殺す」という考えに至った点には大麻乱用による「飛躍や病的な高揚感」があったと指摘。短時間に四十三人の入所者を殺傷した犯行そのものが「並外れたエネルギーと驚異的な行動力がなくてはできない。全ての行程に異常な精神状態が認められる」と話した。前回七日の公判での尋問で「大麻による行動への影響はなかったか、あっても小さかった」とした大沢達哉医師の鑑定結果について、工藤医師は「大麻による影響を著しく低く評価している」と否定した。公判の争点は刑事責任能力の有無や程度。検察側は「大麻の使用は犯行の決意が強まったり時期が早まったりしたにすぎず、完全な責任能力がある」と主張。弁護側は無罪を主張している。 *3-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/500533 (佐賀新聞 2020.3.16) 相模原殺傷、植松被告に死刑判決、責任能力認定、横浜地裁 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、入所者ら45人が殺傷された事件の裁判員裁判で、横浜地裁(青沼潔裁判長)は16日、殺人罪などに問われた元職員植松聖被告(30)に求刑通り死刑判決を言い渡した。障害者が狙われ、19人もの死者を出した事件。判決は、差別的な主張を繰り返した植松被告の事件当時の刑事責任能力を認めた。被告は初公判で起訴内容を認めたが、弁護側は、心神喪失状態で責任能力がなかったとして無罪を主張していた。争点となった責任能力について、検察側は「パーソナリティー障害」と判断した精神鑑定結果を引用し、特異な考えは人格の偏りにすぎず、正常心理の範囲内と述べた。大麻の影響も少なく、完全責任能力があったとして死刑を求刑していた。弁護側は、大麻による精神障害と反論。乱用によって人格が急変したと強調し、差別的な考えが事件にまで発展したのは「病的な飛躍」で、大麻の高揚感で引き起こしたと訴えていた。公判で被害者は1人を除き匿名で審理。傍聴席内に設けた遺族らの席はついたてで遮蔽する異例の措置を取った。起訴状によると、16年7月26日未明、入所者の男女を刃物で突き刺すなどして19人を殺害、24人に重軽傷を負わせたとされる。また職員5人を結束バンドで廊下の手すりに縛り付け、2人を負傷させたとしている。 *3-3:https://digital.asahi.com/articles/ASMD54FDFMD5UTIL013.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年12月5日) 「生きる気力なくなった」遺族落胆 熊谷6人強殺の判決 埼玉県熊谷市で2015年、7~84歳の6人を相次いで殺害したなどとして、強盗殺人罪などに問われたペルー国籍のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(34)に対し、東京高裁は5日、統合失調症の影響で心神耗弱状態だったと判断し、一審の死刑判決を破棄。改めて無期懲役の判決を言い渡した。判決後、殺害された加藤美和子さん(当時41)ら妻子3人をなくした男性(46)らが都内で会見を開いた。「死刑がひっくり返ることはないと思っていた。裁判官は都合のいいところだけを見て判断した。やりきれないし、納得がいかない」と憤りをあらわにした。法廷で判決を聞いた瞬間、「何も言葉が出なかった」という。男性は「家族を失ってから、どうにか生きていこうと踏ん張ってきた。家族にどう報告したらいいのか……生きる気力がなくなったというのが今の気持ちです」と話した。会見に同席した遺族側代理人の高橋正人弁護士は「一審判決は被害妄想への影響を認めつつも、被告の行動は合理的で説明がつくと判断した。高裁は、被告の供述をことさらに持ち出し、行動制御能力がないと結論づけている。明らかに見誤っている」と批判。検察側に上告するよう求めたことを明らかにした。 *3-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN3B5WR9N32UTFL01G.html?ref=weekly_mail_top (朝日新聞 2020年3月15日) 障害ある子生まれ「おめでとう」と言えますか 木村議員 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で利用者19人の命が奪われるなどした事件の判決が、16日に予定されている。元職員である被告の言葉をどうみるか。事件が繰り返されないためには――。重い身体障害があり、18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村英子参院議員(54)は、障害のある子の誕生に「おめでとう」と言える社会かどうかを問う。どういうことなのか。 ●殺されていたのは私かも 彼の言葉は心の傷に触れるので、集中して公判の報道を見ることができませんでした。施設にいたころの傷ついた自分の気持ちに戻っていくのです。 (裁判で被告は「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」などと語った) 彼が言っていることはみなさんにとっては耳慣れなくて衝撃的なのでしょうが、同じような意味のことを私は子どものころ、施設の職員に言われ続けました。生きているだけでありがたいと思えとか、社会に出ても意味はないとか。事件は決してひとごとではありません。19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれない。殺されていたのは私かもしれないという恐怖が今も私を苦しめます。私は横浜市で生まれ、生後8カ月のときに歩行器ごと玄関から落ち、首の骨が曲がる大けがをして重い身体障害を負いました。小学5年から中学3年の5年間を除き、18歳までの大半を施設で暮らしました。入所は親が決めました。重い障害のある私に医療や介護を受けさせたいという責任感と、施設に預けなければ家族が崩壊しかねなかった現実からです。私には24時間の介護が必要です。親は疲弊し、一家心中をしようとしたことも何度かあった。親が頼れるのは施設でした。やさしい職員もいましたが、私にとっては牢獄のような場所でした。施設が決めた時間に食事をしてお風呂に入って、自分の暮らしを主体的に決めることがない。食事を食べさせてもらえないことも。一番嫌だったのは「どうせ子どもを産まないのに生理があるの?」という言葉です。全ての施設がそうだとは思いませんが、私がいたのはそういう施設でした。時代が変わっても施設とはそういうものだと私は思っています。プライバシーも制限され、自由のない環境で希望すら失い決まった日常を過ごす利用者を見た人たちが、「ともに生きよう」と思えるでしょうか。偏見や差別の意識が生まれたとしても不思議ではありません。私は、被告だから事件を起こしたとは思えない。 ●公園で浴びた排除の視線 (裁判では、新たな事実が明るみに出たものの、事件に及んだ動機や真相は十分には解明されなかった。同じような事件を繰り返さないためにどうすればいいのか) 被告を罰しただけでは社会は変わらない。第2、第3の被告を生まないためには、子どものころから障害者とそうでない人が分け隔てなく、地域で暮らせる環境をつくることが必要です。私が望むのは、障害のある子どもが生まれたとき、「おめでとう」と言える社会。私は親から施設に捨てられた、歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました。うしろめたい存在だと思うことも、絶望感のなかで仕方のないことだとあきらめていた。歓迎されない命などない、と気づいたのは19歳で地域に出てからです。23歳で結婚し、息子を出産しました。不安だったのは、子どもをかわいいと思えるかでした。母に抱かれた記憶があまりない私は、母に対する愛情が持てなかった。でも出産した時は、子どもへのいとおしさがこみあげました。公園デビューをしたときのことです。息子と子どもたちが砂場で遊んでいるのを、車いすに乗った私が近くで見ていました。だれも私が母親だとは思っていない。私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまった。自分の子どもが私に近づくと「そっち行っちゃダメ」。小学校の授業参観でも教室が狭くて、他のお母さんたちが入れないので「詰めていいですよ」と言っても、半径1メートル以内には近寄ってこない。私と関わると厄介なことになる、巻き込まれたくない、といった意識が働くのでしょう。本人たちは差別とは思っていませんが、あからさまな差別です。障害のある人とそうでない人を分けることによってお互いが知り合う機会を奪われることから差別は生まれます。社会から排除することそのものが差別なのです。地域で暮らして35年。福祉サービスは増えましたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外だったり、移動支援が自治体により差があったり。普通学校への入学が重度障害を理由に認められない例もある。こうした課題をみんなで解決できたとき、障害のある子が生まれて「おめでとう」と言える社会になる。それが事件を乗り越えることになるのではないでしょうか。 *3-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020032201001730.html (東京新聞 2020年3月22日) 知的・精神障害者は雇わず41% 自治体調査、13%は募集除外 全国の自治体(1788)を対象とした共同通信アンケートで、首長部局に知的、精神障害者を一人も雇用していないと回答した自治体が少なくとも41%の731自治体に上ることが22日、分かった。全体の13%に当たる230自治体は、一般職員(短時間を含む)の募集条件から知的、精神障害者を除外していた。障害者雇用を巡っては、中央省庁で2018年夏に採用人数の水増しが発覚。厚生労働省は同年12月、特定の障害種別によって応募を制限しないよう自治体に通知した。しかし知的、精神障害については、体調管理や仕事の創出が難しいことを理由に、障壁が解消されていない実態が浮かんだ。 *3-5:https://keiji-pro.com/columns/164/ (弁護士法人プラム綜合法律事務所、梅澤康二弁護士より抜粋) 刑法第39条の概要|責任能力有無の判断基準と39条が適用される対象 刑法第39条には『刑事責任能力のない人は処罰の対象外とする、または、処罰を軽減する』という記述がされています。法律に違反したなら処罰されるのが当然に思えますが、なぜこうした犯罪者をかばうような法律があるのでしょうか。それは、違法な行為を行った者に対して責任を問うために、事理弁識能力(物事の善し悪しが判断できる能力)と行動抑制能力(自身の行動を律することができる能力)が必要とされているからです。例えば、事情のわからない赤ん坊が誤って機械のスイッチを押してしまい、それによって被害者を負傷させたとします。この場合、赤ん坊を罪に問えません。しかし、責任能力がなかったとしても罪を犯したことには変わらないので、納得がいかない人も多いかと思います。この記事では、刑法第39条についてみていきましょう。 ●刑法第39条とは 以下が刑法39条です。 (心神喪失及び心神耗弱) 第三九条 心神喪失者の行為は、罰しない。 2 心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。(引用元:刑法第39条) ●刑法第39条の対象になる人 刑法第39条が適用されるのは、次のような人たちです。 ●精神障害者 精神障害者の中でも、行為の善悪の判断がまったくつかない人は“心神喪失者”として、判断能力が著しくつきにくい状態の人は“心神耗弱者”として扱われます。 ●泥酔状態者・薬物乱用者 精神障害を持っていなくても、上と同様に、行為の善悪の判断がまったくつかない人や判断能力が低い人ならば、刑法39条の適用対象になります。しかし、自らの意思で泥酔状態に陥ったような場合は、完全な刑事責任を問われる可能性もあるでしょう。 ●刑法第39条が適用された事例 心神喪失が認められ、無罪・不起訴となった事例 睦沢町で2014年2月、井戸掘削会社社長の男性=当時(61)=が自宅に侵入してきた男に刺殺された事件で、殺人などの罪に問われた無職の男(64)に対し、心神喪失として無罪を言い渡した千葉地裁判決について、千葉地検は30日、控訴を断念したことを明らかにした。控訴の期限の同日が過ぎれば、男の無罪が確定する。地検は「判決の内容を精査、検討したが、原判決を覆すことは困難と判断した」とコメント。今後、心神喪失者等医療観察法に基づく措置を地裁に申し立てる。千葉地裁は16日、男の殺害行為を認めたうえで、「統合失調症の影響を強く受けており、行動を制御することが困難だった。心神喪失状態だったとの合理的な疑いが残る」と述べ、男を無罪とした。検察側は「男は心神耗弱の限度で責任能力はある」と主張し、懲役10年を求刑していた。(引用元:睦沢男性刺殺事件 検察側が控訴断念 心神喪失で無罪判決 | 千葉日報オンライン) ●心神耗弱が認められ、減軽された事例 東京都世田谷区の自宅で今年1月、生後3カ月の長女を浴槽に沈めて殺害したとして、殺人罪に問われた無職、鈴木由美子被告(39)に対し、東京地裁の裁判員裁判は30日、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役4年)の有罪判決を言い渡した。島田一裁判長は「子を守るべき立場にありながら、水に沈めるなど犯行態様は悪い」と非難する一方、事件当時は心神耗弱状態だったと認め「治療の必要性が高い」として執行猶予を付けた。(引用元:東京地裁:乳児殺害 母に猶予判決 心神耗弱認める - 毎日新聞) <法定後見制度> *4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/562768/ (西日本新聞 2019/11/26) 適正な類型、どう判断 「後見偏重」修正これから 【成年後見はいま・3】90代の男性が、質問によどみなく答えていく。「息子さんは来ます?」「全く。来ませんね」。福岡県内の高齢者施設。面会に訪れた50代の男性司法書士に「でも、そろそろ来るんじゃないかな。プレゼントをあげたから」。数年前の出来事を口にした。男性は成年後見制度を利用する。法定後見にある三つの類型のうち、判断能力の低下が中間程度の「保佐」とされた。この司法書士が保佐人として生活支援や財産管理に当たる。制度の助けを借りたのは、息子にたびたびお金を渡していたため。施設に来た息子と銀行に向かい、多い日は80万円ほど。渡した額が計400万円近くになった時、施設側が専門家に相談した。司法書士が保佐人になっても要求は続く。1回20万~30万円。男性本人に伝えると「あげてください」。数日空けて「この前の件、本当に振り込んでいいんですか」と尋ねると、理解できていないことがある。貯金は減っている。息子に一度、「お金は親族の体調不良のため」と言われ、親族に確認してみた。返ってきた言葉は「連絡は取っていません」だった。 ∞∞ 法定後見は、判断能力が低い順に「後見」「保佐」「補助」の3類型がある。後見になると最も広い範囲で法的な手助けを受ける。保佐はこれが後見より狭くなり、逆に本人の意向がより尊重される。司法書士は、この本人の意思の尊重と、保佐人に課せられた財産管理の間で悩む。もし息子のきょうだいに「なぜ1人にだけ財産を渡すのか」と問われたら、責任を取れないとも思う。歯止めをかける方法はある。「類型を後見に変更する」「息子に一定額を送金する際は保佐人の同意を必要とする」ことを家庭裁判所に認めてもらえばいい。しかし、本人は一定の認知機能があり、息子のことを悪くは思っていない。自己決定権の尊重という制度の理念に、それは反しないか-。家裁に相談したが、納得いく答えはなかった。国は今、制度を普及させるため保佐と補助を増やす考えを示す。利用者の約8割を後見が占めている現状は、保佐や補助相当の人が手を挙げていないと見ているためだ。今月は、後見人らが勝手に判断せず、本人の意思を尊重する指針案を公表した。利用者に合った類型を当てはめ、意思も重視するという基本があらためて注目されている。ただ、司法書士は思う。「単に保佐や補助を増やすだけでいいのか疑問だし、意思を尊重するにも男性のような例がある。そんな時の対応も考えるべきだ」。後見に慣れた現場を変えるのも容易ではない。後見人は保佐人や補助人より強い権限で、本人を手厚く守ることができる。家裁や専門家、どの類型が適当か診断する医師の間には「後見にしておけば間違いはない」という意識が強い。九州のある司法書士は「保佐や補助は本人ができることと、できないことの見極めが難しい。ほぼ全てを任される後見の方が正直、仕事は楽」と打ち明けた。 ∞∞ その類型を巡り現場で意見が食い違うこともある。福岡県の女性(69)は頭の病気で倒れ、保佐を申し立てることにした。しかし、医師の診断書は「後見相当」。担当した40代の男性司法書士は「本人の状態に合わない」と、そのまま保佐を申し立てた。家裁が鑑定を行い、出した結論は保佐。鑑定費用約7万円は女性の負担になった。司法書士は「後見になると、本人ができることでも後見人が代わりにしてしまう。本人の能力を生かす類型は何か、もっと考える仕組みが必要」と語る。こうしたこともあり、国は今年4月、類型が記憶力や理解力を反映したものになるよう診断書の様式を改めた。福祉関係者が生活状況などを書く「本人情報シート」も作り、判断する材料を増やした。個人に合う類型を選び、意思を尊重する理念に立ち返ろうとする国と、後見偏重が染み付いた現場。理念とかみ合わぬ運用の修正はこれからになる。 × × 【ワードBOX】法定後見の3類型 法定後見は、判断能力がほとんどない人は「後見」▽著しく不十分な人は「保佐」▽不十分な人は「補助」-の3類型がある。支援するのは後見人、保佐人、補助人。本人に代わって契約を結ぶ「代理権」、本人が結んだ不当な契約を取り消す「取り消し権」、本人が契約をする際、同意できる「同意権」があり、類型ごとに与えられる権限は異なる。後見人は代理権と取り消し権があり、日常生活に関する行為を除いて幅広い法的権限が与えられる。 <緊急事態宣言から緊急事態条項にならないために・・> PS(2020年4月1、2、4、6、9、11日):メディアには「緊急事態宣言を出して欲しい」という論調のものが多いが、その原因は、*5-1のように、諮問委員会メンバーの釜萢日本医師会常任理事による「緊急事態宣言を出す時期だ」という発言や指示待ち族が多い国民性だろう。しかし、東京・大阪で患者数が増加しても、院内感染による多数の患者発生もあり、他の地域に患者の急増はないため、新型コロナにかこつけた「何でもあり」は危なすぎる。むしろ過度の外出自粛要請・指示は経済をストップさせ、消費税増税による消費減退に加えて経済活動をストップさせ、企業の倒産や雇用の消滅により別の意味で生命の危険に遭遇する人を増やしそうだ。 WHOは、*5-3のように、世界各地で導入が進む移動制限について、「都市封鎖などの措置は、移動の自由を侵害するため慎重にやらなければならない」と指摘し、安易な運用を戒めている。実際に、*5-4・*5-5のように、新型コロナによる制限が実体経済に与えた影響は大きく、観光業界やイベント業界だけでなく、美容業界はじめ不特定多数の客を扱う店舗へのマイナスの影響が大きい。そのため、*5-6の治療薬アビガンなどはとっくに治療に使っているべきなのに、今から治験とは驚きだし、治療の前提となる検査も十分に行われていないので、「本当に治療する気があるのか?」と思うくらいだ。 また、政府は、*5-2のように、新型コロナをきっかけとして携帯電話会社やIT大手に利用者の位置情報や検索ワード履歴を集めた統計情報の提供を要請したそうだが、これも新型コロナにかこつけたプライバシーの侵害であり、これは興味本位や営業目的にも使えるものだ。 さらに、「医療崩壊・・」という言葉も何度も聞いたが、*5-5のように、観光客の急減で破綻しそうなほど客が減っているホテルなどを軽症者の隔離に利用し、きちんと管理して入院施設の不足を防げばよいだろう。 安倍首相が、*5-7のように、新型コロナ感染拡大防止のため布マスクを全世帯に2枚ずつ配る方針を示されたことについて、私は賛成だ。50年前の日本は、ガーゼを重ねたマスクが普通で、洗って何度も使うのが常識だった。現在は、中国製の紙マスクを使い捨てにするのが普通であるため、それしか知らない人は「布マスクは防護機能が低い」と言って品不足になっているが、布マスクも生地の選び方や重ね方で機能は変わり、紙マスクのように隙間ができないため防護機能をより高くできるかもしれない。また、*5-8のように、高級ファッションブランドのバレンシアガとサンローランが、同ブランドでマスクの生産を開始すると発表し製造に向けて準備中で、グッチもトスカーナ地方のファッション企業から要請を受けて数週間以内に110万枚のサージカルマスクと5万5000着の医療用オーバーオールを寄付する予定だそうだ。そのため、せっかくなら機能的でおしゃれなマスクや医療用オーバーオールができればよいと思う。さらに、*5-9のように、政府が自動車メーカーに人工呼吸器の部品を生産するよう求める動きが相次いでおり、米国はGMに生産を指示し、英国はマクラーレンが生産を計画しているそうだ。また、重症患者には「体外式膜型人工肺」が使われるが、数が少ないためニプロが増産準備を進めているとのことである。一般に、医療機器は、自動車や家電と比較して構造が簡単であるにもかかわらず、(顧みられることが少なかったためか)ちゃちな製品が多い。そのため、外国メーカーの臨機応変の対応に感心するとともに、改良に期待するわけだ。このような中、感染防止のために常時マスクをつけている医師が、メディアで「マスクは感染防止効果がない」などと言っているのは、自己矛盾であるとともに知識と見識が疑われる。 厚労省が、*5-10のように、病院は重症者の治療に専念できるよう、軽症者や無症状の感染者は自治体の用意する施設・ホテル・自宅での療養を検討するよう、4月2日付で都道府県などに通知したことを受けて、東京・大阪だけでなく福岡でもホテル等の確保に向けた動きが出ているそうだ。私は、自宅療養すれば家族や周囲に感染させそうであるため、14日間くらいならホテル等できちんと管理しながら療養できる体制にした方が、皆にとって負担が少ないと考える。 なお、*5-11のように、埼玉県では病床不足でホテル等での療養も検討しているが、そのホテルがまだ決まらないそうだ。しかし、自宅待機している間に重症化しては困るので、これは一刻を争うことで、診断がついて軽症の人を移すホテルを早々に決めるべきだ。そして、オリンピックが延期になり、ビジネスや観光もストップしているため、これは比較的容易な筈で、他の都道府県でも同じだろう。 2020年4月11日、佐賀新聞が、*5-12のように、イリノイ大の研究者が「布マスクはウイルスの拡散や取り込みを防ぐには不十分で、感染防止効果が低い」という調査結果を発表し、厚労省は軽症者らが自宅療養する場合は感染対策として「サージカルマスク等の着用」を挙げたと記載している。しかし、サージカルマスクが手に入らなければ布マスクを使うしかない上、布マスクも下の図のように工夫次第であるため、厚労省は、PCR検査を待っている間に軽症者を重傷者にすることなく、速やかに検査を行って治療を開始できるよう、検査が必要な人に過度に待機させる帰国者・接触者相談センターや保健所を通させるのをやめるべきである。 帰国者・接触者相談センターや保健所が検査のネックになっていることは、*5-13のように、さいたま市の西田保健所長が、「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と言っていることから明らかだ。そして、これは、さいたま市だけの問題ではなく、厚労省の考え方そのものであり、軽症者を重傷化させたり、感染者を増やしたりすることに大きく“貢献”しているため、本末転倒も甚だしいわけである。 ![]() (図の説明:1番左は、広島県の下着メーカーが伸縮性のある生地で作ったマスク、左から2番目は、今治産タオルのマスクだ。また、右の2つは、手作りマスクで、特に子供用にはかわいい柄付きや動物の鼻付きマスクも面白く、喜んで使ってもらえそうだ。なお、下のように工夫された生地もあるので、三密になりがちな国会議員は、気の利いたマスクをして議論したらどうか?) ![]() (図の説明:1番左は、丹後ちりめんに鳥インフルエンザの抗ウイルス加工を施したマスク用生地で、左から2番目は、抗ウイルス加工を施した材料を使う事例だ。そのため、鳥インフルエンザに限らない抗ウイルス加工した資材を、特に駅・病院・ホテル・バス・列車などの公共空間に使ったらどうかと思う。右から2番目は、抗ウイルス加工した丹後ちりめんの説明で、一番右は、綿布に同じ加工を施した説明で、織物はじめ資材も進歩させることができるわけだ) *5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202003/CK2020033102000172.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>「緊急事態宣言 出す時期」 政府諮問委の日医幹部 新型コロナウイルス感染症の急拡大で緊急事態宣言を出す際に政府が判断を仰ぐ諮問委員会のメンバーを務める釜萢敏(かまやちさとし)日本医師会常任理事は三十日の記者会見で、宣言について「個人的には発出し、それに基づき対応する時期ではないかと思う」と話した。政府は、東京都を中心とした感染拡大の現状を踏まえ、発令の要件に適合するかどうか本格的な検討に入った。釜萢氏は、新型コロナウイルスの流行状況などの分析を行い、見解を示す政府の専門家会議と、緊急事態宣言に関する諮問委のメンバーを兼務している。釜萢氏によると、この日の専門家会議メンバーらによる非公式の電話会議でも「もう宣言をした方が良いのではないか」という意見がほとんどだったという。患者が急増する東京では、感染経路が不明の症例が相次ぎ、封じ込め対策が難航。医療機関では防護服やマスクといった必要な物資が不足し、病床(ベッド)が足りなくなる恐れも高まっている。菅義偉(すがよしひで)官房長官は会見で、「ぎりぎりの状態にある。各方面の専門的な知見に基づき、慎重に判断することが必要だ」と強調した。政府は宣言を出した際の経済的な悪影響を懸念してきた。だが、専門家から発令を求める意見が出始めてきたこともあり「そんなことを気にしている場合じゃない」(高官)と急速に危機感を強めている。立憲民主党の枝野幸男代表も「フェーズが変わりつつある。補償とセットになった緊急事態宣言を真剣に検討しなければならない段階に入った」と指摘した。特措法は「国民の生命、健康に重大な被害を与える恐れがある」「全国的かつ急速なまん延により国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある」の二つの要件を満たせば、首相が宣言を出せる。政府は既に「生命、健康に重大な被害」は該当するとしている。発令されれば、対象となった都道府県の知事が外出自粛の要請や、百貨店など大人数が集まる施設の使用制限、学校の使用制限を要請・指示することなどができる。 *5-2:https://mainichi.jp/articles/20200331/k00/00m/010/347000c (毎日新聞 2020年3月31日) 政府、通信事業者に任意で位置情報提供を要請 「クラスター」早期発見狙う プライバシー侵害懸念も 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は31日、携帯電話会社やIT大手に対し、利用者の位置情報や検索ワードの履歴などを集めた統計情報の任意での提供を要請した。人の流れをビッグデータで把握することにより、クラスター(感染者集団)の早期発見につなげる狙いがある。要請先には、NTTドコモなど携帯電話大手3社のほか、ヤフーや楽天、「GAFA」と呼ばれる米IT大手4社も含まれる。これらの企業の統計データを使い、人が密集しやすい地域を早期に把握して注意を喚起したり、特定の検索語の増加と感染者の増加との関連性を見いだすことで、早期に医療体制を整えたりするといった活用法が期待されている。情報は企業側で匿名化するため「プライバシーの問題はない」(総務省総合通信基盤局)としている。同局は「単にデータだけもらっても政府で分析するのは難しい。データをどう使うか企業に提案してもらい、有効となれば施策に生かしたい」としている。ただ、要請に法的な根拠はなく、強制力はない。ヤフーは取材に対し、「顧客のプライバシー保護が大前提。ビッグデータの力で新型コロナの感染拡大防止に貢献できる方法が無いか検討したい」とコメント。携帯電話大手のKDDI(au)は「個人情報保護法などの法律の範囲内で対応したい」としており、アプリを通じて得られる位置情報の提供などを想定しているという。ITを使った感染防止策を巡っては、欧州各国で外出禁止措置の順守状況を確認するため、政府が通信会社と携帯電話の位置情報を共有する動きが出ている。シンガポールでは、一定の距離で接触した人の履歴を記録し、感染者が出た場合に濃厚接触者を割り出すスマートフォンアプリも開発され、感染源や感染先の特定に使われている。個人情報保護に詳しい日本情報経済社会推進協会の坂下哲也常務理事は「感染拡大防止のためにデータ活用するという方向性は理解できる。企業が政府の要請に応じる場合は、集めたデータをどのように匿名化するかを公表しプライバシー侵害の懸念の払拭(ふっしょく)に努めるべきだ」と話す。 *5-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202003/CK2020033102000276.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>「移動制限」丁寧な説明が必須 WHO、安易な運用警鐘 世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は三十日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて世界各地で導入が進む移動制限措置について「各国政府は国民に対し、なぜ必要なのかを隠し立てせず、分かりやすく伝えることが肝要だ」と述べ、安易な運用を戒め、丁寧な説明が必須と強調した。ライアン氏は、都市封鎖などの措置は「移動の自由を侵害するので、非常に慎重にやらなければならない」と指摘。また「都市封鎖だけではウイルスを撲滅できない」と述べ、感染疑い例へのウイルス検査や感染経路の特定、隔離といった対策を決して怠らないようくぎを刺した。またテドロス事務局長も、都市封鎖などは感染拡大を遅らせ、医療体制崩壊を防ぐ「時間稼ぎ」には使えるとしながらも「社会保障制度が整っていない国もある」と指摘。「日々の糧を得るために、毎日働かなければならない人がいることを忘れてはならない」と強調し、移動制限や営業停止措置に伴って収入源を失う人々に配慮した対策を取るよう各国に求めた。ライアン氏は「社会が受け入れられるものであるかどうかを、各国政府は最重視しなければならない」と言明。移動制限を導入する場合、人々が順守して実効性のあるものにするためにも「影響を受ける国民の人権や尊厳が尊重されなければならない」と訴えた。 *5-4:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020032401260&g=eco (時事 2020年3月24日) 自粛による損害、助成を イベント業界、政府に要望―経済対策・新型コロナ 政府は24日、新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリングを首相官邸で開いた。同日はイベント業界の代表者らが出席。中止や延期で影響を受けているイベント主催者らから、自粛で生じた損害への助成や、再開時に必要となる消毒液やマスクなどの費用負担の要望が相次いだ。チケット販売大手「ぴあ」の矢内広社長は感染拡大の影響でコンサートやスポーツなどの国内イベントが中止・延期となった結果、既に1750億円の損失が生じていると指摘。矢内社長は終了後、報道陣に対し、「自粛要請を受けて自らの判断で中止・延期した人たちへの補助をきちんとしてほしい」と訴えた。 *5-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/596774/ (西日本新聞 2020/3/31) 九州初、福岡と佐賀の宿泊施設が経営破綻 新型コロナで観光客急減 新型コロナウイルスの感染拡大による観光客の急減などを受け、九州の2宿泊施設の経営破綻が31日、相次ぎ明らかになった。福岡県うきは市の旅館「原鶴温泉咸生閣(かんせいかく)」は福岡地裁久留米支部に破産を申請。佐賀県武雄市の「武雄センチュリーホテル」の運営会社も破産申請の準備に入り、営業を停止した。東京商工リサーチ福岡支社によると、咸生閣の負債総額は約2億円。新型コロナ感染拡大でキャンセルが相次ぎ、3月中旬から休業していた。創業50年を超える老舗で1998年5月期は売上高約2億5千万円を計上したが施設の老朽化などで集客力が低下。2019年5月期は売上高約7500万円と低迷していた。武雄センチュリーホテルによると、昨夏の記録的大雨や韓国人客の減少で売り上げが減少。新型コロナの感染拡大が追い打ちをかけた。運営会社は瑞穂商事(島根県)で、ホテル従業員約70人は3月31日付で解雇。ホテルを所有する静岡県の宗教法人は「新たな運営会社を早く見つけ、存続させたい」としている。帝国データバンクによると、瑞穂商事などグループ3社はスキー場やリゾートホテルも運営。負債は計約30億円が見込まれる。 *5-6:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020033001002562.html (東京新聞 2020年3月30日) 富士フ、アビガン治験開始へ 新型コロナで、増産も 富士フイルムホールディングス(HD)が、新型インフルエンザ治療薬「アビガン」について、新型コロナウイルス治療のための臨床試験(治験)を近く始めることが30日、分かった。増産も進める。アビガンについては、安倍晋三首相が28日の記者会見で、正式承認に向けた手続きを始める考えを示していた。アビガンを開発した富士フイルムHD傘下の製薬会社、富士フイルム富山化学(東京)が病院と連携して行う。感染拡大が深刻化している状況を踏まえ、治験後は早期に承認される可能性がある。生産能力拡大のため他社への生産委託も検討している。 *5-7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14426289.html (朝日新聞 2020年4月2日) 1世帯2枚ずつ、政府が布マスク 新型コロナ 安倍晋三首相は1日、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、洗濯して繰り返し使える布マスクを5千万余りある全世帯に2枚配る方針を示した。再来週以降、感染者数の多い都道府県から順次配る。首相官邸で開かれた政府対策本部の会合で明らかにした。 *5-8:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200323-00010002-ampreview-bus_all (AMP 2020/3/23)バレンシアガとサンローラン、マスク生産 グッチは医療用衣類寄付 高級ファッションブランドのバレンシアガとサンローランの親会社であるフランスのケリングが、同ブランドでマスクの生産を開始することを発表した。現在フランスに本拠地を置く同ブランドは、従業員に対して新型コロナウイルスへの十分な対策を行いながら、マスクの製造に向けて準備をしているという。生産工程と原料について正式に認可され次第、すぐに生産を開始するとのことだ。また同社は今回の新型コロナウイルスのパンデミックを受け、中国やイタリアに寄付を実施。さらに同社が運営するファッションブランド・グッチはトスカーナ地方のファッション企業からの要請を受け、今後数週間以内に110万枚のサージカルマスクと5万5,000着の医療用オーバーオールを寄付する予定だという。 *5-9:https://www.nikkei.com/article/DGXKZO57384230Z20C20A3NN1000/ (日経新聞 2020/3/30) 人工呼吸器とは 新型コロナで自動車メーカーも生産 海外では、政府などが自動車メーカーに人工呼吸器の部品を生産するよう求める動きが相次いでいる。米国がゼネラル・モーターズ(GM)に生産を指示したのは、非常時に企業活動を指示できる「国防生産法」に基づく措置。英国ではマクラーレンが生産を計画しているという。重症の患者には「体外式膜型人工肺」と呼ばれる装置が使われる。血液をいったん患者の体外に取り出し、酸素を供給し二酸化炭素を排出してから体内に戻す。日本呼吸療法医学会などが調べた1558施設の設置台数は約1400台で、ほかのタイプより少ない。このためニプロが増産準備を進めている。取り扱いに高度な技量が必要で、扱える医療従事者の不足も懸念されている。 ▼人工呼吸器 自力で呼吸できなくなったとき、肺への空気の出入りを補助する。息を吸う時は装置で圧力を高めて空気を肺に送り込む。吐く時は、圧力を低くして空気を排出しやすくする。気管にチューブを挿し込む一般的なタイプのほかに、口や鼻を覆うマスクタイプがある。使われていない装置が多かったが、新型コロナウイルスの感染拡大で不足する懸念が出てきた。 *5-10:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/597841/ (西日本新聞 2020/4/4) ホテルや自宅療養、福岡も 軽症者対象 厚労省通知受け施設確保急ぐ 厚生労働省は3日、新型コロナウイルスの感染拡大状況に応じて、軽症者や症状がない感染者については自治体の用意する施設やホテル、自宅での療養を検討するよう都道府県などに通知したと発表した。大都市圏では感染が急拡大し、入院患者を受け入れる病床が逼迫(ひっぱく)しつつある。重症者に対する治療を優先し、医療崩壊が起きるのを防ぐ狙い。通知は2日付。これを受けて、病床数不足が懸念されている福岡県内では施設確保に向けて個別のホテルなどと調整する動きが出ている。福岡市の高島宗一郎市長は3日の会見で「ホテルを借り切って軽症者に入ってもらったり、自宅で療養してもらったりする準備を進めている」と述べた。既に、宿泊施設側に意向や予約状況などの聞き取りを進めており、状況が整い次第、重症者以外は原則、病院外で療養させる医療体制に移行する考えを明かした。同県内では、同市や北九州市でクラスター(感染者集団)が相次いで発生。県や福岡市によると、2日現在、同市内の感染症病床8床は満床で、県内の66床も3分の2が埋まっている。感染者を受け入れられる一般病床の確保数は「数十床」で、感染が判明しても入院先がすぐに決まらず自宅待機を余儀なくされているケースが頻発している。新小文字病院の医療スタッフ19人が院内感染した北九州市では、21人の自宅待機が続く。入院先を調整していたさなかの厚労省の通知に担当者は「急激な感染者の増え方を見ると自宅療養など次の準備をしなければならない」と話した。同県の小川洋知事は3日の会見で、「今までも民間宿泊施設の活用ができないかという話はしていて、既に検討している。作業を加速させたい」と述べた。現時点で、感染者を受け入れられる病床に余裕がある大分県も医療体制の移行について検討を始める方針だ。3日までの感染者は31人だが、感染症病床と一般病床を合わせた118床を確保。県の担当者は「病床は重症者を優先しなければならない」と感染拡大期に向けた備えを万全にする構えを示した。 *5-11:https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20200409-00130247-fnn-soci (FNN 2020.4.9) 埼玉の軽症者ら78人入院できず 病床不足でホテルなどでの療養も検討 埼玉県で、新型コロナウイルスの感染者のおよそ3割が、入院できずに自宅などで待機していることがわかった。埼玉県では、これまでに253人の感染者が出ているが、8日の時点で、78人が入院できずに自宅などで待機していて、さらに増える見通し。埼玉県・大野知事「当初から感染者病棟と一般病棟、さらに難しいときは、ホテルだけでなく、病院以外の施設や自宅待機と段階的にやっていく計画を当初から立てていた。正直、受け入れ表明した病院が入れられない状況がある」。埼玉県によると、自宅で待機している感染者は、主に無症状や軽症者で、地元の保健所が1日2回程度健康状態を確認しているという。埼玉県は、今後、ホテルなどでの療養も選択肢として検討するとしている。 *5-12:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/511015 (佐賀新聞 2020.4.11) 米専門家、布マスクの防御力低い、限界指摘「理解し使用を」 布マスクはフィルターとしての機能が弱く、新型コロナウイルス感染を防ぐ効果は低いとする見解を、感染防御などが専門の米イリノイ大の研究者らが11日までに公表した。日本では安倍晋三首相が全世帯に2枚配布する方針を表明。今後、無症状の感染者や軽症者らの自宅療養も想定され、専門家は「布マスクで感染を完全には予防できないことを理解して使ってほしい」と呼び掛ける。見解は過去の複数の研究成果に基づく。その一つが、ウイルスのような微粒子に対し、マスクや布製品がどの程度フィルター効果を発揮するかを調べた米国立労働安全衛生研究所の実験だ。医療現場などで使うN95マスクが最も効果が高く、微粒子の95%以上を捉えた。タオルが40%前後、スカーフが10~20%程度、Tシャツが10%前後、布マスクは10~30%程度だった。ベトナムの医療現場で働く人を対象にした別の研究では、不織布のサージカルマスクに比べ、布マスクを着けた医療関係者の方が感染してしまう割合が高かった。こうした結果からイリノイ大の研究者は、布マスクはウイルスの拡散や取り込みを防ぐには不十分で「感染防止には効果がないだろう」とした。厚生労働省は軽症者らが自宅療養する場合の考え方の中で、家族ら周囲の人の感染対策として「サージカルマスク等の着用」を挙げた。不織布のマスクを入手できない場合に布マスクを代用で使うよう呼び掛ける。布マスクでも、くしゃみやせきでしぶきが飛ぶのをある程度は抑えられる。ウイルスが付いた自分の手が口や鼻に触れるのも防ぐため、政府は「感染拡大防止に一定の効果がある」とする。全世帯配布の経費は466億円と見積もる。聖マリアンナ医大の国島広之教授は、不織布のマスクの方が有効だとした上で、入手困難なら布マスクでしのぐのが妥当だと指摘。「自宅療養などの際は、換気や消毒と併せて予防効果を高めてほしい」と話した。 *5-13:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200410-00000195-kyodonews-soci (共同通信 2020/4/10)保健所長「病院あふれるのが嫌」、さいたま市の検査数少ない理由 新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査が、さいたま市では2カ月で171件にとどまったことについて、市の西田道弘保健所長は10日、記者団の取材に「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と明らかにした。さいたま市は2月に検査を開始し、今月9日までに171件。同市より人口、感染者ともに少ない千葉市は同日時点で4倍以上の700件を超えた。西田氏は、軽症や無症状の患者で病床が埋まるのを懸念したと説明。「検査を広げるだけでは、必要がないのに入院せざるを得ない人を増やすことになる」と述べ、滞在先施設の確保が必要だと強調した。 <感染症も考慮に入れた病院再編のあるべき方向性は?> PS(2020年4月3日追加):*6-1のように、日本医師会が「①一部地域で病床不足になりつつある」として医療危機的状況宣言を発表したが、①については、*6-3の東京都内で97人の感染が確認されたという一部地域の問題で多くの院内感染を含むため、医師会はホテル借り上げなどの意思決定はできないことを考慮して、政治は国民に犠牲を強いない政策を考えるべきだ。 また、医師会常任理事の釜萢氏は、*6-2に「②比較的症状が軽い患者を受け入れる“コロナ専門病院”を決めておくことを各地の医師会や行政に求めたい」としておられるが、②については、病名のわからない患者がコロナ専門病院を自ら選んで受診することは不可能であるため、地域の基幹病院が検査して振り分ける必要がある。 そして、横浜市立市民病院感染症内科部長の立川氏は、「③新型コロナはいきなり呼吸不全に陥るのではなく、症状の軽い時期が数日続くため、この間に感染がわかれば重症化を防げる。疑わしきは検査し、重症度を判定して早めに治療すれば、入院患者も人工呼吸器の使用も減らせ、十分ウイルスと戦える。治療薬は別の病気の薬で新型コロナに効きそうなものが4種類はあり、当院でもこれらを組み合わせて効果が出ており、早期の検査と治療がカギだ」「④現在は、PCR検査で陽性なら入院となるため感染しても元気な人が入院し、その分、治療が必要ながん患者が入れないのでは本末転倒だ」「⑤軽症者は別の施設で経過を見て、病院には重症者だけを残す形に早く移行するのがよい」「⑥退院には2度のPCR検査で陰性になることが必要だが、これも見直すべきだ」としておられ、③⑤が治す気がある場合の正攻法である。 一方、日経新聞は、*6-4のように、「⑦新型コロナの院内感染を防ぐため、ビデオ通話によるオンライン診療の活用を広げる規制緩和が、限定的な範囲に留まる恐れが出ている」「⑧これは、オンライン診療の拡大を恐れる日本医師会への配慮だ」などと記載している。しかし、医師は初診の患者が入ってきた時は、その愁訴を聞くだけではなく、服装・歩き方・顔色・匂い・触診・愁訴内容などのすべての情報から検査項目を決め、検査の結果によって病名を特定しているため、「⑨初診からオンライン診療では、対面に比べて診察時に得られる情報が限られる」という医師会の主張や「⑩受診歴のある慢性疾患の患者であれば可能」という厚労省の主張は正しい。そのため、⑦⑧のように、新型コロナにかこつけてオンライン診療を解禁させようとするのは、日本の医療水準を落として国民のためにならず、大きな問題である。 さらに、厚労省は、公的病院のうち「急性期」「高度急性期」の病床を持つ1455施設に、2017年時点の手術実績で手術数の少ない病院に再編・縮小に向けた検討を求めて、*6-5のように、2019年9月にリストを発表したが、これには感染症が考慮されていなかったのだそうだ。しかし、インフルエンザ・肝炎・肺炎・結核・風疹・はしかなどの感染症は最も多い基礎的疾患であるため、これを考慮しないというのはあり得ず、金銭に関する稚拙な算術だけで医療を考えることの危うさをあらためて浮き彫りにした。 ![]() ![]() ![]() 死因別死亡率 人口10万対病床数 2019.10.3 2019.11.12 朝日新聞 毎日新聞 (図の説明:1番左の図のように、日本の人口10万対死亡率は2011年から肺炎が3位に浮上している。しかし、左から2番目の図のように、日本は一般病床・精神病床が多すぎる割に感染症病床が殆どない。にもかかわらず、右の2つの図のように、厚労省は手術実績のみを基準として手術数の少ない病院に再編・縮小に向けた検討を求めており、改悪の方向になっている) *6-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200401/k10012362941000.html (NHK 2020年4月1日) 日本医師会が「医療危機的状況宣言」 病床不足の地域も 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、日本医師会は、一部の地域では病床が不足しつつあるとして、「医療危機的状況宣言」を独自に発表し、国民に感染を広げない対策や適切な受診行動を呼びかけました。新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」をめぐって、安倍総理大臣は1日の参議院決算委員会で「今、この時点で、出す状況ではない」と述べていて、政府は今後の感染者数の推移や経済への影響などを見極めながら、引き続き慎重に判断していく方針です。こうした中、日本医師会の横倉会長は記者会見で、「国の宣言は国民の生活や経済の影響を踏まえて発令をされるのだろうが、一部の地域では病床が不足しつつあり、感染爆発が起こってからでは遅い。今のうちに対策を講じるべきだ。現場は『医療危機的状況宣言』と言える状況だ」と述べました。そして医療提供体制を維持するために、国民に対し、みずからの健康管理や、感染を広げない対策、そして適切な受診行動をとるよう呼びかけました。一方で横倉会長は政府の新型コロナウイルス対応について、「今、物資の不足とか、体制が十分にとれていないという現実からみれば、もっと対応を加速してほしい」と述べました。 *6-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200402&ng=DGKKZO57515920R00C20A4TCS000 (日経新聞 2020.4.2 より抜粋) 「感染爆発」 社会をどう守る 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が止まらない。国内でも東京都の小池百合子知事が「感染爆発の重大局面にある」と述べ、外出の自粛を呼びかけるなど、危機感が広がっている。救える命を救い、社会を守るために今何が必要なのか。専門家に聞いた。 ◇ ◇ ■地域ごとに「専門病院」を 日本医師会常任理事 釜萢敏氏 体調を崩した人が真っ先に受診するかかりつけ医は感染症対応でも最前線に立つ。日ごろからインフルエンザや溶連菌などの検査を行っている所も多く、試料を採取する際に思いがけず新型コロナウイルスにさらされるリスクをはらむ。医療の現場を守りながら新型コロナに対応するためには、かかりつけ医はなるべく日常通り稼働してもらうことがよいと考えている。かかりつけ医の現状は厳しい。全国の診療所では目下、マスクが足りない。日本医師会は国に要望して計1700万枚ほどを配布したが、交換する頻度を減らすなどして何とかしのいでもらっている。新型コロナウイルスの検査に必要なだけの性能の防護服が十分にそろわない診療所もあるだろう。北海道の診療所で受診者のなかに感染者がいたため、内科医が感染した例もある。最大の問題は日本ではこれ以上、医師や病床などの医療資源を拡充するのが難しいことだ。イタリアは医療費削減のために医師の定年制を敷いてきたが、結果的に多くの医師経験者が再雇用された。ドイツでは医療資源が十分に確保できており死者が少ない。日本は高齢の医師が現役で働いているほど日ごろから医師が不足しており、急に増員する余裕はない。人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)を増産しても使いこなせる人材がすぐには出てこない。オーバーシュート(爆発的な感染拡大)が起こり、患者を選ばなければならない事態になりかねない。医療の現場を守りながらコロナに対応するには、現存する医療資源をフル活用する方策を考えるしかない。具体策として、比較的症状が軽い患者を受け入れる「コロナ専門病院」を決めておくことを各地の医師会や行政に求めたい。かかりつけ医が疑わしい患者から電話相談をあらかじめ受けるようにし、必要に応じて「専門病院」を案内する。患者の動きを分けることで、かかりつけ医が感染したり長期の休診に陥るのを防ぎ、透析などで日常的に通院が必要な患者の受け皿を維持したい。「専門病院」には、たとえば夜間や休日に診療できる施設や、都道府県の公立病院などの施設になってもらうのが理想だ。人工呼吸器が必要かどうかという程度の患者まで診てもらい、さらに重度の患者は国立国際医療研究センターなどの病院で受ける。数段構えのイメージだ。都市ごとに各地の医師会と話し合い全国の整備状況を把握しようとしている。それでも病床は足りそうにない。まん延期を見据え、入院中だけれども症状が重くはない人に退院してもらい、なるべく病床を空けることが喫緊の課題だ。基本的には自宅にとどまってもらい、ハイリスクな家族への家庭内感染のおそれがある患者には滞在施設を設けて入ってもらう。宿泊施設などと調整を急ぐ。必要な情報が各診療所にすぐに届くような仕組みも必要だ。「感染者情報が遅い」「発症日ベースで感染者情報を出してほしい」という要望を受けているので、改善すべきだ。かまやち・さとし 78年日本医科大学卒。88年から群馬県の小泉小児科医院院長。高崎市医師会会長などを経て14年から現職。地域医療や感染症危機管理対策などを担当。66歳 ◇ ◇ ■早期の検査・治療カギ 横浜市立市民病院・感染症内科部長 立川夏夫氏 これまで計30人近くの新型コロナ感染症患者を受け入れた。半数はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船していた人たちだ。3人は集中治療室で処置した。現在も数人が入院している。第一種感染症指定医療機関として、エボラ出血熱など1類感染症の患者を受け入れられる態勢がある。それでも、クルーズ船の患者が数日の間に10人以上搬送されてきたのは想定外だった。感染症病床は一時すべて埋まり、それ以上は連携先の別の病院で受け入れてもらった。恐怖心がなかったわけではないが、中国のデータでは若い人の重症化例は少ない。当院の若手スタッフに万が一うつっても即、致死的とはならないのは救いだと感じた。一番の問題は、看護師の負担が増えたことだ。学会の推奨を上回る水準まで感染防護を強化しており、防護服で普段通りのケアをするのは大変だ。脱ぐときに接触感染が起きやすいため、別の人に見てもらう必要もある。他の診療科からも応援を頼み、その場で教えながら対応した。人工呼吸器を使った例はあるが、体外式膜型人工肺(ECMO)は患者の年齢、基礎疾患、家族の希望などを踏まえ使用していない。急に多数の患者が来れば機器が不足する心配はある。近隣病院ではマスクが悲劇的に不足している。市が優先的に回してくれる当院でも、できるだけ1日1枚の使用にとどめている。政府は国内感染者発生のピークを遅らせることに、ある程度成功してきた。受け入れ可能な病床数から逆算してPCR検査をしている結果、感染判明者が少ないのだろう。増加ペースが今くらいで、人材や機器の準備期間がとれれば対応はできる。だが、今後どうなるかはわからない。入退院に関しては課題がある。現状ではPCR検査で陽性なら入院となる。感染していても元気な人が入院し、その分、たとえば治療が必要ながん患者が入れないのでは本末転倒だ。政府は新型コロナのまん延期には、軽症者は自宅や別の施設で経過をみて、病院には重症者を残す形に移行するとしているが、まだその時期ではないという。早く移行すべきだ。また、退院するには2度のPCR検査で陰性になり、ウイルスがいなくなったのを確認できなければならない。これも状況に応じて柔軟に見直すべきだ。入退院の判断は医療者がするのがよい。新型コロナはいきなり呼吸不全に陥るわけではなく症状が軽い時期が数日続くので、この間に感染がわかれば重症化を防げる可能性がある。疑わしきはまず検査し、重症度を判定して早めに治療する。こうすれば入院患者も人工呼吸器の使用も減らせ、十分ウイルスと戦える。治療薬は別の病気の薬で新型コロナに効きそうなものが4種類はあり、当院でもこれらを組み合わせて効果が出ている。検査で感染の有無を確定させ、必要に応じて有望な薬を使う症例を積み重ねて、一刻も早くよい治療法にたどり着きたい。それが医療者の安心にもつながる。たちかわ・なつお 1990年佐賀医科大(現・佐賀大医学部)卒。国立国際医療センター(現・同研究センター)などで感染症治療にあたってきた。2008年から現職。60歳 *6-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200402/k10012364551000.html (NHK 2020年4月2日) 東京都内で97人の感染確認 これまでで最多に 東京都の関係者によりますと、2日都内で新たに97人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたということです。都が、1日に発表する数としては、3月31日の78人を上回ってこれまでで最も多くなりました。97人のうち、患者や医療従事者などすでに100人以上の院内感染が疑われている東京 台東区の永寿総合病院の関係者が21人いるほか、新宿区の慶応義塾大学病院の関係者も15人いるということです。これで都内で感染が確認されたのは合わせて684人になります。 *6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200403&ng=DGKKZO57597170S0A400C2EA2000 (日経新聞 2020.4.3) オンライン診療、壁は厚労省、「初診解禁」かかりつけ医の紹介条件 医師会へ配慮にじむ 新型コロナウイルスの病院内での感染を防ぐため、ビデオ通話などによるオンライン診療の活用を広げる規制緩和が限定的な範囲にとどまる恐れが出ている。焦点は受診歴のない患者でも初診からオンライン診療を認めるかどうか。厚生労働省は対面で得る情報の重要さを理由に、かかりつけ医から情報提供を受けた別の医療機関などに絞る方針だ。拡大を恐れる日本医師会への配慮がにじむ。「人類が経験したことのないようなことが起きている。あまりに生ぬるいというのが私の感覚だ」。2日、政府の規制改革推進会議の小林喜光議長(三菱ケミカルホールディングス会長)は落胆を隠さなかった。作業部会が提案した「受診歴のない患者にも初診からオンライン診療を可能とすべきではないか」との意見に対し、厚労省からの回答は「非常に距離があるものだった」(小林議長)。オンライン診療は、風邪や発熱といった軽症の人が自宅にいながら診断してもらえるようにするなど医療の利便性を高める力を持つ。新型コロナの感染が拡大してからは、通院先での感染を防ぐ手段としても期待が高まっている。3月31日の経済財政諮問会議で、安倍晋三首相は「現状の危機感を踏まえた緊急の対応措置を規制改革推進会議で至急取りまとめてほしい」と指示を出していた。規制改革推進会議の主張は、受診歴のない患者でも初診からオンライン診療を認めれば、通院を省け、患者も医療従事者も院内感染から守れるというものだ。一方、厚労省は受診歴のある患者で高血圧などの慢性疾患であれば可能だが「受診歴のない患者は認められない」と説明したという。厚労省がオンライン診療の拡大を阻もうとする背景には日本医師会の存在がある。オンライン診療は「対面に比べ診察時に得られる情報が限られる」というのが医師会の主張だ。通院にかかる時間をあまり気にしなくて済むため、評判のよい病院に人気が集中し、淘汰が進むのを恐れていることも抵抗の裏側にある。オンライン診療はあくまで対面診療を補完するものと位置づけられ、生活習慣病など慢性疾患に限られてきた。医療サービスの対価として受け取る「診療報酬」も対面より少なく、対面の場合と比較して半分以下となることもある。加藤勝信厚労相は3月31日、オンライン診療の初診解禁を検討すると表明した。だが、厚労省が4月2日に開いたオンライン診療の指針を議論する有識者検討会は、限定的な範囲にとどめる方向性で一致した。言葉のイメージ通り、受診歴のない患者に対して、初診でオンライン診療を認めるのは重症化の徴候を見逃すリスクなどがあるため難しいと判断した。患者が急増し、外来医療が危機的な状況にあるなど極めて限定された場合だけに認める方向で、具体的な条件を引き続き検討する。かかりつけ医から情報提供を受けた別の医療機関で、風邪などの症状をオンラインで診てもらうことは認めることになった。ただこれも、かかりつけの医療機関で院内感染が起き、普段と異なる医療機関を受診しなければならないケースを想定したものだ。オンライン診療は18年度に保険適用されたが、18年7月時点でオンライン診療を実施する医療機関は1000カ所程度で全国の医療機関の1%に満たない。オンライン診療に積極的な医師もいるが、規制の厳しさが利用拡大を阻む。オンライン診療に移行するには原則、事前に3カ月以上の対面診療が必要だ。新型コロナ感染症の広がりをうけ、厚労省はオンライン診療のルールを特例・臨時的に2度緩和してきたが、その範囲は限られている。 *6-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54489680W0A110C2EE8000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/1/16) 公立病院の再編リストを修正へ 厚労省 厚生労働省は再編や縮小を促す目的で昨年9月に実名公表した全国424の公立・公的病院のリストを一部修正する。データを精査した結果、新たに対象に加わったり、今のリストから外れたりする病院が出てくるためで、全体では増える見通しだ。17日に公表する方向で調整している。今回の修正でリストから外れる場合、病院の希望に応じて病院名を公表する。一方、新たにリストに加わる病院名は公表しない方針だ。厚労省は、自治体が運営する公立病院と、日本赤十字社などが運営する公的病院のうち、病気が発症した直後の「急性期」や「高度急性期」の病床を持つ1455施設に対し、2017年時点での手術実績などを分析。実績が乏しい病院もあり、再編や縮小に向けた検討を求める狙いで19年9月にリストを発表した。当時は「資料は暫定版で、今後精査した後に都道府県に確定版を通知する」としていた。近く公立・公的病院との競合状況を示す民間病院のデータも各都道府県に提供し、議論を促す考えだ。 <これを機会にステップアップしたら?> PS(2020年4月4、8、12日追加):*7-1のように、新型コロナ感染拡大の影響で非正規を中心として職を失っており、会社の寮にいるため仕事を失えば住居もなくなる人もいる。そのため、政府は、企業の従業員解雇防止のために雇用調整助成金を拡充し、休業手当を払って従業員を休ませた企業には助成金を出すことにしたが、休業手当は一定割合を企業が負担するため、企業はコスト負担を敬遠して非正規の雇い止めを優先させる恐れがあるのだそうだ。一方、米国では、*7-2のように、新型コロナの感染拡大で経済活動が大きく制限され、ホテル・飲食店・小売店等が営業を大幅に縮小して従業員をレイオフ(解雇・一時帰休)した結果、失業保険の申請が664万件に上ったそうだ。日本では、(企業から見れば)終身雇用・年功序列制度の下で解雇が難しいため、従業員を正規と非正規に分けて非正規を雇用の調整弁として使っているが、米国は、正規と非正規の差別がないかわりに正規でも簡単にレイオフされて失業給付を受け取る。米国の方が、平等で雇用調整も速やかだが、これができるためには、労働市場が流動的で中途採用でも不利にならないことが要件になる。 しかし、新型コロナの感染拡大はすべての業種で人手を余らせたわけではなく、*7-3のように、外国人技能実習生の入国見通しが立たないため、労働力確保の支援を求めている業種もある。そのため、企業は雇用調整助成金をもらった上で従業員を人手が足りない職種に派遣すれば、従業員が感染リスクの小さな農業地帯で農業に従事することによって、今まで見ていなかったICTやロボット技術のニーズを見て新製品を作ったり、*7-4のようなスマート農業が本格化する中、非正規という雇用の調整弁に甘んじるよりはスマート農業の担い手になったりなど、企業・従業員・地域のすべてに新しい閃きが生まれてプラスになると思う。現在、農業への転職については、*7-5のように、全国の農地情報がデジタル地図に集約されつつあり、*7-6のように、後継者のいない多くの集落営農組織が集落外から若者を受け入れて、地域全体で若い農業者を育てて経営刷新するという雰囲気になっている。 さらに、国を挙げての再エネへのエネルギー変換には、*7-7のような徹底した発送電分離が必要で、それには21世紀型送電線の敷設が不可欠であり、農業地帯は副産物として電力を産出することが可能であるため、農業はやり方によっては21世紀の先端産業になり得るのだ。 なお、非正規で最初に雇用を打ち切られる人がステップアップするには、*7-8のような農林業経営のプロと地域のリーダーを育てる農林環境専門職大学に入学する方法もあるし、地域の農協で募集する農業の仕事に応募する方法もある。ただ、*7-9のように、都市部の新型コロナ感染者が地方に移動すると感染を広げるリスクも大きいため、移動して14日間は外出を控え、寮などで仕事内容や地域に関する研修を受けられる仕組みにするのがよいと考える。 新型コロナの影響で営業を縮小せざるを得ない観光業・飲食サービス業等から、*7-10のように、JAや行政が人材を仲介して農業に労働力を回す取り組みが始まっているそうだが、これは、人材の融通に留まらず、お互いの理解と関係を深める上でも良いと思う。 ![]() (図の説明:1番左は、スマート農業の説明、左から2番目は、無人田植機を使った田植えの様子、中央は、ドローンを使った消毒作業《あらかじめ害虫の多い場所を把握して効率化している》、右の2つは、収穫ロボットを使ったトマトとブドウの収穫作業だ。収穫ロボットは、色・糖度・大きさ等を測って収穫し《人間より確実かも》、分類してパック詰めする) *7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/202003/CK2020033102100017.html (東京新聞 2020年3月31日) <新型コロナ>非正規の雇い止め増加 雇用構造のもろさ露呈 現金給付で救済急務 新型コロナウイルスの感染拡大で、非正規を中心に多くの人たちが職を失う危機に直面している。有効求人倍率の高さなど雇用をアベノミクス成功の証拠とアピールしてきた安倍晋三首相だが、労働市場の中身は、非正規割合が高まり景気悪化のショックには極めてもろい構造が露呈している。人々の仕事と暮らしをどう守るかは重い課題だ。 ◆突然の契約終了通告 「もう雇い止めも覚悟している」。日産自動車の栃木工場(上三川町)で、期間工として働く男性(47)が言う。コロナの影響による世界的販売不振と中国などからの部品供給の減少のダブルパンチの自動車業界。トヨタ、日産など大手各社は工場の一時停止による減産を発表。男性の働く栃木工場も四月六日から二十二日までの長期間、操業が止まる。昨春から三カ月ごとの契約で一年働いてきたが、「今の契約が切れる五月末で終わりになるだろう」。会社の寮にいるため、「仕事を失えば住まいもなくなる」と不安にさいなまれる。大阪府内の不動産会社で、住宅の設計をしていた二十代の派遣社員の女性は先週、四月末で契約終了と告げられた。昨年末にマンションを購入、ローンは夫と二人で払う。「いま仕事を失うとローンも返せない。この時期、職がすぐみつかるとも思えない」。働く人々の生活が揺らいでいる。 ◆収入途絶えれば即生活危機に 二〇〇八年の年末。東京・日比谷公園にはリーマン・ショックで雇い止めや派遣切りにあった人々があふれ、支援団体の提供する炊き出しやテントで暖をとった。この「年越し派遣村」の出現を機に、非正規労働の多さは問題化。民主党政権では製造業への労働者派遣を禁止する議論もあったが、企業の立場を重視する自民党の安倍政権は非正規を一段と増やす政策を推進した。一五年の派遣法改正では、それまで企業が派遣社員を使える上限が三年だったのを、働き手を代えればずっと派遣に任せられるようにし、正社員を派遣に置き換える流れを助長した。雇用されないフリーランスや個人事業主としての働き方も奨励。企業を人件費コストから解放する半面で安全網のない不安定な働き手が増加した。一方、非正規の低賃金労働は「貯蓄ゼロ」世帯を増加させた。昨年時点で23%と、二十年間でほぼ倍増。非正規切りで収入が途絶えれば、生活危機に直結する。 ◆「正社員だけ守る差別やめて」 政府は、企業が従業員を解雇するのを防ぐため、雇用調整助成金を拡充、休業手当を払って従業員を休ませた企業に助成金を出す。だが、雇用助成金は、あくまでも企業が自分から申請しないと支給されず、休業手当の一定割合は企業が負担するルール。このため企業がコストを敬遠し、非正規は雇い止めを優先させる恐れがある。労働問題に詳しい宮里邦雄弁護士は「正社員だけを守るような差別はしないよう企業に指導し、助成金支出にもそのような条件を付けるべきだ」と指摘する。 ◆モノ言えない非正規への対策を 働く人々に直接渡る現金給付など、所得補償も不可欠となりそうだ。リーマン時は金融危機が消費不振を招くまで一定の時間があったのに対し今回は需要が短期間で蒸発、所得の大幅低下などで人々の暮らしをすでに脅かしている。関根秀一郎派遣ユニオン書記長は「非正規は企業にモノを言えない弱い立場。現金給付や減税など直接生活を助ける対策が急務だ」という。 *7-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57597950S0A400C2MM8000/ (日経新聞 2020/4/2) 米の失業保険申請、最大の664万件 解雇・一時帰休で 米労働省が2日発表した失業保険の新規申請件数(季節調整済み)は、3月28日までの1週間で664万8千件となり、過去最大だった前週(330万件)からさらに2倍に膨らんだ。新型コロナウイルスで経済活動が大幅に制限され、飲食店や小売店などでは従業員の解雇や一時帰休が急増している。トランプ政権は給与補填などの経済対策を決めたが、迅速な執行が求められる。失業保険の申請数は市場予測(260万件)を大幅に上回った。新型コロナが発生する前は1982年10月の69万件が最大で、リーマン・ショック後でも2009年3月の66万件が最多だった。米経済は長く好況が続いていたが、ホテルや飲食店、小売店などは一気に営業を大幅に縮小。飲食業界では、3カ月で500万~700万人が失業する可能性があるとの試算もあった。米国の労働力人口は1億6500万人。2月時点の失業者数は580万人で、失業率も3.5%と50年ぶりの低水準にあった。失業保険の申請数は2週間で1000万件弱に膨らみ、失業率は6月には10%を超えるとの予測も浮かんでいる。米国の急激な雇用悪化は、従業員を一時的に解雇したり帰休させたりする「レイオフ」制度の影響もある。宿泊業などは3カ月などと期限を区切って従業員の一時解雇・帰休を決め、労働者の多くは失業給付を受け取って職場復帰を待つ。日欧は給与カットなどで労働者の維持を優先するが、米経済は雇用そのものの調整幅が大きくなる。ただ、経済活動が再開すれば職場復帰も加速するため、失業率は20年後半には低下軌道に戻ると分析される。トランプ政権も雇用維持を狙い、中小企業の給与支払いを事実上肩代わりする資金支援策を発表した。中小企業の半数は手元の運転資金が15日分以下しかないとされ、迅速な資金供給が不可欠だ。 *7-3:https://www.agrinews.co.jp/p50436.html (日本農業新聞 2020年4月1日) [新型コロナ]消費喚起、人手対策を 農家らが窮状訴え 農水省は31日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急経済対策の策定に向け、農家らから意見を聴取した。需要減退で価格が下落している和牛や果実、野菜の生産者らが窮状を訴えた。外国人技能実習生の入国見通しが立たない問題を受け、労働力確保に向けた支援を求める声も出た。江藤拓農相は、生産現場の支援へ「強大な対策」を講じる考えを示した。感染拡大の情勢を踏まえ、テレビ会議方式で意見聴取した。江藤農相の他、伊東良孝、加藤寛治両副大臣、河野義博、藤木眞也両政務官ら同省幹部が同席。江藤農相は「現場の意見をしっかり聞いた上で経済対策案をまとめなければならない」と強調。安倍晋三首相の指示を踏まえ「前例にとらわれず強大な対策をやる」と述べた。農家らは、インバウンド(訪日外国人)やイベント自粛などの需要減退で打撃を受けている実態を報告。消費喚起策を求める意見が相次いだ。宮崎県高千穂町で和牛を一貫経営する興梠哲法氏は、地元家畜市場の3月の子牛相場が「前回比15万円の値下がりになった」と説明した。枝肉価格の下落で肥育経営が悪化、それに伴い子牛価格も下落し繁殖経営も「危機的状況」と訴えた。過剰の国産牛肉在庫の対策に向け「国の支援で消費者に求めやすい形で流通」するよう要望。ふるさと納税制度の活用やインターネット販売の運賃・手数料の支援などを求めた。温室メロン専門農協、静岡県温室農業協同組合の鈴木和雄組合長は、同組合が出荷したメロン価格が2月は前年比71%、3月は同67%に落ち込んだと説明。「原価を割っている」と訴え「前例のない対応」を求めた。長野県佐久市で野菜を栽培する小松園芸の小松真知子氏は、中国人実習生が「入国できなくなっている」と報告した。「どれだけ作付けられるのか悩み、苦労している」と明かした。今季に実習生が入国できなければ生産量と売り上げが「30%減になる」と説明。「いくらかでも労働力を送ってもらえるような方策をお願いしたい」と訴えた。 *7-4:https://www.sankei.com/economy/news/191223/ecn1912230002-n1.html (産経新聞 2019.12.23) いきなり特等米を獲得 スマート農業の実力は… 担い手の高齢化や労働力不足に悩む日本の農業の課題解決に向け、ICT(情報通信技術)やロボット技術を使ったスマート農業の導入が加速している。リモコン一つで農機を遠隔操作、熟練農家の経験と勘を目に見えるデータに落とし込む-。誰もが高品質な作物を生産できる農業の時代はすぐそこまできているのかもしれない。兵庫県北部の養父市、山間部に急斜面の棚田が広がる能座地区は、65歳以上人口が57・65%と高齢化、過疎化が急速に進む集落だ。日本の農業の課題を抱え込んだようなこの土地で、先進技術を活用した農業を目指して農林水産省が採択した「スマート農業実証プロジェクト」が4月から進んでいる。「ハンドル操作の難しいぬかるんだ所も驚くほど真っすぐ進む」。同地区で酒米を作る「アムナック」の社員、大内良平さん(45)が驚くのはクボタが開発した無人運転のロボットトラクター。準天頂衛星「みちびき」による高精度の位置情報を活かして誤差数センチ以内でルートを正確に耕していく。また、人力で行えば半日以上かかる草刈りも、ラジコン操作によってわずか44分で済ませている。作業データはクラウド上で一括管理、手間取った作業とその解決法を“見える化”することで誰もがどこでもその経験を次に生かすことができるという。 ●全国モデルに アムナックは兵庫県三木市に本社を置く建設会社の農業事業を行う子会社として平成27年に設立。今年4月からは京都大学やクボタ子会社、ソフトバンクなどと作る共同事業体で、スマート農業の技術開発のために角度30度超の、全国有数のきつい傾斜を持つ養父市能座地区の棚田11ヘクタールで稲作に挑んでいる。 *7-5:https://www.agrinews.co.jp/p50428.html (日本農業新聞 2020年3月31日) 全国の農地情報 デジタル地図へ集約 農水省22年度から一部運用 農水省は、全国の農地情報のインターネット上での一元管理に乗り出す。行政機関や農業団体がばらばらに管理してきた農地情報を集約し、同省の地図データと組み合わせて「デジタル地図」を作成。2022年度から一部機能の運用を始める。生産者は補助金などの申請にかかる労力が大幅に減る他、将来的には農業機械の自動運転の活用などにもつなげる。「デジタル地図」は、各機関が持つ情報をひも付けして一元管理する。21年度から運用する「農林水産省共通申請サービス(eMAFF)」と組み合わせ、申請の窓口を一本化。農業者が申請した基本情報は保存され、再入力が省略でき、事務作業が軽減される。オンラインで自宅から申請でき、パソコンやスマートフォンの画面上の地図を見ながら作業が可能になるという。行政機関は、紙の申請書の打ち直しなど事務負担が省力できる。将来的には「デジタル地図」の情報と、人工衛星による位置予測を組み合わせ、トラクターやドローン(小型無人飛行機)の自動運転に活用できる可能性もある。衛星画像と人工知能の画像解析技術を組み合わせ、台風などの災害時に速やかな被災地域特定につなげることも期待される。20年度は、既存のデジタル区画情報と各機関の情報をひも付けすることや、農地関連データの標準化を検討する。農地情報は現状、各機関が農地情報を紙の地図で管理し、手続きに多くの労力がかかっている。例えば、農業委員会に農地の権利設定を申請する場合、農業者は土地の地番や面積などを記載した10枚程度の書類を提出する必要がある。同じ土地でも農業委員会、地域農業再生協議会、農業共済組合が別々に情報をまとめており、重複する情報提出に負担が掛かる。情報を管理する機関も、データ入力や現地調査に多大な労力を費やしている。 *7-6:https://www.agrinews.co.jp/p50404.html (日本農業新聞 2020年3月28日) [ゆらぐ基 問われる実効性](3) 農山村の再生 “よそ者” 継承に活路 福井県あわら市。集落営農組織「グリーンファーム角屋」の代表、坪田清孝さん(69)が、誇らしげに胸を張る。集落外から若者を組織の代表候補として迎え入れ、米だけでなく、タマネギやイチゴの栽培に乗り出す新しい組織に、生まれ変わろうとしているためだ。「全国に水田農業に夢を描く若者はたくさんいる。継承がうまくいけば担い手不足に困る各地の集落営農組織の希望になる」と坪田さん。同組織には3年後、集落とは縁がなかった斎藤貴さん(43)に経営をバトンタッチする予定だ。今は継承に向かう並走期間。集落の住民らと斎藤さんが共同作業を積み重ね、信頼関係を紡いでいる。後継者がいない、高齢化、もうかりにくい米経営……。多くの集落営農組織が抱える課題に、同法人は集落外から若者を受け入れ、経営を刷新することで立ち向かう。 ●人手の確保組織で議論 農水省の調査によると、離農する小規模経営体の農地の受け皿で地域を支える集落営農組織数は、2019年2月時点で1万4949。2年連続で減少した。次期食料・農業・農村基本計画案では30年の農業者数は15年比33%減の140万人と見通しており、生産基盤の要である人材の育成・確保は、農業の最重要課題だ。グリーンファーム角屋は1999年、集落の兼業農家が共同で農業を守ろうと発足。設立から20年を前に後継者不在で組織の継続が危ぶまれた。坪田さんらは16年、全戸に意向調査。88%で「後継者がいない」「割り当てられた農作業が将来的に難しい」など課題が鮮明になった。合意形成に2年かけ、集落外から若者を呼び込むことにした。知人のつてや就農フェアに参加するなどして探し、知り合ったのが斎藤さんだ。埼玉県生まれの斎藤さん。農業に興味を持ち、石川県の農業法人に長年勤めていた。独立して稲作を模索する中、後継者を探す同組織の存在を知った。斎藤さんを迎え入れるため、18ヘクタールの米が中心だった経営にイチゴやダイコン、タマネギなど園芸作物を加え、農閑期の仕事を確保。継承を踏まえ株式会社化した。斎藤さんは「決算書も見て、信頼できると思った。地域の人と一緒に経営を発展させたい」と意気込む。集落の女性らに手伝ってもらって冬は加工にも取り組む考えだ。坪田さんは「代表が代わっても農業を地域から分断させるのではなく、地域と発展する集落営農の基本理念は変わらない。高齢者ばかりの集落に若い人が来たと歓迎されている」と笑顔だ。 ●多様な主体活性化の鍵 信州大学の小林みずき助教は「水田農業の若者の継承は、農村や農業の持続性を左右する」と強調する。預ける農地の選定も含め、地域全体が若い農業者を育てる意識を持つことが重要という。次期食料・農業・農村基本計画でも「多様な主体」を農業の持続的発展のポイントの一つに挙げる。小林助教は「米の消費が減り水田活用の方法が課題となる中、高齢者に比べ、母数が少ない農村の若い力を生かすことが課題解決の鍵を握る。そのための仕組みが必要だ」と指摘する。 *7-7:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020040202000168.html (東京新聞社説 2020年4月2日) 発送電分離 電力改革はまだ途上だ 昨日スタートした発送電分離。発電と送配電事業を切り分けて、大手電力による独占の壁を取り払う-。電力システム改革の“総仕上げ”とされているのだが、現状では劇的効果は期待できない。日本の電力供給は長らく、大手十社がそれぞれの“縄張り”で、発電と送配電、小売りを一手に担う「地域独占」だった。原発のような大規模集中型電源で大量の電気を一気につくり、決められた地域へ送り込むというやり方を続けてきた。福島第一原発事故で、その弱点があらわになった。他地域からの電力融通が思うように進まず、大消費地の首都圏は、計画停電を余儀なくされた。そんな地域独占の壁に風穴を開けるべく、政府による電力システム改革が加速した。大手電力会社を発電、送配電、小売りなどに分社化、つまり解体し、「新電力」と呼ばれる中小事業者の参入を図り、大規模集中から小規模分散に移行させる狙いがあった。二〇一六年、家庭向けも含めた電力小売りが自由化された。改革の「総仕上げ」とされるのが、発送電分離である。しかし、分離と言っても、送配電網の所有権を大手から切り離す「所有権分離」には踏み込めず、小売り同様、既存の大手が送配電会社を設立し、それぞれ子会社にするだけの「法的分離」にとどまった。送配電は従来通り、大手の支配下に残された。これまでも、大手が持つ原発の電力が優先的に接続されてきたように、「新電力」からの接続が、理由を付けて抑制される懸念はぬぐえない。分離による効果は恐らく限定的だ。「新電力」には、風力や太陽光を扱う事業者が多い。政府がエネルギー基本計画にうたう、再生可能エネルギーの主力電源化にも支障を来す恐れは強い。地域ごとに送配電子会社が残るのも非効率。欧米では、送配電網の運用そのものを電力会社から切り離し、「独立系統運用機関」(ISO)に委ねるシステムが主流という。そうなれば、全国規模での電力融通もスムーズになるだろう。接続の公平性が保たれて、再生エネの普及にとっても、強い追い風になるはずだ。発電量が天候に左右されやすいという再生エネの弱点を、例えば日照が豊富な九州と、風力の適地が多い東北・北海道などが、補完し合えるようにもなるだろう。送配電網の中立性が保証されるまで、電力改革は終われない。 *7-8:https://www.agrinews.co.jp/p50496.html (日本農業新聞 2020年4月8日) 農林専門職大が始動 コロナ禍でビデオ入学式 静岡 農林業経営のプロと地域社会のリーダーを育てる静岡県立農林環境専門職大学・短期大学部(愛称・アグリフォーレ)が同県磐田市に1日開校し、7日に入学式を行った。同校は全国に11ある専門職大学の中で初めての農林系で、大学と短大合わせて104人が入学。学生生活のスタートを切った。専門職大学は2019年4月に始まった新しい大学の制度。特定の職業に必要な講義と、豊富な実習で実践的な技能を学ぶ。静岡では県立農林大学校に替わり開校した。入学生の内訳は、4年制の大学生産環境経営学部が県内外の27人、2年制の短期大学部が77人。入学式は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、保護者と来賓は招かず、入学生と教職員だけが出席。講義室に分かれて学内放送とビデオで行う異例の式となった。鈴木滋彦学長は「農は生活に不可欠で、しかもエネルギーを生み出す。自信と誇りを持ち、プロフェッショナルを目指してほしい」と期待した。川勝平太知事は「実学の日本のモデルにし、みなさんを日本の宝として育てたい」と祝いの言葉をビデオで寄せた。入学した同県富士宮市出身の山本琢寛さん(18)は「静岡県の良い環境を生かした仕事に将来就きたいと考え入学した」と話した。来年完成予定の新校舎には学外からも利用できるレストランを併設。再来年には新寄宿舎が完成する。 *7-9:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200407/KT200406ETI090007000.php (信濃毎日新聞 2020年4月7日) コロナ「疎開」 排除や対立招かぬように 都市部で新型コロナウイルス感染者が急増する中、帰省したり別荘に移ったりして地方に生活の拠点を替える人が目立つ。長野県内の別荘地への「疎開」も進んでいる。政府が東京や大阪に緊急事態宣言を出すことで、不安や不便を感じる人の地方への移動がさらに活発になる可能性が出ている。若い世代は感染していても無症状か軽症が多い。移動先で、気づかないうちに人にうつしてしまう恐れがある。地方での感染拡大につながらないよう、各自治体は移動する人も意識した呼び掛けを強めたい。県内では、都内から帰省中の20代男性に感染が判明した。一緒に外出した県内の20代男性も陽性が確認されている。高齢者が感染すると重症化するリスクが高い。一方、地方では新型コロナへの医療体制が整っていない地域も少なくない。感染が広がると、病床が足りなくなる事態が想定される。都市部から地方への移動は危険を伴っていることを、当事者も周辺も自覚してほしい。移動した後も一定期間は健康観察が不可欠だ。症状がある場合は、人との接触を避けるなど一層の注意を払う責任がある。約1万6千戸の別荘がある軽井沢町の藤巻進町長は、町のホームページで「東京の危機感を共有して」と訴え、別荘住民らにも不要不急の外出自粛を求めた。茅野市も、市内の別荘約7千戸に同様の自粛要請を記したチラシを配布。今井敦市長は「開放的な気分にならず、できるだけ別荘にいて」と呼び掛けている。佐久市の柳田清二市長が「できれば首都圏の皆さんも自宅で過ごしてもらいたいと思います」と書き込んだツイッターは、賛否両論を呼んだ。不要不急の来訪が、県内での感染拡大につながってしまうとの危機感から発信したという。重要な注意喚起ではある。「怖さを感じる」と賛同する住民の気持ちも分かる。一方で、命を守る選択として来訪する人たちの事情も大切にするべきだろう。個人の移動の自由は尊重しなければならない。その上で、地域の安全や安心をどう守っていくかを考えたい。自治体は、地域の実情を詳しく知らせ、守るべきことをきちんと分かってもらう努力が必要だ。住民も移動してくる人たちを排除せず、感情的な対立を招かないように心掛けたい。 *7-10:https://www.agrinews.co.jp/p50535.html (日本農業新聞 2020年4月12日) コロナ禍の観光・飲食業 農家が人材受け入れ JAや行政が就労を仲介 農業の人手不足が深刻化する中、新型コロナウイルスの影響で営業を縮小する観光業や飲食サービス業などから農業分野に労働力を回す取り組みが始まっている。観光業などは訪日外国人の減少に外出自粛も加わって経営が厳しく、従業員の雇用継続が難しい。そこでJAや行政が人材を仲介し、互いの労働力の課題解決につなげようとしている。(高内杏奈、藤川千尋) ●長野・JA佐久浅間 旅館組合と協力 長野県のJA佐久浅間は、地元の軽井沢旅館組合と協力し人材のマッチングを始める。宿泊施設は、各従業員に農家での就労希望の意向を尋ね、希望する場合は出勤可能日などの情報をJAに提出。JAは農家にその情報を示し、条件が合えば面接などを経て農家が雇用する仕組みだ。今回の人材マッチングをJAに提案、相談したのは、JA軽井沢事務所野菜部会の前部会長でJA野菜専門委員会常任委員の片山修さん(48)。片山さんは人材不足に悩み、今季は収穫の手間がかかるレタスの一部をキャベツに転換した。片山さんは「労働力として来てもらえればありがたい。これを機に軽井沢の野菜のおいしさを再認識し、宿泊施設で利用が広がればいい」と期待する。旅館組合の鈴木健夫組合長も「軽井沢の観光客は野菜のおいしさに感動する。感染終息後の集客につなげたい」と話す。JAは全国にリゾートホテルを展開する星野リゾートとの連携も検討する。同社も仕事量が減少する見込みで、従業員の雇用確保が課題。JAは農家や選果場などの仕事を紹介する。JAと同社は、雇用条件面や希望人数などを協議中だ。JAでは新型コロナウイルスの影響で、94人の中国人技能実習生が来日できていない。実習生は5月以降にピークを迎えるレタスやキャベツなどの収穫作業を担う。JA営農経済部の内藤浩部長は「産地には安全で安心できる、おいしい農産物を届ける使命がある。生産基盤を守ることにつなげたい」と強調する。 ●マッチング支援 青森県が窓口設置 青森県は10日、営業自粛する観光業や飲食サービス業から労働力を農業分野に回す人材マッチング事業を始めた。青森市の無料職業紹介事業・あおもり農林業支援センターに窓口を設置。JAグループやハローワークと連携して、農業法人などの求人情報を集約する。センター職員が観光業、飲食サービス業、運送業を巡回し声掛けして、短期労働力のマッチングを後押しする。県農林水産部は「労働力不足は加速する。利用者を増やしたい」と説明する。同県はナガイモや露地野菜の出荷最盛期を迎えるが、中国を中心とする技能実習生が来日できず、人手不足が深刻化している。東北町でナガイモを3・5ヘクタール栽培する甲地武彦さん(64)さんは「人手不足で作付け縮小を検討する農家も出てきた。短期でも労働力が増えるのはありがたい」と期待する。 <新型コロナは、社会保障を節約するのに都合のよいウイルスだが、まさか・・> PS(2020年4月4日追加):*8-1・*8-2のように、安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が、2018年にまとめた報告書で新型コロナの登場を予見するような分析をし、中でも最大の脅威は呼吸器系に悪さするRNAウイルスで、潜伏期間中・軽い症状の間でも感染してしまうタイプが特に危ないとしていた。そして、これは、新型コロナの性格と一致しており、現在は遺伝子操作したウイルスを使ったバイオテロもできる時代であるため、主たる被害者が高齢者と基礎疾患保有者であれば、新型コロナは社会保障を節約するのに都合よく作られたウイルスのように見える。そう考えると、*8-3のように、コロナ治療薬の有望候補が4つもあるのに、非科学的なことを言って検査も治療も行わず(犯人は政治ではないだろう)、保健所の人員増強等を主張していることと整合性があるわけだ。 そのような中、国民を犠牲にすることしか考えつかない行政はあてにならないため、*8-4のように、国民が手洗いを徹底し、人混みを避け、マスクをつけて予防した結果、インフルエンザ患者数も昨シーズンに比べて4割減ったそうだ。そのため、予防方法が同じ新型コロナも、同じ効果が出ていると思われる。 ![]() (図の説明:左図のように、日本は新型コロナの検査数が著しく少ないため患者数も少なく出ているが、これは実態を反映していない。また、治療薬はあるのに、できない理由を並べて使っていないが、検査しなければ使うこともできない。そのため、日本で新型コロナの致命率が低く出ているのは、単なる肺炎に入れられているケースが多いからだと思われる) ![]() 2020.3.30東京新聞 (図の説明:何の治療もしないうちから、メディアが医療崩壊・医療崩壊と1カ月以上も騒いでいるため、「政府も医療もあてにならない」と感じて国民が予防を徹底した結果、左図のように、インフルエンザが昨年より4割減った。そのため、予防方法が同じ新型コロナも本来より4割減ったと考えるのが妥当だ。このまま、医療崩壊・医療崩壊と叫んで検査も治療もせず、対症療法も年齢でトリアージすれば、右図の日本の人口のうち団塊の世代より上の致死率が上がり、年金・医療・介護等の社会保障費が節約されるが、このやり方はあまりにあくどい) *8-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57636680T00C20A4I00000/ (日経新聞 2020/4/4) 新型コロナを予見 示唆に富む米大報告書 地球規模の脅威となる感染症を引き起こす病原体とは、どんなものか。安全保障や感染症の研究で知られる米ジョンズ・ホプキンス大学が2018年にまとめた報告書は示唆に富む。いま世界を苦しめている、新型コロナウイルスの登場を予見するような分析がみられるからだ。今後の感染症対策にも役立つはずだ。報告書は同大の健康安全保障センターが120人以上の専門家への聞き取りをもとに作成した。様々な病原体の特徴、感染が引き起こす症状、病気の広がり方などに関する科学的知見を踏まえ、注意点や対策にあたっての勧告をまとめた。このなかで、最大の脅威に挙げたのが呼吸器系に悪さをするRNAウイルスだ。インフルエンザウイルスに比べ、コロナウイルスなどには十分な注意が向けられていないと警鐘を鳴らした。潜伏期間中や、軽い症状しかないときでも感染してしまうタイプが特に危ないと指摘しており、まさに新型コロナウイルスの場合と一致する。勧告は8項目ある。まず、呼吸器系に感染するRNAウイルスに焦点を当てつつも、幅広い種類の微生物に目配りする必要性を説いた。過去に経験し、要注意ウイルスなどとして記録されているものにとらわれすぎるべきではないという。コロナウイルスに関しては疫学的調査が重要だとした。抗ウイルス薬が極めて少ない現状に懸念を示し、治療薬やワクチン開発の加速を促している。製薬企業、政府、医療機器メーカーが資金を出し合い臨床試験を円滑に進める工夫をすべきだとした。さらに、新たなパンデミック(世界的大流行)の兆候をいち早くつかむため、全世界で診断に力を入れるよう提案。コストの問題はあっても、それに見合う効果が得られるはずだと指摘した。今となれば、どれももっともな内容だ。国境を越えたヒト、モノの移動が増えパンデミックが起きやすい状況なのは世界の共通認識だった。にもかかわらず、勧告は十分に生かされず備えは進まなかった。将来、より致死率の高い病原体が広がるかもしれない。新型コロナ対策の一つ一つの経験を確実に「次」への戦略づくりに生かしたい。ジョンズ・ホプキンス大学の報告書で指摘した8つの「勧告」の要約は以下の通り。 (1)脅威となるウイルスへの備えに投資を パンデミック(世界的大流行)を引き起こす可能性が最も高い病原体はRNAウイルス(注1)で、特に鼻やのど、肺などの呼吸器系に感染するタイプだ。この種のRNAウイルスは地球規模で壊滅的な被害をもたらす危険性が高く、調査・監視、科学研究、対策の開発に資源や資金を大規模に投じるべきだ。だが、インフルエンザと一部のコロナウイルスを除けば、ほとんど対策は講じられていない。あらゆる病原体の専門的な知識を育成・維持するとともに、動物から人間に感染する病気の情報を集めることで、パンデミックへの備えや研究につながる。 (2)過去の経験に基づく対策では不足 過去の感染症の事例とバイオテロ対策にもとづき、米国や世界はパンデミックに備えてきた。しかし、取り上げられていない病原体への備えは早々に打ち切られてしまい、対策が硬直的になりがちだ。こうした従来型のやり方から決別し、病原体の性質に基づいてパンデミックのリスクを評価する必要がある。また評価については、綿密な医科学的分析の結果にもとづくべきだ。こうした改善に取り組むことで、パンデミックへの備えや病原体による地球規模のリスクに対する考え方を根づかせる。 (3)呼吸器系に感染するRNAウイルスを優先 呼吸器系に感染するタイプのRNAウイルスはパンデミックを引き起こす可能性が高い。現時点で優先度が高いのは、インフルエンザと一部のコロナウイルスだ。重症急性呼吸器症候群(SARS)と中東呼吸器症候群(MERS)の流行をきっかけに、コロナウイルスへの理解を深める動きは出ているが、実験室で体系的に調べる取り組みは進んでいない。肺炎や気管支炎の原因となるライノウイルスやパラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、メタニューモウイルスなどでも同様に動きはない。この種のウイルスは将来、パンデミックを引き起こす危険性が高く、インフルエンザと同様の調査・監視体制を確立すべきだ。 (4)効果がある抗ウイルス薬の開発に重点 呼吸器系に感染するRNAウイルスの治療薬として、現時点で米食品医薬品局(FDA)の承認を受けているのは、抗インフルエンザ薬としては「アマンタジン」や「リマンタジン」、「ザナミビル」、「オセルタミビル」、「ペラミビル」の5種類がある。いずれもインフルエンザウイルスだけに作用し、他のウイルスには効果がない。抗インフルエンザ薬以外では、C型肺炎などの治療に使われる「リバビリン」しかない。RSウイルスの治療で承認を受けているが、効果が弱く、強い副作用が懸念される。特定のウイルスに効く治療薬が開発できれば、パンデミックを抑えられる可能性は高まる。 (5)RNAウイルスのワクチン開発を優先 呼吸器系RNAウイルス向けのワクチンも優先すべき課題だ。インフルエンザ向けはあるが、呼吸器系RNAウイルスのワクチンは存在しない。いくつかの重要な取り組みが存在する。例えば、官民連携でワクチン開発に取り組む感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)はMERSを引き起こすコロナウイルスとパラミクソウイルス(ニパ)向けワクチンの開発を支援している。米国立衛生研究所(NIH)は、どんな型のインフルエンザにも効く汎用ワクチンの開発に資源を振り向けるようになった。最も怖いのが鳥インフルエンザウイルスの一種だ(注2)。汎用的なインフルエンザワクチンは、こうした地球規模で脅威となるウイルスに対して大きな予防策となりうる。 (6)科学的根拠にもとづいた治療法を官民医の連携で インフルエンザを除くと、呼吸器系ウイルスに対する治療は科学的根拠に乏しい。どのような治療が有効なのか、合併症で気をつける必要のある感染は何か、どの段階で人工呼吸器を使うのが適切なのか、といった疑問がある。こうした疑問への答えを見つけることで、パンデミックが起きたときに医師の対応力を高められるだろう。インフルエンザについて、抗ウイルス薬と炎症を抑える抗炎症薬、抗生物質を併用する治療法の報告が増えている。明確な治療指針を作るために、これらの治療効果がはっきりとわかれば、地球規模の脅威となるウイルスへの対応力につながる。 (7)RNAウイルスの研究には特別な注意を パンデミックを引き起こすウイルスに関する研究には特別な注意を払う必要がある。多くは低リスクだが、例えば抗ウイルス薬への耐性、ワクチンに対する抵抗性、感染力の増強といった実験は、国際的な基準である「バイオセーフティー」上の違反が起これば重大な問題を引き起こす。1977年に出現した「N1H1型」インフルエンザ(ソ連かぜ)は、なんらかのミスで研究所から漏れ出た可能性が指摘されている。こうしたウイルスを扱う実験については、リスクに見合った形で承認するプロセスが必要になる(注3)。 (8)診断法や診断装置の実用化を世界で 診断技術と診断装置は適用できる病気の対象、診断速度、使いやすさで改良が進んでいる。普及が進めば、感染症に対する状況認識を高めるきっかけになるはずだ。呼吸器系に感染するRNAウイルスへの調査の強化と組み合わせることで、パンデミックを引き起こす病原体の初期のシグナルを捉える能力は大幅に高まる。コストや治療効果のほか、隔離病床など病院の資源の制約によって、こうした診断装置の採用が制限されている。しかし、パンデミックへの備えという観点から、費用対効果の見積もりも変わるはずだ。人工呼吸器やワクチン、抗ウイルス薬、抗生物質と同じように考えるべきだ。 (注1)ウイルスには、遺伝子がDNAだけのタイプとRNAだけのタイプがあり、RNAウイルスの方が突然変異しやすいため危険性が高いとされる。危険性の高いRNAウイルスには、コロナウイルスの一部のほか、インフルエンザやエボラ出血熱、デング熱などがある。 (注2)鳥インフルエンザの中で毒性が高い「H5N1型」が最も危険性が高いとされる。 (注3)バイオセーフティーは病原体を扱う施設の基準で、世界保健機関(WHO)が定めている。危険度に合わせて4段階ある。最も高いレベル4については、病原体が外に漏れ出ないような対策を講じている。例えば、施設内の気圧を低くし、空気が外に漏れないようになっている。 *8-2:https://iwj.co.jp/wj/open/archives/469833 (IWJ 2020.3.13より抜粋) IWJ調査レポート!新型コロナは「地球規模の破滅的な生物学的リスク(GCBR=Global Catastrophic Biological Risk)」!? ジョンズ・ホプキンス大学の『パンデミック報告書』が、2年前にコロナの出現を予見し、警告! 2020年3月12日、WHOが正式に新型コロナウイルスの感染拡大を「パンデミック」であると発表した。こうした事態に至る約2年前、2018年5月10日に、世界最古の公衆衛生大学院と世界屈指の医学部を有する米国ジョンズ・ホプキンス大学の公衆衛生大学院、健康安全保障センターが、『パンデミック病原体の諸特徴』と題する報告書(以下『パンデミック報告書』)を発表した。この報告書の中で「地球規模の破滅的な生物学的リスク(GCBR=Global Catastrophic Biological Risk)という新しい概念を提示して、ウイルス、細菌などの病原体が近い将来、人間社会に破滅的な影響を及ぼす可能性を予見し、警告している。GCBRを引き起こす病原体の特徴として、高い感染力、低い致死率、呼吸器系疾患を引き起こすなど、7つの特徴を列挙している。これらの特徴は、ほとんど、現在流行中の新型コロナウイルスの特徴と一致するものである。さらに、驚くべきことは、GCBRを定義する中で、『パンデミック報告書』は、GCBRを引き起こす病原体が、自然由来ばかりでなく、人為的な操作によって生み出され、広がるリスクをも想定していたことである。『パンデミック報告書』からわかるのは、陽性ながら無自覚・無症状のまま日常生活を送り、周囲を感染させてゆく「ステルス・キラー」の対策と、その主な被害者になる高齢者と基礎疾患者への対策が、今後、非常に重要になる、ということである。 *8-3:https://toyokeizai.net/articles/-/340641?page=4 (東洋経済 2020/03/29より抜粋) コロナ治療薬「世界の救世主」探る臨床の最前線、有望候補薬は4つ、東大で感染阻止の研究も進む クロロキンは、アメリカのトランプ大統領が、「新型コロナウイルス感染症の治療に有効」と発言して注目を集めたものの、その後は服用者の中毒例や体調悪化が報道され混乱気味。日本でも過去、クロロキンによる網膜症が問題で訴訟になった経緯があり、効くとしても扱い方には注意が必要になりそうだ。また、治療薬の開発には大学、企業も乗り出している。東京大学医科学研究所は3月18日、急性膵炎治療薬「ナファモスタット」が新型コロナウイルスの感染を阻止する可能性を突き止めたと発表した。ナファモスタットは30年近く国内で使われている薬剤で、安全性のデータが十分あるなどメリットは大きい。日本では日医工が「フサン」の製品名で販売しているのをはじめ、各社が後発品を出している。安倍首相は3月28日の会見で、「観察研究として、患者の同意を得て投与を開始する予定」と述べた。このほかに、C型肝炎治療薬である「リバビリン」や「インターフェロン」も候補薬になると見られている。 ●国は早期承認制度の適用も検討 さらに日本の製薬会社も、続々と開発に乗り出している。武田薬品は3月4日に、感染し回復した人の血液成分を使用した新薬(高免疫グロブリン製剤)をつくる。早ければ9カ月程度で実用化するという。また、スイス・ロシュグループ傘下の中外製薬は、関節リウマチ治療薬「アクテムラ」で、新型コロナウイルスを対象とした臨床試験を検討中だ。さらに、塩野義製薬やエーザイも、それぞれ開発を表明している。ただ、医薬品の開発は通常、人に対する安全性、有効性を確認する検証的な臨床試験だけで3~7年かかる。承認申請に必要な臨床試験がすべて終わるのを待っていては、今回の流行に間に合わない。このため加藤勝信厚生労働大臣は、製薬会社からの承認申請があれば、新たに導入した「医薬品の条件付き早期承認制度」を適用し、「可及的速やかに審査を行っていきたい」(3月26日・参議院予算員会)と答弁している。この制度を使えば、致死的な疾患で検証的な臨床試験に時間がかかる疾患であっても、一定の有効性、安全性が示されれば承認でき、早く国民に治療薬を届けることが可能となる。大曲氏は、臨床試験に関しても効果が見えそうなデータが揃った段階で、「(終わるのを)待たずに知見が出る可能性はある」と見る。開発に数年かかると見られる新型コロナウイルスの治療薬だが、臨床試験の状況によっては早期承認もありそうだ。 *8-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202003/CK2020033002000209.html (東京新聞 2020年3月30日) 手洗い効果? インフル最少 昨季比4割減、流行ほぼ収束 新型コロナウイルスの感染が広がる一方で、インフルエンザの患者数が昨シーズンに比べて激減している。医療機関の報告を基にした厚生労働省の推計で、今年第十二週(三月十六~二十二日)までの累計患者数は前年同期(千百六十四万人)より約四割少ない七百二十七万人。同省担当者は「一人一人が新型コロナ対策にもなる手洗いの徹底などに努めた結果」と受け止めている。厚労省は全国約五千カ所の定点医療機関からの報告を基にインフルエンザ患者数の推計値を毎週発表している。二十七日発表の第十二週までの累計は、比較可能な二〇一一~一二年シーズン以降で最少となった。今後も流行が続く可能性があることを示す「注意報」は全保健所管内で解除され、流行はほぼ収束したとみられる。ただ、過去には五月の大型連休前後に再流行した地域の例もあり、同省は「決して油断はしないで」と呼び掛ける。今シーズンの特徴は、昨年十二月まで例年を上回るペースで増加していた患者数が、ピーク時期になることが多い一月下旬~二月上旬にほとんど増えなかったことだ。一方、新型コロナウイルスは一月十五日に国内で初めて感染者が確認され、一月下旬以降、各地で感染が広がった。このため、例年以上に手洗いを徹底したり、人混みを避けたりして感染症の予防を心掛ける人が増えたとみられる。今シーズンは子どものインフルエンザ患者も少なかった。厚労省が自治体の報告を基にまとめた学校や保育所などの休校や学年・学級閉鎖の状況では、第十二週までの累計は昨シーズンに比べて全国で約二割少なかった。 <病院やオフィスの設備・休業補償など> PS(2020年4月10日追加):新型コロナの感染拡大で緊急事態宣言が出された福岡県では、*9-1のように、感染症指定医療機関でない一般病院も患者の受入を増やす必要があり、院内感染を起こさないための準備をしているそうだ。この病院は、140床全てが個室で陰圧装置を備え、陰圧を強化した部屋もあるので比較的恵まれているが、本来はどの病院も全室個室で陰圧装置を備えてもらいたい。その理由は、複数の人が入る病室は不自由な団体生活になる上、感染症が広がる可能性もあり、他の病気の人と同じ部屋では気分がさらに落ち込むからである。そのため、コロナ後のV字回復には、病院設備の充実(原則として、全室個室で陰圧室)と感染症を受け入れる基幹病院が感染症病棟を備えるための補助金を出すのがよいと思う。 また、*9-2のように、北九州市は、新型コロナ感染拡大を受けて、福岡県の無症状者・軽症者を受け入れる療養施設として「東横イン北九州空港」をホテルごと借り上げ、約200床用意するそうだ。空港近接のホテルも航空機の客室乗務員も今は空いているので、現在のニーズに合ったサービスをするのはよい考えだ。また、通常は航空機の食事を作っている会社も療養食を提供すれば業務を続けられ、新型コロナが収まった後には病院食・介護食という新しい分野に進出することが可能になるため、臨機応変に事業を行うべきである。 さらに、日田市役所は、*9-3のように、飛沫感染防止のため、住民課と税務課の窓口に下部に隙間のある透明シートを使った間仕切りを設置したそうだ。確かに、日本の役所や会社のオフィスは、間仕切りもなく、机をつけて仕事をしており、人ばかり多くて集中できないだろうと前から思っていた。そのため、これを機会に、透明でもよいので適切な高さの間仕切りを付け、人と人との間にはパソコンや書類棚を設置して、一定の距離を確保したオフィスを作ったらどうかと思う。ちなみに、外資系会社のオフィスは、1980年代からそうだ。 最後に、*9-4のように、新型コロナ特措法に基づく緊急事態宣言に関して、西村経済再生担当相は対象地域となった知事とのテレビ会議で、「外出自粛の効果を見極めてから」として休業要請を2週間程度見送るよう打診し、地方は休業要請の損失補償を求めているそうだ。私は、休業要請の判断は地域毎に知事の責任で行うべきだと思うが、「行政から営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」「補償とセットでなければ理解いただけない」というのは賛成できない。何故なら、新型コロナ感染者を出せば大変なことになる中で、休業は自分や事業の生命を護るために行うものであり、行政から求められて仕方なくやるものではないからだ。さらに、休業によって収入が減少した事業者には、簡素な手続きで速やかに給付金を出せばよいからである。 *9-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599382/ (西日本新聞 2020/4/10) 感染者受け入れへ一般病院「逃げられない」 対策徹底、風評の懸念も 新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出された福岡県では、感染症指定医療機関ではない一般病院に入院する患者が増えている。一般病院での指定感染症の受け入れは異例の事態。各病院は感染対策の徹底に腐心し、風評被害の懸念も募る。県の受け入れ要請に備える同県広川町の姫野病院を9日に訪ねた。病院が感染者の受け入れに備えて用意した個室は3部屋。ベッドが一つ置かれ、冷蔵庫やトイレもあり見た目は普通の病室と同じだが、重症化した際に人工呼吸器を置くためのスペースを確保しておくなど細部に気を使う。「室内には陰圧装置を備えており、廊下に空気が漏れる心配はありません」。病院で感染対策室長を務める感染管理認定看護師の中西穂波さんが説明してくれた。陰圧とは室内の気圧を下げ空気を室外に漏らさない機能。フロアの一部は扉で仕切られ、ほかの入院患者とは動線が交わらないように工夫している。病院は全140床が個室。指定医療機関ほどの機能ではないが、全室に陰圧装置を備える。当面は陰圧を強化した3部屋の使用を想定し、県からの要請次第では、最大35人が入院できる1フロア全てを感染者専用にする方針だ。受け入れ態勢の検討を具体化させたのは1週間ほど前。約500人いる職員には院内感染や風評被害の懸念も根強いが、姫野亜紀裕院長が「医療機関としての使命。ウイルスから逃げてばかりはいられない」と決断した。感染者に対応するスタッフは、使い捨ての医療用長袖ガウンにキャップ、マスク、ゴーグルなどを着ける。着脱は急きょ設けた隔離エリア内に限定し、その都度、アルコール消毒するなどマニュアルも策定。スタッフが帰宅する際はシャワーを浴びることも厳守させる。看護師などを対象に研修を繰り返すという。ただ、十分な対策を講じても病院スタッフの不安は尽きない。感染患者に対応する人員の選定も課題で、中西さんは「精神的なケアも必要になるだろう」と話す。感染者の受け入れによる風評被害も拭えない。電話やインターネットでの診療も実施しているが、姫野院長は「外来診療の患者は減るだろう」と覚悟する。福岡県内の感染者数は累計で250人。県内12の指定医療機関にある感染症病床は66床しかなく、自宅待機を余儀なくされる軽症者や無症状者もいる。重症者らのために感染症病床を空けておく必要があり、県は受け入れ先を一般病院にも拡大し、週内に300床を確保する方針だ。姫野病院では9日、医師や看護師向けの訓練を実施した。中西さんは「いざ感染者が来た時に慌ててミスをしないよう事前にやれることはやっておく」と表情を引き締めた。 *9-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599334/ (西日本新聞 2020/4/9) 福岡県が軽症者を週明け移送へ 新型コロナ、北九州のホテル200床確保 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、福岡県が無症状者や軽症者を受け入れる療養施設として、ホテル「東横イン北九州空港」(北九州市小倉南区)を確保したことが分かった。ホテルごと借り上げ、約200床を用意できる見通し。13日にも感染者の移送を始める。厚生労働省は感染拡大状況に応じ、軽症者や無症状者について、高齢者や基礎疾患がある人、妊婦などを除き、自治体が用意した民間宿泊施設や自宅での療養を検討するよう都道府県などに通知。県内では感染者が急増して病床が逼ひっ迫ぱくしており、厚労省と協議して医療機関以外での療養に移行を決めた。関係者によると、ホテルには医療機関に入院中や自宅待機中の感染者を移送するほか、新たな感染者にも入ってもらう。1人1室での療養が原則で、感染防護の訓練を受けた看護師や保健師が常駐して健康観察し、医師も適時対応する。ホテル内での感染拡大を防ぐため、清潔な区域と、ウイルスによる汚染区域を明確に分けるゾーニングを徹底。搬送は感染予防を施した公用車などを使い、保健所職員らが対応することを検討している。ホテル従業員は一切関与しない。厚労省によると、滞在中のPCR検査で2回陰性となることが退所基準だ。福岡県内の感染者数は累計で250人。県内12の感染症指定医療機関にある感染症病床は66床しかなく、自宅待機を余儀なくされる軽症者や無症状者もいる。重症者らのために感染症病床を空けておく必要があり、県は受け入れ先を一般病院にも拡大し、週内に300床を確保する方針。 *9-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599375/ (西日本新聞 2020/4/10) 飛沫感染防止へ手作り間仕切り 日田市役所の窓口、下部に隙間も 新型コロナウイルスの飛沫(ひまつ)感染を防ぐため、大分県日田市役所の住民課と税務課窓口に9日、透明シートなどを使った職員手作りの間仕切りが設置された。間仕切りは、財政課職員が製作。ホームセンターで農業用のマルチシートなど材料を購入し、縦横90センチの15個を完成させた。窓口担当職員の意見も聞き、下部には書類のやりとりができる15センチの隙間を作った。設置した両課は、市民との接触が最も多い部署。出生届を提出しに訪れた同市日ノ隈町の河津大輔さん(25)は「ウイルスは目に見えないのでこういう対策は安心する」と話していた。隣接する福岡県が緊急事態宣言の対象地域となった7日に同市で初めての感染が確認され、市民の危機感も高まっている。財政課の担当者は「業務が滞ることなく感染防止に役立てれば」と話し、今後は他の部署用も検討するという。 *9-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/510015 (佐賀新聞 2020.4.8) 休業要請2週間見送り打診、西村担当相、7都府県に 新型コロナウイルスの感染拡大に備える改正特別措置法(新型コロナ特措法)に基づく緊急事態宣言を巡り、西村康稔経済再生担当相が対象地域となった7都府県知事とのテレビ会議で、休業要請を2週間程度見送るよう打診したことが8日、関係者への取材で分かった。感染者数の多い東京都の小池百合子知事は異論を唱えた。地方が休業要請を受けた損失補償を求めるのに対し国は拒否。双方の足並みの乱れが表面化しており、終息に向けて宣言が期待通りの効果を上げられるかどうか問われそうだ。関係者によると、特措法を担当する西村氏は8日昼、東京、大阪、千葉、神奈川、福岡など7都府県知事とテレビ会議で会談。休業要請に関し「外出自粛を第1段階として、その効果を見極めてから」として2週間程度の見送りを求めた。安倍晋三首相が7日の緊急事態宣言に伴い「2週間後には感染者の増加をピークアウト(これ以上は上昇しないという段階に)させ、減少に転じさせることができる」と述べたのを受けた対応とみられる。これに対し、小池氏は「東京は感染のスピードが速く、待てる状態ではない。統一的にではなく地域の実情に沿う対応ができるようにしてほしい」と反論。休業要請の判断を地域ごとに知事の責任で行うべきだとの意見は別の知事からも出たという。政府は7日に改正したコロナ対策の「基本的対処方針」で、宣言対象地域の知事に対し、まず住民に外出自粛を要請し、その効果を見極めた上で休業要請などを行うよう求めた。対象7都府県のうち、東京都が独自に休業要請に踏み切る考えを示す一方、6府県は「外出自粛の効果を見たい」(小川洋福岡県知事)などと当面、休業要請しない方針を示している。ただ8日の全国知事会会合で、吉村洋文大阪府知事は「行政から営業自粛を求める以上、補償は表裏一体だ」と強調。小池氏も含め賛同の声が相次いだ。背景には、地域経済や住民生活に大きく影響する休業要請を知事が出すには「補償とセットでなければ理解いただけない」(黒岩祐治神奈川県知事)との事情がある。知事会は同日、国に損失補償を強く求める緊急提言をまとめた。政府は、休業要請の対象となっていない分野でも影響があることを理由に個別補償を否定し、収入が大幅に減少した事業者に給付金を出すとの立場を崩していない。 PS(2020年4月13日追加):*10-1のように、新型コロナの感染防止対策で一斉休校していた全国の小中高校が4月6日以降は新学期をスタートさせているが、「3密」の回避には限界があるとされている。しかし、「3密の回避」や「ドアノブ・手すりの消毒」は、新型コロナ以外の感染症防止にも必要なことなので、これを機会に30人学級にして座る間隔を空けたらどうか。パソコンを置いても不自由のない大きさの机にして間隔を空けることも、子どもの数が減っており、新学期の現在なら可能だろう。 また、「新型コロナの治療薬はない」といつまでも言われているが、実際には、*10-2のように、インフルエンザ治療薬の「アビガン」が効くことが明らかになり、日本には200万人分の備蓄があるそうだ。そのため、(他国に無償供与する前に)国内の患者に速やかに投与して治せばよいと思われる。「アビガン」は、RNAウイルス全般に効くと見られており、動物実験で催奇形性が確認されたため妊婦への使用を禁じているとしているが、それは、全員に使ってならない理由にはならない上、軽いうちに使わなければ効果が薄くなるからだ。 そして、検査して治療することを選ばず、緊急事態宣言による外出禁止に頼った結果、*10-3のように、観光業界が「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」という事態になっている。観光バス駐車場の利用は、前年同月と比べて99.5%減で、観光バスで働く人は職を失って再起不能になりそうなのだ。私は、動いていない観光バスを借り上げて内装を変え、駐車場に止めておけば、発熱外来や検査室として使え、テントより余程居心地が良く、一石二鳥になると思う。 なお、ネットカフェが宿泊施設とはとうてい思えないが、*11-1のように、緊急事態宣言によるネットカフェの営業自粛で多くの人が行き場を失うので、埼玉県は県内にある73か所のネットカフェに寝泊まりしている300人ほどに上尾市のスポーツ総合センターを一時的滞在場所として開放するそうだ。しかし、ITやネットとつけば先端という時代は1990~2000年代始めに終わっているため、住居にゆとりのある地方で、*11-2のようなアルバイトをしながら、今後の生き方を考えたらいかがかと思う。 ![]() (図の説明:左は、現在の典型的な教室で、中央は机の間を離して配置した写真だ。どちらも、机が粗末すぎて荷物を置く場所もなく、パソコンを置けば書く場所がないという状況だ。そのため、右の写真のように、(色は白でなくてもよいが)机の幅を120cmくらいにしてパソコンを標準装備とし、生徒同士が間隔をあけて座れるよう、30人学級にすればよいと思う) *10-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/599942/ (西日本新聞 2020/4/12) 手探りの教室「3密」回避限界も 学校再開、リスク拭えず「悩ましい」 新型コロナウイルスの感染防止対策で一斉休校していた全国の小中高校が6日以降、続々と新学期をスタートさせている。国内では都市部を中心に感染が収まらず、今後も予測不能な中での学校再開。文部科学省は再開に際して留意点の大枠を示すが、再休校の判断など対応の多くを委ねられた教育現場は難しいかじ取りを迫られている。「今は教室内で大声を出さない方が良い、となっていますので普通の声であいさつをしましょう」。始業式を各教室で迎えた子どもたちは、校内放送で流れる教師の呼び掛けに少しくぐもった声で応じた。6日、佐賀県伊万里市の伊万里小。マスク姿の子どもたちは家庭で検温して登校、結果を記入した健康観察カードを学校に提出した。長谷川晃三郎校長は「子どもたちの心身安定のためにも始業式があって良かった」とまずは安堵(あんど)した。3月下旬に学校再開の指針を示した文科省は、毎朝の検温、マスクの全員着用を原則とし、ドアノブや手すりなどの小まめな消毒を学校に要請。特に(1)換気の悪い密閉空間(2)多くの人が密集(3)近距離での会話や発声(密接)-の3条件が重なることを徹底して回避するよう求めた。伊万里小では教室の机の間隔を空け、授業でのグループ討論は行わない。音楽では当面、歌う時間を減らし、鑑賞を中心とする。体育館で行う体育のマット運動や跳び箱も先送りし、1学期は運動場で接触の少ない授業を優先するという。長谷川校長は「学校再開のメリットデメリットはあるが、今後もどうなるか分からない」と、できる範囲での対応を強調した。それでも、同じ6日に始業式のあった同県唐津市の小学校の女性教諭(26)は「3密(密閉、密集、密接)を避けたいが、児童はくっついて遊ぶことも多く悩ましい」と困惑顔だった。 ◇ ◇ 「3密」対策の必要性は浸透するが実際のハードルは高い。給食の時間、飛沫が飛ばないよう机を向かい合わせにせず、会話を控えるようにしても配膳などの段階で接触はある。40人近い学級であれば確保できる机の間隔はわずかだ。休校が続く福岡市の中学校に勤務する40代の女性教諭は「どんなに工夫しても問題は残る。今、学校が再開されずにむしろほっとしている」と打ち明けた。文科省も指針の中で「多くの学校においては人の密度を下げることには限界がある」とし、学校教育活動上、近距離での会話や発声が必要な場面も生じることを認める。では、どうすべきか。学校によっては、学級を二つに分けて授業をしたり、登校日を分散させたりするといった案もあるが「授業時間数や教育の質を十分に確保できるのかという課題はある」(福岡県の中学校長)。現実的にはマスクの着用と換気の徹底で乗り切るしかないのが実情だ。 ◇ ◇ こうした学校の状況に、大分県では「勉強の遅れは取り返せても、命は取り返せない」と、県立高校生2人が休校の延長を求め、インターネットで集めた約1600件の署名を添えた要望書を県教育委員会に提出した。しかし県教委は「意見は受け止めたが、県内の感染状況は落ち着いている」として、予定通り県立学校を8日に再開している。一方、政府の緊急事態宣言を受けて対象の福岡県内をはじめ九州の一部自治体は再休校を決めたり、学校再開の方針を転換したりしている。実は新型コロナウイルスを巡る対応で安倍晋三首相の唐突な一斉休校要請も、文科省の学校再開の指針も、科学的根拠や効果は今なお示されていない。その中で選択を迫られる教育現場からすれば「地域事情を踏まえて総合的に判断するとしか言いようがない」(宮崎県教委)と歯切れも悪くなる。過去に例のない事態と向き合う現状では、学校を休校するか、再開するか、また再開した場合に感染をどう防ぐのか、完璧な答えは見えない。教育研究家の妹尾昌俊さんは「学校は本来、安全に楽しく学べる子どもたちの居場所。しかし大勢が教室に密集する日本の学校で感染リスクを大きく低下させるのは限界がある。感染が続く地域では子どもや保護者の意思を尊重できる選択肢があってもいい。いずれにせよ全ての子に学習の遅れが生じない手だては不可欠だ」と話した。 *10-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202004/CK2020041302100024.html (東京新聞 2020年4月13日) 「命救う薬に」コロナへの効果期待 アビガン開発者に聞く 新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言を発令した七日、安倍晋三首相は治療候補薬として、インフルエンザ治療薬「アビガン」を増産する方針を表明した。開発に携わった富山大名誉教授の白木公康さん(67)は「命を救う薬として貢献できればうれしい」と語る。 ◆世界も注目 30カ国が提供申し込み 「すでに百二十例を超える投与が行われ、症状改善につながったという報告も受けている」。首相は会見でアビガンへの期待を前面に押し出し、開発企業と協力して臨床研究を進めることを表明。世界三十カ国から提供の申し入れがあり、政府は無償供与も始める。アビガンはインフルエンザ治療薬として白木さんと富山化学工業(現富士フイルム富山化学)が開発。二〇一四年に治療薬として承認され、現在は政府が新型インフルエンザ対策として二百万人分を備蓄する。 ◆ウイルスに効くと直感 岐阜市出身の白木さんは一九九一年に富山大のウイルス学研究室教授に就任。当初は帯状疱疹などを起こすヘルペスウイルスの治療薬を研究したが、既存の薬より効くものはできなかった。違うテーマでの再出発を目指していた九八年、富山化学の研究者が、同社が持つ三万個の化合物の中から試験管での実験でインフルエンザに効きそうな結果が出た物質として、アビガンを持ってきた。「構造の化学式をみた瞬間、インフルエンザなどのRNAウイルスに効くなと思った」と、白木さんは振り返る。インフルエンザや新型コロナウイルスは、遺伝子としてDNAではなくRNAを持つ。アビガンは、細胞内に侵入したウイルスが、RNAをコピーして増殖するのに必要な部品によく似た構造をしていた。ウイルスが部品と間違えてアビガンを取り込めば、RNAのコピーができなくなり増殖が止まると白木さんはみた。長年研究したヘルペスの場合、DNAで同じような働きをする薬が特効薬になっている。アビガンにはこの薬と共通点があると見抜いた。失敗経験が生きた。 ◆3月に臨床試験開始 動物実験を始めると、マウスでもインフルエンザに効くことを示せた。しかし、富山化学の経営状況が悪化したことや、既にインフルエンザ治療薬があったことなどから治験は停滞。それでも、既存の薬が効かない新型インフルエンザが出現した場合の切り札として一四年に承認された。アビガンはRNAのコピーという、ウイルス増殖の基本的な仕組みを妨げるため、白木さんは「インフルエンザ以外のRNAウイルス全般に効く」とみていた。実際、一四年からアフリカで猛威を振るったエボラ出血熱にも使用された。標準的な治療薬には選ばれなかったが、ギニアでは死亡率を低下させたとの研究成果もある。コロナウイルスでも同様の効果を期待して、藤田医科大(愛知県豊明市)が三月に臨床研究を開始。首相はこうした研究成果を念頭に「効果が出ている」と発言したとみられる。富士フイルム富山化学も今月三日にアビガンの治験を始め、六月末までに結果をまとめる。既に増産にも乗り出した。 ◆「緊急事態に使う薬に」 ただ、アビガンは動物の試験で、胎児に奇形を生じる催奇形性が確認された。人での治験では大きな副作用は確認されなかったが、インフル治療薬として妊婦への使用を禁じている。日本医師会の横倉義武会長もアビガンの治験への協力を表明する一方で「生殖期への影響が強い。注意しながら使うことが重要だ」と強調する。白木さん自身、コロナウイルスへの有効性が確認されたとしても「いつでも広く使うのではなく、現在のような緊急事態に命を救う薬という位置付けになる」とみる。一方で「肺の炎症は、高齢になってから後遺症が出ることもある。肺で炎症のある患者には早い時期から投与する必要がある」と指摘する。 *10-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN475T44N47IIPE01F.html (朝日新聞 2020年4月9日) 「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」北海道・小樽のいま 新型コロナウイルスの影響が長期化し、観光業界が苦境に立たされている。政府は7日に緊急事態宣言を出し、新たな経済対策をまとめたが、事態の収束は見通せない。国内有数の観光地、北海道小樽市では「もう限界に近い」との声が上がる。 ●観光バス99.5%減の衝撃 今月初旬、小樽市が集計した数値が地元関係者に衝撃を与えた。2月まで多くの人が行き交っていた小樽運河近くの観光バス駐車場の利用が、3月は6台にとどまった。前年同月(1343台)と比べると99・5%減。「観光客が消えた」と市の担当者は表現する。緊急事態宣言の対象は東京や大阪、福岡など7都府県で、北海道は含まれなかったが、観光需要の回復は当面見込めない。約100店舗が軒を連ねる小樽堺町通り商店街では、厳しい現状を訴える声があふれる。「コロナで死ぬか、経済で死ぬか」。昆布専門店「利尻屋みのや」の社長、簑谷和臣さん(50)はそう話す。3月の売り上げは前年の24%。例年、観光客が増える夏に向けて売り上げが伸びるため、このままでは4月の売り上げは前年の10%、5月は5%になる恐れがあるという。31人の従業員の雇用は最後まで維持する考えだが、「あと何カ月、給料を払えるだろうか」と苦しい胸の内を明かす。政府の経済対策、とりわけ即効性がある現金給付に期待を寄せるが、事態が長期化すれば焼け石に水になってしまう。「収束が最大の経済対策だ」と簑谷さんは話す。 ●海鮮丼専門店、アルバイトは全員休み 海鮮丼の専門店「どんぶり茶屋」では、3月の売り上げが前年の2~3割という。十数人のアルバイトは全員休んでもらい、他に仕事が見つかればそちらを優先してほしいと伝えたという。運営会社の外食部門の責任者、大野大輔さん(43)は「先が見えないのが一番不安。打つ手がない。今は耐えるしかない」と話す。アクセサリー店「3Ring(サンリング)」では、3月の売り上げが半減した。運営会社の副社長、淡路祐介さん(39)は「他のお店と比べれば、うちはまだマシかもしれない」。それでも、運転資金を確保するために数百万円の融資を受ける検討をしている。当初は5月までの収束を期待していたが、緊急事態宣言であきらめざるを得ない状況だ。「このままでは、また融資、また融資となりかねない。夏までに収束しないと、商店街でも事業を縮小するお店が増えてくるかもしれない」と淡路さんは言う。 *11-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200412/k10012383281000.html (NHK 2020年4月12日) ネットカフェ営業自粛で行き場失う人に県施設を無料開放 埼玉 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言を受けて、埼玉県は人が集まりやすい施設などに13日からの休業を要請していますが、インターネットカフェの営業自粛で多くの人が行き場を失うおそれがあるため、一時的な滞在場所として、県の施設を12日夜から開放することを決めました。緊急事態宣言を受け、埼玉県は人が集まりやすい施設などに13日午前0時からの休業を要請していて、対象の施設には24時間営業のインターネットカフェも含まれています。しかし、県によりますと、県内にある73か所のインターネットカフェには、300人ほどが寝泊まりを続けているとみられるということで、こうした人たちが行き場を失うおそれがあるため、上尾市にある県のスポーツ総合センターを一時的な滞在場所として、12日夜から開放することを決めました。和室と洋室合わせて30部屋におよそ200人が宿泊でき、県内のインターネットカフェを利用していた人は、原則、無料で1週間、滞在できるということです。施設の開放は12日午後8時から来月6日まで行われ、利用する場合は午前9時から午後6時までは「048-830-8141」、午後6時以降は「048-774-5551」まで連絡が必要だということです。 *11-2:https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/206266 (上毛新聞 2020/4/13) 嬬恋キャベツに人手を 新型コロナで宿泊や飲食の余剰人材へ募集 新型コロナウイルス拡大防止の水際対策強化に伴う入国制限などの影響で、外国人技能実習生らが来日できず深刻な人手不足が懸念される中、群馬県嬬恋村のキャベツ農家でつくる嬬恋キャベツ振興事業協同組合(干川秀一理事長)は12日までに、客数の落ち込みで人手余剰感がある宿泊施設や飲食店の従業員を一時的に雇い入れる農家を紹介しようと募集を始めた。村内の農家に必要な計約220人の確保を目指す。新型コロナ問題による労働者の不足と余剰を結び付け、非常時を乗り切りたい考えだ。 ◎収穫終える10月まで 繁忙期などは配慮 政府は中国やベトナムなど73カ国・地域からの入国制限をしており、同組合は実習生の入国遅れが長期化すると判断し、対応を協議してきた。キャベツの栽培管理や収穫作業は人手が必要のため実習生に頼っている。それぞれの農家は当初、今月20日ごろから栽培作業を実習生に始めてもらう段取りを取っていたという。入国制限が解除された場合でも、入国手続きには1カ月以上かかる見込み。このため今年の入国調整を見送り、収穫を終える10月ごろまでを他業種に従事する日本人や在日外国人らの一時的な雇い入れで補いたい方針だ。農家で人手不足が深刻となる一方、宿泊や飲食といった業界では外出自粛などのあおりで来客数が大幅に減少し稼働率が低下しているほか、製造業などでも海外からの部品調達が滞るなどして工場が停止し、従業員が自宅待機となるケースもあるという。同組合は、一時的に余剰感が生じたこうした業界で働く人を、キャベツ栽培農家が雇えるよう橋渡しをする。村内の観光業者や商工業者にチラシを配り、雇い止めや一時休業を考えている経営者に対して従業員の雇用確保策としても呼び掛ける。同組合はJA系統外の農家などでつくる団体だが、JA嬬恋村に支援を求める農家に対しても応募者をつなぎ、村全体のキャベツ農家に人材を提供していく考え。村内では約120戸が計約220人の人員を求めているという。新型コロナウイルスの状況次第だが、同組合事務局は「夏休みなどに繁忙期となるホテル従業員には配慮したい。短時間でもいいので村内外から一緒に頑張りたい人に来てほしい」としている。問い合わせは同組合の電子メール(fhashi18@gmail.com)へ。 <検査・治療に帰国者・接触者相談センターや保健所を通すのが誤りだ> PS(2020年4月15、16、17日追加):*12-1のように、「新型コロナの感染が拡大し、クラスター追跡が遅れて保健所がパンクしているのが危機だ」と記載されているが、“積極的疫学調査”と称するクラスターの追跡は、(原爆症の調査を思い出すが)疫学調査のための調査であって、治療のための迅速な検査になっていない。さらに、東京都の感染者の約7~8割が感染経路不明というのも、公共交通機関・職場・歓楽街などで接した不特定多数の人の全てを報告することなどできるわけがないため当然で、有用な疫学調査にもなっていない。現在は、クラスターを追跡して無症状の人を隔離するよりも、症状の出た人を素早く検査して治療し、重症化する前に治すことが必要な段階なのである。 京都大付属病院と京都府立医科大付属病院が、*12-2のように、新型コロナの院内感染を防ぐために、手術や救急医療を受ける患者に対して症状がなくてもPCR検査を公費で行うか保険適用するよう求める共同声明を発表し、対策が遅れれば医療崩壊に繋がると訴えている。他の病気で病院を訪れる人でも新型コロナに感染していないという保証はないため、手術や救急医療などの治療を受ける患者に検査を行うのは当然だ。そのため、治療の一環として検査を保険適用にすればよく、*12-4のような15分で判定できる高価すぎない検査キットをクラボウの中国の提携先が開発し、4月16日以降、1日1万テスト分を供給するそうだ。 さらに、*12-3のように、北海道新聞も社説で「新型コロナの検査態勢拡充に手を尽くしたい」と記載しているが、検査方法はPCR検査だけではないため要注意だ。確かに、医師が感染を疑って検査を求めても保健所などが拒否するケースが多すぎ、まだ「感染者や渡航歴がある人などとの濃厚接触」を条件にしているのは現実に合っていない。そのため、先行事例や提言を参考にして工夫すべきだが、専門技師が不足しているからといって、「感染したら重症化するリスクが高いのは高齢者」などと年齢差別的な報道を繰り返しながら、停年退職者に検査を担わせようと考えるのは筋が違うため、リスクが低いと言わている人が対応すべきだ。 新型コロナの国内感染者数は、*12-5のように、「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員分を合わせて1万2人となり、三重県四日市市では発熱して自宅療養中だった50代男性が死亡し、感染していたことが判明したそうだ。これは、東京在住の私のいとこ(40代男性)が、①微熱が続くのでかかりつけ医に行ったら「保健所に相談して」と言われ ②保健所は「軽症だから検査しない」と言い ③最初は37.5 度だった熱が4日後には40度になって ④苦しいので保健所に電話したら電話が通じず ⑤やっとPCA検査を受けたら結果が出るまで3日かかると言われ ⑥状態が著しく悪化したためPCA検査の結果を待たずに救急車で病院に行ったら ⑦「軽症だから公共交通機関で帰ってくれ」と言われ ⑧救急車の中で6時間も待たされた後にやっと入院できて酸素吸入を受け ⑨後でPCA検査の結果が陽性だったことがわかった というのと同じケースだと思うが、私のいとこも救急車で病院に行かなかったら「発熱して自宅療養中だった40代の男性が死亡し、死亡後に陽性だったことが確認された」などというくだらない報告になっていたところだった。つまり、日本は、とんでもない医療放棄国になってしまったのだが、①の段階で直ちに検査し、③になる前にアビガンを投与していれば、とっくに治って救急車や救急救命室を占有する必要もなかったのである。また、⑤については、結果が早く出る検査方法を使った方がよく、新型コロナの症状を出している人が⑦のように公共交通機関を使えば、東京で新型コロナが蔓延するのは当然で、どこかおかしい。 なお、新型コロナの治療効果が期待されるアビガン(対症療法ではなく根本的治療薬である)は、*12-6のように、⑩政府は備蓄を3倍の200万人分へ増やす計画を掲げているが ⑪通常であれば中国に依存していた原料の国内生産切り替えには時間がかかる(何でも時間がかかるが、時間をかければ勝負は終わっている) ⑫緊急事態の対応で規制緩和など官民を挙げた取り組みを加速する必要がある そうだ。しかし、日本で開発された付加価値の高い医薬品でも国内で生産すればコストが高いため中国に依存していたのは情けないし、政府は今が必要な時なのだから備蓄を迅速に提供すべきだ。そして、政府が短期間で承認したいのに、厚労省が「条件付き承認でも審査に数カ月がかかる」等と言っているのは、厚労省の怠慢である。 2020.4.6東京新聞 2020.4.10Yahoo 2020.3.6東京新聞 (図の説明:1番左と左から2番目のグラフのように、東京始め日本で新型コロナ感染者が等比級数的に増え、いくつかの都府県で緊急事態宣言が出された。しかし、右から2番目の図のように、37.5度以上の発熱が4日以上続き、患者が崩壊しそうになって初めて保健所や帰国者・接触者相談センターに電話相談することができ、そこの電話は繋がりにくい上に繋がっても事務的な説明をして検査を断られるケースが多く、新型コロナ感染者がやむなく自宅待機してさらに感染者を増やしている状況だ。が、1番右の図のように、迅速に検査して治療しなければアビガン等の治療薬は効かないため、保健所や帰国者・接触者相談センターへの事前相談はやめて迅速な検査と投薬で治す体制に変えるべきだ。そして、そのための準備は、ダイヤモンド・プリンセス号の経験以来、2月~3月中旬までの時間稼ぎをしている期間にやっておくべきだったのに、いつまで同じことを言って経済を停滞させ、無駄遣いばかりしているのか) *12-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58024420U0A410C2EA1000/ (日経新聞 2020.4.15) クラスター追跡に遅れ 感染拡大、駅な保健所パンクの危機 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、感染経路の調査を担う保健所の負担が急激に重くなっている。感染者や濃厚接触者が加速度的に増え続け、調査に非協力的な人も多い。保健所がパンクすると、クラスター(小規模な感染者集団)の発見が困難になり、感染が一段と拡大しかねない。態勢増強や業務分散が急務だ。「保健所は今、新型コロナとの闘いの主戦場だ。現場は疲弊しており、何とかしなければならない」。政府の専門家会議の尾身茂副座長は窮状を訴える。保健所は都道府県や政令市、中核市などが設置主体で、医師や看護師、保健師らが配置されている。聞き取りなどを通じ濃厚接触者を捜し出したり、体調を確認したりする「積極的疫学調査」を担う。全国に472カ所(2019年度)ある。国は感染拡大防止のため、クラスター追跡を重要施策に掲げる。尾身氏が危機感を隠さないのううは、感染者や濃厚接触者の急増で、保健所によるクラスター追跡に遅れが生じているためだ。このところ東京都で見つかる感染者のうち、約7~8割は感染経路が不明だ。都の担当者は「保健所からの情報がほとんどなく、背景がよく分からない。受診者が増えて聞き取り調査が十分できていない可能性がある」と明かす。厚生労働省によると、感染者1人あたりの濃厚接触者数はゼロから100人近くと大きな幅がある。自宅で安静にしていたか、外出していたかで大きく異なる。保健所は感染者の行動履歴から濃厚接触者を割り出すが、行動範囲の広い若者や中高年の感染者が増え、追い切れなくなっているという。歓楽街でのクラスターの関係者は聞き取りにも非協力的なことが少なくない。 *12-2:https://www.jiji.com/jc/article?k=2020041501037&g=soc (時事 2020年4月15日) 無症状でもPCR検査を 京大病院など共同声明―新型コロナ 京都大付属病院と京都府立医科大付属病院は15日、新型コロナウイルスの院内感染を防ぐため、手術や救急医療を受ける患者に対し、症状がなくてもPCR検査を公費で行うか保険適用するよう求める共同声明を発表した。対策が遅れれば医療崩壊につながると訴えた。声明は無症状であっても感染者に手術や分娩(ぶんべん)、内視鏡検査をすれば、医師や周囲の患者らに感染させる可能性があると指摘。現在は症状がある患者だけに保険が適用され、無症状のケースで実施した場合に病院側が費用を負担すれば経営を逼迫(ひっぱく)させるとした。また、PCR検査に必要な試薬や、感染を防ぐ防護具の確保も求め、厚生労働省に要望書を提出するという。京大病院の宮本享病院長は記者会見で、「臨床現場の悲鳴でもあり、この危機感は日本中の医療関係者が共有している」と話し、他の医療団体に賛同を求めた。 *12-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/412751 (北海道新聞社説 2020.4.16) コロナ検査態勢 拡充に手を尽くしたい 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐには、PCR検査の拡充が不可欠だ。なのに、遅々として進まない現実がある。道内の帰国者・接触者相談センターの健康相談は2、3月で1万8544件に上ったが、検査に至ったのは1・8%の349件で全国3番目の低さだった。検査ができないと、感染に不安を感じる人たちが医療機関を受診して、ウイルスをうつしたり、うつされたりする恐れがある。安倍晋三首相は今月6日、検査の可能数を1日2万件にすると述べたが、実施は8千件を下回っており、目標にはほど遠い。国は地方任せにせず、財政措置を講じて検査態勢を整え、加速させるよう手を尽くすべきだ。北海道保険医会の調査では、会員の医師が感染を疑い検査を求め、保健所などに拒否されたケースが111例あった。「感染者や渡航歴がある人などとの濃厚接触がない」などが理由である。国は感染経路から濃厚接触者を追って検査し、感染爆発を抑える手法を取ってきた。検査数の少なさは国の方針に従ったためだ。だが、感染経路が不明な人が増え、段階は変わった。検査の拡充に重点を移す必要がある。検査数という分母が感染の実態を反映していないと、科学的な統計と知見に基づいた対策を打つこともできない。感染の有無が分かれば、重症者に対して感染症指定医療機関で優先的に治療を行い、軽症者は自宅や宿泊施設で療養してもらうトリアージもしやすくなろう。それにしても日本の検査数は驚くほど少ない。ドイツの検査数は日本の約30倍に上るという調査結果もある。大量検査で早期発見に努め、重症化を阻止している。ドライブスルー方式や訪問型の検査などで院内感染を防ぎ、民間の協力を得て24時間態勢でスピードアップを図っているという。韓国で普及しているウオーキングスルー方式も有効だ。野外にブースを設けて検体を採取するため、車を持たない人でも検査ができ、飛沫(ひまつ)感染のリスクも低い。日本医師会は採血で行う抗体検査を要請している。医療従事者の感染リスクが減り、免疫獲得の確認などに適しているそうだ。こうした先行事例や提言を参考に工夫を凝らしてほしい。検査数が伸びないのは専門技師らが不足していることもある。退職者ら検査を担える人に応援を求めることも必要だろう。 *12-4:https://www.chemicaldaily.co.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%9C%E3%82%A6%E3%80%80%EF%BC%91%EF%・・ (化学工業日報 2020年3月13日) クラボウ 15分で判定 新型コロナ検査キット クラボウは12日、新型コロナウイルスの検査キットを16日に発売すると発表した。イムノクロマト法を用い、15分で感染の有無を目視で判定できる。衛生研究所や臨床検査会社などに、1日当たり1万テスト分を供給する計画。イムノクロマト法による新型コロナの迅速検査キットは国内初とみられる。保険適用を視野に入れている。検査キットはクラボウの中国提携先が開発。これまでに1000例以上の臨床データがあり、同国では4日に標準診断法のガイドラインに採用された。10マイクロリットルの血液をキットに滴下するだけで診断でき、PCR法と比較して時間、コストなどを削減できる。血液検査のため、検査作業者への2次感染のリスクも軽減できる。キットは感染時に体内で生成される特定の抗体を検出する。PCR法で検出が難しいとされている感染初期でも判定できる。PCR法は検体中のウイルス量の影響を受けやすいが、同キットは血液中に抗体が存在すれば判定可能。サンプル採取の方法や部位による偽陰性も出にくい。感染の初期段階で生成される抗体「IgM」用と感染後長期間にわたり最も多く生成される抗体「IgG」用の2種類を用意し、正診率はそれぞれ95・72%、94・24%。陰性判定率については、ともに100%。併用することで検査精度は高まる。2種ともに価格は税別で2万5000円。同社環境メカトロニクス事業部バイオメディカル部は、イムノクロマト法などを用いた食品中の成分や食中毒菌などのDNAを判定する試薬キットを開発・販売している。今回、新型コロナの感染拡大を受けて、中国の提携先が開発したキットの輸入、販売に踏み切った。 *12-5:https://mainichi.jp/articles/20200416/k00/00m/040/248000c?cx_fm=mailsokuho&cx_ml=article (毎日新聞 2020年4月16日) 国内感染者1万人超え、クルーズ船含め 死者203人に 新型コロナウイルスは16日、東京都の149人など新たに576人の感染が判明した。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客乗員を合わせた国内の感染者数は計1万2人になった。13人が亡くなり、死者は計203人になった。三重、大分、沖縄の3県での死亡は初めて。大阪府では52人の感染が確認され、感染者数は1000人を超えた。和歌山県では両親の感染が既に判明していた0歳女児の陽性が新たに確認された。三重県四日市市では発熱して自宅で療養中だった50代男性が死亡し、感染していたことが判明した。 *12-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200417&ng=DGKKZO58155130W0A410C2EA1000 (日経新聞 2020.4.17) アビガン原料、中国頼み、政府、備蓄3倍の200万人分めざすが…国内生産移行へ総力戦 新型コロナウイルスに対する治療効果が期待される富士フイルムホールディングスの抗インフルエンザ薬「アビガン」。政府は備蓄を3倍の200万人分へ増やす計画を掲げるが、通常であれば中国に依存していた原料の国内生産切り替えには時間がかかる。緊急事態の対応で規制緩和など官民を挙げた取り組みを加速する必要がある。 ●特許切れ後発薬 アビガンはウイルスが体内で増殖するのを防ぐ仕組みで、コロナ治療に効果があったという報告がある。政府はパンデミック(世界的な大流行)に備えてアビガンを備蓄していたが、1人の治療にインフルの3倍量が必要ということが分かり、現在の200万人分は70万人分にしかならず、富士フイルムに増産を指示した。アビガンは海外で基本特許が切れており、原料を製造する中国では同じ成分の後発薬の生産も始まった。国内への原料輸入が難しい状況となり、富士フイルムは国内で原料を製造する能力があるデンカに委託し、国内生産にシフト。7月から本格的な増産を始める計画を公表した。本来、医薬品の原材料を変更するには時間がかかる。原料の調達先変更を申請する場合「通常なら品質の確認や登録手続きに1年程度かかる」(国内の中堅製薬)という。今回は特例的な措置で、こうした手続きが1~2カ月程度に短縮されたようだ。ただ本格的な増産は7月以降とみられ、3カ月程度を要する。コストもかさむ。製薬会社が海外から原料を調達するのは製造原価を下げるためだ。錠剤など一般的な医薬品は化学合成でつくられ、化学物質に溶媒や材料を加えて化学反応を起こす。有毒なガスや排水が発生するため処理コストもかかる。種類や濃度にもよるが日本の医薬品の排水処理費用は1キログラムあたり数十円から数百円とされ、中国やインドなど海外の10倍ともいわれる。国内で原料から製造すると薬価50円の薬に、100円以上のコストが発生することも考えられる。原料生産を内製化できれば、200万人分の目標は達成できる。ただ国内製造だと製造原価も高くなる。製造コストに見合う薬価を設定し、その価格を維持していく支援も必要だ。インフルエンザの代表的な治療薬タミフルは1日2回、5日間の服用で2700円程度かかる。仮にアビガンがタミフルと同価格で3倍量が必要とすると、1人分の薬剤費は8100円。200万人分なら162億円となる計算だ。原薬の海外依存は日本の構造的な問題だ。厚生労働省が2013年に実施した後発薬の調達状況に関する調査によると、原薬をすべて国内で調達しているものは金額ベースで3割にとどまっている。残る7割は原薬の全部もしくは一部を海外から輸入。調達先を金額で比較するとインド(30%)、韓国(26%)、中国(24%)となっていた。薬価の引き下げ圧力は強まっており、現在は海外調達の比率はさらに高まっているとみられる。 ●審査には数カ月 アビガンについては実用化の時期も注目される。政府は短期間でアビガンを承認したい考えだが、厚労省は慎重な姿勢を崩さない。一般的に医薬品は申請から承認まで半年以上。アビガンの臨床試験(治験)は6月末に終了する見通しだ。「副作用などデータの評価、専門家の意見といったプロセスは必須。条件付きの承認でも審査に数カ月がかかるだろう」(元厚労省の薬事担当者)。今回は日本の製薬会社が開発した薬であっても、原料の多くを中国に依存していたため、機動的に増産することができない現実が露呈した。デンカは原料となるマロン酸の製造から17年に撤退していたが、製造設備を残しており、人員の手当てで再生産できることが分かった。デンカが生産できるのは幸運にすぎず、原料を海外に頼る日本の医薬品製造に対する構造的な問題は依然として残ったままだ。新型コロナで浮かび上がった日本の医薬品の供給体制の危うさを解消するためにも、国内生産に対する価格評価や緊急時の審査の仕組みなど柔軟な制度を今こそ再構築する必要があるだろう。
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2020,02,23, Sunday
![]() 購買力平価ベースのGDP 2018.12.18朝日新聞 2019.12.21毎日新聞 (図の説明:物価上昇の影響を除いた購買力平価ベースのGDPは、左図のように、日本は停滞しており、現在はインドと接戦の状態だ。一方、中国は、等比級数的にGDPが伸びているが、これまでは安い人件費に支えられた製造業の発展が主な要因で、現在は先端産業にも進出している。アメリカは人件費が特に安いわけでもないのに、購買力平価ベースのGDPが順調に伸びており、開拓者精神と人材の多様性に支えられているのだろう。また、中央の図は、中国の近年の出来事とGDPの上昇をグラフに示したもので、中国は市場経済を目標にして以降、GDPの伸びが著しいことが明らかだ。右図の日本の2020年度予算は、予算委員会であまり議論されていない《又は議論していても報道されていない》が、持っている資産を活かし、無駄遣いを省いて教育を重視し、技術や人材を大切にしなければ、将来がおぼつかない) 経産省はじめ政府が愚かなため、日本は1億人の人口を抱えながら、食料(自給率37%)やエネルギー(自給率7.4%)の殆どを輸入し、輸入するための金を稼ぐ手段である製造業やサービス業も他国に譲ってしまった。このままでは、将来は、食料やエネルギーを輸入する金もなくなるため、今日は、事例を挙げてそのことについて説明する。 (1)農林業生産物の外国依存 1)日本における食品の自給率低下 農林水産省は、*1-1・*1-2のように、2030年度の食料自給率目標として輸入飼料を与えた国内の畜産物を「国産」に含めた数値を新たに設定する方針だそうだが、これを国産に含めていけない理由は、飼料の輸入が止まれば、その畜産物を生産できなくなるからだ。 これは、政府が農産物の市場開放を優先したため政府が掲げた食料自給率の目標に達しないことを隠すためだろうが、そもそもカロリーだけで自給率が100%になっても生きてはいけない。まして、「45%の目標が37%に落ち込んだが、新たな算定方法で計算し直すと46%に跳ね上がった」などというのは、次元の低い数字遊びにすぎず、飼料増産・耕畜連携・国産飼料を与えた畜産物の消費という機運を削ぎ、食料安全保障の確立のための飼料自給率向上への取り組みを疎かにするものだ。 また、*1-3のように、社会全体の「食の安全」への意識の高まりの中、国は2015年に食品表示法を施行して原産地表示の義務化を進めているが(日本政府が定めると妥協の産物になるため、EUと同じにした方がよい)、不十分なこの原産地表示でさえ、「中国産」を「国産」と偽るなどの虚偽表示が多いそうである。 2)榊(サカキ)も中国産 日本の神事に欠かせないサカキは、国内に広く自生しているにもかかわらず、*2のように、殆ど中国産で、その理由は、国産材が売れなくなって森林の手入れが減り、木材の下に自生しているサカキを切り出して販売していた供給が減ったからだそうだ。 佐藤幸次さんは、そこにビジネスチャンスを見つけて10年前に国産サカキの供給に乗り出したが、軌道に乗せるまでは大変だったそうだ。 (2)和服も中国製 今回の新型コロナウイルス騒ぎで、日本で使われているマスクの80%が中国製だということがわかって驚いたが、日本文化の象徴とされる和服についても、*3のように、①絹糸の殆どが中国産で、made in Japanの着物生地は絶滅寸前であり ②仕立ての半分以上は、ベトナムなど海外の職人が行っており 流通する「日本の着物」の大半は、「中国産の糸」を用いて、日本で仕立てたか、ベトナムなど海外の工場で仕立てたものだそうだ。 これは、品質管理を日本企業が行いつつ、人件費をはじめとするコストの安い中国・ベトナム・ミャンマーなどで生産するようになったためで、そうなった理由は、日本国内では人件費・水光熱費・地代等の必要経費は上がったが、それに見合った生産性向上ができなかったため、国内で生産すれば価格が高くなりすぎて一般市民が買えなくなったという日本市場の現実がある。 この後、日本での生産が0になれば、品質管理ができる日本人もいなくなり、日本からは技術もなくなるが、この現象は、時間の差はあれ他産業にも起こったことで、主に東西冷戦終了後の1990年代から始まったことである。こうなってしまうと、仮に景気がよくなっても、国内ではなく輸入する相手国に金が落ちる仕組みとなる。 (3)工業製品も中国にシフト 私は、東西冷戦が終了した1990年代にODA担当をしていたため、共産主義経済の国が経済敗北し、共産主義経済から市場主義経済に移行した国をずっと市場主義経済だった国が援助しつつ技術移転していた現場にいて、その内容を見てきた。そして、現在、(長くなりすぎるので1つ1つ例を挙げはしないが)市場主義経済の国だった筈の日本が、中国やロシアよりも共産主義経済の弱点を具現しているように見えるのである。 例えば、国内メーカーだったが、日本で変に叩かれて台湾メーカーとなったシャープは、*4-1のように、初めて第5世代(5G)移動通信システムに対応したスマートフォンを発表したそうだ。メディアが的外れの叩き方をして、日本の優良メーカーを日本から追い出したのは本当に残念なことだった。 一方、*4-2のように、中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大で、スマートフォンなど世界の電子機器の生産に影響が出ているのには、電子機器における中国の重要性が現れている。つまり、中国は、食品・軽工業製品を生産・輸出しているからといって重工業製品・IT産業で遅れているわけではなく、最先端の電子機器も生産しているのであり、これは一国の政策として当然のことなのだ。 さらに、*4-3のように、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が続く中、中国からの部品供給が滞ったため、日産自動車は九州の完成車工場の稼働を一時停止するそうで、国際貿易センターによると、2019年の中国からの自動車部品の輸入額は30億ドル(約3300億円)と、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年の約10倍になっているそうだ。 つまり、日本が現状維持や後戻りばかりしている間に、中国はEVや自動運転車でも最先端を走っており、これは、国を挙げて本気でEVや自動運転車の開発を行う意思決定をし、それに基づいて皆が行動した結果だ。にもかかわらず、経産省は、「自動車だけは永遠に日本の方が優れている」と考えているようだが、それもいつまで続くかわからない幻想なのである。 (4)サービス業 製造業は、コストの低い国が立地上の比較優位性を持つのに対し、サービス業は、消費地でしか生産できないため、日本にも立地の比較優位性があり、雇用吸収力もある産業だ。しかし、経産省はじめ日本政府は、製造業と比較すると、サービス業は眼中にないらしい。 1)観光業 中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎拡大で中国政府が海外への団体旅行を禁止した1月末以降、旅客便の運休やクルーズ船の寄港取りやめが相次ぎ、沖縄県の観光施設・ショッピングモール・ドラッグストアなどから中国人団体客の姿が消えて、沖縄県経済の屋台骨である観光業に影を落としているそうだ。 このように、「日本は中国はじめ外国の観光客を迎えて外貨を稼いでいるのに、メディアが『爆買い』などという嘲るような言い方をするのは罰当たりだ」と私は思っていたが、客の姿が消えて初めて、その有難味がわかったようだ。観光で行ける場所は世界に少なくないため、今後は観光客を疎かにしない方がよい。 2)医療・介護 日本の医療は質が良かったにもかかわらず、近年は、*5-2のように、厚労省が医療費抑制しか考えずに医療叩きばかりしているため質が落ちた。医療の質が高ければ、人間ドック・医療・リハビリなどを目的とした観光を設定して稼ぐこともできたが、新型コロナウイルスへの対応を見ても諸外国から見劣りするもので、もともとあった付加価値の高い宝を、浅い思考と狭い視野でなきものにしようとしているわけである。 さらに、介護も、実需に基づいた日本発のサービスで、高齢化とともに世界で実需が増えるサービスであるのに、厚労省や財務省には社会保障という名の無駄遣いにしか見えないらしく、ブラッシュアップするどころか人口減少による支え手不足を理由として高齢者の負担増・給付減しか考えていない。そして、40歳以上の人からのみ高額の介護保険料を徴収する不公正を是正しようという気配すらない。 (5)日本は、人材・熟練技術者やその育成を怠ってきた このような新しい製品やサービスを作って軌道に乗せるのは、科学的・論理的にモノを考えることのできる人材だ。しかし、日本は、人材を計画的に育てておらず、*6-1のように、①量子研究でも後れた ②日本発の再生可能エネルギーの使用も遅れた ③日本発の再生医療もiPS細胞に偏りすぎて遅れた ④日本発の癌免疫療法も遅れた 等の状況だ。その理由は、「司令塔がない」というよりは、「司令塔にふさわしい人材をリーダーにしていない」からである。 さらに、知性が重要な時代になったのに、*6-2のように、高等教育を極めた高度人材に大学も企業も活躍の場を与えて育成していない。既に人口に占める博士の割合は増えているため、「博士≒高度研究者」である必要はなく、小・中・高校の教諭も博士を優先して採用してもよいと思う。なお、考えるための基礎知識は必要だが、覚えて終わりの知識では役にたたないのだ。 また、基礎知識のある人が就職しても、本当の人材や熟練技術者になるためには、On the job training が欠かせない。そのため、*6-3のように、①“ゆとり教育”で基礎知識を減らしたのは人材の育成にマイナスだった ②“働き方改革”によって、知識の吸収期であり仕事に熱中している人にまで働かないことを強制するのはよくない ③労働基準法改正が日本人の「勤労は美徳」という勤労観にトドメを刺して、日本の競争力をますます無くさせている ④残業禁止でダブルワーカーが増えそうだ ⑤「手に職」が付かなくなり技能伝承がやりにくくなる ⑥このままでは何の保護も保障もなく勤勉に働いて日本社会に貢献してきた経営者の多くが労基法違反の“犯罪者”になる ⑦これでは中小企業の多くが消滅してしまうだろう ⑧日本人が働き過ぎだったのは、戦後日本を復興した前の世代のことである というのに、私は賛成だ。 <食品の自給率> *1-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/394897 (北海道新聞 2020/2/20) 食料自給率 失政覆う数値かさ上げ 農林水産省が、2030年度の食料自給率目標として、輸入飼料を与えた国内の畜産物を「国産」に含めた数値を新たに設定する方針を示した。政府は現在、25年度にカロリーベースの自給率を45%に引き上げる目標を掲げている。18年度実績は過去最低の37%にまで落ち込んだが、新たな算定方法で計算し直すと46%に跳ね上がる。農産物の市場開放を優先し、自給率低迷を放置する安倍晋三政権の「攻めの農政」の欠陥を覆い隠そうとしている。そう勘繰られても仕方あるまい。安直な数値のかさ上げで、輸入飼料に依存する畜産業の実態を見えにくくするのは大いに問題だ。新しい自給率目標は、今春改定される農政指針「食料・農業・農村基本計画」に明示される。輸入飼料を与えた畜産物を除いた従来方式の指標と併記するという。今回の措置について、農水省は「畜産農家の生産努力を反映させ、国産品を購入する消費者の実感を高めるため」と説明するが、姑息(こそく)以外の何物でもない。輸入飼料を与えた畜産物は統計上、国産に含まれなかっただけであって、店頭で輸入品扱いされているわけでも、消費者が国産品と認めていないわけでもない。政府に問いたいのは、そもそもなぜ食料自給率向上を政策目標としてきたのかということである。地球規模で見れば、途上国の人口増、気候変動、疫病、戦争などで、いつ食料争奪戦が起きても不思議はない。自給率は、輸入を絶たれた場合でも国民の食を守れるかどうかの目安であるはずだ。新たな指標は輸入飼料への依存度をさらに高めかねず、政策本来の趣旨に逆行している。背景として思い当たるのが昨夏の日米首脳会談である。首相はトランプ大統領の要請をのみ、米中貿易摩擦でだぶついた飼料用トウモロコシの大量輸入を約束した。トウモロコシの輸入が増えても自給率が上がる算定方法をわざわざ用いるのは、農家のためではなく、日米両首脳にとって政治的に好都合だからではないのか。これは「国産飼料に立脚した畜産の確立」を掲げ、コメ農家に飼料用米への転作を促してきた従来の農政とは明らかに矛盾する。安倍政権は以前にも「国際基準に合わせる」などの理由で、国内総生産(GDP)を年間30兆円規模かさ上げした。経済指標を恣意(しい)的に扱い、成果を誇示するのはいいかげんにやめるべきだ。 *1-2:https://www.agrinews.co.jp/p50020.html (日本農業新聞 2020年02月15日) 新たな自給率目標 飼料増産の機運そぐな 次期の食料・農業・農村基本計画で農水省は、飼料自給率を反映しない新たな自給率目標を設定する方針だ。畜産農家の生産努力を考慮するなどの狙いがあるが、飼料の多くを輸入し、その依存度が高まっているのが実態だ。食料安全保障の確立へ飼料自給率向上への取り組みがおろそかになってはならない。日本の飼料自給率は25%(2018年度)と低い。それを反映させた現行の自給率の算定では畜産物は低くなり、全体が上がらない要因になっている。現行のカロリーベースは過去最低の37%(同)。飼料自給率を高めないと、畜産農家が頑張って生産を増やしても全体の自給率の向上にはつながりにくい。新たな自給率目標はカロリーベース、生産額ベースともに飼料自給率を反映しない「産出段階」の数値。カロリーベースでは46%になる。現行基本計画の目標の45%を上回り、数値を高く見せるためではないかとの誤解を招きかねない。狙いについて分かりやすい説明が必要だ。また飼料自給率を反映しないと輸入飼料に依存している実態が見えにくくなる懸念がある。飼料自給率は3年連続で低下。そうした危機感が国民に伝わらず、飼料増産・耕畜連携や、国産飼料給与の畜産物を食べようといった機運がそがれるようなことがあってはならない。飼料自給率向上の要である飼料用米について現行基本計画は、25年度には、13年度の10倍に当たる110万トンに増やす目標を設定。しかし作付面積は米の生産調整を見直してから18、19年産と連続で減り、18年産の生産量は43万トンにとどまった。飼料自給率の低い日本は、飼料の輸入が滞れば畜産物生産に大きな影響が出る。食料安保が危ぶまれる中、新たな自給率目標設定を巡っては慎重な扱いを求める声が相次ぐ。自民党では「飼料の国産化にマイナスにならないように」、次期基本計画を議論する同省の食料・農業・農村政策審議会の企画部会でも「土地利用型の飼料作物の振興を」などの意見が出た。自給率目標を含む基本計画の根拠法である食料・農業・農村基本法は、「食料の安定供給の確保」のために「国内の農業生産の増大が基本」「国民生活の安定に著しい支障が出ないよう供給を確保」といった理念を掲げる。それを具現化するのが自給率目標だ。国内で作れるものは作るとの姿勢を堅持すべきだ。飼料用米をはじめ飼料生産は農地の有効活用の上でも重要で、自給力の確保にも役立つ。次期基本計画では、飼料自給率を反映した従来の自給率目標と反映しない新たな目標を、カロリーベースと生産額ベースそれぞれで設定、四つの数値が並ぶことになる。これに飼料自給率目標を加えると五つになる。新たな自給率目標の設定には、消費者に国産消費の意義を実感してもらう狙いもある。同省は、各目標の役割を丁寧に説明し理解を深める必要がある。 *1-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/542448/ (西日本新聞 2019/9/12) 義務化でも消えぬ不正 相次ぐ産地偽装 2000年代に入り全国各地で相次ぐ食品偽装。11日、福岡県北九州市の食品加工会社が「中国産」の梅を「国産」と偽って販売していたことが明らかになった。社会全体の「食の安全」への意識の高まりの中で、企業にとってそれまで培った信頼を大きく損なう問題だ。国は15年に食品表示法を施行、原産地表示の義務化を進めるが、不正は後を絶たない。02年に雪印食品(東京)が牛海綿状脳症(BSE)対策事業を悪用して外国産の肉を国産と偽装していたことが分かり、同社は解散した。日本食品や日本ハム子会社でも同様の偽装が明らかになった。07年には高級料亭「船場吉兆」(大阪)で、九州産の牛肉と認識しながら兵庫県の高級ブランド牛「但馬牛」「三田牛」のラベルを張る、ブロイラーを「地鶏」として販売するなどの偽装が発覚。賞味・消費期限の偽りや料理の使い回しなどの不正も明らかになった。料理部門で営業を再開したが、崩れた「老舗」の信頼を取り戻せず翌年に廃業した。食品加工会社「キャセイ食品」(東京)も08年、長崎工場で「九州産」「国産」として生産した冷凍野菜の一部に中国産を混ぜて出荷していたと明らかにした。同社は経営破綻した。 ◇ ◇ 各地で相次いだ産地や賞味期限の偽装などを受け、国は2013年、それまで食品衛生法など3法で定めた食品の表示規定を一元化。食品表示法として施行され、加工食品の添加物、賞味期限などの表示基準を守るよう義務付けた。原料の原産地表示についても、来年3月末までに、全ての生鮮食品、輸入食品、一部の加工食品(もち、漬物、野菜冷凍食品、おにぎりなど)に義務付けた。さらに、22年4月までに、国内で製造したすべての加工食品について、重量割合が最も大きい原材料の原産地表示が義務化される。違反行為への罰則も強化。原産地について虚偽の表示をした食品の販売をした場合は2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処する-などと定める。だが、食に関わる不祥事は消えない。昨年には大分市の水産品販売会社がギンザケをサーモントラウトと偽るなど不適正な表示で商品を販売。福岡県大牟田市の水産物卸売業も中国や韓国で1年ほど育てて輸入したアサリの成貝を、熊本県内で1~6カ月養殖した後に熊本産として流通業者に販売、九州農政局に是正を指示された。 <神事に用いるサカキも中国産> *2:https://agri.mynavi.jp/2020_01_27_104254/ (マイナビ農業 2020年02月17日) 国産サカキを商機に。売り手優位のビジネス手法とは 日本の神事にとって欠かせない植物であるサカキのほとんどは、じつは中国産だ。彩の榊(さいのさかき、東京都青梅市)を運営する佐藤幸次(さとう・こうじ)さんはそこにビジネスチャンスがあるとにらみ、約10年前に国産サカキの供給に乗り出した。だが経営を成長軌道に乗せるまでには、大きな試練が待ち受けていた。 ●日本で売られるサカキのほとんどは中国産 サカキは、緑の葉が茂った枝を束ねて神棚に供えたり、神社で参拝者が神前にささげる玉串(たまぐし)に使われたりする植物。名前の由来には、神と人間の境界にある境木(さかき)を語源とする説がある。一般に「サカキ」と呼ばれているものには、「ホンサカキ」と葉っぱがやや小さい「ヒサカキ」の2種類がある。いずれもツバキ科の常緑広葉樹で、国内に広く自生している。ここでは両者を区別せず、サカキと表記する。なぜ日本の神事に使うサカキが中国産なのか。背景の一つが林業の衰退だ。国産の杉やヒノキが売れていたときは、森林の手入れの一環として下に自生しているサカキを切り出し、販売していた。だが輸入木材に押されて林業の収益性が下がり、森林を手入れする機会が減るのに伴い、サカキの供給も細っていった。林業に携わる人が高齢化し、作業をする人が減ったことがこうした流れに拍車をかけた。そこに登場したのが中国産だ。今から30年ほど前に日本の業者が中国でサカキの栽培や加工の仕方を教え、日本向けに輸出し始めた。今や日本で流通しているサカキの8割以上は中国産と言われている。そこに商機を見いだしたのが、当時20代後半の佐藤さんだった。 ●山の中で見つけた大量のサカキ 佐藤さんは17歳で高校を中退し、埼玉県飯能市にある実家の花屋で働き始めた。高校を辞めたのはミュージシャンになりたかったからだ。音楽会社にデモテープを送ったりしてみたが、実力不足を感じ、家業を手伝うことにした。サカキに注目した理由はいくつかある。家の仕事を手伝うかたわら、修行のために大手の花屋で働いてみた。そこで中国産のサカキが1カ月に2000束も売れていることを知った。実家の50倍以上。佐藤さんは「サカキってこんなに売れるんだ」と驚いた。実家で売っていたサカキも中国産だった。段ボール箱に入ったサカキを市場から仕入れると、神棚などに供えるサカキの束を指す「造り榊(さかき)」が「シクリサカキ」と誤記されていたりした。もちろんその箱は店には置かないようにしていた。だがあるとき、客の一人から「おまえが売っているのはニセモノだ」と言われ、「これは日本のか」と厳しく問いつめられた。佐藤さんは「今なら違いがはっきりわかります」と話す。中国産は輸送効率を高めるために箱にぎゅうぎゅう詰めにすることが多く、葉っぱが蒸れて弱ってしまうことがあるからだ。その客は違いを一目で見抜くほど目が肥えていたのだった。この一件を通して、佐藤さんは国産のサカキに需要があることを知った。転機は29歳のときに訪れた。佐藤さんは折に触れ、祖母の眠る霊園に行く習慣があった。その日も墓前で手を合わせると、霊園に隣接する山に足を踏み入れた。佐藤さんにとって墓参後の散歩コースだった。ふと見ると、目の前にサカキの木があった。横を見ると、そこにもサカキの木。周囲を見回すと、霧が晴れて風景の輪郭がはっきりするように、大量のサカキが目に飛び込んできた。心の中で「うわーっ」と叫んだ。どれも葉っぱが大きくてツヤがあり、濃い緑色をしていた。自分が店で扱っているサカキとは別物だった。「これだけあれば商売ができる」。佐藤さんはその日のうちに、「花屋を辞める」と両親に告げた。山の持ち主を調べたところ、ある鉄道会社が所有していることがわかった。十数回電話してようやくアポイントメントを取り、担当者に会いに行くと「サカキを切っていいよ」と快諾してくれた。販売用に植えたものではなく、他のサカキと同様、自生したものだったからだ。ちょうどそのころ、鉄道会社は山の中に20キロもの長さの遊歩道を造ることを計画していた。もともとある山道の両側10メートルを整備し、幅20メートルほどの遊歩道を造るという構想だった。担当者と話し合った結果、地面から60センチの高さで切ったサカキの株を遊歩道に残すことが決まった。切った上の部分は佐藤さんが販売用に使う。株から枝が伸びてくれば、それも切って商品にすることができる。山道の両側に生えた雑草や雑木を刈る作業を請け負うことで、佐藤さんは販売用のサカキを無償で確保することができるようになった。一人でビジネスを立ち上げることを決め、実家を出て市内のアパートに移り住んだ。順調なスタートのはずだった。だがすぐに大きな壁に直面した。せっかく手に入れたサカキが思うように売れなかったのだ。 ●売り手優位のビジネスを確立 これまで花やサカキを仕入れていた近くの市場が、最初の販売の場になった。当時はセリにかけると5キロで2500円、花屋から事前に指名で注文が入っていると3500円が相場だった。初の出荷は50キロ。注文は取っていなかったので、「セリで2万5000円くらいで売れればいいな」と思って出した。ところがフタを開けてみると、合計で2500円。期待したほどセリで買い手がつかなかったのだ。「ショックでした」。佐藤さんはそのときのことをこうふり返る。昼はアルバイトでビルや住宅を解体する仕事をし、夜にサカキを切り出しに行く生活が始まった。サカキの販売ではとても生計が成り立たないからだ。そんな生活を始めて1年半ほどたったときのことだ。解体のバイトを終えてアパートに帰ると、路上に大量の荷物が積んであった。「邪魔だなあ」と思いながら近づいてみて驚いた。「うわっ、これ自分のだ」。丁寧に積まれた布団の上にサカキの枝が置いてあった。家財道具一式が自室から外に運び出されていたのだ。生活は困窮を極めていた。アパートに住んでほどなくしてまず携帯代を払えなくなり、1年たったころにはガスも電気も止まり、家賃も払えなくなっていた。そしてついにアパートを追い出され、車の中で寝泊まりするようになった。それから約1カ月。バイト先の解体業者のもとを、兄が訪れた。「おまえ何やってるんだ。やっと見つけたぞ。電話ぐらいつながるようにしとけ」。そう言って携帯代を貸してくれた。「一つ報告がある」。兄がバイト先を訪れたのは、携帯代を貸すことが本当の目的ではなかった。「花屋からおまえあてにサカキの注文が入ってるぞ」。これが佐藤さんにとって初の注文となった。注文は月に2回で、それぞれ50キロずつ。その後もずっと続く定期注文だった。値段は5キロで3500円で、1カ月で7万円の収入だ。市場に熱心に売り込みに来る佐藤さんの姿を見た花屋が、注文を出してくれたのだ。「うれしかった」。そうふり返るのも当然だろう。この注文からほどなくして、佐藤さんは東京都青梅市で事務所を借り、株式会社「彩の榊」を立ち上げた。飯能市を離れたのは、友人たちとの付き合いを断ち、サカキの仕事に本格的に集中するためだった。佐藤さんはその後、受注を徐々に増やしていった。それを可能にしたのが営業努力。市場を通した販売では限界があると考え、花屋を直接回るようにしたのだ。「注文につながるのは100軒に3軒くらい」(佐藤さん)しかなかったが、珍しい国産サカキを評価してくれる花屋が少しずつ増えていった。品質の高さも追い風になった。中国産のサカキが切り出してから日本の花屋に届くまで約40日かかるのに対し、彩の榊は3日。どちらのサカキが生き生きとしているかは言うまでもない。さらに中国産と品質面で差を出すため、効率優先で輸送時にサカキの束を箱にぎっしり詰めたりしなかった。彩の榊には現在、1カ月に20万束の注文が入る。収量に限りがあるため、そのうち対応できているのは1万5000束で、値段は5キロで5000円。圧倒的な売り手優位のビジネスだ。そのほか玉串用などの「1本モノ」も月に約5000本販売している。快進撃はこれにとどまらない。彩の榊は既存のサカキの商売の枠を超える新たなビジネスの手法を取り入れ、飛躍のときを迎えようとしている。 <和服も中国製> *3:http://masaziro.com/?p=880 (MASAJIRO 2016.3.23より抜粋) メイドインジャパンの着物生地は絶滅寸前である。 「絹糸のほとんどは中国産です。それより驚いたことに、仕立ての半分以上は、ベトナムなど海外の職人が行っていると言われています。」また、農林水産省によると、2014年の養蚕農家はわずか393戸で、生糸の生産量も27トン足らずとなっており、ピーク時の1934年(4万5000トン)から1600分の1に減少し、もはや「絶滅寸前」といっても差し支えない。つまり、流通する「日本の着物」の大半は、「中国産の糸」を用いて日本で仕立てたものか、ベトナムなど海外の工場で仕立てられたものだという現実があるのだ。だからこそ、MASAZIROは100年前、大正や昭和初期の着物生地に拘るのです。ご存じのように、絹糸の生産のピークは昭和9年、この時期を境にして生産量が減少し、ナイロンや化学繊維の出現により日本の養蚕業が衰退していったのです。2000年には殆ど国内生産は無くなりました、でも需要は旺盛になってきます。そこで人件費の安い中国やベトナム、ミャンマーで生産されるようになってくるのですが、もちろん品質管理は日本が行うのです、品質には間違いがないのですが、・・・。水を差すようですが、そこに日本の職人のプライドがあるように思えないのです、コストを下げ利益の増大を図る、経済の原則にのっとった大量産商品となっていくのです。あくまでも政次郎の偏った観かたかもしれませんが・・・。現在流通している着物生地には、国産の絹糸で国内で手織されてものは殆ど流通していないのです、あるとすれば価格に糸目をつけない裕福な人々の為に極々僅かに流通しているのに過ぎなく、まず、私たち庶民の目には触れることはありません。実は政次郎、そのことは統計を見るまでもなく肌で感じていたのです。(以下略) <工業製品も中国にシフト> *4-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/584770/ (西日本新聞 2020/2/17) シャープが5Gスマホ発表 シャープは17日、国内メーカーとして初めて第5世代(5G)移動通信システムに対応したスマートフォンを発表した。10億色の表現力を持つ独自の液晶技術「IGZO(イグゾー)」を採用し、超高精細の8Kカメラを搭載するなどの特色を打ち出し、先行する韓国や中国勢に対抗する。5Gは高速大容量が特長で、今春に予定される国内での商用サービス開始に合わせて発売する。シャープの新型スマホを用いると、映画などの動画データを数秒でダウンロードできる。肌の質感や青空の濃淡を忠実に表示できる液晶ディスプレーを採用し、強い日差しの下でも快適に視聴できる。 *4-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200219&ng=DGKKZO55798040Y0A210C2MM8000 (日経新聞 2020.2.19) スマホ 細る供給網、アップル、売上高「予想届かず」 新型肺炎で稼働率低く 中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の拡大が、スマートフォンなど世界の電子機器の生産を揺さぶっている。米アップルは17日、2020年1~3月期の売上高予想が達成できない見込みと発表した。電子機器の受託製造サービス(EMS)が集まる中国で主力のiPhoneの生産が滞れば、日本などアジアのスマホ部品メーカーに影響が広がる。中国は世界各地から電子部品などを輸入し、最終製品を輸出する。世界のスマホ生産台数の65%が中国に集まる。国際貿易センターによると、中国は19年1~11月にスマホやパソコンなどの頭脳となる集積回路を2783億ドル(約30兆6千億円)輸入し、携帯電話を1132億ドル輸出した。液晶パネルでは中国が世界の生産能力の半分を占めるほか、日本や韓国製のパネルをスマホ向けに組み立てる工場も多い。アップルはこのサプライチェーン(供給網)を効率よく生かしてきた。iPhoneの大半は中国に集まる台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業などEMSの拠点で生産される。アップルが主要取引先の所在地をまとめたリストによると、世界で809ある取引先の拠点の47%が中国に集中する。アップルは従来1~3月期の売上高は前年同期比9~15%増の630億~670億ドルと予想していたが、17日に達成できないと発表。中国のiPhone関連工場の操業は同日までに全て再開したものの、省や市をまたぐ移動に制限がかかり、トラック運転手が不足し物流にも支障が出る。生産拠点で労働力の不足や部材の目詰まりが起き、「iPhoneの世界的な供給が一時的に制限される」(アップル)。アップルは新型肺炎の影響が見通せないとして新たな業績予想を控えた。野村グループの米インスティネットは17日付のリポートで、20年1~3月の売上高が会社の従来見通しを40億ドルほど下回ると分析。同期間のiPhone販売台数は市場予想を600万台下回る4200万台とみる。台湾の部品メーカーなど複数のサプライヤーによれば、中国のiPhone工場の稼働率は足元で30~50%で、3月いっぱいは影響が残る見込み。世界最大の製造拠点とされる鴻海の鄭州工場(河南省)は先週に地元当局の認可を得て生産を再開したが、稼働率は上がっていないもようだ。スマホの部品点数は1千点以上といわれる。生産は再開されても一部部品はスマホの工場に届かず、供給網は完全に復旧していない。台湾のEMS大手幹部によると、プリント基板の中国での調達に影響が出ている。スマホに数百個単位で搭載されるコンデンサーの需給も逼迫する。日本勢では村田製作所がアップルの高級スマホ向けにコンデンサーを供給しているとみられる。TDKはスマホ向け電池の最大手で中国に拠点を構える。米調査会社IDCは1~3月期の中国のスマホ出荷台数が30%以上減る可能性があるとみる。スマホ生産の停滞が長引けば、部品在庫も積み上がり部品メーカーが生産調整に入る可能性がある。 *4-3:https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=2&n_m_code=042&ng=DGKKZO55501650R10C20A2TJC000 (日経新聞 2020/2/12) 車部品輸入の3割 中国製 エンジン周辺の中核も 、新型肺炎、供給に影響 国内各社、代替生産の動き 新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が続くなか、国内の自動車生産にも影響が出てきた。中国からの部品供給が滞り、日産自動車は九州の完成車工場の稼働を一時停止する。日本では車部品の中国からの輸入が、輸入全体の3割超を占め存在感を示している。エンジン周辺の基幹部品などを輸入する企業もあり、部品各社は対応に追われている。「日本で使う中国の部品は多い。在庫を細かく調べるには時間もかかる」。ある日産幹部はこう話す。九州工場では日本で売るミニバン「セレナ」や、北米への輸出が多い多目的スポーツ車(SUV)を生産する。同工場の稼働停止は物流網の混乱が要因とみられるが、調達自体が難しくなっている部品も出ている。ある部品会社によるとハイブリッド車(HV)などに使う電装品の一部で調達が難しくなっており、「(日産は)日本国内で代替調達できないか検討しているようだ」という。調達を巡る混乱は長期化する可能性もでている。国際貿易センターによると2019年の中国からの自動車部品の輸入額は30億ドル(約3300億円)と、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年の約10倍となった。約22兆円とされる日本の車部品市場全体に占める比率は2%弱だが、日本は輸入部品のうち、37%(19年)を中国から輸入し、中国比率が米国などに比べ高い。多くはバネや繊維・樹脂製の部品、素材など、小さく輸送コストがかかりにくいもののようだ。中国では一部地域で企業活動が再開されたが、ホンダは11日、中国・広東省広州市の乗用車工場について、17日以降の生産再開を目指す方針を明らかにした。一部従業員は10日に出勤を始めたものの、広州市から新型肺炎の感染防止の対応策を申請するよう求められ、生産準備に時間がかかるという。従来は「できるだけ早く生産を再開したい」としていた。広州市などで運営する乗用車向けのエンジンやトランスミッションなどの部品工場も、17日以降の生産開始を目指す方針を示した。新型肺炎が最初に広がった武漢市にある工場の生産再開時期は引き続き「17日の週」で変えなかった。部品のサプライチェーン(供給網)の正常化には時間がかかりそうで、代替生産などを視野に入れる企業も相次ぐ。内装部品の寿屋フロンテ(東京・港)はシートなどの布素材を中国から仕入れる。3月上旬までの在庫は確保しているが「長期化に備えて生産設備のある日本で代替できるか設備の確認を始めた」(同社)。足回り部品のエフテックは武漢工場でつくるブレーキペダルをフィリピンで代替生産することを決めた。「一時的に他の企業からの調達に切り替えてもらう必要があるかもしれない」と話すのは、ホンダとの取引が多いショーワだ。ドアなどの開閉を補助するガススプリングを中国で生産し、日本にも輸入するが他の地域に生産設備がない。トヨタ自動車系の中央発条はドアロックケーブルなどを日本に供給しており、「すぐに代替生産ができない品目もある」という。自動車部品メーカーは2000年代から東南アジアなどに調達先を分散させる「チャイナプラス1」の動きを進めてきた。「車内の内張りシートは人件費の安いバングラデシュ経由からの調達を増やしており、中国への依存は低い」(シート大手のテイ・エステック)との声も聞かれる。ただ近年は中国の技術力が上がり、エンジンなど「難易度の高さから日本での生産に依存していた領域で中国への生産移管が増えている」(伊藤忠総研の深尾三四郎主任研究員)。自動車の心臓部となる部品だけに、少量でも供給が滞れば国内生産に支障が出やすい。いすゞ自動車が調達するエンジン周辺部品のターボチャージャー(過給器)は一部が武漢で生産されており、「武漢以外の地域で調達する予定だ」(南真介取締役)。他の部品も中国から調達しているものがあるため、在庫を確認し、生産移管などの必要性を慎重に見極めるという。供給網の混乱などが「長期化すれば(国内の生産に)影響が出る可能性もある」と南氏は話す。中国政府は次世代車の国産化を推奨し、電動化に欠かせない部品の生産拠点は中国に集まりつつある。車載電池では寧徳時代新能源科技(CATL)など2社で世界で2割超のシェアを持ち、トヨタなど日本勢も協業を進める。中国の動向が日本の自動車生産に影響を与える構図は一段と強まりそうだ。 <サービス業> *5-1:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/538085 (沖縄タイムス社説 2020年2月22日) [新型肺炎と県経済]難局というべき状況だ 中国で発生した新型コロナウイルスによる肺炎拡大が、県経済の屋台骨である観光業に影を落としている。裾野の広い産業だけに、地域全体への影響が心配される。楽観を許さない状況だ。人気の観光施設やショッピングモール、ドラッグストアから中国人団体客の姿が消えて、1カ月近くになる。中国政府が海外への団体旅行を禁止した1月末以降、旅客便の運休やクルーズ船の寄港取りやめが相次いだためだ。影響は甚大で、県内の総合スーパーや百貨店のほとんどで、春節期間中の免税品売上高が前年より10%も低下した。国際通りの小売店やタクシーも売り上げが落ち込み、ホテルや観光バスも厳しい状況が続く。2019年に沖縄を訪れた外国人は約293万人。中でも中国人の伸びが目立ち、4人に1人に当たる約75万人を占めていた。懸念されるのは、感染を恐れて外出や旅行を控える動きが国内でも広がりつつあることだ。南西地域産業活性化センターは、新型肺炎の影響が半年ほど続き、中国人を中心に入域観光客が50万人減った場合、観光収入は281億円減少すると試算する。01年の米同時多発テロ後の風評被害で観光客が激減した際、観光収入が200億円余も減る憂き目に遭った。しかし終息のめどが立たず、誘客活動などが打ち出しにくいという点では、今回の方が深刻といえる。 ■ ■ 感染封じ込めに時間がかかれば、地域経済へのダメージは大きくなる。特に地方の中小零細企業にとっては資金繰りが不安材料だ。政府は緊急対策として、中小企業を支援するための5千億円規模の貸し付けや保証枠を確保。経営が苦しくても雇用を維持する企業には、雇用調整助成金の支給要件緩和を決めた。県内でも観光事業者らでつくる沖縄ツーリズム産業団体協議会が、玉城デニー知事を訪ね、経営支援や雇用対策助成の拡充などを要請したばかりだ。既に県には支援融資制度などに関する問い合わせが相次いでいる。県経済への影響を最小限に抑えるためにも、官民で危機意識を共有し、取れる対策の全てをスピード感をもって進めなければならない。同時に「安全宣言」後の戦略も、今から練っておく必要がある。 ■ ■ 好調に推移してきた県経済だが、昨夏以降、日韓関係の悪化による韓国人旅行者の減少、観光の目玉でもある首里城火災、豚熱感染など、いくつもの試練に見舞われている。一番怖いのは「旅行は控えよう」という消費マインドの冷え込みという。情報をしっかりと伝え、風評被害の防止にも努めたい。沖縄ツーリズム産業団体協議会は、県民の県内旅行の促進も求めている。県経済の正念場だ。この難局に一丸となって立ち向かおう。 *5-2:https://www.agrinews.co.jp/p49066.html (日本農業新聞 2019年10月24日) 「病院再編リスト」 農村部に波紋 「実情分かってない」 厚生労働省が医療費抑制のため、競合地域にある病院との再編・統合を促す必要があるとして病院を実名で公表したことに、農村部の住民から戸惑いの声が上がっている。診療実績が乏しいと判断した病院をリスト化したもので、強制力はないが「身近な病院がなくなってしまう」「地域の事情を考えていない」などと声が上がる。同省は再編・統合について本格的な議論を要請。来年9月までに結論を求める。 ●実績ありき疑問 人口減少考慮を 秋田県八郎潟町の湖東厚生病院は2010年、医師不足から存廃論議になったが、住民の署名運動で守った。「湖東病院を守る会」代表で、水稲30ヘクタールを栽培する同町の齊藤久治郎さん(72)は、近隣の3町村の代表らと協力して、3万件の署名を集めた。必死の訴えに同病院は新体制で再編し、在宅療養支援に力を入れ、14年に再スタートした。齊藤さんは「守り抜いたと思ったが、再編・統合の話が再度出て困惑している」と肩を落とす。救急は秋田市の病院と連携し、慢性疾患や在宅医療を主にして医師不足の課題をクリアした。JA秋田厚生連は「がんや救急医療のデータを抜き出して“診療実績が乏しい”というが、役割分担したから当たり前。地域実情を理解していない」と疑問を投げ掛ける。福島県は3カ所の厚生連病院の名が上がった。JA福島厚生連は「あまりに唐突。地方の高齢化、人口減少が一切考慮されていない。都会と同じ物差しで測っているのではないか」と憤る。 ●国の狙いは医療費抑制 医療費は団塊世代が75歳以上となる25年に急増する見込み。17年度の国民医療費は43兆710億円で、25年には56兆円にまで膨らむ見通しだ。そのため同省は医療費抑制に向け、各都道府県に対し、25年に必要なベッド数などを定めた地域医療構想を策定させ、見直しを求めていた。だが、各地で議論は膠着(こうちゃく)しており、同省は全国の1455の公的な医療機関を調べ、診療実績が乏しいなどを理由に424機関の実名を公表。統合再編に向けた議論の活性化を呼び掛けた。だが、突然の実名公表に現場からは不満の声が続出している。リストには農村地域の医療機関が多く含まれる。患者の高齢化が進む。公共バスの廃止などで通院に悩む人も多い。実態を考慮せずに医療費削減と病床数だけでの線引きには疑問の声が上がる。地域医療の在り方を再検証する意味合いが強いが、地域での調整は難航が見込まれる。 <人材> *6-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200219&ng=DGKKZO55800690Z10C20A2MM8000 (日経新聞 2020.2.19) 革新攻防(上) 米中2強、資金力突出 日本、技術競争退場の危機 米国と中国が激しく覇権を争う先端技術の開発で、日本の存在感の低下に歯止めがかからない。世界のテクノロジーの潮流から脱落する危機が迫る。 ●量子研究で後れ 政府が1月に決定した「量子技術イノベーション戦略」。世界に後れる現状に危機感を示すとともに、異例の反省が盛り込まれた。「政府全体として必ずしも整合性ある取組が行われてこなかった」。次世代の高速計算機、量子コンピューターなどの量子技術は米中が開発にしのぎを削る主戦場だが、日本は戦う体制すら整っていなかった。全米科学財団によると、民間を含む研究開発費の世界首位は米国で5490億ドル(約60兆円、2017年時点)。中国も4960億ドルに達する。日本は1709億ドルで米中の3分の1だ。もはや資金力の差は埋めようがない。科学技術立国の幻想にとらわれ、あらゆる研究を望み続けたらいずれの成果も取り損ねる。量子技術の開発は関係省庁のそれぞれの都合で進められ、後手に回った。量子コンピューターも研究初期はNECが先行したが、国をあげて技術を開花させる発想はなかった。その間、米グーグルはカリフォルニア大学のグループの技術に着目。傘下に迎えて19年に最先端のスーパーコンピューターを上回る性能を実証し、世界を驚かせた。 ●司令塔見当たらず 米中が技術覇権を争い、かつてない速さで研究開発が進むいま、有望な技術をいち早く見いだせるかは死活問題。日本の将来につながる技術の支援を優先し、旧弊やしがらみを断って実行に移す覚悟が必要だ。批判もあるが中国はトップダウンで研究を進め、米国にも強い指導力でイノベーションを創出する国防高等研究計画局(DARPA)のような組織がある。日本には技術を見極める目や投資の決断力を持つ司令塔が見当たらない。日本発のiPS細胞の研究支援も中途半端。基礎から応用までを見渡す米国などに見劣りする。量子技術や人工知能(AI)への投資も不十分になる恐れがある。最先端のテクノロジーは将来の産業競争力や安全保障を左右する。中国は16年に打ち上げた人工衛星「墨子号」を使った量子暗号の実験などで先行。衛星を使えば、世界規模で通信の機密を守る究極の盾が手に入る。研究を率いてきた潘建偉氏は中国で「量子の父」と呼ばれ、習近平(シー・ジンピン)国家主席も高い期待を寄せるとされる。量子暗号は量子コンピューターが既存の暗号を破ると危惧される20年先も通信や金融取引の安全を守る。米調査会社クラリベイト・アナリティクスによると14~18年の量子暗号の研究論文数で中国は世界首位。東芝が最高速の暗号化技術をもつなど日本の研究水準も高いが、このままでは中国の独走を許しかねない。米国も「量子科学における中国の躍進は軍事的、戦略的バランスに影響を与えうる」(新米国安全保障研究所)と警戒する。日米は19年末に量子技術で協力する声明を発表した。24年までに宇宙飛行士を月に送る計画でも米国は日本に連携を迫る。日本は応じる方針だが、米国との連携にかけるなら、その中で存在感を高める戦略が問われる。 *6-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54013110S0A100C2SHF000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞社説 2020/1/4) 若い博士が広く活躍できる社会に、次代拓く人材を(中) 日本の社会は若い博士たちに冷たい。高等教育を極めた高度人材の卵に、大学も企業も十分な活躍の場を与えていない。グローバル化に対応しながら明日を切り開くイノベーションの創出を目指すなら、博士をうまく生かす社会に転じなければならない。 ●給付型奨学金を広げよ 日本で毎年新たに博士になる人の数が減少している。100万人あたりの博士号取得者数が米国やドイツ、英国、韓国に比べて半分以下で、さらにこの10年で1割以上も減った(2016年度)。先進国ではあまりみられない、由々しき事態だ。1990年代、政府は科学技術創造立国を目指し、若手の博士研究者を増やす政策をとった。しかし、大学にも企業にも見合った数のポストを用意しなかった。定職につけない高学歴な博士はポスドクと呼ばれ、「漂流する頭脳」として社会問題にもなった。科技政策の失敗といえる。若者にとって博士は将来への不安を抱える「不安定な身分」の代名詞に変質した。優秀でも修士のまま卒業する方が就職に有利と、博士を目指す人も減る。選考のハードルを下げて博士課程の定員を死守する大学院も少なくない。海外は知的集約型社会に向き合うため、国も企業も優れた博士の獲得を競う。日本の博士冷遇は世界の潮流に逆らっている。早急に「負の連鎖」を断ち切らなければならない。まず取り組むべきは、博士の育成環境を改善することだ。欧米や中国では優秀な博士課程の学生を一人前の研究者として扱う。学費は事実上免除し給与も払う。日本の場合、年間50万円超の学費が重くのしかかる。奨学金でまかなっても将来、返せる当てはない。生活費もアルバイトで稼がなければならない。金銭面で博士を敬遠する修士も多い。手始めに給付型奨学金を拡充してみてはどうだろう。2011年に開設した沖縄科学技術大学院大学は、学費を含め年間約300万円を支援金として学生に給付し、学業や研究に専念させる。同大学院大は19年、質の高い論文に関するランキングで世界トップ10に入った。若手の活躍が結果を生む証しとなった。大学の研究室の「構造改革」も急務だ。博士の多くは大学での研究職を希望する。しかし、教授を頂点にしたピラミッド構造が残っており、ポスドクや博士課程の学生は雑務が多く研究もままならない。こうした「ブラック研究室」は時代遅れでしかない。若手人材の正規ポストを確保するには、シニア世代の研究者が流動化する仕組みも要る。国立大学では定年延長に伴って50歳代、60歳代が増えた。これでは教授、准教授といったポストがなかなかあかない。大学力を磨くのに新陳代謝は欠かせないが、柔軟な発想を持つ若手研究者だけが任期付きで割をくうのはおかしい。博士が活躍できる場は大学や研究機関とは限らない。海外では企業の研究者やベンチャー経営者、投資家、官僚など実に多彩だ。 ●知識でなく疑う力磨け 日本製鉄には新卒採用とは別に博士課程の学生やポスドクに特化した制度がある。年俸制で3年間雇い、研究のプロとして働いてもらう。その後は本人と相談の上、正社員として採用する。出会いを作るユニークな取り組みだ。産学が協力し、半年、1年といった長期のインターンシップ(就業体験)を導入、博士と企業とが相互に理解を深める機会こそ有意義ではないだろうか。博士が在籍する企業はそうでない企業より製品やサービスでイノベーションを起こす確率が高いとの調査結果もある。中小、中堅企業での効果が顕著だという。大学も博士の質は担保してほしい。なり手が減っているからといって、適性や能力を見極めずに量の確保に走るのでは本末転倒だ。どんな情報もネットで手に入るデジタル社会では、単なる知識よりも疑う力や解決する力が高度人材には求められる。これまでの日本の高等教育は学問が細分化された結果、視野の狭い専門家が育つ傾向が強かった。2つ以上の専門領域を習得する「ダブルメジャー」を目指す仕組みがあってもいい。社会が求める博士像を追求し、育んでいくことが大切だ。 *6-3:http://tingin.jp/opinion3.html (北見式賃金研究所 北見昌朗 平成30年8月) “働かない改革”は“ゆとり教育”の二の舞になる! 中国に負けて、日本は二流国に転落へ ●働き方改革は選挙の美辞麗句 安倍首相は、働き方改革を主要政策に掲げる。「生産性を向上して、ベースアップを実現して暮らしの向上を図る」と語る。だが、北見昌朗はそもそも生産性がなぜ急に上がるのか理解できない。これまで遊んでいたわけではないのに、なぜ、どうして生産性が上がるのか? そんなの選挙用の美辞麗句であり、根拠がないプロパガンダだと言わざるを得ない。 ●ゆとり教育は土曜日に働かない人を産み出した 働き方改革と二重写しになってしまうのは、ゆとり教育だ。政府は学習時間と内容を減らしてゆとりある学校を目指し、2002年4月6日から公立小中学校及び高等学校の多くで毎週土曜日が休みになり完全な週5日制となった。ゆとり教育はデメリットが取りざたされることが多いが、代表的なものが「学力低下」だ。それまで相対評価と言われていた通知表の評価を個人ごとに見る「絶対評価」に変えた。また「競争社会」をやめようと、運動会の徒競走は全員1位、学芸会では全員主役になるといった内容も物議を呼んだ。だが、「順位を付けない」という考えは現実社会とはかけ離れており、社会に出てから挫折する子供が増えてしまった。この“ゆとり教育”の悪影響は大きかった。土曜日に授業が休みだったために、社会に出ても土曜日の勤務を嫌がる若者にしてしまった。 ●「仕事が終わるまでやる」のは日本人の美徳 新労働基準法では、残業が厳しく制限される。一定時間を過ぎてしまうと、企業側が違法になってしまうので、帰らせるほかなくなってしまう。目の前にドッサリと仕事が残っていても、サッサと帰るのである。それによる顧客離れは当然予想される。そもそも日本人は昔から仕事をやりきってから帰った。みなで一緒に汗を流して、やり切ってきた。「勤労は美徳だ」という勤労観は、わずかながら残っていたと思うが、それにトドメを刺すのが今回の労働基準法改正である。これでは米国人や中国人に負けてしまう。 ●ダブルワーカーが増える 残業削減は、従業員にとっても厳しい問題だ。残業代が減った分だけ年収が減ってしまうだろう。大手企業ならば、ベースアップという形で利潤を従業員に還元できるかもしれないが、中小企業には元々そんな余裕はない。会社側は、副業を禁止している就業規則を見直し、アルバイトを黙認する方向になるだろう。残業代減を補うため、従業員は終業後にアルバイトに精を出すようになる。夜遅くまで働いたら、それこそ身体を痛めそうだ。 ●「手に職」が付かなくなり技能伝承がなくなる 厳しい残業規制により、成り立たなくなる仕事がある。長い修業が必要な職人仕事だ。例えば「宮大工」という仕事がある。社寺の建築や修復を行う仕事だが、それには長い下積み時代が必要である。カンナがけは、今なら機械で一瞬でできるが、それでは腕が身に付かないので、あくまでも人間が行う必要がある。このような職人芸は、たくさんある。和食職人、和菓子職人、陶器職人、木工職人など枚挙に暇がない。それらが消滅しかねないのだ。 ●このままでは経営者の多くが労基法違反の“犯罪者”になる 北見昌朗は顧客からこう言われるようになってきた。「これだけ残業規制が厳しくなるともうやっていけない。モノ造りを止めろというのと一緒だ」。このように言われると、北見昌朗は返す言葉もない。社会保険労務士として労働基準法の遵守を求めるのが仕事だ。だが、現実には困難なことを知っている。このグラフを見てほしい。「愛知県 中小 製造業 男性社員 残業時間数」だ。縦軸は残業時間数で、横軸は年齢である。縦軸に赤ラインが引いてあるのが30時間で、36協定の遵守ラインだ。これを超過すると違法になりかねないが、超過しているのは52.9%いる。従業員に違法残業をさせると、経営者は労働基準法違反ということで犯罪者になってしまう。中小企業の経営者は、勤勉に働いて日本社会に貢献してきた。今の日本社会で、一番猛烈に働いてきたのは、社長さんたちだ。何の保護もなし、保障もなしで身を粉にして働いてきた方々だ。社長が経営の自信を喪失してしまうと、誰も継がなくなり、いよいよ後継者難で、中小企業が消滅してしまうだろう。 ●「日本人は働き過ぎ」は過去の話 そもそも、日本人が働き過ぎだったのは、前の世代のことだ。戦後の日本を復興した方々のことだ。北見昌朗は午後5時過ぎに名古屋駅から電車に乗ると、思わず車内を見渡してしまう。ネクタイを締めた中高年男性がいっぱい乗っているのだ。おそらく17時に会社を出て、18時までに帰宅するのであろう。働き盛りの男が、そんなに早く帰って、いったいどうするのか? と言いたくなる。公庁や大手企業では、年間休日120日が一般的になっているが、年休20日を取得したら、1年間の4割も休むことになる。こんなことで、日本はやっていけるのだろうか? 資源もないのに。日本人は、もっと働くべきだ。次の世代のためにも、もっと、もっと働こう! <新型肺炎の治療、病院船など> PS(2020年2月24日追加):*7-1のように、政府は専門家会議を開いて重症化リスクの高い新型肺炎患者の治療を優先するための基本方針の作成を進めているそうだが、拡大ペースを遅らせ、重症化させないためには早期発見・早期治療が必要であるのに、「風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続く場合や強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある場合は、最寄りの保健所などに設置される『帰国者・接触者相談センター』に問い合わせる」という現在の指針では誰でも重症化する。そのため、本当に治療する気があるのなら、インフルエンザと同様、かかりつけ医を受診すれば必要な検査や薬は保険適用できるようにするのがBestだ。 また、*7-2のように、1~2隻くらいは大型の病院船を持っておくのがよいと思われ、これなら感染症の封じ込めだけでなく、国内外の災害時に派遣して海上から被災地に医療提供することが可能だ。この場合、病院船の所属や運行責任は、日赤か防衛省になるだろう。さらに、離島の多い自治体が小型の病院船を保有していれば、*7-3の「平時の利用法」として、医師のいない離島を1週間に1度は廻って、健診・診療・薬の処方・リハビリなどを行うことができ、この場合の病院船の所属や運行責任は、民間病院か地方自治体になると思われる。 ![]() 2020.2.24琉球新報 病院船 *7-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020022401001191.html (東京新聞 2020年2月24日) 新型肺炎、重症化防止へ基本方針 専門家会議で作成、急増に備え 国内での新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の拡大を受け、政府は24日、専門家会議を開き重症化のリスクが高い新型肺炎の患者の治療を優先するための基本方針の作成を進めた。25日にも開く政府の対策本部で決定する。基本方針は、患者が国内で大幅に増える事態に備えるのが目的。会議では、重症化しやすい高齢者や持病がある人の治療を優先するとともに、拡大のペースを遅らせることを目指した対策を議論する。これまでに策定した新型インフルエンザ対策の基本方針を一部参考にするとみられる。 *7-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/586613/ (西日本新聞 2020/2/24) 病院船で新型肺炎封じ込めへ 超党派議連27日に発足 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)が拡大する中、大規模災害時や感染症の流行危機事態に医師や医療設備を乗せて治療に当たる「病院船」構想に注目が集まり始めた。閣僚から活用に前向きな発言も飛び出し、27日には超党派の国会議員らでつくる病院船の新議員連盟も発足する。国に導入を働き掛けてきた関係者は、機運をさらに高めたい意向だ。「配備の在り方を加速的に検討していく必要がある」。12日の衆院予算委員会で、新型肺炎に絡み病院船への見解を問われた加藤勝信厚生労働相は、こう明言した。河野太郎防衛相も14日の記者会見で、導入に向けた検討に意欲を見せた。患者を隔離して専門治療を集中的に施し、感染症を封じ込める機能が期待される病院船のニーズを、関係閣僚が相次いで認めた形だ。病院船構想が生まれたのは、1995年の阪神大震災がきっかけ。米国などの実例を参考に、陸上交通が寸断されるような災害時に、海上から被災地に医療を提供するシステムを探る議論が起こった。2011年の東日本大震災後には一時、内閣府も「災害時多目的船」の導入を模索した。だが、建造や維持管理に巨額のコストがかかることや、法改正を伴うことから見送られた経緯がある。その後、14年には自民、公明両党による「海洋国日本の災害医療の未来を考える議員連盟」(会長・額賀福志郎元財務相)が設立され、19年3月、病院船の活用を国に促す法案の骨子をまとめた。議員立法として早期成立を目指すため、今月27日には新たに野党を加えた7党による「災害医療船舶利活用推進議員連盟」を立ち上げる。関係者によると、新議連は条文化の作業を進め、今国会に法案を提出したい考え。災害時医療などに船舶を組み込むことを国に義務付け、法施行の1年後をめどに必要な個別法の追加整備を求める内容という。自民中堅は「耳目が集まっている今、議論をしっかり積み上げたい」と話す。 *7-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/586614/ (西日本新聞 2020/2/24) 病院船導入 災害時有効な医療アプローチ 元九州大特任教授に聞く 「病院船」導入に向けた活動に長年取り組み、議員連盟の設立にも携わる元九州大特任教授で公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナルの砂田向壱理事長=福岡市=に、今後の見通しや課題を聞いた。 -なぜ導入を急ぐのか。 「災害大国の日本で、陸上の交通手段が遮断されたときに、海からの医療アプローチは軽視できない。東日本大震災の津波被害を考えれば、その利点はイメージしやすい。病院船は、南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生前に整備しておかないと手遅れになる。船は医療施設だけでなく、避難所機能としても有効だ」 -災害が発生していない平常時の利用法がネックになっていると聞く。 「平常時も、全国一律の医療サービスが提供できるよう市町村のスキルアップに用いることができるし、沿岸部の巡視船という役割も担える。国民の財産としての使い道は幅広い」 -巨額の建造費に国民の理解は得られるか。 「中古の船を買い取り、内部を改造して最新鋭の医療機器を備えれば、コストは抑えられる。国民のニーズによって船の規模や隻数は決まる。必ずしも大きければ良いというものでもない」 -理想的な災害時の医療体制とは。 「現在の復興庁を『災害庁』のような組織に改編し、研究や装備開発、訓練を一元的に管轄できるようにしたい。全国に技術支援できる仕組みも必要だ。新しい議連では、民間のノウハウや知恵を積極的に活用していく。国民の合意を得るために奔走したい」 <日本政府がPCR検査を渋る理由は何か?> PS(2020年2月26、29日追加): 2月5~19日の期間は船内で隔離しなければならなかったダイアモンドプリンセス号内は、*8-1のように、“検疫”として船内の感染管理・健康管理に不備があったため、COVID-19の船内感染を起こしてしまった。にもかかわらず、下船基準は検疫期間中には感染がなかったものとして扱い、クルーズ船で旅するほど元気だった人を死亡させて「高齢者だから仕方がない」としている点が不誠実である。本来は、2月5~19日の期間に同乗した家族が同室だったとしても、それ以外は船内の隔離と健康管理を徹底しなければならなかったのだ。また、クルーズ船の乗客には退職後の比較的ゆとりある高齢者が多いため、乗客の中には社会的地位の高かった人も多かった(元医師を含む)だろう。そのため、ダイアモンドプリンセス号のスタッフは、隔離を開始した時に全員のPCR検査を行ってその後の清潔を徹底すべきだったし、これらがいい加減であれば、各国で(批判のための批判ではない)科学的な批判が出る。 なお、*8-2・*8-3のように、インド・デリー大学とインド理工学院に所属する研究者たちがまとめた「新型コロナウイルスはSARSウイルスとエイズウイルスを武漢ウイルス研究所が人工的に合成したものでは」とする論文があり、この研究者たちは「このウイルスが自然発生することは考えられない」としている。また、ハーバード大学公衆衛生学教授のエリック・ファイグルーディン博士は自身のツイッターで「武漢市の海鮮市場はウイルスの発生源ではない」と発信されたそうだ。「生物兵器」であれば、SARSウイルスのように若い兵隊に打撃を与えるウイルスの方が合目的的だが、年金や社会保障を要する基礎疾患のある高齢者に打撃を与えて大騒ぎになる新型コロナウイルスなら厚労省や財務省に都合がよさそうだ。そのため、今後は広くPCR検査して完治させるとともに、どこで感染拡大するかを見極めるべきである。 世界保健機関(WHO)は2月28日、*8-4のように、COVID19の地域別の危険性評価を、世界全体を「非常に高い」に引き上げ、WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏が各国に感染拡大防止態勢の強化を訴えられた。日本では、2月27日、安倍首相が新型コロナウイルス感染対策として全国の小中学校や高校などに臨時休校を要請する方針を表明し、これについてはさまざまな意見があるものの、*8-5のように、65%(60代:75・1%、10代:73・6%、70代以上:70・1%)の人が賛成だそうだ。一方、子育て世代の多い年齢層で反対が比較的多いが、佐賀県では、*8-6のように、学童保育の受け入れ先が春休みや夏休みと同じ体制で受け入れるようで、学童保育の整備が何とか進んでいたのはよかった。ただ、*8-7のように、PCR検査システムの問題による検査難民が出ているので、検査を早急に保険適用にし、医師の指示があれば検査できるようにすべきだ。 ![]() 2020.2.7東京新聞 2020.1.31朝日新聞 2020.2.20中日新聞 2020.2.20朝日新聞 (図の説明:1番左の図のように、新型コロナウイルスの感染力はインフルエンザと比較して著しく高くはないが、スーパースプレッダーもいた。その結果、左から2番目の図のように、中国の感染者は1月中に等比級数的に増え、現在は他国でも広がり始めている。日本では、右から2番目の図のように、武漢からチャーター便で帰国した人の中には死亡者はいないが、“検疫”としてクルーズ船に閉じ込められた人の中からは死亡者が出ている。その死亡者は、1番右の図のように、80代ではあるが、元々はクルーズ船で旅行できるほど元気だった人なのだ) *8-1:https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9422-covid-dp-2.html (国立感染症研究所 2020年2月26日更新) 現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例 ●背景 背景情報は2月19日掲載の「現場からの概況:ダイアモンドプリンセス号におけるCOVID-19症例」(以下、「現場からの概況2月19日掲載版」)を参照されたい。(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9410-covid-dp-01.html) ●検疫の状況 2月5日-19日の間、クルーズ船ダイアモンドプリンセス号(以下クルーズ船)に対し検疫が実施された。検疫期間中、陽性者の「濃厚接触者」等追加的なリスクがあった者については検疫期間が延長された旨、乗客に通知している。 ●下船手順 下船基準は次の3つの項目、1)陽性者と部屋を共有していない14日間の検疫期間が完了していること、2)検疫期間最終日までに採取した検体がPCR検査でSARS-CoV-2陰性であること、3)検疫期間の最終日の健康診断で異常が確認されないこと、を全て満たす者である。2月20日時点で1600人以上が既に下船している。検査は当初高リスクの乗客から実施されたが、2月11日からは全ての乗客が検査対象に拡大実施された。検査は80歳以上の乗客から実施され、75歳以上、70歳以上、70歳未満と順次実施拡大された。全乗客の検査実施後、検査対象が全乗員へ拡大された。COVID-19に関し国際的なガイドラインではPCR検査の実施を考慮した検疫は求められていないが、日本政府はより確実性を高めるためにPCR検査を実施した。 ●データ収集 「現場からの概況2月19日掲載版」 (https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2484-idsc/9410-covid-dp-01.html)に記載されているデータ収集方法に加え、船内の常設診療所からの後方視的な情報収集が開始された。 ●暫定的な結果 2月20日の時点で、82名の乗員と537名の乗客を含む、619名が陽性者であった(2月5日時点の乗船者の16.7%)。合計3,011検体が検査され、重複の者も含め延べ621検体が陽性(20.6%)であった。乗客のうち70歳から89歳が最も感染していた(表1)。発症日の情報が確認できたCOVID-19症例(n = 197)のうち、終日検疫が実施された最初の日である2月6日より前に発症した人が34名(17.3%)、2月6日以降に発症した人が163名(82.7%)であった(図1)。197例のうち163例(乗員48名、乗客115名)は検疫期間中に判明し、定員が2名以上の各客室で最初の陽性者であった者は52名(最小)から92名(最大)の範囲であった(この範囲には、無症候性症例及び発症日が不明の有症状症例が含まれる)。そのうち3名(最小)から7名(最大)が2月6日から開始された検疫期間の7日目以降に報告された者である(表2)。各客室別の乗客人数が増加するに従いCOVID-19陽性者の割合も増加している(図2)。陽性者のうち318名(51%、乗員10名、乗客308名)は、検体が採取された時点では無症状であった。 ●暫定的な結論 現在入手可能な疫学情報に基づいて評価すると、2月3日にクルーズ船が横浜に入港する前にCOVID-19の実質的な伝播が起こっていたことが分かる。発症日が報告されている陽性者数の減少は、アウトブレイクの自然経過、検疫の実施、またはその他の未知の要因によって説明が可能と思われる。各客室の乗客人数別確定症例の割合と、陽性者と客室を共有した確定例の数に基づいて検討すると、客室内の乗客は共通の曝露があったか、客室内でウイルスが伝播した可能性がある。 船の性質上、乗船しているすべての人を個別に隔離することはできず、客室の共有が必要であった。また、乗客が乗船している間、一部の乗員はクルーズ船の機能やサービスを維持するため任務を継続する必要があった。 遅れ報告を考慮した結果、発症日がわかっている陽性者数のピークは2月7日であった。 最近陽性者の報告数が多くなっていることは、検査対象者の拡大によって説明できるが、そのほとんどは無症候性症例である。クルーズ船の乗員乗客で報告された無症候性症例の割合は、他の場所で報告されているものよりもかなり高い。 この主な要因は、2月11日から体系的な検査が実施されその数が日々増加したことが一因と考えられる。一部の症例は、客室内での二次感染例であった可能性はあるが、検疫が始まる前に感染した可能性も否定できず、実際にいつ感染したか、判断は難しい。しかし、これらの無症候性症例は下船後入院し、同室者は濃厚接触者として最終接触日から新たに14日間の隔離期間を開始している。無症候性症例が下船前に判明したことを考えると、この体系立てた検体採取には意義があったと考えられる。現時点では、無症候性症例からの感染伝播に関する知見は国際的にも乏しい。そのため、船内の無症候性症例に関する継続的な調査により得られる情報は、世界的なCOVID-19アウトブレイクにおいて重要である。 (無症候性症例の下船後の発症状況に関する情報が収集されている)。クルーズ船において判明した症例は、感染症発生動向調査(NESID)に報告された情報も含め、臨床症状、重症度、および無症候性症例の評価のためついてさらなる調査が継続して行われている。 この情報は、このクルーズ船事例とCOVID-19の世界的な状況の理解に重要である。 ●暫定的対応とガイダンス 下船者のほとんどが14日間の検疫を確定患者と部屋を共有せず終了し、PCRの検査で陰性、健康チェックにより症状(発熱、咳、呼吸困難など)がない事を確認された。陽性確定例との接触がある者は、最終接触日から14日間が隔離期間となる。この該当者には隔離期間中の乗客に対する食事の配膳等の生活支援に貢献していた、乗員の大半が含まれる。1600人を超える乗客が下船し、今後の焦点は乗員の感染予防となる。下船者は、PCR検査陰性、下船時の健康チェック異常なし、および症状なく14日間の検疫期間を経過しているが、追加の予防措置として絶対に必要な場合を除き、14日間自宅にとどまるよう求められている。また、自分自身で健康チェックを実施し、症状を認めれば医療機関に連絡することになっている。追記:本稿のデータ収集にあたり、クルーズ船に乗船し、乗員乗客の健康管理のために多大な努力と貢献をされた医療チームや関係者、クルーズ船の機能維持に貢献されたダイアモンドプリンセス号のスタッフと本社のご協力に謝意を表します。 *8-2:https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E6%96%B0%・・・ (女性セブン 2020年3月5日号) 新型コロナウイルス 「研究所から流出」説の真偽を追う 連日新型コロナウイルスの話題が後を絶たない。全世界での感染者は7万人を超え、死者は約2000人となった(2月19日現在)。当初、ウイルスは自然発生と報道されていたが、ここにきて、武漢にある研究所からの流出疑惑が持ち上がっている──。中国・武漢市に世界トップレベルのウイルス研究所「中国科学院武漢病毒(ウイルス)研究所」がある。この研究所が備える最新鋭の設備の1つが、BSL4(バイオセーフティーレベル4)実験室だ。実験室では、SARSやエボラ出血熱のような、感染力が強くて危険なウイルスのコントロールも可能で、洪水の被害が及ばない場所に設置され、マグニチュード7の揺れにも耐えうるという。しかしいま、この研究所から新型コロナウイルスが流出したのではないかという疑惑が持ち上がっている。1月末、インド・デリー大学とインド理工学院に所属する研究者たちがまとめた「新型コロナウイルスにエイズウイルスと不自然な類似点がある」とする論文が物議をかもした。さらにこの研究者たちは「このウイルスが自然発生することは考えられない」とした。この論文は大バッシングののちに撤回されたが、一部のネットユーザーの間で内容が拡散。「新型コロナウイルスはSARSウイルスとエイズウイルスを武漢ウイルス研究所が人工的に合成したものでは」という憶測も飛び交い、不安が高まったのだ。さらに1月28日、ハーバード大学公衆衛生学教授のエリック・ファイグルーディン博士は自身のツイッターで「武漢市の海鮮市場はウイルスの発生源ではない」と発信。たちまち世界中のメディアで取り上げられた。中国メディア『大紀元』は、2月6日、オンラインゲーム開発会社の会長が自身のSNSで「武漢の研究所が新型コロナウイルスの発生源」と発言したと報じている。この人物は、かつて中国の生物学者が動物実験で使った牛や豚を食肉業者などに転売していた事件があったことから、新型コロナウイルスに感染した動物が市場で売られたのではないかと疑っているという。現在、中国版Googleともいわれる検索サイト「百度」で「武漢病毒研究所」と検索すると、検索候補に「泄露(漏洩)」という文字が。疑惑は広まる一方のようだ。 ◆何度も北京の実験室からSARSが流出 中国では過去にも“ヒューマンエラー”が起きたことがある。2004年、北京にあるBSL3の要件を満たす実験室から、SARSウイルスが流出する事件が発生し、責任者が処罰されている。中国メディアの報道などによると、研究員がBSL3実験室からSARSウイルスを持ち出し、一般の実験室で研究をしたことで感染が広まった。感染した研究者の1人は、症状が出たあと自力で病院に移動。看護師に感染させ、鉄道で実家に向かったことが確認されている。さらに、この研究者を看病した母親が感染、死亡している。元産経新聞北京特派員の福島香織さんが言う。「この頃、研究所からのウイルス流出や実験動物のずさんな管理が何度か問題になっていました。例えば、動物実験ではウイルスを動物に感染させたりするのですが、実験が終わったらウイルスを不活化、つまり無害化させる処理をしなければいけない。ところが、処理が完璧ではない状態でゴミ箱に捨てたり、外に廃棄したりしたことからSARSウイルスの感染が拡大したと指摘されています」 ◆武漢ではコウモリに宿るウイルスを研究 冒頭の最新ウイルス研究施設は、新型コロナウイルスの発生源とされている華南海鮮市場から約30km離れた場所にある。「世界有数のウイルス研究所を擁するフランスの技術協力を得て完成しました。SARS事件があったのと同じ2004年頃から研究所を整備する計画が始まり、北京五輪やチベット問題などの紆余曲折があった末、2015年に竣工し、2018年から稼働しています」(福島さん)。今回疑惑を向けられている武漢ウイルス研究所のBSL4実験室の評価は高かった。中国メディア『財新』は、この実験室のチームが2017年に、複数のコウモリを起源とするSARS型コロナウイルスが変異したものがSARSウイルスであることを突き止めたと報じた。チームリーダーでBSL4実験室副主任の女性研究者は「コウモリ女傑」とも呼ばれ、コウモリの研究で政府から表彰されたこともあった。そのコウモリの実験で発生したウイルスが華南海鮮市場に流出した可能性はあるのだろうか。しかし、先の女性研究者は、SNSで一連の疑惑を真っ向から否定。「新型コロナウイルスと研究所は無関係であることを私は命をかけて保証する」という内容の投稿をした。中国メディア『財経』も、仮に実験室から流出したとしたら研究スタッフが真っ先に感染しているはずだが、そうではなかったと疑惑を打ち消す報道をしている。しかし今度は香港メディアが華南海鮮市場から300mほどの場所にある実験室「武漢疾病予防管理センター」からウイルスが流出したという内容の論文(のちに削除)の存在を報じるなど、依然ウイルスの出所には疑惑がつきまとう。発生源は華南海鮮市場ではないのだろうか。「医学誌『ランセット』に中国の医師たちが寄稿した分析によると、新型コロナウイルスの患者41人を調べたところ、発生源とされる華南海鮮市場に関係しているのは27人。さらに最も早い昨年12月1日に入院した初期患者4人のうち、3人が市場とは無関係でした」(福島さん)。中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰さんは「そもそも野生動物の市場取引は中国でも違法」と話す。「中国当局もSARSの経験を教訓に厳しく取り締まってきましたが、時間と共にそれが緩くなり、武漢では堂々とヤミ市場が開かれていました。違法だからこそ希少価値が出て、野生動物の値段が上がってしまう。中国に限ったことではありませんが、お金さえもらえればなんでもする人はたくさんいます。いまも違法な野生動物のヤミ市場は開かれているでしょう。武漢ではないところでウイルスが出てもおかしくない状況でした」 ◆いまも中国のどこかで新型コロナウイルスの研究が 新型コロナウイルスは猛威を振るい続けている。「香港大学医学院は1月27日に、新型コロナウイルスの感染者は約1週間ごとに倍増しており、4~5月頃にピークを迎え、夏頃までに減退していくと発表しました」(福島さん)。ただ、ひと段落着いたとしても安心はできない。7月24日から東京五輪が始まり、今年だけで世界中から3600万人もの人が訪日すると予想されている。一旦収束したように見えても群衆の中で知らぬ間に感染し、それをまた本国に持ち帰る人がいてもおかしくない。本当のパンデミックは夏以降にやってくるかもしれないのだ。昭和大学医学部内科学講座臨床感染症学部門主任教授の二木芳人さんが言う。「ウイルスは宿主に感染を繰り返すことによって更に変化が生じます。インフルエンザウイルスのように変異し、またタイプの異なるコロナウイルスが大流行を引き起こす恐れもあります」。今回、武漢の研究所から流出したわけではなかったとしても、今後流出が起こらないとは限らない。ある感染症の専門医は言う。「SARSウイルスと同様、新型コロナウイルスも再発防止のため、すでにどこかの研究所に保管され、研究が進められているはず。人の手がかかわる以上、ヒューマンエラー発生のリスクは伴います」。発生源の根源にあるのは、“人の愚かさ”か。 *8-3:https://news.yahoo.co.jp/byline/kazuhirotaira/20200225-00164456/ (Yahoo 2020.2.25)新型コロナウイルス:「生物兵器」の陰謀論、政治家やメディアが振りまく 新型コロナウイルスの感染源をめぐり、これが「生物兵器」だとする陰謀論の拡散が続く。ネットを舞台とした拡散に加えて、メディアや政治家などが、それを後押ししていることも大きい。そして拡散の背景として、中国政府の情報開示への不信感もつきまとう。だがこのような陰謀論の氾濫は、結果として人種差別を呼び起こしたり、感染拡大を悪化させてしまう危険性も指摘される。19日には公衆衛生や感染学の専門家である著名な科学者ら27人が、この陰謀論を否定する共同声明を英医学誌「ランセット」に発表。陰謀論の拡散を批判している。リアルの感染拡大と陰謀論の拡散。その二つを結びつけるのは、なお正体が明らかにならない新型ウイルスへの不安感だ。 ●上院議員と「生物兵器」 新型コロナウイルスと「生物兵器」を結びつける陰謀論は、米国のテレビ4大ネットワークの一つ、FOXでも取り上げられている。共和党の上院議員、トム・コットン氏はFOXニュースに16日夜に出演し、新型コロナウイルスについて、中国・武漢のウイルス研究所からの「流出疑惑」を主張した。コットン氏は、新型コロナウイルスの感染源として、ツイッターなどで武漢の「ウイルス研究所」を名指ししてきた。現在、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスの感染源としているのは、武漢市江漢区にあり、野生動物なども取引されてきた武漢華南海鮮卸売市場だ。コットン氏はFOXニュースの中で、感染源は海鮮市場ではない、と述べる。そして海鮮市場から数マイルの場所に「バイオセーフティレベル4の感染症の特別研究所がある」としている。コットン氏が名指ししているのは、長江を挟んだ対岸、12キロ(7.5マイル)ほど南東にある武漢市武昌区の中国科学院武漢ウイルス研究所の施設「武漢国家生物安全実験室」だ。「武漢国家生物安全実験室」は危険度の高い病原体を扱うことができる安全対策が施された「バイオセーフティレベル4(BSL-4)」の研究所。日本では国立感染症研究所村山庁舎(東京都武蔵村山市)がBSL-4施設だ。コットン氏は、断定はしないものの、新型コロナウイルスと「武漢国家生物安全実験室」について、こう発言している。この感染症の感染源がここ(ウイルス研究所)だという証拠はない。ただ中国はこの問題発覚当初から、二枚舌とうそばかりだ。我々は少なくとも証拠をもとに問いただしていく必要がある。だが中国は、そのための証拠すら一切明らかにしようとはしていない。 ●メディアが火をつける 新型コロナウイルスを「武漢国家生物安全実験室」や「生物兵器」と結び付ける陰謀論は、すでに様々な専門家から繰り返し否定されてきている。だが、これに火がつくきっかけの一つが、メディアだった。英大衆紙のデイリーメールは新型コロナウイルスによって武漢市の「封鎖」が始まった1月23日、「武漢国家生物安全実験室」のことを取り上げている。記事の中で同紙は、同研究所が2018年に中国初のBSL-4施設として稼働する前、病原体の「流出」を懸念する声が米科学者らから上がった、などと指摘。また、地図付きで海鮮市場と実験室の位置関係も掲載している。さらに、中国では2004年に北京の研究所でSARSウイルスが「流出」した経緯がある、などとしていた。デイリーメールの記事には、いくつかの事実がある。一つは2017年2月の科学誌「ネイチャー」の記事で、「武漢国家生物安全実験室」の安全性に米専門家らが懸念を表明していた点だ。さらに、2004年に北京でSARSの集団発生が起きた際には、北京の国立ウイルス学研究所で、BSL-3の実験室のSARSコロナウイルスを、一般の実験室に持ち出して実験に使ったことが感染源となったことも、公表されている事実だ。ただ、今回の新型コロナウイルスの感染と「武漢国家生物安全実験室」を結びつけるデータは、これまで明らかになっていない。また上述の「ネイチャー」の記事には、2020年1月付で「編集者追記」が掲載され、新型ウイルスと「実験室」を結びつける証拠はなく、新型ウイルスの感染源は市場と見られている、と述べられている。 ●陰謀論、拡散と否定 米保守紙のワシントン・タイムズは2019年1月26日、イスラエルの軍事専門家のコメントとして、新型コロナウイルスの感染源が「武漢ウイルス研究所」の可能性があり、同研究所が関わる「生物兵器計画」とつながっている、などと報じている。この記事を、トランプ政権の元首席戦略官兼大統領上級顧問で、右派サイト「ブライトバート・ニュース」の会長だったスティーブン・バノン氏が、自身のポッドキャストで拡散しているという。さらに1月31日、インドの研究グループが、新型コロナウイルスに、HIVウイルスとの「異様な類似点がある」などとする論文を公開。ウイルスへの「人為的操作」の憶測が拡散する。だが、調査手法や結論に関する専門家らからの批判を受け、論文は2日後に撤回されている。刺激的な情報は広く拡散する。ネット調査会社「バズスモー」のデータによれば、デイリーメールの最初の記事はフェイスブックで20万回以上共有され、ワシントン・タイムズの記事もやはりフェイスブックで16万回以上共有されている。撤回されたインドの研究チームの論文も、フェイスブックでは2万回以上共有された。中国の崔天凱・駐米大使は2月9日、米CBSの報道番組「フェイス・ザ・ネイション」に出演し、新型コロナウイルスと武漢の研究所を結びつけることを批判し、こう述べている。憶測やうわさを扇動し、人々に拡散させるのは極めて有害で、危険なことだ。それらはパニックを引き起こしてしまう。そして、人種差別、外国人差別を煽ることになる。これらはウイルス対策への協力態勢を著しく損なうものだ。ただ混乱の背景には、中国の情報開示についての不信感も影を落とす。象徴的なのが武漢の眼科医、李文亮氏のケースだ。李氏は「原因不明」だった今回の新型コロナウイルスについて、2019年12月30日という早い段階でネット上で感染への注意喚起をし、警察の事情聴取を受けた。さらに李氏は、自らも感染し、2月7日に亡くなっている。FOXニュースに出演したコットン氏も、李氏のケースを取り上げ、中国政府の対応を批判した。 ●27人の専門家が否定する 新型コロナウイルスの感染源をめぐるこれらの陰謀論やデマの氾濫に対し、世界的に知られる公衆衛生の専門家27人は2月19日、英医学誌「ランセット」に共同声明を発表した。共同声明に名を連ねているのは、SARSの感染源とコウモリを結び付けた研究など知られる国際NPO「エコヘルス・アライアンス」代表のピーター・ダスザック氏、全米科学財団(NSF)長官などを歴任し、ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院特別教授、沖縄科学技術大学院大学学園理事なども務めるリタ・コルウェル氏、英医学研究支援団体「ウェルカム・トラスト」代表で、2003年にベトナムでSARS患者の治療にあたったジェレミー・ファラー氏、元米国立感染症センター(NCID)所長で米エモリー大学大学院教授、ジェームズ・ヒューズ氏ら。声明は、各国の専門家による研究は、いずれも新型コロナウイルスが野生生物由来だと指摘。さらに、陰謀論の氾濫について、こう述べている。陰謀論は、ただ不安やうわさ、偏見をかき立て、今回のウイルスに対する世界的な協力の取り組みを危険にさらす。科学的エビデンスと、虚偽情報や憶測への団結した取り組みの推進。我々は、WHOのアダノム事務局長によるこの呼びかけを支持する。 ●陰謀論の被害 陰謀論やデマには、具体的な被害が伴う。今回の新型コロナウイルス感染拡大にともなって、中国人を中心としたアジア系に対する差別や排斥の動きが欧米などで広まっている。また、感染症に関するデマの拡散によって適切な対策が取られず、感染そのものの拡大に悪影響を及ぼす。そんなシミュレーション結果を英国立イーストアングリア大学教授で感染症を専門とするポール・ハンター氏らが発表している。ただ、従来のデマや陰謀論がそうであるように、新型コロナウイルスをめぐっても、情報戦の様相もある。感染源にまつわる陰謀論には、バリエーションがあり、その一つが、米国の陰謀である、とするものだ。フォーリン・ポリシーによれば、ロシアメディアでは、新型コロナウイルスが、米国の「生物兵器」、もしくは米国の製薬会社による策略、との陰謀論が流布している、という。不安の拡大には、それに乗じた様々な意図も入り込む。冷静さは常に必要だ。 *8-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020022990135918.html(東京新聞 2020年2月29日)<新型コロナ>WHO「危険性最高」評価引き上げ 感染55カ国・地域に 世界保健機関(WHO)は二十八日(日本時間二十九日未明)、新型コロナウイルスによる肺炎(COVID(コビッド)19)の地域別の危険性評価で、世界全体と日本を含む中国周辺地域を「高い」から、中国と同じ最高レベルの「非常に高い」に引き上げた。ウイルス感染が世界各地に拡大し、死者・感染者数の増加に歯止めがかからないことから、世界的に流行していると認定した形だ。中国を発端に韓国、イラン、イタリアなどで大規模感染が確認され、日本でも市中感染とみられる例が相次いでおり、終息の見通しが立たない現状に危機感を示し、各国に一層の警戒を呼び掛けた。事態は急速に変化しているが、WHOのテドロス事務局長は記者会見で、多くの国では大規模な市中感染は起きておらず「抑え込みは依然可能だ」と語った。WHOで緊急事態対応を統括するライアン氏は「危機が高まっている」と述べ、各国に感染拡大防止態勢の強化を訴えた。二十八日付のWHOの状況報告によると感染者は五十五カ国・地域の八万人以上に上った。中国では新規感染者が少なくなる傾向にあるが、感染は世界の五大陸(ユーラシア、アフリカ、北米、南米、オーストラリア)に波及。テドロス氏によると、イタリアに関連した感染者二十四人が十四カ国で、イランに関連した九十七人が十一カ国で確認された。中国以外の国からも感染者が「輸出」される事例が増え、世界的な危険性が高まったと認めざるを得なくなった。WHOはこれまで、世界各地の感染例は中国と比べると格段に数が少なく大半の感染経路も把握できているとしていた。WHOは一月三十日に国際保健規則に基づき、新型コロナウイルスの感染拡大が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当すると宣言。危険性評価は一月二十三日付のWHOの状況報告から掲載され(1)中国(2)中国周辺地域(3)世界全体-の区域で評価。これまで中国は「非常に高い」、世界全体と中国周辺地域は「高い」となっていた。 *8-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/587674/ (西日本新聞 2020/2/27) 「臨時休校」65%が賛成 高齢者と10代割合高く あな特通信員アンケ 新型コロナウイルス感染対策として全国の小中学校や高校などに臨時休校を要請する方針を安倍晋三首相が表明したことを受け、「あなたの特命取材班」は27日夜、無料通信アプリLINE(ライン)でつながる全国約1万1千人の通信員に緊急アンケートを実施した。2251人が回答、方針への「賛成」が約65%を占めた。年代別では、60代の賛成の割合が最も高い75・1%に上り、次いで10代(73・6%)、70代以上(70・1%)の順だった。「このくらいのことをしないと感染は広がるばかり」(福岡県・男性)、「初動指示が遅すぎた」(同県・男性)という声が上がった。子育て世代が多い年齢層では反対が比較的多く、30代では反対が最多の41・1%、次いで40代(36・5%)。「仕事を休めない。子どもだけ置いて行けない」(大分県・女性)のほか「急すぎる」、春休みまでという期間に「長すぎる」という声が目立った。男女別では男性の賛成が68・8%に対し、女性は62・5%。感染が確認された福岡、熊本両県ではそれぞれ64・7%、77・1%が賛成した。「子どもの面倒を誰が見ますか」という質問には、「誰もいない」という切実な声が一斉に寄せられた。小学校高学年や中学生の子どもについては、心配でも「子どもだけで留守番させる」(福岡県・女性)という人が多かった。子どもが低学年で、祖父母など頼れる人がいない場合は「夫婦交代で仕事を休むしかない」(同県・女性)との嘆きが漏れた。収入減少を懸念する声も多く「国が休業補償すべきだ」(鹿児島県・女性)、「どうしても面倒を見られない家庭のための緊急施設の整備が急務」(福岡県・男性)という意見があった。 *8-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/494188 (佐賀新聞 2020/2/27) 〈防ごう 新型コロナ〉学童の受け入れ先 ※土日は休みの自治体もあります。 【佐賀市】受け入れ先=児童クラブで検討中▶日時=3日から、午前8時~午後6時半▶対象=利用申し込みをして決定が出ている児童▶問い合わせ=市子育て総務課、電話0952(40)7285 【唐津市】検討中。2日までに詳細を決め、保護者に通知する 【鳥栖市】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3~15日(日曜除く)、午前8時~午後6時▶対象=通年で登録している児童のみ▶問い合わせは市生涯学習課、電話0942(85)3694 【多久市】受け入れ先=各校のなかよしクラブ▶日時=3日から、正午~午後7時▶対象=本年度の利用申し込みをしている児童▶問い合わせ=市学校教育課、電話0952(75)2227。 【伊万里市】受け入れ先=各学校の留守家庭児童クラブ▶日時=3~14日、午前8時~午後7時▶対象=本年度の利用申し込みをしている児童▶問い合わせ=市教育総務課、電話0955(23)2125 【武雄市】受け入れ先=小学校の放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時▶対象=利用申し込みをしていない児童でも、保護者の事情によっては受け入れ可能▶問い合わせ=各児童クラブ、こどもみらい課、電話0954(23)9215 【鹿島市】受け入れ先=各校の児童クラブ▶日時=3日から、午前7時半~午後6時10分(延長は午後7時)、弁当を持参▶対象=市内の児童で子どもを見る人がいない家庭。新規利用は就労証明が必要で、市役所に申請する▶問い合わせ=市福祉課、電話0954(63)2119 【小城市】受け入れ先=各校の放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時までで検討中▶対象=本年度の利用申し込みをしている児童▶問い合わせ=市教育総務課、電話0952(37)6130 【嬉野市】受け入れ先=各校の放課後児童クラブ▶日時=3~15日、午前7時半から午後7時まで▶受付期間=3日~15日まで▶対象=通常の利用申し込みをしている児童、長期休暇時のみ申し込みをしている人▶問い合わせ=市子育て未来課、電話0954(66)9121、もしくは、市福祉課、電話0954(42)3306 【神埼市】検討中。2日までに詳細を決め、保護者に通知する▶問い合わせ=市社会教育課、電話0952(44)2731 【吉野ヶ里町】受け入れ先=各小学校の放課後児童クラブ▶日時=3~15日、午前7時半~午後6時(1時間延長可)▶対象=1、2月の平日に利用している児童のみ▶問い合わせ=町社会教育課、0952(37)0341 【基山町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時▶対象=普段から利用している児童のうち1年生から3年生まで受け入れ予定▶問い合わせ=町こども課、電話0942(92)7968 【上峰町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前8時~午後7時▶対象=通常から利用している児童のうち1、2年生を受け入れ。学校で受け入れるなどの対応も検討中▶問い合わせ=町住民課、0952(52)7412 【みやき町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3日から、午前7時半~午後7時▶対象=利用登録している児童。学校を開けることも含めて検討中▶問い合わせ=町こども未来課、0942(89)4097 【玄海町】受け入れ先=さくら児童館、みどり児童館▶日時=3日から、午前8時~午後6時▶対象=どうしても預ける必要がある場合のみ対応。申請のない児童生徒の対応も検討中▶問い合わせ=両児童館、町住民課こども・くらし係、電話0955(52)2158 【有田町】受け入れ先=放課後児童クラブ▶日時=3~14日、月~土曜の午前8時~午後6時(延長30分)、日曜は休み▶対象=既に登録をしている児童のみ▶問い合わせ=有田町子育て支援課、電話0955(25)9200 【大町町】検討中 【白石町】受け入れ先=各校の放課後児童クラブ▶日時=3~15日、午前7時40分~午後6時▶対象=利用申し込みしている人。申し込みしていない人の対応も検討している▶問い合わせ=町保健福祉課、電話0952(84)7116 【江北町】受け入れ先=各小中学校、江北小にある放課後児童クラブ、町子どもセンター「うるる」▶日時・対象=午前8時15分~午後2時15分は学校の教室を開放して受け入れ。放課後児童クラブは利用申し込みをしている児童が対象で午後6時半まで▶問い合わせ=町子ども教育課、電話0952(86)5621 【太良町】受け入れ先=各校の児童クラブ▶日時=3~15日、午前8時半~午後6時▶対象=申し込みをしている児童。新規利用は要望次第で検討する▶問い合わせ=町民福祉課、電話0954(67)0718 *8-7:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1081535.html (琉球新報社説 2020年2月28日) 政府の新型肺炎対策 検査体制の拡充が急務だ 政府の危機管理能力のなさが鮮明になってきた。新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染拡大阻止で安倍政権の対応が後手に回り、国民の間に不安と混乱を広げている。その最大の要因は、新型コロナウイルスの有無を調べるPCR検査が十分に行われておらず、感染がどれだけ広がっているのか実態を把握しきれていないことにある。発熱やせきが続いても新型コロナウイルスの検査を受けられず、医療機関をたらい回しにされる事例が報告されている。感染者数を増やさないために、検査を制限しているのではないかと疑いの目を向けられても仕方がない。政府はこれまで1日最大約3800件の検査能力があると説明してきたが、この1週間の実績は1日平均約900件にとどまっている。これに対し隣国の韓国は1日平均約3400件の検査を実施し、これまでの検査総数は約5万3千件となっている。韓国では2015年に中東呼吸器症候群(MERS)への対応が遅れ、政権が批判された。これが教訓となり韓国政府はPCR検査の検査時間を短縮し、民間病院に検査キットを配布して検査の網を拡大してきた。日本では厚生労働省が当初「国内では人から人への持続的な感染は認められない」との認識を示すなど、事態を楽観視していた。集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応を巡っても、感染防止対策に不備があったと指摘されている。大きな失態だ。陰性が確認された乗客をクルーズ船から下船させたが、栃木や徳島、千葉県では公共交通を利用して帰宅した下船者の感染が判明する事態になった。政府の泥縄式の対応がウイルスを拡散させている可能性が否定できない。終息の道筋が見えない中で、スポーツや文化行事の開催自粛も広がっている。25日に厚労省が発表した基本方針では「全国一律の自粛要請を行うものではない」としていた。だが、安倍晋三首相が翌26日に「国が判断しなければならない。大規模な感染リスクがある」と中止の要請へと方針を一転させたことで、イベント当日に公演中止が決まるなど混乱を招いた。現場に負担を押し付けるやり方は市民生活や経済活動を混乱させる。「最終的な責任は市や町にあると国が逃げている」(谷本正憲石川県知事)との指摘や厚労省に任せきりにしているとの批判もある。首相は3月2日から春休みが明けるまで全国の小中高校などに臨時休校を要請する意向を示した。感染の広がりが不明な中で、場当たり的な印象も否めない。政府は検査の規模と速度を上げる必要がある。検査を希望する全ての人が検査を受けられるよう、民間機関への検査委託の拡大など診断体制を早急に強化すべきだ。 <普及せずに失う日本発の先進技術とその理由> PS(2020/2/27追加):*9-1のように、パナソニックもテスラの「ソーラールーフ」で採用されるはずだった黒屋根のような太陽電池のデザインと発電効率の両立が難しく、テスラの求める仕様に合わないとして共同生産を解消するそうだ。そして、テスラの現行のソーラールーフは、コストも安い中国企業などの電池を採用しているそうで、太陽光発電装置が日本発だったことを考えると情けない。パナソニックが生産した太陽電池は日本のハウスメーカーなどが使っているそうだが、それもデザインが今一つで、設置の傾斜角度を30度にするため、見た目がさらに悪くなっている。日本では、「環境保護≒その他のすべてを犠牲にしてよい」と考えているようだが、この発想は改めるべきだ。 また、ジョンソン英首相は、*9-2のように、「ガソリン車(ハイブリッド車を含む)とディーゼル車の販売禁止を従来より5年早い2035年から実施する」と表明するそうだが、2030年からでよいのではないだろうか。首相がそう表明すれば、充電施設は整備され、大量生産によりEVの値段も下がる。日本は、現状維持や妥協の発想と妨害によってEVも遅れたが・・。 *9-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56059920W0A220C2MM0000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/2/26) テスラとパナソニック、太陽電池の共同生産解消へ 米電気自動車(EV)メーカーのテスラとパナソニックは太陽電池の共同生産を解消する。テスラの太陽光パネルに使う太陽電池を生産するため、両社は米ニューヨーク州で工場を運営してきた。ただ実際はテスラ製パネルでの採用はほとんどなく、生産量が増えないため近く稼働を止める。中国勢が台頭する中、日本の太陽電池メーカーの退潮が鮮明になる。テスラにとって太陽光事業はEVに次ぐ柱だが、当初の戦略を修正する。両社は米ネバダ州にある車載電池工場「ギガファクトリー1」を軸としたEV向け電池の共同生産は引き続き維持する。テスラとパナソニックは2016年に太陽電池の生産で提携すると発表。米ニューヨーク州バッファロー市に「ギガファクトリー2」と呼ぶ工場を設け、17年から太陽光パネルの中核部材である太陽電池などの生産を始めた。工場の運営主体はテスラでパナソニックは製造設備の購入など投資の一部を負担。主にパナソニックが生産を担当する太陽電池は、テスラの主力の太陽光パネルである「ソーラールーフ」で採用されるはずだった。ソーラールーフは黒い屋根のように見えるデザイン性が最大の特長だが、パナソニック製の太陽電池は見た目と発電効率の両立が難しくテスラの求める仕様に合わなかった。現行のソーラールーフはコストも安い中国企業などの電池を採用しているもよう。パナソニックは同工場で生産した太陽電池を、テスラの代わりに日本のハウスメーカーなどに販売してきた。 *9-2:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/02/20355.php (Newsweek 2020年2月4日) イギリス、2035年からガソリン車とディーゼル車を販売禁止へ 5年前倒し ジョンソン英首相は4日に行う講演で、ガソリン車とディーゼル車の販売禁止について、従来より5年前倒しの2035年から実施すると表明する見通し。英国は今年、11月にグラスゴーで開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の議長国を務める。4日にロンドンで開かれる関連イベントでの講演を前に、ジョンソン首相は声明で「COP26の開催は英国と世界各国にとって気候変動対策強化の重要な機会になる」と指摘。「2050年排出実質ゼロの目標に向けた今年の英国の計画を明らかにするともに、諸外国に排出実質ゼロを英国とともに公約するよう求めるつもりだ」とした。ジョンソン氏は、排出実質ゼロの早期達成に向け、クリーンな技術への投資や自然生息地の保全、気候変動の影響への耐性を高めるための方策を含めた国際的な取り組みを呼び掛ける見通し。ガソリン車とディーゼル車の販売禁止については、2035年か、可能であればさらに早い時期に前倒しで実施する計画を示す。ガソリンエンジンと電気モーターを併用するハイブリッド車も含まれるという。実施前に意見公募を行う。英国以外にも、フランスは2040年以降、ガソリン車とディーゼル車の販売を禁止する方針で、ノルウェーの議会は、25年までに国内の全ての車を排出ゼロにする法的拘束力のない目標を採択した。ただ、英国ではディーゼル車とガソリン車が国内販売の9割を依然占めており、充電施設の数が少なく、エコカーのモデルも限定的で割高との声が聞かれる。 <新型コロナウイルス対策としての全国一斉休校> PS(2020年3月2、3、16日追加):*10-3のように、重要な仕事をしている女性が多いとは思わず、家庭へのしわ寄せを考えずに、安倍首相が新型コロナウイルス感染防止として、2020年3月2日から全国の小中高校・特別支援学校を一斉に休校にする方針を出された時には、私も「原発廃止と再エネによる分散発電やEV化ではなく、勉強させない方向への意思決定は随分速やかだ」と思った。つまり、感染者が1人も確認されていない自治体(離島を含む)にまで休校を要請する必要性はないと思われるため、全国一斉休校にした科学的根拠を明確にすべきだ。ただし、学校に行くのは全員の義務だが、保育園や学童保育を使うのは親が必要と判断した家庭だけであるため、この期間に保育園や学童保育を開所するのに矛盾はない。 また、学校給食の停止で、*10-2のように、学校給食向け牛乳・野菜等のキャンセルが相次いで供給者が困っているそうだが、それだけではなく、これを給食として児童・生徒に与えて健康を維持させているため(これには親は感謝すべきだ)、一斉休校で免疫力や体力が低下する児童・生徒も出そうだ。そのため、*10-1のように、参院予算委員会は、2020年度予算案全体ではなく(??)、新型コロナウイルス対応策などが中心的な議題になるとのことである。 なお、新型コロナウイルスの感染防止のために始まった全国小中高校の一斉休校で、*10-4のように、朝から預かる学童保育の負担が重くなり、同時に感染をどう防ぐかが問題となっているそうだが、朝から預かる必要性は、休みの日なら日常のことであり、感染防止も新型コロナウイルスに限らずインフルエンザ・はしか・水疱瘡など他の感染症でも同じだ。従って、私は東大女子同窓会を通して1990年代から必要性を言っていたので、未だに保育所や学童保育の不備に慌てている自治体があるとすれば、それは働く女性のニーズを無視して女性に負担を押し付けてきた自治体の怠慢であり、同情の余地はないと思う。むしろ、新型コロナのおかげで、必要不可欠なインフラの未整備が浮き彫りになったことに感謝すべきだ。 このような中、*10-5のように、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏が取締役を退任し、①気候変動 ②教育 ③公衆衛生 に関わる慈善事業に専念されるそうだ。これは本当に偉いことだが、①②③の命題は、今後のITに求められる技術であるため、ゲイツ氏の判断は長期的には新製品や新サービスのBig market(大市場)を創造することになり、慈善事業に終わらないだろう。例えば、IT教育なら、*10-6のように、オンラインで動画を使った教育をすることもでき、日本に居ながら外国の授業を受けることもできる。これは、学校に行く意義とは別に、開発途上国や地方ではなくてはならないものだ。ちなみに、私は「Nature」の日本法人で、地球45億年の歴史を5分くらいに短縮した大陸移動説の動画を見せていただいたことがあるが、想像を超える科学的事実が画像で表わされており、特に注目したい場所(例えば、恐竜時代の日本など)を拡大して見ることもできて感動した。このほか、イギリスやアメリカの授業を聞けば、他の学科を英語で学習することもできるため、テレビサイズに大きくできるYuTubeがあれば助かる。また、「そこまでやると、学習時間が足りない!」という問題については、*10-7のように、佐賀県は、(私の提案で)私立だけでなく公立高校も中高一貫併設校になっているところが4か所あり、このように中高一貫校の6年間や幼稚園・小中一貫校で年齢に応じた内容を効果的に学べるようにすれば、「時間が足りない」という問題は解決できる。そのため、必要なのは、学習内容をできるだけ前倒しし、学習計画を効率化しながら再編することである。 *10-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200302&ng=DGKKZO56249020R00C20A3PE8000 (日経新聞 2020.3.2) 新型コロナ対応で与野党論戦 自民・世耕氏「休校は有効」 国民・大塚氏「経緯説明を」 参院予算委員会は2日から安倍晋三首相と全閣僚が出席し、2020年度予算案の基本的質疑に入る。新型コロナウイルスの対応策などが中心的な議題となる。それに先立ち与野党の参院幹部は1日のNHK番組で、政府の対応策について討論した。自民党の世耕弘成参院幹事長は首相の休校要請に関して「迅速に対応することが重要だ。全国的にどこで広がるか明確でない状況で、休校は有効だ」と評価した。「休業補償を具体化するなど不安の払拭に努めることが重要だ」と訴えた。公明党の西田実仁参院会長も「休業補償や子供の居場所づくりなどセットで公表するほうが混乱は少ない」と指摘した。世耕氏は国会論戦を前に「今は批判や糾弾の段階ではなく、政府が能力を存分に発揮できるようにサポートすべき時期だ」とも強調した。立憲民主党の長浜博行参院議員会長は「自治体に責任を押しつけるのではなく、国として何をすべきかだ」と述べた。国民民主党の大塚耕平代表代行も休校要請について「なぜこういう判断に至ったか説明を聞きたい」と語った。共産党の小池晃書記局長は専門家を国会に参考人として呼び、政府の対応を検証すべきだと主張した。大塚氏は休校で学校給食がなくなり、材料を納入する業者などに悪影響が出ることに懸念を示した。日本維新の会の片山虎之助共同代表は「国が一律に要請するのはいかがか」と批判し、地方自治体の判断に任せるべきだとの考えを示した。日本経済全体への影響について、大塚氏は「事業者が決済できない状況が発生している」として、政府が支払い猶予措置などを講じるべきだと提案した。イベント中止によるキャンセル料を念頭に、イベント業者らへの損害をなくすように求める考えを示した。小池氏は消費税率を5%に引き下げるように主張し、世耕氏は否定した。 *10-2:https://www.agrinews.co.jp/p50163.html (日本農業新聞 2020年2月29日) 新型肺炎で臨時休校 給食停止で産地混乱 生乳、野菜行き場なく 新型コロナウイルスの感染拡大防止へ、政府が示した全国小中高校の臨時休校方針で学校給食が停止がすることを受け、農畜産物の供給に混乱が生じている。学校給食向けの牛乳(学乳)は飲用向け生乳の1割近くで、供給先を失った産地やメーカーは対応に苦慮する。野菜でも給食向け取引のキャンセルが相次ぐなど影響が広がっている。学校給食に提供する生乳は、全国の飲用向け(年間約400万トン)の1割弱で全て国産。うち最も供給量の多い関東は年間10万トンを学乳に仕向ける。管内の公立学校が2週間休校になると、このままでは7500トンもの生乳が行き先を失う。関東生乳販連は28日午後4時現在で、取引メーカーからキャンセルが相次ぐ。キャンセル分は日量最大で80トンを見込む。余力のある乳業メーカーに引き受けてもらい、難しければ長期休みに稼働率を上げる乳製品工場に納めたい考え。実質、春休みが前倒しになる形だが、工場の人員確保は難しく、どこまで対応できるかは不透明だ。「暖冬で生乳生産が上向く一方、飲用需要も全体的に下がっている。学乳の停止でダブルパンチ」(同生乳販連)と嘆く。乳用牛など50頭を管理し、千葉酪農農業協同組合を通じ小学校に牛乳を出荷する千葉県内の牧場の代表は「まだ損害は出ていないが、先行きが見えない。影響の長期化が心配」と不安視する。北海道では都府県に定期的に移送する生乳のキャンセルの多発を懸念する。キャンセル分は道内の乳業メーカーが引き受け、主に加工向けに振り向ける。生乳増産と飲用向け需要の低迷に加え、観光客の減少で土産用の加工品需要も低下している。大手乳業関係者は「乳業各社や指定団体と協力して生乳需給が崩れないようにしたい」と話す。文部科学省によると、学校給食の1人1食当たりの食品別摂取量(2017年度)は、牛乳が200グラムで最多。野菜類が91グラム、米が52グラムと続く。学校給食向けに出荷する産地やJAなどにも影響が及ぶ見通しだ。東京都小平市の小中学校に食材を提供してきたJA東京むさし小平支店は、3月分の野菜などの契約4・5トンがキャンセルとなった。同JAは「非常に混乱している。市場に荷が集中し相場に影響が出るのも心配」と話す。月約200万円分の野菜を東広島市内の給食センターなどに供給してきたJA広島中央は「学校給食は安定した単価で買い取ってもらっていた」ため、供給停止を懸念する。学校給食材の供給などを担う各都道府県学校給食会でつくる全国学校給食会連合会は「給食メニューや食材調達は約1カ月前に決めるところが多い。食材キャンセルなど影響は出る」とみる。文科省は28日、学校給食に供給してきた産地やJA、業者の支援について「現時点で補填(ほてん)などは想定していないが、影響を踏まえ各省と連携し検討する」としている。 *10-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1082245.html (琉球新報社説 2020年2月29日) 新型コロナ休校要請 「全国一斉」の根拠説明を あまりにも唐突で場当たり的と言わざるを得ない。安倍晋三首相が、新型コロナウイルスの感染防止のため3月2日から春休みに入るまで全国の小中学校、高校や特別支援学校を臨時休校にするよう要請する方針を打ち出したのである。萩生田光一文部科学相は「専門家から、学校が集団感染のリスクが高いとかねて意見があり、政府が大方針を示した」と理由を説明する。だが、感染者が出た都道府県だけでなく、1人も確認されていない県を含め、一律に休校を求める必要があるのか。混乱を拡大させるだけではないのか。一斉休校の科学的根拠をしっかりと説明することが不可欠だ。新型コロナウイルスを巡るこの間の政府の対応は後手後手だった。集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で乗員乗客を船内に隔離したものの、封じ込めに失敗した。未曽有の事態に対処できず右往左往する政府の無策ぶりは日を追うごとに鮮明になっている。一斉休校の要請は、高まる批判を払拭(ふっしょく)する狙いがあるとみられるが、短兵急で稚拙な印象は否めない。知事や市長などから戸惑いや懸念、批判の声が出た。「家庭の負担が大きい」などとして要請に従わない自治体もある。かえって指導力のなさを露呈した。文科省が一斉休校の要請を通知する一方で、厚生労働省は小学生を放課後に預かる放課後児童クラブ(学童保育)などは原則として開所するよう都道府県に通知した。ちぐはぐな対応に映る。休校による保護者の負担は大きい。学習に遅れが出る。学校現場は混乱している。少なくとも、もっと早い段階で休校要請の用意があることを周知しておくべきだった。首相は、休校に伴うさまざまな課題について「政府として責任を持って対応する」と明言した。きめ細かな対策が欠かせない。「急速な拡大の瀬戸際にある」と専門家は指摘するが、どこまで感染が広がっているかは分かっていない。ウイルスの有無を調べるPCR検査の体制が整っていないからだ。検査費用の公的医療保険適用を含め、必要な対策が大きく立ち遅れている。首相周辺の危機意識も薄い。秋葉賢也首相補佐官は首相が全国的なイベントの自粛を要請した26日の夜、地元仙台市で出版記念パーティーを開いた。集団感染が起きやすいとされる立食形式だ。これでは示しがつかない。麻生太郎財務相は、臨時休校要請を巡り、働く母親などがいる家庭への対応を質問した記者に「つまんないこと聞くねえ」とつぶやいた。つまらないのは自身の態度だ。不謹慎としか言いようがない。首相は、一生懸命に取り組んでいるという印象を与えるためのパフォーマンスではなく、実効性のある方策を着実に実行してもらいたい。 *10-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200303&ng=DGKKZO56282830S0A300C2CC1000 (日経新聞 2020.3.3) 学童保育の負担ずしり 新型コロナ、一斉休校初日、朝から預かり/「感染どう防ぐ」 新型コロナウイルスの感染防止に向け、2日から始まった全国小中高校の一斉休校。子どもを預かる各地の放課後児童クラブ(学童保育)は開所時間を前倒しし、朝から対応に追われた。働く親たちは「受け入れてくれて助かった」と安堵したが、預かる施設側は「密集空間でどう感染を防げばいいのか」「人手が足りなくなるのでは」と悩んでいる。文部科学省の2月28日の通知を受け、感染者のいない島根県を除く46都道府県の小中高校で2日から順次、一斉休校が始まった。各地の学童保育では、通常は放課後の開所時間を朝に前倒しし、仕事などで親が自宅で見られない子どもの受け皿となった。区立小学校が休校になった東京都文京区の学童クラブには2日午前8時前から続々と児童が集まった。小学校1年の娘を預けに来た男性会社員(50)は、学童側から「登録済みで保育が必要な場合は午前中から受け入れる」との通知を2月28日に受け取ったという。「共働きで、ここが受け入れてくれなかったら、どうしていいのか分からなかった」と話した。福岡市でも2日朝から、市内139カ所の放課後児童クラブで児童の受け入れを始めた。同市博多区の同クラブでは小学1~6年の児童約40人が手洗いやアルコール消毒をして中に入った。市によると、臨時休校が決まった2月28日以降、新たに約1千人が同クラブに入会したという。臨時休校中の児童の受け皿として期待されている学童には問い合わせが増えているが、施設側は悩みを抱える。「どこまで(感染を)防げるのかはわからない」。東京都葛飾区の区立梅田小学校内の学童保育クラブ責任者、佐々木美緒子さんは心配そうに話す。密集を避けるため、児童約50人を2班に分けたが「結局、学校の教室と同じ人数や環境で集まっている」と話す。大阪府寝屋川市の小学校では2日から24日までの休校期間中、午前8時から午後5時まで預かる児童には給食を提供している。この日、市立石津小学校では預かった35人を4つの教室に分散させ、給食時は全員が前を向いて極力会話しないように注意を促した。森本朋美校長は「保護者の負担を少しでも軽減するため給食の提供は続けたい」と話した。名古屋市緑区の学童保育クラブの男性職員は「子どもを1カ所に集めないために休校にしたのに、学校より小さく、設備が乏しい学童に集めてもいいのだろうか」と困惑する。開所を朝に早めたが、職員の人数は変わらず負担は増している。「アルバイトのシフトを調整できなければ、常勤職員が朝から晩まで働くしかない」と語った。学童保育約100カ所で児童を午前から受け入れた東京都足立区。一部の区営施設には新型コロナ対策で閉鎖中の高齢者施設から職員が応援に入ったが、運営を民間に委託する施設では職員の人手不足や長時間労働の恐れが出ている。区の担当者は「預かりを希望する家庭が増える可能性もあり、今後の受け入れ数は読めない」と語った。 *10-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56792950U0A310C2000000/?n_cid=SPTMG002 (日経新聞 2020/3/14) ビル・ゲイツ氏、マイクロソフト取締役を退任 米マイクロソフトは13日、創業者のビル・ゲイツ氏(64)が同社の取締役を退任したと発表した。自ら設立した財団で取り組んでいる気候変動や教育、公衆衛生に関わる慈善事業に専念するため。サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)らへの「テクノロジーアドバイザー」の役割は続ける。ゲイツ氏は1975年に友人のポール・アレン氏とマイクロソフトを創業し、パソコン用基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」で一時代を築いた。2000年までマイクロソフトのCEOを、14年まで取締役会長を務めた。一方で2000年には妻のメリンダ氏とともに、環境問題や新興国の病気など社会課題を扱うビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立。財団活動に軸足を移すため、08年以降はマイクロソフトの仕事は「非常勤」にしていた。今回取締役も辞めることで、慈善事業に費やす時間を一段と増やす。ゲイツ氏は友人のウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイの取締役も退任する。ゲイツ氏は「リンクトイン」への投稿で「バークシャーとマイクロソフトのリーダーシップはかつてなく強くなっているため、このステップを踏むのに適切な時期だ」と説明した。ただ、ゲイツ氏は「マイクロソフトの取締役を退任することは会社から完全に離れることではない」とも述べ、技術面のアドバイザーとして関与を続ける意思を示した。ナデラ氏は13日に声明を出し「マイクロソフトはビルの継続的な技術に対する情熱とアドバイスを受けて、製品とサービスを前進させていく」と述べた。新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、ゲイツ財団は同分野でも活動を積極化している。最近は2月に新型コロナウイルス対策に最大1億ドル(約108億円)を拠出すると発表した。 *10-6:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/592277/ (西日本新聞 2020/3/16) にわかに注目、オンライン学習 新型コロナで突然の休校… 企業も支援 ●学校の意義見つめ直す機会にも 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で小中高校の臨時休校が続く中、子どもたちが自宅にいても学べるオンライン学習が注目されている。企業による教材の無料公開が相次いでいるほか、学校現場も教師が課題の送信や質疑応答などを工夫。情報通信技術(ICT)を使った教育の浸透と、教室で学ぶ意義の見直しにもつながっている。「楽しみだったし、ドキドキした」。福岡市中央区の福岡雙葉高2年の香山礼美さん(17)は11日、ビデオ会議システムによる学級の朝礼に臨んだ。スマートフォンに並んだ級友や担任の表情に触れて「安心した」と香山さん。臨時休校に入って以降、初めて顔を見る人が大半だったという。ICT教育に力を入れ始めた同校では本年度、全ての教師にタブレット端末を配備した。その環境を利用して教師たちは休校中、生徒向けに小テストや添削、解説動画に加え、黒板の前で撮影した授業の動画を配信。1本の動画を5分にまとめたり、別の教師が生徒役をしたりするなどの工夫を凝らす。ただ、授業の代替ではないため、どこまで取り組むかは生徒次第だ。生徒の関心を伸ばす鍵の一つが教師の「素顔」。今春、定年を迎える教師のメッセージ動画を配信すると生徒間で大きな話題となった。その反響を受け、歌に合わせて踊る教師の姿なども見られるようになった。一方で授業動画は思わぬ効果も。「生徒がノートに書いたり、自分たちが板書したりする時間を省くと50分でやっていた内容を約15分にまとめられた。自分の動画を見て話す早さや滑舌も見直せた」と甲斐恭平教諭(29)は話した。 ◇ ◇ 福岡市西区の福岡西陵高では臨時休校に入った3日、教師たちが学校のタブレットを手にオンライン学習の手法を確認し合った。九州大と連携し、デジタル教材の活用法を探る同校は生徒と教師に保護者も加えて学級、部活動など設定したグループ内で文章や写真、動画を送受信できるシステムを導入。生徒たちには休校前、自宅のパソコンやスマートフォンを使って交信するよう伝えていた。「生徒を個別に呼び出して指導ができるわけではない。いかに生徒がやりたくなる課題を提供できるかが大切」と、中心になって進める吉本悟教諭(39)は言う。休校から10日余り。連絡事項や課題の伝達に加え、テレビ会議システムで一部の補習授業も実践した。今後は海外の学校とつなぎ、生徒間の交流会も計画している。 ◇ ◇ こうした学校現場の取り組みに、教育関連企業も積極的に“参戦”する姿勢を見せている。通信教育事業のZ会(静岡県三島市)や小学館集英社プロダクション(東京)、学研ホールディングス(東京)などの業界大手はそれぞれ、専用サイトを設けるなどし、学習方法や授業解説の動画といった教材を相次いで公開している。経済産業省は2月28日に家庭学習に役立つ取り組みを紹介するサイトを開設。50社・団体以上を載せており、担当課には一時、対応できないほど掲載の要望が殺到したという。4月からプログラミング教育が小学校で必須となるのをにらんだ企画もある。福岡市のベンチャー企業「しくみデザイン」は4月上旬まで、同社が無料で提供しているアプリを使ったデジタル作品を応募してもらうコンテストを実施中だ。パソコンやスマホがあれば、どこでも学べるオンライン学習。それでも、多くの生徒は教室で気軽に話し合い、学び合える友人が隣にいないことに不都合を感じている。福岡雙葉高の甲斐教諭は「生徒たちが集まらないとできないことは何なのかを突き詰めないといけない」と話す。突然の臨時休校は、学校での学びの意義をあらためて感じる機会でもあるようだ。 *10-7:https://www.gakkou.net/kou/src/?srcmode=ci&ci=2&p=41 (中高一貫教育校併設型高校より抜粋) 1.佐賀県立唐津東高等学校 佐賀県唐津市 公立 普通科 中高一貫教育校 2.弘学館高等学校 佐賀県佐賀市 私立 普通科 中高一貫教育校 3.佐賀清和高等学校 佐賀県佐賀市 私立 普通科 専門学科 中高一貫教育校 4.佐賀県立武雄高等学校 佐賀県武雄市 公立 普通科 中高一貫教育校 5.佐賀県立致遠館高等学校 佐賀県佐賀市 公立 普通科 専門学科 中高一貫教育校 6.東明館高等学校 佐賀県基山町 私立 普通科 中高一貫教育校 7.佐賀県立烏栖高等学校 佐賀県鳥栖市 公立 普通科 中高一貫教育校 8.龍谷高等学校 佐賀県佐賀市 私立 普通科 中高一貫教育校 9.早稲田佐賀高等学校 佐賀県唐津市 私立 普通科 中高一貫教育校 <新型コロナウイルスの治療法と特措法> PS(2020年3月4日追加):新型コロナウイルス「COVID-19」が怖いのは、「有効な治療法がないから」と言われるが、*11-1のように、治療薬として①抗ウイルス薬レムデシビル ②抗HIV薬「カレトラ」 ③抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」 の3種類が有望視されており、レムデシビルは、現在は承認されていないが、エボラ出血熱の治療薬として開発され、コロナウイルスが引き起こすMERSやSARSへの効果も示唆されて、中国と米国では既に臨床試験が始まっており、日本でも承認申請に向けた試験を3月にスタートするそうだ。ただし、ワクチンは予防には役立つが、既に罹患している人には無意味だ。そのような中、中国では罹患して治った人の血清を注射することによって重傷者が回復した例があり、これなら自分の免疫で回復しきれないほどの重症患者にも有効だろうが、人間の血清は供給に限度がある。 そのため、私は、MERS・SARS・COVID-19がコロナウイルスであることから、*11-2のように、コロナウイルスに効く血清を医療用の無菌豚で作っておけば重症患者の治療に汎用することができ、乳牛で作って牛乳に免疫を出せれば、(乳児が母乳から免疫をもらうように)牛乳を飲んで免疫を作ることもできると思う。 このように、現在の日本は感染症への対処法が多くなっているため、私は、*11-3のように、「政府や自治体の権限強化は抑制的であるべきで、憲法に反する法律で人権を制限しすぎるべきではない」という意見に賛成だ。 *11-1:https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17853/ (AnswersNews 2020/2/28) 新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】 世界各地で広がる新型コロナウイルス感染症「COVID-19」。治療薬やワクチンの開発動向をまとめました(2020年2月28日昼時点の情報をもとに執筆。内容は随時更新する予定です。 ●治療薬 2月28日時点でCOVID-19の治療薬として有望視されているのは、▽米ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬レムデシビル▽米アッヴィの抗HIV薬「カレトラ」(一般名・ロピナビル/リトナビル)▽富士フイルム富山化学の抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(ファビピラビル)――の3種類。レムデシビルは、現時点では世界中のどの国でも承認されていません。日本では、国立国際医療研究センターの研究班による観察研究として、一部の医療機関でこれら3種類の薬剤の投与が始まっています。3月には、レムデシビルの承認申請に向けた医師主導治験がスタートする予定。日本感染症学会は2月26日、3種類の薬剤のうち国内で承認されているカレトラとアビガンをCOVID-19に使用する際の留意点などをまとめた指針を発表しました。 ●レムデシビル(米ギリアド) ギリアドは2月26日、COVID-19を対象にレムデシビルの臨床第3相(P3)試験を始めると発表しました。試験は、重症患者400人を対象としたものと、中等症患者600人を対象としたものの2本で、アジアを中心に診断例が多い世界各国の医療機関が参加。いずれも、レムデシビルを5日間または10日間、静脈内投与し、発熱と酸素飽和度を指標として有効性を評価します。レムデシビルはすでに、中国(中日友好医院主導)と米国(国立アレルギー・感染症研究所=NIAID主導)で臨床試験が始まっており、ギリアドによる企業治験はこれらの試験データを補完するものになるとみられています。中国での試験は4月に結果が得られる見通し。日本でも承認申請に向けた医師主導治験が3月にスタートする予定です。レムデシビルはもともと、エボラ出血熱の治療薬として開発されていた核酸アナログ。これまでの研究では、コロナウイルスが引き起こすMERS(中東呼吸器症候群)やSARS(重症急性呼吸器症候群)への効果が示唆されており、ギリアドは2月3日に発表した声明で「今回の新型コロナウイルス以外のコロナウイルスで得られているデータは希望を与える内容だ」としています。 ●カレトラ(米アッヴィ) カレトラは、ウイルスの増殖を抑えるプロテアーゼ阻害薬ロピナビルと、その効果を増強するリトナビルの配合剤。日本では2000年にHIV感染症に対する治療薬として承認されています。これまでのin vitroや動物モデルを使った研究では、MERSへの有効性が示されており、COVID-19に対してもバーチャルスクリーニングで有効である可能性が示されています。米国の臨床試験登録サイト「CrinicalTrials.gov」によると、中国ではCOVID-19を対象としたカレトラの臨床試験が複数、実施中。日本感染症学会の指針によると、国内では2月21日までに国立国際医療研究センターで7人の患者に投与されています。 ●アビガン(富士フイルム富山化学) アビガンは2014年に日本で承認された抗インフルエンザウイルス薬。新型インフルエンザが発生した場合にしか使用できないため、市場には流通していませんが、国は新型インフルエンザに備えて200万人分を備蓄しています。アビガンは、インフルエンザウイルスの遺伝子複製酵素であるRNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制します。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルスもインフルエンザウイルスと同じRNAウイルスであることから、効果を示す可能性があると期待されています。ただし、動物実験で催奇形性が確認されているため、妊婦や妊娠している可能性がある人には使うことができず、妊娠する可能性がある場合は男女ともに避妊を確実に行う必要があります。中国の臨床試験登録サイト「Chinese Clinical Trial Registry(ChiCTR)」によると、中国では2月28日時点でCOVID-19に対するアビガンの臨床試験が4本進行中です。 ●その他 これら3つの薬剤以外では、米リジェネロン・ファーマシューティカルズがCOVID-19に対する抗体医薬の開発に向けて米国保健福祉省(HHS)と提携。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、中国の医療機関からの要請に応じて抗HIV薬「プレジコビックス」(ダルナビル/コビシスタット)を提供し、同薬を使った臨床試験が行われています。CrinicalTrials.govやChiCTRによると、抗マラリア薬のクロロキンや抗ウイルス薬のインターフェロン、抗インフルエンザウイルス薬の「タミフル」(オセルタミビル)や「ゾフルーザ」(バロキサビル)などが、中国でCOVID-19を対象とした臨床試験が行われています(2月28日時点)。 ●ワクチン COVID-19を予防するワクチンの臨床試験も近く始まる見通しです。米バイオベンチャーのモデルナは2月24日、開発中のコロナウイルスに対するワクチン「mRNA-1273」の治験薬を初めて出荷したと発表しました。米NIAIDが近くP1試験を始める予定です。CrinicalTrials.govに登録されている情報によると、mRNA-1237のP1試験は18~55歳の健康な男女45人を対象に実施。ワクチンを4週間隔で2回投与し、安全性と免疫原性を評価します。新型コロナウイルスに対するワクチンの開発をめぐっては、ノルウェーに本部を置く「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」が、▽米イノビオ▽豪クイーンズランド大▽モデルナ・NIADI▽独キュアバック――とパートナーシップを締結。英グラクソ・スミスクラインはアジュバント技術の提供でCEPIの開発プログラムに協力しています。仏サノフィとJ&Jは、米HHS傘下の米国生物医学先端研究開発局(BARDA)と協力してワクチン開発を進めると発表しました。日本企業では、アイロムグループ子会社のIDファーマが、復旦大付属上海公衆衛生臨床センターとワクチンの共同開発で合意。両者はセンダイウイルスベクターを使った結核ワクチンを共同開発しており、その経験を生かして新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を目指すといいます。 *11-2:https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/050900160/ (日経BP 2016.5.10) 18種の毒ヘビに有効、画期的な血清製造法を開発、アジアの毒ヘビからアフリカの種の血清も!年間9万人超を救えるか 毎年、全世界で9万4000人もの人々が毒ヘビに咬まれて命を落としている。死者数が特に多い地域は、南アジアとサハラ以南のアフリカだ。彼らの命を救えないのは、抗ヘビ毒の血清が手に入りにくいからだ。ヘビ毒は複数の種類のタンパク質からなり、ヘビの種類によって成分や構成が異なる。そのためかなり最近まで、毒ヘビに咬まれたら、その種類のヘビの毒にだけ効く専用の抗毒血清で治療するのが最善とされてきた。だが、それには約600種の毒ヘビのうち、どれに咬まれたのか正確に分かる必要があるうえ、各種のヘビ毒に効く血清を備蓄しておくコストもかかる。また、アフリカには複数種のクサリヘビやコブラの毒に効く抗毒血清があり、現在はそれを使った治療が最も有効だ。しかし、報道によると、この血清の備蓄は2016年6月にも枯渇するという。血清の大半を製造していたフランスの製薬会社が、利益の出ない血清の生産をやめてしまったからである。このたび、タイの科学者たちが、アジアとアフリカの18種のヘビの毒に効く抗毒血清を作る方法を発見したと、いわゆる「顧みられない熱帯病(neglected tropical disease)」の研究を扱う科学誌『PLOS Neglected Tropical Diseases』に研究成果を発表した。研究チームは、自分たちの血清は従来のものより安く、より広い範囲のヘビ毒に効果があるので、血清を最も必要とする貧しい地域にも供給できると主張している。 ●ヘビ毒をろ過して濃度を高める タイ、バンコクのチュラポーン研究所のカヴィ・ラタナバナンクーン氏は、ヘビ毒の恐ろしさを何度もじかに経験している。「私はこれまでに15匹の犬を飼いましたが、そのうちの5匹がコブラに咬まれて死んでいます」と彼は言う。「自宅の庭に体長1.5mのコブラが現れることもあります。私たちにとって、毒ヘビは身近な問題なのです」。より多くの種類のヘビ毒に効く血清を開発するため、ラタナバナンクーン氏の研究チームは、アジアの主要な毒ヘビである4種のコブラと2種のアマガサヘビから12種類のヘビ毒のサンプルを採取した。なかでもアマガサヘビ(Bungarus multicinctus)は手に入りにくかったので、野生のヘビを1匹100ドルで買い取るという口コミを広めて入手したという。捕獲されたヘビは、タイ赤十字社が運営するスネークファームが保護して、研究チームのために毒を採取した。抗ヘビ毒血清の一般的な作製法では、致死量に満たないヘビ毒を天然のままの状態でウマに注射し、できてきた抗体を回収する。けれども今回の研究では、12種類のサンプルのうち9種類を「超ろ過」して最も致死性の高い毒性タンパク質を取り出し、ろ過できるだけの量がなかった残りの3種類のヘビ毒と一緒に投与した。研究チームは、毒以外の成分を減らし、ヘビ毒の最も重要なタンパク質の濃度をあげることで、複数のヘビ毒に効く抗体の多い血清を一度に作れると考えたのだ。彼らの論文によると、こうして得られた血清を、ヘビ毒を注射したマウスに注射したところ、そのすべてが回復したという。さらに、この血清は、研究に用いた6種のヘビの毒だけでなく、類縁種の12種のヘビの毒にも効果があることが明らかになった。ラタナバナンクーン氏が特に驚いたのは、この血清が、アフリカのエジプトとカメルーン原産のヘビの毒にも効いたことだった。これらはいずれもコブラの仲間なので、毒素も似ているせいかもしれない。研究チームは、この方法で、アジアとアフリカのコブラ科のすべてのヘビの毒に効く血清を作れるようになるだろうと考えている。 ●「特許を取得する予定はありません」 米アリゾナ大学VIPER研究所のレスリー・ボイヤー所長は、実験で作られた抗体の数は、血清の有効性の指標となるもので、なかなか立派な数字であるが、他の開発中の抗毒血清に比べて特に多くはないと言う。また、ラタナバナンクーン氏らの研究が小規模で、新しい血清による治療の結果を、伝統的な専用の血清による治療の結果と直接比較していない点は問題だと指摘する。けれども彼女は、この研究は原理を証明したよい実験であり、ハイテク技術を駆使して合成抗毒血清を開発しようとする取り組みに比べると泥臭いが、より実用的なアプローチであるかもしれないと言う。「私自身は、彼らの方法は好きですね。アジアの小さな国々では、めずらしいヘビによる咬傷を治療する方法がなくて困っていると聞きます。ラタナバナンクーン氏らの血清が実用化されれば、こうした国々の公衆衛生は大幅に向上するでしょう」とボイヤー氏。彼女は、タイの研究チームが、もっと多くの研究資金を獲得して、より大規模な比較対照試験を実施できるようになることを願っている。動物を使っての試験が終わったら、今度はヒトでの臨床試験だ。研究チームは、自分たちのマルチ血清を市販するときには、手頃な価格で容易に入手できるようにするつもりだと強調する。ラタナバナンクーン氏は言う。「製造プロセスは非常に簡単なので、特許を取得する予定はありません」 *11-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2020030402000175.html (東京新聞社説 2020年3月4日) 新型コロナ 特措法の検討は慎重に 安倍晋三首相は、新型コロナウイルス対策に立法措置を表明した。事態悪化を想定した対応は重要だが、目指す法整備は政府などの権限を強めるものだ。必要な対応なのか慎重な検討が求められる。首相が唐突に表明したイベントの自粛や小中高校の一斉休校の要請に法的な強制力はない。そこに批判があったことも要因なのだろう。法整備を言い出している。感染症の封じ込めにはあらゆる対策を取りたいが、政府や自治体の権限強化は抑制的であるべきで十分な議論が要る。想定されているのは新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の改正である。今国会での早期の成立を目指している。特措法は、感染症拡大防止のため企業活動や国民生活を規制する法律で、二〇〇九年の新型インフルエンザの流行を機に検討が始まり一二年に成立した。鳥インフルエンザが発生し、深刻な被害を招く新型インフルエンザに変異して人から人への感染が懸念された一三年に施行された。特措法では重大な被害の恐れがある新型インフルエンザが国内で発生、急速なまん延の恐れがあると政府が判断した場合、緊急事態を宣言する。自治体はあらかじめ定めた計画に沿って対応する。懸念されるのは国民の私権を制限する権限が知事などにあることだ。不要不急の外出の自粛を要請できる。劇場、学校などの使用制限を管理者に要請し、従わなければ指示できる。集会や移動の自由が大きく制限されかねない。土地や建物を借りて臨時の医療施設を設置できるが、所有者の同意がなくても強制使用できる。新型インフルエンザ被害が深刻な場合、国内死亡者は十七万~六十四万人と想定されている。それでも当時、日弁連などから規制は人権が侵害されかねないとの批判が出た。新型コロナウイルスもどんな被害を及ぼすのか不明な点は多い。だが、首相は一斉休校が必要だと判断した根拠を示していない。専門家の意見も聞いていなかった。独断で決める姿勢では「有事」を理由に過剰な制限を求められる不安は消えない。一斉休校の要請に際し文部科学省や厚生労働省との連携が不十分で学校や保育所、雇用などへの支援が後手に回っている。政府はまず政府内の連携を密にし、国民が自主的に判断できるよう正確な情報発信を心掛けるべきだ。現状でもすべきことはある。 <厚労省や保健所が積極的に検査をしなかった理由は・・> PS(2020年3月5日追加):先進国であり、国民皆保険制度を持つ国である日本で、*12-1のように、医師が必要と判断しても保健所が認めずPCR検査を実施できなかった例が全国で30件以上あり、大半が理由不明であるというのは問題だ。保健所が認めなかった理由は「重症でない(5件)」「濃厚接触者でない(1件)」「理由不明(残り)」だが、民間検査会社が参入すれば対応可能件数は増えるため、このようなことが起こった理由を考える必要がある。ただし、保険適用した後の自費負担分まで公費で補填する必要はないと思う。 このような中、2020年2月28日、日経新聞が、*12-2の「①中小企業の健康保険料の地域差が拡大している」「②格差を縮める措置が2019年度で終わり、労使折半の保険料の負担は企業で年数百万円、個人で年数万円の差になる」「③医療費がかさみ保険料が高い地域は、医療の効率を高める努力を一段と迫られる」「④保険料率が高い地域ではその分、企業の投資や個人消費に回らなくなり、地域経済にマイナス」「⑤高齢化が進む中で医療費を抑えるには、医療費がかさみやすい生活習慣病の予防などが欠かせない」という記事を掲載した。しかし、①は真実だが、これまでの国家による資本投資額の地域差、それによるサラリーマンと自営業者の比率差、高齢者と生産年齢人口の比率差などがあるため、健康保険料を県単位で決め、②のように格差を縮める措置を2019年度で辞める制度にしたこと自体が間違っているのだ。従って、③の「保険料が高い地域は医療の効率が悪い」と言うのは何も考えていない単純さがある。また、④は日本全国で保険料を同じにすることや(長くは書かないが)治療の効率化・言い値での薬価支払いを見直すことで医療保険を無駄遣いしないように厚労省が努力するのが筋である。さらに、⑤の生活習慣病の予防はもちろん重要だが、どんなに生活習慣病を予防しても生物である以上は必ず死ぬため、高齢になれば何らかの病気をもつ人が増えるのは当然なのだ。 このような中、*12-3・*12-4のように、厚労省が都内で開いた社会保障審議会の医療保険部会で、「⑥現役世代の重荷になるため、75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担を原則2割に引き上げる」ための議論が交わされたそうだ。私は、本当に現役並み所得(その金額が問題)があるのなら3割自己負担にしてもよいと思うが、高額療養費制度で月毎の自己負担に低い上限を設けて低所得になっても医療費を払えることを徹底しなければ、日本は高齢者になると病気をしても検査も治療も受けられないとんでもない国になると考える。さらに、「高齢者が増え続ける中、負担の仕組みを変えない限り現役世代の過度な負担になる」というのは、世代毎の疾病罹患率は違うのに、罹患率の低い若い世代のみを企業の健康保険制度に入れ、罹患率が上がった定年後の世代は国民健康保険に入れ、75歳を過ぎると高齢者医療制度に入れる仕組み自体が保険の仕組みから外れているのだ。つまり、リスクの低い時に保険料を支払った場所でリスクが高くなった後もケアしなければ保険として成立せず、リスクの高い高齢者だけをケアする保険が赤字になるのは当たり前なのである。また、後期高齢者医療制度なら1割負担の人の医療費の半分は公費で賄われるが、3割負担の人の医療費は公費負担がなく現役世代の保険料で賄うため、3割負担の人が増えれば現役世代の負担が増えるなどとみみっちいことを言っているが、3割負担できるほどの所得は健康でなければ稼得できないし、働いている方が健康でもいられるのである。 このように、厚労省はじめ厚生労働族の議員は、複雑なだけで理論的でない医療保険制度を作っておきながら高齢者を邪魔者扱いしているため、高齢者を狙い撃ちするウイルスなどは非常に都合がよく、検査や治療もしたくないのではないかと推測する次第である。 *12-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14390352.html (朝日新聞 2020年3月5日) PCR検査、保健所「認めず」30件 大半は理由不明 新型コロナ 新型コロナウイルスの感染を判定するPCR検査をめぐり、日本医師会は4日の記者会見で、医師が必要と判断しても保健所が認めずに検査を実施できなかった例が全国で30件あまり確認されたと明らかにした。集計途中といい、13日以降に最終結果をまとめる。新型コロナウイルスのPCR検査は現在、感染症法に基づく「行政検査」とされ、保健所が認めないと実施できない。日本医師会によると、保健所が認めなかった理由は「重症ではない」が5件、「濃厚接触者ではない」が1件などで、大半は理由が不明という。厚生労働省は行政検査は続ける一方で、保険を適用して保健所を介さない検査も始める方針。保険適用で民間検査会社の参入が進めば、対応件数が増える可能性がある。厚労省は当初5日に適用する方針だったが調整に時間がかかり、6日に適用すると発表した。 *12-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200228&ng=DGKKZO56123960X20C20A2MM8000 (日経新聞 2020.2.28) 健康保険料 広がる地域差 中小従業員、年数万円 地方経済に影響も 中小企業が加入する健康保険で、保険料の地域差が拡大している。2020年度は最も高い佐賀県が10.73%で、最も低い新潟県より1.15ポイント高くなる。格差を縮める措置が19年度で終わり、労使折半の保険料の負担は企業で年数百万円、個人では年数万円の差になる。医療費がかさみ保険料が高い地域は、医療の効率を高める努力を一段と迫られる。主に中小企業を対象とする全国健康保険協会(協会けんぽ)が20年度の保険料率を決めた。全国平均の料率は12年度以降、10.0%を保っているが、実際の料率は都道府県ごとに異なる。加入者1人あたりの医療費が多いほど料率が高くなる。最も高い県と低い県の料率をみると、20年度の差は6年前の4倍近くに広がる。協会けんぽ佐賀支部の試算によると、従業員300人で平均の標準報酬月額が30万円の企業の場合、企業の負担は最も料率が低い新潟県と比べて年621万円多い。従業員も同額を負担するため、1人あたりの収入は年2万円超少なくなる。佐賀支部は「企業の存続にかかわる重大事」として、格差が広がりにくい仕組みを求めている。保険料が高いと企業と個人の負担が増す。大和総研の神田慶司氏は「保険料率が高い地域ではその分、企業の投資や個人消費に回らなくなり、地域経済にマイナスだ」と指摘する。高齢化が進む中で医療費を抑えるには、医療費がかさみやすい生活習慣病の予防などが欠かせない。20年度の保険料率が最も低い新潟県は、生活習慣病を予防するための健診の受診率が高い。実施体制を備えた健診機関と協力して事業所に受診を呼びかけている。都道府県ごとに保険料率を定めるのは、地域ごとに医療費の抑制を促すためだ。協会けんぽは09年度に全国一律から都道府県別の料率に切り替え、格差が急に広がらないよう経過措置を講じてきた。それが徐々に縮小されて19年度で終わり、20年度は一段と格差が広がることになった。企業は赤字なら法人税の負担はなくなるが、社会保険料は業績にかかわらず払う。協会けんぽの料率には65歳以上の高齢者医療制度を支えるための「仕送り分」を含む。19年度は1.73%の介護保険料、18.3%の厚生年金保険料を加え、中小企業の社会保険料は平均で計30.03%となった。 *12-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200228&ng=DGKKZO56129440X20C20A2EE8000 (日経新聞 2020.2.28) 窓口負担のゆくえ(下) 高齢者「2割」 どこまで 現役世代の重荷を左右 「原則2割負担にすることが必要ではないか。対象を絞ると効果が限定的になる」。厚生労働省が27日、都内で開いた社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の医療保険部会。75歳以上の高齢者の医療費の窓口負担の引き上げを巡って議論が交わされた。現役世代が公的医療で支払う窓口負担は診察でかかった医療費の3割。ただ75歳以上の高齢者は原則として1割で、現役並み所得のある人のみが3割を負担している。政府の全世代型社会保障検討会議が2019年12月にまとめた中間報告では「22年度までに、75歳以上であっても一定所得以上なら負担割合を2割とする」と明記した。これを受け、厚労省では2割負担とする人の所得水準を線引きする議論を進めている。年40兆円を超す医療費の財源は、主に現役世代が払い込む保険料が49.4%、税金などの公費が38.4%だ。患者負担は11.6%。重い病気やけがをした人の負担を抑えるために月ごとの自己負担に上限を設ける高額療養費制度があるため、窓口負担割合が原則3割でも全体でみると低い水準に抑えられている。国際的に見ると、日本の医療の自己負担は比較的軽い。経済協力開発機構(OECD)によると、家計の最終消費支出に占める医療費負担の割合は2.6%でOECD平均(3.3%)を下回っている。一方、医療支出に税や保険料といった公的な財源が占める割合は84%で加盟国で3番目に高い。医療費は高齢になるほど高くなる傾向にある。高齢者が増え続けるなかで負担の仕組みを変えない限り、現役世代が支払う保険料や税金を上げ続けるしかない。実際、大企業の社員が入る健康保険組合の平均保険料率は上昇する一方だ。19年度は9.2%(これを労使折半)で、22年度には9.8%になると見込む。75歳以上の負担割合に新たに2割の区分を設けるのは、こうした現役世代の負担増をやわらげる狙いがある。ただし、対象者が少なければ、現役世代が背負う荷を軽くする効果は小さくなる。高齢者の負担を増やす改革が骨抜きになれば、いずれ必要になるのは「給付の抑制」(厚労省幹部)だ。例えば、外来で医療機関を受診する際に一律で数百円を支払う「ワンコイン負担」。全世代型社会保障検討会議で検討されたものの、導入は見送られた。医療費の負担などを定める健康保険法は02年の改正時に「将来にわたって7割の給付を維持する」とする付則をつけた。ワンコインが追加で生じると自己負担が3割を超え、この付則に反することになる。日本医師会などはこれも論拠に定額負担の導入に強く反対してきた。ただし現役世代に過度な負担を求め続ければ、付則を見直し、3割という窓口負担の「上限」を突破せざるを得ない日がやってくる。「上限3割」という医療保険制度の基盤を少しでも長く維持するためにも、高齢者の負担の見直しを着実に進めていく必要がある。奥田宏二、新井惇太郎が担当しました。 *12-4:https://digital.asahi.com/articles/ASN2W7GWCN2WUTFL00W.html (朝日新聞 2020年2月28日) 75歳以上の医療費どうなる 現役世代負担増の可能性も 75歳以上が診療所や病院の窓口で払う、医療費の自己負担割合の引き上げをめぐる具体的な議論が27日、始まった。今は原則1割で一定の所得があれば3割だが、政府は昨年末の全世代型社会保障検討会議の中間報告で、2割の区分を新設する方針を表明。その対象とする所得の線引きだけでなく、3割負担の対象を広げるかも焦点になる。75歳以上は後期高齢者医療制度の対象で、約1700万人いる。現役並みの所得があるとして3割負担になるのは、単身世帯なら年収約383万円以上、課税対象となる所得が145万円以上の場合。政府は、この基準の見直しも検討項目に盛り込んだ。少子高齢化で医療費の増加が課題になる中、自己負担を増やすことで、医療制度を支える現役世代の負担を軽くする狙いがある。ところが27日の社会保障審議会部会では、3割負担の人を増やすと、逆に「現役世代の負担増になりかねない」との指摘が出た。後期高齢者医療制度では、1割負担の人の医療費は半分が公費で賄われる一方、3割負担の人の医療費は公費負担がなく、その分は現役世代の保険料で賄っている。そのため3割負担の人が増えれば、公費負担は軽くなるが、現役世代の負担は増える構図だ。この点をどう考え、実際に所得基準を見直すかが論点になる。一方、新設する2割負担の対象規模をめぐっては、「『原則2割』に」(経済団体)、「乱暴ではないか」(日本医師会)などと意見が割れた。政府内でも、財務省などは「半分以上を2割負担に」との主張が根強いが、厚生労働省は「75歳以上は所得が減り、医療費がかかる。多くの人に2割負担を求めるのは非現実的だ」(幹部)と慎重だ。政府は6月の「骨太の方針」までに具体策を決める。 <クルーズ船による観光は高齢化社会のトレンドなのに・・> PS(2020年3月6日追加): 米大型クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の姉妹船「グランド・プリンセス」に、新型コロナに感染して死亡した高齢男性が乗っていたため、*13-1のように、カリフォルニア州のニューサム知事の要請を受けて沖合に停泊し、検査キットをヘリコプターで運んで船内で数時間のうちに検査を終えたそうだ。日本も乗船者全員を速やかに検査し、結果に応じた対応をとっていれば、船内隔離は成功していたのにと思う。 そのような中、*13-2は「①沖縄ツーリストが観光客減による経営悪化を受け、社員の4割以上に当たる最大250人の計画的休業に踏み切った」「②同社の計画的休業は、新型コロナによる感染拡大が企業経営を直撃し、自助努力だけでは立ち行かない深刻な局面に入ったことを意味する」「③厚労省は雇用調整助成金の特例を感染拡大で売り上げが落ちた企業にも幅広く適用し、イベント自粛で従業員を休ませた場合でも適用するので周知を徹底し経済的停滞感を払拭に努めなければならない」としている。しかし、クルーズ船への対応で「さすが日本の医療は信頼できる」という評判をとっておけば、一時的に沈んだとしても日本の観光産業の今後は明るかったのに、ピンチをチャンスに変える方法も考えずにクルーズ船の入港を拒否し、政府助成に頼ろうとする発想では今後の回復もおぼつかないだろう。 *13-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56464480W0A300C2000000/ (日経新聞 2020/3/6) 米クルーズ船、沖合で乗客乗員の検査開始 キットを空輸 新型コロナウイルスに感染して死亡した高齢男性が搭乗していた米大型クルーズ船「グランド・プリンセス」が5日までに、当初の予定を変更して出港地の米サンフランシスコ沖合まで戻った。男性と同じ時期に乗船していた約20人に感染の兆候がある。同船は港に接岸せず、米当局は検査キットをヘリコプターで運び込んで実態調査を始めた。グランド・プリンセスは米カーニバルが運航し、新型コロナの集団感染が発生して多数の乗客を横浜港で隔離した「ダイヤモンド・プリンセス」の姉妹船に当たる。カーニバルなどによると、死亡した男性は2月にグランド・プリンセスに乗船した。同船は2月下旬に乗客の大半をサンフランシスコで入れ替えてハワイに向かったが、途中で男性の感染と死亡が判明。検査のためにメキシコの手前で引き返し、サンフランシスコに向かっていた。4日に記者会見した米カリフォルニア州のニューサム知事によると、乗客・乗員21人に感染の兆候がある。また、米メディアによると、死亡した男性と同時に搭乗していた約60人が現在も乗船している。5日朝、100人未満を対象に米疾病対策センター(CDC)などが検査を始めた。グランド・プリンセスは当初、サンフランシスコ港に直接戻る予定だったが、ニューサム知事などの要請を受けて沖合に停泊して検査を実施する方針に切り替えた。取材に応じたカリフォルニア州公衆衛生局の担当者によると、空輸したキットを使って船内での検査を数時間で終え、キットをサンフランシスコ郊外の同局の拠点に運んで感染の有無を調べる。米国では、ダイヤモンド・プリンセスの集団感染に対する日本政府の対応を批判する声が出ていた。米ワシントン・ポスト(電子版)によると、米上院が5日に開いた公聴会で米国土安全保障省の幹部は日本の隔離が効果的であれば感染拡大を防げたと発言した。だが、グランド・プリンセスも「洋上隔離」が長期に及べば、同様に問題となる可能性がある。 *13-2:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/542929 (沖縄タイムス社説 2020年3月5日) [新型肺炎 観光直撃]雇用守る有効な対策を 県内旅行業大手の沖縄ツーリスト(OTS)は、観光客減による経営悪化を受け、社員の4割以上に当たる最大250人の計画的休業に踏み切った。観光分野で沖縄経済を支えてきた同社の計画的休業は、新型コロナウイルスによる感染拡大が企業経営を直撃し、もはや自助努力だけでは立ち行かない深刻な局面に入ったことを示している。厚生労働省が休業手当の一部を補助する雇用調整助成金の対象を拡大したことを受けたもので、休業期間中の給与は満額支給するという。OTS以外にも観光関連産業を中心に、従業員の休業を余儀なくされる企業が相次いでいる。沖縄観光は逆風の真っただ中にある。県によると2月時点で、海外と県内を結ぶ航空路線は前年同月比で73便減り、クルーズ船寄港も56隻が中止になった。日韓関係の悪化や香港の情勢不安によるインバウンド(訪日観光客)減少に続き、新型コロナに伴う中国団体客、さらに国内客の旅行マインドの冷え込みで、出口が見えない状況が続いている。影響は旅行業やホテルなどの宿泊施設にとどまらず、観光バス、飲食業や行楽施設など幅広い業界に広がっている。本土では、中国客のキャンセルを受けた老舗旅館、食品製造業者が破綻に追い込まれるケースが出てきている。県内では倒産は発生していないものの、長期化すれば、持ちこたえられない会社も出てくるのではないか。 ■ ■ 体力の弱い中小零細企業や自営業者への支援に猶予はない。厚労省は雇用調整助成金の特例を感染拡大で売り上げが落ちた企業にも幅広く運用。イベントの自粛で従業員を休ませた場合でも適用する。周知を徹底し、経済的停滞感を払拭(ふっしょく)するよう努めなければならない。政府は近く2700億円を超える第2弾となる緊急対応策をまとめる。くらし全般を覆う不安を少しでも解消することが、喫緊の課題だ。自民党がまとめた提言には「コロナ対策特別貸付」の創設、観光業へのクーポンやポイント発行などを通じた支援、休校措置で休業せざるを得なくなった個人事業主や非正規雇用者への支援が盛り込まれている。野党と協力して検討を加速してほしい。感染の抑止と経済対策を両輪として、政府には全力を尽くしてもらいたい。 ■ ■ 沖縄観光コンベンションビューローの委員会は、感染拡大が及ぼす今後3カ月の影響について、入域観光客数が前年同期と比べ152万人減って、県内消費額も1024億円減少すると推計している。現在の状況が続けば、2001年の米同時多発テロ後の被害を上回る。雇用悪化への懸念が高まり、長期的な景気後退への分水嶺(れい)に立っている。目前の危機を直視し、政治主導による踏み込んだ対策が必要だ。取り得る施策を総動員し、乗り越えなければならない。 <休職する保護者の支援範囲について> PS(2020年3月7、8、9、14日追加):*14-1・*14-2に、「①COVID19の拡大による全国一斉休校で、子のために休職する保護者の所得減少を補償するため、正規・非正規を問わず休職した保護者を対象に新助成金制度を創設する」「②従業員を休業させた企業に支払う雇用調整助成金による支援を1月までさかのぼって実施する」「③フリーランス(個人事業主)や自営業者は対象にならないため、怒りの声が上がった」「④仕事を休んだ従業員に給料を全額払った企業を対象に正規、非正規雇用を問わず、1人当たり日額上限8,330円の助成金を払う」「⑤医療態勢を強化する」などが書かれている。 私は、①②③④について、“多様な働き方を後押しする”として、労働基準法や男女雇用機会均等法による最低保障すらされない非正規やフリーランスを増やすことにはずっと反対してきた。しかし、正規雇用の就職先を探してもそういう仕事が見つからないため仕方なく非正規・フリーランスの仕事を選択したのではなく、自分の都合で非正規・フリーランス・自営業などを選択した人は自己責任が当然であり、自ら所得補償保険等に入っておくべきだったのである。そのため、「国の意思決定が科学的根拠もないのに行われ、損失を被ったので損害賠償すべきだ」と考える人は、裁判で争うのが筋であって、他の人が納めた血税の配分をねだるのはおかしい。また、⑤については、徹底して速やかにやるべきで、遅すぎたくらいだ。 なお、*14-3のように、少子化対策・生産性向上・地方活性化の三つの課題を中心にこれまでの対応策などを検証して骨太の方針に反映させるそうだが、生産性の向上には人材の質の向上(≒教育+On the job training)が重要な役割を果たすため、“少子化対策”は単に出生数を増やすために金をばら撒けばよいわけではない。また、地方活性化には、産業構造を見据えた効果的な地方への投資が不可欠である。 *14-4は、新型コロナ対策で公立小中学校が一斉休校となったことに関して、「⑥休校2週間をどう過ごすのか」「⑦保護者からストレスをため込むことを心配する声」「⑧図書館は席に着いての読書や学習などは控えるよう呼び掛けている」「⑨学習塾も休校期間中は在宅学習」「⑩体を動かさないから寝付きが悪い」「⑪休校期間の基本は自宅で過ごすを守ってもらう」と記載しているが、⑥⑦については、前の学年で使った主要科目の教科書を通しで読んで理解し、時間が余ったら次の学年で学習する主要科目の教科書を予習しておくのがよく、私は、春休みにはそうしていた。そうすれば、前の学年で学んだことを理解した上で次の学年に進むことができるからだ。⑧⑨⑪は、自宅の環境によるので、自宅で落ち着いて勉強や読書ができる人はそうすればよいが、自宅では落ち着かない家庭は臨機応変にするしかない。⑩については、頭を使うこともエネルギーを使うため、勉強や読書をすれば眠れる筈だ。ただ、運動も大切なので、家の手伝いをしたり、犬を散歩に連れて行ったり、学校に行って鉄棒の練習をしたり、走ったりすればよく、遊ぶことだけが運動ではないので、子どもを甘やかしすぎるのはむしろよくない。それどころか、勉強もさせずに子どもを甘やかしていると、科学的思考もできず、高齢者への思いやりもない自己中の人間になるため、親の顔が見たいような人間に育てないよう注意すべきだ。 *14-5のように、高校で文理をコース分けして数Ⅲ(微分・積分)を学ばない人を80%近く作ることや大学で理・工・農・医・薬学などを専攻する理系学生の割合が全体の約26%にすぎないことは、論理的・科学的思考力に欠ける人材を数多く作り、労働生産性低迷の要因になっている。実は、経済学も行動学・微分・積分・統計学を通じてミクロとマクロが繋がっているのだが、ミクロとマクロは別物だと断じる経済学者は多く、誤った経済政策の温床となっている。そのため、「⑫高校段階での文理コース分けを止めて全ての生徒が数Ⅲまで学べようにすること」「⑬(殆どの人が高校を卒業する時代に合わせて)初等~中等教育のカリキュラムを合理化し、数Ⅲまで十分に学べるようにすること」「⑭初等・中等教育段階から理数系学問の面白さを生徒に伝えられるようにすること」は必要不可欠である。 PCR検査力には問題がなかったのに新型コロナに対する日本の検査数が海外と比較して少ない理由を、日経新聞が2020年3月12日、*14-6のように、「⑮早期発見できても早期治療に繋がらないから」「⑯病気の特徴や広がりなどの感染の全体像をつかむ積極的疫学調査で患者を検査して治療する医療行為ではなかったから」「⑰公衆衛生の発想は感染防止策を探るなど病気から社会全体を守ることで、ロシュの検査キットを使って国内の民間会社が検査をし出すと性能のばらつきで疫学調査に最も大切なデータの収集が難しくなるから」などと記載していた。しかし、新型コロナの治療法の候補も多くなっているため、⑮は誤りだし、疫学調査はサンプル調査で全体を推計することが可能なため、⑯のように国立感染症研究所が積極的疫学調査をしているからといって、国内の民間検査会社がロシュの検査キットを使ってPCR検査をやってはならない理由にはならない。むしろ、多く検査した方が重症化率・死亡率が正確に出る上、治療法も考えやすいのだ。さらに、⑰の「公衆衛生の発想は感染防止策を探るなど病気から社会全体を守ることで、一人一人の患者を治療することではない」というのも、学問の自由から公衆衛生もいろいろな調査をすることができるため、決めつけである。例えば、日本公衆衛生雑誌の2020年2月号には、「要支援高齢者のフレイルと近隣住民ボランティアのソーシャル・キャピタルの関連」「幼児を持つ親の家族のエンパワメント尺度の開発」「高齢者の自立喪失に及ぼす生活習慣病、機能的健康の関連因子の影響:草津町研究」等の論文が掲載されており、治療や予防のために研究をするのであって、研究のために治療を犠牲にするという発想はない。つまり、⑮⑯⑰は、陸軍病院が発祥の国立感染症研究所と厚労省の主張であり、公衆衛生一般の発想ではない。そのため、(たぶん文系の)新聞記者も、分野によって担当を分けて日本公衆衛生雑誌くらいの科学誌は普段から読んでおいて記事を書かなければ、誤った記事を書いて有害無益になるのである。 *14-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/588268/ (西日本新聞 2020/3/1) 安倍首相、休職保護者の所得補償を表明 新型肺炎対策第2弾策定へ 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)拡大を受け、安倍晋三首相は29日、首相官邸で初めて記者会見した。全国の小中高校、特別支援学校に一斉の臨時休校を要請したことに理解を求め、子どものために休職する保護者の所得減少を補償する新たな助成金制度の創設を表明。従業員を休業させた企業に支払う雇用調整助成金による支援を、特例的に1月までさかのぼって実施するとした。首相は、卒業や進学、進級の節目を控えた時期に一斉休校を要請したのは「断腸の思い」と発言。発表が唐突すぎるとの指摘が出ていることに対し、「十分な説明がなかったのはその通りだが、責任ある立場として判断をしなければならず、時間をかけているいとまはなかった。どうか理解をいただきたい」と述べた。新型肺炎の現状については、専門家の見解を基に「今からの2週間程度、感染拡大を防止するため、あらゆる手を尽くすべきだと判断した」と説明。正規、非正規を問わず休職した保護者を対象にする新助成金制度をはじめ、本年度の予備費を活用した緊急対策の第2弾を今後、10日間程度でまとめる考えを示した。医療態勢の強化では、3月の第1週中にウイルス検査に医療保険を適用するとともに、時間を15分程度に短縮できる新たな簡易検査機器を月内に導入する見通しを明らかにした。新型肺炎にも一定の有効性が認められている新型インフルエンザ治療薬「アビガン」など三つの薬を使用し、治療薬の早期開発につなげていくとした。終息に向け一刻も早い立法措置が必要とし、野党にも協力を依頼したいと話した。今夏の東京五輪・パラリンピックを予定通り行うかを問われ、「アスリートや観客にとって安全、安心な大会となるよう万全の準備を整えていく」と答えた。首相は「道のりは予断を許さない。大変な苦労を国民の皆さまにおかけするが、お一人お一人の協力を深く深くお願いする」と頭を下げた。 *14-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14390313.html (朝日新聞 2020年3月5日) 休業へ助成なし、フリーランス悲鳴 多様な働き方推進、政権の姿勢と矛盾 新型コロナ 安倍政権が打ち出した新型コロナウイルスの感染対策に対し、企業に雇われずに働くフリーランス(個人事業主)が怒りの声を上げている。政権は臨時休校に伴って仕事を休んだ保護者の支援策を発表したが、フリーランスは対象にならなかった。「多様な働き方」を推進する政権はフリーランスを保護する姿勢を示してきたにもかかわらず、矛盾する対応に与党内からも見直しを求める声が出ている。校正の仕事を自宅で請け負う埼玉県の女性(41)は頭を抱える。安倍晋三首相が突然表明した「全国一斉休校」の要請で小学5年、2年の男児の世話に追われ、仕事に専念できなくなったからだ。毎月8万円ほどの収入が欠かせないが、「今月は稼げそうにない。4月も引き続き一斉休校なんてことにならないか不安です」。厚生労働省は2日、仕事を休んだ従業員に給料を全額払った企業を対象に正規、非正規雇用を問わず、1人当たり日額上限8330円の助成金を出す新制度を発表した。だが、フリーランスや自営業者が対象外とされたことに、女性は「納得できない」と憤る。「自営やフリーは自己責任なのか。国は多様な働き方を後押しするなら、多様なセーフティーネットも用意するべきだ」と訴える。カメラマンや編集者、俳優などフリーランスの働き手は国内300万人超とされる。だが、労働法制は会社と雇用契約を結んだ働き手を前提とするため、フリーランスはしばしばその網からこぼれ落ちてしまう。加藤勝信厚労相は参院予算委で「フリーランスの仕事は多様で、このスキーム(枠組み)を適用することは非常に難しい」と答弁。安倍首相は「その声をうかがう仕組みを作り、強力な資金繰り支援をはじめ対策を考えたい」と述べた。政府が想定するのは、5千億円の緊急貸し付け・保証枠の活用だが、これは訪日中国人客らの激減などで打撃を受けた観光産業などの支援を念頭に置く。あくまでも返済が必要な「融資」であり、金融機関の審査も受ける。政府の対応に与党内からも不満が出ている。公明党の斉藤鉄夫幹事長は4日、菅義偉官房長官と面会し、「フリーランスは資金繰り(支援)ではとても持たない」などとして対応を求めた。斉藤氏によると、菅氏は「踏み込んでやる」と答えたという。法政大の浜村彰教授(労働法)は「現行制度の枠組みでは、フリーの人たちに救いの手を差し伸べるのは難しい。セーフティーネットを整えないまま、こうした働き方を政策として進めていいのかという問題が提起されている」と指摘した。 *14-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14390354.html (朝日新聞 2020年3月5日) 少子化対策を検証へ 内閣府は4日、西村康稔経済再生相が主宰する有識者懇談会「選択する未来2・0」を設置すると発表した。少子化対策と生産性の向上、地方活性化の三つの課題を中心にこれまでの対応策などを検証し、今夏とりまとめる骨太の方針に反映させることを目指す。 *14-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/497485 (佐賀新聞 2020.3.8) <新型コロナ>休校2週間どう過ごす ストレスや運動不足、保護者は心配 新型コロナウイルス対策で佐賀県内の公立小中学校が一斉臨時休校となって5日が過ぎた。放課後児童クラブ(学童保育)を利用しない児童の多くは、家で過ごすことになり、保護者からはストレスをため込むことを心配する声も上がる。学校側は不要な外出は控えるよう求めているが、約2週間に及ぶ「在宅」生活に保護者らは「子どもがかわいそう」「どう過ごせばいいの」と悩ましげだ。県こども未来課によると、県内では通常、小学生の4人に1人が学童保育を利用している。臨時休校中の利用状況は「通常の半分くらい」といい、大半の児童は自宅や親族の家で毎日過ごしていることになる。学童保育の利用が懸念したほど多くない現状に対し、「保護者には臨時休校の目的を理解してもらっている」と同課の担当者。ただ、学童保育の現場の支援員は「家に居ることが飽きた子や友達と会いたい子など、今後は増えるのではないか」とみている。休校中の過ごし方について行政や学校は「大勢が集まる場所への外出は避け、基本的に自宅で過ごす」ことを求めており、学校以外で子どもが多かった場所も軒並み利用を制限している。市町の図書館は本の貸し出しは行うが、席に着いての読書や学習など長時間の滞在は控えるよう呼び掛ける。学習塾も「休校期間中は在宅学習にする」(公文教育研究会)など休講にしている所が多い。6日昼の武雄市の商業施設。県外から祖父母の所に遊びに来ていた2人の小学生の母親(35)は「昨日までほとんど家にいて体を動かさないから寝付きも悪く、『食っちゃ寝』の繰り返しで生活のリズムが崩れている。ストレスがたまっているようだし、土日はどこかに連れて行ってあげたい」と話す。小学4年の姪(めい)を連れた伊万里市の女性(51)は「息抜きをさせようと思ってここまでドライブ。何だか子どもがかわいそうで」と同情した。子どものストレス対策について県教委は「配慮が必要な児童生徒への家庭訪問やスクールカウンセラーの派遣など、各現場で個別に対応する」としている。運動や体力づくりも自宅で行うことを求め、休校期間はあくまでも「基本は自宅で過ごす」を守ってもらう考えだ。国立病院機構嬉野医療センター感染対策室の重松孝誠・感染管理認定看護師は「原則は外出しないこと」とした上でこう述べる。「元々、元気に遊んでいた子が1、2週間も家でじっとしていると、免疫力に影響する基礎体力を低下させる心配もある。大人の観察が行き届き、手洗いなどの対策をしっかり行うのであれば、少人数の友達と外で気分転換程度に遊んでもいいのではないか」 *14-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200309&ng=DGKKZO56523740X00C20A3CK8000 (日経新聞 2020.3.9) 高校の文・理コース分け 労働生産性低迷の要因に、関西学院大学長 村田治 数学成績と相関/AI理解に数3必須 村田治・関西学院大学長は、国際学力テストの数学の成績と国の経済成長率や生産性は正の相関関係にあるのに、数学の成績がトップクラスの日本が当てはまらないのは、高校の2、3年で文系・理系に分かれ、数学の学習をやめる生徒が多いからだと指摘する。昨年12月に発表された経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査(PISA2018年)」で、わが国の読解力が参加国・地域の中で15位(OECD加盟国中では11位)に転落したことが大きなニュースになった。読解力のスコアが下がったこと自体は残念であるが、数学や科学のスコアはそれぞれOECD加盟国では1位と2位を維持した。 □ □ □ 読解力、数学、科学の3つのリテラシーの中で、これからの世界において特に重要と考えられるのが数学リテラシーである。昨年3月に経済産業省が発表した報告書「数理資本主義の時代」において、「第4次産業革命を主導し、さらにその限界すら超えて先に進むために、どうしても欠かすことのできない科学が三つある。それは、第一に数学、第二に数学、そして第三に数学である!」とうたわれている。 また、昨年6月に統合イノベーション戦略推進会議の報告書「AI戦略 2019」が発表されたが、人工知能(AI)や情報科学の理解には微分、線型代数、統計学の数学能力が欠かせないといわれている。数学に絞ると、OECD加盟国中で09年は4位、12年は2位、15年は1位、18年も1位とトップクラスにある。この傾向は03年から変わらず、数学の学力は15年間トップクラスを維持している。実は、国際学力テストの数学スコアと経済成長率等の間には正の相関関係が観察されるとの研究成果がある。1980年代以降、経済成長論の分野では人的資本ストックの水準が研究開発やイノベーションを通じて技術進歩を促し、経済成長率や生産性成長率を上昇させられるかどうかという実証研究が盛んに行われた。多くの研究は人的資本の代理変数として教育の量的指標である初等・中等教育から高等教育に至る就学年数を用いたが、必ずしも確定的な実証結果を見いだせずにいた。これに対して、米国の経済学者ハヌシェックらは、教育の質が重要だとしてPISAなどの国際学力テストのスコアを用いて経済成長率等への影響を分析した。その結果、数学や科学の学力が経済成長率や生産性成長率にプラスの影響を与えることを見いだした。この関係を簡単な図で示したのが左図である。図の横軸はOECD主要加盟国の03年のPISA数学スコアの国別平均値を示しており、縦軸は16~18年の労働生産性成長率の3カ年平均値を表している。03年のPISA数学スコアと16~18年の労働生産性成長率の3カ年平均値の関係を見るのは、PISAは15歳(高校1年生)で受けるため、生徒たちが社会に出て活躍するまでのタイムラグを考慮したためである。図からわかるように、数学スコアと労働生産性成長率の間には正の相関が見いだされる。他方、わが国の労働生産性は18年のデータによるとOECD加盟国中21位、16~18年の労働生産性の平均成長率は約0.56%とOECD加盟国中20位である。 □ □ □ このように、わが国の数学の学力はOECD加盟国でトップクラス(03年以降の6回のPISAの数学の平均順位は3位)にありながら、近年の労働生産性、労働生産性成長率は下位に低迷する。これはPISA数学スコアと労働生産性成長率の正の相関関係から、わが国が大きく逸脱していることを意味する。なぜ、わが国はPISAの数学スコアがトップクラスにありながら、労働生産性成長率は下位にあるのだろうか。この謎を解く鍵はPISAの実施年齢にあると考えられる。PISAは高校1年生が対象となる。従って、高校1年生までは、わが国の高校生の数学リテラシーはOECD加盟国でトップクラスであることは間違いない。だが、多くの高校は早ければ2年生、遅くとも3年生になると文系と理系にコースを分ける。13年3月の国立教育政策研究所「中学校・高等学校における理系選択に関する研究最終報告書」によると、高校3年生全体に占める理系コースの比率は約22%である。また、文部科学省の「15年度公立高等学校における教育課程の編成・実施状況調査」によると、数学3を履修している生徒の割合は21.6%にすぎない。さらに19年度「学校基本調査」によると、大学で理学、工学、農学、医・薬学などを専攻する理系学生の割合は全体の約26%である。高校1年生段階まではOECD加盟国でトップクラスの数学リテラシーを誇っていたわが国の高校生は、その後、文系と理系のコース分けによって、80%近くが数学を学ばなくなってしまう。このため、十分な数学リテラシーを伴った人的資本の蓄積が進まず、わが国経済において技術進歩やイノベーションが起こりにくく労働生産性上昇率が鈍化していると推察される。一刻も早く、高校段階での理系と文系のコース別編成を止め、全ての生徒が数学3まで学べようにすべきだと考える。さらに、AIの理解に必要な微分が数学3の範囲であることを考慮すると、現在の高校段階での文理の区別を止めることは喫緊の課題である。そのためには、初等・中等教育段階から数学それ自体の面白さを生徒に伝える工夫も必要となる。 *14-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200312&ng=DGKKZO56692180S0A310C2EA1000 (日経新聞 2020.3.12) 「疫学調査」優先の誤算 、新型コロナ検査数、日本少なく 不安と不満生む 新型コロナウイルスに対する日本の検査数はなぜ海外に比べて少ないのだろう。感染の有無をみるPCRの検査力に問題があったわけではない。厚生労働省が当初、医療行為としてではなく、感染拡大を抑える「疫学調査」と位置づけたからだ。ただ、思うように封じ込めはできず、世界でも感染が拡大。専門家と一般の人々の認識にずれが生じ「過少検査」への不安と不満が生まれた。がんにしろ生活習慣病にしろ、現代医療のイロハは「早期発見」だ。早い段階で診断がつけば治療の選択肢も増え、症状が悪くなったり死に至ったりするリスクは減る。 ●公衆衛生の発想 今回の新型コロナウイルスによる肺炎のように治療薬のない病気だと話は違ってくる。早期発見できても必ずしも「早期治療」にはつながらない。医療としてみれば検査をする意味は薄れる。PCR検査を担ってきた国立感染症研究所は3月1日、脇田隆字所長名で「市民の皆様へ」と題した文書をホームページ上に公表した。「検査数を抑えることで感染者数を少なくみせかけようとしている」という批判に対し、事実誤認だと反論した。この文書に「積極的疫学調査」という医学用語が何度も登場する。厚労省や感染研が検査を慎重に進めた理由を知るキーワードだ。疫学調査とは新しい感染症が発生した際、感染者や濃厚接触者、疑いがある人の健康状態を調べ、病気の特徴や広がりといった感染の全体像をつかむ調査だ。患者一人一人を検査して治療する医療行為ではなく、感染防止策を探るなど病気から社会全体を守る公衆衛生の発想に基づく。だからこそ感染研は必要な試薬や装置を組み合わせて自前で確立した検査手法にこだわった。中国・武漢をはじめ世界に供給していた製薬世界大手ロシュの検査キットを使って国内の民間会社が検査をし出すと、性能のばらつきで疫学調査にとって最も大切なデータの収集が難しくなる。これが検査能力の拡大を阻むボトルネックとなった。「検査漬け」という言葉があるように、日本では誰でも病気になったら医師の判断で血液検査や画像検査を受けられる。国民皆保険なので自己負担も少ない。これほど臨床検査のハードルが低い「検査大国」は珍しい。ウイルスの国内侵入を防ぐ水際対策は不発に終わり、ヒトからヒトへの感染例が続く。日に日に増す不安から、検査慣れした日本社会では、なぜ新型コロナウイルスへのPCR検査が受けられないのかという疑問が、やがて不信、不満へと変わっていった。 ●早く適正検査に 韓国がドライブスルー方式を活用し積極的にPCR検査を実施する様子が伝わると、検査の目的をきちんと伝えてこなかった厚労省や感染研に対し「感染隠し」の疑念が生まれた。政治介入もあったのだろう。厚労省は2月半ば、臨床検査として保険適用にする方向にかじを切らざるを得なくなった。ロシュが供給する試薬は臨床試験を経ていない研究用だが、感染研の手法と同レベルの性能であると「お墨付き」を与えた。3月6日から保険適用が始まった。新型コロナウイルスに対するPCR検査は医療行為の一環の臨床検査となった。しかし当面はかかりつけ医などが血液検査のように民間会社に直接委託するのではなく、全国約860カ所の「帰国者・接触者外来」の医師が検査の必要性を判断しなければならない。新型コロナウイルスに感染しても8割は軽症のまま回復する。肺炎の症状が確認されない段階で多くの人が検査を求めると、今の日本の医療体制では現場が混乱し重症患者への治療に支障をきたすことにもなりかねないとの懸念が医療関係者にはある。ただ早期発見の検査が阻まれる現状のままでは、社会の不安や不満はなかなか消えない。検査が広がり陽性者が早く見つかれば感染拡大を抑える効果も期待できる。未知の感染症に対する検査のあり方に正解はないが、早く過少検査を「適正検査」にしなければならない。 <社会保障のうちの介護保険制度とその財源> PS(2020年3月9、10日追加):*15-1は、「①市区町村の99%が全国共通の要介護度判定を2次審査で変更し、同じ状態でも利用できるサービスが地域で異なる」「②自治体は独自の判断理由を住民に周知しなければ公平性が保てない」「③要介護度を上げる自治体が多く、財政負担が増す方向」「④国の指針は介護の手間を基準とし、病気の重さや同居人の有無を理由に変更はできないとしているが、家族介護が見込めると要介護度を下げる自治体もある」としている。 しかし、*15-2のように、現在の介護保険制度は、65歳以上の第1号被保険者の保険料は所得に応じて市区町村が決め、その保険料は市区町村ごとに異なるため、要介護度判定に市区町村の考えが入るのは当然だ。ただし、40~64歳の第2号被保険者は加入している医療保険の算定方法に基づいて保険料が決まり、16の特定疾病が原因で要支援・要介護となった人にのみ支給される。40歳未満は保険料を納めない代わりに介護も受けられず、40~64歳は保険料は納めるが特定疾病以外では介護を受けられない。そして、65歳以上は所得の割に高い保険料を市区町村に収めながら、介護を受けるとつべこべ言われる。私は、介護保険制度は、複雑なだけで公平・公正でない制度を改め、年齢にかかわらず所得のある人はすべて所得に応じて保険料を支払い、介護が必要な時には遠慮なく介護を受けられる制度にすべきだと思う。そうすれば、出産、病児、障害児のケアなど40歳未満で介護が必要になった人も利用でき、多くの問題が解決する。 にもかかわらず、「介護保険料の負担は重い」などと自己中なことを言う人も多いため、国民負担を増やすことばかり考えるのではなく、*15-3の世界需要の数百年分も存在するレアアースやメタンハイドレートなどの国有鉱物資源を速やかに採掘し、*15-4のような地熱発電所の積極的開発でエネルギー変換を行い、国は税収以外の収入を獲得して国民負担を減らすのがよいと思う。そのため、エネルギーは電力を主とし、*15-5のように、発送電分離を徹底して再エネ発電による電力を集めやすいシステムを早急に作る必要がある。ただし、全国で唯一の公的電力網を作れば、今度はそれが独占や既得権となって進歩が阻害されるため、地方自治体・鉄道会社・ガス会社・通信会社・電力会社などが地下等に電線を整備し、電力や送電に自由競争を導入してエネルギーコストを下げるのが、日本にとって必要不可欠なことである。 昨年10~12月期の国内総生産(GDP)が実質で前期より1.8%(年換算7.1%)減ったのは、*15-6のように、新型コロナウイルスとは全く関係がなく、昨年10月の消費増税で個人消費が減ったからにすぎない。台風被害の影響を書くメディアも多いが、台風被害は有無を言わせず家屋や家電の消費を促すため、これを日本のGDPに取り込めないのは製造業が中国はじめ外国へ移転してしまっているという情けない結果だ。そして、製造業が外国に移転してしまった理由は、人件費の高騰・古い規制や習慣による支配・エネルギーの高止まり等々、産業政策の失敗の結果である。また、そういう将来性の薄い国がいくら金融緩和しても、企業が国内で設備投資を行う理由に乏しいため、国内投資は増えない。そのような中で、天災のように見える新型コロナウイルスは、メディアからそれらの本質的議論を隠した功労者になっている。 ![]() *15-2より (図の説明:左と中央の図のように、介護保険の財源は、被保険者が支払った介護保険料50%、国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%となっている。そして、右図のように、年金生活者の多い65歳以上の1号被保険者が財源の23%を支払っており、40歳未満は全く支払っていない。そのため、40歳未満も保険料を支払って介護保険に加入させるとともに、社会保障には国民負担だけでなく国有財産から得る収入を多く投入して負担を軽くすべきだ) *15-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200307&ng=DGKKZO56519820W0A300C2MM8000 (日経新聞 2020.3.7) 要介護度 ばらつく認定、判定、99%の自治体が変更 独自の裁量 住民に見えず 「全国一律」という介護保険制度の前提が崩れている。サービスを受けたい人の要介護度の認定(総合2面きょうのことば)を巡り、市区町村の99%が全国共通の判定を2次審査で変更。申請件数に占める変更比率は自治体でゼロから41%までばらつきがあることがわかった。同じ身体状態でも利用できるサービスが地域で異なることになる。自治体は独自の判断理由を住民に周知しないと、公平性が保てなくなる。要介護度は介助が必要な度合いに応じ、軽い順に要支援1~2、要介護1~5の7段階。立ち上がるのに支えが要る程度なら要支援1、寝たきりの場合は要介護5に相当する。生活上の自律性や認知機能を問う全国共通の調査票に基づきコンピューターで判定。その後、個別事情を考慮し、医師などで構成する介護認定審査会が決める。審査会で議論する材料は自治体で異なる。要介護度を上げれば、利用できるサービス量や種類は増える。要介護5の場合、介護保険からの支給限度額は月約36万円で要介護1は約17万円。むやみに上げると介護需要が膨らみ、保険財政の負担が増す。不必要に下げれば適切なサービスを利用できない懸念が出る。日本経済新聞は厚生労働省に情報公開請求し、2次審査で判断を変えた比率の自治体別データを入手した。最新の2018年10~11月で100件以上を審査した904市区町村が対象だ。 ●指針から逸脱も 892市区町村が要介護度を変えていた。変更率は平均9.7%。変更率が5%未満の自治体数は3割、10%以上は4割だった。77市区町で20%を超し、ばらつきが大きい。ゼロは12市町。多くの自治体で上げる事例と下げる事例が混在しているが、相対的に上げている自治体が多く、財政負担が増す方向に働いている。国の指針は介護の手間を基準とし、病気の重さや同居人の有無を理由に変更はできないとしている。だが、変更率が高い自治体では指針に合わない事例があった。変更率が35%と3番目に高い東京都国立市は大半が要介護度を引き上げていた。末期がん患者は一律に要介護5とする独自運用があるからだ。高齢者支援課は「容体が急変しても対応できるようにするためだ」という。1次審査より要介護度を引き上げる割合が30%超の自治体は埼玉県三郷市や三重県四日市市など8つ。千葉県銚子市も末期がんは要介護2以上にする慣習があるという。21%で要介護度を下げた埼玉県和光市の審査会委員は「家族介護が見込めると下げる」という。宮崎市や兵庫県西宮市も同居人の有無が影響している可能性があるという。変更率が41%で、下げた割合が33%弱の福岡県みやこ町は「調査票の特記事項にある事情を議論した結果」と述べた。日本介護支援専門員協会の浜田和則副会長は「自治体が独自基準を設けてもおかしくない」と指摘する。認定は市区町村の自治事務だからだ。 ●住む場所が左右 問題は独自基準が明文化されておらず、審査も非公開である点だ。19年に長野市から埼玉県内に移った80代女性は要支援1から要介護1に上がった。親族は「住む場所でこれほど違うのか」と驚いた。NPO法人「となりのかいご」の川内潤代表理事は「独自基準があるなら住民に丁寧に説明すべきだ」と訴える。国は18年度、要介護度を維持・改善した自治体に交付金を手厚く配る制度を設けた。ニッセイ基礎研究所の三原岳主任研究員は「自治体の方針で変わる要介護度を指標にすると、交付金狙いで要介護度を下げようとする地域が出かねない」と語る。 *15-2:https://kaigo.homes.co.jp/manual/insurance/decision/ (LIFULLより抜粋) 介護保険の仕組み、保険料はどうやって決まるのか (1)介護保険の仕組み 介護保険とは、介護を必要とする人が少ない負担で介護サービスを受けられるように、社会全体で支えることを目的とした保険制度です。 *介護保険の対象となる人 40歳以上の健康保険加入者全員が必須で加入(被保険者になる)します。40歳になった月(実際は、40歳の誕生日の前日)から保険料の支払い義務が発生し、それ以降は生涯に渡り保険料を支払うことになります。もし介護サービスが必要な要支援や要介護の認定を受けた場合、被保険者は収入に応じた自己負担割合で、その介護度に応じた介護サービスを受けることができます。ただし、介護保険サービスを利用する人になっても、介護保険料の支払いは続きます。要介護になったからといって、保険料支払いが免除されるというものではありません。介護保険サービスの利用料は、利用する本人は1~3割負担となっており、残りの費用は自治体が支払う形となっています。では、その財源はどのように調達しているのでしょうか。 (2)被保険者には2種類の区分がある 介護保険の加入者は65歳以上の第1号被保険者と、40歳から64歳の第2号被保険者に区分されています。 区分 第1号被保険者 第2号号被保険者 ①年齢 65歳以上の人 40歳以上65歳未満の 公的医療保険加入者 ②介護保険サービスを 要支援・要介護の 16の特定疾病※が原因で 利用できる人 認定を受けた人 要支援・要介護となった人 ③保険料 所得に応じて市区 加入している医療保険の 町村が決める 算定方法に基づいて決まる 第1号被保険者の場合、要介護状態になった理由が何であれ、介護保険サービスを利用できます。それに対して第2号被保険者がサービスを利用できるのは、厚生労働省が定める16種類の特定疾病が要介護状態の原因となった場合に限られます。そのため、たとえば事故などで要介護状態になったとしても、第2号被保険者は介護保険サービスを利用することはできないのです。 ※16の特定疾病とは ・末期がん、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症、後縦靭帯骨化症、骨折を伴う骨粗鬆症、初老期における認知症、パーキンソン病関連疾患、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、早老症、多系統萎縮症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症、脳血管疾患、閉塞性動脈硬化症、慢性閉塞性肺疾患、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症 (3)介護保険料は健康保険料とともに給与天引き 現役世代である第2号被保険者と65歳以上の第1号被保険者では、介護保険料の支払い方法も保険料の計算法も違います。40歳から64歳までのいわゆる現役世代、第2号被保険者の場合は、給料をもらっている人は、健康保険料と一緒に給料から天引きされます。保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同じように、標準報酬月額を使って計算します。 *標準報酬月額とは 毎年4月~6月の給与額を平均し、その平均した額を、標準報酬月額表の等級(報酬額の区分)にあてはめて決めるものです。その等級によって「健康保険料」「介護保険料」「厚生年金保険料」が決まるというわけです。保険料は、その年の9月から翌年の8月まで基本同じ金額を使用します。たとえば、東京都で4月~6月の給与の平均額が40万円だった場合、協会けんぽを例にとると、等級27(厚生年金の等級は24)の39万5,000円~42万5,000円の間に入ります。この範囲にあてはまる人の標準報酬月額は41万円となり、健康保険料と介護保険料をあわせた額は2万3,841.5円と決まります。この標準報酬月額表は、都道府県で異なり、また各健康保険組合でも異なるため、健康保険料・介護保険料・厚生年金の額は、自分がどこに所属しているかで変わります。なお介護保険料は、健康保険料・厚生年金保険料と同様に、原則、被保険者と事業主が同額ずつ負担します。 *自営業の場合は国民健康保険に上乗せして納付 自営業の場合、国民健康保険に加入をしていますので、国民健康保険料に上乗せして納付します。40歳になる年に、介護保険料の上乗せがない金額で先に国民健康保険料の納付金額の通知が届き、介護保険料については別途納付書が届きます。そのため、最初の年は納付を忘れないよう覚えておきましょう。なお、介護保険料の金額は自治体によって多少異なります。 (4)第1号被保険者の保険料は自治体ごとに異なる 65歳以上である第1号被保険者の介護保険料は、自治体ごとに決められています。各自治体は、3年ごとに介護サービスに必要な給付額の見込みを立て、予算を組みます。その予算のうち、国が25%、都道府県と市町村が12.5%ずつ。そして27%が第2号被保険者の保険料、残りの23%が第1号被保険者の納める保険料となっています。 *介護保険料の基準額 全員一律で同じ保険料にしてしまうと、収入によっては負担が大きくなってしまいます。そのため、所得基準を段階に分けて、それぞれの保険料率を掛け合わせて金額を決める定額保険料となっています。この所得段階は国の指針だと0.45倍~1.7倍までの9段階ですが、自治体によってはもっと細かい区分を使用しているところもあります。例えば東京都新宿区の場合では、段階区分は16段階となり、0.4倍~3.7倍まで料率に差をつけて公平性を保っています(※2019年4月1日時点)。第1号被保険者になると、保険料は基本的には年金から天引きされる「特別徴収」となり、年金の支払いにあわせて2カ月ごとに2カ月分が差し引かれます。ただし、年金の額が年額18万円に満たない場合は、「普通徴収」となり、納入書で支払うことになっています。また、第2号被保険者に扶養されているサラリーマンの妻などは、健康保険料を自分で納めていませんので、64歳までは扶養家族として介護保険料も支払っていません。ただし、65歳になり、第1号被保険者に変わるタイミングで、年金から介護保険料が天引きされるようになります。介護保険料は、居住している自治体によって金額が変わります。第2号被保険者の場合、入っている健康保険によっても金額は変わります。また、自分が第1号被保険者なのか、第2号被保険者なのかによって、金額の計算方法も納入の仕方も異なるのです。40歳になるとき、そして65歳になるときは注意が必要です。 監修者:森 裕司 株式会社HOPE代表、介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、障がい支援専門員、医療ソーシャルワーカーを11年間経験後、ケアマネジャーとして相談援助をする傍ら、医療機関でのソーシャルワーカーの教育、医療・介護関連の執筆・監修者としても活動。企業の医療・介護系アドバイザーとしても活躍中。 *15-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO29216170Q8A410C1EA2000/ (日経新聞 2018/4/10)南鳥島のレアアース、世界需要の数百年分、早大・東大などが分析 早稲田大学の高谷雄太郎講師と東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームは、日本の最東端にある南鳥島(東京都)周辺の海底下にあるレアアース(希土類)の資源量が世界の消費量の数百年分に相当する1600万トン超に達することを明らかにした。詳細な資源量を明らかにしたのは初めて。レアアースを効率よく回収する技術も確立した。政府や民間企業と協力して採掘を検討する。レアアースはハイブリッド車や電気自動車、風力発電機などの強力な磁石、発光ダイオード(LED)の蛍光材料といった多くの最先端技術に使われる。だが、中国への依存度が高いのが問題視されてきた。日本の排他的経済水域(EEZ)に眠る資源を取り出すことができれば資源小国から脱却できる可能性がある。研究チームは、南鳥島の南方にある約2500平方キロメートルの海域で海底のサンプルを25カ所で採集し、レアアースの濃度を分析した。その結果、ハイブリッド車などの強力な磁石に使うジスプロシウムは世界需要の730年分、レーザーなどに使うイットリウムは780年分に相当した。研究チームはまたレアアースを効率的に回収する技術も確立した。レアアースを高い濃度で含む生物の歯や骨を構成するリン酸カルシウムに着目。遠心力を使って分離したところ、濃度は2.6倍に高められた。これは中国の陸上にある鉱床の20倍に相当する濃度だ。東大の加藤教授は「経済性が大幅に向上したことで、レアアースの資源開発の実現が視野に入ってきた」と強調する。レアアースを巡っては、日本は大部分を中国からの輸入に依存する。中国は全世界の生産量の約9割を握るため、価格の高騰や供給が不安定になる事態が発生してきた。一方、東大の加藤教授らは2012年に南鳥島周辺でレアアースを大量に含む可能性が高い泥を発見。14年には三井海洋開発、トヨタ自動車などと「レアアース泥開発推進コンソーシアム」を設立し、回収技術の開発に取り組んできた。研究成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)に10日掲載された。 *15-4:https://www.sankei.com/economy/news/150303/ecn1503030022-n1.html (産経新聞 2015.3.3) 日本も見習うべきか 「資源小国」から「地熱大国」へ変貌したアイスランド いまや電力輸出も視野 世界最北の島国アイスランドは、地熱発電所の積極的な開発を続け、エネルギーを化石燃料の輸入に頼る「資源小国」からの脱却を果たした。いまや自国の電力需要は地熱などの再生可能エネルギーだけで賄うことができ、近年は電力の輸出にも関心を寄せる。日本も豊富な地熱資源量を持つとされるが、法規制などが障壁となり、アイスランドのような“地熱大国”への道のりは遠い。 ◇ 首都レイキャビクから東に約20キロ。広大な火山の裾野にある同国最大のヘトリスヘイジ地熱発電所からは、猛烈な勢いで水蒸気がわき上がっていた。同発電所は約30万キロワットの発電と、約13万キロワット相当の熱水供給能力を持つ。同発電所は2006年に、レイキャビク・エナジー社が運転を開始した。同社の担当者は、「地熱はアイスランドの石油だ」とほほえんだ。発電に使用しているタービンは日本製だという。 ◆かつては輸入頼み 人口約32万人のアイスランドは、かつて典型的な資源小国だった。1973年の石油危機を機に、地熱の開発を本格化したのは「国内に石炭や石油などの天然資源がなかった」(グンロイグソン首相)ためだ。 *15-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200309&ng=DGKKZO56477670W0A300C2KE8000 (日経新聞 2020.3.9) 発送電分離の課題(下)系統運用、公的機関へ移行を、伊藤公一朗・シカゴ大学准教授(1982年生まれ。カリフォルニア大バークレー校博士。専門はエネルギー経済学) <ポイント> ○法的分離では公平な送配電線利用は困難 ○地域ごとに送配電会社設けるのは非効率 ○災害や再生エネ見据えた全国系統運用を 欧米諸国は約20年前に発送電分離を終えており、各国の経験やデータ分析結果が蓄積されている。その知見を基に日本政府の計画を検証すると、重大な懸念材料とさらなる改革が必要である点がみえてくる。本稿では、電力網のような公共的インフラ(社会基盤)を運用するうえで重要となる「独立性」と「網羅性」の2つのキーワードを柱に、論点整理と提言をしたい。現在の日本では電柱や電線といった送配電網の系統運用は、大手電力会社が地域独占的に手掛けている。例えばある時間帯に誰に送電線を使わせるか、どんな使用料金を課すか、どこに新規の送電線を引くかという決定は地域独占企業が担っている。だが大手電力会社は発電部門や小売部門も抱えている。そのため自社の利益追求の手段として、新規参入の発電事業者や小売業者が送配電網を利用することを制限したり、送配電網の利用料金を高く設定したりする懸念が生じる。この懸念を払拭するには系統運用の独立性を確保する必要がある。現行の政府案は法的分離と呼ばれる方式だ。大手電力会社は、自社の送配電部門を子会社化し、その子会社は持ち株会社の傘下に置かれる。そのうえで政府は監視と規制により、親会社と子会社の独立性を目指すという。しかし経済理論、各国の経験および学術的データ分析結果に鑑みると、この方法で独立性を確保できる可能性は非常に低い。第1に営利企業である大手電力会社は持ち株会社一体としての利益を追求するため、親会社と子会社のつながりが消える保証はない。第2に政府の監視と規制には「情報の非対称性」の問題がつきまとう。送配電網の運用では運用者しか知り得ない緻密な情報が付随する。また営利企業は情報を政府に示さないインセンティブ(誘因)がある。情報を直接持たない政府が適切な監視・規制をするのは難しく、監視精度を高めようとするほど莫大な税金が投じられることになる。以上の理由から欧米のほぼ全地域で法的分離は採用されていない。世界的な主流は、公的な第三者組織である独立系統運用機関(ISO=Independent System Operator)を設立し、送配電網の系統運用を完全移行する方式だ。大手電力会社には送配電網を運用する組織はなくなり、系統運用は公的組織に任せられる。同方式のもう一つの特徴は、送配電網の所有権は大手電力会社に残したままでもよい点だ。英国は所有分離という最も強い発送電分離を実施し、大手電力会社から送配電網の所有権を奪った。しかし所有分離は財産権を巡る訴訟を生む可能性があり、大手電力会社の財務的ダメージも大きい。そのため送配電網の所有権は大手電力会社に残し、運用だけを独立系統運用機関へ移行する方法が最善との見解が有力になっている。電力網運用でもう一つの重要な要素は網羅性だ。政府案では、法的分離後も10社の送配電会社が各地域の大手電力会社の子会社として存続する。だが国際的には、電力網のような公共的ネットワークを運用する際は狭い地域ごとでなく、広域的運用が望ましいとの見解が一般的だ。実際に欧州、北米、南米では電力網の系統運用統合が進んでいる。日本でも電力網の系統運用を全国的に一括する便益は大きい。第1に東日本大震災や北海道地震などの災害時、電力が過剰な地域から不足地域へスムーズに送電できる。第2に全国的にみて低コストの発電所から優先的に発電させる「広域的メリットオーダー」という方法を採ることで、電力料金を低下させられる。第3に再生可能エネルギー拡大に向けても全国的な電力網の運用が鍵になる。再生エネの弱点は気候条件に左右される発電量の不安定性だ。だが近年のデータ分析結果によれば、地域間で多様な日本の気候条件は発電量の不安定性を是正できる可能性を秘めている。太平洋側で風力が弱いとか、太陽が出ていない場合でも、日本海側では風が吹き太陽が出ている場合がある。そのとき、電力網が広域的に運用されていれば、ある地域で落ちた発電量を別地域からの電力で調整できる。国土が広くない日本で10社もの送配電会社を残すことは合理的ではない。以上のような独立性と網羅性の確保を考えた場合、日本でも公的な独立系統運用機関を設立し、全国的な送配電網を一括して運用することが望ましい。有識者や政府内にもこの認識はあり、電力システム改革の第1段階として電力広域的運営推進機関が2015年に設立された。今のところ同機関の業務の中心は独立系統運用機関が手掛ける業務の一部に限られる。政府はできる限り早い段階で公的な独立系統運用機関を設立し、全国的な送配電網の系統運用を実施すべきだ。政府案では法的分離を進める根拠として、法的分離を採用したフランスの事例を挙げる。だがフランスは実質的国有企業である1社が全国の電力供給網を担っている。従って法的分離で送配電部門が子会社化した際には、国有の1企業が全国の送電網を運用することになり、実質的には公的な独立系統運用機関が設立されたのと近い形態だった。また電力システム改革に反対する意見として、発送電分離を実施すると安定供給が失われる、送電設備への投資が低下する、発電費用が上昇するという論考がある。だがこの主張を裏付ける科学的エビデンス(証拠)は存在しない。拙著「データ分析の力」で解説しているように、これらの主張は相関関係を因果関係と誤って解釈しているものが多く注意が必要だ。例えば発送電分離をした地域としていない地域を単純比較した分析があるが、気候、発電所の形態、燃料費、環境規制など地域間の様々な違いが考慮されておらず、因果関係を示していない。では発送電分離や電力システム改革の効果について因果関係を検証したエビデンスは存在するのか。この20年間、経済学の実証研究と呼ばれる分野では様々なデータ分析を駆使して研究が進んだ。例えばナンシー・ローズ米マサチューセッツ工科大(MIT)教授らの研究グループは、発送電分離を進めたうえで発電部門の総括原価方式を廃止し、卸売市場取引での自由競争を導入すると、発電所の生産効率性が向上し、発電費用が下がることを示した。さらにスティーブ・シカラ米シカゴ大助教授は全米の発電所の毎時発電データと費用データを分析し、発送電分離後の卸売市場を通じた電力取引は高コストの発電所の生産量を減らし、低コストの発電所の生産量を増やすため、社会全体の発電費用も下がることを示した。いずれも国際的学術誌「アメリカン・エコノミック・レビュー」に発表されたもので、慎重に因果関係を検証した分析結果だ。電力システム改革は大きな利害が絡む難しい政治課題だ。だからこそ諸外国の経験や科学的エビデンスを基に政策決定をして、国民全体の便益を主眼とした改革を追求していくべきだ。 *15-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14396623.html (朝日新聞 2020年3月10日) GDP年7.1%減 内閣府が9日発表した昨年10~12月期の国内総生産(GDP)の2次速報は、実質(季節調整値)で前期(7~9月期)より1・8%減った。年率換算では7・1%減。1次速報(年率6・3%減)から下方修正された。マイナス成長は5四半期ぶり。昨年10月の消費増税に加え、台風被害などの影響もあり、個人消費と企業の設備投資が大きく落ち込んだ。減少幅は、前回の増税があった14年4~6月期(年率7・4%減)に近い水準となった。下方修正の主因は設備投資の下ぶれで、1次速報の前期比3・7%減から4・6%減に下方修正された。個人消費は2・9%減から2・8%減に上方修正された。今年1~3月期は新型コロナウイルスの悪影響が強く出るとみられ、国内景気はさらに厳しい局面に入っている。 <東日本大震災からの復興検証←無駄遣いはなかったか> PS(2020年3月10、12、13日追加):*16-1のように、政府は3月10日、東日本大震災とフクイチ事故から9年となるのを前に、復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合を首相官邸で開き、安倍首相が「必要な復興事業を確実に実施するための財源を確保し、被災地が安心して復興に取り組めるようにする」と述べられたそうだが、残っている事業とその予算はいくらだろうか?このような災害は、実際にモノがなくなったり、住めなくなったりしているため、その損害を回復することが重要であって、心のケア(具体的に何?)の問題ではないと、私は考える。また、原発事故については、激烈な毒物を放出したため、廃炉も汚染水対策も困難で、被災者に寄り添うとすれば、「①フレコンバッグは積みっぱなし」「②汚染水を海に放出」「③避難指示を解除したから、住民を呼び戻す」などという選択肢はない。納税者は復興税を黙って支払ってきたので、これまでの復興税の使い方とその効果を開示してもらいたいと思う。 また、前原子力規制委員長の田中俊一氏は、*16-2のように、現在は福島県飯舘村で暮らし、「原発はいずれ消滅します」と言っておられる。ただ、住民が戻らない理由を「避難の長期化で新たな仕事をもった」「子どもの学校の関係」「診療所の問題」「福島県産食品への風評被害」と考えておられるのは、(本当は危険な場所には住みたくないからであるため)甘い。また、「食品規格の国際基準は、一般食品の放射性セシウムの基準値を1キロあたり1000ベクレルと定めているが、日本は原発事故後、より厳しい同100ベクレルとしている」としておられるのは嘘である。何故なら、*16-3のように、食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会の指標は年間1mSVを超えないよう設定されており、日本の食品中の放射性物質の新基準は、食品からの被曝上限を暫定の年間5mSVから年間1mSVに引き下げたものだからだ。つまり、田中氏は、国民の健康に無関心なのだ。 さらに、*16-4のように、東日本大震災の津波で被災した土地に総額4,600億円投じてかさ上げされた土地区画整理事業は、宮城など被災3県で造成された宅地の約35%にあたる約238haが未利用になっているそうだが、岩手県陸前高田市の場合は30mの津波が来たのに10mしかかさ上げしていないため55%の未利用はむしろ少ないくらいなのである。そのほか、宮城県気仙沼市、福島県いわき市などの未利用地も単に時間がかかっただけが理由ではないと思われるため、正確な原因分析が必要だ。 原発は、事故を起こせば猛毒の放射性物質をとてつもなく広い環境にばら撒き、人間が近づいてそれを処理することはできず、事故の可能性を0にすることなど不可能であるため、私がこのブログで記載してきたように、脱原発して再エネに転換するのが、日本にとってあらゆる面で最善の策なのである。しかし、*16-5のように、全原発の即時運転停止を記した「原発ゼロ法案」や「分散型エネルギー利用促進法案」は、(野党が提出したためか)一度も審議されていない。もちろん、原発立地地域は、1974年に制定された電源三法交付金制度によって原発から利益を得ているが、それを負担しているのは国民である上、危険を伴う原発立地地域は人口が全国平均より早く減少し、高齢化率も全国平均より高い。従って、他の産業による地域再生を盛り込んだ「原発ゼロ法案」は、日本全体のみならず原発立地地域にとってもプラスなのであり、原発にすがりついて現状維持を図ることこそ、最も安易で政治の責任を果たさないやり方なのだ。 原発事故で猛毒の放射性物質により汚染された環境には内水面や海も含み、*16-6のように、韓国はじめ各国による水産物の禁輸や規制措置が行われている。韓国の禁輸措置については、日本はWTOに提訴して2019年に敗訴したが、その理由は、安全性の問題を自由貿易とすり替えたことである。しかし、この提訴によって、日本食品の安全性は日本政府によって担保されないことを世界にアピールしたことになり、日本国民も、「協力」や「付き合い」でリスクのある食品を食べさせられては困るのである。そして、これを「不安」「風評」「差別」などと強弁するのは見え透いた逃げ口上にすぎない。そのため、これまで東北沿岸部の経済を支えてきた水産業は、最新の設備を備えた(化石燃料を使わない)船を使って遠洋に出るしかなく、そのためにかかる増加コスト(漁船の新造費、燃料・人件費などの増加コスト)は原発被害として東電か政府に補償してもらうべきだ。また、地球温暖化で海水温が上がれば、従来の魚種を捕獲することができないのは当然で、魚種を変えるか北に移動して漁獲するしかない。さらに、養殖も、汚染が0でないその付近の水や餌を使うと価値がなくなるのである。 ![]() (図の説明:1番左の図のように、福島第一原子力発電所は、もともと周囲と同じような高台だった場所を削って低くして作り、その結果、左から2番目の図のように、津波に襲われた。この時、非常用電源も地下に置いていたため、津波で使えなくなった。つまり、今回の原発事故は、想定を甘くした結果の連続として招かれたため、甘い想定と安全神話による人災なのだ。また、原発事故後は(山林を除いて)除染を行い、右から2番目の図のように、大量の除染土が今でも放置されており、台風時に流された。さらに、大量に出る汚染水は、浄化後もストロンチウム等を含むため安全ではないが、経産省は「トリチウムしか含まないため安全で、薄めて海洋放出するか空中放出するしかない」と言っているのである) *16-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/498155 (佐賀新聞 2020.3.10) 被災地復興へ「財源確保」と首相、大震災9年で政府合同会合 政府は10日、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故から11日で9年となるのを前に、復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合を首相官邸で開いた。安倍晋三首相は「必要な復興事業を確実に実施するための財源を確保し、被災地が安心して復興に取り組めるようにする」と述べた。安倍首相は、被災地の現状について「復興は着実に進展している一方、被災者の心のケアや廃炉・汚染水対策などの課題は残されている」と指摘。2021年度以降5年間で必要となる復興事業の財源を今年夏ごろまでに示す考えを重ねて示した。合同会合では、避難者が震災直後の47万人から今年2月時点で4万8千人まで減少したことや、住宅再建や交通網整備の進捗状況を田中和徳復興相が報告した。田中復興相は記者会見で「現場主義を徹底し、被災者に寄り添いながら全力で復興に取り組む」と述べた。政府は21年度以降の復興政策を定めた法案を今国会に提出しており、早期成立を目指す。法案は、復興庁の設置期限を30年度末まで10年間延長し、引き続き復興相を置く内容。原発事故の影響が続く福島県の支援では、避難指示を解除した地域に住民を呼び込む施策を拡充する。復興推進会議の議長と原子力災害対策本部長は、首相が務めている。 *16-2:https://mainichi.jp/articles/20200306/dde/012/040/020000c (毎日新聞 2020年3月6日) 原発はいずれ消滅します 福島・飯舘村で暮らす、前原子力規制委員長・田中俊一さん 東京電力福島第1原発事故から間もなく9年。あの人は今、何を思っているだろうか。事故後に設置された、原発の安全審査を担う原子力規制委員会の初代委員長、田中俊一さん(75)のことだ。2017年に退任後、「復興アドバイザー」として暮らす福島県飯舘村を訪ねた。飯舘村を南北に走る国道399号から細い山道を上っていくと、田中さんが1人で暮らす木造平屋建ての一軒家があった。前日降った雪がうっすらと積もっている。「今年は降ってもすぐに解けます。暖冬の影響ですね。ここで暮らして3度目の冬ですが、過去2年は雪が一度積もったら春まで残っていた」。村が所有するこの家を賃借したのは、原子力規制委の委員長を退任した3カ月後、17年12月のことである。旧知の菅野典雄村長から「静養にいいですよ」と誘われたのがきっかけだった。「飯舘山荘」と名付けたこの借家と、茨城県ひたちなか市の自宅を行ったり来たり。月の半分は飯舘村で過ごし、無償の復興アドバイザーとして、国と村の橋渡し役になったり、視察に訪れる人たちに村の現状を説明したりしている。「事故後、『原子力ムラ』にいた自分に何ができるかを考え、11年5月に放射線量が非常に高い飯舘村長泥(ながどろ)地区で除染実験を行った。この地区は今も帰還困難区域のまま。事故に向き合う私の原点がこの村にあります」。そんな田中さんに復興の進捗(しんちょく)度を尋ねると、渋い顔になった。「なかなか進みません。少しずつ努力していますが、元々暮らしていた住民の多くが戻ってこない。避難が長期になり、新たな仕事をもったり、子どもの学校の関係があったりして、村外に家を建てた人も多い。特に、若い人は都会志向が強い」。長泥地区を除き村の避難指示が解除されたのは17年春のことだ。震災前の人口は約6200人だが、現在暮らすのは約1400人。震災前、村内の小中学校には約530人が通っていたが、20年度は65人の見通しだ。「避難先の学校に子どもを通わせる親の多くはわざわざ村内の学校に戻らせようとしません。村には診療所が1カ所ありますが、開いているのは週2日。病を抱えている人は戻りにくい」。そして、いまだに続く福島県産食品への風評被害を強調する。食品規格の国際基準では、一般食品の放射性セシウムの基準値を1キロあたり1000ベクレルと定めているが、日本は原発事故後、より厳しい同100ベクレルとしている。「あなたは、あえて厳しく制限している地域のものを食べたいと思いますか? セシウムは検出されないのに『買いたくない』という心理が働き、風評を固定化している。福島県産食品の輸入停止を続ける国がまだあるのはそのためです。現実を無視した前提で決められた現在の基準を見直さなければ、福島の農水産業の復興はできません」。食品の「安心・安全」観に一石を投じる。福島県は郷里でもある。東北大で原子核工学を学び、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)へ。原発事故前は日本原子力学会の会長や、内閣府原子力委員会の委員長代理を務めた。原子力ムラの中枢を歩んできたとの印象だが、本人は傍流だと自嘲する。「私は核燃料サイクルの実現は技術的に無理だと言ってきたので『村八分』の存在です。使用済み核燃料を再処理して高速増殖炉でプルトニウムを増やして、1000年先、2000年先のエネルギー資源を確保しようと言っているのは世界でも日本だけ。安全神話も私は信じていなかった。科学的に『絶対安全』はあり得ない。日本の原子力政策はうそだらけでした」。こんなエピソードがある。原発事故まっただ中の11年3月15日、皇居で当時の天皇、皇后両陛下に原発事故についての解説を求められた。地震の影響で茨城の自宅と東京を結ぶJR常磐線も高速道も不通だった。(以下略) *16-3:https://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/dl/leaflet_120329.pdf#search=%27%E4%B8%80%E8%・・ (食品中の放射性物の新たな基準値) 東京電⼒福島第⼀原⼦⼒発電所の事故後、厚生労働省では、⾷品中の放射性物質の暫定規制値を設定し、原子力災害対策本部の決定に基づき、暫定規制値を超える食品が市場に流通しないよう出荷制限などの措置をとってきました。暫定規制値を下回っている食品は、健康への影響はないと一般的に評価され、安全性は確保されています。しかし、より一層、食品の安全と安心を確保するために、事故後の緊急的な対応としてではなく、長期的な観点から新たな基準値を設定しました(平成24年4月1日から施行)。放射性物質を含む食品からの被ばく線量の上限を、年間5ミリシーベルトから年間1ミリシーベルトに引き下げ、これをもとに放射性セシウムの基準値を設定しました。 ●放射性セシウムの暫定規制値(単位:ベクレル/kg) 食品群 野菜類 穀類 肉・卵・魚 その他 牛乳・乳製品 飲料水 規制値 500 200 200 ●新たな基準 食品群 一般食品 乳児用食品 牛乳 飲料水 規制値 100 50 50 10 ※線量の上限を1ミリシーベルトとした理由 ○食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会の指標が、年間1ミリシーベルトを超えないように設定されていること。 ○多くの食品の放射性物質の濃度が、時間の経過とともに相当程度低下傾向にあること。 ※食品区分の考え方 ○特別な配慮が必要な「飲料水」「乳児用食品」「牛乳」は区分し、それ以外の食品は、個人の食習慣の違い(飲食する食品の偏り)の影響を最小限にするため、一括して「一般食品」と区分しています。(以下略) *16-4:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14396621.html?iref=mor_articlelink02 (朝日新聞 2020年3月10日) (東日本大震災9年)かさ上げ宅地、35%未利用 国交省、検証へ 被災3県 東日本大震災の津波で被災した土地をかさ上げする土地区画整理事業で、宮城など被災3県で造成された宅地の約35%にあたる約238ヘクタールが未利用になっていることが、国土交通省の調査でわかった。東京ドーム約51個分で、国交省は新年度に事業の検証を始める。3県の未利用地の総面積が判明するのは初めて。区画整理事業は、土地をかさ上げして宅地や道路を造り、元の地権者に新たな宅地を割り当てる手法。復興庁によると、岩手、宮城、福島3県の21市町村で実施され、総額4600億円が投じられた。事業は9割以上進み、2020年度末の完成をめざしている。国交省によると、調査は昨年10~11月、21市町村を対象に行い、昨年9月末時点の活用状況を調べた。住宅や店舗などが建設済みや建設中の場合を「利用済み」とした。残りは未利用地となるが、今後利用される予定の土地も含まれる。住宅向けの宅地を整備していない4市町を除く17市町村では、造成済みの674・8ヘクタールのうち、237・9ヘクタールが利用されていなかった。未利用の割合は、岩手県陸前高田市が55%と最多で、次いで宮城県気仙沼市が51%、福島県いわき市が49%だった。未利用地が生まれたのは、地権者の同意やかさ上げに時間がかかり、避難先などでの再建を選んだ人が相次いだためだ。国交省は新年度、有識者らによる検証委員会を立ち上げ、来年3月までに対策をとりまとめる。南海トラフ巨大地震など次の大災害が起きた時に同様の未利用地が発生することを防ぐ。 *16-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202003/CK2020030902000135.html (東京新聞 2020年3月9日) <東日本大震災9年>原発ゼロ法案 2年たなざらし 与党、再生エネも審議応じず 脱原発や再生可能エネルギーの推進を目指して野党が提出した法案が、一度も審議されず最長で二年間取り置かれている。政府・与党も再生エネの普及に言及しているものの、野党提出法案は原発の再稼働を進める安倍政権の姿勢と対立するため、与党が審議に応じないからだ。たなざらしの関連法案は五本。立憲民主、共産などの四党は二〇一八年三月、全原発の即時運転停止を記した「原発ゼロ基本法案」を衆院に提出した。法施行後五年以内の全原発廃炉や電力供給量に占める再生エネの割合を三〇年に40%に上げることを盛り込んだ。翌一九年六月には、再生エネの普及を確実にするため、エネルギーの地産地消を促す「分散型エネルギー利用促進法案」など四法案も追加で提出した。うち三法案には国民民主党も提出に加わった。法案はいずれも衆院経済産業委員会に付託されたが一度も審議されていない。議員立法は政府が提出した法案の後に審議されるのが通例だ。衆院経産委理事の自民党議員は「野党提出法案を、政府提出法案より優先して審議することは難しい」と話す。政府提出法案の審議後でも、多数を占める与党が認めなければ野党提出法案は扱われない。一八年六月に会期が一カ月余延長された際、同委では「原発ゼロ」以外に審議する法案がなかったのに、自民党は委員会開催すら応じなかった。原発を基幹電源とする政権の方針を踏まえたためだ。安倍晋三首相は今国会で「原発ゼロは責任あるエネルギー政策とはいえない。再稼働は原子力規制委員会が認めた原発のみ、地元の理解を得ながら進めていく」と強調した。立民の枝野幸男代表は本紙の取材に「審議する時間は十分にあった。原発事故を経験した国の国会として、あまりに無責任だ」と自民党の対応を批判した。 *16-6:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14399438.html (朝日新聞 2020年3月12日) (東日本大震災9年)海と生きる町、岐路 サンマ大不漁、韓国のホヤ禁輸続く 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城の水産業が岐路に立たされている。全国有数の水揚げ量を誇ってきたが、昨年秋にはサンマの記録的な不漁に見舞われ、韓国によるホヤの禁輸措置も長引く。なりわい再生の中心となる水産加工業も、人手不足や販路喪失に苦しんでいる。「大変な年だった。今までのようには魚がとれなくなっている」。本州一のサンマの水揚げ量を誇る岩手県大船渡市。漁獲から加工・販売まで手がける鎌田水産の鎌田仁社長(46)は話す。保有していたサンマ漁船2隻のうち1隻を震災で焼失したが、その後5隻を新造し事業を拡大してきた。ところが昨年、半世紀ぶりの不漁に直面し、水揚げ量は例年の約3分の1に沈んだ。単価の上昇はあったが、水揚げ金額は3割減。イワシなど他の魚種の扱いを増やして補ったという。全国さんま棒受網漁業協同組合によると、震災前に約20万~30万トンあった全国のサンマ水揚げ量は、直近5年間は10万トン前後に低迷。昨年はさらに4万トンまで落ち込んだ。不漁対策として水産庁は昨年、公海での通年操業を解禁。鎌田水産も9億円を投じて遠方で操業できる漁船を建造中だ。鎌田社長は「サンマをやめる選択肢はない。ただ、他の魚の扱いを増やすとか、柔軟に対応していかないといけない」と話す。全国一の生産量を誇った宮城県のホヤも苦しい。震災前、ホヤは年間約1万5千トンの水揚げがあり、7割を韓国に輸出していた。だが、原発事故の影響で、韓国は2013年から輸入を禁止。日本は世界貿易機関(WTO)に提訴したが昨年敗訴し、韓国による輸入再開の見通しは立っていない。県や漁業者らは首都圏などで消費拡大のキャンペーンを進めてきた。国内消費量は震災前の2倍となる5千トンまで増えたが、それでも消費し切れず、県漁協は16年から3年続けて計1万5千トンを焼却処分した。東京電力からの補償も20年度で終わる。石巻市のホヤ漁師は「出荷先が少ないために生産量を制限し、東電の補償で食いつないでいるようなもの」と話す。 ■水産加工業、人手足りず販路も失う 沿岸部の経済を支える水産加工業は、国が震災後に新設したグループ補助金などを活用して再起を図った。中小企業が工場などを再建する費用の75%を国と県が負担する制度だが、自己負担分を賄うために県の無利子貸付制度を利用した事業者も多い。宮城県石巻市にある水産加工会社は今年2月、事業承継のため同業者に株式譲渡した。震災の翌年、グループ補助金と県の無利子貸付制度を使い、被災した工場を約2億円かけて再建。13年には別の補助金で計6億円かけて本社と新工場を造った。ところが、従業員を募っても復興特需が続く建設業などに流れた。売り上げの7割を占めたイカの不漁に加え、ホヤも韓国の禁輸措置で行き場を失った。売り上げは震災前の半分ほどに低迷し、2年連続の赤字。男性社長(67)は昨年夏、金融機関の支店長にM&A(企業合併・買収)の意向を伝えた。県の貸付金など1億円を超す借金返済が数カ月後から順次始まる予定だった。社長は「人より早く再開すれば客はついてくると思ったが、現実は違った」と振り返る。岩手県宮古市の水産加工会社「須藤水産」は約6億円のグループ補助金を使って冷凍・冷蔵設備を再建したが、全容量の1割の約100トンしか使っていない。昨年、仕入れができたサンマは例年の1割の約400トン。不漁で、仕入れ価格が2倍近くにはね上がったためだ。昨年の売り上げは例年の3割減の約10億円。3年ほど前からコンビニに土地を貸し、賃料収入で売り上げを補う。須藤一保専務(47)は「魚屋だけでやっていくのが難しくなっている」と訴える。福島を含む3県によると、今年1月末現在、グループ補助金を利用した事業者のうち74事業者が倒産しており、業種別では水産加工が3割と最も多い。 ■経営モデル、転換課題 水産加工業は岩手、宮城のなりわい再生の核だ。生鮮冷凍水産物の生産量は宮城が全国3位、岩手が8位(いずれも2018年)と上位に食い込む。食料品製造業に携わる事業所のうち、水産加工業の割合は宮城が45%、岩手も25%を占める。長年、売り上げを支えてきた手法は、近くの港に豊富に水揚げされる魚を安値で大量に仕入れて冷凍。高値になる時期に、大手の流通業者や量販店に販売するものだった。だが、冷凍したり切り身にしたりする程度で加工度は低く、別の地域の事業者でも代替しやすかった。震災で休止している間に、流通業者は海外や国内の別の地域の加工業者と取引を結んでいったという。再開しても、不漁と人手不足で出荷量が安定せず販路を取り戻せていない。国は首都圏などのスーパーや百貨店のバイヤーなどを三陸に招き、100社以上の水産加工業者と引き合わせる商談会の開催を支援。経営コンサルタントによる事業計画見直しや海外輸出の後押しをしてきた。宮城県石巻市の水産加工会社「ヤマナカ」は、19年度から韓国系商社と組み、ホヤを米国のコリアンタウン向けにサンプル供給するほか、ベトナムへの輸出も始めた。だが、震災前のビジネスモデルから転換できた業者は一部にとどまる。福島を含む3県の沿岸37市町村に朝日新聞が行ったアンケートでは、回答があった30市町村のうち、水産加工業の業況が「震災前の水準まで回復していない」と答えた自治体が8割を超えた。東北大地域イノベーション研究センター長の藤本雅彦教授(経営学)は「専門家の助言や事業者同士の連携で、加工度が高く付加価値がある独自商品の開発を、長い時間をかけて進めるべきだ」と指摘。「海外も含めて市場開拓していこうという意欲ある経営者を、育てていく必要がある」と話している。 <日本は、なぜ合理的な判断ができないのか?> PS(2020年3月18日追加):*17-1のように、米国カリフォルニア州の米産地で水をためた冬の水田でサケを育て、3月末に数千のキングサーモンの稚魚を河川に放流して太平洋に向かわせる計画が進んでいるそうだ。日本も一毛作地帯なら冬の水田で何かをできるだろうに、いつまでも工夫がないのは不思議である。さらに、*17-2のように、政府は再エネ普及に使い道が限られている金をフクイチ事故の処理費用にも使えるようにしたいそうだが、(事故を起こした電力会社を清算して財産を充当し、脱原発してからならまだわかるが)「原発・化石燃料のコストが安く、再エネは高い」などと言いながら再エネ促進費を原発事故処理に転用するなど論外だ。 さらに、*17-3のJAの経営基盤強化をするには、農地や農業設備を活用した発電を進め、JAが電力を集めて販売する仕組みにすれば、農業補助金も削減でき、金利の低い今なら設備投資がやりやすいだろうが、従来と同じスキームから決して抜け出せないのが不思議だ。 また、*17-4のように、大分県日田市はJR日田彦山線の不通区間で「次世代モビリティ」導入に向けた実証実験を行うそうだが、そのEVはゴルフ場を走るカートのようなおもちゃで、これでは住民生活には使えない。*17-5の2010年2月3日の記事に紹介されているように、スイスのマッターホルン山麓にあるツェルマットでは、1990年代から排気ガスによる大気汚染防止のための自治体条例によってEVか観光用馬車しか走っておらず、私も1998年にツェルマットでこのEVに乗った時は感心したものの、EVの運転士に「馬力が足りなくないですか」と尋ねたくらいだったが、運転士の答えは「大気汚染防止のためだから、我慢しなくちゃ」というものでさらに感心したのである。日本なら大手自動車会社も多いので、不便なく走れるEVもすぐ作れると思って経産省に提案したのだが、社会保障を減らして外国に多額の燃料費を払うのが目的としか思えないような行動しかしておらず、未だにEVは希少車種である。これらは、太平洋戦争という航空戦の時代に、日露戦争の巨艦主義から抜け出せなかったのと同じであり、これでは何をやっても決して勝てないと思う。 このような中、ゴーン氏が1999年に社長として就任した日産自動車だけが、*17-6のように、批判を浴びながらEVを発売した。ゴーン氏の「リバイバルプラン」は、調整型の日本人社長にはできない系列部品会社の淘汰や資本提携の解消を伴っており、これはコストカットしたり、通常のガソリン車からEVや自動運転車に転換する場合に必要なのだが、恨まれるので誰もやりたくない仕事だ。そのため、私は、ゴーン氏の逮捕理由や新社長のメッセージを聞いただけで、優秀なリーダーを失った日産の現在の漂流と低迷は予測できたのである。 なお、日本は、*17-7のように、地価の上昇をよいことだとして地価上昇を促す金融緩和策を採っているが、これは人件費の高騰とあいまって産業の空洞化を招いている。何故なら、地価の上昇分は製品原価に加えられて製品価格を高くすると同時に、製品に占める人件費の割合を低くするからだ。そのため、このカンフル剤は、不動産業以外の産業にとってはディメリットであり、ゴーン氏が地価や人件費の安い新興国で生産体制の増強を進めたのは、多くのグローバル企業が行っている正攻法の経営手法なのだ。それでも日本に製造業を誘致したい地域があれば、工場用地を安く貸し出したり、外国人労働者の導入などで他国と競争力のある人件費にしなければならない。生産性の向上は、他国もすぐ追いつき、これまで基盤のなかった国・地域の方が整理の時間がかからない分だけ早いかもしれないのである。 ![]() 2020.3.10東京新聞 2018.11.5朝日新聞 (図の説明:左図のように、日本は豊富にある再エネを使わず、衰退期にある原子力と化石燃料に執着している。また、中央の図のように、農業は継承者が少なく、既にある資産の農地も1/3に減少させたが、これは《長くは書かないが》今までの農業政策の誤りによる。さらに、右図のように、資源が豊富な林業も1/3に減らしており、これらの理由は工夫がないことに尽きる) ![]() (図の説明:左図のように、水産業もピーク時の1/3程度の漁獲高になっており、右図のように、GDPに占める製造業の生産高や製造業就業者割合も低下の一途を辿っている。残りは、サービス業と無職であり、日本のモノづくりは猛烈な勢いで衰退していると言える) *17-1:https://www.agrinews.co.jp/p50312.html (日本農業新聞 2020年3月16日) 冬の水田サケ養殖 多面的な機能PR 放流で資源回復 米・カリフォルニア米産地 米国カリフォルニア州の米産地では、水をためた冬の水田でサケを育てる計画が進んでいる。3月末には丸々と太った数千のキングサーモン稚魚が河川に放流され、サンフランシスコのゴールデンゲートを通って太平洋に向かう。自然保護に熱心な地元住民に水田の多面的機能を訴えるのが狙いだ。「昨年の試験は洪水で(稚魚の成育が)理想的な環境にならなかった。2年目となる今年は、改善を加え成育は順調。期待している」と語るのは、カリフォルニア州米委員会(CRC)のジム・モリス部長。30年以上も米業界を見守っている専門家だ。放流される稚魚のうち1000匹には無線発信装置を付け、放流後の行動を調べる。これまでの試験で、暖かい水田で育つため、稚魚は自然界を上回る成育ぶりを示している。試験が成功すれば、商業化の道を模索するという。ただ、サクラメント市周辺に広がる約20万ヘクタールの水田で、河川と結んでたん水状態にできるのはごく一部。全ての水田で稚魚を育てるのは難しい。並行して計画するのが、水田を利用した大量のプランクトンの供給だ。稚魚は川を下りながら餌を探すが、河川は浄化が進みプランクトンが少ない。冬の間、水田でプランクトンを育て、稚魚の通過のタイミングに合わせ、水田の水口から必要なプランクトンをたっぷりと与える。米産地がサケ対策に動き始めたのは8年前。環境保護団体などによると、サンフランシスコ湾に流れ込む河川流域は、かつてキングサーモンなどが成育する場所だったが、ダム建設や水不足で匹数が激減している。そこで上流にあるカリフォルニア米の冬水田んぼに目を付けた。サケの稚魚を養殖しそのまま放流できれば、資源回復につながる可能性があるとして研究プロジェクトが始まった。同州は大気汚染を理由に、2001年ごろから稲わらの焼却を厳しく規制。農家の多くが冬場のたん水で稲わらを分解させるようになった。冬場に餌を求めて数百万羽の野鳥が集まり、観光客やハンターが詰めかけるようになった。思わぬ好展開に、米業界は「水田の多面的な機能」を大々的に宣伝し始めた。自然保護の象徴でもあるサケの資源回復で“二匹目のどじょう”を狙う。 *17-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14406691.html (朝日新聞 2020年3月18日) 原発事故処理に再エネ財源 目的外使用、可能に 政府法案 政府は、再生可能エネルギーの普及などに使い道が限られているお金を、東京電力福島第一原発事故の処理費用にも使えるようにする。処理費用が想定よりさらに膨らむ恐れがあり、財源が逼迫(ひっぱく)することに備えるという。使ったお金は将来、返すとしているが、一時的でも原発政策の失敗を別の目的で集めたお金で穴埋めすることになる。原発のお金を今の仕組みでは賄えなくなってきている。政府は一般会計予算とは別に、エネルギーの関連予算を「エネルギー対策特別会計」(エネ特)で管理している。さらにエネ特の中で目的別に財布を分けていて、原発の立地対策など主に原子力政策に使う「電源開発促進勘定」(電促勘定、年3千億円ほど)、再生エネや省エネの普及、燃料の安定供給などに使う「エネルギー需給勘定」(エネ需勘定、年8千億円ほど)などがある。電促勘定の財源は、電気利用者の電力料金に上乗せされている電源開発促進税で、エネ需勘定は石油や石炭を輸入する事業者などから集める石油石炭税となっている。両税はいずれも、それぞれの勘定の目的にしか使えない特定財源だ。ところが、政府は今月3日、エネ需勘定から「原子力災害からの福島の復興及び再生に関する施策」に使う資金を、電促勘定に繰り入れられるようにするための改正特別会計法案を閣議決定し、国会に提出した。エネ特で勘定間の繰り入れを可能にする変更は初めてという。背景には、電促勘定の苦しい台所事情がある。同勘定の収入は例年大きく変わらない。ただ、東電が負担するはずの原発事故の処理費用について、2013年12月の閣議決定で一部を政府が負担することになり、14年度から汚染土などの廃棄物を保管する中間貯蔵の費用を電促勘定から毎年約350億円計上してきた。その処理費用は当初想定より膨らんでいる。経済産業省が16年末に公表した試算で、中間貯蔵事業は1・1兆円から1・6兆円になり、電促勘定からの支出は17年度から年約470億円に増えた。政府関係者によると、今後さらに増える可能性があり、財源が足りなくなりかねないという。政府は改正法案を今の国会で成立させ、来年4月の施行をめざす。法案では繰り入れた資金は将来、エネ需勘定に戻すことも定めているので問題ないとする。ただ、再エネ普及などのために集めたお金を一時的にでも、国民の間で賛否が割れる原発のために使えるようにする変更には反発も予想される。青山学院大学の三木義一・前学長(税法)は「特別会計は一般会計に比べ、国会で審議される機会が少なくチェックが利きにくい。今回の変更の内容は原発に関わるだけに重大で、異論を唱える国民もいるのではないか。適切な改正なのかどうか、政府は国民にわかりやすく説明する必要がある」と話す。 *17-3:https://www.agrinews.co.jp/p50288.html (日本農業新聞 2020年3月13日) 進むJA経営強化 グループ挙げ強み発揮 全国のJAで経営基盤強化に向けた動きが活発化している。店舗再編や経済事業の見直しなど、具体策に既に着手しているJAも多い。JAグループの強みは総合事業と全国ネットワークだ。単に人員や施設の合理化だけでしのぐのではなく、地域や組合員のニーズに応えた事業を広げることが重要だ。 金融機関を巡る環境は厳しい。農林中央金庫は2019年から信連やJAの預金に対する金利(奨励金)の引き下げを始めた。共済事業も苦戦しており、JA経営は難しさを増す。しかし、JAの対策は既に始まっている。1月にJA全中が全国6カ所で開いた「自己改革実践トップフォーラム」では、11JAが主に経営基盤強化に向けた実践内容を報告した。各JAでは、店舗再編や施設集約といった効率化戦略と、農業生産の拡大などにつながる経済事業をはじめとした成長戦略を併せて進めている。埼玉県のJAあさか野は、08年ごろから支店再編を検討し、昨年までに17店舗を9店舗にした。同時に相談機能を強化し、相談件数や貸出金を伸ばす。岩手県のJA新いわては、支所や施設の再編、園芸品目の生産・販売強化など13の具体策をまとめた。具体的な効果を金額で示し、事業利益の確保を目指す。農村では、過疎化や高齢化、労働力不足など多くの課題が出ている。情報通信技術(ICT)などを活用し、組合員の暮らしを総合的にサポートするといった新たな事業も構想したい。総合事業を手掛けるJAとして、事業間連携強化の工夫も考えられる。自動車事業と自動車共済、ローンを結び付け事業を安定させているJAもある。JAグループの強みのもう一つが、全国ネットワークだ。600のJAがあり、県域、全国域に連合会がある。連携した事業展開やノウハウの共有、専門性の発揮などができる。県域によって体制は異なるが、経営基盤強化でも、全中・中央会と農林中金・信連、全農・経済連が連携してJAを支援。財務分析や経済事業改革の提案などを進める。先に挙げたJA新いわては、全国連・県連が連携して支援し、具体的な計画を策定した。JAグループ全体の基本方針は4月にも決める。全中の中家徹会長は6日の記者会見で、経営基盤強化は経済事業の収支改善や店舗再編をはじめとする効率化が柱となると指摘。「JAが多様化している中で、現場実態に合わせた取り組みになる」として、JAごとの工夫を重視する。信用・共済事業に依存しがちだったJAの収益構造はこの機に見直す必要があるだろう。大事なのは事業を縮小するのではなく、総合事業を手掛ける協同組合として、いかに営農と地域を支えていくかという視点だ。組合員や住民のニーズに応えつつ、収益の上がる事業モデルを探っていく必要がある。 *17-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/591722/ (西日本新聞 2020/3/13) 日田彦山線不通地区でEV実験 日田市、住民の足確保へ利便性検証 大分県日田市は今秋、同市大鶴地区と夜明地区で新たな移動手段「次世代モビリティ」導入に向けた実証実験を行う。九州豪雨で被災したJR日田彦山線の不通区間の両地区は過疎化、高齢化が進んでおり、住民の足確保だけでなく復興の象徴にもしたい考え。市は、路線バスの充実していない市周辺部の新たな交通手段としてコスト面や環境面を考慮し、ゴルフ場を走るカートのような電気自動車(EV)の導入を検討。昨年3月には国土交通省も同市大山町で低速のEVを走らせる実験を実施したが渋滞が発生したため、市は交通量が比較的少ない両地区の市道で効果を調べることにした。EVの定員は運転手を含め7人で、時速20キロ未満。バスに比べ小型で小回りが利き、細い路地まで乗り入れられるため、住民の自宅そばまで送迎が可能。バス停まで歩くことが難しい高齢者の利用を想定している。実証実験は、JR今山駅を中間地点にした市道約7キロを中心に実施する。2台のEVを大鶴地区方面、夜明地区方面からそれぞれ発車し、運行する。運行方法は今後詰めるが、前日までの事前予約に基づき、ルートを決定し、乗車希望者の自宅近くまで送迎する予定。今山駅付近では国道を走る日田彦山線の代行バスとの乗り継ぎも試し、採算性や利便性を確認する。約1カ月実施し効果が認められれば、2021年度に両地区で本格導入する。認知度が高まれば、別の地域での導入も検討する。EVは窓がなく開放感があり、景色を楽しめるのが特徴。日田彦山線は、車窓からサクラや菜の花など季節の花々が楽しめたことから、ゆっくり走るEVでのどかな風景を楽しんでもらい復興も印象づける狙い。原田啓介市長は記者会見で「新しい切り口での観光につなげられないかと思っている」と期待を込めた。 *17-5:https://www.itmedia.co.jp/makoto/articles/1002/03/news010.html (2010.2.3) 電気自動車と馬車しか走れない――ある観光都市の交通政策 スイス・マッターホルン山麓にあるツェルマットは高級リゾート地として世界にその名を知られている。夏は登山、冬はウィンタースポーツを楽しむ人々でにぎわい、三角錐(さんかくすい)の頂を持つ名峰マッターホルンをはじめとした4000メートル級の山や氷河へ通じる山岳鉄道の基地でもある。最寄の都市ヴィスプからツェルマットまでは道路も通じているが、主要交通機関は鉄道だ。雪深い土地のため狭い渓谷を縫うようにして走る道路は不便であり、またエンジン自動車の多用は排気ガスによる大気汚染を引き起こしてしまう。特筆すべきはツェルマットの特異な「EV交通政策」だ。ツェルマット市街地は自治体の条例によりEV(電気自動車)しか走れない決まりになっており、市街地を走るのはEVと観光用の馬車のみ。最新技術のEVと前時代的な馬車が混在する光景は正直いって奇妙だが、環境と都市交通をテーマとしている筆者にとっては刺激的な組み合わせでもある。 ●EVが500台 EVの実用化に対する世界的な関心が盛り上がってきたのはここ数年なのに対し、ツェルマットがEV利用に取り組みだしたのは20年以上も前のこと。ツェルマット交通局のEV路線バス運行責任者ベアート氏もいつからEV交通政策が始まったのか正確には分からないそうだ。現在、ツェルマットを走るEVは計500台(EV路線バス6台)。にわかにEV利用を始めた都市とは歴史の長さが違う。ヴィスプからおよそ1時間ほどで列車は終点のツェルマットに到着する。タクシー、バス、配送用のクルマを含め、駅前に停まっているクルマはすべてEVだ。ただし、除雪車やブルドーザーなど、高いパワーを長時間要する作業用EVはまだ実用化されていないため、通常のエンジン車両が利用されている。住民がエンジン自動車を持つことは制限されていないが、市街地に乗り入れることはできないので市街地の端にある公共駐車場に停めなければならない。そこから自宅までは徒歩かEV路線バスを利用する。EVはタクシーや業務用に限られており、基本的に個人のEV所有はできない。さらに観光バスや観光客の自家用車の規制はもっと厳しく、ツェルマット市街地から数キロ離れた駐車場までしか乗り入れることができない。 ●EVは町工場製 さて、ツェルマットを走るEVには外観の共通点がある。シンプルな小型車が多く、平面と直線で構成されている車体はかなり角ばった印象だ。通常、大手メーカーが製造するエンジン自動車は曲線の組み合わせによって美しいボディーラインを作るので、それとは対照的なデザインである。そう言えば昔テレビで観たアニメ「サンダーバード」に登場するクルマが、ちょうどツェルマットを走るEVのような形をしていたように思う。「レトロなSFに出てくるクルマ」とでも表現できそうな前衛的デザインである。ツェルマットのEVがこのような形となるのには理由がある。地元の町工場が手作業で製造しているため、複雑な形状の車体を作るのが困難なのだ。作ろうと思えば作れないことはないはずだが、そうするとただでさえ高い価格(1台300万円程度)がさらに高くなってしまう。(そういったわけで「前衛的」という印象は筆者の勝手な思い込みである)。EVを製造する町工場は3つほどあるそうだ。シャシーは専門メーカーの製品を取り寄せ、モーターやバッテリー、制御装置、運転装置も市販の製品を利用する。早い話が組み立て工場であり、数人の従業員がいれば事業として成り立つ。もちろん、それぞれの町工場がノウハウを持っており、特に制御システムに独自の技術が必要という。これまでの自動車は何万人という従業員を抱えた巨大工場で製造されるものだったが、小さな町工場でも作れてしまうのがEVだ。自動車コンツェルンにとっては都合の悪い話かもしれないが、EV製造は地場産業として育成できる可能性がある。もちろん大手メーカーがEVの大量生産を始めれば小さな町工場の存続は脅かされるが、今のところ競合相手はいない。ツェルマットの厳しい自然条件が地元の町工場の味方をしているのだ。ツェルマットは標高1600メートルの高地にあり、冬の寒さが厳しく雪も多い。これだけ過酷な条件に耐え得るEVを製造できるメーカーはまだ存在しない。 ●鉛蓄電池が最適 寒冷地におけるEV利用の最大のネックはバッテリーだ。EV用バッテリーの主流となっているリチウム電池は、低温では出力が低下し凍結にも弱く、しかも価格が高い。そのためツェルマットのEVは、あえて昔ながらの鉛蓄電池を使っている。市街地とその周辺を走るEV路線バスも同様で、車体後部に巨大なバッテリーを搭載し、充電は最寄のバスステーションで行う。路線の長さは数キロ程度と短いが坂の多い土地のため電力消費が多く、夜間の充電だけで1日走ることはできない。観光のメインシーズンには運行回数が多くなるため、場合によってはバスステーションでバッテリーごと交換してしまう。交換作業に要する時間は運転手一人ならば5分程度、補助がいれば2分程度で済む。ツェルマットは「(エンジン)自動車のない山岳リゾート地」を掲げ、それを売りにしているわけだが、中にはEVを見て「聞いていた話と違う。クルマが走っているではないか?」と戸惑う観光客もいるそうだ。「EVも含めたクルマが一切ない」と誤解されてのことである。ツェルマットが徹底したEV交通政策を進める理由を交通局ベアート氏は次のように語っている。「観光のためです。きれいな空気を求めてツェルマットを訪れる観光客の期待を裏切りたくはありませんから」。この点はすべての観光客の期待を裏切らないはずだ。ツェルマットにEVがうまく「はまった」のは特殊条件があったからこそであり、すべての国と地域に当てはまるものではない。しかしながら、例えば離島の観光地などでも同様の手法をとれるかもしれない。やる気と工夫さえあればいろいろな応用が期待できる事例である。 *17-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200319&ng=DGKKZO56938890Y0A310C2EA1000 (日経新聞社説 2020.3.19) 日産見えぬ「ゴーン」後(3)「隠れケイレツ」も岐路 3月初め、日産自動車と取引する部品会社の幹部数名が日産本社の会議室で社長の内田誠を囲んだ。各社の幹部らは内田に対し、「部品会社とのコミュニケーションがうまくとれていない」などと詰め寄った。日産元会長のカルロス・ゴーンは1999年に「リバイバルプラン」を掲げ、部品の調達費削減を進めた。一部の取引先は厳しい値引きに応じ、後の日産車の販売拡大の恩恵も受けた。しかし、今では肝心の新車販売が低迷し、部品会社の経営は厳しさを増す。内田は「調達を含め、今までのやり方を変えていきたい」とその場を収めた。ゴーン時代、日産と取引が多い系列部品会社は資本提携の解消や淘汰に見舞われたが、日産への依存度が高い「隠れケイレツ」はいまだ多い。彼らが気をもむのは一段の値引きと、ゴーンが新興国などで進めた過剰な生産体制の整理の行方だ。かつて日産との資本提携を解消した足回り部品のヨロズ。なお売上高の7割が日産グループ向けの隠れケイレツの一社だ。「日産の稼働の延期が決まりました」。2月9日夕、ヨロズの常務執行役員、春田力は中国・広東省広州市の駐在員から電話を受けた。新型コロナウイルスで止まっていた広州工場では翌10日の稼働に向け、従業員を迎え入れる準備の最中だった。広州でつくる部品の6割以上を納める日産が延期を決めたことで、ヨロズも歩調を合わせるしかなかった。後日、広州は再稼働したが、日産頼みの構造が改めて浮き彫りになった。日産向けが多いある部品会社の幹部は「日産への依存を減らすべきだとは思うが簡単じゃない」と話す。脳裏をよぎるのは米ゼネラル・モーターズ(GM)の新規受注を逃し、昨年に私的整理の事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請した曙ブレーキ工業だ。日産、トヨタ自動車とも取引し、GM向けの売上高比率は3割近くでそこまで高くなかった。取引先を分散する独立系でさえ厳しい。それなら日産にどうしがみつくかを考えた方が現実的とみる。「内田なら直言しやすい」との雰囲気が漂うが、安易な協調路線は双方に必要な改革の妨げになる可能性もある。自動運転など「CASE」時代に向け、日立製作所系とホンダ系の部品会社が統合を決めるなど業界は揺れている。良くも悪くも部品会社を巻き込んで改革を進めたゴーンはいない。部品会社もまた岐路に立っている。 *17-7:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200319&ng=DGKKZO56952070Y0A310C2EA1000 (日経新聞社説 2020.3.19) 地価の先行きを注視したい 緩やかな上昇を続けてきた地価の先行きに不透明感が強まっている。新型コロナウイルスの感染拡大で地価を支えてきた訪日客需要が急減しており、不動産マネーの動向も気がかりだ。国土交通省が18日まとめた公示地価は、調査時点が新型コロナが広がる前の1月1日とあって全国平均は5年連続で上昇した。上昇地点が地方中小都市に広がり、地方圏はバブル崩壊後の1992年以来、28年ぶりに上昇に転じた。県庁所在都市などでは、高齢化で郊外の戸建てを手放し、再開発で利便性が高まった中心部のマンションに移り住む動きが広がる。これに訪日客向けのホテル需要も重なって地価を押し上げた。地価に災害リスクが反映されるケースも目立ってきた。こうした情報を、災害に強い安全な街づくりに生かしたい。一方、三大都市圏の地価は頭打ち傾向だ。上昇率をみると東京圏はわずかに伸びたが、名古屋圏は鈍った。不動産マネーは収益性を求めて投資対象を選別する動きを強めている。地価上昇は金融緩和による低金利が支えてきた。オフィスビルなどに投資した利回りから長期金利を差し引いた利回りで、東京はロンドンやニューヨークより有利とされ、資金が流入してきた。こうした環境に金融市場の混乱がどう影響するか見極めたい。すでに不動産投資信託(REIT)は訪日客の急減でホテルなどの収益が見通せず、指数が急落した。株価の下落は富裕層の不動産投資を慎重にさせ、不動産価格に波及する可能性がある。日銀は追加緩和策でREITの購入目標を年1800億円に倍増した。今後も市場動向には十分に目配りしてほしい。都市部でオフィス需要を支える企業の人材確保意欲は根強い。ただ、テレワークの広がりはオフィス需要にも変化をもたらす可能性がある。東京五輪の行方も都心の再開発に影響する。地価の先行きを注視したい。 <ニーズに合ったサービスを迅速に行うべき> PS(2020年3月20日追加):*18-1のように、日経新聞が「①厚労省が新型コロナ感染者だけを受け入れる病院や病棟の設置を検討するよう各都道府県に通知する」「②これは感染が急拡大した時に診療を効率化し、他の患者への院内感染を防ぐ狙い」「③感染者を診療しない病院も設定して診療する医療機関を明確化」「④厚労省の推計では感染防止策を全く行わない最悪のケースで、東京都ではピーク時に入院が必要な患者が2万人、重症者が700人発生する」等としている。しかし、①②は既に治療薬が出始めており、新型コロナ感染者だけを受診する病院を作れば診療も不効率になるだろう。もちろん、②の院内感染防止は重要で小さな診療所への感染症患者の受診も制限が必要だろうが、それには基幹病院が感染症患者専用の入り口や入院病棟(もしくは階)を作ればすむことだ。イタリアは社会保障をカットしすぎたため、医療破綻が起きて死亡率も高くなっているが、日本は普段から栄養をとって健康意識も高くしているため、(欧米は生物兵器も視野に入れて防御しているようだが)ウイルスを使って意図的に健康弱者を攻撃しない限り、④のような蔓延はないと思われる。 そのため、*18-2のように、地域医療の中核として命や健康を支えている公的病院を効率化の論理だけで再編する方が問題で、普段から余裕のあることが感染症患者専用の入り口や入院病棟(もしくは階)を作るために必要なのだ。なお、感染症は、コレラ・結核・はしか・水疱瘡・インフルエンザなど医師にとっては基本的疾患であるため、国家試験を通った医師なら必要なことはわかっている筈であり、厚労省の方がどこか変である。 なお、*18-3の介護保険についても、厚労省は負担増・給付減に余念がないが、日頃の負担ばかり重くていざという時に役立たないようではしようがない。私は、高齢者は1階やエレベーターの近くに優先的に住まわせた方がよいと思うが、自宅療養するのに生活介助は欠かせない。さらに、今回の新型コロナ感染者も「軽症の人は自宅療養」としているが、自宅療養中は全く自宅を出なくてよいという人は、自宅では何もしなくても食事が出てくる人であり、それは多くの人にとって不可能なことで、自宅療養するには介護者が必要な筈なのである。 ![]() 2020.3.18、2020.3.19東京新聞より (図の説明:65歳以上を特に介護が必要な高齢者とするのは実態に合っておらず、何歳であっても介護が必要な人はいるし、90歳で元気な人もいる。しかし、左図のように、介護保険は年齢で制度をわけており、特に65歳以上の負担が大きいという変な制度になってしまった。中央の図は、介護が必要になった時の初期費用と月々の費用のイメージで、費用がかさむことは間違いない。なお、介護の社会的負担は、右図のように、施設に入った場合の方が大きく、在宅の方が小さくなっているが、本来は同じ障害でも在宅の方が生活が変わらず快適なかわりに、訪問介護になる分だけ手間がかかって高いのが当たり前なので、誰のための介護かわからなくなっている) *18-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200320&ng=DGKKZO57042550Z10C20A3CC1000 (日経新聞 2020.3.20) 新型コロナ専門病院設置 検討を 厚労省、自治体へ通知 厚生労働省は19日、入院が必要な新型コロナウイルスの感染者だけを受け入れる病院や病棟の設置を検討するよう、各都道府県に通知すると発表した。今後、感染が急激に拡大したときに診療を効率化するとともに、ほかの患者への院内感染を防ぐ狙いがある。感染者を診療しない病院も設定するなど各医療機関の役割を明確にする。厚労省の患者推計によれば、感染防止策を全く行わない最悪のケースの場合、東京都ではピーク時に入院が必要な患者が2万人、重症者が700人発生する。厚労省はこの状況に対応できる病床数や、重症者向けの人工呼吸器などの整備を求めている。今回の通知で整備すべき医療体制をより具体化した。厚労省は各都道府県に対し、新型コロナの患者だけを受け入れる病院の検討を求める。感染症の治療経験が豊富な医師や看護師を集約するなどして効率化を図る。さらに重篤患者向けの人工肺も扱える病院などを、外来も行わずに入院に特化した病院として指定する。医療機関ごとの受け入れ調整を担う組織を都道府県ごとに設置するほか、各地方ごとに広域調整本部もつくり、都道府県内で受け入れきれなくなった患者を周辺に搬送する。持病がある人や妊産婦など感染すると重症化する恐れがある人が安心して受診できるよう、新型ウイルスの患者を診療しない病院の指定も求める。 *18-2:https://www.agrinews.co.jp/p49069.html (日本農業新聞 2019年10月25日) 公的病院の再編 実態即し丁寧な議論を 地域医療の中核的存在である公立・公的病院は、命や健康を支える最重要のインフラだ。住民が置き去りの拙速で乱暴な再編統合論議は許されない。厚生労働省は、全国の公立病院と赤十字や済生会といった公的病院のうち、再編統合の議論が必要と位置付けた424医療機関の実名を公表。全国に105あるJA厚生連病院も3割に当たる31病院が対象となった。同省が、救急やがん、脳卒中などで診療実績が少なく、近隣に当該病院の機能を代替できる病院があることなどを勘案して公表した。424医療機関の内訳は公立が257、公的が167。見直しの権限は自治体側にあり、強制力はない。再編の手法も統廃合に限定しない。病床数の削減や機能の集約化なども含め、地域の実情を踏まえて検討することになる。だが、来年9月までに具体的な結論を出すこととなっており、残された時間は少ない。このため、農村部からは「身近な病院がなくなる」「地域の事情を考えていない」など不安や不満を訴える声が上がっている。北海道帯広市で開かれた日本農村医学会学術総会でも、厚生連病院関係者から今回の公表や議論の在り方に疑問を投げ掛ける意見が出された。ある関係者は、調査が2017年6月の診療実績に基づき行われたことについて「6月は農繁期で農村部なら患者が減る時期。恣意(しい)的と感じる」と指摘する。その上で、各病院は医師不足に悩んでいるとして、「病院名の公表でさらに医師確保が困難になるのでは」と懸念する。全国知事会でも「リスト返上」を求める意見が出た。全国市長会からも批判が相次いでいる。JA全厚連は、「議論は必要」としながら「一部データを基準に再編・統合ありきにしてはいけない」とくぎを刺し、地域住民の意見に耳を傾けた丁寧な議論を求める。今回の公表の背景には、医療費を抑制したい国の考えがあるとみられる。17年度の国民医療費は43兆710億円だったが、団塊世代が75歳以上となる25年には56兆円にまで増えるとの見込みもあるためだ。とはいえ、17年6月という一時期の単純なデータで機械的に評価し、再編を促す議論の進め方は乱暴過ぎる。公立・公的病院は地方で医療を提供する重要な役割を担ってきた。特に民間病院が少ない離島などで、病院がなくなったり、機能が一部失われたりした場合、そこに住み続けられなくなる恐れもある。国はこれまでも、医療費が膨らむ要因として病床数の削減を促してきた。だが、病床数が議論の根底なのか。医師不足の問題はどう考えるのか。命と健康に関わる問題だけに効率化だけで議論すべきではない。公立・公的病院なくして地方創生は成り立たない。地域医療を担っている現実をもっと認識し、住民本位の医療供給体制について議論すべきだ。 *18-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/202003/CK2020031802000178.html (東京新聞 2020年3月18日) <支え合う 介護保険20年>(1)給付外し 負担増し減るサービス 介護保険が始まり、四月で二十年。社会で介護を支えることを目指して始まった制度は生活に定着し、欠かせないものになった。だが、高齢化の進展に伴い、費用も急増。そのひずみも表れている。安心して暮らし続けるために「支え合う」仕組みの今と、これからを考える。(介護保険取材班)。しょうゆの入った一リットルのペットボトルは、ずっしりと重い。持病で腰や膝を曲げられず、シンクの縁に手をかけ、ゆっくりと下の棚に収める。東海地方に住む女性(83)は週一回、ヘルパーが買ってきてくれた食品を棚や冷蔵庫に収める。以前はヘルパーが収納してくれたが、昨年十月から業者が代わり、サービス時間が十五分少ない四十五分に。収納まで行う余裕がなくなった。「脚が痛く、冷蔵庫に入れるだけでも大変」。エレベーターのない市営住宅の三階に一人暮らし。背骨の病気を患い、長時間は歩けない。畳のへりにもつまずく。腰や膝が痛くて曲げられず、床に落ちたものを取るのも難しい。若いころに夫を亡くし、二人の子を育て上げた。だが、近隣に住む娘は仕事が忙しく、あまり頼れない。五年ほど前から介護保険を使い、ヘルパーに買い物と部屋の掃除を依頼。週二回の訪問が女性の生活を支えてきた。生活にどれだけ介助が必要かを示す要介護度では要支援2。七段階のうち軽い方から二番目だが、「ヘルパーが頼り」という。事業者が代わった原因は、二〇一五年度の制度改正。要支援の人への在宅サービスの中で、女性も受ける生活援助など介護予防の「訪問介護」と、「通所介護(デイサービス)」が保険の給付対象から外され、市区町村の事業になった。給付対象だと、事業所の基準や報酬などを国が決め、全国一律だ。だが、市区町村事業では、自治体が事業費の範囲で決める。女性の市では改正後も経過措置で保険給付時と同じ水準の報酬を支払っていたが、昨年九月末で終了。ヘルパー資格がない人もサービスができるようになり、報酬も八割に引き下げた。これに伴い、四十七事業所のうち八事業所が撤退した。女性が昨年まで依頼していた事業者もその一つ。ヘルパーに八月、突然「十月から来られない」と言われ、途方に暮れた。スーパーに行くにも手押し車を三階から一人で下ろすのは難しい。週一度の通院にはタクシーを使うが、月六千円はかかる。収入は一カ月八万五千円の年金だけ。「これ以上タクシー代がかさめば生活できない」。夜も眠れず、泣いた。利用計画を作るケアマネジャーが奔走し、別の事業所が見つかったのは九月中旬だった。減った十五分は大きかった。以前はヘルパーと会話する時間もあり、話し相手がいない女性には貴重だった。一方、保険料は年金から天引きされるなどし、毎月二千円以上の利用料もかかる。「保険料も利用料も払っているのにサービスが減るなんて」。低所得者向けの減免措置は受けているが、負担感は増している。市の担当者は「今後団塊の世代が七十五歳を超え、訪問介護を利用する人が増える。ヘルパーの確保も難しく、経過措置から切り替えた」。民間が国の補助で行った一八年度の調査では、保険給付時の基準が緩和され、報酬などが下がったサービスについて調査に応じた全国千六百八十六市町村の六割が「実施主体や担い手がいない」と答えた。別の市で生活援助を提供する事業者は嘆く。「利用者が多いほど赤字。事業者がいなくなれば、『保険あってサービスなし』になりかねない」 ◆相次ぐ改正 揺らぐ理念 高齢化の進行で、介護保険の要介護認定者数や総費用、保険料は制度の始まった二〇〇〇年度から右肩上がりに伸び続けている。国は制度の維持に向け、給付の削減と、合理化を進めてきた。その結果、制度開始前に掲げられた「必要なサービスを自由に選べる」「家族の負担を軽減」などの理念は大きく揺らいでいる。厚生労働省によると、要介護認定者は制度開始時の二百十八万人から一九年四月は六百五十九万人に。総費用は三兆六千億円から膨らみ続け、二〇年度当初予算案で十二兆円を超えた。六十五歳以上の保険料の全国平均は改定のたびに上がり、第七期(一八~二〇年度)は月額五千八百六十九円と一期の二倍超に。団塊ジュニアが六十五歳以上になる四〇年度には九千二百円に達する試算もある。標的になったのが、在宅で掃除や調理、洗濯などの家事を行う生活援助だ。一九九六年に制度創設を答申した老人保健福祉審議会は、要支援の人への生活援助について「寝たきりの予防や自立支援につながる形でサービス提供を給付の対象にすべきだ」と明記。だが、開始後は審議会などで「ヘルパーを家政婦代わりに使っている」「家事代行型のサービスは高齢者の能力を奪う」などと批判され、時間や介護報酬が削減されてきた=年表。一五年度には要支援の人の生活援助を含む訪問介護とデイサービスを保険給付から外し市区町村の事業に移した。介護保険は保険給付により全国一律で同じ水準のサービスを受けられるようにしたはずだった。だが、自治体の財政力による地域格差が生まれている。ヘルパー不足に加え、報酬単価が切り下げられ、「採算が取れない」と事業者が相次いで撤退。同居家族がいる場合には、生活援助を認めない自治体もある。一八年には月に一定回数以上の生活援助を組み込む場合はケアマネジャーに市区町村への事前の届け出を義務付け、事実上の抑制策に。今年の法改正では要介護1と2の人への生活援助を給付から外す案が出た。「在宅介護を続けられない人が続出する」などと批判が噴出し、受け皿の住民ボランティアなどの態勢が整わず見送られたが、介護関係者は危機感を募らせる。一方、施設サービスでも〇五年から居住費や食費は自己負担に。特別養護老人ホームの入所は一五年四月から原則要介護3以上に制限された。制度開始前、当時の厚生省は「家族の負担軽減」「サービスを自由に選べる」などとアピール。だが、今も年間十万人の介護離職者がおり、介護者による殺人や虐待も続いている。 ◆介護保険の給付抑制の動き 2000年 介護保険制度スタート 厚生省(当時)が「生活援助の不適切事例」として家族の調理、洗濯、 買い物などを例示 2005年 施設の居住費・食費を自己負担に 2006年 要支援の人の訪問介護は時間単位の従量制から、月単位の定額制に 2012年 生活援助で、1回当たりの提供時間を15分減らして45分(20分~45分 未満と45分以上)を基本とし、介護報酬を引き下げ 2015年 要支援の人への訪問介護とデイサービスが給付対象から外れる ▽特養への入居は原則要介護3以上に ▽「一定以上の所得」がある人の利用料は2割に 2018年 「特に所得の高い層」の利用料を3割に <介護保険制度> 介護が必要と認定された高齢者らに介護サービスを提供する公的保険。市区町村が保険者で、保険料は65歳以上の高齢者は原則年金から天引き、40~64歳は健康保険料と一緒に徴収される。要支援1から要介護5まで(7段階)の認定を受けると、要介護度に応じて使えるサービスの限度額が決まる。利用料は所得に応じ、費用の1~3割。残りが保険から給付され、財源は税金が50%(国25%、都道府県と市区町村が12・5%ずつ)、保険料50%。 <政策が的外れで遅い理由は何か?> PS(2020年3月22、23、25、26日):*19-1のように、介護は担い手不足で廃業や休床の事業所が出ているそうだが、サービスの需要があるのに取りこぼしている工夫のなさは、介護の100%を国の制度に依存しているからかもしれない。そのため、自由診療ならぬ自由介護を同時に行えば、経営に工夫の余地が大きくなると思うが、慢性的なヘルパー不足であるのに、介護士になろうとして来てくれた外国人を日本人介護士の賃金が下がらないように、日本語能力の不十分性を建前として国が追い返しているのはどうしようもない。しかし、介護制度は、介護サービスを行う人に高い賃金を払うために行っているのではなく、介護を受ける人に不便がないように行っているものであるため、この本末転倒の考え方が何をやっても失敗に終わらせているのである。 さらに、日本には使っていない資源が多く、木材もその一つで、国有林の木材は国の資産・自治体林の木材は自治体の資産であるため、*19-2のように、国産材の利活用を進めれば、それぞれの税外収入になるにもかかわらず、これも人手が足りない等と言って利用しない。建材はもちろん、買い物袋も減プラして強い紙を使用することはでき、そうすれば税外収入・環境・原料の自給率向上など、あらゆる面でプラスになるのに、である。 そして、*19-3のように、新型コロナの治療に、インフルエンザ薬「アビガン」とエボラ出血熱薬「レムデシビル」が有望視されており、アビガンは2014年3月に製造販売承認を取得して備蓄もあるのに使わず、「レムデシビル」「ギリアド」は他国では4月にも臨床試験(治験)の結果が出るのに、日本では数カ月先しか使わず、*19-4のように、30兆円規模の緊急経済対策を行って赤字国債を検討しているのだそうで、これでは、いくら国民に現金を配っても老後の心配が大きいため老後のための貯蓄にいそしむしかない。つまり、ポイントを外したことばかり行いながら、(選挙のためか)大きな無駄遣いをしているのである。 また、*19-6のように、日本の製薬会社「富士フイルム富山化学」が開発し、国内では未だ臨床試験中のインフルエンザ薬「アビガン」が、軽症者に限れば投与後7日以内に新型コロナ肺炎患者の回復率7割超で治療に有効だとする研究成果を中国の武漢大等のチームが23日までにまとめ、中国は既にアビガンを政府の診療方針に採用すると表明したそうだ。「新型コロナには経済対策より治療薬」と言われており、相変わらずの日本のとろさにはがっかりする。 このような中、*19-5のように、北九州市や地元企業等が出資する電力小売業「北九州パワー」などが、国のFITを終了した家庭用太陽光発電(出力10キロワット未満)の余剰電力を九電の買取価格(7円)よりも高い価格(7.5円)で買い取って公共施設に供給し、エネルギーの地産地消を目指すそうだ。太陽光も地域資源であり、クリーンエネルギーでもあるため、これによって地域を豊かにしながら次に進むのはよいと考える。 しかし、日経新聞が、*19-7のように、「①大阪医科大元講師の男性医師が無許可施設で人の脂肪幹細胞を培養して40代女性に国に無届けで投与し再生医療を行った」「②再生医療安全性確保法違反の罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けた」「③その背景には研究資金のメドが立たずに成果を焦ったことがある」「④日本再生医療学会は『認定医』の資格を持つ大阪医科大の元講師を除名する方針」「⑤再生医療安全性確保法が14年に施行され、医療機関に対し専門家による委員会の審査を経た再生医療の提供計画を国に提出するよう規定して、計画に基づかずに医療行為を実施した医師には懲役や罰金を科すと定めている」としている。再生医療は、これまでは治療できなかった病気やけがから回復させることを期待できる治療法で、例えば、*19-8の首の骨が曲がる大けがをして重い身体障害者となった木村参院議員のような脊髄損傷も治すことができると考えられる。私は、脊椎・脊髄の専門家である夫の学会に随行した時に、南米の大先生が「脂肪幹細胞を使って脊髄損傷を既に治療した」と話しているのを聞いたことがあり、日本では再生医療と言えばiPS細胞しか認めていないのがむしろおかしいと思っている。また、対象が「アンチエイジング」だったとしても、治験しなければ効果はわからないため、研究するにあたっては、⑤のような競争相手になる専門家の審査を要するようにしたことが問題で、④の対応もおかしいだろう。つまり、治療法の確立には、幅広いアイデアを取り入れた治験を速やかに行い、最善の結果を迅速に出せるよう、資金を投入すべきなのである。 一方、中国は、*19-9のように、科学で世界一になることを目指し、この20年間、外国で活躍した研究者を呼び戻し、多額の資金を投じて高給で迎え、そこに若い優秀な中国人学生が集まって在学中に1~2年の欧米留学をして共同研究し、欧米で学位を取得する体制も確立しており、中国のトップレベルの学生は意欲と自信に満ちて貪欲に研究するそうだ。その理由は、中国政治家のトップがほぼ理科系出身で占められ、科学・技術の発展を通じて中国を世界一の大国にするという意思が共有されているからだそうで、中国はその歴史からか、確かに普通の人まで「世界一になる」という意識を持っている国である。そして、研究投資は、既に成功した人だけではなく可能性を秘めた者に広く厚く行っているところが日本とは逆であり、これが質の高い技術の醸成を通じてGDPの成長に繋がるのは間違いない。 なお、私は1992年に中国に進出した日本企業のコンサルティングで深圳に行ったことがあるためよく知っているのだが、1990年代の中国は、*19-9のように、まだ衛生状態を疑う店やホテルが多く、従業員も不愛想で官僚的だった。これは共産主義経済の名残であり、共産主義経済でそうなる理由は、客(需要・消費者)あっての営業という認識がなく、労働自体に価値があると考えすぎて労働者が官僚のようになり、報酬と努力に相関関係がないため努力と工夫の動機づけに欠けるからである。その反省が、1980年代に鄧小平政権が改革開放路線として始めた社会主義市場経済体制の採用で、当時の日本は、大国が共産主義経済体制をとって市場に参入していなかった千載一遇の幸運のおかげで経済発展し、アドバイスする立場にあったのだ。 しかし、その後の油断と努力不足によってその優位性を維持することはできず、*19-10のように、今では「全日本造船構想(オールジャパン造船)」などという国内では競争のない造船会社を作ろうとしているが、このような官主導の大規模化が産業や経営を弱めることは、共産主義経済下の企業を見ればわかることだ。具体的には、日本の造船業は、大規模な船舶を作るためだけにあるのでも他国の造船会社と規模による競争で一瞬勝つためだけにあるのでもなく、本当に便利で快適な船を作って競争力で勝ち、自然とシェアを上げることが必要なのだ。そして、「本当に便利で快適な船」は目的によって異なり、漁船・採掘船・病院船・運搬船・観光船等々の種類によって必要な最新装備は違うのであって、これらの多様な要請に応えるためには多様な主体が存在することが必要なのである。しかし、今後、エネルギーの変換・魚群探知・自動運転・衛生等の技術は必要な装備になるため、産業を超えた互いの技術供与が役立つだろう。 ![]() 2018.1.25、2018.10.14産経新聞 (図の説明:1番左の図のように、科学技術に関する論文数は、中国と米国は40万件台だが、日本は10万件にも満たず、6位になっている。また、左から2番目の図のように、労働力不足による倒産も増えた。しかし、右から2番目の図のように、外国人労働者の雇用には未だ厳しい制限があり、物価だけが上がった結果、1番右の図のように、日本の購買力平価に基づくGDPはインドより低い4位になってしまった) *19-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/202003/CK2020032002000189.html (日本農業新聞 2020年3月20日) <支え合う 介護保険20年>(3)担い手不足 廃業、休床の事業所も 「本当に心苦しいのですが、経営は限界でした」。社会福祉法人「宮城厚生福祉会」(仙台市)法人事務局長の大内誠さん(39)は言葉を絞り出した。同法人は昨年十月、同市宮城野区で十五年間運営してきた訪問介護事業所を閉じた。きっかけは土日の訪問介護を引き受けていた七十二歳の女性ヘルパーからの「もう体力的に無理」との申し出だった。当時、事業所は約四十人の利用者がおり、ヘルパー七、八人で対応。ヘルパーの平均年齢は六十歳を超え、入浴介助などの身体介護は体力的に厳しくなっていた。女性の退職で勤務が回らなくなり、閉鎖を決断。利用者は近隣の複数の事業所に懇願して引き継いでもらった。「受けてもいいけどヘルパーをよこして、と言われた」。同じころ、隣接する宮城県多賀城市の社会福祉協議会が、一九九七年から運営する訪問介護事業所を年度内で閉じると利用者に通知。社協は地域福祉を担う公的性格の強い民間団体で、「まさか」と地元の福祉関係者に衝撃が走った。同社協事務局長の菅野昌彦さん(62)は「ヘルパーが集まらず、年間赤字が約一千万円に達したため」と話す。東海地方のある市の社協も昨年四月、訪問入浴サービスを廃止。ヘルパー数人と看護師一人がチームで行っていたが、利用者が少なかったことに加え、必要な人数のヘルパーも集まらなかった。担当者は「人手がかかり、収支が合わなくなった」と話す。東京商工リサーチによると、二〇一九年の介護サービス事業者の倒産件数(負債額一千万円以上)は百十一件で、過去最多の一七年に並ぶ。このうち、訪問介護事業者が半数以上の五十八件を占めた。担当者によると、事業所間でヘルパーの奪い合いが起きており、募集をかけても集まらなかったり、給料を上げて赤字になったりして倒産に追い込まれるケースが多い。慢性的なヘルパー不足は、介護保険のサービスを根底から崩し始めている。在宅だけでなく、施設サービスも深刻だ。宮城厚生福祉会が一六年四月に多賀城市に新設した小規模特別養護老人ホーム「風の音サテライト史(ふみ)」は、介護職不足のため定員の二十九人に対応できず、開設以来、十九人の入所に制限。約十人の介護職が二つのユニットを回すのにぎりぎりの体制で、施設長も日常的に夜勤に入る。残り一ユニットは真新しいまま一度も使われていない。同会によると、職員を確保できない懸念は当初からあった。だが、同市内には特養が少なく、行政側の強い要請もあり開所。県内の高校や東北六県の介護福祉士養成校を訪問して奨学金制度や就職祝い金をアピールするなどして募ったが、効果は薄かったという。特養に入りたくても入れない待機者は同市と近隣一市三町で約百五十人。既に四、五年待っている人もいるといい、「入りたい人がいるのになぜ、閉めているのか」という声も。厚生労働省によると、全国の待機者は、昨年四月一日時点で約三十二万六千人に上る。一方、独立行政法人「福祉医療機構」(東京)が昨年、全国の特養に実施した介護人材に関する調査で、八百五十三施設(回答率24%)の73%が「不足」と回答。13%が利用者の受け入れを制限していた。人材確保が難しい理由で最も多かったのが「近隣施設との競合」で六割に上った。 介護問題に詳しい淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)は「このまま人材不足が進めば、地域の介護が崩壊する」と危惧する。 ◇ 記事への感想や介護にまつわる体験談をお寄せください。住所、氏名、年齢、電話番号を書き、下のあて先へ。ファクス、Eメールでも可。 〒100 8525 東京新聞生活部 ファクス03(3595)6931、seikatut@tokyo-np.co.jp *19-2:https://www.agrinews.co.jp/p50357.html (日本農業新聞 2020年3月22日) 民間で「木造」広がる 7階建てビル、コンビニ 建築物に国産材を利用 需要確保へ推進継続 林野庁 林野庁は、民間建築物への木材利用促進を目指す懇親会「ウッド・チェンジ・ネットワーク」の会員企業の進捗(しんちょく)状況を取りまとめた。国産材を積極的に使う動きが広がり、純木造高層ビルの建築計画も動きだしている。利用期を迎えた国内の人工林の需要確保に向けて、公共建築物だけでなく民間建築物も取り込むため、引き続き働き掛ける方針だ。政府は、林業の成長産業化を目指し、2017年に約3000万立方メートルだった国産材の供給・利用量を25年までに4000万立方メートルに伸ばすことを目標に掲げる。都市部の建築物に国産材を積極利用する「木質化」を成長産業化の柱の一つに据えており、木材の需要拡大へ民間も取り込みたい考えだ。そのため19年に同ネットワークを設立した。現在は、31の企業・団体が参加しており、3月中旬に開いた会合で、各企業が進捗を報告した。木造建築のシェルター(山形市)は、木質耐火部材を開発。中高層ビルへの利用が可能となったことを受け、21年春、純木造7階建てビルを仙台市のJR仙台駅東口エリアに竣工(しゅんこう)する予定だ。主要構造部には主に東北の杉材を使用する。同社は「製材での高層ビル建設で、新たな木材利用の提案ができる」と展望する。住宅建材のナイス(横浜市)は、地域産材を使った建材が流通しやすくなるよう、木材を規格化した。今後、地域の木材販売業者や施工業者を通じ、脱プラ・木質化を提案していく方針だ。コンビニエンスストア大手のセブン―イレブン・ジャパン(東京都千代田区)は環境配慮の観点から、木造店舗を複数展開する計画を立てている。実用化に向けて、コストや工期の効率化などを検討する。同ネットワークに参加する森林研究・整備機構森林総合研究所の原田寿郎氏は「どれだけ木材を使えば地域に還元できるかという観点が必要」と指摘する。同庁は、民間建築物の木造化を加速させるには「さらに施主に働き掛ける必要がある」(木材利用課)とし、同ネットワークを通じて導入実績を増やしたい考えだ。 *19-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56948630Y0A310C2MM8000/?n_cid=NMAIL006_20200318_Y (日経新聞 2020/3/18) コロナ治療薬 米社製、4月にも治験結果 新型コロナウイルスの治療に既存の抗ウイルス薬が有望だとわかり、早期に使える可能性が出てきた。インフルエンザ薬「アビガン」とエボラ出血熱薬「レムデシビル」が特に有望視されている。レムデシビルは4月にも臨床試験(治験)の結果が出る見通しだ。実用化できれば世界規模の死者増加を抑え、経済への打撃を緩和することにもつながる。アビガンは国内では2014年3月にインフルエンザ薬として製造販売承認を取得し、16年に中国製薬会社の浙江海正薬業(浙江省)にライセンスを供与していた。浙江海正薬業は2月に中国当局から生産認可を得ており、量産を本格化する。日本でも医師の判断によって新型コロナの患者に投与されている。政府はアビガンを200万人分備蓄しており、富士フイルム側は「政府から増産を検討するように要請を受けている」と説明する。実際の増産には原材料の確保などの課題もありそうだ。エボラ出血熱の治療用に開発されていた米ギリアド・サイエンシズのレムデシビルは各国で未承認だが、中国で新型コロナの患者に投与したところ効果が確認され、同社は日米中などでの治験を始めた。1千人程度の患者で効果を見ている。ギリアドは「まず中国で4月にも結果が出る」と説明。厚生労働省が緊急措置として審査を急ぎ、条件付きの仮承認を出すなどすれば、日本でも数カ月のうちに医療現場で使えるようになる可能性がある。商業生産されている薬ではないため、大量供給するには新たに製造体制を構築する必要がある。米アッヴィの抗エイズウイルス(HIV)薬「カレトラ」も中国でコロナ治療に使われ、他の薬剤と組み合わせた治験が進む。日本では2000年に承認されてエイズ治療に広く使われており、新型コロナで有効性が確認された場合、早期の大量供給も可能とみられる。いずれの薬剤も副作用のリスクがあり、軽症患者の治療には向かない可能性が高い。アビガンは動物実験で胎児への影響が確認され、妊婦への使用は厳禁だ。重篤な肝障害などの副作用も報告されている。カレトラは膵炎(すいえん)や肝障害が報告されている。レムデシビルの副作用はまだ不明で、低血圧障害などの可能性が指摘される。国内ではこのほか、ぜんそく薬「シクレソニド」で解熱などの効果が見られたとして症例研究が進んでいる。東京大学の井上純一郎教授らは18日、急性膵炎の治療薬「ナファモスタット」を試験投与して効果を調べると発表した。 *19-4:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200321-00000055-kyodonews-bus_all (Yahoo 2020/3/21)緊急経済対策、赤字国債を検討 補正予算財源、借金さらに増加 新型コロナウイルスの感染症拡大に伴う緊急経済対策で、政府が必要な財源として新たな借金となる赤字国債の発行を検討していることが21日、分かった。与野党から30兆円規模の経済対策を求める声が上がっており、経済対策を反映する2020年度補正予算の財源として活用する可能性がある。新型コロナの日本経済への影響は、08年のリーマン・ショックを超えるとの指摘も出ている。国民に現金を配る現金給付のほか、売り上げが落ち込んだ観光業への支援策が検討されている。赤字国債の発行で国の借金は増えることになり、財政健全化の目標達成はさらに厳しくなる。 *19-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/593911/ (西日本新聞 2020/3/22) エネルギー地産地消へ 太陽光余剰電力買い取り公共施設に 北九州市 北九州市や地元企業などが出資する電力小売業の「北九州パワー」(同市)などが、国の固定価格買い取り制度(FIT)適用が終了した家庭用太陽光発電(出力10キロワット未満)の余剰電力を買い取るサービスを始めた。市内で生み出した「卒FIT」電力を九州電力より高く買い取り、小倉城など地域の公共施設に供給してエネルギーの地産地消を目指す。電力はNTTスマイルエナジー(NTTSE、大阪市)が市民から買い取り、北九州パワーを通じて区役所や市立美術館などの公共施設に供給。1月から買い取りサービスを始めた。家庭用太陽光発電など再生可能エネルギーの普及を目的としたFITは2009年に始まり、昨年11月から順次、家庭用で10年間のFIT期間が終了した世帯が発生。FITでは当初、買い取り価格が1キロワット時当たり40円代だった。九電の買い取り価格は同7円だが、NTTSEは7・5円に設定している。市は07年度から6年間、太陽光発電の導入に補助制度を設け、約5千世帯(総出力約2万キロワット)が補助を受けた。このうち本年度にFIT適用が終了する約500世帯に同市がNTTSEへの切り替えを促す文書を送付したという。市は昨年5月、クリーンエネルギーの普及を目指しNTTSE、北九州パワーなどと連携協定を締結。市地域エネルギー推進課は「地域の太陽光エネルギーを地域で使う全国的にも珍しい取り組み。補助金世帯の半分に当たる1万キロワット分を切り替えてもらうのが目標だ」としている。 *19-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/503400 (佐賀新聞 2020.3.23) 「アビガン」、7日で7割回復、軽症者に中国チーム インフルエンザ薬「アビガン」が新型コロナウイルスに感染した肺炎患者の治療に有効だとする研究成果を中国・武漢大などのチームが23日までにまとめた。軽症者に限ると投与後7日以内の回復率が7割を超えた。多くは4日間で症状が消えた。チームは「高血圧や糖尿病など持病がある人には、早期の症状改善が重要だ」として、有望な薬剤だとしている。中国は既にアビガンを政府の診療方針に採用することを表明している。チームは2月から3月にかけ、同大病院など三つの病院で18歳以上の116人の患者に対しアビガンを投与。1日当たりの用量はインフルエンザ治療と同じにして、熱やせきなど症状が出てから12日以内に錠剤を飲んでもらった。1週間後の状態でみると、98人いた比較的軽い患者では70人(71%)が、18人いた重症者の中でも1人が回復した。全体では61%の回復率だった。副作用は37人で出たが、尿酸値の上昇や肝機能の数値の異常などで深刻なものはなく、退院時には正常に戻ったという。アビガンは日本の製薬会社「富士フイルム富山化学」(東京)が開発。日本国内でも臨床試験が進められている。 *19-7:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200323&ng=DGKKZO57054110Q0A320C2CR0000 (日経新聞 20200323) 無許可再生医療、功を焦った末に、大阪医科大元講師に罰金命令 学会、動画で「注意を」 大阪医科大(大阪府高槻市)元講師の男性医師(52)が、無許可施設で人の幹細胞を培養する再生医療をしたとして再生医療安全性確保法違反の罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けた。背景には研究資金のメドが立たずに成果を焦ったことがあるとみられている。再生医療をめぐるトラブルを防ぐため、学会は受診者向けの動画などを公開して注意を促している。「人に投与して効果や安全性が確認できれば、新治療薬が視野に入る」。大阪府警に逮捕された元講師は調べにこう供述したという。府警や大学によると、元講師は2019年3~5月、無許可施設で4人から採取した脂肪幹細胞を培養。4人のうち40代女性に対して培養した脂肪幹細胞を国に無届けで投与したとされる。元講師は略式起訴され、簡裁は2月28日付で罰金30万円の略式命令を出した。脂肪幹細胞は骨や筋肉などの細胞や組織になる能力を持つ。元講師は脂肪幹細胞に薬剤を取り込ませて能力を高める技術を開発し、大学も16年以降、特許を申請した。培養にはその技術を用いていたとされるが、効果はマウスでしか確認されていない。元講師は府警の調べに「培養施設の新設には膨大なコストがかかる」と供述。一連の施術は医療設備のない研究棟の廊下で行われており、捜査関係者は「実現したい研究計画に対して資金が足りず、委員会の審査にかけても通らないと思っていたのだろう」とみる。再生医療はこれまで治療できなかった病気やけがの回復が期待される。一方で、保険適用外の自由診療として安全性や効果が不透明なまま治療が行われている実態があった。京都市の民間クリニックで治療を受けた外国人男性が死亡したとの報告例もある。こうした状況を改善するため再生医療安全性確保法が14年に施行された。医療機関などに対し、専門家による委員会の審査を経た再生医療の提供計画を国に提出するよう規定。計画に基づかずに医療行為を実施した医師などには懲役や罰金を科すと定めた。同法施行後の17年には、他人の臍帯(さいたい)血を国に無届けで投与したとして、東京都内のクリニックの医師ら4人が有罪判決を受けている。アンチエイジングなどの治療を目的に安全性が確立されていない方法で投与したとされる。日本再生医療学会は今後、「認定医」の資格を持つ大阪医科大の元講師を除名とする方針だ。同学会理事長の澤芳樹・大阪大教授は「再生医療安全性確保法は研究者の安易な臨床研究を防ぐ抑止力にもなっている。法令順守を徹底させる仕組みの議論が必要になるのではないか」と話す。同学会は事件後、再生医療を受けることを検討している人向けに、国に届けられた全ての提供計画を見ることができる同学会のポータルサイトを確認するよう注意を促した。3月には再生医療を受ける際の注意事項をまとめた動画も公開し、自由診療を受ける際に「届け出がなされているか」「予期される効果や危険」などを確認するよう呼びかけている。 *19-8:https://digital.asahi.com/articles/ASN3B5WR9N32UTFL01G.html?ref=weekly_mail_top (朝日新聞 2020年3月15日) 障害ある子生まれ「おめでとう」と言えますか 木村議員 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で利用者19人の命が奪われるなどした事件の判決が、16日に予定されている。元職員である被告の言葉をどうみるか。事件が繰り返されないためには――。重い身体障害があり、18歳までの大半を施設で暮らした、れいわ新選組の木村英子参院議員(54)は、障害のある子の誕生に「おめでとう」と言える社会かどうかを問う。どういうことなのか。 ●殺されていたのは私かも 彼の言葉は心の傷に触れるので、集中して公判の報道を見ることができませんでした。施設にいたころの傷ついた自分の気持ちに戻っていくのです。 △裁判で被告は「意思疎通のとれない人は社会の迷惑」「重度障害者がお金と時間を奪っている」などと語った 彼が言っていることはみなさんにとっては耳慣れなくて衝撃的なのでしょうが、同じような意味のことを私は子どものころ、施設の職員に言われ続けました。生きているだけでありがたいと思えとか、社会に出ても意味はないとか。事件は決してひとごとではありません。19歳で地域に出ていなければ、津久井やまゆり園に入所していたかもしれない。殺されていたのは私かもしれないという恐怖が今も私を苦しめます。私は横浜市で生まれ、生後8カ月のときに歩行器ごと玄関から落ち、首の骨が曲がる大けがをして重い身体障害を負いました。小学5年から中学3年の5年間を除き、18歳までの大半を施設で暮らしました。入所は親が決めました。重い障害のある私に医療や介護を受けさせたいという責任感と、施設に預けなければ家族が崩壊しかねなかった現実からです。私には24時間の介護が必要です。親は疲弊し、一家心中をしようとしたことも何度かあった。親が頼れるのは施設でした。やさしい職員もいましたが、私にとっては牢獄のような場所でした。施設が決めた時間に食事をしてお風呂に入って、自分の暮らしを主体的に決めることがない。食事を食べさせてもらえないことも。一番嫌だったのは「どうせ子どもを産まないのに生理があるの?」という言葉です。全ての施設がそうだとは思いませんが、私がいたのはそういう施設でした。時代が変わっても施設とはそういうものだと私は思っています。プライバシーも制限され、自由のない環境で希望すら失い決まった日常を過ごす利用者を見た人たちが、「ともに生きよう」と思えるでしょうか。偏見や差別の意識が生まれたとしても不思議ではありません。私は、被告だから事件を起こしたとは思えない。 ●公園で浴びた排除の視線 △裁判では、新たな事実が明るみに出たものの、事件に及んだ動機や真相は十分には解明されなかった。同じような事件を繰り返さないためにどうすればいいのか 被告を罰しただけでは社会は変わらない。第2、第3の被告を生まないためには、子どものころから障害者とそうでない人が分け隔てなく、地域で暮らせる環境をつくることが必要です。私が望むのは、障害のある子どもが生まれたとき、「おめでとう」と言える社会。私は親から施設に捨てられた、歓迎されない命だという思いを抱いて生きてきました。うしろめたい存在だと思うことも、絶望感のなかで仕方のないことだとあきらめていた。歓迎されない命などない、と気づいたのは19歳で地域に出てからです。23歳で結婚し、息子を出産しました。不安だったのは、子どもをかわいいと思えるかでした。母に抱かれた記憶があまりない私は、母に対する愛情が持てなかった。でも出産した時は、子どもへのいとおしさがこみあげました。公園デビューをしたときのことです。息子と子どもたちが砂場で遊んでいるのを、車いすに乗った私が近くで見ていました。だれも私が母親だとは思っていない。私が息子に声をかけ、私が母親だとわかった瞬間、周りのお母さん方が自分の子どもを抱き上げて帰ってしまった。自分の子どもが私に近づくと「そっち行っちゃダメ」。小学校の授業参観でも教室が狭くて、他のお母さんたちが入れないので「詰めていいですよ」と言っても、半径1メートル以内には近寄ってこない。私と関わると厄介なことになる、巻き込まれたくない、といった意識が働くのでしょう。本人たちは差別とは思っていませんが、あからさまな差別です。障害のある人とそうでない人を分けることによってお互いが知り合う機会を奪われることから差別は生まれます。社会から排除することそのものが差別なのです。地域で暮らして35年。福祉サービスは増えましたが、重度訪問介護が就労中などに公的負担の対象外だったり、移動支援が自治体により差があったり。普通学校への入学が重度障害を理由に認められない例もある。こうした課題をみんなで解決できたとき、障害のある子が生まれて「おめでとう」と言える社会になる。それが事件を乗り越えることになるのではないでしょうか。 *19-9:https://webronza.asahi.com/science/articles/2017122900002.html (論座 2018年1月5日) 中国が科学で世界一になる時代、上海から日本の未来を考える 須藤靖 東京大学教授(宇宙物理学) 2017年12月に、太陽系外惑星に関する上海の国際会議に出席した。すでに様々なところで繰り返し述べられていることではあるが、中国の発展の凄まじさを改めて実感したので、その体験をいくつか紹介してみたい。私が初めて中国を訪れたのは今から20年前の1998年。ドイツのマックスプランク協会が上海天文台に宇宙論のグループを設立することになり、その準備を兼ねた国際会議を開催した。当時、私の研究室で博士研究員をしていた景益鵬氏が2年後にそのグループリーダーに抜擢されることになったので、その会議に招待されたのだった(彼はその後も優れた研究を継続し、数年前に中国科学アカデミー会員に選出されたほどの大活躍をしている)。 ●研究レベルは着実に進歩 正直なところ、当時の中国の天文学研究レベルはかなり低かった。その会議でも、中国側の研究発表は年長者ばかり。すでにあまり意味がないような古いテーマを、しかもほとんど聞き取り不能な英語でしゃべるのみであった。もちろん優れた中国人研究者も参加してはいた。しかし、彼らはほぼ例外なしにアメリカやヨーロッパで学位を取得し、外国にとどまって研究を続けていた。当時は、特に優秀な層ほど、中国に帰って研究するという発想など論外だったのだ。この会議のみならず、初めて上海を訪れた際に私が受けた印象はかなり強烈であった。信じられない数の自転車が道路を占拠している。バスや車の運転は荒く、信号が赤になり歩行者が道路を横断し始めようと、止まる気配はない。横断歩道では緊張しながら全力で走った。街中の至る所でビルが建設中で、土埃だらけ。そのなかを、自転車の荷台に生肉を平気でくくり付けて配達中の人々をしばしば見かけた。にもかかわらず、衛生状態を疑うようなお店であろうと、驚くほど美味しい料理をしかも日本の20分の1から30分の1の値段で提供してくれた。観光客向けの店で、お土産を買おうとしたところ、女性がレジの前の机に顔を伏せたまま眠りこけていて起きる気配がない。何度も声をかけたあげく、ようやくその奥でおしゃべりをしていた別の女性が近づいてきて、のろのろと対応してくれた。しかし、支払いの際にはお釣りを投げつけるように返された。客などありがたいどころか、逆に労働をさせられる邪魔な存在だったのだろう。19世紀後半から20世紀前半における外国人居留区であった外灘は、上海の有名な観光地の一つである。川を隔てた向こう側には当時からすでに多くの高層ビルが立ち並ぶ、近代的エリアとなっていた。景氏によれば、船で5分もあれば向こう岸に渡れるというので、行ってみることにした。改札は無人だったので購入した切符を投入口に入れると、どこからか「謝謝」という声がする。しかしどこにも人がいる気配はない。驚くべきことに切符を投入すると自動的に音声が流れる近代的仕組みだったのだ。景氏と一緒に「上海で親切なのは機械だけだ」と大笑いしたことをよく覚えている(むろん、今や中国のサービスのレベルは著しく向上しており、さすがに日本ほどではないにせよ、欧米の平均レベル程度にはなっている。)。その後、今回を含めて中国には5回訪問した。そのたびに、研究レベルが着実に進歩していることを実感した。過去20年間にわたり、中国政府は景氏のように外国で活躍した研究者を呼び戻す方針を立て、多額の資金を注入した。高給で迎えられた彼らは、新たなグループを次々と立ち上げ、そこには若い優秀な中国人学生が集まった。しかも彼らは在学中に1、2年間、ヨーロッパやアメリカの大学に滞在して共同研究をし、場合によってはそこで学位を取得する体制まで確立している。おかげで、中国国内の学生や博士研究員の研究と英語のレベルが著しく向上した。そもそも、中国のトップレベルの学生は、意欲と自信に満ちており、熱心というよりもむしろ貪欲に研究する。その迫力は、少なくとも私の周りの日本人(私自身も含めて)とは雲泥の差である。実は、太陽系外惑星の研究グループはまだ中国にはほとんど存在していない。一方、この分野には、中国出身でアメリカの主要大学の教授として活躍している研究者が数多い。彼らは、中国の大学の客員教授を兼任しながら、多くの中国人学生や博士研究員を指導し、さらにアメリカで受け入れることで、最先端の研究を展開している。この分野は、歴史的には日本の研究レベルがかなり高いのだが、外国で活躍する中国人による研究まで合わせれば、中国はすでに日本を凌駕してしまった感すらある。 ●世界の覇権を握る戦略 さて、過去20年間でなぜ中国の科学がここまで飛躍的発展を遂げることができたのか。これはすでに数多く議論が展開されているはずなので、ここでは私が直接見聞きした現場からの印象に限って紹介してみたい。 【A 政策】 中国政治家のトップはほぼ理科系出身で占められている。そのためかどうかはわからないが、科学・技術の発展を通じて、中国を世界一の大国にするという意思が確立し共有されている。つまり科学を発展させることは良いことだ、などといった甘い価値観ではなく、それ自身が国家にとって本質的な「投資」だとみなされている。巨額の予算を要する科学プロジェクトが比較的容易に認められる。特に、「世界一」というスローガンをもつプロジェクトは最優先である。科学・技術の発展を通じて中国を世界一にするための人材を育成する大学には、過去10年以上、毎年の中国の経済成長率以上の割合で予算が増額され配分され続けている。この間、大学の運営交付金が1割以上削減された日本とは雲泥の差である。 【B 予算】 さらに科学・技術研究には中央政府のみならず、市からも独自に巨額の予算措置がなされる。特に大都市にある有名大学は、中央政府からの交付金と同額以上をそれぞれの市からも支給されている。北京大学や上海交通大学には北京市や上海市に居住していない学生の入学定数が厳しく決められている(実は、東京大学に入学する中国人学生のかなりの割合は、中国のトップ大学に入学が制限されている地方出身の優秀な学生層なのである)。これには不公平であるとの批判も多い一方、大学がそれぞれの市の多額の税金によって援助されている事実の反映でもある。このように、大学や科学・技術研究には、企業はもとより、様々なレベルの公的組織や団体から手厚い財政的サポートがなされている。これもまた、基本的には政府機関に財布の紐をきつく縛られている日本の大学とは雲泥の差である。 【C 報酬】大学教員の給料が高い。過去数年間で平均的に5割以上は増額されている上、最近中国で高騰している住宅が格安で提供される(かつては5年以上勤務すると、借りていたアパートの所有権を得ることもできた。上海や北京の中心部にあるそれらは今では一億円以上の資産価値となっているものもあるらしい)。さらに、研究者の給料は、論文の出版数はもとより、どの雑誌に出版されたか、どれだけ引用されたか、などの具体的数値指標によって大きく左右される。特に、NatureやScienceなどのいわゆる一流雑誌に掲載されると、1年分の給料に相当するボーナスが与えられることもある。その結果、研究者がこぞって良い論文を良い雑誌に出版しようとやっきになっているのだ。北京のある有名な天文学研究所に就職した米国人研究者から、中国ではあまりに競争が激しいため自分もまた他の同僚も疲弊しきっているという話を聞いた。しかし、研究者の絶対数が多いおかげで、そのような自然淘汰が適者生存につながり、トップの研究レベルが飛躍的に向上し続けているのも事実である。日本から見ると、【A】と【B】は羨ましい限りである。しかも、科学・技術は最終的には人類平和のためとかいった「哲学的」あるいは「倫理学的」論理ではなく、中国が世界の覇権を握るためになすべき最大の投資との透徹した明確な戦略のもとに進められている点も、ある意味では清々しいほどだ。仮に日本で【C】のような行き過ぎた業績主義が提唱されれば私は断固反対する。それは長い目で見れば、深い科学の発展を阻害するに違いないからだ。しかしながら、私のような牧歌的科学感をよそ目に、日本ではありえないほどの成果主義を取り入れた結果、過去20年間で中国の科学がトップに躍り出たことは紛れもない事実である。少なくとも、極めて低い研究レベルを短期間に引き上げる政策としては、もっとも効率の高いやり方であったことは認めざるを得ない。今後、日本でもこの業績主義が議論される可能性が高いのであえて付け加えておくならば、優れた研究者に相応の報酬をという点は必ずしも否定するものではないが、それは中国のように単純に総額もプラスの場合である。日本の場合は、ゼロサムルール、さらにはネガティブサムルールが前提なので、結果として、次世代を担う若手研究者を減らすあるいは冷遇することになる。これでは中国の場合とは全く異なり、全体としては百害あって一利なしである。研究者は決して高給をめざして研究しているわけではないからだ。 ●「資金に制限無し」 ところで、現在の中国はインターネット閲覧規制が厳しい。グーグル、日本経済新聞、讀賣新聞などのサイトには全く接続できない(朝日新聞、毎日新聞には問題なくアクセスできる。これは何となく分かる気もするのだが、産経新聞も同じくサクサク読めてしまうので、いかなる基準で判定しているのか、個人的には興味深い)。私は通常、gmailを使用しているので、とても困った。結局ある方法でなんとかアクセスできるようになり事なきを得た。おかげで、自分の日常が、いかにある特定の組織に依存、というか支配されているのかを思い知ることとなった。外国人が中国に行くと、グーグル検索ができないことで、中国では思想や自由が制限されていると、違和感を抱き、当然批判する。しかし、中国には、百度というグーグルに対応する検索サイトがあるので、中国人はまったく困っていない。中国政府の方針に沿った活動をしている限り、全く不自由はないのだ(しかも、自由に外国のインターネットサイトにアクセスするための方法も存在するので、必要な人々は外国からほしい情報を得ている)。その意味で、科学・技術研究に没頭している限り、現在の中国は世界で最も恵まれた国といえる。科学者に限らず、今回の滞在を通じて、大半の中国人は現在の体制に満足しているという印象をもった(むろん、少数民族や地方の労働者など、政府の方針を支持しない、あるいは大都市以外に住む人々はその限りではないのだろう。私の知っている中国人が、ある意味では現代中国の方針とうまく適合している層に偏っているのも事実ではある)。今回の会議は、新しく設立されるT.D.Lee研究所(T.D.LeeはC.N.Yangとともに、弱い相互作用におけるパリティーの非保存を理論的に予言し、それが実験的に確かめられたことで1957年のノーベル物理学賞を受賞した素粒子物理学者)に、天体物理学グループを立ち上げるお披露目会をも兼ねていた。上海市の完全な資金援助のもと、上海国際空港の近くの浦東市に広大な敷地を提供され、高層ビルを建築中である。会議冒頭の挨拶では、景氏が「この研究所では、実質的にスペースも資金もunlimitedである。優れた研究者を大歓迎する」と述べて、出席者をどよめかせた。このような状況では、今後、日本が中国に一層差をつけられるのは避けようがなかろう。科学・技術において世界のトップに立つべしとの価値観が正しいかどうかは別としても、やはり投資なくして成果はありえない。しかも投資は、すでに成功した人にではなく、これからの可能性を秘めた若者に広く厚く行うべきである。教育と研究に関する人的および財政支援を削減し続けておきながら、成果主義を振りかざして研究者に責任を押し付ける日本政府にこそ、中国政府の透徹した科学・技術戦略を少しは学んでほしいものだ。 *19-10:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200326&ng=DGKKZO57237170V20C20A3TJ1000 (日経新聞 2020.3.26) 動き出す「全日本造船」構想、今治・JMU提携を端緒に浮上 大再編 中韓勢に対抗 造船業界で再編が加速している。27日には首位の今治造船(愛媛県今治市)と2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)が共同で開発・営業会社を設立し資本提携を発表する。三菱重工業も造船事業の大幅縮小を決めた。背景にあるのが韓国・中国勢との競争だ。切り札として国内の主要15社の造船会社を集約し「オールジャパン造船」をつくる構想も水面下でくすぶる。日本のものづくりの象徴だった造船は、生き残りに向けた最終段階に入った。「韓国にやられてきた状況で、さらに受注がストップしている。底が見えない」JMU幹部は危機感を募らせる。造船業界では受注残を示す手持ち工事量が1800万総トンを割り、20年ぶりの低水準に達した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で造船の国際見本市は相次ぎ中止となり、欧州などの船主と商談すらできない。世界の造船は大型再編へと突き進んでいる。中国首位の中国船舶工業集団(CSSC)と2位の中国船舶重工集団(CSIC)が経営統合し、韓国は現代重工業が大宇造船海洋と統合作業を進める。両陣営だけで世界の建造量で4割のシェアを占めるが、日本は中小造船所が乱立している。「受け皿を一本化しないと入札すらできなくなる」。国土交通省の関係者は語る。大型船では韓国メーカーが4~5隻を一気に大量受注して傘下の造船所で分担建造する動きがある。規模に乏しい造船所はいまや受注そのものに参加できない。こうした中、国交省主導で業界と共に模索が始まったのが造船の「オールジャパン構想」だ。日本には約50カ所の造船所があるが、まずは開発や設計・受注などの上工程を一本化し、建造業務を分担。最終的には造船所の閉鎖や集約を目指す。国内造船は総合重工系と独立系に大別できる。JFEホールディングスとIHIが造船事業を統合したJMUのほか、三井E&Sホールディングス(旧三井造船)や三菱重工業が総合重工系の代表格。独立系は今治造船、大島造船所(長崎県西海市)、常石造船(広島県福山市)などがある。これらを含む主要15社が仮にまとまると建造量シェアは世界で2割と、中韓の首位グループに並ぶとみられる。試金石はJMUと今治が折半出資で設立する開発・営業新会社だ。中韓勢と同じ土俵で競うことが業界共通の課題となるなか「同陣営への集約も視野に、造船所の再編が始まる」とみる関係者は多い。航空事業などへのシフトを進めるなか、重工系は造船事業の縮小に乗り出している。三菱重工は創業の地である長崎造船所・香焼工場(長崎市)を大島造船所に売却する。IHIは愛知工場(愛知県知多市)を閉鎖したほか、三井E&Sは千葉工場(千葉県市原市)の造船からも撤退した。そんな中、大再編の主役に躍り出たのが今治造船だ。丸亀事業本部(香川県丸亀市)にある全長610メートルのドックを中心に、瀬戸内海の造船所を取りまとめる。描くのは「複数の部品を受け持ちし、瀬戸内海全体を1つの巨大な造船所とみなして受注を獲得する戦略」(造船大手幹部)。「瀬戸内海連合」は韓国を追う手立ての一つだ。その今治造船とJMUが手を組むことで連合が全国規模に広がる。これまでもオールジャパン構想は浮かんでは消えていたが「受注が枯渇し、今回こそは業界を変えようという危機感が強い」(大手造船会社役員)。布石はすでに打たれている。国交省などは造船の協業・提携に必要な投資などを補助する策を検討している。再編の引き金になりそうなのが環境規制への対応だ。国際海事機関(IMO)は20年からの硫黄酸化物規制に加え、50年に08年比50%の二酸化炭素排出削減を迫る。「まず環境技術で日本勢同士の協力が必要」(日本造船工業会の斎藤保会長)との声は強まっている。造船各社の受注残は1年半分ほど。JMUは20年3月期の純損益が360億円の赤字を見込むほか、三井E&Sも同期の連結最終損益が3期連続で赤字の予想だ。業界再編のタイムリミットはすぐそこに迫っている。 <グローバルで勝つためには?> PS(2020.3.27追加):*20-1のように、新型コロナの感染拡大によってヒト・モノが国境を越えられなくなったことで、世界の株式時価総額が1月に比べて米国・日本のGDP合計を上回る30兆ドル近くも吹き飛んだそうだが、株式時価総額は将来性に関する気分が影響する数字であって実体経済ではないため、多いからと言って生活に役立つわけではない。また、外国の製品に依存しすぎている現在、技術維持のために自給率向上や国産化を志向するのは当然であり、島国化を志向しているわけではない。それより、国際協調を叫んでみても、独立して力強く生きられる国が協調するのではなく、他者に依存しなければ生きていけない国が集まっても、力強い協調にはならないので、むしろ邪魔者扱いされるだろう。そのため、「独立して力強く生きられる国になれば、生活水準を落とす」という状態を変えなければならないのである。なお、多くの日本企業は、千載一遇の幸運があったおかげで、グローバル化の担い手になる実力を持っているが、強いままでいられるためには、合理的な経営を続けることが不可欠である。そして、合理的なグローバル経営は、①市場の大きな国で ②市場に合った製品を安価に作り ③できるだけ税金の安い国で利益を出して利益を最大化し ④次の有望な投資に繋げること であり、日本は②③が劣っている上、変な規制や不合理な邪魔が多いため、④の有望さもなくしているわけだ。 なお、*20-2は、「⑤2018年度の日本企業の内部留保が金融・保険業を除く全産業で463兆円となり過去最高を更新した」「⑥しかし、設備投資は2001年度がピークでその後は5%近く減少したままである」「⑦従業員への賃金支払い減少で国内市場は縮小し、企業は海外に出ていくという悪循環が生まれた」「⑧そのため内部留保課税すべき」としている。しかし、2000年以降は従業員への賃金支払いも減少したかもしれないが、年金支給額も減ったため、日本は①の市場がしぼみ、それでも②③は新興国と比較して高いため、④の有望な投資先でなくなるという悪循環に陥っている。つまり、国民から高い税金をとり社会保障を削減して、国が生産性の低い事業(原発・辺野古埋立等々)につぎ込めばつぎ込むほど、全体の生産性が低くなり、さらに有望な市場ではなくなって、企業・産業・金を追い出すことになるわけだ。 *20-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200327&ng=DGKKZO57276300W0A320C2MM8000 (日経新聞 2020.3.27) コロナ危機との戦い(5)「島国化」は繁栄生まぬ 世界の株式時価総額は一時、1月に比べて30兆ドル近くも吹き飛んだ。失われた富は、米国と日本の年間国内総生産(GDP)の合計を上回る。新型コロナウイルスの感染拡大で、ヒトやモノが国境を越えられなくなることが、どれだけ深刻かが目の当たりになった。人は、旅行にも出張にも、出稼ぎにも留学にも行けない。外国の製品を注文しても届かない。企業は、外国からの部品の調達も有能な人材の採用も難しい。経営者は業績の見通しすら語れず、雇用を減らし、株安で人々が保有する財産の価値を傷つけている。「悪いのはウイルス」。確かにそうだが、混乱はいずれ起きていたのではないか。それほど世界の分断は進んでいた。起点は2016年にある。英国が欧州連合からの離脱を決めた「ブレグジット」と、米国第一主義を掲げるトランプ氏が大統領選を制した年だ。それ以降の世界は貿易戦争の連鎖など内向きの姿勢だけが目立った。世界は「島国化」、つまり外国との交流を好まない島国の集合体にすら例えられるようになった。コロナ危機は今、「16年体制」に共感した人々に問いかけている。「生活の水準を落としてでも島国化を進めたいのか」と。「もちろん」と自信を持って答えられる人は激減しているだろう。焦点は強制的な分断が解ける「コロナ後」だ。内向きの根底にある人々の不満を抑え、今度こそグローバル化を持続的にできるかどうか。覇権主義と結びついたグローバル化は反発を受けるだけだ。中国が「ワン・チャイナ」を押しつけたからこそ、香港人は大規模デモで逆襲した。大企業のエゴも障害だ。低コストのみを追った途上国での劣悪な労働環境、地元での雇用や納税を軽んじる姿勢での海外進出……。ゆがんだグローバル戦略への批判は世界的な資本主義の見直し論議に発展している。多くの日本企業にはグローバル化の担い手になるチャンスがある。欧米企業と異なり、海外企業を買収する豊富な現金がある。国内の人口減で課題だった海外市場の開拓を進めるときだ。2008年のリーマン危機で、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は破綻寸前の米モルガン・スタンレーに出資した。モルガンはその後、MUFGの連結利益を年平均1000億円以上押し上げてきた。株価の暴落は、それ以降の世界を変える。リーマン危機の際、世界は保護主義への誘惑を断ち、逆に20カ国・地域(G20)が新たに連携して危機を封じ込めた。1929年10月24日の米株価大暴落「暗黒の木曜日」は、世界恐慌を招いた。保護主義が経済のブロック化を経て第2次世界大戦につながった。収まらない米中の緊張や、原油産出量の調整に背を向けたサウジアラビアやロシアの姿勢には、当時のきな臭さがある。大強気相場の死と繁栄の時代の終わり――。フレデリック・アレンは20年代の米国の熱狂と終幕を描いた「オンリー・イエスタデイ」で、29年の暴落をこう位置づけた。強気相場は去ったが、繁栄まで終わりにしてはならない。 *20-2: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200305&ng=DGKKZO56376870U0A300C2KE8000 (日経新聞 2020.3.5) 積み上がる内部留保(下)年間増加分に課税も一案 小栗崇資・駒沢大学教授(おぐり・たかし 1950年生まれ。中央大法学部卒、明治大博士(商学)。専門は会計学・経営分析) <ポイント> ○00年度までは売上高増を設備投資に充当 ○人件費削減と法人減税で内部留保が急増 ○設備投資や賃上げに活用なら控除可能に 財務省「法人企業統計」によると、2018年度の日本企業の内部留保は金融業・保険業を除く全産業ベースで463兆円となり、過去最高を更新した。本稿では、なぜ内部留保は増え続けるのか、その活用は可能なのかを考えたい。内部留保とは当期純利益から配当を差し引いた残りの利益で、企業内に蓄積された分をいう。利益剰余金として開示されるのが「公表内部留保」だ。さらに法人企業統計は、引当金・準備金やその他資本剰余金などを付加したものも内部留保としており、これに資本準備金を加えたものを「実質内部留保」とする。内部留保は企業にとっては設備投資などに活用可能な内部資金となる。内部留保の形成過程や使途をみることは、日本経済の資金面の状況を明らかにするのに重要な手掛かりとなる。ここでは資本金10億円以上の約5千社(金融業・保険業を除く)の内部留保をみる。大企業は全法人の2%に満たないのに、その内部留保は234兆円(利益剰余金)と日本全体の半分を占めており、内部資金の動態を決定づけている。図は内部留保の歴史的推移を、経済の節目ごとに区切って示したものだ。1971~85年度は通貨危機や石油危機の影響で高度成長が減速し、景気回復を経てバブル直前に至る段階だ。内部留保の要因となるのは大幅な売上高の増加(4.7倍)で、公表内部留保は28兆円増えている。実質内部留保や借入金も加わり、使途としては設備投資が71兆円増加している。1986~2000年度はバブル経済の隆盛と崩壊後の不況に陥る段階だ。売上高が1.5倍増となったのを要因に、公表内部留保は52兆円増えている。実質内部留保も加わり、使途としては設備投資が115兆円増加している。不況下でも内部留保が積み上がり、設備投資がかつてなく増大した。2つの段階の共通した特徴は、内部留保の主たる要因が売上高の大幅な増加にあった点と、その使途が設備投資だった点にある。だが2001年度以降の段階は様相が一変する。2001~18年度はかつてなく膨大な内部留保が形成され、1986~2000年度と比べて3倍近くに激増した。それ以前の段階と異なり、主たる要因は売上高増加ではない。売上高は1.1倍程度とほとんど伸びていないのに、なぜ多額の利益が生まれ、内部留保は急増したのだろうか。要因は2つある。一つ1990年代末から始まった非正規雇用の拡大や賃金削減による人件費削減だ。福利厚生を加えた従業員1人当たりの給付は2001年度の763万円をピークに減り続け、2009年度には668万円まで落ち込んだ。ここ数年上昇がみられるが、現在も700万円を切る状態にある。人件費削減により売上高が増えなくても利益が増える仕組みがつくられた。仮にピーク時の763万円が毎年、従業員全員に支払われたと仮定し、実際の給付額との差を計算すると、18年間の差額合計は82兆円にのぼる。そうした人件費削減分が内部留保に回ったとみることができる。もう一つの要因は法人税減税だ。法人税率は1997年度まで37.5%だったが、段階的に引き下げられ現在では23.2%にまで低下している。住民税、事業税を加えた法人3税の実効税率(東京)でみると1997年度の49.98%から大幅に低下している。仮に49.98%の実効税率が続いていたとすると、2001~2018年度の18年間で実際の税額との差額合計は46兆円となる。税負担にならなかった分がやはり内部留保に回ったとみることができる。海外子会社からの配当なども加わるが、公表内部留保増加分149兆円の大半(128兆円)は2つの要因から生み出されている。さらに実質内部留保増加分44兆円も加えた内部資金は何に使われたのだろうか。2001年度以降の内部留保の主な使途は設備投資ではない。設備投資は2001年度がピークで、それ以降は5%近く減少したままだ。それ以前は、内部留保は設備投資に回っていたが、2001年度以降は主に金融投資や自社株買い、子会社投資、M&A(合併・買収)に投入されている。なお、海外子会社での設備投資については別途検討が必要だ。このように内部留保の構造は大きく変化している。21世紀に入って以降、日本企業は売り上げ増でなく、人件費削減や法人税減税から得た利益を内部留保に回し、設備投資ではなく金融投資や子会社投資に投入している。その結果、従業員への賃金支払いの減少により国内市場は縮小し、企業は海外に出ていくという悪循環が生まれている。内部留保が設備投資に投入され雇用が生まれるのを「良い内部留保」とすれば、金融投資などに回るだけで雇用や市場拡大につながらない内部留保は「悪い内部留保」と言わざるを得ない。膨大な内部留保は、不況やグローバル化に対する恐怖心を契機に生まれたが、国内に投資先が見いだせないまま今日では「金余り」の状態にある。それは富の偏在を通じて格差を生み出す結果をもたらしている。それでは、内部留保をどのように社会的に活用すべきだろうか。有効活用を求める声は高まっているが、残念ながら個々の企業の自主性には期待できない。そこで考えられるのが内部留保への課税だ。日本の税制は法人擬制説に立っており、利益はすべて株主に配当されることを建前とする。利益には1段階目で法人税が課され、2段階目で株主に回った配当に所得税が課される。内部留保課税は「二重課税」という批判があるが、日本企業は配当よりも内部留保の割合が高く、2段階目の多くの部分に課税されていない。内部留保課税は、2段階目の所得課税を補完するものであり「二重課税」ではない。米国では1930年代のニューディール政策の一環として内部留保課税が導入され、現在まで続いている。配当を支払わず合理的な必要なしに留保された利益に課税される(税率20%)。日本での同族会社(資本金1億円以上)への内部留保課税と狙いは同じだが、全法人に適用される。近年では、台湾でも98年から実施され(現行税率5%)、15年からは韓国でも実施されている(現行税率22%)。いずれもフローベースで、毎期の内部留保の増加分に課税される。台湾では全法人が対象となり、未配当利益に控除なしに課税される。韓国では自己資本500億ウォン(約45億円)超の約4千社が対象となり、設備投資や賃上げに活用した場合は控除される。台湾では配当を促進する効果、韓国では設備投資や賃上げを促すインセンティブ(誘因)を持つと考えられる。日本では個人株主が少なく配当促進効果が期待できないので、韓国型の内部留保課税が参考になる。仮に資本金1億円以上の法人の内部留保増加分(20兆円)に控除を経て税率20%で課税した場合、毎期3兆円の税収が見込まれる。内部留保の社会的活用を目的とし、教育や研究、社会保障などのために利用することで、企業や国民の同意を得られるのではないか。
| 経済・雇用::2018.12~2021.3 | 09:26 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2020,01,23, Thursday
![]() (図の説明:左図のように、米軍基地は関東と沖縄に集中しており、中央と右図のように、沖縄は約2億3千万m₂と日本全体の約74%を占める。これは、太平洋戦争後の状況に応じて設置されたもので、現在の自衛ニーズに合わせた配置ではない。また、首都圏に6箇所もの広大な基地があるのは土地の無駄使いである上、合目的的でもなく、沖縄は全体が基地の島になっているのに尖閣諸島の領海に中国船が頻繁に入っているのは、自衛のニーズに合っていない証拠である) (1)日米同盟の必要性 1)日米リーダーの認識 2020年1月19日で日米安全保障条約改定から60年となるのに合わせ、米国のトランプ大統領は、*1-3のように、「①60年間の強固な同盟関係は、米国、日本、インド太平洋地域、そして世界平和、安全、繁栄に不可欠だった」「②安全保障環境が変わって新たな課題が出てくる中、同盟をさらに強化・深化させることが不可欠で、日本の貢献が増すことを求める」という声明を発表し、米国国務省のオータガス報道官も、2020年1月17日、「③負担は公平でなければならない」とした。 日本の安倍首相は、2020年1月19日、日米安全保障条約署名60周年を記念する式典で、*1-4のように、「④日米安保条約は、アジアとインド太平洋、世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」「⑤60年・100年先まで日米同盟を守って強くしていこう」と呼びかけた。 私は、日本のみでは自衛することも不可能で、人権や世界情勢に疎い日本政府のみの判断で猛進されるとむしろ危険であるため、日米同盟は必要だが、それには、以下に述べる多くの問題点を解決することが必要だと考える。 2)問題点 信濃毎日新聞は、*1-1のように、「①日米安全保障条約は、朝鮮戦争中の1951年に締結され、米軍の日本駐留がサンフランシスコ講和条約を結ぶ上での条件だった」「②1960年1月19日に改定され、米国の日本防衛義務が5条に盛られると同時に、日本に防衛力の維持・発展を義務付け、在日米軍を守る義務も課した」「③60年経過したので、そろそろ外交の基軸を築き直せ」と記載している。 1991年にイラクがクウェート侵攻した時は、日本は、平和憲法のおかげでExcuseできて自衛隊を派遣せずにすんだが、130億ドル(約1兆3千億円)の資金拠出をしても、今一つ感謝されなかった。その後、日本は、海賊から自国の船を護るためと言いつつ自衛隊を海外派遣するようになったが、集団的自衛権は認めていないというExcuseにより、米国と一緒に戦争に参加することはなかった。 しかし、2000年代になって米中枢同時テロ後、日本は、テロとの戦いを宣言した米国を支持してテロ対策特別措置法を成立させ、海上自衛隊をインド洋での給油活動に従事させた。また、国連決議のないイラク戦争でも、日本はイラク復興支援特措法を設けて、サマワに陸上自衛隊を駐屯させた。集団的自衛権も自衛権のうちだが、それを認めた現在では、米軍の活動に対する自衛隊支援の地理的制約が機能しにくくなった。 このような中、日本は、米国から兵器を大量購入し、米軍との連携領域を宇宙やサイバーへと広げ、唯一の被爆国でありながら核兵器禁止条約に参加できず、防衛費や在日米軍経費を膨らませ、日米地位協定の改定もせずに、内政面でも不利な日米貿易協定を呑んだ。 また、北海道新聞が、*1-2に記載しているように、戦後の日本は、冷戦の中で米国と経済・安保の両面で協調することによって発展を遂げたが、国際情勢は冷戦期から大きく変わり、米国はトランプ政権の下で「世界の警察官」の立場から降りようとしている。また、米軍との連携を目的にした自衛隊の中東派遣は、海外での武力行使を禁じた日本国憲法に違反しており、行き過ぎた対米追従は平和憲法という宝を失う行為となる。 そのため、「外交・防衛は、親分の米国を頼って日米安保のみ」という構図は考え直し、米国とは密に連携しながらも多国間協調や平和を大切にする独立した大人の外交が、今後の日本には求められる。 (2)日米同盟の具体的なコストと効果 1)膨張する防衛費は、専守防衛に適合したものか? 政府は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍拡など安全保障環境の厳しさを強調し、防衛費を拡大させ、*2-2・*2-3のように、トランプ米大統領の求めに応じて対外有償軍事援助(FMS)として米国製の高額な最新鋭兵器を買っているが、日本の厳しい財政事情の下、その目的と費用対効果は厳しく吟味すべきだ。 つまり、2020年度の当初予算案で、防衛費は5兆3133億円で、文教・科学振興費の5兆5055億円に匹敵し、公共事業費の6兆8571億円に近づく規模だからで、「防衛費のために社会保障費を削る」というのは、国民生活を直撃することによって個人の命をないがしろにしており、それこそ「国民の命を護る」という理念から外れる。 私は、外交や防衛の専門家ではないが、会計・税務・財務の専門家として、31億円もかけて護衛艦を空母に改修するのは、艦の安全性を害さないのか、ミサイル時代に意味があるのか、について疑問に思う。また、そこで運用される米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bも6機で793億円もし、陸上配備型迎撃ミサイルシステムは、(配備先がまだ決まっていないのに)米国からの発射装置の取得等に129億円を投じ、最終的には東西2基で5千億円を超える巨額だそうで、他にもあるだろうから、これこそ合計額とその明細を明らかにすべきである。 そして、昨年末に改定された「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」は、「陸海空のみならず宇宙・サイバー空間などの新たな領域への対応」を掲げており、これらは日本の専守防衛の方針に合致しているのか疑問であるため、国会の予算審議では導入の必要性や是非から議論してもらいたく、これらの議論は、刑事事件にならない「桜を見る会」やちゃちな公選法違反の追及よりも、文字通り桁違いに重要なのである。 ただ、トランプ米大統領の強い要請から、安倍首相が米国への政治的配慮をせざるを得ない事情はわかる。それは、親分である米国を頼って好き勝手なことをしながら、日本国内のメディアがトランプ大統領をコケにする報道をしたり、交渉の担い手である安倍首相の続投を危うくさせたりしているからで、これではトランプ大統領には、とりわけ高い報酬をもらわなければ、安倍首相と交渉して日米同盟を続けるメリットはないわけである。 つまり、日本メディアの問題点は、官僚が政策のKeyを握っており、(それを知っているにもかかわらず)責任だけを政治家にかぶせ、本当はあまり力のない政治家を批判して権力と闘っているポーズをとっていることで、この形だけの民主主義は本物の民主主義国では通用しないということなのである。 2)辺野古新基地と馬毛島・グアム移転の並立は不要な筈である 沖縄県名護市辺野古の新基地建設は、日本を護るための費用対効果が低すぎるため、日米同盟の維持に不可欠というよりも、公共事業者への利益誘導に変質してしまったようだ。 具体的には、*2-4-1・*2-4-2のように、米軍普天間飛行場の移設は、辺野古に軟弱地盤が存在するため、地盤改良5年、埋め立て5年、施設整備3年を要し、合計13年以上かかり、総工費は最大2兆6500億円まで膨らむそうだ。政府の試算は確かに杜撰であるため、費用対効果からみた辺野古新基地建設の必要性を早急に再検討すべきだ。 また、埋め立て予定海域への外部の土砂の投入も生態系を破壊しており、*2-4-3のように、鹿児島県の馬毛島に基地のうち日本の防衛に必要な部分を移転すれば、埋め立てや自然破壊は不要である。にもかかわらず、政府が前のめりに突き進んでいるのは、米政権の意向より、政府の対面や公共事業の既得権益の影響の方が大きいのではないだろうか。 さらに、日本の防衛に不必要な部分は、*2-4-4のように、グアムに移転すればよく、米軍は2024年10月から約5千人の海兵隊員が移転を始め、約一年半かけて完了させる方針だそうで、米国もまた安全保障環境の変化に応じて柔軟に対応すればよいのである。 そして、2012年に日米両政府が修正合意した米軍再編計画では、在沖縄海兵隊約1万9千人のうち約9千人をグアムやハワイなどへ移転させることや、米軍普天間飛行場の辺野古移設が盛り込まれたそうだが、石垣島や宮古島に自衛隊基地ができ、自衛隊と米軍の運用の一体化がいっそう進む以上、もっと多くの海兵隊員をグアムやハワイ、場合によっては台湾やその他の地域に移転させることが可能であろう。 3)「思いやり予算」について 第二次世界大戦終結から75年、冷戦終結から30年が経過して、安全保障環境が変化した結果、米国は、*2-5のように、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を約20億ドルから約80億ドル(80億ドルX109円/ドル=8720億円)に増額することを要求している。 これは、米国にとって日本に置く基地の必要性が下がったということであるため、米軍は世界規模でやるべきことが他に山ほどあることにも鑑み、トランプ大統領に米軍駐留経費負担を現在の4倍以上に増額することを求められたのをよい機会として、日本の自衛のために役立っている米軍基地だけを残して日本にある米軍基地を1/4以下に減らし、駐留経費を現状維持するか、それ以下に下げるのが日本にとっても都合がよいと考える。 4)日米安保条約60年の平和主義を前提とした効果的な再構築は? 熊本日日新聞も、*2-1のように、「①日米安全保障条約は2020年1月19日で60年を迎えた」「②戦後の復興と繁栄を支える土台となった安保体制の重要性は今後も変わらない」「③日本では、米国の戦争に巻き込まれるリスクへの懸念が根強く、過度な一体化を危ぶむ声もある」「④日本は憲法が掲げる平和主義を前提に、米国との関係をどうつくるのかを再検討する時期に来ている」「⑤在日米軍人らの特権を認めた日米地位協定も抜本的な見直しが急務だ」としており、そのとおりだと思う。 (3)中東への自衛隊派遣について 政府は、*3-1・*3-4のように、トランプ大統領の要請に応じ、自衛隊を中東に独自派遣する方針となったが、徳島新聞が記載しているとおり、この局面での日本のトランプ大統領への追従は高リスクだと私も思う。 このように、民主主義国である米国の行動に問題がある中で、中国との関係修復を進めているが、中国は国内の民主化が課題の国であり、日本は、日本国憲法に基づいた独立的な距離感を持つことが求められる。 なお、*3-2・*3-3のように、ホルムズ海峡周辺への自衛隊派遣は、自衛隊法に基づいておらず、自衛隊の海外派遣を日常化させたい日本政府が米国からの有志連合への参加呼びかけを「渡りに船」で選択したものだと言われており、安保法制の下で日本が紛争に巻き込まれたり、日本が武力行使を行うことになる恐れがある。そのため、外国での武力による威嚇や武力行使を禁止する日本国憲法9条に反すると思う。 ・・参考資料・・ <日米同盟の必要性> *1-1:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200119/KT200118ETI090005000.php (信濃毎日新聞 2020.1.19) 日米安保60年 「外交の基軸」を築き直せ 1991年秋、米国の大学に留学中の筆者は、教室で学生からの“総口撃”にさらされた。イラクのクウェート侵攻を受けた湾岸戦争から半年余り。「なぜ日本は自衛隊を派遣しなかったのか」「カネでは協力にならない」「そんな同盟国は要らない」。日本が対米傾斜を深め、自衛隊の海外派遣に道を開いた戦争だったことは後で知った。いまなら米国の学生たちに、どんな意見を返すだろう。 <湾岸戦争を契機に> 日米安全保障条約は朝鮮戦争さなかの1951年に結ばれた。日本が防衛手段を持つまでの「暫定措置」とされたものの、米軍の日本駐留は、サンフランシスコ講和条約を結ぶ上での条件だった。米国がこの権益を手放すことはなく、60年前のきょう、新日米安保条約に改定されている。旧条約で曖昧だった米国の日本防衛義務が5条に盛られた。日本に防衛力の維持・発展を義務付け、在日米軍を守る義務も課した点は見落とせない。米国が防衛力増強と負担分担を、日本に繰り返し迫る根拠となった。条文は在日米軍の活動範囲を日本と極東に限っている。が、ベトナム戦争や70年代からの中東危機で、この制約は当初からないがしろにされてきた。安保体制が大きく変容し始めたのは冷戦が終わってからだ。湾岸戦争を前に、米国は日本に人的貢献を求めた。海部俊樹政権は「平和憲法がある」とし、130億ドル(約1兆3千億円)の資金拠出で応えている。この対応は「小切手外交だ」との猛烈な批判を招く。米国に見限られる―。日本の外務・防衛当局に不安が広がったという。海部政権は結局、初の自衛隊海外派遣に踏み切り、戦後のペルシャ湾で機雷掃海に当たらせた。冷戦終結で薄れつつあった安保の意義は、極東条項を離れ「アジア太平洋地域の安定と繁栄の基礎」に再定義される。「湾岸のトラウマ」と呼ばれた政府の経験は、世紀が変わって間もなく起きた米中枢同時テロ後の反応となって表れる。テロとの戦いを宣言した米大統領を小泉純一郎首相はいち早く支持し、おざなりな国会審議でテロ対策特別措置法を成立させる。海上自衛隊はインド洋での給油活動に従事した。国連決議のないイラク戦争も日本は認めた。イラク復興支援特措法を設け、陸上自衛隊は安全とは言えないサマワに駐屯する。安保の定義は「世界課題への対処」へとさらに範囲を広げている。 <際限なき軍拡より> 違憲性も安保条約の枠も顧みず、米国の世界戦略に追随する路線を安倍晋三政権も踏襲する。憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認。在日米軍の活動範囲と自衛隊による後方支援の地理的制約を取り払った。台頭する中国へのけん制を意図し、専守防衛から懸け離れた兵器を大量に購入、米軍との連携領域を宇宙やサイバーへと広げつつある。安倍政権は日米同盟を「外交の基軸」に据える。国際社会への協力と対米協力が同義となった日本の外交と政策は主体性を失っている。トランプ米政権がパリ協定から離脱しても意見できない。唯一の被爆国でありながら、イラン核合意や中距離核戦力(INF)廃棄条約の破棄も止められず、米国の反発を恐れて核兵器禁止条約への参加に二の足を踏む。内政面でも、不利な日米貿易協定をのまざるを得なかった。防衛費や在日米軍経費は膨らみ、基地を抱える地域の危険除去に欠かせない日米地位協定の抜本的な改定すら言い出せずにいる。あのころの米国の学生たちに、こう伝えてみたい。「小切手外交」も無意味ではなかった。東日本大震災の際、クウェートでは「私たちが支援する番だ」との声が上がり、多額の義援金が寄せられた。たくさんの原油を無償提供してくれた。戦後の経済支援は東南アジアで日本への信頼を培った。日本が本気になって多国間協調による地域の平和構築を提唱すれば、戦禍を被ったアジアの国々が背を向けるとは思えない、と。そのためには、凝り固まった外交=安保の構図を解きほぐす必要がある。アジアや国際社会の安定に向けた日本の役割を整理する。安保の適用範囲を極東に戻して米国の世界戦略と一線を画し、自律した外交構想に組み入れたい。不安定な世界情勢で安保体制の見直しは現実的でない―。そんな声が聞かれる。際限のない軍拡競争は対立の大本を正しはしない。条約を逸脱した日米安保の現状こそが、北東アジアの秩序を揺さぶっている現実に、もっと目を向けなくてはならない。 *1-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/384535 (北海道新聞 2020.1.19) 日米安保60年 追従ばかりでは危うい 現行の日米安全保障条約の署名から、きょうで60年を迎えた。戦後日本は米国と経済、安保両面で協調することによって発展を遂げてきた。だがいま、安保協力の中身と、取り巻く国際情勢は、冷戦期から大きく変質している。その一つは、安倍晋三政権が自衛隊と米軍の一体化を加速させていることだ。今月には米軍との連携を事実上の目的にした自衛隊の中東派遣に、国会の熟議もなく踏み切った。憲法は海外での武力行使を禁じている。専守防衛を逸脱しかねない行き過ぎた対米追従は危うい。米国はトランプ政権の下で自国第一主義に走っている。「世界の警察官」の立場から降りようとし、同盟国には見返りを求めている。安保条約の趣旨は、日本が米国の言いなりになることではない。中国が軍事面でも台頭し、テロも多極化する中、日本が平和国家の道をどう歩み続けるのか。対米連携とともに、多国間の協調に軸足を置いた外交・安保に力を注ぐのが取るべき道だろう。今年直面するのが米軍駐留経費を巡る特別協定の改定交渉だ。トランプ政権が11月の大統領選を見据え、日本に一層の負担増を求めてくることは間違いない。本来は米側が支払うべき人件費などについて、日本側が負担する「思いやり予算」は本年度、1974億円に上る。日本の負担割合は同盟国の中で突出して高く、すでに8割を超えているとされる。にもかかわらず、米側は昨年夏、瀬踏みをするかのように現行の5倍の負担を求めてきたという。論外である。米軍は中国や北朝鮮、ロシアなどの脅威を見据え、在日米軍基地をアジア・太平洋地域の戦略拠点としている。こうした米側の利益を踏まえ、一方的な主張に対しては明確に反論すべきだ。日米安保によって、沖縄には国内の米軍専用施設の7割が集中する。戦後はまだ終わっていない。県民が反対する中、安倍政権が工事を強行する、米軍普天間飛行場の辺野古移設がその象徴だ。米海兵隊の輸送機オスプレイの訓練が今週から道内で実施される。沖縄の負担軽減を名目に、日本全体にその負担がじわじわ広がっていることも見過ごせない。米軍の特権的な法的地位を定めた日米地位協定は一度も改定されていない。米国に追従する前に安倍政権がなすべき懸案は山積している。 *1-3:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200119/k10012250921000.html (NHK 2020年1月19日) 日米安保60年 トランプ大統領が同盟の意義を強調 日米安全保障条約の改定から19日で60年となるのに合わせ、アメリカのトランプ大統領は「60年にわたり両国の強固な同盟関係は世界の平和、安全、繁栄に不可欠なものだった」などとする声明を発表しました。1960年に改定された今の日米安全保障条約は、19日で署名から60年となります。これに合わせ、アメリカのトランプ大統領は18日、声明を発表しました。この中でトランプ大統領は、「過去60年にわたり、両国の強固な同盟関係はアメリカ、日本、インド太平洋地域、そして世界の平和、安全、繁栄に不可欠なものだった」と同盟の意義を強調しています。そのうえで、「安全保障をめぐる環境の変化が続き、新たな課題が生じる中で、日米同盟を一層強化し深めることが不可欠だ。今後、相互の安全保障への日本の貢献がさらに増し、同盟関係が引き続き発展していくと確信している」として、日本のさらなる貢献に期待を示しました。日米同盟をめぐっては、アメリカ国務省のオータガス報道官が17日、NHKとの単独インタビューで、「負担は公平でなければならない」と述べるなど、トランプ政権はことし夏にも本格化する見通しの日本とのアメリカ軍の駐留経費をめぐる交渉で、日本に対しさらなる負担を求めていく姿勢を示しています。 *1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200120&ng=DGKKZO54579580Z10C20A1MM8000 (日経新聞 2020.1.20) 首相、日米安保条約は「不動の柱」 署名60年記念式典で 安倍晋三首相は19日、現行の日米安全保障条約署名60周年を記念する式典に出席した。日米安保条約に関し「今やいつの時代にもまして不滅の柱。アジアとインド太平洋、世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」と述べた。「60年、100年先まで日米同盟を堅牢(けんろう)に守り、強くしていこう」とも呼びかけた。首相は「宇宙、サイバースペースの安全や平和を守る柱として、同盟を充実させる責任がある」と強調し、新たな課題に対処するため同盟関係の拡充をめざす考えを示した。日米同盟を「希望の同盟」と表現し「歩むべき道はただ一筋。その希望の光をもっと輝かせることだ」と語った。トランプ米大統領は記念式典に先立ち、18日に声明を発表し「安全保障環境が変わり新たな課題が出てくるのに伴い、同盟をさらに強化し深化させることが不可欠だ」と訴えた。「日本の貢献の拡大と同盟の発展が続くことを確信している」との期待感も示した。19日に都内で開いた記念式典には日本側から麻生太郎副総理・財務相や茂木敏充外相、河野太郎防衛相らが出席した。米側からはヤング駐日臨時代理大使やシュナイダー在日米軍司令官らのほか、条約署名時に大統領だったアイゼンハワー氏の孫らも参加した。現行の安保条約は1960年1月19日に、首相の祖父である当時の岸信介首相とアイゼンハワー氏のもとで結んだ。岸氏とハーター国務長官らが署名し、51年に結ばれた旧条約を全面改定した。首相は記念式典で「岸は日本の首相として米大統領とゴルフをした最初の人物だった。2番目は私だ。アイゼンハワーと岸が培った友情は新しい安保条約となって実を結んだ」と振り返った。 <日米同盟の費用対効果> *2-1:https://kumanichi.com/column/syasetsu/1329075/ (熊本日日新聞 2020年1月21日) 日米安保条約60年 平和主義前提に再構築を 日本と米国の相互協力をうたった現行の日米安全保障条約は、19日で署名から60年を迎えた。米国に日本防衛の義務を課す一方、米軍に基地を提供する条約は、日本の外交・安全保障政策の基軸と位置付けられてきた。戦後の復興と繁栄を支える土台となった安保体制の重要性は、新しい時代においても変わらないだろう。しかし「米国第一主義」を掲げるトランプ米大統領は、批判の矛先を日米安保にも向ける。さらに中国の台頭や北朝鮮の核危機など国際情勢は不安定さを増している。こうした中で日本は、憲法が掲げる平和主義を前提に米国との関係をどうつくるのか、再検討する時期に来ている。冷戦後の日米安保体制は、1996年の安保共同宣言が転機となった。湾岸戦争や朝鮮半島危機を経て、同盟の目的を「アジア太平洋地域の安定的繁栄」と再定義。翌97年に自衛隊と米軍の役割を定めた日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、自衛隊と米軍の運用の一体化がいっそう進んだ。さらに、2015年に安倍晋三政権下で成立した安全保障関連法は、集団的自衛権の行使を解禁し、地理的な制約なく米軍の後方支援を可能とした。日本では、米国の戦争に巻き込まれるリスクへの懸念は根強く、過度な一体化を危ぶむ声もある。こうした対米追随の進行にもかかわらず、日米同盟は盤石とは言えない。トランプ氏は、防衛義務と基地提供という「非対称」の負担を、「不公平だ」と主張する。改定交渉が本格化する在日米軍駐留経費は、負担増が求められるに違いない。米政権が迫る巨額の米国製の防衛装備品の調達により、防衛予算は膨らみ続けている。安保条約と同時に署名され、在日米軍人らの特権を認めた日米地位協定も、抜本的な見直しが急務だ。沖縄をはじめ各地で住民の暮らしが脅かされる状況が続く限り、国民の信頼は得られない。内向き志向を強める米国は、国際社会での影響力低下は避けられないだろう。日本は日米安保体制を基軸としながら、中国との互恵関係や、対北朝鮮での韓国との連携など多角的な外交を展開し、これからの時代に合った安全保障の枠組みを築いていく必要がある。 *2-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14303890.html (朝日新聞社説 2019年12月23日) 膨らむ防衛費 ゆがみを生む対米配慮 トランプ米大統領の求めに呼応するかのように、米国製の高額な最新鋭兵器を買いまくることが、防衛予算のあり方をゆがめはしないか。厳しい財政事情の下、その費用対効果が厳しく吟味されなければならない。 安倍政権が決めた2020年度の当初予算案で、防衛費が今年度当初に比べ、1・1%増の5兆3133億円となり、6年連続で過去最大を更新した。文教・科学振興費(5兆5055億円)に匹敵し、公共事業費(6兆8571億円)に近づく規模である。社会保障費の自然増などで財政の硬直化が進むなか、防衛予算を聖域化することなく、国民生活全体に目配りした配分が必要だ。専守防衛からの逸脱だとして、朝日新聞の社説が一貫して反対してきた護衛艦の空母への改修に31億円が計上された。そこで運用される米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bは、まず6機を793億円で購入する。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」には、配備先がまだ決まっていないというのに、米国からの発射装置の取得などに129億円を投じる。最終的には東西2基で5千億円を超える巨額の事業である。国会の予算審議では、導入の是非から議論するよう、改めて強く求める。安倍首相は1月の施政方針演説で、安全保障環境の激変に対応した防衛力の構築に向け、「従来とは抜本的に異なる速度で変革を推し進める」と語った。その帰結が米国製兵器の大量購入だとすれば、トランプ氏への政治的配慮が優先され、妥当性の分析がおろそかになっていると言わざるを得ない。安倍政権下ではすでに、米政府から直接兵器を買う有償軍事援助(FMS)が急増している。11年度の432億円が、19年度は7013億円に。20年度も4713億円と高い水準だ。高額な兵器は複数年の分割払いとなるため、「後年度負担」が将来の予算を圧迫する。20年度の契約に基づき、21年度以降に支払われる額は2兆5633億円にのぼり、訓練など本来必要な予算にしわ寄せが及ぶことが懸念される。昨年末に改定された「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」は、陸海空にとどまらず、宇宙やサイバー空間といった新たな領域への対応を掲げた。ただ、今回の予算案全体を見渡しても、さまざまな課題への優先順位は明確でない。徹底した取捨選択を進め、効率的な防衛力のあり方を主体的に考え抜かねばならない。近隣外交による緊張緩和を地道に進めながら、日本の安全保障を確かなものとすべきだ。 *2-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/570817/ (西日本新聞社説 2019/12/24) 膨張する防衛費 「専守」から逸脱しないか その規模の膨張だけでなく、中身の変質にも重大な懸念を抱かされる。2020年度政府予算案の防衛関係費のことだ。過去最高の5兆3133億円が計上された。第2次安倍晋三政権発足後、8年連続の増額となる。政府は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍拡など安全保障環境の厳しさを強調し、防衛費を拡大させる一方だ。総額を押し上げた要因に、米政府から直接、兵器を購入する対外有償軍事援助(FMS)がある。20年度も4713億円と安倍政権下で実に4倍に増えた。トランプ米大統領からの強い要請に応じたのではないか。地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」関連費も計上したが、まだ配備先も確定していない状況である。その必要性について十分に吟味したのか甚だ疑問だ。ここでも米国への政治的配慮が目立つ。さらに政策の変質もうかがえる。戦後日本が安全保障の基本原則としてきた「専守防衛」から、自衛隊が逸脱してしまうのではないかと疑念を生じさせる内容が含まれている。専守防衛とは、他国から攻撃されて初めて、自衛のため最小限度の防衛力を行使する-憲法9条に基づく考え方である。自衛隊は「盾」の役割に徹するため、攻撃型空母や戦略爆撃機は保有できないというのが、長年の政府見解だった。そこから変質した象徴が「いずも」型護衛艦の「空母化」改修費だ。米国から初めて取得する最新鋭ステルス戦闘機F35Bの搭載を想定し、離着陸できる甲板に改修する。遠洋でも運用可能にする計画である。今年の防衛白書では、戦闘機搭載は「必要な場合」に限り「多機能な護衛艦に変わりない」と記した。だが実態は専守防衛とは相いれない「敵基地攻撃能力」に該当するのではないか。政府は、戦闘機に搭載し、敵の射程圏外から反撃できる長距離巡航ミサイル「JSM」も導入する方針だ。護衛艦の空母化とともに、従来の政府見解との整合性を国内外に分かりやすく説明すべきだろう。自衛隊と米軍の一体化が進む中、自衛隊の運用面で専守防衛が有名無実化する恐れは否定できない。安倍政権は集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法制定をはじめ、専守防衛を空洞化させる動きを進めてきた。国民の理解を得ないまま既成事実を積み重ね、安保政策の基本をゆがめることは許されない。予算案には宇宙やサイバー、電磁波など新領域に備える組織の関連費用も盛られた。専守防衛を課された自衛隊がどこまで対応するのか。年明けの国会審議で徹底した議論を求めたい。 *2-4-1:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1047123.html (琉球新報社説 2019年12月24日) 辺野古埋め立て 血税の浪費直ちにやめよ 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、埋め立てに10年程度を要すると政府が見積もっていることが分かった。軟弱地盤が存在するためだ。順調に進んだとしても、普天間飛行場の返還は2030年代になる。辺野古移設が普天間の早期の危険性除去につながらないことは明らかだ。沖縄の民意に反するばかりか、貴重な自然を破壊し、血税の浪費につながる新基地建設は即刻中止すべきだ。県は昨年の時点で、地盤改良に5年、埋め立てに5年、施設整備に3年を要し、合わせて13年以上かかると指摘していた。大幅に長期化するという見通しの正しさが裏付けられた格好だ。県の試算によると、総工費は最大2兆6500億円まで膨らむ。投入される国費が莫大(ばくだい)な金額になるのは間違いない。だが政府は、埋め立て工事に要する総事業費を「少なくとも3500億円以上」としか説明していない。いつ完成するのか、費用はいくらかかるのか、といった肝心の部分を置き去りにしたまま、見切り発車で工事を始めたからだ。政府のやり方は泥縄式であり、ずさんの極みと言うほかない。日米両政府が13年に合意した現行の基地返還計画は、埋め立てに5年、施設整備に3年を見込み、普天間飛行場の返還は「22年度またはその後」とされた。工事は当初計画よりも大幅に遅れ、埋め立て工事の進捗(しんちょく)率は県の推計で全体の1%にとどまっている。埋め立てに「10年程度」かかるというが、実際はさらに長引く可能性もある。大浦湾側に軟弱地盤が存在することは昨年3月、市民が情報開示請求で入手した沖縄防衛局の地質調査報告書によって公になった。防衛省は把握していたが、認めたのは今年1月だ。都合の悪い情報を隠してきたのである。地盤の改良が必要な海域は73ヘクタールにも及ぶ。深いところでは海面から約90メートルに達している。砂を締め固めたくいを約7万7千本打ち込む工法が示されている。国内で前例のない難工事である。そもそも実現性さえ疑わしい。防衛省は地盤改良工事に入るための計画変更を年明け以降に県に申請するという。県は承認しない構えだ。新基地建設反対は玉城デニー知事の公約なのだから当然である。今後、新たな法廷闘争につながる可能性もある。埋め立ての賛否が問われた2月の県民投票で投票者の7割超が反対した。民意の重みをないがしろにし、問答無用で新基地建設を強行するさまは、およそ民主主義国家の振る舞いとは思えない。政府は新基地の建設を断念し、県内移設を伴わない普天間飛行場の速やかな全面返還を米国に提起すべきだ。この先10年以上も普天間飛行場の脅威が続く事態は断じて容認できない。 *2-4-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1049092.html (琉球新報社説 2019年12月27日) 辺野古9300億円 埋め立てを即時中止せよ 防衛省は25日、名護市辺野古の新基地建設の総工費を9300億円、完成までの期間を約12年とする試算を示した。大浦湾側に広がる軟弱地盤への対応で、総工費は2014年に明示した3500億円の約2・7倍になり、22年度以降とした普天間飛行場の返還時期は30年代以降にずれ込むことが確実になった。県が指摘してきた通り、国の新基地建設計画は大幅な見直しを余儀なくされた。県内の公共事業としては空前の規模だが、国民の反発を避けるため数字を過小に見積もったと見た方が妥当だ。国内に前例のない難工事であり、工費も期間もさらに膨れ上がる可能性が大きい。沖縄防衛局によると、移設事業に投じた予算は既に約1471億円に上っている。現時点で投入された土砂は埋め立て区域全体の1%程度にすぎないにもかかわらず、当初示した3500億円の3分の1以上を使っている。さらにこれから大規模な地盤改良工事が始まるというのに、9300億円でとどまるとは到底考えにくい。どのような工法でどれほどの費用を見込むのか、積算の根拠をまず説明すべきだ。そもそも政府は、大浦湾側に軟弱地盤が広がることを把握しながら、その存在を国民にひた隠しにしてきた。16年3月にまとめられた沖縄防衛局のボーリング調査報告書には、地盤の強さを示すN値がゼロという「マヨネーズ」並みの軟弱さを示す結果が示されていた。18年3月に市民の情報開示請求で報告書が明らかになった後も、政府は軟弱地盤の存在を明確にしなかった。同年9月の県知事選で、政権が支援する候補者に不利になると考えたからではないか。新基地建設に反対する玉城デニー知事が当選すると、政府は知事選までの間は止めていた海上工事を再開。昨年12月に、埋め立て予定海域への土砂の投入を強行した。費用や期間が大幅に膨れ上がると知りながら、土砂投入に突き進んだ。埋め立ては止められないという既成事実をつくるためとみられる。沖縄の民意の無視はもちろん、税金で基地建設費を負担する国民を欺く行為だ。国の借金は国内総生産(GDP)と比べた比率で、主要国最悪の水準だ。富を生み出さない米軍基地の建設に、天文学的な額の税金を費やすなどばかげている。玉城知事は総工費が最大2兆6500億円、完成までの年数は13年以上という独自の試算を示し、普天間の危険性除去について新たな道を探る対話を政府に訴えた。軟弱地盤をはじめ基地建設に適さない条件を抱える辺野古は、もはや唯一の解決策ではない。 現計画に固執すれば、国の財政規律をゆがめ、普天間の危険性除去が一層遠のく。政府は埋め立て工事を即刻中止し、県との協議に臨むべきだ。 *2-4-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/569722/ (西日本新聞 2019/12/20) 馬毛島買収、評価額の3倍超に疑問も 米艦載機の訓練移転用地 米軍艦載機の訓練移転候補地として、政府が進める鹿児島県・馬毛島(西之表市)の買収に疑問の声が上がっている。地権者と再合意した買収金額約160億円は、政府が2016年度に算定した評価額の3倍超に。国の公害等調整委員会が「森林法への抵触」を認定した、地権者による独自工事の費用を上乗せしたためとみられる。なりふり構わぬ買収劇の背景には、安全保障に「応分の負担」を迫る米トランプ政権の圧力がある。政府は11月29日、馬毛島(約8平方キロ)の99%を所有する開発会社「タストン・エアポート」(東京)と売買の再合意にこぎ着けたが、それまでには紆余(うよ)曲折があった。関係者によると、タストン社には土地売却後も島に拠点を残し、資材の供給などで訓練場建設に参画したい意向があり、交渉過程で「4万坪(0・13平方キロ)は訓練場の完成まで売らない」と主張。防衛省は島全体の国有化を目指しており、一時期は決裂寸前になった。だが、菅義偉官房長官、和泉洋人首相補佐官を中心とする首相官邸が「全面譲歩」を防衛省に指示。政府はこの4万坪を買収する際、タストン社の要求に応じ、さらに5億円程度を追加して支払うことも検討しているという。「国の用地買収としては異例の譲歩」(官邸幹部)を重ねたプロセスだった。 ■ 政府が前のめりに突き進んだのは、米政権の意向が大きい。馬毛島で計画されているのは、陸地を空母に見立てて離着陸を繰り返すFCLPと呼ばれる訓練で、「空母の能力を維持する上で最も重要」(防衛省幹部)。現在は硫黄島(東京)で行われているが、艦載機部隊の置かれる米軍岩国基地(山口県)から約1400キロと遠く、米国は航続距離の短い機種には危険が伴うと懸念していた。平たんな無人島の馬毛島は岩国から約400キロの位置にあり、日米両政府は11年6月に訓練移転候補地として合意したが、年月が経過していた。政府関係者によると、トランプ大統領は安倍晋三首相に対し、「マゲシマ」の名前を挙げてFCLPの早期移転を重ねて要求。トランプ氏が在日米軍駐留経費(思いやり予算)の大幅な増額を求める構えを崩していないこともあり、日本政府はこれをなだめる「ディール(取引)」の材料として馬毛島を位置付け、買収交渉を加速させた。タストン社は、当初の日米合意を見越して独自に島に滑走路を造成し、その建設費用も含め400億円台での売却を主張していた。一方、防衛省は16年度に行った不動産鑑定で島の評価額を45億円と積算。両者の隔たりは大きかったが、官邸はタストン社に歩み寄る形で買収金額を約160億円まで引き上げた。タストン社も、親会社の経営悪化などから資金繰りに窮して態度を軟化させ、今年1月の仮契約を経て再合意となった。「今回の買収合意は、最近の日米関係で最大のヒットだ」。菅氏は周囲にこう誇る。政府は、中国軍が海洋進出を活発化させていることをにらみ、馬毛島を南西諸島の防衛拠点として整備し、日米による“不沈空母化”も検討している。 ■ ただ、タストン社が実施した滑走路造成については国の公害等調整委員会が16年、「森林法の許可申請、届け出の範囲を超える開発、伐採が推認される」と認定している。滑走路も織り込んだ買収は、政府が違法造成を容認したと受け取られかねない。この点をただした共産党の田村貴昭衆院議員の質問主意書に対し、政府は今月17日、「森林法違反で何らかの処分が行われたとは承知していない」とする答弁書を閣議決定。約160億円の積算根拠も「購入手続きに支障を及ぼす」と説明を拒んだ。日米安保緊密化の名の下に急展開した馬毛島買収に対し、「強引すぎる」との声は与党幹部からも漏れている。 *2-4-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201905/CK2019050402000125.html (東京新聞 2019年5月4日) グアム移転 24年10月にも 沖縄海兵隊 米軍が現地に伝達 日米両政府が合意している在沖縄海兵隊の米領グアムへの移転計画で、米軍が二〇二五米会計年度の前半(二四年十月~二五年三月)に移転を始め、約一年半かけて完了させる方針を地元議会に伝えていたことが分かった。建設中の新たな海兵隊基地の名称は「キャンプ・ブラズ」となる予定。米軍筋が共同通信の取材に明らかにした。米軍筋によると、移転する海兵隊員は約五千人と見込まれ、このうち約千七百人がグアムに常駐し、残りは半年ごとに入れ替わる部隊となる。沖縄から移転する隊員数はこれまで約四千人と公表されていた。米軍は今年二月四日、移転計画の最新案をグアム議会のティナ・ムニャバーンズ議長に説明した。米軍筋は、トランプ政権の方針や来年の米大統領選の結果などによって、移転計画の遅延や変更もあり得るとしている。海兵隊の新基地はグアム北部のアンダーセン空軍基地近くに建設中で、二六年までに完成予定。名称は海兵隊准将やグアム選出の米下院準議員を歴任した地元出身の故ベン・ブラズ氏に由来する。アンダーセン空軍基地近くのフィネガヤン地区では、日本政府からの資金提供も活用し、下士官用宿舎などの整備も進んでいる。隊員の家族を帯同することから、島内では人口増加に対応しようと道路や医療施設なども建設されているが、労働者不足のため整備の遅れが指摘されている。一二年に日米両政府が修正合意した米軍再編計画には、在沖縄海兵隊約一万九千人のうち約九千人をグアムやハワイなどへ移転させることや、米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の名護市辺野古(へのこ)への移設が盛り込まれた。沖縄では昨年十二月、辺野古沿岸部への土砂投入が始まり、今年二月二十四日実施の県民投票では、埋め立て反対が多数となっていた。日米はグアム移転を、普天間飛行場移設の進展とは切り離し二〇年代前半に始めることを確認している。 <在沖縄海兵隊のグアム移転> 日米両政府は2012年4月、在沖縄米海兵隊約9000人を国外へ移転し、米領グアムなどに分散するとの内容を盛り込んだ在日米軍再編見直しの共同文書を発表した。グアム移転は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設の進展状況とは切り離して進めることでも合意しているが、菅義偉官房長官は昨年10月の記者会見で「結果的にリンクしている」と発言し、移設が実現しなければグアム移転も進まないとの認識を示した。 *2-5:https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2019/11/post-13400.php (NewsweekJapan 2019年11月16日) トランプが日本に突き付けた「思いやり予算」4倍の請求書、21年3月末の日米特別協定更新の期限を前に、日本が負担している約20億ドルを約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた トランプ米大統領が日本政府に対し、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を大幅に増やすよう要求していることが分かった。事情を知る米政府関係者および元米政府関係者がフォーリン・ポリシー誌に語った話によれば、トランプ政権は日本政府に米軍駐留経費負担を現在の4倍以上に増額することを求めているという。7月に日本を訪問したジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官とマット・ポティンジャーNSCアジア上級部長(いずれも当時)が要求を伝えたとのことだ。米政府が米軍駐留経費の負担増を要求しているアジアの同盟国は、日本だけではない。ボルトンとポティンジャーは韓国にも、経費負担を現在の約5倍に増やすよう求めたと、同じ消息筋は語っている。日本には約5万4000人、韓国には約2万8500人の米兵が駐留している。「このように法外な要求を一方的に突き付けるやり方は、反米感情に火を付けかねない」と、元CIA分析官でもあるヘリテージ財団のブルース・クリングナー北東アジア担当上級研究員は懸念する。「同盟が揺らぎ、米軍のプレゼンスが縮小して抑止力が弱まるようなことがあれば、恩恵に浴するのは北朝鮮や中国、ロシアだ」 ●基地整備や兵器購入も トランプ政権の日韓両国政府への要求は、世界規模で同盟国に国防支出を増やさせようとする動きの一環と位置付けられる。トランプは以前から、ヨーロッパの同盟国の国防予算が少な過ぎると批判していた。そうした圧力は効果を発揮したらしい。NATO諸国は来年末までに、国防予算を2016年の水準に比べて1000億ドル以上積み増すことにした。トランプがNATOの次に目を向けたのがアジアの同盟国だったようだ。アジアでは、中国が軍事力を増強している上に、北朝鮮の軍事的脅威も再び高まっている。日本は、アメリカとの特別協定の下、米軍駐留経費として約20億ドルを拠出している。現在の特別協定は、21年3月末に更新期限を迎える。3人の元米国防総省当局者によれば、米政府は協定更新に向けた交渉が本格化するのを前に、この予算を約80億ドルに増やすことを日本政府に求めた。韓国も年内に同様の協定の更新期限を迎える。ある元米国防総省当局者によれば、米政府は韓国政府に対し、駐留経費負担を約50億ドルに引き上げるよう要求している。しかし、日本と韓国は既に米軍の活動のために莫大な費用を負担している。米議会調査局によると、日本は、第二次大戦後の米軍外国基地建設プロジェクトの中でもとりわけ大規模な3つに関して費用のかなりの部分を負担する。具体的には、沖縄県の普天間飛行場代替施設建設に121億ドル(費用の全額)、山口県岩国の海兵隊航空基地建設に45億ドル(費用の94%)、そして、海兵隊員4800人が沖縄から移転することになるグアムの施設に31億ドル(費用の36%)である。日本の経済的負担は、米軍駐留経費だけではない。日本は防衛装備品の90%以上をアメリカ企業から購入している。ロッキード・マーティン社の最新鋭ステルス戦闘機F35やボーイング社のKC46空中給油機などだ。膨張し続けるトランプの要求に対して、日本政府は頭を悩ませることになりそうだ。 <中東への自衛隊派遣> *3-1:https://www.sankei.com/politics/news/191027/plt1910270009-n1.html (産経新聞 2019.10.27) 自衛隊中東派遣、ホルムズ海峡排除せず どうなる武器使用 政府は、緊張が高まっている中東海域での情報収集態勢を強化するため、早ければ年明けに自衛隊を独自派遣する方針だ。ただ、派遣の方法や法的整合性の検討、部隊への教育訓練の実施期間を踏まえると来春にずれ込む可能性がある。国家安全保障局を中心に外務省、防衛省などで活動場所や時期の調整を進めている。政府内には「与野党から反対や慎重な意見が相次いでいる。3カ月後(年明け)というのは難しいのではないか」(防衛省幹部)との声もある。自衛隊派遣の検討を具体化したのは、サウジアラビアの石油施設への攻撃、イラン国営会社所有のタンカーの爆発など情勢が緊迫化する中、石油輸入を中東に依存する日本が主体的に情報収集に関わらざるを得なくなったからだ。得た情報は米国主導の有志連合構想に加わる国などに提供する方向で調整している。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は18日の記者会見で、派遣先として「オマーン湾」「アラビア海北部」「バべルマンデブ海峡東側」を中心に検討すると発表。事態が最も緊迫し、情報収集の必要性が高いホルムズ海峡には言及しなかった。河野太郎防衛相は25日の記者会見で「中東地域のどこかを特筆して排除していない」と述べ、ホルムズ海峡で活動する可能性も排除せずに検討する考えを示した。 ◇ 政府は自衛隊の中東派遣の具体的な方法について、海上自衛隊の護衛艦1隻を新たに派遣する案を軸に検討している。すでに中東近隣で海賊対処の任務についている海自のP3C哨戒機2機のうち1機の任務を今回の情報収集に変更することも選択肢に入る。防衛省の統合幕僚監部の検討チームでは、さまざまな事態を想定しながら必要な装備などについてケーススタディーを進めている。河野太郎防衛相は25日の記者会見で「新規の船(護衛艦)の派遣と、ジブチを拠点とするP3C哨戒機や護衛艦の活用も検討対象にしている」と説明した。すでにソマリア沖アデン湾での海賊対処のため、護衛艦1隻とP3C哨戒機2機がアフリカ東部のジブチを拠点に他国と連携して活動している。ジブチは情報収集を目的とする今回の派遣候補地に近い。このため、日本から護衛艦1隻を追加派遣して計2隻態勢とすれば、「1隻は既存の海賊対処を継続し、もう1隻は新たな情報収集」という2つの任務の両立が可能となる。海上自衛隊が保有する護衛艦は48隻で、能力や装備が今回の任務に適しているのは20隻余り。中国の海洋進出が強まる中、「東シナ海などに展開する護衛艦を減らして警戒監視を弱めるわけにいかない。現場のやりくりに余裕はない」(自衛隊幹部)と不安視する向きもある。ただ、海賊対処部隊は平成28年、海賊事案の減少に伴い2隻態勢だったのを1隻に減らした。防衛省関係者は「『もともと2隻だろう』といわれれば、その通りだ」と語る。一方、派遣済みのP3C哨戒機2機のうち1機を海賊対処から情報収集に転用する場合、活動場所はバべルマンデブ海峡東側の公海の上空になる公算が大きい。オマーン湾はジブチから2千キロ余り離れており、所要時間や航続距離を考えると往復するだけでほぼ終わってしまうからだ。今回の派遣は、防衛省設置法で定められる省の担当業務「調査・研究」を法的根拠としている。常日頃の日本周辺海域での警戒・監視の根拠規定にもなっている。つまり、中東派遣は通常の任務の延長線上に位置づけられる。正当防衛以外での武器使用はできず、日本関係船舶を武器を使用して護衛することは法的に難しい。 *3-2:https://2019constitution.fc2.net/blog-entry-1.html (憲法研究者 2019/11/1) ホルムズ海峡周辺へ自衛隊を派遣することについての憲法研究者声明 1、2019年10月18日の国家安全保障会議で、首相は、ホルムズ海峡周辺のオマーン湾などに自衛隊を派遣することを検討するよう指示したと報じられている。わたしたち憲法研究者は、以下の理由から、この自衛隊派遣は認めることができないと考える。 2、2019年春以来、周辺海域では、民間船舶に対する襲撃や、イラン・アメリカ両国軍の衝突が生じている。それは、イランの核兵器開発を制限するために、イラン・アメリカ等との間で結ばれた核合意から、アメリカ政府が一方的に離脱し、イランに対する経済制裁を強化したことと無関係ではないだろう。中東の非核化と緊張緩和のために、イラン・アメリカ両国は相互に軍事力の使用を控え、またただちに核合意に立ち戻るべきである。 3、日本政府は、西アジアにおける中立外交の実績によって、周辺地域・周辺国・周辺民衆から強い信頼を得てきた。今回の問題でもその立場を堅持し、イラン・アメリカの仲介役に徹することは十分可能なことである。またそのような立場の外交こそ、日本国憲法の定めた国際協調主義に沿ったものである。 4、今回の自衛隊派遣は、自衛隊の海外派遣を日常化させたい日本政府が、アメリカからの有志連合への参加呼びかけを「渡りに船」で選択したものである。 自衛隊を派遣すれば、有志連合の一員という形式をとらなくとも、実質的には、近隣に展開するアメリカ軍など他国軍と事実上の共同した活動は避けられない。しかも菅官房長官は記者会見で「米国とは緊密に連携していく」と述べているのである。ほとんどの国が、この有志連合への参加を見送っており、現在までのところ、イギリスやサウジアラビアなどの5カ国程度にとどまっている。このことはアメリカの呼びかけた有志連合の組織と活動に対する国際的合意はまったく得られていないことを如実に示している。そこに自衛隊が参加する合理性も必要性もない。 5、日本政府は、今回の自衛隊派遣について、防衛省設置法に基づく「調査・研究」であると説明する。 しかし防衛省設置法4条が規定する防衛省所掌事務のうち、第18号「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究を行うこと」とは、どのような状況において、自衛隊が調査・研究を行うのか、一切の定めがない。それどころか調査・研究活動の期間、地理的制約、方法、装備のいずれも白紙である。さらに国会の関与も一切定められていない。このように法的にまったく野放し状態のままで自衛隊の海外派遣をすることは、平和主義にとってもまた民主主義にとってもきわめて危険なことである。 6、わたしたちは安保法制のもとで、日本が紛争に巻き込まれたり、日本が武力を行使するおそれを指摘してきた。今回の自衛隊派遣は、それを現実化させかねない。 第一に、周辺海域に展開するアメリカ軍に対する攻撃があった場合には、集団的自衛権の行使について要件を満たすものとして、日本の集団的自衛権の行使につながるであろう。第二に、「現に戦闘行為が行われている現場」以外であれば、自衛隊はアメリカ軍の武器等防護をおこなうことができる。このことは、自衛隊がアメリカの戦争と一体化することにつながるであろう。第三に、日本政府は、ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合について、存立危機事態として集団的自衛権の行使ができるという理解をとっている。しかし機雷掃海自体、極めて危険な行為である。また戦闘中の機雷掃海は、国際法では戦闘行為とみなされるため、この点でも攻撃を誘発するおそれがある。このように、この自衛隊派遣によって、自衛隊が紛争にまきこまれたり、武力を行使する危険をまねく点で、憲法9条の平和主義に反する。またそのことは、自衛隊員の生命・身体を徒に危険にさらすことも意味する。したがって日本政府は、自衛隊を派遣するべきではない。 *3-3:https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2019/191227.html (2019年(令和元年)12月27日 日本弁護士連合会会長 菊地裕太郎 ) 中東海域への自衛隊派遣に反対する会長声明 2019年12月27日、日本政府は日本関係船舶の安全確保に必要な情報収集活動を目的として、護衛艦1隻及び海賊対策のためにソマリア沖に派遣中の固定翼哨戒機P-3C1機を、中東アデン湾等へ派遣することを閣議決定した。2018年5月に米国がイラン核合意を離脱後、ホルムズ海峡を通過するタンカーへの攻撃等が発生していることから、米国はホルムズ海峡の航行安全のため、日本を含む同盟国に対して有志連合方式による艦隊派遣を求めてきた。これに対し日本は、イランとの伝統的な友好関係に配慮し、米国の有志連合には参加せずに上記派遣を決定するに至った。今般の自衛隊の中東海域への派遣は、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を根拠としている。しかし、同条は防衛省のつかさどる事務として定めている。そもそも、自衛隊の任務、行動及び権限等は「自衛隊法の定めるところによる」とされている(防衛省設置法第5条)。自衛隊の調査研究に関しても、自衛隊法は個別規定により対象となる分野を限定的に定めている(第25条、第26条、第27条及び第27条の2など)。ところが、今般の自衛隊の中東海域への派遣は、自衛隊法に基づかずに実施されるものであり、防衛省設置法第5条に違反する疑いがある。日本国憲法は、平和的生存権保障(前文)、戦争放棄(第9条第1項)、戦力不保持・交戦権否認(第9条第2項)という徹底した恒久平和主義の下、自衛隊に認められる任務・権限を自衛隊法で定められているものに限定し、自衛隊法に定められていない任務・権限は認めないとすることで、自衛隊の活動を規制している。自衛隊法ではなく、防衛省設置法第4条第1項第18号の「調査及び研究」を自衛隊の活動の法的根拠とすることが許されるならば、自衛隊の活動に対する歯止めがなくなり、憲法で国家機関を縛るという立憲主義の趣旨に反する危険性がある。しかも、今般の自衛隊の中東海域への派遣に関しては、「諸外国等と必要な意思疎通や連携を行う」としていることから米国等有志連合諸国の軍隊との間で情報共有が行われる可能性は否定できず、武力行使を許容されている有志連合諸国の軍隊に対して自衛隊が情報提供を行った場合には、日本国憲法第9条が禁じている「武力の行使」と一体化するおそれがある。また、今般の閣議決定では、日本関係船舶の安全確保に必要な情報の収集について、中東海域で不測の事態の発生など状況が変化する場合における日本関係船舶防護のための海上警備行動(自衛隊法第82条及び第93条)に関し、その要否に係る判断や発令時の円滑な実施に必要であるとしているが、海上警備行動や武器等防護(自衛隊法第95条及び第95条の2)での武器使用が国又は国に準ずる組織に対して行われた場合には、日本国憲法第9条の「武力の行使」の禁止に抵触し、更に戦闘行為に発展するおそれもある。このようなおそれのある活動を自衛隊法に基づかずに自衛隊員に行わせることには、重大な問題があると言わざるを得ない。政府は、今回の措置について、活動期間を1年間とし、延長時には再び閣議決定を行い、閣議決定と活動終了時には国会報告を行うこととしている。しかし、今般の自衛隊の中東海域への派遣には憲法上重大な問題が含まれており、国会への事後報告等によりその問題が解消されるわけではない。中東海域における日本関係船舶の安全確保が日本政府として対処すべき課題であると認識するのであれば、政府は国会においてその対処の必要性や法的根拠について説明責任を果たし、十分に審議を行った上で、憲法上許容される対処措置が決められるべきである。よって、当連合会は、今般の自衛隊の中東海域への派遣について、防衛省設置法第5条や、恒久平和主義、立憲主義の趣旨に反するおそれがあるにもかかわらず、国会における審議すら十分になされずに閣議決定のみで自衛隊の海外派遣が決められたことに対して反対する。 *3-4:https://www.topics.or.jp/articles/-/305910 (徳島新聞社説 2020年1月6日) 国際展望 トランプ追従は高リスク トランプ米大統領の決断が、幕が開いた2020年の世界を震わせている。イランのソレイマニ司令官爆殺は「宣戦布告」に等しい。イランは引くに引けず、報復に出る可能性が高まっている。トランプ氏は作戦実行後、「強い米国」をアピールするように、写真投稿アプリに星条旗の画像だけを掲げた。大統領選挙に勝つためなら何でもやりかねない。そんなトランプリスクが、今年の世界を覆っている。少なくとも、北朝鮮の非核化は、実現が遠のいたと言えるだろう。11月の米大統領選は、一層の関心事となった。焦点はトランプ政治の継続か否か。民主党の候補が誰になろうが変わらない。敗れるなら、米国の政策は一変する。温暖化抑制、移民対策、銃規制など、多くの分野で逆方向に動き出すだろう。鍵を握るのは、対抗馬が持つ「勢い」だ。トランプ氏は白人の農家や労働者に底堅い支持基盤を持つが、広がりはない。支持者が喜ぶ政策を実行し、相手をおとしめて勢いをそぐ。戦術はそれしかない。共和、民主両党が拮抗する「スイングステート(揺れる州)」が勝負を決める。前回の勝利に直結した中西部「ラストベルト」の諸州は、今回も注目の的だ。楽勝が見通せない中で、トランプ氏は米国第一主義を強める。激戦州の有権者に受ける成果を求め、国際関係に及ぼす長期的な悪影響など省みない。その典型が、米軍撤収で混迷を深めたシリア情勢だ。昨年10月、「イスラム国」(IS)掃討で共に戦ったクルド人勢力を見捨て、トルコ軍のシリア侵攻を誘発した。同盟への「裏切り」がアジアで再現されない保証はない。民主党の候補者を絞り込む予備選は2月上旬のアイオワ州で始まり、13州が集中する3月3日で流れが固まる。現在の主要論点は、医療保険制度や移民問題など日常に関わるテーマだ。外交は隅に置かれている。だからこそ、現役候補にとって独占的なアピール手段となりやすい。一方、民主党が政権を奪還しても、中国への強硬姿勢には大きな変化がない、との見方が有力だ。安全保障を理由とした「技術冷戦」は、既に超党派の動きとなり、目先の妥協を許さない状況だ。昨年始まった米中貿易戦争は、人工知能(AI)や宇宙空間を巡る長期的な覇権争いの幕開けにすぎない。習近平国家主席は昨年末、共産党政治局から「人民の領袖」とたたえられ、かつての毛沢東に匹敵する権威を確立しつつある。絶対的な権力の下で、ウイグル自治区で起きているような人民管理体制は強固になっていく。米国との対立と反比例するように、日本への接近姿勢は強まっている。春には習主席の国賓来日が予定される。わが国の立ち位置が問われる局面が増えるだろう。トランプ追従一辺倒では通用しない。 <「軍事力による現状変更を認めない」の意味は何?> PS(2020.1.24追加): 尖閣諸島を領有していると主張する中国は、*4-3のように、国防白書に「①南シナ海の諸島や沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)は、中国固有の領土と強調し」「②武器使用も放棄せず、一切譲歩しない」等としている。これに対し、安倍首相はじめ日本の関係者は、*4-1のように、「③中国が軍事力などを使って現状を変更する試みは、受け入れられない」と繰り返し述べるに留まり、日本の外務省は、*4-2のように、「④尖閣諸島が日本固有の領土であることは、歴史的・国際法上明らか」「⑤日本が実効支配している」「⑥従って尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題は存在しない」「⑦日本は領土を保全するために毅然かつ冷静に対応する」とする。 しかし、③の言い方では、「軍事力を使わない(中国の国内法による)変更ならよい」と思われても仕方なく、④の尖閣諸島が日本固有の領土であることも主張していない。また、本当に固有の領土であれば、現状変更をせずに永遠に放置する必要はない。さらに、⑤は事実だが、①②を前提として中国船が領海内に頻繁に侵入しても、⑥のように「領有権の問題は存在しない」として、⑦の領土・領海の保全もしておらず、自衛権の行使もしていないのが現状なのである。それでも、米軍基地や自衛軍は必要か? *4-1:https://www.nikkei.com/article/DGXNASFK27001_X20C14A1000000/ (日経新聞 2014/1/27) 首相「軍事力による現状変更認めず」 中国けん制、米CNNインタビューで 米CNNテレビは26日、安倍晋三首相とのインタビューを報じた。CNNによると、安倍氏は「中国が軍事力などを使って現状を変更する試みは、いかなるものも受け入れられないと理解することが重要だ」と述べ、中国をけん制した。沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題を念頭に置いた発言。CNNの英語通訳によると、安倍氏は中国が過去20年間、軍事費を毎年約10%も増加させてきたと指摘し「アジア各国と同様に日本の懸念材料だ」と批判。軍備拡張は中国の経済成長や繁栄に貢献しないとし、中国側がこれを確実に理解するよう取り組んでいきたいと述べた。また、中国と軍事的に対抗する意図はないと強調。一方で、首相として日本の領海や領土を守る責任を果たしていくと訴えた。安倍氏は政権の経済政策、アベノミクスの「三本の矢」にも言及。成長戦略のための構造改革について「抵抗する人たちにも、私が行ってきたことを正しいと納得させ、取り組むようにさせることが重要だ」と語った。インタビューは、安倍氏が世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)出席のため、スイスを訪れた際に行われた。 *4-2:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/index.html (外務省 平成28年10月18日) 日本の領土をめぐる情勢、尖閣諸島について 尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり, 現に我が国はこれを有効に支配しています。したがって,尖閣諸島をめぐって解決し なければならない領有権の問題はそもそも存在しません。日本は領土を保全するために毅然としてかつ冷静に対応していきます。日本は国際法の遵守を通じた地域の平和と安定の確立を求めています。 *4-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47712610U9A720C1000000/ (日経新聞 2019/7/24) 尖閣諸島は「固有の領土」 中国が4年ぶり国防白書、台湾統一に「武力放棄せず」 中国政府は24日、「新時代の中国の国防」と題した国防白書を発表した。国防白書の発表は2015年5月以来、4年ぶり。南シナ海の諸島や沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)は「中国固有の領土だ」と強調した。台湾を巡っても統一のため「武器使用は放棄しない。あらゆる措置をとる」と主張し、領土・領海問題を巡り周辺国に一切譲歩しない考えを強調した。米国など関係国とのあつれきが高まるのは必至だ。白書は世界情勢について「覇権主義や強権政治が台頭し、国際的な秩序は衝撃を受けている」と指摘した。米国を名指しして「単独主義に走り大国間の競争を引き起こし、軍事費を大幅に増やしている」と批判。日本についても「戦後体制を突破し、軍事の外向性を強めている」と主張した。 <沖縄の地の利と気候、さくらを見る会> PS(2020年1月25日、2月14日追加):*5-1のように、名護市の名護城公園周辺を約1万本のヒカンザクラが彩り、「第58回名護さくら祭り」が始まり、気温が25度を超える陽気となった那覇市では、*5-2のように、かりゆしウエアを着た会社員の姿が目立ち、かりゆしウエアの制服や通年着用を認める会社も多いそうだ。私自身は模様の多すぎる「かりゆしウエア」は好きでないが、「沖縄は冬服がいらないので経済的だ(=冬服を着る機会はない)」と言う人もおり、沖縄は地の利と気候を生かして基地よりも生産性の高い産業を作ることができる筈である。 このように予算に関する重要案件が多い中、*5-3のように、「『桜を見る会』懇親会の契約主体が個々人だというのは不自然で首相の説明通りだったとしても脱法行為だ」などと予算委員会で野党の国会議員が桜の会ばかりを追及しているのは、白でもグレイか黒だと印象付けて議員の価値を貶める自殺行為だ。何故なら、私は地元が九州で旅行代金が高くなる上、秘書の手も廻らなかったのでそういう企画はしなかったが、野田聖子さん(岐阜が地元)はじめ地元からバスで東京に来れる範囲の国会議員は、旅行会社を通して後援会の中の希望者を東京にバス旅行させ、そこに国会見学を組み込んで議員が国会案内等をする人が多かったからだ。その際の旅行代金はもちろん個々の後援会員の負担だと思われるが、そうでなければ旅行に参加した後援会員と参加しなかった後援会員の間に不公平が起こる。安倍首相のケースでも、ホテルと会費支払いの契約を結んだ主体は個々の参加者であり、首相の事務所が会費を受け取ってホテルに渡したのは、煩雑な仕事を手伝ったにすぎないと思われる。さらに、そのホテルの得意先だったり、このように煩雑な事務を手伝ったり、立食パーティーに参加者全員分ではなく40~50%分の食事を出したりすることによって、1人5千円の会費支払いで済ませることは経済合理性もある。そのため、政策に関する議論をさしおいて、政治資金規正法違反等の刑事事件もどきに仕立てあげ、辞めさせたい政治家の根拠なき人格攻撃を行うのは、民主主義の議論の仕方ではないと思う。なお、私は、会計・監査・税務の専門家で、衆議院議員だった時に現在の政治資金規正法改正に加わり、これは単式簿記に基づいて作成されるため網羅性・検証可能性に乏しく、監査証明も限定されているため完全とは言えないものの、一昔前のような大きな不正・買収は起こらなくなっているので、メディアはじめ皆が頭を切り替えるべき時だと考える。 ![]() *5-1より *5-3より (図の説明:左図のように、沖縄は、地球の海水面が低かった時代には、九州から台湾まで続く陸地だったようだ。現在は、中央の図のように、既に桜が咲き始めている常夏の島である。また、右図は、「さくらを見る会」の話だが、宛名なしの領収書は(推奨はしないが)一般によく見られるものであるため、推論に人格攻撃を目的とした強引さがある) *5-1:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1063110.html (琉球新報 2020年1月25日) 名護さくら祭りが開幕 ピンク色の彩り、観光客たちが楽しむ 26日まで、オレンジレンジのライブも 沖縄本島北部に位置する名護市の名護城公園周辺を約1万本のヒカンザクラが彩る「第58回名護さくら祭り」(同実行委員会主催)が25日、同公園などで始まった。26日まで仮装パレードやオレンジレンジのライブなどでさまざまなイベントが開かれる。実行委員会によると現在の開花状況は二~三分咲き。晴天となった名護城公園ではピンクや白に色づき始めた桜が名護市民や観光客を楽しませていた。25日、名護城入口でオープニングセレモニーが開かれ、渡具知武豊名護市長が「たくさんの花と樹木がお待ちしている。各種イベントも時間が許す限り楽しんでほしい」と呼びかけた。 *5-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1062912.html (琉球新報 2020年1月25日) 冬だけど「かりゆし」 暑い沖縄、通年着用の人増えてます 「暑いし、かりゆし」。一年で一番寒い時期にもかかわらず、連日夏日を記録し“常夏”の雰囲気も漂う沖縄では、一年中かりゆしウエアを着る人がじわじわ増えている。県内企業では一年を通してかりゆしウエアでの出勤を認めている会社もあり、通年着用を後押ししている。気温が25度を超え汗ばむ陽気となった24日の那覇市。県庁北口交差点ではセーターを着込んだ観光客の姿を尻目に、かりゆしウエアを着た会社員の姿が目立った。ランチタイムを終えた昼すぎ、明るい緑のかりゆしウエアを着た医療事務の高江洲達さん(31)=那覇市=は「今日からかりゆし」と笑顔で語る。3年ほど前まで福岡で生活していたこともあり「沖縄はずっとかりゆしでいける。楽だし、私服っぽいのが好き」と仕事に戻っていった。国際通りにある店舗で勤務する40代男性は「制服がかりゆしなので一年中かりゆしを着ている。寒い時は上から羽織る」と語る。実際、かりゆしウエアを制服にしたり、通年での着用を認めたりする会社は多い。「元祖紅いもタルト」でおなじみの御菓子御殿は「紅芋カラー」のかりゆしウエアが制服。日本トランスオーシャン航空(JTA)は乗客と接触しない本社勤務などの「間接部門」で通年着用を許可している。同社担当者によると、夏日の24日は「かりゆしが多かった」と語った。この動きに縫製業者も機敏に反応している。メーカー関係者は「観光客の需要もあるが、1月の売り上げは伸びている。いつでも新作を投入できるように急ピッチで準備を進めている」と明かした。沖縄が冬でも暖かくなったのは地球温暖化の影響で、もろ手を挙げて喜べないが、“常夏”が進めばかりゆしウエアの需要はさらに伸びるかもしれない。 *5-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202002/CK2020021402000135.html (東京新聞 2020年2月14日) <点検「桜を見る会」>懇親会 「契約主体は個々」不自然 安倍晋三首相の後援会が「桜を見る会」前夜に東京都内のホテルで毎年開いてきた懇親会。首相は後援会の主催としながらも、ホテルと会費の支払い契約を結んだ「主体」は、あくまで個々の参加者だったと主張している。後援会の指示に従って会費を払っただけの参加者が「ホテルと契約した」との解釈は不自然だが、首相は国会答弁でこの説明を繰り返している。後援会がホテルと契約していないとの見解を変えない理由は、政治資金収支報告書に、懇親会の収支が記載されていないことを正当化するためとみられる。政治団体の収支があったにもかかわらず不記載だった場合は、政治資金規正法に違反するからだ。首相は、一人五千円の会費の支払いについて「集金した全ての現金を、その場でホテル側に手渡す形で、参加者から支払いがなされた」と話す。首相の事務所は、会費を受け取ってホテルに渡しただけなので、後援会に入金や出金はなかったという理屈だ。さらに首相は「(ホテルとの)段取りを行ったにすぎない事務所職員は、契約上の主体にはならない」とする。だが一方で、会場を予約したのは事務所の職員で、昨年の懇親会の準備経費は自身の選挙区支部から支出したと認めている。これに対し野党は、ホテルと主体的に契約したのは後援会だと指摘。首相の説明通りであったとしても脱法行為に当たると批判している。 <外交に役立つ国際貢献> PS(2020年1月27、29、30日、2月2日追加):*6-1のように、中国では、春節時・流通の要所である武漢市という最大の間の悪さで新型コロナウイルスによる肺炎が発生し、国内での死者数が80人に達したそうだ。このため、武漢市では、①病院に診療待ちの人があふれ ②医療従事者用の白い防護服などの物資が不足し ③上海市などの大都市から医師団が続々と武漢市へ派遣され ④武漢市は市内の交通を遮断する封鎖措置に踏み切るなどして感染の拡大防止策を採り ⑤中国政府は、海外への感染拡大を防止するため海外団体旅行中止を通達したそうだ。日本は、「イ.空路で来日したバスツアーの旅行客に新型肺炎の感染者を確認した」「ロ.客のキャンセルが相次いで困った」などと騒いでいるだけでなく、日本政府や日頃から中国と関係のある日本企業は、電子レンジか湯煎で温めれば食べられるような餃子・シュウマイなどの中華料理やみかん(ビタミンCが豊富)・マスク等を武漢市民に寄付したらどうか? 東日本大震災の時と同様、人は困った時に助けられるのが最も有り難いため、これが今後の外交や食品輸出に寄与することは間違いなく、日本は、*6-2のように、「i)恒久の平和を念願し」「ii)偏狭を地上から永遠に除去しようと努め」「iii)全世界の国民が恐怖と欠乏から免がれて平和に生存する権利を有することを確認し」「iv)いずれの国家も自国のことのみに専念して他国を無視してはならないと信じ」「v)日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓う」とする立派な日本国憲法を持っており、国民は、「こんなのは理想に過ぎないから、現実に合わせてレベルを落としたい」とは思っていないのである。 しかし、*6-3のように、「①自民党女性局は平易な文章にイラストを織り交ぜ、『女性に読んでほしい』と憲法冊子を作成し」「②憲法は幸せのカタチを守る基本的なルールで、幸せのカタチは時代によって変わっていく」「③三原じゅん子局長は『憲法の話は苦手と思っている女性にこそ読んでほしい』と話した」「④『青年に音楽を演奏する機会を与える』と書かれたスイス憲法や「⑤同性婚を認める」アイルランド憲法などの例を紹介している」とのことだ。 このうち①③については、日本国憲法は義務教育である中学校社会科(現在は、公民)の教科書に添付されて勉強したため、男女とも「読んだことがない」と言うのは不可能で、「女性は平易な文章でなければ理解できない」「女性は憲法の話は苦手」などと決めつけるのは女性蔑視である。また、憲法(原文:The Constitution of Japan)は国の骨格と方針を定めたもので、その13条に「すべて国民は、個人として尊重される(原文:All of the people shall be respected as individuals.)」と書かれているとおり、個人は自由な生き方を尊重され、②のように「国や憲法が(個人の)幸せのカタチを決める」わけではない。 さらに、④は、第26条で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めているため、音楽のみを取りださなくても政府の意思決定次第で教育できる。また、⑤については、24条で「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」としているが、この両性は異性でなければならないとは書かれていないため同性婚を排除しておらず、14条で「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない」としているため、敢えて憲法で同性婚を認めると取り上げて書く必要はないと考える。それよりも、もともと人間は多様なのに「多様性≒同性婚、障害者」というような誤った議論が多いのが問題だ。つまり、「現行憲法は時代に合っていない」などと言っている人の話をよく聞くと、その人こそ現行憲法を理解していなかったり、読んですらいなかったりするのである。 このような中、*6-4・*6-5のように、大分市はじめ東京都・他の地方自治体・日本政府などが、武漢市(湖北省)への民間チャーター機の往路等で中国政府にマスクや防護服などの緊急援助物資を運び、「雪中送炭」と中国のネット上で感謝の声が広がったそうだ。なお、メディアでは武漢市にあるユニクロがクローズしているところが報道されたが、伸縮性のある布で顔にフィットするマスクを急いで作り、店先で販売したらよいだろうと思った。 *6-6のように、台湾でもマスクが不足して「1人3枚まで」にしているそうだが、台湾と関係の深い自治体や民間企業は寄付したらいかがか? *6-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54875690X20C20A1AM1000/ (日経新聞 2020/1/27) 新型肺炎、拡大加速 「患者1000人増加も」武漢市長、春節連休を3日間延長 中国の湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の猛威が止まらない。武漢市の周先旺市長は26日夜、記者会見し、今後患者数は「1000人近く増加する可能性がある」と話した。中国国内の死者数が27日時点で80人に達するなど感染拡大を受け、中国政府は同日、春節(旧正月)の連休を2月2日まで延長すると発表した。武漢市を中心に医療機関の受け入れ体制や物資の不足なども深刻化している。「新型肺炎の疑いがある患者が2209人、発熱外来が643人。このうち45%前後に新型肺炎の診断が下る可能性がある」。周市長は26日夜、武漢市内の診療状況について説明した。武漢市のある湖北省では既に約700人が新型肺炎にかかり76人が死亡している。市民がSNS(交流サイト)に投稿した動画などによると、武漢市では病院内に診療待ちの人があふれかえっており、医療従事者用の白い防護服などの物資が不足しているという。武漢市は急増する患者の診察・治療体制の整備を急ピッチで進めている。国営新華社通信によると、同市内で少なくとも2つの新型肺炎に特化した病院を建設する予定で、ベッド数は計2千床を超えるとみられる。また上海市などの大都市から医師団も続々と武漢市へ派遣されている。中国では武漢市が23日から市内の交通を遮断する封鎖措置に踏み切るなど感染の拡大防止策を採っているが、食い止められていない。中国の保健当局は27日、国内の患者数は累計で2744人となり、死者は80人にのぼると発表した。直近半日で患者は約700人増えた。さらなる感染防止措置として国務院(政府)は27日、春節休暇を従来の1月30日までから2月2日まで3日間延長すると発表した。新型肺炎は発熱など患者の自覚症状がないケースもあるという情報があり、こうした人からオフィスや学校などでウイルスが広まるのを防ぐ狙いだ。国内の対応とともに海外への感染拡大防止にも動いている。中国政府は27日から海外団体旅行を中止するよう国内の旅行会社に対して通達した。ただ春節休暇を利用した中国人による海外への渡航ピークは既に過ぎている。日本の厚生労働省は26日、国内で4例目の新型肺炎の感染者を確認したと発表した。武漢市から観光で来日した40代の男性で愛知県の医療機関に入院している。男性はバスツアーの旅行客で、22日に空路で来日したという。陸路で中国本土とつながる香港とマカオは独自の入境制限に踏み切った。香港政府は26日夜、27日から中国湖北省の居住者と過去14日間に同省を訪れた人の入境を禁止すると発表した。マカオ政府も湖北省の居住者が入境する際に感染していないとする医師の証明書を提示するよう求める。一方、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は26日、新型肺炎への対応を協議するため北京へ向かっていると、SNS上で明かした。WHOはこれまでの会合で、加盟国の検疫体制の強化などが求められる「緊急事態宣言」を見送った。しかし、その後も日本など中国国外でも患者数が増加しているため、事務局長自らの中国入りを判断したとみられる。 *6-2:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 (昭和二十一年十一月三日公布の日本国憲法より抜粋) 日本国憲法前文 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果とわが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。日本国民は恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。 *6-3:https://ryukyushimpo.jp/kyodo/entry-1064852.html (琉球新報 2020年1月28日) 自民、世論喚起へ憲法冊子を作成 「女性に読んでほしい」 自民党女性局は28日、憲法改正を目指す党の考え方をまとめた小冊子を作成した。平易な文章にイラストを織り交ぜた仕上げで、改憲への世論喚起が狙い。「憲法は幸せのカタチを守る基本的なルール」などとしている。三原じゅん子局長は取材に「憲法の話は苦手と思っている女性にこそ読んでほしい」と話す。「青年に音楽を演奏する機会を与える」と書かれたスイス憲法、同性婚を認めるアイルランド憲法などの例を紹介。「幸せのカタチは時代によって変わっていく」と改正の意義を説いた。小冊子は見開きA5判10ページ。党の各都道府県連に2千部ずつ配布する。 *6-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/579783/ (西日本新聞 2020/1/30) 「武漢頑張れ」激励込めマスク3万枚を大分市が寄贈 中国から感謝も 新型コロナウイルスによる肺炎が拡大する中国で、日本の支援に称賛の声が広がっている。大分市が27日、友好都市の湖北省武漢市に「武漢加油(頑張れ)」のメッセージを添えてマスク3万枚を送ったところ、短文投稿サイト微博(ウェイボ)に「感動した」などの投稿が続出。閲覧数は3億7千万回を超えた。邦人を帰国させるため武漢入りした日本政府のチャーター機が物資を届けたことにも感謝の投稿が相次いだ。大分市のマスク寄贈は、中国共産党機関紙の人民日報が28日に報じた。マスクの入った段ボール箱に「武漢加油!」の紙が貼られていたことや、大分市が財政的に余裕がない中で支援に乗り出したことを伝えた記事は微博で瞬く間に拡散。「中国語の“頑張れ”には本当に心がこもっている」「裕福でないのに、こんなにたくさん寄付してくれるなんて」「大分市に行ってお礼を言いたい」といった書き込みが相次いだ。政府チャーター機が28日にマスクなど支援物資を運んだニュースも、微博の閲覧数が7千万回を超えた。2008年の四川大地震で日本の救援隊がいち早く現地入りしたことに触れ「あの時も助けに来てくれた」と感謝する投稿や、中国人客の減少で苦境に陥っている日本の観光地を励ます書き込みも見られた。大分市は29日にも防護服200着を武漢市に送った。マスクを送った際、他に不足している物資を尋ねる手紙を添えたところ、武漢市側から要望があったという。防護服は地元医師会の協力を得て集めた。大分市には市民などから物資の支援や寄付金の申し出が相次いでおり、市は今週にも受け入れ態勢を整える予定。担当者は「反響の大きさに驚いている。武漢は長く交流してきた友人のような存在で、早く平穏な生活に戻ってほしい」と話した。 *6-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN1Z3VHBN1YUHBI04J.html?iref=comtop_8_01 (朝日新聞 2020年1月30日) 日本の援助、「いいね」中国で15万超 新型肺炎めぐり 日本政府は、新型コロナウイルスによる肺炎が発生した中国・武漢市(湖北省)への民間チャーター機の往路で、中国政府への緊急援助物資を運んだ。中国のネット上では感謝の声が広がっている。328日深夜に武漢に到着した第1便には、中国向けに日本政府が手配したマスク約1万5千枚や手袋5万組、防護眼鏡や防護服などが積み込まれた。30日に到着した第2便も、地方自治体からの支援物資を運んだ。東京都は二つの便の合計で約2万着の防護服を提供しているという。外務省によると、茂木敏充外相が26日にあった中国の王毅(ワンイー)外相との電話協議で協力を申し出て、中国側から求めがあった物資を送った。昨年はエボラ出血熱が流行するコンゴ民主共和国へ防護服を支援するなど、政府は感染症の流行に見舞われた地域への緊急援助を続けている。日本政府からの支援が届いたというニュースは、中国版ツイッターの「微博(ウェイボー)」で広く拡散されており、15万を超える「いいね」がつけられた投稿もある。全国的に交通機関の停止や商業施設の閉鎖などが相次ぐ苦境の中の明るい話題として称賛を集めている。28日午後には、武漢市と友好都市の関係にある大分市が医療用マスクを送り、その箱に「武漢加油(がんばれ)」と記されているというニュースが投稿された。「中国語で書いてくれるなんて」「心の底からありがとう」などと感動を伝える書き込みがあふれ、関連する投稿の閲覧総数は、29日までに3億8千万回にも上っている。ほかにも、日本国内の店などが中国人向けに掲げた「同舟共済(ともに乗り越えよう)」「最重要的朋友(一番大切な友だち)」などといったメッセージの画像も、SNSで広く拡散されている。2008年の四川大地震の被災地での日本の救援隊の活動を記憶している人も多く、つらいときに本当に必要な物を送ってくれることを意味する「雪中送炭」という四字熟語とともに、感謝を伝える人もいる。「日本に行ってみたくなった」と記す人もいるが、中国では感染拡大を防ぐために、27日から海外への団体旅行は禁止されている。ただ、中国客の激減で日本の観光地が打撃を受けていることも広く知られており、こんな書き込みもあった。「ウイルスが去ったら絶対日本に応援に行く」「微力でも、今度は私があなたたち日本の経済に貢献します」 *6-6:https://digital.asahi.com/articles/ASN21645BN21UHBI02T.html?iref=pc_rellink_01 (朝日新聞 2020年2月1日) 台湾、マスク販売を統制「1人3枚まで、1枚は20円」 新型コロナウイルスによる肺炎でマスク需要が高まるなか、台湾当局はマスクを販売する際、1人3枚までに制限し、価格も一律1枚6台湾ドル(約20円)と定める措置を始めた。2月中旬まで続く見通しで、中国など海外へのマスクの輸出も禁じている。台湾で初の感染者が確認された1月21日以降、台北市内の雑貨店では「マスク売り切れ」の貼り紙が掲げられ、入荷してもすぐに無くなる状況が続く。春節の休みも影響し、マスクの生産量は1日に約400万枚にとどまる。約2300万人の市場の需要には追い付かない状況だ。 <日米安保条約の見直しについて> PS(2020年1月28日追加):これに先立ち、G20サミット後の記者会見で米国のトランプ大統領は、*7-1に佐賀新聞が記載しているとおり、「①日本が攻撃されたら米国は日本のために戦わなくてはならないが、米国が攻撃されても日本は戦わなくてよいため、日米安全保障条約は米国にとって不公平だ」「②条約破棄は全く考えていないが、以前から安倍首相にも問題提起している」としていた。現在の日米安全保障条約は、*7-3のように、どちらからでも条約終了の意思を通告することができ、その場合、通告後1年で終了することになっているが、日本は、*7-4のように、日本国憲法で戦争を放棄し、陸海空軍その他の戦力は保持しないことになっているため、国際連合憲章に定める自衛のためにも日米安全保障条約は必要なのである。 また、新潟日報は、2020年1月27日、*7-2のように、「③日米安全保障条約が1960年1月に改定署名されてから60年経過した」「④宇宙やサイバーの新たな領域で日米同盟を強化することも必要になった」「⑤日米同盟の下で、日本は軽武装政策を取って戦後の驚異的経済成長を成し遂げることができた」「⑥米国の戦争に巻き込まれるリスクが高まらないか」「⑦条約改定60年の節目に同盟関係のゆがみを正すのは、戦後外交の総決算を掲げる安倍首相にふさわしい仕事」等と記載しており、何とか軽武装で自衛する方法を考える必要があるわけだ。 *7-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/395893 (佐賀新聞 2019年7月4日) 日米安保見直し発言、認識を正し、本質の議論を 米国のトランプ大統領が日米安全保障条約について「米国にとって不公平な合意だ」と主張し、見直しに言及した。20カ国・地域首脳会議(G20サミット)後の記者会見での発言で、「条約破棄は全く考えていない」としたものの、以前から安倍晋三首相にも問題提起していると述べた。戦後日本の安保政策の基軸となってきた日米安保条約に関わる、極めて重大な発言である。だが、トランプ氏の主張は正確な認識に基づかず、一方的過ぎる。日本政府は日米間で条約見直しの議論は一切ないと否定するが、まず大統領に認識を正すよう求めていく必要があろう。発言の背景には、日米貿易交渉に安保政策を絡めて取引材料とする狙いもあるだろう。その真意を見極めたい。日米の同盟関係は近年、自衛隊と米軍の一体化が進んでいる。今回の発言も日本の役割拡大を求める圧力の一環ともみられる。その現状でいいのか。あるべき同盟関係の姿や、今後の日本の安保政策について本質的な議論に取り組むべきだ。トランプ氏は記者会見で「日本が攻撃されたら米国は日本のために戦わなくてはならないが、米国が攻撃されても日本は戦わなくてもいい。不公平だ」と述べた。2016年の大統領選中にも同様の主張をしているが、現職大統領としての発言であり、看過できない。まず、その認識を正すべきだ。1960年に全面改定された日米安保条約は、第5条で日本有事の際に米国が日本を守ると義務付ける一方、第6条で日本が極東の安定確保のため米軍に基地を提供すると定めている。それぞれのリスクとコストが非対称的なため、以前から米国に不満があったのも事実だ。トランプ氏の発言には来年の大統領選をにらんだ国内向けの側面もあるだろう。だが在日米軍基地は、世界に展開する米軍の戦略的拠点として米国のメリットになっている。一方、日本は年約2千億円の在日米軍駐留経費のほか騒音対策費など応分の負担をしている。「双方の義務はバランスが取れている」というのが日本政府の見解だ。この認識を改めて確認すべきだ。トランプ氏の発言には、この夏から本格化する貿易交渉で日本に譲歩を迫る戦略や、対日貿易赤字削減のための巨額の防衛装備品購入を求める狙いもあるだろう。駐留経費負担の増額を要求してくる可能性もある。だが、圧力の下で交渉の主導権を握られる事態は避けなければならない。公正な交渉を進めるべきだ。解せないのは、G20の際に行われた首脳会談での安倍首相の対応だ。安保条約に対するトランプ氏の不満は来日直前に米メディアが報じていた。にもかかわらず首相は真意をたださなかったという。トランプ氏の会見後、首相は「自衛隊と憲法の関係で何ができるかは説明してきた」と述べたが、日米間でどういう協議があったのかを国民にきちんと説明すべきだ。安倍政権の下、安保政策は対米偏重が進んできた。集団的自衛権の行使を解禁する安保関連法を制定、日米防衛協力指針(ガイドライン)を改定し、日米連携の一層の緊密化を掲げる。だが、米国の戦略に巻き込まれる懸念も膨らむ。近隣諸国との関係構築に努め、安保環境を整備していく構想に日本が主体的に取り組むべきではないか。 *7-2:https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20200127521024.html (新潟日報 2020年1月27日) 安保改定60年 同盟の在り方が問われる 日本を取り巻く安全保障環境が大きく変容する中で、条約に基づく日米同盟はどうあるべきか。その在り方が問われる。現行の日米安全保障条約が、1960年1月に改定署名されてから60年が過ぎた。米軍による日本駐留や内乱鎮圧を認めた旧条約を全面改定した現行の安保条約は、米国の対日防衛義務や日本による米国への基地提供義務を定めている。安倍晋三首相は署名60年の日本政府主催の記念式典で、「今や日米安保条約は、いつの時代にも増して不滅の柱。世界の平和を守り、繁栄を保証する不動の柱だ」と表明した。同時に、宇宙やサイバーの新たな領域で日米同盟を強化する意向も強調した。日米安保条約とそれに基づく日米同盟は日本外交の基軸である。同盟の下で、日本は軽武装政策を取り、戦後の驚異的な経済成長を成し遂げたといえる。冷戦終了後、北朝鮮の核の脅威や中国の軍事力増強など北東アジアに緊張が解けない中でも、大きな役割を担ってきた。一方で、米国第一主義を唱え国際社会の分断を増幅するような政策を打ち出しているトランプ米政権の存在は同盟を巡る不安要因となっている。懸念するのは、日本の対米傾斜が加速すれば米国の戦争に巻き込まれるリスクが高まらないか、ということだ。日米安保体制は冷戦終結や湾岸戦争などを機に、たびたび変質してきた。91年のソ連崩壊後には、安保体制の目的を「アジア太平洋地域の安定的な繁栄」へ再定義し、安保条約の「日本と極東」の範囲を踏み越えた。こうした米国の世界戦略に引っ張られる形で進んだ自衛隊と米軍の一体運用が、安倍政権になって加速している。安倍政権は歴代政権が憲法上許されないとしてきた集団的自衛権の行使を容認し、安全保障関連法を成立させた。対日赤字の是正を求めるトランプ氏に対しては、最新鋭戦闘機F35といった米国製武器を大量購入している。それでもトランプ氏は「米国第一」優先、同盟関係軽視の姿勢を改めない。日米安保条約は「不公平」と批判し、日本側にさらなる負担を迫っている。「豊かな国が十分な負担をしないで、米軍の抑止力の恩恵を受けるのは米国を食い物にする行為だ」とし、在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)の5倍増を求めているという。だが日本は米軍駐留経費のうち7割以上を負担している。沖縄をはじめ、米軍機の騒音や事故リスクなど基地周辺の市民生活に与える負の影響は大きい。さらに、米兵の法的地位や基地の運用を定めた日米地位協定の抜本的な見直しは実現していない。これでは対等な同盟とは言えまい。条約改定60年の節目を機に、同盟関係のゆがみを正す。それは、「戦後外交の総決算」を掲げる安倍首相にふさわしい仕事のはずだ。 *7-3:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/jyoyaku.html (外務省) 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約 日本国及びアメリカ合衆国は、両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的又は集団的自衛の固有の権利を有していることを確認し、両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よつて、次のとおり協定する。 第一条 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。締約国は、他の平和愛好国と協同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。 第二条 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。 第三条 締約国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。 第四条 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。 第五条 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。前記の武力攻撃及びその結果として執つたすべての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し及び維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。 第六条 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合衆国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。 第七条 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響も及ぼすものではなく、また、及ぼすものと解釈してはならない。 第八条 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。 第九条 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生の時に効力を失う。 第十条 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合衆国政府が認める時まで効力を有する。 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行なわれた後一年で終了する。上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。 日本国のために アメリカ合衆国のために 岸信介 クリスチャン・A・ハーター 藤山愛一郎 ダグラス・マックアーサー二世 石井光次郎 J・グレイアム・パースンズ 足立正 朝海浩一郎 *7-4:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 日本国憲法 昭和二十一年十一月三日憲法より抜粋 第二章 戦争の放棄 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する。 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。 <日本のみで防衛することが危険な理由> PS(2020.1.28追加):厚労省をはじめとする日本政府は、*8-1のように、「マクロ経済スライドによって年金給付額の上げ幅を賃金水準や消費者物価上昇率よりも低くすることによって、年金保険料支払時よりも年金給付額を目減りさせる」という契約違反(≒詐欺)を行った。そして、日経新聞はさらに、「①年金財政が行き詰まるのを防ぐため、高齢世代に痛みを求めるのは当然」「②現役世代が不利益を被ることがないように年金のマイナス改定を可能にする制度改革が不可欠」「③マクロ経済スライドの制度化以降、日本経済は長期デフレに直面したため、実質年金額は上がる傾向にある」等と記載している。しかし、①は、私がこのブログに何度も記載したとおり、本質的原因のないところに原因を押し付けて35%にも達する65歳以上の高齢者の生活を困窮させ、③の状況を導いているものだ。また、上記のように無駄遣いが多い中、②のように、国民を現役世代と高齢者とに分断し、高齢者のせいにして年金のマイナス改定を要求するような人権侵害体質であるため、日本だけで物事を決めると人権を護れず危険なのである。 なお、*8-2に「④三菱電機に大規模なサイバー攻撃があり」「⑤個人情報や企業機密が外部に流出した可能性がある」「⑥防衛・電力・鉄道などの情報や取引先との製品の受注・開発に関する情報、幹部会議の資料などが流出した情報に含まれている」等が書かれているが、このような情報は専用線を使うなどして外部からアクセスできない状態にしておくことが1980年代から専門家の中では常識であったため、中国系のハッカー集団が関与していたとしても、防衛以前の緩さで運用している日本側に問題がある。このように、超時代遅れで、国民負担により費用だけ莫大に使う体質であるため、日本のみで防衛を行うことは不可能なのだ。 ![]() (図の説明:左図のように、人口構成が変わるのは1970~80年代には既にわかっていた。それにもかかわらず、対応をとらずに年金積立金を無駄遣いしてきたのが日本の厚労省なのであり、その結果、中央の図のように高齢化率が30%を超え、現在は「年金給付額を下げればよい」などとと言っているのだ。また、右図のように、「日本の人口が0になりそうだ」などと少子化自体を問題視して煽る論調もよく見かけるが、人間も生物であるため減り方はこのようなカーブにはならない上、少子化を人口減少と結び付けて「産めよ、増やせよ」論にしてしまう態度も、女子差別撤廃条約に反する人権侵害なのである) *8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200128&ng=DGKKZO54893990X20C20A1EA1000 (日経新聞社説 2020.1.28) 年金のマイナス改定を可能に 厚生労働省は2020年度の年金支給額を0.2%引き上げる。04年の年金改革法に定めたマクロ経済スライドによって、現役世代の賃金水準や消費者物価の上昇幅より年金の上げ幅を低くする。賃金・物価情勢との比較で年金の増額幅を抑えるのは2年連続になる。将来、年金財政が行き詰まるのを防ぐために高齢世代に一定の痛みを求めるのは当然である。だがマクロスライドには欠陥がある。原則、名目年金額を前年度より減らさない仕組みだ。現役世代が大きな不利益を被ることがないよう、年金のマイナス改定を可能にする制度改革が不可欠だ。マクロスライドをひと言で表すと、年金の実質価値を毎年度小刻みに目減りさせる仕組みになる。もっとも制度化以降、日本経済は長期のデフレに直面してきた。このため名目年金額を減らさない仕組みに阻まれ、年金の実質価値は逆に上がる傾向にある。当初、厚労省は19年間で年金の減額調整を終える計画だった。しかし先送りを繰り返した結果、今後さらに30年近く調整を続ける必要があるという見通しを、19年の財政検証に際して出している。これは、高齢者が年金をもらいすぎていることにほかならない。会計検査院は国の17年度決算の検査報告にあわせ、この欠陥がなければ04年度以降に3兆3千億円の税財源が節約できたと推計した。年金マイナス改定によって経済情勢の影響を受けないようにすれば現役世代の不利益は和らぐ。無年金・低年金に陥る可能性がある現役世代への対策も必要だ。就職氷河期世代に代表されるように、無職だったり望まないのに非正規社員として働き続けたりしている人は、保険料を払う余裕に乏しく、満足な年金をもらえない将来を感じとっている。年金の最低保障機能を強めるために、基礎年金に限ってマクロスライドの適用を外すのが一案だ。確定拠出年金を充実させるのも、厚生年金などの実質価値目減りを補うのに有効である。 *8-2:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54586740Q0A120C2MM0000/ (日経新聞 2020/1/20) 三菱電機にサイバー攻撃 中国系か、防衛情報流出恐れ 三菱電機は20日、大規模なサイバー攻撃を受け、個人情報や企業機密が外部に流出した可能性があると発表した。流出した情報には防衛や電力、鉄道などの社会インフラに関する情報や、取引先との製品の受注・開発に関する情報、幹部会議の資料などが含まれているもようだ。三菱電機は「社会インフラに関する機微な情報や機密性の高い技術情報、取引先に関わる重要な情報は流出していないことを確認した」としている。関係者によると、中国系のハッカー集団「Tick(ティック)」が関与した可能性がある。三菱電機は「(流出を確認するための)ログが消去されており実際に流出したかどうかの確認はできない」とし、一部が流出した恐れがあるという。同社によると、国内外のパソコン、サーバーの少なくとも数十台以上で不正に侵入された形跡が見つかった。不正アクセスされたデータ量は文書を中心に約200メガバイト。防衛省や原子力規制委員会、資源エネルギー庁などの官公庁に加え、電力や通信、JR・私鉄、自動車大手など国内外の企業に関する複数の情報が不正アクセスを受けた。同社が不正アクセスに気づいたのは2019年6月28日で、国内拠点のサーバーで不審なファイルの動作を検知した。同様のファイルが中国など複数国の拠点で見つかったため、大規模なサイバー攻撃を受けた可能性があるとし、対象端末について外部からのアクセスを制限した。同社は社内調査を理由に公表していなかった。同社は企業など向けにセキュリティー対策を講じる事業を手掛けており、今回の不正アクセスが影響する可能性もある。公共施設やオフィスビル、データセンターなどの制御システム向けサイバーセキュリティーサービスを19年7月から提供。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を導入した工場がサイバー攻撃を受けた箇所を特定する技術も開発している。 <新型肺炎患者や中国人に対して差別をするのは無知すぎること> PS(2020年1月30、31日、2月1、5、7、8、11、12、13、16、19、23日追加): 中国の武漢市で新型コロナウイルスによる肺炎が発症し、世界に感染が広がったが、*9-1・*9-2のように、一般的なインフルエンザと同様、せきエチケット・こまめな手洗い・人混みを避けることなどで予防でき、症状も軽そうだ。にもかかわらず、ハンセン病の強制隔離を彷彿とさせるような感染者に対する差別や強制隔離の要請が多いのは気にかかる。なお、手洗いは、いつでもこまめで丁寧に行うのが原則で、最近、アルコールを手にすり込めば消毒が終わったと考える人が多いのは、その手でいろいろなものを触るので問題である。また、せきやくしゃみが出る人がマスクを着けるのは当然のマナーであるのに、電車の中などで大きな口を開けて平気でせきをする人がいるのは、新型コロナウイルスに限らず迷惑だ。そのため、私はいつでも電車に乗る時はマスクをして予防しているが、本当は、感染している人にマスクをしたり、せきエチケットを守ったりして欲しいのである。 また、新型コロナウイルスは、最初は動物から人に感染したかもしれないが、ウイルスもDNAを変化(進化)させながら代を重ね、一代の時間は短く、そのうち人から人に感染する性質を得たものだけが次の人に感染するため、人から人にも感染する性質に変わる。従って、ウイルスの特徴は最初から最後まで一定ではなく、ウイルスに抗生物質は効かず、抗ウイルス薬なら効くとされている(https://weathernews.jp/s/topics/201811/080175/)。しかし、ウイルスに効くものには、このほか身体が備えている免疫があるため、日頃から栄養を十分取って免疫を強くしておくことが重要だ。しかし、抗生物質を使って他の細菌を排除し、自分の免疫(兵力)をウイルスに集中させる方法もあるというのが、私の経験だ。なお、最も感染しやすい場所は、マスクを買うための行列や混み合った医療機関の待合室だろう。 なお、武漢からチャーター便で帰国した人をどう扱うかについては、*9-3・*9-4のように、中国の衛生当局が新型ウイルスは発症していない人からも感染する可能性があるとしているため、①フランスは1カ所に集めて14日間経過観察 ②オーストラリアは2週間の離島隔離 ③米国は適切な証拠に基づく公衆衛生対策を講じ、3日~2週間の隔離が必要になるかもしれない としているが、私は、オーストラリアの2週間の離島隔離がBestだと思う。日本の場合なら、例えば沖縄空港に着陸して琉球大学で検査し、暖かい場所で14日間過ごして、症状のない人や回復した人は開放するというイメージだ。 このような中、*9-5のように、厚労省は、チャーター機の第1便で帰国した日本人のうち3人が感染していたと発表し、このうち2人は国立国際医療研究センターで検査を受けた後、発熱やせきなどの症状がないため千葉県内のホテルに相部屋で滞在させられ、陽性の結果を受けて県内の医療機関に入院したそうだが、中国では、感染しても症状が出なかったり、症状が出ないまま他の人に感染することが報告されていたため、厚労省の担当者が「想定外だった」としているのは、とても専門家の判断とは思えない。 そのため、*9-6のように、経産省がフクイチ汚染処理水の処分方法について、①前例ある海洋と大気への放出が現実的選択肢 ②放射性物質監視の面から海洋放出の方が確実に実施可能 ③(危険と言うのは風評被害にすぎないため)風評被害対策の徹底が必要 としていることに、想定外はないと言えるのか? 実際には、想定外ばかりであるため、その後に起こることについて誰がどういう形で責任を持つのか明確にすべきだ。誰かが辞めても何の意味もない。 2020年2月1日、*9-7のように、日本農業新聞が、「①低所得者ほど栄養バランスの取れた食生活ができず、子どもや高齢者が十分な栄養を取れずに健康が脅かされている」「②低所得層の子どもは、成長に欠かせないタンパク質、カルシウム、鉄の摂取量が少ない」「③所得の低いお年寄りほど健康な体を維持するために必要な栄養素が足りない『低栄養』に陥っている」「④多くの人が依然、主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの取れた食生活をしていない」「⑤注目したいのは子どもに無料か低額で食事を提供する『子ども食堂』だが、国の支援が欠かせない」「⑥食育も忘れてはならない」「⑦所得200万円未満の人に主食・主菜・副菜を組み合わせられない理由を聞くと、『時間がない』という回答が多かった」などを記載している。 農業界が栄養バランスに問題意識を持ってくれたのはよいことで、その結果は、「主食の米さえ作ればよい」という発想を変えることに繋がると思うが、①③は、高齢者の負担増・給付減など高齢者に関する施策が貧しすぎることが原因で、②④⑥のために給食を充実させようとしているのだが、その意味を理解していない学校も少なくない。さらに、女性は必要な栄養学を中学・高校で学んでいるが男性は学んでいないため、食事作りや政策・経営に関する意思決定に栄養学の知識がいかされず、この問題の本質は教育なのである。また、⑤を実践している人には敬意を表するが、夫婦2馬力で子育てすれば食品くらいは不自由しない世の中になっているため、よく考えて結婚相手を選び離婚せずに育児を行うようにして、国に甘えすぎるのはやめて欲しい。⑦についても、野菜ジュース・牛乳・卵・総菜など、共働きや単身者を前提とした比較的安価で時間のなさを補う製品も多く出たため、現在は栄養の知識があるか否かが分かれ目になっている。 なお、佐賀新聞が、*9-8に、「小泉環境相の『育休』どう考える?」という記事を掲載しているが、「父親が取得する育児休暇のアピールにはなったが、育児のために早退や欠席をすると職場での不利益に繋がるのは男女とも同じで、8日間くらいなら有給休暇をとればよいだろう」と、私は思った。実際、このくらいの期間なら、お手伝いのお手伝いくらいしかできないため、この程度なら休みであって「育休をとった」「子育てをした」などと胸を張るのはおこがましい。また、男女にかかわらず、出産や子育ては夫婦2人の労働だけではできない大変さがあるため、「(同じ職業の人の)男女間格差を放っておきながら、(職業の違う人の)女性間格差が問題だというようなくだらないことを言わずに、家事労働への外国人労働者の導入を行えばよい」と、私は30年近く前から言ったり書いたりしていたわけである。 2020年2月5日、*9-9のように、さだまさしさんが「存在理由」と名付けたオリジナルアルバムを制作しており、アルバムの軸に「中村医師に捧げる歌を据えたい」とされているそうで楽しみだが、職業の違う人と生きざまが違うからといって落胆する必要はなく、自分の存在理由(私にもある)を存分に発揮すればよい。中村医師が医療をさておき農業・食料増産に努められたのは、下の図のように栄養失調・不潔・過労などの状態にありながら薬で病気の治療だけを行っても、焼石に水だからである。 日本政府が、*9-10のように、米ホーランド・アメリカ・ラインの「ウエステルダム」に石垣港に入港しないよう求めたのは、観光立国を標榜する日本としては逆の行動だ。「ウエステルダム」が石垣港の後に那覇に行く予定だったのなら、まっすぐ那覇港に入港させて12.5日間船内に隔離し、「ダイヤモンド・プリンセス」と同様に検査して陽性の患者は琉球大学病院で適切にケアし、同時に船に医薬品や食料品等を補給させるのが筋である。台湾・韓国・フィリピン・ベトナム等が事実上拒否しているからといって医療観光も視野に入れている日本が拒否すべきではなく、むしろ他国でケアできないクルーズ船も入港させて同じようにケアするのが今後のためだ。いざという時に入港を拒否して景気の心配をしているのは、誤りだ。 なお、日本政府の対応は、*9-11のように、福岡市の高島市長がクルーズ船の入港や外国人観光客の入国を制限できる基準とルールを定めるよう求める意見書を法務省に提出し、宮崎政務官が出入国在留管理庁に対してその対応を指示されたのだそうだが、福岡なら対処できる病院も多い筈で、検査が済みリスクがなくなるまで乗客をクルーズ船から降ろさなければ問題はないため、両人そろって不合理で非人道的な行動を戸惑いもなく行った点が怖いのである。 また、*9-12のように、クルーズ船の寄港にむけて一生懸命に商談しており、クルーズ船会社や自治体の関係者を集めた商談会が2月6日に福岡県で予定されていたのに、外国の船会社関係者が出席できずに商談会が中止となり、営業活動に影響が出ているそうだ。唐津市には5月14日に中国の上海を出発した客船が寄港する予定になっており、担当者が「その頃までに感染が終息していればいいが」とこぼすのも無理はない。 2020年2月11日には、*9-13をはじめ、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で新たに検査結果が判明した103人のうち65人の感染が確認され、全体で135人の感染が判明したので拡大が止まらない事態だと報道しているメディアが多いが、①乗客乗員約3700人のうちの135人は3.6%にすぎないこと ②潜伏期間(感染したけれども症状が出ていない期間)に発症する人がいるのは当然であること から、船内で隔離された後に感染したのでなければ、隔離に成功したと言える。そのため、必要なものを補給しながら潜伏期間が過ぎるのを待つ方が、乗客にとって快適だろう。また下船する際の全員のウイルス検査は実施した方が安心だろうが、潜伏期間が過ぎても発症していない人は感染していなかったと言えるため、検査キットや人材が足りない中で優先順位をつけるのは仕方がない。それより、*9-14のように、新型肺炎に対応するため急にマスクを買うというのは、インフルエンザの時期で、放射性物質も飛んでいる関東では、あまりに無防備だ。また、その不備に乗じて、マスクの買い占めをするなど論外である。 2020年2月12日には、「『ダイヤモンド・プリンセス』の船内では医療行為が行われないため、乗客を全員降ろしたらどうか」と主張するメディアがあるが、医療行為が必要な人のみを降ろし、必要なものを補給しながら潜伏期を過ぎるのを待つべきだと考える。何故なら、「可哀想だから、乗客全員を降ろす」ということになれば、国内で新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大するため、クルーズ船の寄港自体に反対運動が起きるからだ。例えば、*9-15の日本への入国を断られたクルーズ船「ウエステルダム号」は、入港させる国がなく、こちらの方が深刻で人道に反する行為である。また、「人権があるから、何も強制できない」と主張する人もいるが、日本国憲法は「12条:この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ」「13条:すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定めており、公共の福祉に反しても自由にする権利があるとはしていないのである。 また、*9-16に、「新型肺炎で寄港を拒否され、海をさまようクルーズ船はどこが助けるのか」という問いに対し、国交省が「①明確な決まりはなく、船籍や自国民の割合で国が対応するかどうか考える」「②人命の危機が迫っていれば人道的な面から近隣国ということもある」「③船には入港しないよう要請し、港湾を管理する自治体には入港を認めないよう頼んでいる」「④条約の想定外なので、国際ルールが必要」等と答えているが、③については、あらかじめ入港を許可していたクルーズ船に入港しないよう要請すれば、契約違反による損害賠償が発生しそうだ。さらに、①②④については、病人が出たため海難救助に準じて予定していなかった港にでも寄港させるというのならありうるが、病人が出たので予定していた港にも寄港させず、医療を受ける機会を逃させるというのは、自国民でなくても人道に反すると考える。 2020年2月13日、日本農業新聞が、*9-17のように、新型コロナウイルスのため中国で人の移動が制限された結果、収穫や流通が停滞して中国産野菜の日本への輸入が滞り始めたと記載している。日本で使われているマスクの80%が中国製というのにも驚いたが、2月の財務省貿易統計では、タマネギ・ニンジン・ネギ・キャベツなどの8割以上が中国産とのことで、日本では耕作放棄地を増やしながら農業を粗末にし、外国人労働者の入国制限も厳しくして柔軟な対応をせず、中国で割安に加工まで行う業務用野菜の輸入に頼って中国が風邪を引いたら日本で品不足が起こる状態になっている。他にも多くの仕事が中国に流れたため、(作っている場所で磨かれる)技術も日本からなくなるのは時間の問題で、優越感だけではやっていけないのである。 *9-18のように、新型コロナウイルスの感染が起きている大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号に米国人やその家族が約380人乗っており、米国民を退避させるために在日米国大使館がチャーター機を手配しているのはよいことで、船内感染が起こっていたのなら米国内でもう2週間隔離するという米国の判断は正しいし、他国も速やかにそうすればよいだろう。私はクルーズ船を病院船に使って徹底的にケアするのが、乗客が最も快適に過ごせる隔離方法だと考えていたが、感染症の検疫官とは思えないような無防備な検疫官が船内感染していたり、感染した乗員に乗客のケアをさせていたり、船内が不潔であったりしたのなら、日本国内でもさらに2週間隔離したいくらいであり、「既に国内で散発的に流行し始めたから、水際での阻止は不要だ」という議論にはならない。そのため、*9-19のように、ダイヤモンド・プリンセス号の全乗客をウイルス検査して、陰性の場合は14日間の経過観察期間が終わる19日から健康状態に問題がなければ順次下船させるというのは、船内感染させたのはクルーズ船の船主と日本政府の失敗だから仕方がないとしか言えない。なお、*9-20のように、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて各国・地域の政府が相次いでクルーズ船の入港を拒否したが、これが最も人道に反する行為であり、クルーズ船を入港させた上でクルーズ船を病院船として使って乗客を隔離したり、陽性の人を陸上の病院や自衛隊の病院船で治療したりするのがあるべき姿だったと思う。 *9-21のように、感染症対策に詳しい神戸大医学部の岩田教授が、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船し、「①船内の2次感染リスクの管理が不十分だった」「②クリーンゾーンとレッドゾーンが区分けされていなかった」「③熱のある方が部屋から出て歩いて医務室に行っていた」「④感染症のプロなら、あの環境では怖い」と指摘された。私も、乗員の検査は最初に行い、外部の人を含めたクリーンな人のみが乗客へのサービスを行うべきで、食事もクリーンで栄養バランスのとれたものを外部から運んだ方がよかったと思う。しかし、クルーズ船内では香港で下船した乗客が新型コロナウイルスに感染していたことがわかった後も、2月5日までビュッフェスタイルで食事が出され、乗員・乗客は近距離で接していたため、高齢者を多く乗船させている割には衛生管理に疎いと思われ、衛生意識が今後のクルーズ船の改善点だ。なお、自民党にも医師の議員はいるため、そういう人を厚労省の大臣・副大臣・政務官のいずれかに任命しておかなければ、専門知識のない素人ばかりでは状況に応じた判断ができないのである。 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客を14日間も船に止めおきながら、その期間中に必要な検査をしなかったという*9-22のミスがあったのは、厚労省の仕事のレベルの低さを露呈するものだ。そのため、米国・カナダ・英国・韓国・香港などの14日間の施設隔離は妥当で、日本は厚労省や保健所でトリアージなどしているより、早急に検査と治療の体制を整えるべきだ。そもそも、今の時代に病院が複数の患者を同室に入院させるのは、感染症でなくても治療環境が悪すぎるし、感染症は新型肺炎だけではないのである。 ![]() インフルエンザによる死亡率 耐久消費財の世帯普及率推移 (図の説明:左図の1900年以降の日本におけるインフルエンザ死亡率を見ると、1955年頃からみるみる減少し、1990年以降は人口10万人当たり3人以下になっている。これは、医療の進歩の影響よりも、右図の耐久消費財の普及で現わされる日本における栄養状態・清潔に関する意識・正しい情報の共有・文化度の向上による影響の方が大きいと言われている) *9-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/579261/ (西日本新聞 2020年1月27日) コロナウイルス感染 どう防ぐ? 新型肺炎対策を専門医に聞いた ●手洗い、せきエチケット…「正しい方法」で 中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の発症者が急増し、米国やタイなど世界的に感染が広がっている。中国政府は「人から人への感染が認められる」としており、日本国内で発症者が増える可能性も否定できない。専門家は「現段階では、一般的な風邪やインフルエンザの予防策の徹底」を呼び掛ける。あらためて感染予防に必要なことを聞いた。コロナウイルスは、人や動物に感染するウイルスの一種。国立感染症研究所(東京)によると、コロナウイルスが原因となる風邪は10~15%(流行期35%)で、軽い症状にとどまるものが多い。ただ、中には2003年に中国で流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)や、中東地域で発生している中東呼吸器症候群(MERS)のように重症化しやすいものもある。輸入感染症に詳しい国立国際医療研究センター国際感染症センター(東京)の忽那賢志(くつなさとし)医師は「新型ウイルスの感染力はまだ比較が難しいが、重症化するリスクや致死率はSARSやMERSに比べて低い」とみる。ただ、高齢者や持病がある人など抵抗力が低下している人は注意が必要という。国内での感染拡大については「感染から発症まで時間があるため、感染者が知らずに入国し、ウイルスが侵入するリスクはある」。その上で「発症者が受診した医療機関で迅速に診断し、的確に対応する備えが重要だ」と強調する。市民生活では「外出を控えるなどの過剰な反応は必要なく、手洗いやせきエチケットなどを正しい方法で行えば十分」と話す。飯塚病院(福岡県飯塚市)感染症科の的野多加志(たかし)部長も「風邪やインフルエンザの一般的な予防法を徹底することが大切」と言う。手洗いは、指の間や手首などもせっけんを使って念入りに洗うなど、正しい方法でこまめに行う。水やせっけんがない場合はアルコール消毒も有効だ。せきやくしゃみが出る人はマスクを着ける。手のひらで口や鼻を押さえると、付着したウイルスを周囲に広げてしまうため、マスクがない場合は、ハンカチやティッシュペーパーか、二の腕で押さえると良い。「意外と正しい方法を知らない人も多いので、この機会に確認してみてほしい」と的野部長。また、インターネットなどで過度に不安をあおる誤った情報が拡散していることを懸念。「厚生労働省や国立感染症研究所などの信頼できる情報源から正しい情報を収集し、冷静に対応して」とも呼び掛けている。 *9-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN1Y74S9N1YULBJ00Y.html (朝日新聞 2020年1月29日) 新型肺炎、SARSより強い感染力か 致死率は低く推移 中国国内の新型コロナウイルスによる肺炎の感染者は、中国政府の29日の発表で5974人。同じコロナウイルスによって起き、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の中国国内の感染者数5327人(世界保健機関=WHO調べ)を上回った。SARSと比べて、新型ウイルスはどんな特徴があるのか。WHOなどによると、SARSでは患者のおよそ20%が呼吸不全などで重症化し、中国国内では7%、世界全体では9・6%が亡くなった。一方、新型ウイルスではこれまでに約20%が重症化し、2・3%が死亡している。SARSの流行時にWHOで封じ込めに当たった東北大の押谷仁教授(ウイルス学)は、新型ウイルスによる致死率がSARSよりも低いことに着目。「重症な肺炎に進行せず、発熱やせき、くしゃみといった症状で収まる人が今回は多いのでは」とみる。一方、患者数は最近急増している。WHOは23日、新型ウイルスが1人の患者から1・4~2・5人に感染していると発表したが、「実際にはもっと多く、感染はさらに広がるのではないか」。その理由として押谷さんは、新型ウイルスはより軽症の患者でも、感染力を持っているためではないか、と推測する。SARSは、重症の患者を見つけて隔離して感染の広がりを防げたから封じ込めに成功した。今回は、軽症の患者が感染に気付かないまま、ほかの人に広げている可能性があるという。いまのところ、今回の患者の8割ほどは軽症とみられている。ただ、東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は、軽症にみえても、高齢者では発熱しないまま呼吸不全に陥ることがあり、注意が必要だという。感染者や死亡者についての情報は日々、変わっている。国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長は、「最初の感染者が発表されてまだ1カ月余りで、現地での調査もまだ十分できているとはいえないようだ。病原性などについても正確な数値はまだ分からない」としている。 ●こまめな手洗いが有効 新型肺炎の感染はどうやったら防げるのか。東北医科薬科大の賀来満夫特任教授(感染制御学)によると、ウイルスは鼻や口、目などの粘膜から入ることで感染すると考えられるという。様々な物を触る中で手に付着しやすいため、予防には「手についたウイルスをこまめな手洗いで洗い落とすことが有効」と話す。日常生活で目や口、鼻など顔を触るくせのある人は注意してほしいという。こうした点は、かぜやインフルエンザの予防と同じだ。患者がマスクを着けると感染を広げない効果があることは分かっている。健康な人のマスク着用は「立証は難しいが、一定の効果があると考えていい」という。ただ、手洗いもマスクも感染を完全には防げない。組み合わせてリスクを下げてほしいという。厚生労働省は28日、国民からの相談を受け付ける電話相談窓口(03・3595・2285)を設置した。医学的知識を持った職員が相談に答える。今後は外国語にも対応する予定という。受付時間は土日祝日を含む午前9時~午後9時。 ●医師「新型インフルの教訓も生かして」 国内でも新型コロナウイルスのヒトからヒトへの二次感染が初めて確認され、国内流行の懸念が高まっている。この先どんなことが起き、何に気をつければいいのか。2009年に海外から持ち込まれ、国内で推計2千万人がかかった「新型インフルエンザ」の教訓について、元厚生労働省技官の沖縄県立中部病院、高山義浩医師(49)に聞いた。ヒトからヒトに感染する新型の豚インフルは09年、4月にメキシコや米国で確認され、世界的に拡大した。日本では5月に神戸市で国内感染が判明し、8月に初の死者が沖縄県で出るなど全国に広がった。09年度の推計国内患者は2061万人で、約200人が死亡した。厚労省の感染症専門医として奔走した高山さんは「今回と同様、専門医も病原性や感染力が十分わからない中で初期対応を迫られ、混乱が起きた」と振り返る。市民に大きな影響が出たのが「新型インフルにかかったかどうか、検査が受けられなくなった」ことだ。厚労省や都道府県の方針では、発生当初は封じ込めのため軽症でも感染が疑われる人はウイルス検査をし、隔離のために入院するなど手厚い対応をとる。一方、一度流行が確認された後は、死亡や重症患者を減らすために健康リスクの高い人が手厚い対応を受けられるよう方針が変わる。このため軽症の人が医療機関にかかってもウイルス検査が受けられずに帰宅を求められ、「そんな話は聞いていない」と押し問答になったこともあった。高山さんは「医療機関の検査体制にも限界がある。国内での流行とともに検査対象が絞り込まれていくことを知っておいてほしい」。新型コロナウイルスも流行後は医療機関のパンクを避けるため、軽症者に受診を控えるよう呼びかける可能性があるという。受診できる医療機関も制限がかかる可能性がある。新型インフルは当初、感染が疑われる人に専門で対応する「発熱外来」が地域の中核病院などに設置された(現在は名称が「帰国者・接触者外来」に変更)。受診前には電話をする必要がある。一方で、若い患者が多かった新型インフルと異なり、新型コロナウイルスの死者は高齢者や持病のある人が多いとされる。高山さんは「高齢者施設ではマスクやグローブなどの感染対策の資材が、病院に比べてそろっていない恐れがある。入居者の通院を一時的に訪問診療で集約するなど、病院に行かなくても済む方法を検討すべきだ」。肺炎リスクを下げるため、肺炎球菌やインフルワクチンの接種も勧める。「現時点では(02~03年にアジアで流行した)重症急性呼吸器症候群(SARS)ほどの致死率はなく、感染力もインフルほどはないと考えられる。適切な感染対策でリスクの高い人も守れる可能性はある」と高山さん。「新型インフルが流行した10年前と比べて国外からの観光客が増え、新興感染症は常に持ち込まれる恐れがある。手洗いやせきエチケットなどインフルと同様の対策を取り、感染が不安な人は人ごみを避けてほしい」と話している。 *9-3:https://www.cnn.co.jp/world/35148651.html (CNN 2020.1.29) 武漢からの帰国者は隔離すべきか、当局が迫られる難しい判断 中国湖北省武漢市から退避する米国人を乗せたチャーター便が、現地時間の29日に米カリフォルニア州オンタリオに到着する。同便に搭乗している約240人の中には、新型コロナウイルスの感染者がいる可能性もある。同便が到着した時点で、衛生当局は難しい選択を迫られる。たとえ症状が出ていなくても、人との接触を避けるためにオンタリオで隔離すべきなのか。隔離する場合、どの程度の期間が必要なのか。中国の衛生当局は、新型ウイルスは発症していない人からも感染する可能性があるとの見解を示した。しかし米衛生当局は、それが事実かどうかの確証はないとしている。そうした事情が、武漢市から帰国する米国人にどう対応すべきかをめぐる判断を一層難しくしている。乗客の中には、30人あまりの外交官やその家族が含まれる。28日に記者会見した米保健福祉省のアレックス・アザー長官も、乗客に対する具体的な対応については言葉を濁し、「適切な証拠に基づく公衆衛生対策を講じる」と話すにとどめた。カリフォルニア州サンバーナーディノ郡の当局者は同日、チャーター便で到着する人は、3日~2週間の隔離が必要になるかもしれないと説明。感染の兆候が出ている人はいないとしながらも、隔離された場所にベッドや携帯電話の充電器、テレビを用意していることを明らかにした。空港でも公共エリアには立ち入らせず、米疾病対策センター(CDC)が許可を出すまでは一般の人と接触させないとしている。一方、フランスの衛生相は26日、武漢から帰国させるフランス人は1カ所に集めて経過を観察し、14日間拘束すると説明していた。 *9-4:https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3892022.html (TBS 2020.1.29) オーストラリア政府、帰国者を2週間 離島隔離へ オーストラリアのモリソン首相は29日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国・武漢市などに滞在しているオーストラリア人を退避させ、2週間、離島で隔離する方針を明らかにしました。「私たちはけさ、武漢で孤立しているオーストラリア人の出国支援に取りかかることを決断しました」(オーストラリア モリソン首相)。モリソン首相は29日、チャーター便などで移送される帰国者を離島で2週間隔離し、新型コロナウイルスの感染検査を行う予定だと明らかにしました。オーストラリア政府によりますと、現在、武漢市のある湖北省には、600人以上のオーストラリア人が滞在登録をしています。帰国者が隔離されるのはオーストラリアの北西に浮かぶクリスマス島で、密航者の収容施設などがある離島です。退避計画の詳細は現在検討中だということですが、子どもや高齢者、短期旅行者が優先的に移送されるとみられています。 *9-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14347707.html (朝日新聞 2020年1月31日 より抜粋) 症状ない帰国者2人感染 新型肺炎、厚労省「想定外」 中国の湖北省武漢市を中心に新型コロナウイルスによる肺炎が広がっている問題で、厚生労働省は30日、チャーター機の第1便で帰国した日本人のうち3人が感染していたと発表した。このうち2人は、発熱やせきなどの症状がない国内初の感染例だった。また、東京都と三重県、京都府でも新たに感染が確認された。国内の感染者は14人となった。厚労省によると、チャーター機で帰国後、症状がないのに検査で陽性反応が出たのは40代男性と50代女性の2人。国立国際医療研究センター(東京都新宿区)で検査を受け、千葉県内のホテルに滞在していた。陽性の結果を受け県内の医療機関に入院した。2人はそれぞれ別の帰国者と相部屋だったが、ほかに症状を訴えている人はいないという。感染しても症状が出ない「不顕性感染」か、症状が出る前だった可能性がある。自覚のないまま感染を広げる恐れがあり、中国では報告されていたが、厚労省の担当者は「想定外だった」と話した。これを受け、安倍晋三首相は30日、「新型コロナウイルス感染症対策本部」の会合で「水際対策などのフェーズをもう一段引き上げていく必要がある」と語った。武漢市など感染者の多い地域に滞在したことがあるすべての入国者の健康状態と日本国内での連絡先を確認する方針だ。第1便の帰国者は、検査で陰性反応が出ればホテルから自宅に戻れる予定だったが、2週間は待機してもらうことにした。相部屋もやめる。第2便の帰国者も、症状がなくても基本的に警察大学校(東京都府中市)と西ケ原研修合同庁舎(同北区)に滞在してもらう。厚労省によると、3人のうちもう1人は50代男性。羽田空港に到着した時は症状がなかったが、その後、鼻水やのどの痛みが出て都内の病院に入院していた。容体は安定しているという。また、検査に同意せずに帰宅していた2人も、30日になって検査を受けたいと申し出てきたという。ほかに感染が確認されたのは、中国湖南省から東京に来ていた30代女性と三重県在住の50代男性、京都府在住の20代女性。いずれも武漢市に一時滞在していたという。世界保健機関(WHO、スイス・ジュネーブ)は30日、専門家委員会による緊急会合を始めた。 ■第2便、入院26人 武漢市から帰国を希望する日本人を乗せた日本政府の民間チャーター機の第2便が30日、羽田空港に到着し、210人が帰国した。13人が体調不良を訴え、空港から東京都内の医療機関に搬送。このほか症状のなかった13人も帰国後の検査の後に医師の判断で入院し、入院者は計26人になった。第3便も30日夜、羽田空港を出発。帰国者を乗せ、31日午前に日本に到着する予定。外務省によると、約200人を乗せるとしている。第4便は来週の派遣になる見込みという。第2便では、搭乗前の中国当局の検査で熱やせきの症状があった2人の出国が認められなかった。政府によると、30日時点の帰国希望者は約300人だが、人数が増える可能性もある。 ◇ 中国国家衛生健康委員会は30日、感染者は前日より1737人増の7711人、死者は38人増の170人に達したと発表した。チベット自治区でも初の感染者が確認され、感染は中国本土の全ての省・自治区・直轄市に広がった。 ■新型肺炎の感染者数(日本時間30日午後11時現在。各国・地域の政府発表・報道から累計) 中国 7711(死亡170) 日本 14 香港 10 タイ 14 シンガポール 13 注)10人未満の国・地域は省略したが、数字からは新型肺炎を中国国内に封じ込めることに、だいたい成功していると言える。 *9-6:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/580192/ (西日本新聞 2020/1/31) 処理水、海洋放出の利点強調 東京電力福島第1原発で増え続ける処理水の処分方法などを議論する政府小委員会で、経済産業省は31日、前例のある海洋と大気への放出を「現実的な選択肢」とし、うち放射性物質監視などの面から「海洋放出の方が確実に実施できる」と強調する提言案を新たに示した。地元など幅広い関係者の意見を丁寧に聴きながら方針決定するよう政府に要請。放出に際しては風評被害対策の徹底を求めた。小委は地層注入、水素放出、地下埋設も含めた五つの処分方法を検討し、経産省は前回会合で、国内外で処分実績のある海洋と大気の放出を軸にした具体的な3案を示したが今回、こうした書きぶりは修正した。 *9-7:https://www.agrinews.co.jp/p49889.html (日本農業新聞 2020年2月1日) 低所得者の食生活 栄養格差の解消を急げ 低所得者ほど栄養バランスの取れた食生活ができていない──。そんな結果が厚生労働省の2018年国民健康・栄養調査で出た。所得の違いで、子どもや高齢者が十分な栄養が取れず、健康が脅かされる事態は見過ごせない。栄養格差の解消に国は一層力を入れるべきだ。調査は生活習慣病対策の参考にするため、健康増進法に基づき毎年実施。今回は18年11月、5032世帯を対象に行い、1月中旬に公表した。浮かび上がったのは、多くの人が依然、主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの取れた食生活から遠ざかっているという厳しい現実だ。栄養バランスの取れた食事を、どのくらいの頻度で取っているか聞いたところ、1日2回以上が「ほとんど毎日」という人は男性45・4%、女性49%で半数に満たない。「ほとんどない」も男性、女性いずれも1割前後いた。「ほとんどない」の割合を年間世帯所得別に見ると、より深刻な問題が見えてきた。所得が最も低い「200万円未満」の割合は男性20・8%、女性13・4%。所得が最も高い「600万円以上」と比べ、男女ともに2倍近く高かった。低所得者ほど栄養バランスの取れた食生活が送れていない栄養格差が浮き彫りになった格好だ。「低所得層の子どもは、成長に欠かせないタンパク質や鉄の摂取量が少ない」「所得の低いお年寄りほど健康な体を維持するために必要な栄養が足りない『低栄養』に陥っている」。こうした栄養格差は研究者のこれまでの調査でも明らかになっている。厚労省が定める国民健康づくり運動「健康日本21」(13~22年度)では、「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」を重点に掲げ、低栄養や生活習慣病などの予防・改善活動を展開しているが、解消には至っていない。栄養格差の解消に何が必要か。低所得者への経済的支援の充実はもちろんだが、注目したいのは子どもに無料か低額で食事を提供する「子ども食堂」だ。設置数は19年が3718カ所。各地で広がりをみせる一方、運営資金が課題となっており、国の支援が欠かせない。子ども食堂に食材を無償提供するJAも増えており、こうした動きを広めることも有効だろう。食育も忘れてはならない。今回の調査では、所得200万円未満の人に主食・主菜・副菜を組み合わせられない理由を聞くと、「食費の余裕がない」よりも「手間がかかる」「時間がない」という回答が多かった。栄養バランスの取れた食事の重要性を地道に訴え、理解を深めてもらう必要がある。農水省は新しい食育推進基本計画を来年3月に策定する予定で、近く議論を本格化させる。栄養格差の解消へ、どのような処方箋を描けるか。知恵を絞り、意欲的な目標と効果的な方針・施策を打ち出してほしい。 *9-8:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/483693 (佐賀新聞 2020年2月1日) 小泉環境相の「育休」どう考える? 佐賀県内男性の取得鈍く トップ、上司次第で意識変化も 第1子が誕生した小泉進次郎環境相が「育児休業」を取得する意向を表明した。「大臣という要職にありながら大丈夫か」と懸念する意見がある一方、「率先して範を示し、今後につなげてほしい」と歓迎する声も上がる。佐賀の男性の育児休業取得事情を調べてみた。佐賀県選出の山下雄平参院議員も4歳の娘がいて、小泉環境相の育休取得を歓迎している一人だ。山下議員も政治活動で地域の会合に出席する機会が多いが、「育児のために早退したり、欠席したりするのは言いづらい雰囲気がある」と語る。子どもに熱が出て病院に連れて行く時さえも「なかなか言い出しづらい」といい、小泉環境相の育休取得が、議員に限らず男性も子育てをするという雰囲気につながればと期待する。総務省から鳥取県庁に出向中、3人目の子どもが生まれ、2週間の育児休業を取得した山口祥義知事も小泉環境相の育休宣言を「英断」と評価する。佐賀県庁では、出産後の「出産補助休暇」(3日間)と出産前後の「配偶者出産時育児休暇」(5日間)を合わせた「8日間の育児休暇」の取得を促す。2016年度は知事部局の対象職員82人中21人(25%)、17年度は70人中36人(51%)、18年度は86人中51人(59%)が取得し、年々増加している。だが、「育児休業」の取得率となるとめっきり減る。育児休業は子が2歳までに1度、1日から長期まで選んで取れるが、18年度の男性職員の取得率は対象81人中わずか4人(4・9%)。県人事課は「育児休暇の取得率を高めつつ、利用促進を図りたい」と話す。民間事業所内でも男性の育休取得の動きは鈍い。県労働条件等実態調査をみると、調査事業所では2006~09年度は0%で、以降も1割にも届いていない。そのような状況の中、先進例と言えるのが半導体や液晶パネル向け精密化学品製造の「JSRマイクロ九州」(佐賀市、約110人)。1週間から約3カ月といった期間で、これまでに7人の男性社員が育児休業を取得した。最初の一人は、上司や同僚が取得を強く促して実現したという。その後は「子どもが誕生したら取るもの」という認識が広がった。父親の育児参加を支援するNPO法人ファザーリング・ジャパン九州の森島孝理事(40)は、男性の育休取得が広がらない大きな要因を「会社の雰囲気」や「周りに迷惑がかかる」などの思いがあると指摘する。一方で、業務の見える化や効率化ができていなければ育休取得を促すのは難しく、そうした環境の改善は「会社の考え方や体制を見直し、働きやすく、強い会社をつくるチャンスでもある」と強調する。JSRマイクロ九州もワークライフバランスの充実を図り、会社の付加価値を高める視点で取り組んでいるという。男性、女性社員に関わらず長期育休で欠員が出れば一時的に派遣社員を雇用してバックアップするなど環境を整えている。「『育休の対象者は限られていて、独身者や子育てが終わった世代は関係ない』と思われているのが現状では」と森島さん。「育休は会社のトップや上司が取ると取りやすくなる。『大臣が取ったから』と言えばもっと取りやすくなる。小泉環境相の発言は、意義が大きい」と話す。 ●記者の目 「当たり前」変える契機に 5年ほど前、会合で沖縄の新聞社を訪れた。「うちの職場は2人が育休中で」。そう話す社員に、そういえば私は取らなかったと明かすと、「なぜ取らないんですか?」と奇異な目で見られた。当時、私には男性社員が育休を取るという考え自体がなかった。意識の違いで、これほどまでに「当たり前」が違ってくる。取材中、育児休業は本来、仕事を継続していくための準備期間という位置づけなのだと聞いた。実際、ある取得者は「育休を取っていなかったら仕事を理由に子育てに参加しなかったかもしれない。夫婦で互いにサポートする体制を手に入れたことが何より」と話していて、準備期間だという話に深く納得がいった。一言に「育児休業」と言っても、本来の狙い、目的や取得による効果や影響など、知っているようで知らないこと、誤解したままのことは多いのではないかと感じた。小泉環境相の取得宣言をきっかけに、多くの「当たり前」を変えていくために必要なことを考えていきたい。 *9-9:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/581518/ (西日本新聞 2020/2/5) 「中村哲医師にささげる歌を」 さだまさしさんがアルバム制作へ 長崎市出身のシンガー・ソングライターさだまさしさん(67)が、「存在理由」と名付けたオリジナルアルバムを制作している。デビューから46年、あえて自らの立ち位置を問い直すテーマに取り組むきっかけとなったのは、アフガニスタンを支援する非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表、中村哲医師=享年73=の非業の死だったという。「中村医師のことが胸から離れない」と語るさださん。アルバムの軸には「中村医師にささげる歌を据えたい」とも話している。さださんは、自ら提唱して建設したナガサキピースミュージアム(長崎市)の主催で2004年に中村さんの講演会、10年にはペシャワール会の活動報告展を開いたが、直接の面識はない。ただ、「お互い侠客(きょうかく)の血を引く者として常に意識してきた」存在だという。中村さんの祖父は、北九州・若松港の石炭荷役請負業「玉井組」を率いた玉井金五郎。金五郎の長男、火野葦平の自伝的小説「花と龍」のモデルとして知られ、中村さんも生前、金五郎の生きざまに大きな影響を受けたと語っている。さださんの母方の曽祖父、岡本安太郎も明治時代、長崎港で港湾荷役を取り仕切った「岡本組」の元締。最盛期には気性の荒い沖仲仕(おきなかし)500人を束ね、任侠(にんきょう)の大親分として地元で語り継がれている。中村さんの行動は「無私の精神」で知られるが、東日本大震災や豪雨などの被災地で支援ライブを続けるさださんの行動理念にも義と情の部分で共通するものがある。一方で、ルーツは似ていても実際の生きざまの違いに落胆しているとも言う。「玉井金五郎の孫と岡本安太郎のひ孫があまりにも差がありすぎて、正直めげている」「俺は今まで何をやってきたんだと、自分のアイデンティティーに疑問を持っているところ。のうのうと生きてきたなあとね」。中村さんが銃弾に倒れた時、さださんはすでにアルバム制作に取り掛かっていたが、その死が頭から離れず「花と龍」を再読。わが身と照らし合わせながらたどり着いた答えが、自らの「存在理由」をテーマに据えることだったという。「とりあえず自分に問いかけてみる。『いったい歌作りの矜持(きょうじ)とは何ぞや』と。大したものはできないかもしれないが、やらずにはいられない」。中村さんにささげる歌は「まだ格闘中」(さださん)だが、アルバムと同じく「存在理由」と銘打ったコンサートツアーは4月中旬にスタート。アルバムは5月ごろ発売の予定だ。 *9-10:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55373830X00C20A2EA2000/ (日経新聞 2020.2.7) 新型肺炎、さまようクルーズ船 入港拒否相次ぐ 新型コロナウイルスによる肺炎を巡り、日本や中国周辺を回る大型クルーズ船の運航に支障を来す例が相次いでいる。横浜に到着した船の乗客多数が感染していたことを受け、日本やアジアの国や地域で入港を拒否する動きが広がっているためだ。1月以降に中国を訪れた大型船21隻は全てアジア・オセアニア地域にとどまり、うち複数の船が次の寄港地が決まっていない。向かう先で入港できず、次でも断られ、行き場を失う船が出てきた。日本経済新聞は情報会社リフィニティブとIHIジェットサービス(東京都昭島市)がそれぞれ展開する船舶の位置情報配信サービスを活用し、過去の航跡と現在位置を地理情報システムなどを使って分析した。日本時間7日午後5時までの航跡をみると、日本が石垣入港を拒否した米ホーランド・アメリカ・ラインの「ウエステルダム」(定員約1960人、乗組員約800人)は、1日に香港を出航した。台湾の高雄経由で、6日午後に石垣港の南西約100キロメートルまで近づいたが、入港しなかった。当初はその後那覇に行く予定だったが、太平洋を南下する針路を取っている。イタリアのコスタクルーズ社が運航する「コスタ・セレーナ」と「コスタ・ベネチア」は、韓国周辺の東シナ海上にとどまっている。米シーボーンクルーズラインの「シーボーン・オベーション」は2日ごろ香港を出港、フィリピン方面に向かったものの、途中でベトナムに向けてほぼ直角に針路を変えて同国中部沖まで航行した。しかし港に寄らずに南下し、7日朝タイ中部の港にようやく入った。日本政府は7日、ウエステルダムが石垣港に入港しないよう求めたことを明らかにした。乗員乗客の大多数が外国人だった。赤羽一嘉国土交通相は同日「8日の那覇寄港を取りやめ、当面のスケジュールを白紙とし、次の寄港地を検討すると連絡が入った」と述べた。台湾や韓国、フィリピン、ベトナム当局も事実上拒否している。1月以降に中国に寄港したクルーズ船は合計21隻ある。許可がおりる港を探して移動を続けている船のほか、次の寄港地がみつからず、港にとどまっている船も多数あるとみられることがデータから読み取れる。中には横浜の「ダイヤモンド・プリンセス」のように、乗客乗員が船から出られないケースも出ている。クルーズ船は数百~数千人の乗客とその半数程度の乗務員を乗せている。一般的に寄港地に半日~1日程度停泊し、一部の乗客を入れ替えながら現地ツアーを開く。東アジアでは日本や中国、東南アジア諸国などを回ることが多い。海上移動は数日かかることもあり、その間、乗客乗員は同じ空間で過ごす。日本には日本郵船系の「飛鳥2」や商船三井系の「にっぽん丸」など外航クルーズ船が3隻あり、ほとんどのツアーは乗客の9割以上が日本人だという。外国籍の船では日本発着でも外国人が半数程度を占めているとみられ、アジアでは中国人客が最も多い。データ分析では、1月以降に中国に寄港した21隻のうち11隻が日本に入港したことも分かった。運べる旅客数は最大計3万5000人に上り、乗務員も含めると5万人程度に及ぶとみられる。福岡や長崎、那覇に複数回入港した船もあった。新型肺炎の影響拡大で、世界の主要クルーズ企業が加盟するクルーズライン・インターナショナル・アソシエーションの加盟各社は、過去14日間に中国本土に出入りした乗客乗員の乗船を拒否する対応をとっている。中国への寄港はできず中国ツアーは中止や目的地変更が相次ぐ。米プリンセス・クルーズは「ダイヤモンド・プリンセス」の沖縄・台湾行き2本を中止した。MSCクルーズ(スイス)や米ロイヤル・カリビアン・インターナショナルも上海発着をやめた。日本クルーズ客船の「ぱしふぃっくびいなす」は9日の三亜(中国海南省)と11~12日のアモイ(福建省)から台湾の台南と高雄、花蓮に寄港地を変えた。同社によると「例年に比べキャンセルが増えてきている」という。旅行各社はキャンセル対応に追われ、日本旅行は「事態が長期化すると困る」とこぼす。国交省によると、外国籍クルーズ船は2月に123回来る予定だったが、75回に減った。クルーズ旅行は世界的に人気が高まっており、寄港地経済への恩恵が大きい。各地で打撃が出る可能性もある。外資系クルーズ大手の日本代理店は「クルーズ自体にネガティブなイメージが付かなければいいが」と心配する。運航会社の株価にも影響が出ている。グループ会社がダイヤモンド・プリンセスを運航する米カーニバルの株価は、6日の終値が19年末から13.9%下落した。 *9-11:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/582424/ (西日本新聞 2020/2/7) 「有事の際の入国基準を」 福岡市長が新型肺炎拡大で国に意見書 福岡市の高島宗一郎市長は7日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、クルーズ船の入港や外国人観光客の入国を制限できる基準とルールを定めるよう求める意見書を、法務省に提出した。高島市長は1月30日、自身のブログで「当面は中国本土からのクルーズ船の寄港を拒否すべきだと思っている」と主張していた。7日、宮崎政久法務政務官と面会した高島市長は「例えば、下船する際に解熱剤を飲んで検疫をすり抜けるようなケースもあると聞いている。国には有事の際の入国基準をしっかり策定してほしい」と要望。宮崎政務官は、出入国在留管理庁に対し遺漏のない対応をするよう指示を出したとした上で、「市民の不安を拭い去るため、現場の皆さんと緊密に連携していく」と応じた。面会後、高島市長は「われわれの考えに共感してもらえた。国には経済対策も併せて対応をお願いしたい」と話した。 *9-12:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/486420 (佐賀新聞 2020.2.8) 唐津市「寄港キャンセルなし」 新型肺炎でクルーズ船 小型の高級客船の誘致に成功し、寄港数を伸ばしている佐賀県唐津市。昨年の唐津港への寄港数は過去最多の11回で計3827人が上陸、今年は9回の寄港予約が入っているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響について唐津市は「現在のところはキャンセルは出ていない」と話す。ただ、営業活動に影響が出ている。クルーズ船会社や自治体の関係者を集めた商談会が6日、福岡県で予定されていたが、外国の船会社関係者が出席できず中止になった。市みなと振興課の担当者は「新型コロナウイルスへの対応で商談どころではなくなったようだ。販路拡大に向けた貴重な営業の場がなくなってしまった」と肩を落とす。市には5月14日、中国・上海を出発した客船が寄港する予定になっている。担当者は「そのころまでに感染が終息していればいいが」とこぼした。 *9-13:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021102000171.html (東京新聞 2020年2月11日) 新型肺炎感染 クルーズ船 新たに65人 全員検査 判断揺れる クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で起きた新型コロナウイルスの集団感染で、厚生労働省は十日、新たに検査結果が判明した百三人のうち六十五人の感染が確認されたと発表した。クルーズ船では検査した延べ四百三十九人のうち百三十五人の感染が判明し、拡大が止まらない事態になっている。中国湖北省武漢市から帰国した邦人らを合わせると、国内の検査で陽性となった感染者は百六十一人となった。厚労省は、船内に待機する約三千六百人の乗客乗員全員に対し、下船する際のウイルス検査の実施を検討していると明らかにした。全員検査を実施する場合、結果を待ってからの下船になるとした。加藤勝信厚労相は検討理由について「国民の不安や懸念にしっかり対応する必要がある」と述べた。一方、菅義偉官房長官は会見で、全員検査は難しいとの認識を示した。船内の感染者数が百三十人を超えたことについて、厚労省の幹部は「乗船者に客室待機してもらう対策を講じた後に増えているのかどうかは分からない。疫学調査や専門家の意見を踏まえて判断したい」と述べた。日本環境感染学会は拡大を防ぐために感染制御に詳しい医師や看護師の専門チームを十一日にクルーズ船に派遣する。厚労省は九日も、検査結果が判明した五十七人のうち六人の感染を確認したと発表した。うち五人は乗員で陽性の結果が出るまで業務に従事していた。不足する医薬品については、九日までに乗客延べ約千八百五十人分の要望があり、同日までに同約七百五十人分を船内に搬入。残りも手配を急ぐ。 ◆「一般病院も受け入れ可」 厚労省転換に自治体困惑 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客らに新型コロナウイルスの感染者が相次いでいる問題で厚生労働省が「感染症の指定医療機関でなくても、患者を受け入れて良い」と全国の都道府県などに通知していたことが十日、分かった。厚労省は「感染症法に沿った対応」と説明、個室など一定の設備がある病院を前提とするが、一般の病院での感染者受け入れにつながる突然の方針変更に、自治体は困惑している。厚労省の通知は九日付。感染症法は「緊急その他やむを得ない理由があるとき」は、指定医療機関以外の病院で指定感染症の患者を入院させられると定めている。感染者が増えていることから、規定に沿って通知を出したという。現在、感染者を受け入れている神奈川、東京、埼玉、千葉、静岡にある指定医療機関は四十九病院計三百四十五床。室内の空気や細菌が流出しないよう気圧を低くする陰圧制御や、他室とは独立させた換気設備などを備えている。通知を受け、関東地方のある自治体は十日、管轄病院に感染者を受け入れられるかの確認に追われた。ただ、この自治体の幹部は一般の病院で受け入れが決まったわけでないとしながら「地域がパニックになるのではないか」と不安を隠さない。 ◆態勢整う病院あるか <岡山大の津田敏秀教授(環境疫学)の話> 病院には体の弱っている人や高齢者がいる。一般の病院で受け入れるとき注意しないといけないのは院内感染だ。だが、例えば感染した人を受け入れるために急に一フロアを空けるなどということができる病院が、どれだけあるのだろう。これまで国の対応は後手後手に回ってきた。仕方のない面もあるが、これからは先を見て対応することが大事だ。中国での湖北省以外の感染者がどのように推移するか。日本での広がりを考えるうえで参考になるのではないか。 *9-14:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021002100042.html (東京新聞 2020年2月10日) 新型肺炎で「マスク狂騒曲」止まらず 欠品、高値転売、詐欺まで 新型コロナウイルスによる肺炎が広がる中、感染への不安心理による「マスク騒動」が収まらない。買い占めによって店頭から消え、売り上げは例年の9倍近くまで跳ね上がる。インターネット上では高額転売が横行し、騒ぎに便乗したサイバー攻撃まで登場。一体、どこまで広がるのか。(中沢佳子) ◆どこにもない…定価の数倍で転売 「購入はお一人さま二点まで」。七日に東京・銀座のドラッグストアを訪れると、そんな張り紙が掲げられていた。しかし、そこにあるのは商品名と値段が書かれた札のみ。「売り切れなんです。次回の入荷も全く分からなくて」と店員の女性。周辺の五店回るも、どこも「メーカー在庫希薄のため欠品」「入荷は未定」と断り書きが出ていた。高額転売も横行。フリーマーケットアプリ「メルカリ」では、公式ブログが「適切な範囲での出品・購入にご協力を」と呼びかけていながら、この日も箱入りマスクなどが定価の数倍以上で出品されていた。 ◆マスク売上、例年同期比の8.9倍 市場調査会社「インテージ」によると、一月二十七日~二月二日の全国のスーパーやコンビニ、ドラッグストア計四千店のマスクの売り上げは約百八十七億一千六百万円。同時期の例年平均の約八・九倍に上る。二〇〇九年の新型インフルエンザ拡大のピーク(約六十五億四千万円)をはるかに超え、手指消毒剤やマスク用除菌スプレーの売り上げも例年の十倍以上だった。「過去にない異常な事態。メーカーはどこもフル稼働で増産し、毎日出荷している」と明かすのは、マスクやおむつなどのメーカーでつくる「日本衛生材料工業連合会」の高橋紳哉専務理事。この時期は花粉症やインフルエンザへの備えで出荷が増えるとはいえ、例年の比ではないという。「購入量が多すぎて生産が追い付かない。節度ある買い方をしてほしいのだが」 ◆詐欺サイトにつながるサイバー攻撃も サイバー攻撃も現れた。ネットセキュリティー専門会社「トレンドマイクロ」によると、「マスクを無料送付、確認をお願いします」というメッセージが拡散。URLをクリックすると詐欺サイトに誘導され、クレジットカード情報が盗まれる恐れがある。保健所からの注意喚起を装い、ウイルスに感染するファイルを添付したメールも登場している。物が消える不安から買い占めに走る群集心理は今も昔も変わらない。一九七三年のオイルショック時は、トイレットペーパーがなくなるといううわさに、人々が血眼になって店に殺到した。記録的な冷害でコメ不足に陥った九三年は、外米の輸入でしのごうとした政府の思惑をよそに国産米を求める行列が絶えず、「平成のコメ騒動」といわれた。 ◆「正しい情報がパニックを防ぐ」 「買い占めは不安を解消するための獲得競争であり、自衛行動」と東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク心理学)は指摘する。無駄になるかもしれないと思っても、あれば買ってしまう。今回のように感染症の被害状況や先行きが見通せない時に目立つといい、冷静な行動を促すには不安の増幅に歯止めをかける必要があると説く。「客船での足止めやマスクの買いだめなどがショッキングに報道され、不安があおられている面もある。感染の広がりやマスクの供給状況など、正しい情報やデータを出すことがパニックを防ぐ方策だ」 *9-15:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200212&ng=DGKKZO55498990R10C20A2TJC000 (日経新聞 2020.2.12) 日本が拒否したクルーズ船 タイも国内反発で拒否 タイ政府は11日、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大防止で日本に入国を断られたクルーズ船「ウエステルダム号」について、タイも入港を拒否すると発表した。当初は受け入れる予定だったが、国内で反発があり、方針転換した。同号はタイに向かっていたが、今後、どのような針路を取るかは不透明だ。同号の運航会社は10日、「13日にタイに入国し、乗客は空路で帰国する」と明らかにしていた。タイ政府はこの情報がインターネット上に広がり、パニックになったことを入港拒否の理由の一つに挙げた。今後、他のクルーズ船の受け入れも拒むかは不明だ。フィリピンやベトナムに入国を断られた別のクルーズ船「シーボーン・オベーション号」はタイに入港を認められ、7日に着岸した。他のクルーズ船にもタイへ向かう動きがみられていた。 *9-16:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202002/CK2020021202100021.html (東京新聞 2020年2月12日) 新型肺炎で海をさまようクルーズ船 どこが助けるの? 新型コロナウイルスによる肺炎の影響で、港に入れないクルーズ船が日本近海をさまよっている。クルーズ船は寄港先で食料や燃料を補給していく。どこにも受け入れてもらえなければ、いずれ乗客乗員の人命にかかわる事態になる。そんな状況になったらどの国が責任を負うのか。専門家に聞くと、どうやら国際的な取り決めは、ない。 ◆あちこちで寄港を拒否され… 台湾・高雄から横浜へ向かっていたクルーズ船「ウエステルダム」。寄港予定だった沖縄県・石垣島や那覇で入港を「拒否」された。乗客乗員計二千人余りの一部に新型肺炎の発症者がいたためだ。十日現在も寄港先が決まっていない。六日に那覇を出発したクルーズ船「スーパースター・アクエリアス」は、行き先の台湾、出港した那覇から寄港を拒否される事態に陥った。結局、台湾が受け入れることになり、予定より遅れて八日に到着した。東南アジアを巡っている日本船籍のクルーズ船「ぱしふぃっくびいなす」は台湾での寄港を拒否され、長崎港へ向かっている。横浜・大黒ふ頭に着岸している「ダイヤモンド・プリンセス」も、乗客乗員は中に留め置かれている。つらい状況だろうが、海の上をさまよっている船があることを考えると、まだましなのかもしれない。 ◆食料は10日ほどで尽きる 入港させてくれる港がなければ、船はどうなるのか。あり得なさそうな事態が、日本近海で起こりそうになっている。「豪華客船は数千人乗客乗員がいる。食料は一週間か十日間でなくなり、燃料も補給しないといけない。通常は寄港先で調達するのだが…」と、神戸大の若林伸和教授(航海システム学)は語る。つまり、客船が洋上にさまよっていられる日数は、この程度。これより長くなると、人道上の問題になりかねない。どの国が救いの手を差し伸べる決まりになっているのか。 ◆船籍や自国民の割合を考慮 外国からの船の入港には、検疫、出入国、港湾の管理で三つの役所がかかわる。入港拒否は港湾を所管する国土交通省の担当だ。問い合わせてみると…。「明確な決まりはない。事案に応じて適切に対処するとしか言えない」。海事局外航課の長井総和課長はこう説明し、「頭の体操になってしまうが、船籍や自国民の割合で、国が対応するかどうかを考える。人命の危機が迫っていれば人道的な面から近隣国ということもあるだろう」と続けた。ちなみに、国交省に制度上、入港拒否権はなく、「船に入港しないよう要請するとともに、実際に港湾を管理している自治体に入港を認めないよう頼んでいる」(長井課長)という。 ◆条約の想定外 国際ルールが必要 今回の事態をみると、日本政府は、日本人の比率を重視して対応を変えているようだ。ダイヤモンド・プリンセス号は乗客の半分が日本人だったのに対し、寄港拒否された二つの船では、乗客が外国人中心だったからだ。若林氏は「ダイヤモンド・プリンセス号は、邦人保護の観点から入港が許されたのだろう」と語る。現在の扱いは「検疫法に基づく検疫が続いているという整理で乗客を留め置いている」(厚生労働省結核感染症課の加藤拓馬課長補佐)という状態だ。若林氏は「海上のさまざまな権益を取り決める国連海洋法条約では、今回のような寄港先が決まらないという事態は想定されていなかった。どの国が船に対して責任を持つのか、早急に議論して国際ルールを作るべきだ」と警鐘を鳴らす。 *9-17:https://www.agrinews.co.jp/p50006.html (日本農業新聞 2020年2月13日) 新型肺炎の混乱 野菜にも 中国産輸入が停滞 移動制限で収穫できず 国産切り替えも 猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、中国産野菜の日本への輸入が滞り始めた。例年2月はタマネギやニンジンなどの輸入野菜が多くなり中国産が主力だ。現地で人の移動が制限され、収穫や流通が停滞し、解消の見通しは立たない状況だ。混乱が長期化する様相の中、一部の流通業者には国産に切り替えようとする動きが出ている。生鮮野菜の輸入量は、年間で2、3月が特に多い。昨年2月の財務省の貿易統計では、タマネギやニンジン、ネギ、キャベツなどの8割以上が中国産だ。中国政府は、ウイルスまん延を防ぐため、人の移動を厳しく規制している。地域によっては「3人以上集まってはいけない」などと制限。人員確保が難しく野菜を収穫できず、出荷適期を過ぎても畑に放置されている模様だ。今の時期、日本に輸入される中国産タマネギは、前年10月に内陸部の甘粛省で収穫、貯蔵後、山東省の加工場で皮をむき、袋詰めしたものが多い。日本の輸入業者によると「山東省政府は1月末、省内の各企業に2月9日まで加工場などを稼働しないよう通達を出した」という。10日から一部で稼働は再開したが、「出荷量は限定的。野菜を梱包(こんぽう)する段ボールやビニール工場などの稼働遅れも問題になっている」(同)。青ネギやニンジンは、主産地が山東省から福建省に移っている。「産地移行に合わせ、山東省の労働者が福建省に出稼ぎに行き、加工を担うことが多い」(同)が、移動制限で作業が停滞している。輸出する港でも混乱が生じている。港で働く従業員の多くが春節期間中に帰省したが、移動規制で職場に戻れず、人員不足による作業遅れで積み下ろしや積み替えを待つコンテナが増えている。主要な輸出港の天津港(天津市)。90人の従業員が働くコンテナ運営会社によると、同社は通常、毎日150~200個のコンテナをさばく。だが、従業員の6割が現場復帰できず、6000個のコンテナが港で滞留。同社は「港に処理待ちのコンテナがあふれている」と指摘。冷蔵・冷凍コンテナで運ぶが、電力不足で野菜などは品質低下が発生している。影響の程度や期間が見通せない状況を受け、国産需要が高まりそうだ。日本の輸入業者は「中国産タマネギの仕入れ値は2倍近くに上がっている。現時点は各業者が輸入在庫を抱え、国産へのシフトは限定的。ただ、3月以降も長期化すれば状況は変わってくる」とみる。業務用カット野菜の製造業者も「今後の調達が大変」と漏らす。国内主力のタマネギ産地、ホクレンは「2月に入って、大手外食チェーンなどから問い合わせがある」(玉ねぎ馬鈴しょ課)と説明する。北海道産タマネギは潤沢で量はそろうが、「国内の皮むき加工業者は人手不足」(同)で、需要が増えた場合にどれだけ対応できるかは不透明という。 *9-18:https://digital.asahi.com/articles/ASN2J0FFJN2HUTIL025.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2020年2月16日) 米から救出機「遅すぎ。乗らない」 拒むクルーズ船客も 新型コロナウイルスの集団感染が起きている大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号。横浜港に停泊中の船から米国民を退避させるため、在日米国大使館はチャーター機を手配していると15日に公表した。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、船には米国人やその家族が約380人乗っている。船室内からも出られない状況が続き、ツイッターやフェイスブックなどで窮状を訴えたり、情報発信や交流をはかったりする人もいる。その中に「チャーター機には乗らない」と話す人がいた。カリフォルニア州から妻と乗船しているマシュー・スミスさん(57)だ。スミスさんは船内のアナウンスや食事などの様子とともに、「船内が危険だというネット上のデマにだまされないで」といった趣旨のツイートをした。15日、米政府がチャーター便を手配すると発表すると、「船内で検疫を終えた方がいい」とも発信した。朝日新聞の電話取材に応じたスミスさんの説明は次のような内容だった。予定された14日間の検疫期間が終わるまではあと数日。そのタイミングでの米政府のチャーター機派遣という決定は、「遅すぎた」。また、「検疫期間中でウイルスの検査結果も出ていない人々をまとめてバスに乗せ、飛行機で帰国させるという対応は、ここまで船室内で我慢してきた努力を無駄にするようなものだ」とも話した。その上で「しかも米国内でさらにもう2週間検疫するという。シンプルにばかげている」。感染の有無を調べる検査を受けていなかったり、検査の結果がまだ出ていなかったりする多くの人とともにバスや飛行機に乗る方がリスクが高い――。スミスさん夫妻はそう考え、船にとどまることを選んだという。また、チャーター機に持ち込める荷物は1人1個で70ポンド(約30キロ)までとされていることも問題だと話す。船に残した荷物がどうなるのかについても米大使館から説明がないため、戸惑っている米国人の乗客もいるという。大使館は、チャーター機で帰国しない米国人は一定期間、米国への入国は認められないと説明している。だが、その期間がいつまでなのかも明らかにされていないという。スミスさんは言った。「船で検疫を終え、検査結果が陰性となった時点で日本政府が上陸を許可してくれればいい。帰国できるようになるまでの間、東京に滞在するかもしれない」 *9-19:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200216&ng=DGKKZO55697760V10C20A2CC1000 (日経新聞 2020.2.16) クルーズ船、全乗客検査へ 新型コロナウイルスの集団感染が発生し、横浜港で検疫中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」を巡り、加藤勝信厚生労働相は15日、全乗客をウイルス検査する方針を明らかにした。同船では新たに67人の感染が確認されたことも発表し、同船の感染者は計285人となった。同船には当初、乗客乗員約3700人が乗船。検査能力の限界から全員一斉の検査は見送っていた。厚生労働省は民間検査機関などに協力を要請。年齢などで区切って順次検査を進めることで、乗客全員を検査できるメドが立ったという。感染者と同室だった人を除く70歳以上の高齢者には検査を実施しており、70歳未満の乗客についても16日をめどに順次、検査を実施。陰性と判明した場合は、14日間の経過観察期間が終わる19日から健康状態に問題がなければ順次下船する。東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授(感染症学)は「より早い段階で全員のウイルス検査に踏み切るべきだったが、受け入れ施設や検査体制の確保でやむを得なかった面もある」と話す。「下船した乗客の感染を確認した香港や、船籍国の英国、運航会社のある米国との情報共有を徹底していれば、横浜到着前に検査や感染防止の体制を整えることができた可能性がある」と指摘している。 *9-20:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200216&ng=DGKKZO55697800V10C20A2CC1000 (日経新聞 2020.2.16) 入港拒否、各地で相次ぐ 国際ルールに穴 新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、各国・地域の政府によるクルーズ船の入港拒否が相次いだ。根拠が不明確なケースもあるが、感染症を想定した国際的な取り決めはなく、ルールの穴が浮かんでいる。日本人5人を含む約2200人を乗せたオランダ籍のクルーズ船「ウエステルダム」が13日、カンボジア南部の港に到着し、14日から一部乗客の下船が始まった。同国のフン・セン首相は「私たちは責任をもって乗客を助けなければならない」と表明した。米国企業が運航する同船は2月1日に香港、5日に台湾・高雄を出て沖縄・石垣港に向かっていたが、日本政府から「新型肺炎を発症した恐れのある人が確認された」として外国人の乗客乗員の入国を拒否された。11日にはタイ政府からも入港を拒否されていた。香港の企業が運航するバハマ籍の「スーパースターアクエリアス」も台湾で寄港を断られて那覇に向かっていたところ、7日に日本政府から入港辞退を求められた。その後、台湾は受け入れに転じ、台湾当局の検疫では乗客乗員に感染者は確認されなかったとされる。国土交通省の外航課は「乗客らに感染の可能性がある場合、受け入れは個別判断になる。運航会社の拠点、船籍国、乗客の多い国が判断要素となる」と説明している。香港や韓国、フィリピンなどもクルーズ船の入港を事実上拒否しているが、個別の船について感染者の有無は必ずしも明らかではない。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は12日に「科学的な証拠に基づいたリスク評価をしていないことが多い」と苦言を呈した。 *9-21:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200219-00000029-mai-pol (毎日新聞 2020/2/19) クルーズ船「乗船」の神戸大教授が対応批判 菅氏は「感染拡大防止を徹底」と反論 感染症対策に詳しい神戸大医学部の岩田健太郎教授が18日、政府の許可を得て、横浜港で検疫中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗船した経験として、船内の2次感染リスクの管理が不十分だったと指摘する動画を公開した。菅義偉官房長官は19日の記者会見で「感染拡大防止に徹底して取り組んできている」と反論したが、政府高官は「いろいろな指摘には謙虚に耳を傾けたい」と述べた。岩田氏の説明によると、厚生労働省の協力を得て、災害派遣医療チーム(DMAT)の一員として18日に乗船した。18日夕方に下船後、動画投稿サイトで「ウイルスが全くない安全なグリーンゾーンと、ウイルスがいるかもしれない危ないレッドゾーンが、ぐちゃぐちゃになっていて、どこが危なくて、どこが危なくないのか全く区別がつかない」「熱のある方が自分の部屋から出て、歩いて医務室に行っている」「感染症のプロだったら、あんな環境に行ったら、ものすごく怖くてしょうがない」などと訴えた。菅氏は19日の会見で、「レッドゾーンとグリーンゾーンがぐちゃぐちゃ」との指摘に対して、「イエスかノーで答えることはできない」と回答。また感染対策の例として「乗員はマスクの着用、手洗い、アルコール消毒などの感染防御策を徹底するとともに、乗員の感染が確認された場合には同室の乗員も自室待機にするなど感染拡大防止を徹底している」と述べた。しかし、岩田氏の指摘は、こうした「感染確認後の対応」ではなく、それ以前の「検疫の初期段階にとるべき対応」に関するものだ。菅氏自身、18日の会見でクルーズ船への対応について「良かった点も、悪かった点もある」と認めている。クルーズ船は19日から下船が始まったが、政府は今後、一連の対応について検証する方針を示しており、岩田氏の指摘についても議論になるとみられる。 *9-22:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/491777 (佐賀新聞 2020.2.23) 下船の1人、新型肺炎発症、栃木の女性、感染確認 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)集団感染で、栃木県は22日、検査で陰性となり19日に下船した60代の日本人女性1人の感染が確認されたと発表した。クルーズ船を下船して帰宅した人の陽性確認は初めて。厚生労働省は22日、下船した乗客23人について、2月5日以降の健康観察期間中にウイルス検査をしなかったミスがあったと発表。加藤勝信厚労相は「深く反省する。こうしたミスが起きないよう徹底したい」と謝罪した。政府が乗客乗員約3千人超に2週間にわたって船内待機を求め、実施した大規模検疫と下船の判断は大きな課題を残した。栃木県によると、女性は21日に発熱があり、22日のウイルス検査で陽性と確認された。下船後は公共交通機関で栃木県内に戻り、最寄り駅から自宅までは友人が車で送った。移動中はマスクをしていた。厚労省によると、検査漏れのあった23人の内訳は日本人19人と外国人4人。下船後の精査で判明した。23人には再検査を要請し、3人は陰性だった。残る20人とは検査時期を調整する。感染拡大防止策を取った5日以前に一度検査していずれも陰性だったが、下船前に改めて検体を取る際に部屋に不在だったり、検査時期を確認しなかったりしたのがミスの原因という。症状が出れば地元で対応する。政府は新型肺炎対応策をまとめた基本的対処方針を25日にも公表する見通し。厚労省は、船内で作業をした同省職員は医療関係者らを除き、検査をすることも22日公表した。対象は41人。下船後2週間は自宅勤務する。22日は感染者と同室だった濃厚接触者89人が下船した。健康観察のため、埼玉県和光市の税務大学校に滞在する。日本人乗客らの下船はほぼ終了した。下船者の感染確認は、外国政府のチャーター機で帰国した人にも相次いでいる。厚労省によると計25人の感染が判明。米国籍の18人、イスラエル国籍の1人、オーストラリア国籍の6人だった。下船者への対応は日本と海外で異なる。米国やカナダ、英国、韓国、香港は14日間、施設で隔離。日本では日常生活に戻り、健康状態を2週間チェックし、不要不急の外出自粛を求めている。 <個性から新品種へ> PS(2020年2月2日追加):冬枯れになる冬は、花が少なく閑散とした街並みが多いが、*10のように、JA庄内みどりが冬に咲く桜「啓翁桜」を栽培したそうだ。今後は、広大な敷地での栽培や管理にドローン・自動草刈機等での省力化を必要としているそうだが、輸出だけでなく国内にも植えて欲しい。国内の桜は、4月前後に一斉に咲いて短い期間で散り、華やかな期間が短すぎるため、季節をずらして咲く桜があれば、一年にわたって寂しくないからだ。このように、最初は「狂い咲き」と呼ばれながら個性の違いで生じた桜を繁殖させて新品種にすると、その希少さが価値を高くする。他の花にも、季節のずれた品種があればよいと思う。 ![]() 椿 蝋梅 水仙 白とピンクの梅 (図の説明:1番左は12月・1月に咲いていた椿、左から2番目は今咲き始めた蝋梅《ろうばい》、中央の水仙と右2つの梅はこれから咲く花だが、これに桜その他の花が加わると、冬も明るいだろう) *10:https://www.agrinews.co.jp/p49902.html (日本農業新聞 2020年2月2日) 輸出拡大へ省力化を 北村地方創生相 山形県を視察 北村誠吾地方創生担当相は1日、地域のニーズを把握するために山形県を訪れ、JA庄内みどりを視察した。同JAが輸出に取り組む、冬に咲く桜「啓翁桜」の栽培を見学した。意見交換したJAや生産者は輸出やスマート農業への支援を求めた。JAは啓翁桜を県内でも先駆けて香港やベトナムに輸出し、年々栽培規模を拡大させている。田村久義組合長は「新規の輸出先としてロシアと商談中」と説明。北村担当相は「ロシア大使館に魅力を伝え、売り込みたい。関係省庁で連携し、産地を支援していく」と応えた。JA花木専門部長の高橋正幸さん(53)は、啓翁桜の栽培法や広大な敷地を管理する苦労を説明。北村担当相は「ドローン(小型無人飛行機)や自動草刈り機の導入など、迅速な省力化の必要性が分かった」と述べた他、「啓翁桜の栽培体験など、教育機関と連携して子どもたちに特産物について教えてほしい」と地域での魅力発信にエールを送った。JAの視察後は、水田に囲まれ「庄内のウユニ塩湖」と呼ばれる宿泊施設「ショウナイホテル スイデンテラス」や、木を基調にした児童遊戯施設「キッズドーム ソライ」などを巡った。 続き▽
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2020,01,15, Wednesday
![]() 2020年1月11日の総統選で勝利した蔡英文氏 日本のジェンダー・ギャップ指数 (図の説明:中国と向き合うにはかなりの覚悟が必要だが、左の2つの図のように、2020年1月11日の総統選では、中国と向き合う台湾の女性総統である蔡英文氏が圧勝した。日本は、右の2つの図のように、世界経済フォーラムの2019年ジェンダー・ギャップ指数で、総合121位《中国、韓国、インド以下》となり、特に政治分野における順位が144位と低い) (1)台湾の民意と関係諸外国の対応 1)台湾総統選での蔡英文氏の圧勝を祝福する 台湾の総統選(2020年1月11日投開票)で、*1-1のように、蔡英文候補が圧勝されたことを心から祝福する。高い投票率と蔡氏の過去最多得票により、台湾の民意は「中国との距離を保って自由で民主的な社会であり続けることだ」と明確に示された。 これには、香港の状況を目の当たりにした台湾の有権者の切実な危機感と昨年1月の習近平中国国家主席の「一国二制度」による統一を迫る演説が影響し、総統選前に中国が台湾海峡を航行させた国産空母も台湾住民の反発を招いたそうだ。その理由は、自由や人権の有り難みを知っている人は、それが踏みにじられようとすれば必死でそれを護ろうとする上、台湾の人口構成は中国系ばかりではないからだろう。 2)米国の対応 このような中、*1-2のように、トランプ米政権は、軍事・経済の両面で台湾を支援しており、今後は米国が世界における自国の「抑止力の源泉」と位置づける軍事と経済の両分野で中国の覇権的な攻勢の最前線に立つ台湾を積極支援していく考えだそうで、これには私も賛成だ。 米国は、2018年に米高官の台湾訪問や定期的な武器売却を求める「アジア再保証イニシアチブ法」をトランプ大統領の署名で成立させ、「自由で開かれたインド太平洋地域」の推進に向けた台湾支援を着実に進めてきた。トランプ政権は、台湾経済が中国への依存度を急速に強めていることにも危機感を募らせ、現在、議会や政府内部で米国と台湾との経済関係の緊密化に向けた自由貿易協定(FTA)の締結を提唱する声が広がりつつあるそうだ。 ここが、*1-1に書かれている「①台湾独立志向の蔡政権に対して中国は牽制を強め、台湾と国交を持つ国は中国の圧力で15ヶ国まで減った」「②蔡氏は中国が主張する『一つの中国』を受け入れないが、民進党が綱領で定める『独立』も封印してきており、そのバランス感覚を持ち続けてほしい」などと言うような強い側について、前例どおりに、いつまでも現状維持すればよいとする日本人の態度とは異なる。私自身は、台湾(中華民国)が中国から独立したままでいてよいと考える。 3)中国の対応 2016年、トランプ米次期大統領が1979年以来の前例を破って正式な外交関係のない台湾の蔡英文総統と電話会談した時には、*1-3のように、中国は米政府に「米中関係の大局が不要な妨害を受けることがないよう、『1つの中国』政策を守って台湾問題を扱うよう促した」とのことである。 また、2020年の台湾総統選における蔡総統の再選について、日米英の高官らが歓迎の談話を出したことについて、*1-4のように、中国外務省報道局長は「一つの中国の原則に反するやり方で、強烈な不満と断固とした反対を表明する」とのコメントを発表して各国に抗議した。 4)日本の対応 日本は、*1-5のように、日経新聞も「台湾の中国離れ加速が米中対立の火種になる」などと記載しているが、台湾は親日的な国であり、火種になっても弱者を犠牲にすればよいのではなく、やらなければならないことはある。 さらに、「台湾(中華民国)が独立したままでは、中国とよい経済関係を持てない」ということはあってはならない筈で、日本はじめ他の独立国は中国と経済関係を持ち貿易をしている。そのため、台湾は中華民国として国連に加入し、台湾の「経済的利益」をWTOを通して、または米国・ヨーロッパなどとのFTAで保ちながら、「国家の安全」と「経済的利益」を両立させればよいと考える。その方が、近くの日本も安心して付き合いやすい。 (2)女性に「控えめであること」を要求する日本文化 台湾総統選では、台湾人の人権や一国二制度への賛否が重要なテーマになったため、今回は蔡英文氏への女性差別どころではなかったと思うが、*2-1のように、男女は発信についても機会均等ではない。 私自身は、ディスカッション時には積極的に挙手して堂々と発言する方だが、そうすると、女性の場合は「声が大きい」「でしゃばり」「人の意見を聞かない」「独善的」等々の男性ならありえない批判に晒されることが多い。しかし、発言も発信もしなければ認められないため、女性の場合は矛盾した要求の下に置かれるわけだ。 また、黙っていても周りが実績を理解し評価して昇進させてくれるほど世の中は甘くないため、上を目指せば自分の経歴や実績をアピールせざるを得ないが、女性がそれを行うと「謙虚でない」「目立ちたがり」「性格が悪い」等々のマイナス評価もついてくる。つまり、女性が発言や発信に控えめになるのは、生まれつきの「男女の違い」や「女性の不得意部分」などではなく、女性に「控えめであること」を要求する文化によるものであり、女性への矛盾した要求が女性の活躍を妨害しているわけである。 そのため、*2-3のように、女性リーダーの育成において、まるで女性に覚悟が足りないかのように女性に覚悟の大切さを学ばせるというのは、本当の理由を理解しておらず、女性に対して失礼である。 (3)女性の実績と評価 「ウィキペディア」の記事も、*2-2のように、男性の記事が8割を占めるそうだが、リーダーに占める女性の割合が低ければ、実績があっても「ウィキペディア」に載らないため、「ウィキペディア」だけが是正を目指しても限界があるだろう。 さらに、「ウィキペディア」はじめメディアやネットに掲載されている記事は、その多くが本人ではなく他人が書いたものであるため、社会の一般常識と同様、女性を過小評価したり、頑張る女性をちゃかしたり、馬鹿にしたりする女性蔑視を含んだものが多い。そして、これが長く露出し続けるため、その評判が定着するというのが、私の経験である。 (4)農業における女性の参画とリーダーシップ 農業は食品を扱う業種であるため、消費者の心をつかむには、*3-1のように、マーケティングが重要であると同時に、食品に関する知識が多くマーケットで商品選択の主体になっている女性を活躍させることがKeyである。そもそも「道の駅」の原点は、自分で作った農産物をリヤカーに積んで道端で売っていた農家の主婦で、彼女たちが持ってきた新鮮で安価な農産物や行き届いたサービス・料理に関するアドバイスなどが消費者の人気を集めていたのだった。 そのため、*3-2のように、農漁業の経営が6次産業化を進める中、生産者であると同時に、生活者・消費者の視点を併せ持つ女性の役割が重要であることは明らかである。それにもかかわらず、農山漁村の女性の地位が低く、女性の社会参画促進や地位向上への啓発を今頃やっているのは、(何もしないよりはずっとよいが)遅すぎる。 そして、2017年3月5日の記事によると、JA女性役員、女性農業委員の割合は10%には届かず、①役員になり外出が増えると夫が嫌な顔をし ②男性役員ばかりの中で意見が通らず ③組織化されていない農業女子の集まりでさえ出掛けるのに家族の許可がいる のだそうだ。 日本農業新聞の2020年1月13日の記事では、*3-3のように、国連がジェンダー平等を含む持続可能な開発目標(SDGs)達成の担い手に協同組合を位置付け、JAグループが女性参画の数値目標を決めて女性参画を進展させた結果、2019年7月末時点で正組合員や役員比率の全てが前年を超し、女性正組合員比率が22.36%、女性総代が9.4%、全役員に占める女性割合は8.4%と増えたそうだ。しかし、役員どころか、女性正組合員比率も22.36%しかないのでは、日本の農村地帯におけるジェンダー平等はまだまだだと言わざるを得ない。 ・・参考資料・・ <台湾の民意と関係諸外国の対応> *1-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/575782/ (西日本新聞社説 2020/1/15) 台湾総統選 中国は危機感受け止めよ 中国とは距離を保ち、現在の自由で民主的な社会を守るという民意が明確に示された。台湾総統選(11日投開票)は中国との統一を拒否する与党民進党の現職蔡英文氏が過去最多得票で圧勝し、再選された。高い投票率も考え合わせると、半年以上に及ぶ香港の混乱を自国の将来と重ねた有権者の切実な危機感の表れと言えるだろう。蔡氏勝利の流れをつくったのは昨年1月の台湾政策に関する習近平中国国家主席の演説である。高度な自治を認める「一国二制度」による統一を迫った。当時、蔡氏は窮地に立たされていた。前年の統一地方選で年金制度改革など内政の混乱が響いて民進党が大敗し、党主席辞任に追い込まれ、総統再選も容易ではないとみられていた。習氏の演説以降、風向きは変わり、台湾で中国への警戒感が高まった。6月以降、香港で起こった大規模な反政府デモは「一国二制度」が形骸化している現実を国際社会に示し、それを目の当たりにした台湾では総統選の流れを決定的にした。「今日の香港は明日の台湾」と訴えた蔡氏の言葉が有権者の心をつかみ、総統選と同時に行われた立法委員(国会議員)選も民進党が過半数を維持した。中国にとっては民主派が圧勝した昨年の香港区議選に続く受け入れ難い結果だろう。だが、強権政治への拒否感が香港や台湾で広がっている現実を真剣に受け止めなければならない。台湾独立志向である民進党の蔡政権に対し、中国はけん制を強めてきた。台湾と国交を持つ国は中国の圧力で7カ国が断交し、今や15まで減った。総統選前には初の国産空母を台湾海峡で航行させた。こうした行為は台湾住民の反発を招くだけで、逆効果だったことは選挙結果から一目瞭然である。今後さらに台湾へ圧力をかけ続ければ、蔡政権を積極的に支援するトランプ米政権との対立も一段と深まりかねない。米国は昨年、インド太平洋戦略で「強力なパートナーシップ」を結ぶ相手と台湾を位置付け、戦闘機などの兵器売却を決めた。大国となった中国には、武力統一もちらつかせる強権的態度を慎み、香港や台湾の声に耳を傾ける懐の深さを示す-そうした振る舞いが求められる。蔡氏は、中国が主張する「一つの中国」を受け入れない一方で民進党が綱領で定める「独立」を封印してきた。中台間の緊張を不必要に高めない現実的な判断だろう。中台関係は東アジア情勢にも悪影響を及ぼしかねない。米中の覇権争いの最前線でもあり、難しいかじ取りを迫られるが、そうしたバランス感覚は持ち続けてほしい。 *1-2:https://www.sankei.com/world/news/200112/wor2001120024-n1.html (産経新聞 2020.1.12) トランプ政権 軍事・経済の両面で台湾支援へ トランプ米政権は台湾総統選での蔡英文氏の再選に関し、中国の脅威をにらんだ米台連携を円滑に継続できるとして歓迎する立場を明確に打ち出した。今後は、米国が世界における自国の「抑止力の源泉」と位置づける軍事と経済の両分野で、中国の覇権的な攻勢の最前線に立つ台湾を積極支援していく考えだ。ポンペオ国務長官は11日に発表した声明で、蔡氏について「(中国からの)容赦ない圧力にさらされる中、中台関係の安定維持に取り組んできたことを称賛する」と強調。さらに「台湾が蔡氏の下、自由、繁栄、国民のためのより良き道を希求する国々の輝かしい手本となり続けることを期待する」と表明した。米国では2018年、米高官の台湾訪問や定期的な武器売却を求める「アジア再保証イニシアチブ法」がトランプ大統領の署名で成立し、「自由で開かれたインド太平洋地域」の推進に向けた台湾支援が着実に進められてきた。中国問題に詳しい政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)のボニー・グレイザー研究員は今後の中国の出方について「当面は米台の動向を見極め、台湾に圧力をかける機会を模索するだろう」と分析。近い将来に中台が武力衝突する可能性は否定しつつも、「米国は台湾の抑止力強化に向け一層の協力を図るべきだ」と訴えた。トランプ政権は一方で、台湾経済が中国への依存度を急速に強めていることに危機感を募らせている。議会や政府内部では、米国と台湾との経済関係の緊密化に向けた自由貿易協定(FTA)の締結を提唱する声が広がりつつある。政策研究機関「ヘリテージ財団」のライリー・ウォルターズ研究員は、米台がFTA交渉に向けた「高官級の経済対話」の枠組みを構築すべきだと指摘する。同財団のウォルター・ローマン氏も「トランプ政権が中国や日本などと貿易合意に達し、蔡氏が再選した今こそが米台FTAに向けた好機だ」と強調した。 *1-3:https://www.bbc.com/japanese/38204570 (BBC 2016年12月5日) 中国、トランプ氏と台湾総統の電話会談に抗議 ドナルド・トランプ米次期大統領が1979年以来の前例を破り、正式な外交関係のない台湾の蔡英文総統と電話会談したことについて、中国外交部は3日、「米国の関係各方面に厳正な申し入れをした」と明らかにした。中国国営メディアによると、外交部は米政府に「米中関係の大局が不要な妨害を受けることがないよう」、「1つの中国」政策を守り、台湾問題を「慎重に、適切に扱うよう」促したという。またこれに先立ち王毅外相は3日朝、台湾側による「つまらない策略だ」と台湾を批判した。トランプ氏と蔡総統は2日に電話会談。トランプ陣営側が台湾総統に電話をしたという情報もあるが、トランプ氏は2日、「大統領に当選しておめでとうと、台湾総統から電話してきた」とツイートした(強調原文ママ)。トランプ陣営によると、トランプ氏は蔡総統に今年1月の総統就任への祝辞を述べたと言う。米国は1979年に中国と国交を樹立し、台湾とは断交した。それ以来、大統領や次期大統領が台湾首脳と直接会話したことはないとされている。中国の反発を呼ぶ可能性についてメディアが報道すると、トランプ氏は「米国は台湾に何十億ドルもの兵器を売ってるのに、おめでとうの電話を受けちゃいけないって、興味深いな」とツイートした。ホワイトハウスは、トランプ氏と台湾総統との電話会談は、米外交政策の転換を意味するものではないと強調。米メディア報道によると、ホワイトハウスも電話会談の後に知らされたという。トランプ氏の報道担当は、次期大統領は米国の台湾政策について「よく承知している」と述べた。 ●何が問題なのか 国共内戦で毛沢東率いる中国共和党軍に敗れた中華民国と国民党は1949年、台湾に移動。中華民国は国連代表権を維持し、欧米諸国には唯一の中国政府と承認されていたが、1971年に国連総会が中華人民共和国を唯一の中国の正統な政府と承認。中華民国は国連を脱退した。米政府は1979年に台湾と断交し、中華人民共和国の「一国二制度」を支持した。しかし断交してもなお、台湾にとって米国は唯一の同盟相手で最大の友好国だ。米国の台湾関係法ではは、台湾防衛用のみに限り米国製兵器を提供すると約束し、台湾の安全などを脅かす武力行使などに対抗し得る防衛力を米政府が維持すると約束している。中国は台湾に向けて多数のミサイルを配備しており、もし台湾が公式に独立を宣言すれば武力行使も辞さないと言明している。今年1月に圧勝した蔡総統率いる民進党は、伝統的に台湾独立を綱領としており、蔡政権は「一国二制度」政策を受け入れていない。 <解説1> 懸念から危機感と怒りへ キャリー・グレイシーBBC中国編集長 台湾に関する米政府の40年近くにおよぶ慣例をトランプ氏が破り、台湾総統と直接会談したことは、中国政府関係者を驚嘆させた。11月8日の当選以来、中国政府はトランプ氏のアジア政策顧問が誰で、対中政策がどうなるのか理解しようと、躍起になっている。台湾総統との電話会談は、これまで懸念だったものを怒りに変質させるだろう。中国政府は台湾を一地方自治体とみなしている。独立主権国家としての形式を一切否定することが、中国外交政策の主要優先事項なのだ。 <解説2> 穏やかな反応 シンディ・スイBBC記者、台北 中国の反応は比較的穏やかだった。最初からいきなりトランプ氏とぎくしゃくしたくないからだ。加えて中国は、トランプ氏は政治家として経験不足だとみているので、今のところはとりたてて騒がず、見逃すつもりだ。米政府が、中国と台湾に関する政策に変化はないと表明したことも、中国にとってはある程度の安心材料だろう。しかし舞台裏では中国はほぼ間違いなく、このような外交失態を二度と起こさないよう、トランプ陣営を懸命に「教育」しているに違いない。蔡総統のこの動きを受けて、中国政府はいっそう蔡氏に対して怒り、不信感を抱き、中国からの正式独立を目指しているものとみなすだろう。 *1-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54333200S0A110C2FF8000/?n_cid=TRPN0017 (日経新聞 2020.1.12) 中国が日米英に不満表明 蔡氏への祝意に反発 中国外務省の耿爽副報道局長は12日、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の再選に日米英の高官らが歓迎の談話を出したことに「(中国大陸と台湾は一つの国に属するという)一つの中国の原則に反するやり方で、強烈な不満と断固とした反対を表明する」とのコメントを発表した。すでに各国へ抗議したという。耿氏は「台湾地区の選挙は中国の一地方のことだ」と指摘。「台湾問題は中国の核心的利益だ。中国と国交を結ぶ国と台湾とのいかなる形の政府間往来にも反対する」と強調した。 *1-5:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54327820R10C20A1EA2000/ (日経新聞 2020/1/11) 台湾、「中国離れ」加速 米中対立の火種に 統一を遠ざけるため距離を置くか、経済交流の果実を求めて接近するか――。中国との距離を巡る「自立と繁栄のジレンマ」と呼ばれる問題を巡り、台湾の民意は揺れ動いてきた。鴻海(ホンハイ)精密工業など台湾企業は1990年代から中国に進出し、連携を深めた。2001年の世界貿易機関(WTO)加盟で中国の経済成長に弾みがつくと、中台経済の一体化を求める声が強まり、08年には対中融和を掲げる国民党の馬英九政権が発足した。だが情勢は一変した。台湾の中央研究院による19年3月の世論調査では、対中関係で「国家安全を重視する」との回答が58%に上り、「経済利益を優先する」を27ポイントも上回った。呉介民・副研究員は「統一への危機感の高まりに加え、米中摩擦で対中接近が必ずしも利益に結びつかなくなった面もある」と分析する。対中強硬路線を鮮明にする蔡氏の再選で、台湾を巡る米中対立が激化するのも確実だ。米国は1979年に台湾と断交して中国と国交を樹立。その後は「台湾関係法」に基づき台湾の安全保障を支える一方、対中協調を重視して台湾独立を綱領に掲げる民進党と距離を置いてきた。だがトランプ米大統領は就任直前の16年12月に蔡氏と電話で直接やりとりし、19年にはF16戦闘機の台湾への売却を決めるなど、中国への配慮で封印されてきた「タブー」は次々と破られた。蔡政権は中国大陸と台湾が1つの国に属するという「一つの中国」原則を認めない一方、党が持つ独立志向を封印する立場をとる。「現実路線で米の信頼を得る戦略」(民進党幹部)だ。米国防総省は19年のインド太平洋戦略の報告書で、台湾をシンガポールなどと並ぶ「有能なパートナー」とした。蔡氏は「米国との関係は過去最高にある」と誇り、2期目では同戦略への協力や米との軍事接近を鮮明にする公算が大きい。中国にとって台湾は海洋進出の出入り口に位置し、東アジアへの米国の介入を防ぐ安保体制を築くうえでも譲れない「核心的利益」だ。米台の接近は中国の激しい反発を引き起こすのが必至だ。半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)など次世代通信規格「5G」の核心技術を握る企業が存在する台湾は米中ハイテク摩擦の最前線にもなる。米国がハイテク分野で中国とのデカップリング(切り離し)を本格化すれば台湾を避けて通れず、供給網で深く関わる日本にも影響が及びかねない。 <女性に「控えめであること」を要求する文化> *2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191202&ng=DGKKZO52770090Z21C19A1TY5000 (日経新聞 2019.12.2) 男女の発信スタイルの違い 機会平等を担保しよう OECD東京センター所長 村上由美子 米ハーバード・ビジネススクールでは、成績上位5%の学生にベイカー・スカラーという最優秀賞を与える。MBA(経営学修士)を取得する女子学生は4割を超えたが、ベイカー・スカラーの女性比率は2割程度にとどまっていた。学力や潜在的能力など男性と同じ条件を満たして入学した女性達。入学後に苦戦したのは、クラスでのディスカッションだった。ハーバードでは成績の50%がディスカッションへの参加で決まる。積極的に高々と挙手し、ものおじせず発言する男性に比べ、女性の参加は控えめだった。この問題に気がついた大学側は、意識的に発言機会を男女平等にするよう教授陣を促した。その結果、ベイカー・スカラーの男女比率は改善。ついに昨年は男女間の成績の差異は完全に消滅した。男女のコミュニケーションや発信スタイルの違いに配慮することで、機会平等を担保するという興味深い例だ。私自身にも経験がある。ニューヨークの投資銀行で管理職に昇進した時だ。ボーナスシーズン前に自分の功績をアピールしにくる部下は全員男性だった。女性の部下が昇進やボーナスの交渉に来る事はめったになかった。私自身も新入社員時代「主張せずとも上司は私の成果を認めてくれている」と勝手に思い込んでいた。部下を評価する立場になって初めて、男性がいかに積極的に自己アピールしていたかに気づいたのだ。公平な評価・判断には、男女の違いを意識し、自らにインプットされる情報の偏りを精査する必要があると学んだ。日本でも女性を積極的に採用し、昇進を促進する企業は増えた。しかし彼女達の声は経営に生かされているだろうか。男女の違いを理解した上で、女性の持つ能力を開花させる取り組みが必要だ。効果的に会議に参加するためのコーチングを提供したり、司会役が女性に積極的に発言機会を与えたり、意識的に女性の背中を押し議論への参加を促すことが効果的だ。経済協力開発機構(OECD)の調査では、宿題にかける時間は女子学生の方が男子学生よりも長いという結果が出ている。女性は準備を周到に整える傾向があるが、自己肯定力は男性の方が往々にして高い。このような特性を理解した上で、女性の不得意部分を補う工夫を施せば、自らの能力を発揮し活躍する女性がさらに増えるはずだ。 *2-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/570293/ (西日本新聞 2019/12/22) 「ウィキペディア」にも男女格差 ネット事典、男性記事が8割占める ●是正目指す「ウィキギャップ」 インターネット上の百科事典「ウィキペディア」。何かを検索したら上位に出てくるおなじみのサイトだ。ただ、人物を紹介する記事の約8割は男性で、女性は実績があって著名でも記事が存在しないケースも多いという。そこで、ウィキペディアに女性の記事を増やし、ネット上の男女格差をなくそうというイベント「ウィキギャップ」が世界各地で開かれている。新たな試みが目指すゴールは、ネット上だけでなく、実社会における格差解消だ。2001年に登場したウィキペディアは、誰もが無料で自由に編集に参加できるのが特徴で、世界約300言語で展開されている。11月末、福岡市内のビルの一室で、女性を中心に15人ほどがパソコンに向き合い、作業に没頭していた。それぞれが詩人や経済学者など「載せるにふさわしい」と思う女性の業績や経歴を調べ、3時間ほどかけて執筆した。参加した司書の古島信子さん(50)はネットサーフィンという言葉を普及させたとされる司書「ジーン・アーマー・ポリー」について翻訳。「興味を持った人が彼女を知るツールの一つになればうれしい」。なぜ男性の記事が多いのか。「執筆者に男性が多いので、女性著名人や女性の関心が高い事柄は軽視されやすい」と指摘するのはウィキペディアに詳しい武蔵大の北村紗衣准教授(フェミニズム批評)。英王室キャサリン妃のウエディングドレスに関する記事やブラックホールの撮影に携わった女性科学者に関する記事が「百科事典として取り上げるに足らない話題」として“削除依頼”が出されたこともあるそうだ。運営するウィキメディア財団によると執筆者の9割が男性と推測される。北村准教授は「書く人の多様性がないと内容にも偏りが生じる。女性執筆者が増えることが女性記事の増加、百科事典の質の向上につながる」と力を込める。そもそも、現在「活躍する立場」の多くを男性が占めているのが現状で、男性の人物記事が多いのは当然という指摘も。特に日本は、先日発表された男女格差を指数化した報告書でも世界153カ国中、121位と低迷。女性議員(衆議院)や女性管理職の割合は1割程度にすぎない。政治分野の男女共同参画推進法や女性活躍推進法など法整備が進んでも、実態の改善には時間がかかりそうだ。一方で、ウィキペディアに女性の記事を増やす取り組みは、さまざまな立場の人が参加しやすい。北村准教授は「ネット上の男女格差解消の動きが、実社会に波及することも期待できる」と話す。 【ウィキギャップ】スウェーデン外務省などの呼びかけで「ネットの男女格差を埋めよう」と2017年に始まり、約60カ国で開催。30の言語で約3万2000本の記事が編集された。国内では東京や大阪でも開催され、今後も横浜などである予定。福岡のイベントは丸 *2-3:http://qbiz.jp/article/103068/1/ (西日本新聞 2017年2月5日) 女性リーダー育成 覚悟の大切さ学ぶ 福岡市で研修 企業など組織の担い手となる女性を育成する「女性トップリーダー育成研修」が2〜4日、福岡市で開かれた。福岡県内の企業役員や管理職などの女性20人が参加し、さらに飛躍するために必要なことを学んだ。研修は福岡女子大(同市東区)が初めて企画。2泊3日を共にして交流を深め、将来につながる人脈を築く狙いがあるという。国際基督教大の北城恪太郎理事長や地元経済界トップらがリーダーに欠かせない心構えや教養を伝授した。4日のグループワークでは、参加者が目指すリーダー像を議論。「周囲の意見を聞きすぎて、自分らしさを出せていない」「リスクを避けようとすると部下が育たずさじ加減が難しい」などと悩みを語り合い、自分の克服すべき弱点や強みをあぶり出した。参加した福岡空港ビルディング営業部次長の鰺坂裕子さん(49)は「意識して上を目指す覚悟が必要だと感じた。ここでできたネットワークは財産になると思う」と手応えを語った。参加者は3月の最終研修までに目指すリーダー像を固め、それを実現する行動計画を発表する。 <農業における女性の参画とリーダーシップ> *3-1:https://www.agrinews.co.jp/p39945.html (日本農業新聞 2017年1月19日) 販売革新へ戦略を 人材育成で初講習会 全中・全農 JA全中とJA全農は18日、農畜産物のブランド化など販売戦略の企画・実践力を向上させるための講習会を東京都町田市で初開催した。JAや連合会の販売事業戦略担当職員らが、「販売革新」をテーマに少人数のグループ討議を展開。どんな戦略をとれば販売力アップが見込めるかを参加者が提案し合うスタイルで、消費者の心をつかむ方策について議論を掘り下げた。20日まで開く。担当者と経営側との間に立つ職員を対象とし、11人が参加した。2、3人のグループでの討議で、参加者のJAが抱える販売戦略の課題克服や、JA内の意識改革をどう進めるかなど販売革新の方向性を話し合った。JA高知市が展開する、野菜「芥藍菜(かいらんさい)」の認知度向上策に関して、試食や貯金・共済の粗品とすることで消費者の認知度を高めていくとの提案があった。新潟県JA新潟みらいのカレー専用米の販路拡大に向けては、他産地との差別化のため「米どころ新潟が本気で作った専用米」とPRしたり、既存の有名カレー商品とタイアップ販売したりしてみてはどうか、といった意見が参加者から示された。これに先立ち、農産物流通に詳しい流通経済研究所の南部哲宏特任研究員が講義。マーケティングの意義について、卸売市場だけでなく「実際に食べてくれる人たちの情報を集めて意味を見つけ、どういうことが求められるのかを発見することが大事」と強調した。JAグループは自己改革でマーケットイン(需要に応じた生産・販売)に基づく事業方式への転換を目指している。講習会は、抜本的な改革が求められる中、実需・消費者の潜在的なニーズを掘り起こし、新たな販売戦略を中心となって担う人材の育成を狙って企画した。2日目は課題解決に向けた販売事業戦略の提案書を作成するためグループ討議を実施し、最終日に発表する。 *3-2:https://www.agrinews.co.jp/p40297.html (日本農業新聞 2017年3月5日) 農山漁村女性の日 発展の鍵握る活躍期待 3月10日は「農山漁村女性の日」。この日を前後して、農山漁村女性の社会参画促進や地位向上へ、さまざまな啓発行事が行われる。女性は農業従事者の約半数を占め、農村社会と農業の発展に欠かせない存在だ。農業経営が6次産業化を進める中、生産者であり、かつ生活者と消費者の視点も併せ持つ女性の役割は、ますます重要さを増していくはずだ。その役割の価値を見つめ直すきっかけにしよう。農業経営やJAなどの方針決定の場へ、女性の参画が増えている。農水省の調査によると、女性の認定農業者は2016年3月で1万1241人と前年より429人増えた。12年から毎年400人以上増え続けている。JA女性役員は1305人(16年7月)で、全役員に占める割合は7.5%と前年比0.3ポイント増。女性農業委員も2636人(15年9月)で、全委員に占める割合は7.4%と同0.1ポイント増となった。農水省の「農業女子プロジェクト」も4年目を迎え、農業女子メンバーは、今では500人を超える。企業と提携して商品を開発したり、教育機関と組んで学生に就農を促したりと活動が盛んだ。ことし初めて、農業女子の取り組みを表彰するイベントを開いてPRを強める。ただ、社会参画への進み方は遅い。女性認定農業者が増えているとはいえ、全体の4.6%だ。JA女性役員、女性農業委員も、第4次男女共同参画基本計画で共に早期目標に掲げる10%には届かない。「役員になり外出が増えると、夫が嫌な顔をする」「男性役員ばかりの中で意見が通らない」。JA女性役員からは、そういった不満の声が上がる。一方、組織化せず活動の自由度が高く見える農業女子の集まりの中でさえ「出掛けるには家族の許可がいる」と悩む声を聞く。家族経営が主流で、かつ男性が中心となっている農村社会の閉鎖的な構図が、依然としてうかがえる。女性農業者が真に活躍し、能力を発揮するにはまだ厚い壁があるのだ。家族の後押しはもちろん、活動を受け止める男性らがさらに理解を深める必要がある。日本政策金融公庫が16年に発表した調査では、女性が経営に関与している経営体は、関与していない経営体よりも経常利益の増加率が2倍以上高かった。特に、女性が6次産業化や営業・販売を担当している経営体で、経常利益の増加率が高い傾向にあった。買い物好きでコミュニケーション能力が高い女性だからこそ、的確に消費者ニーズを把握できていることの表れだ。農業収益を増やし、経営発展の鍵を握るのは女性農業者だ。「農山漁村女性の日」が3月10日とされたのは、女性の三つの能力である知恵、技、経験をトータル(10)に発揮してほしい――との願いが込められている。もっと活躍できる社会へ、家族、地域挙げて環境整備を急ぐべきだ。 *3-3:https://www.agrinews.co.jp/p49717.html (日本農業新聞 2020年1月13日) 女性参画が進展 JA新目標着実に JAの運営で女性の参画が進んでいることが、JA全中の調査で分かった。正組合員と総代、役員(理事など)全ての女性参画割合が前年を上回った。国連は、ジェンダー平等を含む持続可能な開発目標(SDGs)の達成の担い手に協同組合を位置付けており、識者は「けん引する勢いで取り組んでほしい」とJAグループに期待する。 ●正組や役員率全て前年超す 19年7月末 JAグループは、2019年3月の第28回JA全国大会で、従来を上回る女性参画の数値目標を決めた。①正組合員30%以上②総代15%以上③理事など15%以上──を掲げた。第4次男女共同参画基本計画やJA全国女性組織協議会の独自目標を踏まえた。19年7月末現在の女性正組合員比率は、22・36%と前年から0・49ポイント上昇。総代は9・4%と同0・4ポイント増えた。全役員に占める女性の割合は8・4%で同0・4ポイント増だった。女性役員総数は同9人減の1366人。JAの大規模合併で、役員総数が847人減の1万6260人と大幅に減った影響とみられる。一方、100JAで女性役員がゼロだった。全中は「女性参画の推進には、JA経営トップ層の理解が欠かせない。トップ層が集まる会議で必要性や意義を伝え、理解を求めていきたい」としている。 ●SDGsけん引を △協同組合や農村女性の活躍に詳しい奈良女子大学の青木美紗講師の話 SDGsの視点で見ると、数値を引き上げ、高い目標を持つことは大切だ。協同組合は、SDGsの推進で大切な事業や活動をしている。JAが、けん引する勢いで取り組んでほしい。一方、数値目標が独り歩きしないようにすべきだ。女性参画のメリットは、女性目線の事業提案ができること。女性組合員や生活者の視点に立った提案の実行でJA事業の拡大も期待できる。女性の意見に耳を傾け、否定しないことが重要だ。家事や育児などを行うことの多い女性が、参加しやすい環境を整えることも大事。女性参画が進めば、性別や立場を問わずさまざまな人がJAの経営や事業に参画しやすくなるはずだ。 <EU委員長の意思決定と日本の政治・行政> PS(2020年1月17日追加):*4-1のように、EUは、域内での温室効果ガスの排出を2050年に実質0にする目標達成に向けて、経済・社会構造を転換していくために、低炭素社会への移行を支える技術革新への投資を今後10年間で少なくとも約122兆円行い、これによって再エネへの転換を図って経済成長に繋げるそうだ。これは覚悟のいる大胆な判断で、かつ科学的・合理的な判断でもあり、フォンデアライエン欧州委員長も女性だ。 一方、私が提案して(私がこう言うと、必ず嘘だと決めつける人がいるが)太陽光発電・EV・自動運転車を世界で最初に市場投入した日本は、*4-3のように、原発と石炭を“ベースロード電源”に指定したり、送電網のコストを太陽光企業にツケ回したりするなど、再エネやEVの普及を妨害するための経産省の後ろ向きの対応にことかかない。そして、こういうことが続けば、日本に豊富な再エネの利用が阻害され、日本国民を豊かにすることはできない。 このような中、*4-2のように、農業では無人田植え機の電動版もできたそうで、これなら日本だけでなく世界でニーズがあると思われるが、メーカー希望小売価格が1468万1700円では高すぎて国内でもなかなか普及できず、世界で普及するのは中国製をはじめとする他国製になるだろう。これが、名目インフレ(名目物価上昇)の悪弊の一つなのである。 このように、日本では殆ど男性の“(同じ仕事を続けてきた国内志向で視野の狭い)ベテラン”と言われる政治家・行政官が政治・行政を担当してきた結果、*4-4のように、税収が伸び悩んで2025年の「基礎的財政収支」は国・地方あわせて3兆6千億円の赤字になるのだそうだ。そして、その原因に必ず世界経済の減速というような外的要因を挙げるが、景気対策と呼ぶ無駄遣いが多く、根本的解決になる投資をしないのが本当の原因であるため、これまでどおりではいけないということだ。 *4-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202001/CK2020011502000274.html (東京新聞 2020年1月15日) 温室ガスゼロへ122兆円投資 EU、技術革新へ今後10年で 欧州連合(EU)欧州委員会は十四日、EU域内で温室効果ガス排出を二〇五〇年に実質ゼロにする目標の達成に向けて経済・社会構造を転換していくため、今後十年で少なくとも一兆ユーロ(約百二十二兆円)を投資する計画を発表した。低炭素社会移行を支える技術革新への投資を通じて経済成長を図る一方、石炭発電の比率が高い東欧などに対し、再生可能エネルギーへの転換を支援する構え。投資計画は、フォンデアライエン欧州委員長の総合環境政策「欧州グリーンディール」の資金面の裏付けとなる。一兆ユーロの約半分はEU予算で賄い、残りは加盟国や公的機関、民間などが拠出する。投資計画はEU欧州議会と加盟国の承認が必要。フォンデアライエン氏は十四日、フランス・ストラスブールで開かれた欧州議会本会議で「行動し損ねた場合のコストは巨大なものになる。今、投資するしか選択肢がないのだ」と訴え、巨額の出資に理解を求めた。「欧州グリーンディール」は先月就任したフォンデアライエン氏の看板政策。欧州委は現在策定中の二一~二七年のEU中期予算の25%を気候変動対策に充てる方針を既に示すなど、気候変動対策を急いでいる。フォンデアライエン氏は「われわれを待ち受ける(経済・社会の)転換は前例がない」と強調。構造転換の波に激しく揺さぶられる「人々や地域を支援」しつつ、「グリーン経済の投資の波を起こす」と訴えた。石炭への依存度が特に高いポーランドは、低炭素社会移行に莫大(ばくだい)な費用がかかるとして、昨年十二月のEU首脳会議で「五〇年に排出ゼロ」のEU目標への合意を留保するなど、資金調達が重要な問題となっている。 *4-2:https://www.agrinews.co.jp/p49749.html (日本農業新聞 2020年1月16日) 業界初 無人田植え機 電動コンセプトも クボタ展示会 農機メーカーのクボタは15日、京都市内で製品展示見学会を開き、基地局の設置が必要ない自動運転トラクターや、業界で初となる無人運転田植え機を発表した。同社は、トラクターと田植え機、コンバインで自動運転農機をそろえることになる。無人運転の電動トラクターなどコンセプト農機、創立130周年記念の特別モデルも展示。スマート農業の普及につながる製品を充実させた形だ。新しく発表した「アグリロボトラクタMR1000A」は、単独で自動運転ができる機種だ。従来の無人トラクターは自動運転の際、近くに移動基地局の設置が必要で、農家にとって負担になっていた。新製品は、国の電子基準点情報を利用することで、基地局を設けなくてもよい初めての機種となった。今月中に発売。メーカー希望小売価格は1468万1700円とした。会場ではトラクターと田植え機、コンバインで、自動運転のラインアップをそろえたことをアピールした。10月に発売する「アグリロボ田植機NW8SA」は、業界初の無人運転田植え機だ。有人自動運転ができる自脱型コンバイン「アグリロボDR6130A」は昨年12月に発売した。新型機械「X(クロス)トラクター」のコンセプト機も披露した。完全無人運転の電動トラクターで、4輪クローラーで動く。車高を変える機能を備え、水田でも畑でも使えるのが特徴だ。有人運転の電動機は2023年の発売を目指す。同社は20年に創立130周年を迎えることから、会場には記念特別モデルも展示した。オレンジメタリックの特装色で、田植え機や耕運機などを用意した。この他、衛星利用測位システム(GPS)直進アシスト機能付きトラクターなどの試乗も行った。展示見学会は16日まで。2日間で代理店の担当者ら5000人の来場を見込む。 *4-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200117&ng=DGKKZO54478640W0A110C2EA1000 (日経新聞 2020.1.17) 送電網コスト、誰が負担? 太陽光企業にツケ回し案、国「後出し」非難受け修正も 再生可能エネルギーの普及に向け、費用負担のルールを決める議論が紛糾している。焦点は送配電網の維持費用を誰が負担するか。普及させるには国民負担をできるだけ減らす必要があるが、新たなコスト負担を強いられる見込みが濃厚な再エネ事業者側からは、海外勢を含めて「後出しじゃんけん」との非難が噴出。今年度内の着地に向け、大詰めを迎えている。もめているのは、政府が2023年度に導入見込みの「発電側基本料金」制度の詳細だ。これまで電力の小売事業者が託送料金で負担していた送配電設備費用を発電事業者にも分担させる。負担の公平性の確保や電力システム全体のコスト低減につなげるのが狙いだ。23年度の制度導入を目指すことは19年9月の経済産業相直属の専門会合で決まっていた。ただFIT(再生可能エネルギー固定価格買い取り制度)の発電事業者については、追加コストと同水準を補填して調整する措置(調整措置)を置くことを検討することになっていた。FIT事業者が販売価格への転嫁ができないことに配慮した。ところが、前後して「利潤配慮期間」と呼ばれる12年7月~15年6月に認定された電源については、買い取り価格自体が高額に設定されていることを理由に、調整措置の対象外という案が19年夏に浮上した。これに驚いたのが、この期間に高額な買い取り価格を当て込んで日本の太陽光発電事業に参入した発電事業者らだ。 ●10年間で6000億円 太陽光発電を手掛けるオリックスの関係者は「こんなひどい後出しじゃんけんは見たことがない。当社の株主は外国人投資家も多い。日本の再エネ制度への信頼を損なう制度変更だ」と憤る。発電事業者らの試算によると、該当する期間の電源で稼働済みの全案件を対象にすると、23年度以降の10年間で計約6千億円の課金につながるという。カナディアン・ソーラー・アセットマネジメントの中村哲也社長は「予定していた利益を遡及的に奪う制度変更で納得できない。将来の投資も難しくなる」と話す。事業者からは、このまま利潤配慮期間に何の調整措置も講じられない場合、日本も加盟するエネルギー憲章条約に基づき「投資家に対する公正待遇義務に違反する」として、国との仲裁を求める訴えを起こすとの発言も飛び出す。再エネ制度の変更をめぐるトラブルが起きているのは日本だけではない。スペイン政府は10年に制度変更を行い、海外の発電事業者らから30件以上の仲裁を申し立てられた。資源エネルギー庁は「スペインの例は買い取り価格自体を引き下げるなど、より直接的な制度の不利益変更だった。日本のようにコストが上昇して間接的に利益が減ることまで条約違反といえるかは疑問」と反論する。国は高まる事業者らの不満を収めるため、19年12月17日の専門会合で新たな制度案を示した。発電側の課金によって負担が減る小売事業者と、FITの発電事業者が交渉して新たな取引価格を決める内容だ。小売り側が取引価格に一定程度を補填することを見越した案だ。 ●普及へ透明性を 結局、負担をグルグル付け替えているだけで、誰が何を負担しているのか理解しにくい構図になっている。新提案への発電事業者の反応は「少しでも補填してもらえるならありがたい」というものから「交渉力が劣る事業者が損をするのでは解決にならない」など温度差がある。1月以降も制度設計を巡る議論が続く見通しだが、結論が出るかどうかは微妙だ。再エネを普及させるために政府が当初高い収益モデルを示し、国内外から投資を呼び込む手法は欧州など海外政府も活用している。ただその後、持続可能性の観点から参入事業者に不利な制度に変え、事業者が不信感を抱く事態が繰り返されれば、再生エネの普及自体が遠のく。必要な負担をどう配分するのか。丁寧な説明も含めて、透明性の高い制度設計が欠かせない。 *4-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2020011701001236.html (東京新聞 2020年1月17日) 25年度の赤字額は3・6兆円に 基礎的財政収支、税収伸び悩み 政府は17日、経済財政諮問会議を開き、中長期財政試算を示した。重要指標の「基礎的財政収支」は、高い成長率が続く楽観的な想定でも、黒字化を目指す2025年度に国・地方の合計で3兆6千億円の赤字になる。世界経済の減速で税収が伸び悩み、赤字額は昨年7月試算の2兆3千億円から拡大。目標達成に向け、一段の歳出抑制と歳入増加策が必要となる。GDP成長率は、昨年12月に決定した経済対策の効果などで、23年度に実質で2%、名目で3%台の高成長を実現すると想定した。この場合、基礎的収支は前回試算と同じ27年度に黒字化するが、黒字額は1兆6千億円から3千億円に縮小した。 <農林中金は職員を地方に多く置くべき> PS(2020年1月18日追加):農林中金は、*5-1のように、①2022年にも本店を有楽町から大手町に移転する ②都内の複数の事務所を集約して効率化に繋げる ③賃料等で年間約20億円のコスト削減をする ④ペーパーレス化等で職員1人当たりのスペースを半減させる ⑤JAグループ一体となって効率的で働きがいのある職場づくりを目指す としているが、農林中金の役割は、農協が地方の農業者から集めた預金を農業の発展のために使うことであり、都市銀行と同様に外国で散財することではない。そのため、地方の農協に支店を置いて優秀な人材を配置し、農業地帯を歩いて実情を知った上で、農業の発展のためにできることを企画すべきだ。 従って、①②はよいと思うが、農林中金本社に約1200人もの職員を置いておく必要はなく、本社は300人くらいにして残りは地方に配置し、農村地帯で経験を積ませるのがよいだろう。何故なら、そうすれば農業現場のニーズを知ってスキームを作ることができ、③の賃料も格段に安くなる上、地方に人材が供給されるからである。ただし、人の能力が結果を左右するため、優秀な人材を採用する必要があり、そのためには④のように職員1人当たりのスペースを半減させるのではなく、外資系並みのゆとりある快適なオフィスを作って、⑤を達成させるべきである。 なお、現在は、*5-2のように、政府が技術革新でCO2を削減するために、今後10年間で官民あわせて30兆円を研究開発に投資し、2050年までに世界で予想される排出量以上の年600億トン以上を削減する目標を掲げているが、ここで重要な役割を果たすのは、地方にある再エネ資源と農林漁業なのだ。 さらに、*5-3のように、台湾の鴻海がFCAと中国でのEVの合弁会社設立に向けて交渉する時代となり、再エネ・EV・自動運転は農林漁業や地方で大きな役割を果たすのである。 *5-1:https://www.agrinews.co.jp/p49765.html (日本農業新聞 2020年1月18日) 農林中金本店移転へ 東京・大手町に 事務所集約し効率化 農林中央金庫が本店を東京・有楽町から大手町に移転する方向で検討していることが17日、分かった。都内にある複数の事務所を集約し、効率化につなげる。賃料などで、年間約20億円のコスト減を見込む。年度内をめどに移転を巡る方針を正式決定。2022年にも移転する。農林中金は1923年に創立し、当初は日本橋に本店があった。1933年に現在の場所にあった「農林中央金庫有楽町ビル」に移った。93年に第一生命ビルと一体化し、現在の「DNタワー21」となった。農林中金は土地の約4分の1、建物の3分の1強を所有している。現在のビルには農林中金の職員約1200人が勤めており、同ビル近くや豊洲、大手町のJAビルにも本店機能を持つ事務所がある。どこまで集約するかは調整中だが、これらを集約し移転することで、賃料をはじめとした運営コストの削減につなげる。移転先は、JA全中やJA全農が入るJAビル近隣のビルで調整。複数フロアを購入する方向だ。22年から1年程度で段階的に移転をしていく。厳しい事業環境を受けて、JAが経営基盤強化に取り組む中で、農林中金としても効率化を進める。ペーパーレス化などを通じて、新たなビルではこれまでに比べて、職員1人当たりのスペースを半減させることを目指す。JAビルの近くとすることで、JAグループ内の連携強化にもつなげる。農林中金は「関係者と調整中だが、本店機能集約は検討している。創立100周年に向けて、JAグループ一体となり、効率的で働きやすく、働きがいのある職場づくりを目指したい」として、移転を働き方改革にもつなげる考えだ。 *5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200118&ng=DGKKZO54509560X10C20A1EA3000 (日経新聞 2020.1.18) 技術革新でCO2削減 政府新戦略、10年で官民30兆円投資 政府は技術革新で世界の二酸化炭素(CO2)排出削減をめざす新戦略をまとめた。CO2吸収素材を活用したセメントの普及など日本が得意とする先端技術の研究を加速し、今後10年間で官民あわせて30兆円を研究開発に投資する。2050年までに世界で予想される排出量を上回る年600億トン以上を削減する目標を掲げた。政府が21日に開く統合イノベーション戦略推進会議で、革新的環境イノベーション戦略として決定する。政府は地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」実現のため19年6月に長期戦略を閣議決定した。今回の戦略はこれを補完し、日本が強みを持つエネルギー・環境分野の施策を打ち出し、世界のCO2削減を先導する役割を強調する。各国の研究機関をつなぐ拠点となるゼロエミッション国際共同研究センターを立ち上げる。ノーベル化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェローが研究センター長に就く。吉野氏は17日、安倍晋三首相と面会し「地球環境問題は人類共通の課題。高い目標があるほど研究者は一生懸命頑張る」と述べた。内閣府などによると、世界全体では毎年500億トン規模のCO2が排出され、30年には570億トンになる見込みだ。600億トン以上削減できる技術の達成をめざす。 *5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200118&ng=DGKKZO54539960X10C20A1FFN000 (日経新聞 2020.1.18) FCA、EVで巻き返し、鴻海と「空白地」中国攻略へ 欧米自動車大手フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)は17日、台湾の電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手、鴻海(ホンハイ)精密工業と中国での電気自動車(EV)の合弁会社設立に向け交渉していると発表した。FCAにとって中国とEVはほぼ「空白地」。自動車生産のノウハウが薄い鴻海と組む異例の戦略で巻き返しを図る。鴻海側は16日に合弁を設立する方針だと発表。FCAの17日の声明では、「最終的な合意に至るとは限らない」との注記をつけたうえで、2~3カ月以内に拘束力のある合意を目指すとした。FCAによると折半出資で次世代のEVと「つながるクルマ」を開発・生産する新会社も設立を目指す。鴻海は同社からの直接出資は4割を超えないとし、残りは関連会社などを通じた出資になる見通しだ。FCAの自動車生産のノウハウと、鴻海のスマートフォンなどデジタル機器製造のノウハウを融合し、つながるEVの生産を目指す。EVなどの次世代車の生産を巡り、自動運転技術開発の米ウェイモと自動車部品大手のマグナ・インターナショナル(カナダ)が組んだり、中国新興EV大手の上海蔚来汽車(NIO)が中堅自動車メーカーの安徽江淮汽車集団(JAC)に生産委託をするなどの動きが出ている。ソフトに強みを持つ新興企業と伝統的な自動車産業のプレーヤーが組む動きが多く、大手自動車メーカーとEMSという今回の組み合わせは異例だ。鴻海は中国の配車サービス最大手、滴滴出行に出資、FCAはウェイモと協業しており、今後こうした新興企業が合弁に合流する可能性も注目される。FCAは2019年12月に仏グループPSAと対等合併で合意、規模を生かしてEVを強化する方針を示していた。ただ両社にとって中国を含むアジアは空白地だ。調査会社のLMCオートモーティブによると、両社を合わせてもアジア全体の販売台数は約50万台(18年)でシェアは約1%にとどまる。中国のEV市場は足元では停滞しているが、長期的には成長が見込まれる。FCAは中国では広州汽車集団と自動車合弁を組んでいるが、広州汽車はトヨタ自動車やホンダとも広くEVを生産している。FCAとPSAの統合が完了すれば、鴻海との合弁を軸に、PSAが欧州で培ったEVのノウハウもつぎ込みながら、巨大市場を開拓する考えとみられる。 <女性議員や閣僚も標的になりやすいこと> PS(2020.1.20追加):「選挙が汚れて国会議員の質は悪い」というイメージ操作が頻繁に行われ、今回は女性である河井案里氏が、昨夏の参院選で違法な報酬を支払ったと運動員が証言したと話題になっている。しかし、*6-1に書かれている「①2019年夏の参院選でウグイス嬢に法定金額を上回る、3万円の日当を支払った」「②ビラ配り、のぼりを持ったり、手を振ったりなど、選挙事務所や現場で選挙運動に直接かかわったAさんに11日で15万5千円の報酬を支払った」「③時給1000円くらいで上限は日当15000円までになると言われた」「④最初から報酬を約束されていた」「⑤数十万円の報酬を受け取った運動員が地元紙で報じられている」「⑥公職選挙法で認められていない運動員に報酬を支払った容疑」を、*6-2の現在の公職選挙法に照らして見ると、選挙運動員には報酬を支給することはできないが、うぐいす嬢には1日 1 人につき15,000円以内(超過勤務手当は支給できない)を支給することができ、労務者(人数制限はない)にも1日 1 人につき15,000円以内(10,000円+超過勤務手当はの上限5,000 円を支給することができる。そのため、①については、ウグイス嬢が手振りやビラ配りなどの単純労働も行っていれば(ウグイス嬢は、ふつう雑用も行い、地元の人とは限らないため買収しても仕方なく、こういう少額では買収されないだろう)市場価格と言われる3万円の日当を払っても法令違反とは言えないだろう。また、Aさんは単純労働しかしていないため、②③④は公職選挙法違反ではない。さらに、⑤⑥は、事実なら違法だが、検察はこの点は指摘していない。 つまり、女性である河井案里氏を標的にして「国会議員は金で汚れている」というイメージを作っているが、現在は収支報告書で収支を報告し、監査も受けているため、昔のようなビッグな金の動きはないのである。 *6-1:https://dot.asahi.com/wa/2020011500092.html?page=1 (週刊朝日 2020.1.15) 河井案里参院議員が違法報酬も 昨夏の参院選で運動員が証言 2019年夏の参院選で、車上運動員(ウグイス嬢)に法定金額を上回る、3万円の日当を支払ったとして刑事告発されている、河井案里参院議員。広島地検は15日、河井議員と夫で前法相の克行衆院議員の事務所を強制捜索した。さらに案里議員にはウグイス嬢への「日当疑惑」だけではなく、選挙運動した男性、Aさんにも15万5千円の報酬を支払っていたことが本誌の調べでわかった。公職選挙法では、ウグイス嬢や、選挙運動に直接関わらない事務スタッフに限り報酬の支払いが認められる。Aさんは選挙運動に直接かかわり、報酬をもらっていた。ウグイス嬢と同様に、その支払いは買収になる可能性がある。Aさんによれば、参院選の少し前に、案里議員の知り合いから選挙を手伝ってくれないかと話があったという。「4月の統一地方選で広島の地方議員さんの事務所に出入りしていたことがあった。その関係で声がかかりました」。予定が空いていたAさんは承諾。当時をこう証言する。「時給1000円くらいで、上限は日当で15000円までになるけど、いいかと聞かれました。週刊文春でも名前が出ていた、Tという秘書からでした」。ビラ配り、のぼりを持ったり、手を振ったり、選挙事務所や現場で直接、選挙運動に加わった。7月6日から選挙が終わるまで合計11日間、手伝ったという。その後、T秘書から「時間がある時に、寄ってほしい」と言われて、指定された広島市安佐南区にある案里議員の夫、克行衆院議員の政治資金管理団体「河井克行を育てる会」の事務所(広島市安佐南区安東)を訪れたのは、7月31日だった。「T秘書から封筒に入った現金112500円を渡されました。そして『残りは振り込みます』と言われました。スマートフォンで銀行口座をチェックしたところ、同じ日に43000円が案里議員の自民党広島県参議院選挙区第7支部から振り込まれていた。合計で155000円をもらったことになります」。Aさんは本誌にこう証言し、スマートフォンで銀行の取引履歴を見せてくれた。そこには<20190731 43000円 ジユウミンシュトウヒロシマケンサンギインセンキョクダイナナシブ>と記されていた。自民党広島県参議院選挙区第7支部は案里議員が支部長を務めている。「口座番号は選挙期間中に聞かれたのでメモして渡したように記憶しています。最初から報酬を約束されていましたから」(Aさん)。また、案里議員の選挙を手伝っていたBさんも報酬を打診されたという。「案里議員の選対責任者から、30万円でと言われた。断ると50万円でどうかと言われた。内容からして、公選法に引っかかるかもと辞退した。私以外にも、複数の人が報酬をもらっていると聞いた」(Bさん)。すでに、数十万円の報酬を受け取った運動員が地元紙で報じられている。「ウグイス嬢への法定で決められた金額以上の日当を払っていたという疑いや、公職選挙法で認められていない運動員に報酬を支払った容疑も浮上している。運動員への報酬は支払いがあるだけでアウトだ。そちらも捜査を進めている」(捜査関係者)。Aさんはこう言う。「公選法で受け取ることができない金とは知らなかった。取材を受けて認識しました。何か対応を考えたいと思っています」。案里議員の事務所は取材に対し、こう回答した。「刑事事件の進捗や捜査への支障の有無などを勘案し、適切な時期に皆様に説明致したい」 *6-2:https://www.city.kumagaya.lg.jp/about/soshiki/senkyo/senkyokanriiinkai/oshirase/20181106.files/senkyoundouhiyou.pdf#search=%27%E9%81%B8%E6%8C%99%E9%81%8B%E5%8B%95%E3%81%AE%E5%A0%B1%E9%85%AC%E4%B8%8A%E9%99%90%27 (「選挙運動費用の制限と届出」より抜粋) 報酬及び実費弁償の支給 <選挙運動従事者、労務者に支給することができる報酬> ①選挙運動員 支給できない ②選挙運動のために使用する車上運動員 1日 1 人につき15,000円以内 (いわゆるうぐいす嬢 等) (超過勤務手当は支給できない) ③専ら手話通訳のために使用する者 1日 1 人につき15,000円以内 (超過勤務手当は支給できない) ④専ら要約筆記のために使用する者 1日 1 人につき15,000円以内 (超過勤務手当は支給できない) ⑤労務者(人数制限はない) 1日 1 人につき10,000円以内 (超過勤務手当は10,000 円の 5 割以内) <女性がリードした環境政策とエネルギー変換> PS(2020.1.21追加):太陽光発電・分散発電・電気自動車は、1995年前後に私がインドに行った時、人口の多いインドで自動車が普及し始めたのを見て「化石燃料では必ず行き詰る」と考え、日本の経産省に提案したものだ。しかし、これを「私が最初に提唱した」と言うと、必ず「嘘だ。謙虚でない。そんなことは誰でもできるのに傲慢な思い込みだ」などと言われた。その後、誰でもできるのならさっさと他の人がやればよいのに、日本は大したこともせずにくだらない妨害行為を行い、ドイツのメルケル首相やヨーロッパ諸国、中国などが先に採用して、日本はまたまた外国に追随するという情けない結果となった。 世界では、*7-1のように、ドイツで再エネによる分散発電が進みつつあり、日本では、*7-2・*7-3のように、広島高裁が伊方原発3号機の運転を認めない仮処分決定をしたところだ。原発に絶対安全はなく、事故が起これば広い地域を壊滅させる猛烈な公害を引き起こし、伊方原発は中央構造線の上にあるのに災害想定が甘すぎる上、原発を海水で冷却することによって海に大量の熱を捨てて海水温度を上げているのだが、四国電力は、まだ「極めて遺憾で、到底承服できない」として不服申し立てをしようとしている。さらに、経産省は依然として原発を重要なベースロード電源と位置付け、2030年度の電源構成に占める割合を20~22%に引き上げる計画で、脱原発を求める国民世論と大きな乖離があるのだ。そのため、安全対策の拡充で発電コストが上がり、核燃サイクル計画も破綻し、日本が世界有数の火山国で地震も極めて多いことを考えれば、今国会で速やかにエネルギー政策を考え直すべきである。 そして、後輩の皆さん、*7-4のように、佐賀県立唐津東高校の校歌は下村湖人作詞で、大きな志や開拓者精神、希望を歌に込めた素晴らしいものだが、私はこれを歌っていた生徒の頃には、「われらの理想は祖国の理想、 祖国の理想は世界の理想」というのはどうやって実現するのか、全くわからなかった。しかし、本物の理想を追求すれば、祖国がついてきたり、祖国がすぐについてこなくても世界で採用されて祖国が後から追随してきたりすることもあり、こういうことも可能だったのだ。そして、ここに表現されている自然も護らないと・・。 ![]() 2020.1.18毎日新聞 2020.1.17 2017.12.14朝日新聞 2019.9.12東京新聞 中日新聞 (図の説明:左から1番目と2番目の図のように、広島高裁が伊方原発3号機の運転を認めない仮処分決定をした。右から2番目の図のように、阿蘇山から160km以内にある原発は、このほかに玄海原発と川内原発がある。また、1番右の図のように、福島第一原発事故では、広い範囲が放射性物質で汚染され、成長中で細胞分裂の激しい若い人が特に帰還できない状況だ) *7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200121&ng=DGKKZO54622930Q0A120C2MM8000 (日経新聞 2020.1.21) エネルギーバトル 電力、代わる主役(上) 技術が変える供給網、大手介さず個人で融通 電力の主役が電力会社から個人や新興企業に移ろうとしている。自然エネルギーを使った発電技術とIT(情報技術)が急速に発展し、個人間や地域内で電力を自在にやりとりできるようになったためだ。電力会社が大型発電所でつくった電気を自社の送電網で送るという当たり前だった景色が変わりつつある。「不便を感じずに環境に貢献できてうれしい」。独南部に住むエンジニアのトーマス・フリューガーさんは、独ゾネンの蓄電池を使った電力サービスをこう評価する。2010年創業の同社は契約者間で電力を融通し合う仕組みを実用化。顧客は欧州で5万人いる。 ●月額料金はゼロ 蓄電池とソーラーパネルを家庭に取り付ける初期費用に平均200万円かかるが、月に約20ユーロ(2400円)支払うフリューガーさんは年間の電気代が6分の1程度になった。今は月額料金ゼロが標準プランだ。電気は需要と供給が一致しないと停電が起きる。日本の電力会社は多くの発電所を抱え、その稼働率の変化で供給量を調整して対応する役割を担ってきたが、ゾネンはそれを崩す。強みは人工知能(AI)に基づくアルゴリズムによる調整だ。電気が余分なところから足りないところへ、安くつくれる場所から市場で高く売れる場所へと自動で判断する。利用者は自ら気づかない間に電気を融通し合い、家庭で必要な分をまかなう。クリストフ・オスターマン最高経営責任者(CEO)は「旧来の電力会社のモデルは時代遅れだ。巨大な発電所が国全体に電力を供給するモデルは機能しなくなる」と話す。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)は蓄電池の価格が30年までに16年の約4割に下がるとみる。中国企業の増産を背景に、さらに下がると指摘する関係者もおり、ゾネンのような活用は広がりそうだ。 ●巨額投資不要に 国際エネルギー機関(IEA)によると、新興国の経済成長を背景に電力需要は40年に17年の1.5倍に増える。その4割を太陽光などの再生エネが占める見込みで、発電の主役も石炭から交代する。大型の石炭火力や原子力発電所の発電能力は約100万キロワット。国内の家庭の電力消費量は1カ月250~260キロワット時で、家庭用太陽光の月間発電量は300キロワット時超が多いとされる。蓄電池でためたり、地域で融通できたりすればマネジメントは可能だ。大型発電所や、それをつなぐ長い送電網を巨額の投資で作らなくても、電力ビジネスを展開できるようになる。国内で地域ごとに独占権を持つ電力会社が「発電・送配電・小売り」の事業をまとめて手掛けるようになったのは1951年。再生エネやテクノロジーの進化が、70年の慣行を変える。電力自由化で先行した欧州では電気をつくる会社、送る会社、売る会社など、機能ごとの再編が進んだ。既に英独では石炭などの化石燃料よりも再生エネの発電量が上回る月もある。電力大手は石炭やガス、原子力などの大型発電所の効率をどう高めるかにばかり力を入れてきた。ただ、競争のルールそのものが大きくかわり、エネルギー産業は転換期を迎えている。 *7-2:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1059877.html (琉球新報社説 2020年1月20日) 伊方差し止め 原発ゼロへ転換すべきだ 四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、広島高裁が運転を認めない仮処分決定をした。伊方3号機の運転を禁じる司法判断は、2017年の広島高裁仮処分決定以来2回目だ。再び出た差し止め決定を業界や政府は重く受け止めるべきである。今回主な争点となったのは、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)や、約130キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラの火山リスクに関する四国電や原子力規制委員会の評価の妥当性だった。地震に対する安全性について四国電は、伊方原発がある佐田岬半島北岸部に活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の地震動評価は必要ないと主張していた。だが高裁は「敷地2キロ以内にある中央構造線自体が横ずれ断層である可能性は否定できない」ことを根拠に挙げ、「四国電は十分な調査をしないまま安全性審査を申請し、規制委も問題ないと判断したが、その過程は過誤ないし欠落があった」と指摘した。火山の危険性を巡っては、最初の禁止判断となった17年の仮処分決定は阿蘇カルデラの破局的噴火による火砕流到達の可能性に言及したが、その後の原発訴訟などでリスクを否定する判断が続いた。だが今回は「破局的噴火に至らない程度の噴火も考慮すべきだ」として、その場合でも噴出量は四国電想定の3~5倍に上り、降下火砕物などの想定が過小だと指摘した。それを前提とした規制委の判断も不合理だと結論付けた。東京電力福島第1原発事故で得られた教訓は「安全に絶対はない」という大原則だ。最優先されるべきは住民の安全であり、災害想定の甘さを批判した今回の決定は当然である。四国電は「極めて遺憾で、到底承服できない」と反発し、不服申し立てをする方針を示した。政府も原発の再稼働方針は変わらないとしている。だがむしろ原発ありきの姿勢を改める契機とすべきだ。共同通信の集計によると原発の再稼働や維持、廃炉に関わる費用の総額は全国で約13兆5千億円に上る。費用はさらに膨らみ、最終的には国民負担となる見通しだ。原発の価格競争力は既に失われている。電力会社には訴訟などの経営リスクも小さくない。一方、関西電力役員らの金品受領問題では原発立地地域に不明瞭な資金が流れ込んでいる実態が浮かび上がった。原発マネーの流れにも疑念の目が向けられている。政府は依然、原発を重要なベースロード電源と位置付け、2030年度に電源構成に占める割合を20~22%に引き上げる計画だ。脱原発を求める国民世論とは大きな乖離(かいり)があり、再生可能エネルギーを拡大させている世界の潮流からも取り残されつつある。政府や電力業界は原発神話の呪縛からいい加減抜け出し、現実的な政策として原発ゼロを追求すべきである。 *7-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/576849/ (西日本新聞社説 2020/1/19) 伊方差し止め 甘い災害想定に重い警鐘 原発再稼働を進める電力各社の安全対策と、それを容認している原子力規制委員会の判断は妥当なのか。その根幹に疑問を投げ掛ける司法判断である。四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転禁止を求めて、50キロ圏内である山口県の住民3人が申し立てた仮処分の即時抗告審で、広島高裁が運転を差し止める決定をした。伊方原発は細く延びる佐田岬半島の根元にある。深刻な事故が起きれば半島住民の避難は困難を極める。対岸約40キロの大分県を含む九州や中国地方にも甚大な被害が広がりかねない。伊方原発のそばを国内最大規模の中央構造線断層帯が走り、約130キロ離れた熊本県・阿蘇山も活発に活動を続けている。地震と噴火による災害リスクが適切に調査、判断された結果として、再稼働が認められたのか-。これが争点だった。決定は調査、判断ともに「甘い」との結論になった。地震については、原発周辺の活断層の調査が不十分と指摘した。阿蘇カルデラの噴火によるリスク評価も過小と判断した。加えて、安全性に問題がないとした原子力規制委の判断も誤りで不合理と断定している。福島第1原発の事故後、政府は「世界最高レベルの新たな規制基準」に適合した原発の再稼働を進めてきた。伊方3号もその一つだ。今回の決定は、規制基準へ適合させてきた電力会社の調査と、規制委の判断がともに不十分と指弾しており、「基準適合」に対する国民の信頼が揺らぐことは間違いない。規制委は最新の知見を踏まえながら、不断に基準を見直す努力を重ねる必要がある。電力各社も災害リスク調査のあり方などを改めて検証すべきだ。原発に関する司法判断はかつて、行政や専門家の判断を追認するものが大半だった。福島の事故後は裁判官によって従来より厳しい判断も出るようになった。運転差し止めを認めたのは今回で5例目であり、伊方3号機の運転を認めない仮処分決定は2017年に続き2回目だ。政府は福島事故後も原発をベースロード電源と位置付け、30年度に電源構成に占める割合を20~22%に引き上げる計画だ。ただ再稼働できたのは5原発9基にとどまる。再稼働しても、司法判断で止まる可能性があることが今回改めて示された。安全対策の拡充で、発電コストにおける原発の優位性は後退している。核燃サイクル計画も事実上、破綻したと言えよう。日本は世界有数の火山国で地震も極めて多い。ここで将来にわたり原発と共存していけるのか。今回の決定はエネルギー政策を考え直す契機ともしたい。 *7-4:http://www.people-i.ne.jp/~kakujyo/kooka.htm (佐賀県立唐津東高等学校校歌 下村湖人作詞、諸井三郎作曲) 天日輝き 1.天日かがやき大地は匂い 潮風平和を奏づる郷に 息づくわれらは松浦の浜の 光の学徒 光、光、光の学徒 2.はてなく広ごる真理の海に 抜手をきりつつ浪また浪を こえゆくわれらは松浦の浜の 力の学徒 力、力、力の学徒 3. 平和と真理に生命をうけて 久遠の花咲く文化の園を 耕すわれらは松浦の浜の 希望の学徒 希望、希望、希望の学徒 4.われらの理想は祖国の理想 祖国の理想は世界の理想 理想を見つめて日毎に進む われらは学徒 光、力、希望の学徒
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2020,01,11, Saturday
(1)日米貿易協定発効
![]() 2019.9.26 2019.10.19 2019.11.19 2019.11.16 日本農業新聞 日本農業新聞 Yahoo 東京新聞 (図の説明:さくら国会であまり話題に上らなかったが、日米貿易協定では、左の2つの図のように、農業への影響が大きいにもかかわらず、右の2つの図のように、本質を突いた議論があまりなされなかった。これは、日本では、感覚の遅れた行政が調整して政策を決め、国会はそれに追随しているだけで、民主主義がうまく機能していないことを意味する) 2020年1月1日に、*1-1のように、日米貿易協定が発効したが、TPPは2018年末に、EUとのEPA2019年2月に発効しているため、これによって日本の農業生産額は減少すると思われる。国会議決の際に与党が賛成、野党が反対だったのは、実際には貿易自由化を進めたのが経産省だからだ。 一方、日本は自動車及びその部品をの攻めの分野として“カード”として使おうとしたが、関税撤廃は継続協議となり、得たものはなかった。 そして、農業に関しては、いつも生産基盤強化や農業者の支援のためとして予算がつけられるが、これまでも同様の政策がなされてきたのに離農者が多いため、その費用対効果は検証する必要があり、効果が低いのなら「桜を見る会」どころではない額の選挙目的のバラマキであるため、政策を根本的に考え直す必要がある。従って、費用対効果を正確に把握できる国の会計処理と正確な統計が必要なのである。 なお、*1-2のように、政府は、「①日米貿易協定が発効しても日本の農家の所得や生産量は一切減らない」「②万全の国内対策を打つ」と述べているそうだが、①はあり得ないので「③日本農業が受ける影響はどの程度か」を正確に見積もらなければ、②の万全の対策は打てない筈だ。このように、日本の立法・行政は理論的で建設的な議論を行わず、感情的な言葉だけが飛び跳ねているわけである。 (2)日本の自動車産業は本当に強いのか? ![]() (図の説明:左図のように、2018年11月逮捕時のゴーン氏の容疑は、役員報酬の過少記載による金融取引法違反だったが、「これだけでは罪にならない」と見て、検察は2019年4月に会社資金の私的流用による会社法違反を罪状に加えた。しかし、日産と司法取引して逮捕したのなら、最初から容疑はすべてわかって書面によるバクアップもあった筈なので、こういうところからもゴーン氏を有罪に陥れるためにない頭を絞って罪を探していることがわかり、これが人権侵害なのである。さらに、中央の図のように、日産と司法取引しながら、たったこれだけの容疑を整理するのに2年もかかっているのはのろく、これでは最高裁まで闘ったら高齢になっても結論が出ておらず、人権侵害も甚だしいわけである。この際、一人の人間が築き上げた人生を台無しにするのに、「忙しいから時間がかかった」などというのは言い訳にもならない) 1)ゴーン氏逮捕事件の本質 私は、このブログの2018年12月4日・2019年4月6日などに記載したとおり、「ゴーン事件の本質は、経営上の争いに司法取引を用い、“私利私欲にまみれた独裁者”というレッテルを張って実績あるリーダーを追い出したことだ」と最初から見ていた。 そのため、先見の明を持ってリーダーシップを発揮していた(こうすると日本では“独裁者”と言われることが多いのだが)ゴーン氏をなくした日産が、経済産業省出身で社外取締役の豊田氏が薦めるガバナンス改革を行えば、漂流し始めることは予測できたので、*2-2のように、日産の業績が悪化し、*2-1のように、西川氏が辞任することになったのは想定内だった。 また、2010年にオランダに設立された子会社「ジーア社」は、法務部門を所管する外国人の専務執行役員の告発によると、リオデジャネイロやベイルートでゴーンが使う住宅の購入費・改修費を支払っていたそうだが、「イ.その告発は正確なのか」「ロ.刑事事件に相当する違法行為なのか」についても検討する必要があった筈だ。 東京地検特捜部はゴーン氏に、「①役員報酬の未払い分を隠した金融商品取引法違反」「②日産の資金を不正送金した会社法違反」という容疑を示したが、①は本来ゴーン氏が受け取れる筈の役員報酬をメディアが多すぎると叩いてできた法律で、株主が納得していれば問題ない性格のものである。そして、このような経営者叩きを続けていれば、外国人のみならず日本人でも有能な人は日本で会社を作らず上場もしなくなる。また、②は、日本人にはなじみのないやり方でも、販促であって不正でない場合もあるため、短絡的な解釈は禁物だ。 そして、ゴーン氏は、2019年6月24日に東京地裁で行われた公判前整理手続きにケリー氏とともに主席し、保釈中、弘中弁護士の事務所に通って弁護団と議論を重ね、弁護団はゴーン氏の認識や記憶を前提に公判での主張を組み立てて公判で予定する主張内容を、2019年10月17日、既に裁判所に提出しているので、日本の検察や裁判所はいつでもそれを参照できる。しかし、それ以上の証明や反論は、日本の司法の支配下にいてはできない事情があるのである。 2)ゴーン氏の出国 検察が容疑者としてメディアに発表した途端、日本のメディアは、*3-1のように、「ゴーン被告」と呼んで犯罪人扱いをし、殺人犯かレイプ犯ででもあるかのような保釈条件を求めた。つまり、ここでは「無罪の推定」は働いておらず、日本のメディアは「有罪の推定」を働かせ、「言論の自由」「表現の自由」と称して無節操なイメージ操作をしてきたのである。 そのため、無断ででも出国しなければ、日本メディアのしつこい情報操作に負ける上、検察が書類を押収して都合の悪い証拠は出さず、このままでは本人が無罪の証拠を出すこともできないため、ゴーン氏は出国を選んだのだろう。私は、出国に成功してよかったと思う。 日本の検察は、有罪が確定する前からまるで有罪が確定しているかのようにメディアに知らせ、メディアは疑問も持たずに裁判抜きで人を貶める報道をいっせいにしたのだから、ここでゴーン氏が日本のメディアを外して他国を中心としたメディアと自由にコミュニケーションを取ったのは当然である。 また、ゴーン氏は、*3-5のように、プロの力を借り、プライベートジェットを使って、出国に際しては楽器箱に隠れて関西空港からトルコ経由でレバノンに入り、*3-2のように、「有罪が前提の政治的な迫害を逃れた」という声明を発表し、*3-4・*3-6のように、「事件は自らを引きずり下ろすクーデターだ」等々と記者会見で述べているが、これを批判するのは当たらないと思う。 3)今度は「違法出国」が罪とは・・ このように、ゴーン氏の容疑内容は、2019年6月24日の公判前整理手続きで既に行われており、出国するにはそれだけの理由があったため、*3-3のように「違法出国が法秩序を踏みにじる行為だ」などという主張をする前に、ゴーン氏の刑事事件としての逮捕と長期の拘束が日本国憲法に定められた人権侵害にあたらないのかを反省すべきだ。 森雅子法相は、*3-3のように、「刑事裁判そのものから逃避し、許されない」と批判し、東京地検の斎藤次席検事は「日本の刑事司法制度を不当におとしめる主張で到底受け入れられない」とコメントしているが、刑事裁判に当たる事案か否かも含め、日本の司法の公正性が信頼できないので避けたのだから、この根本を忘れずに日本国憲法に沿った司法に改めるべきだ。 上記が、*3-7の琉球新報社説への私の説明でもあり、さらにゴーン氏の場合は、大切な人を人質にとられたのではなく自分が不当に長く拘束され、権利を大きく制限されたのだから、「人質司法」というよりは「拷問」「人権侵害」と言う方が正しい。 また、日本では検察が起訴した途端に「推定有罪となり、検察のメンツのために無罪の人が刑務所に入れられ、有罪率が99.4%で、反証は殆ど取り上げられない」ため、その本質を改革すべき森雅子法相が、「(逃亡は)どの国の制度でも許されない」と批判したのは本質を理解しておらず、*3-8のように、ゴーン氏が「法相の発言は愚か」と言うのは理解できる。 なお、法務省は、森雅子法相が「潔白だと言うのなら、(日本の)司法の場で正々堂々と無罪を証明すべきだ」と発言したことを3カ国語でHPに掲載したそうだが、刑事裁判では「推定無罪」の原則が働き、逮捕するにあたっては逮捕時に逮捕理由を説明し、検察官が有罪を立証しなければならないのであるため、森雅子法相は弁護士の割には知らなすぎる。 (3)単なる情報戦ではなく、人権を求める戦いである ゴーン氏の出国については、*4-1・*4-2のように、海外メディアは好意的だそうだが、私は中国でもとっくの昔に卒業した“文化大革命”のようなことを言っている日本のメディアの方がおかしいと思っていたため、ゴーン氏の出国が成功してよかったと思う。また、レバノンと日本の間に“犯罪人”引渡条約がないのは幸いしたが、今後は、レバノン政府が日本の圧力に屈しないことが必要だ。 また、ゴーン氏は、これだけ負のイメージを擦りつけられたのだから、*4-3のように、ハリウッド映画化して、ビジネス界・自動車革命の時代背景・各国の世論・日産社内の経営権争いに司法が介入した日本の事情などをリアルに表現すれば、これまでにないものすごいビジネス映画になると考える。ただし、命に気を付けて行動して欲しいくらいの真剣勝負になる。 このような中、日経新聞は社説で、*4-4のように、「日本の法廷の場なら議論が深まったかもしれない」などとありもしない嘘を書いているが、司法制度が違っても人権が大切なことは普遍であるのに、それがない日本の司法を改革しなければ、そうはならない。ゴーン氏がSECとは争わずに100万ドルの課徴金を支払ったのは、同時に多くの敵を作らないためだろう。 なお、日本は特殊な国であるという日本の立場の説明は、言い訳としていろいろな分野でよく聞かれるが、グローバルな世界でそれは通用しない。また、プライベートジェットには不特定多数の人は乗らないため、手荷物チェックが緩いのは当然である。 (4)日本はこうして遅れていく 「日本の自動車産業は今後も強いか」については、結論から言って「危うい」というのが私の見方だ。その理由は、ゴーン氏が率いていた日産・三菱・ルノー組を、将を捕えることによって漂流させて護ったのは、*5-1のトヨタだからである。トヨタは、EVではなくハイブリッド車に妥協した会社で、国を挙げてEVを推進していた中国の環境規制も緩めさせるように働いた。 そのため、*5-2のように、欧州の自動車大手が事業活動に伴うCO2の純排出量もゼロにする「カーボンニュートラル」を相次いで宣言し、2019年11月4日には、独フォルクスワーゲン(VW)がEVを量産し始め、メルケル首相が「独自動車産業の未来の礎石となる」と述べ、VWのディース社長が「VWの新しい歴史が始まる」としているのは希望が持てる。私は、次に自動車を買うなら、高すぎなければポルシェかベンツのEVにしたいと思っているくらいなので、外国人労働者と組み合わせて九州のどこかで工場誘致したらどうかと考える。 そのような中、*5-3のように、日経新聞は社説で「①2018年度に国内で消費した1次エネルギーの約9割は化石燃料に支えられている」「②化石燃料から水素を取り出して使う」「③千代田化工建設などのグループは、天然ガスから取り出した水素を別の化学物質に変えて日本に持ち込む計画」「④資源国にとっても保有資源を有効に使い続ける道になるはずだ」「⑤水素利用技術の確立に向けて、資源国と連携した取り組みを加速していかねばならない」などと、馬鹿なことを書いている。 何故なら、①は、先見の明のなさによるものであり、②③④については、化石燃料から水素を作るなど愚の骨頂で、⑤については、「日本には資源がないから、資源は輸入しなければならない」という先入観から抜けられない頭だからだ。こうして日本はどんどん遅れて行き、国民は貧しくなっていくが、私は、このようにして作られた水素は使わないつもりだ。 なお、*5-4のように、地球温暖化対策のパリ協定に関する目標や政策の評価で、日本は、六段階評価で下から二番目の「極めて不十分」と判定されたそうだが、全体として尤もである。 ・・参考資料・・ <日米貿易協定> *1-1:https://www.agrinews.co.jp/p49413.html (日本農業新聞 2019年12月5日) 日米協定“拙速”承認 来年1月1日発効へ 参院 日米貿易協定は4日、参院本会議で与党などの賛成多数で可決、承認された。来年1月1日に発効する見通し。牛肉、豚肉などは環太平洋連携協定(TPP)と同様に関税を削減。生産額の減少は過去の大型協定に匹敵する。昨年末に発効したTPP、今年2月に発効した欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に続き大型協定の発効が迫り、日本農業はかつてない自由化に足を踏み入れる。同協定を巡る交渉は4月に開始。9月に最終合意し、10月に署名した。合意内容の公表から協定の国会審議までは1カ月足らず。TPPなど過去の大型協定と比べても異例の短さで、情報開示や国民的な議論の不十分さが目立った。同日の採決では、自民、公明両党と日本維新の会などが賛成。立憲民主党、国民民主党などの共同会派や共産党は反対した。政府は今後、関連する政令改正などの国内手続きを終え、米国に通知する。米国側は国内法の特例に基づき議会審議を省く方針。両国の合意で発効日を決められ、米国の要望に応じて1月1日の発効となる見通しだ。発効後、日米は追加交渉に向けた予備協議に入り、4カ月以内に交渉分野を決める。政府は関税交渉について「自動車・自動車部品を想定しており、農産品を含めてそれ以外は想定していない」(茂木敏充外相)としているが、具体的な交渉範囲は協議次第だ。協定では、牛肉は関税率を最終的に9%まで削減する。セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)を設定した一方、発動した場合、発動基準をさらに高くする協議に入る。TPPのSGと併存し、低関税で輸入できる量がTPPを超えるため、政府は加盟国との修正協議に乗り出す。今後、追加交渉での農産品の扱いやSGの発動基準数量の引き上げの動向などが焦点になる。日本の攻めの分野の自動車・同部品の関税撤廃は継続協議となった。政府の影響試算では、農林水産物の生産額は、米国抜きのTPP11の影響も踏まえると最大2000億円減る。国会審議で野党は、日欧EPAなど発効済みの他の貿易協定も含めたより精緻な試算を求めたが、政府・与党は応じなかった。政府・与党は現在、中長期的な農政の指針となる食料・農業・農村基本計画の見直しの議論を進めている。一連の大型協定による農産品の自由化にどう対応するか具体策が問われている。 ●国内対策 農家規模問わず 政府は4日、日米貿易協定に伴い、国内対策の指針となる「TPP等関連政策大綱」改定案を自民、公明両党に示し、了承された。農業分野では、中山間地を含めた生産基盤強化の必要性を強調し、「規模の大小を問わず、意欲的な農林漁業者」を支援する方針を明記。新たに肉用牛や酪農の増頭・増産対策などを盛り込んだ。政府は5日に正式決定し、2019年度補正予算に農林水産業の対策費として3250億円程度を計上する。改定案では、国内外の需要に応え、国内生産を拡充するため農林水産業の生産基盤を強化する必要性を指摘。畜産クラスター事業による中小・家族経営支援の拡充や、条件不利地域も含めたスマート農業の活用も盛り込んだ。規模要件の緩和や優先採択枠の設置で対応する。自民党TPP・日EU・日米TAG等経済協定対策本部(本部長=森山裕国対委員長)などの会合で、西村康稔経済再生担当相は「(農業の)国内生産を確実に拡大するため、中山間地域も含めた生産基盤を強化していく」と述べた。森山本部長は会合後、「(家族経営を)政策の横に置くのではなく、中心に据えてやっていくことが大事だ」と記者団に語った。改定案には輸出向けの施設整備、堆肥活用による全国的な土づくりの展開、家畜排せつ物の処理円滑化対策、日本で開発した農産物の新品種や和牛遺伝資源の海外流出対策なども盛り込んだ。農林水産分野の対策の財源について、既存の農林水産予算に支障のないよう「政府全体で責任を持って」確保する方針は改定案でも維持した。TPPの牛肉SGの発動基準見直しを巡っては、「日米貿易協定の発効後の実際の輸入状況などを見極めつつ、適切なタイミングで関係国と相談を行っていく」との記述にとどめた。 ●日米協定国会承認 期限ありき審議不足 再協議規定 農業扱い不透明 日米貿易協定は、踏み込んだ議論には至らないまま、国会審議が終結した。来年1月1日発効を目指す政府・与党は、野党側の資料請求にも応じず、議論がかみ合わないまま審議が進展。野党も最終的には4日の参院本会議での採決に応じたため、農産品の再協議の可能性をはじめとした懸念を掘り下げることなく、協定は承認された。衆参両院の委員会審議は22時間余り。過去の経済連携協定を大きく下回る。参院本会議では、これまでの委員会審議と同様に、農産品について、米国が「特恵的な待遇を追求する」と明記した再協議規定への懸念が続出。採決の最終盤となっても不明瞭な部分が残っている実態が改めて浮き彫りになった。国民民主党の羽田雄一郎氏が再協議規定について「米国の強い意志を感じる」と指摘。大統領再選を目指すトランプ氏の強硬姿勢を警戒した。協定に賛成した日本維新の会の浅田均氏も「米国がさらに強気の姿勢で交渉に臨んでくるのは不可避。積み残しになった自動車・同部品の関税撤廃の確定も含め、交渉は一筋縄ではいかない」と警鐘を鳴らした。ただ、野党側は採決を容認。会議場内では「反対」などの声が出たが、賛否の投票作業は淡々と進んだ。衆参両院を通じて、審議不足は否めない結果となった。衆院では、自動車の追加関税の回避の根拠となる議事録など示さない政府・与党に対し、主要野党が反発して退席。与党側が審議時間の消化を優先。質問者不在のまま割当時間を消化する「空回し」を含めても、審議時間は22時間余りにとどまる。一方、環太平洋連携協定(TPP)は2016年、衆参両院に特別委員会を設けて計130時間以上審議。日米協定の審議時間は短さが際立つ。さらに衆院では、協定の審議が「桜を見る会」の説明責任を巡る与野党の駆け引き材料になった部分も多い。野党内からも「政争の具にせず、審議の充実を追求していくべきだった」(幹部)と審議運営を批判する声が出ている。 *1-2:https://www.agrinews.co.jp/p49059.html (日本農業新聞 2019年10月24日) 日米影響試算 審議の材料たり得ない 日米貿易協定が発効しても、万全の国内対策を打つので日本の農家の所得や生産量は一切減らない──。政府がそんな影響試算を発表した。現実離れしていると言わざるを得ない。これでは国会審議の材料になるはずもない。政府は納得感の得られる試算を出し直すべきだ。日米協定の承認案は24日から衆院本会議で審議が始まる。審議を進める上で重要な材料の一つとなるのが、日米協定によって日本農業が受ける影響試算だろう。日米協定発効に伴い、日本農業が受ける打撃はどの程度か。影響をしっかり試算した上で必要な国内対策を考える。これこそが本来あるべき姿のはずだ。だが、政府が先週発表した影響試算は、そうした期待に沿う内容とは言い難い。試算によると、日米協定発効に伴い、安い米国産農林水産物が日本に押し寄せた結果、国産の価格も低下。国内の農林水産物の生産額は600億~1100億円減る。減少額がとりわけ大きいのが牛肉で、最大約474億円に達するという。不思議なのはここからだ。生産額が減るにもかかわらず、国内の農家の所得、生産量は一切減らないという。コスト低減や経営安定につながる万全な国内対策を措置するからで、食料自給率も変わらないという。そもそも国内対策の検討が始まるのはこれからで、まだ決まっていない。にもかかわらず、なぜ日本の農家所得や生産量に影響なしと言い切れるのか。首をかしげたくなる農家も少なくないだろう。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)に合意した際も政府は影響試算を発表。今回同様に国内対策の効果で、日本の農家所得や生産量に影響なしという内容だった。政府には、農家の不安を大きくしたくない気持ちがあるのかもしれない。だが、貿易自由化に伴う打撃に目を背けたままでは、十分な国内対策が出来上がるとは思えない。今回の影響試算には、国内対策を考える以外にも、もう一つ重要な意味合いがある。来年3月の策定に向けて議論が本格化している新しい食料・農業・農村基本計画だ。同計画は今後10年間の農政の指針となる。10年後と言えば、日米協定やTPP、日欧EPA発効に伴う関税削減が、今よりずっと進んでいる時期。その時に日本農業が受ける打撃はどの程度か。それをきちんと踏まえて新たな基本計画を策定する必要がある。「農家の不安にもしっかり向き合い、生産基盤の強化など十分な対策を講じる」。安倍晋三首相は臨時国会冒頭の所信表明演説で力強く宣言した。ならば、まずは現実離れした一連の影響試算を見直すべきだ。このまま国会審議に突き進んでも議論は深まらず、生産基盤強化という首相の決意にも疑問符が付きかねない。 <日本の自動車産業は強いか> *2-1:https://digital.asahi.com/articles/ASMCK71NCMCKULFA00L.html?iref=comtop_favorite_01 (朝日新聞 2019年11月18日) ゴーン氏追放、西川氏の大誤算 主導した改革は己の身に 日産自動車前会長のカルロス・ゴーンを東京地検特捜部が電撃的に逮捕してから19日で1年になる。世界に衝撃を与えた事件の裁判は来春にも始まる。ゴーンはすべての事件で無罪を主張している。弁護側は捜査の手続きそのものが違法だとして争点化する方針で、検察側と弁護側の全面対決となる。ゴーンに代わって経営トップにのぼりつめた社長の西川(さいかわ)広人も、自らの報酬不正の責任を問われて今年9月に辞任に追い込まれた。極秘に進めた社内調査をもとに特捜部の捜査に全面協力し、ゴーンを「追放」した日産にとっても、この1年は想定外の連続だった。 ◇ 「おかしな会社があるぞ」。日産自動車が「ベンチャー投資」目的で2010年にオランダに設立した子会社「ジーア」に対し、社内では疑問の声がたびたびあがっていた。「投資活動を全然していない」「休眠法人ではないか」。設立の数年後にはこうした指摘が上層部に寄せられ、役員が「すぐ調査を」と指示していた。だが実態がつかめない。「その下にまた会社があって、仕組みが複雑すぎるんです」(当時の役員)。調査に関わった監査役(当時)も「手を尽くして調べても、よくわからなかった」と振り返る。暗礁に乗り上げた調査の突破口は「有力な内部告発だった」と複数の日産関係者は明かす。前会長カルロス・ゴーンの部下で法務部門を所管する外国人の専務執行役員が「これ以上、不正につきあわされるのはごめんだ」とジーア社の実態を監査役に打ち明けたというのだ。ベンチャー投資をするはずのジーア社は、リオデジャネイロやベイルートでゴーンが使う住宅の購入費や改修費を支払っていた。この専務執行役員はその後、司法取引に応じ、東京地検特捜部の捜査に全面協力することになる。監査役らは昨年春から、米法律事務所レイサム&ワトキンスと組んでゴーンの不正の調査に本格的に着手した。ゴーンはもちろん、社長の西川(さいかわ)広人にも知らせずに動き出した。それは、ゴーン側近の西川に知らせたら「どう反応するかわからない」(幹部)と警戒していたからに他ならない。監査役が証拠を示してゴーンの不正を西川に初めて説明したのは昨年秋。ゴーンが電撃的に逮捕された11月19日の1カ月前だった。すでに特捜部との間で司法取引の協議が進んでいた。幹部らは「全てが整った段階で説明した」と明かす。西川はこのころ、仏政府の要求を受け、連合を組む仏ルノーと日産の経営統合に意欲を示すようになったゴーンと対立。ゴーンに疎まれ、社長の座を追われそうになっていた。「窮鼠(きゅうそ)猫をかむ」のたとえ通り、「西川はゴーン降ろしに最後に乗っかった」(幹部)。11月19日午後10時。横浜市の日産本社で緊急記者会見に1人で臨んだ西川は「当然、解任に値する」と強調し、ゴーンとの決別を宣言した。それから1年足らず。自らも報酬不正で社長の座を追われることになろうとは、西川は思いもしなかった。この1年は多くの日産関係者にとっても誤算続きだった。 ●旗振った改革、辞任迫られる誤算 「会社の仕組みが形骸化し、透明性が低い。ガバナンス(企業統治)の問題が大きい」。ゴーンが逮捕された昨年11月19日夜の記者会見で、日産自動車社長(当時)の西川(さいかわ)広人はゴーンの不正を長年見抜けなかった理由をそう説明した。その後の日産の動きは素早かった。3日後に臨時取締役会を開いてゴーンの会長職を解任。12月17日の取締役会で「ガバナンス改善特別委員会」を設置し、外部有識者から改善策の提言を受けることを決めた。逮捕直後から、ゴーンの不正を止められなかった西川の責任を問う声が社内外でくすぶっていた。カリスマのゴーンを「追放」して経営トップに就いた西川にとって、自らの求心力を高めるにはガバナンス改革という旗が必要だった。特別委は今年3月にまとめた報告書で、人事・報酬の決定権のゴーンへの集中が不正を招いた原因だと指摘。社外取締役の権限を強める「指名委員会等設置会社」への移行を提言し、日産は6月の株主総会で移行に必要な議案を提案した。仏ルノーが一時、この議案への投票を棄権する意向を示すと、西川は強く反発。改革の頓挫を避けたい日産はルノー出身者のポストを増やして人事面で譲歩し、なんとかルノーの賛成をとりつけた。経済産業省も、同省OBで社外取締役の豊田正和を通じて改革の実現を促した。だが、会社の形を大きく変える改革には「副作用」も伴う。「自分たちの思い通りの人事をすることができなくなりますよ」。日産から水面下で相談を受けた法務アドバイザーは「移行は危険だ」と伝えていた。懸念は現実のものとなる。ゴーンの不正を追及する急先鋒(きゅうせんぽう)だった西川自身の報酬不正が社内調査で判明。9月9日の取締役会では、取締役11人のうち7人を占める社外取締役の多くが西川に辞任を迫った。この時点での辞任を否定していた西川の外堀は一気に埋まった。旗を振って進めたガバナンス改革が機能した結果、自らが辞任に追い込まれたとは皮肉だ。社外取締役は「ポスト西川」選びも主導した。首脳人事の決定権を握る指名委員会が次期社長に指名したのは専務執行役員の内田誠。社内では西川の辞任後に暫定的に社長代行を務める山内康裕の昇格を期待する声が多く、取締役でもない内田の起用に驚く声もあった。指名委も6人中5人を社外取締役が占め、残る1人はルノー会長のジャンドミニク・スナール。スナールは他の社外取締役と水面下で人選を調整し、トップ人事に積極的に関わった。経営トップを自らの手で決められないもどかしさに、「結局、日産への影響力を強めたのはスナールではないか」と幹部は嘆く。来月1日に発足する内田新体制の前途は多難だ。今月12日に2020年3月期の業績予想を下方修正。ゴーンが進めた拡大路線の修正は難しく、純利益は前年比65・5%の大幅減益になる見込みだ。日産三菱・ルノーの3社連合に安定をもたらしていた「ゴーン1強」体制が崩れたいま、ルノーが経営統合を求めて再び圧力を強める可能性もある。「将来の展望や野心的な戦略がない。3社の関係がゆがんで成長が滞っている」。ゴーンは最近、知人にこう漏らし、日産の行く末を案じたという。=敬称略 ●来春にも公判、全面対決の構図鮮明 ビジネスジェット機で羽田に到着した日産自動車のカルロス・ゴーン前会長を東京地検特捜部が電撃的に逮捕してから19日で1年。世界に衝撃を与えた事件は、来春にも始まるとみられる公判に向けた手続きが進む。検察、弁護側双方の大まかな主張が出そろい、全面対決の構図が鮮明となっている。ゴーン前会長は今年4月までに計4回逮捕され、役員報酬の未払い分を隠したとする金融商品取引法違反事件と、日産の資金を不正送金したなどとする会社法違反事件で起訴された。今月11日に記者会見した弁護団の弘中惇一郎弁護士によると、保釈中のゴーン前会長は弘中氏の事務所に通って裁判の記録を読むなどし、週に何回も弁護団と議論を重ねている。弁護団は前会長の認識や記憶を前提に、公判での主張を組み立てているという。弁護側は公判で予定する主張内容を10月17日に裁判所に提出した。すべての事件で無罪を主張するだけでなく、捜査の手続きそのものが違法だと争点化し、公訴(起訴)棄却を申し立てる方針を示した。裁判で公訴棄却が認められて確定した例はまれだが、主任弁護人の河津博史弁護士は「過去に例のないほど違法な捜査が行われた。単なる戦術ではない」と強調する。焦点の一つが、特捜部が日産幹部2人と交わした司法取引の違法性だ。本来は部下がトップの不正を明らかにする代わりに罪を減免されるようなケースが主に想定されている。弁護側は、日産の経営陣がゴーン前会長を失脚させる目的だったとし、「実質的な当事者は日産だ」と指摘。「2人は業務命令で司法取引したにすぎず、法の趣旨に反する」と主張する。これに対し、検察幹部は「弁護団の筋書きは根拠がなく妄想だ」と一蹴。「裁判所が違法性を認めるとは思えない」と自信を見せる。今後も公判に向けて証拠や争点を絞り込む公判前整理手続きが進められるが、弁護側は検察側が提出する供述調書の大半について、証拠採用に同意しないとみられる。このため、検察側は司法取引に応じた2人を含め多くの日産幹部を証人申請することが予想される。弁護側は西川前社長も一連の行為に関与したとして証人申請するとみられ、状況によっては公判が長期化する可能性もある。地裁は、金商法違反事件について初公判を来年4月にも開きたいとの意向を示している。審理は来年いっぱいは週3日のペースで隔週行う案も示しているという。ただ、会社法違反事件の審理については未定になっており、公判のスケジュールはなお流動的だ。 *2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191203&ng=DGKKZO52882830S9A201C1MM8000 (日経新聞 2019.12.3) 日産、ルノー連携で事業再建 新社長、中計見直し 日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は2日、就任後初めて記者会見し、仏ルノー、三菱自動車との関係について「アライアンスの活動を通して利益を上げていくことに注力する」と語った。日産は値引き頼みの販売が重荷となり業績悪化が深刻だ。世界主要市場の縮小や次世代技術対応など事業環境が厳しさを増すなか、日仏連合をテコに業績回復を目指す考えだ。内田氏は「私が指揮を執って新たな事業計画を策定する」と述べ、中期計画を見直す方針も示した。日産に43%出資する筆頭株主の仏ルノーは仏政府の意向を受ける形で19年春、日産に経営統合を打診。内田社長は経営統合の協議について「ルノー会長とも今は全くしていない」と述べ、少なくとも当面は進めない考えを示した。ただ、将来の関係については言及しなかった。西川広人前社長は「ネガティブなインパクトが大きく、否定的だ」と明確に反対していた。日産の業績は大きく悪化している。20年3月期の連結純利益は1100億円と前期比66%減る見通しだ。立て直しに向けて日仏連合での協力を拡大する。拡大路線を進めるために過大な目標を設定して無理を重ねた反省から、企業風土の改革も進めると表明した。内田氏は1日付で就任した。元会長カルロス・ゴーン被告の後を継いだ西川前社長が報酬問題で辞任したのを受けたものだ。 <ゴーン氏の出国> *3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200101&ng=DGKKZO54007910R00C20A1MM8000 (日経新聞 2020.1.1) ゴーン元会長、レバノンへ無断出国 保釈条件違反 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(65)が日本を出国し、中東レバノンに入ったことが31日、分かった。元会長は保釈条件で海外渡航が禁じられており、無断出国とみられる。日本とレバノンの間に犯罪人引き渡し条約はなく、4月にも始まる見込みだった元会長の刑事裁判は事実上、困難になった。元会長はレバノン国籍を持っており、「私は今、レバノンにいる。有罪が予想される日本の偏った司法制度の下でのとらわれの身ではなくなった」などと声明を出した。同国外務省は元会長が30日に合法的に入国したとの声明を出した。東京地裁は31日、東京地検の請求を受けて元会長の保釈を取り消す決定をした。保釈保証金計15億円は没収される。現地メディアなどによると、元会長はプライベートジェットを使い、トルコ経由でレバノンに入った。出国に際して元会長が楽器箱に隠れたとし、レバノン入国後、同国大統領と面会したとの報道もある。日本の出入国在留管理庁関係者によると、元会長名での出国記録はなく、日本で正規の出国手続きを経ていない可能性がある。外務省関係者は事実関係や出国の経緯について「現地の日本大使館などを通じて確認中」と語った。元会長の弁護人を務める弘中惇一郎弁護士は31日、東京都内で報道陣の取材に「事実とすれば保釈条件に違反している」と話した。 *3-2:https://digital.asahi.com/articles/ASMD04H87MD0UHBI00J.html (朝日新聞 2019年12月31日) ゴーン被告「有罪が前提、政治的な迫害逃れた」声明全文 日産自動車のカルロス・ゴーン前会長の広報担当者は米東部時間30日夜(日本時間31日昼)、取材に対してゴーン前会長の英文の声明を発表した。全文の訳は以下の通り。 ◇ 私は現在レバノンにいます。もうこれ以上、不正な日本の司法制度にとらわれることはなくなります。日本の司法制度は、国際法・条約下における自国の法的義務を著しく無視しており、有罪が前提で、差別が横行し、基本的人権が否定されています。私は正義から逃げたわけではありません。不正と政治的な迫害から逃れたのです。やっと、メディアのみなさんと自由にコミュニケーションを取ることができます。来週から始められることを、楽しみにしております。(原文は英語) ●レバノン大使館の関係者?は無言 東京都港区の駐日レバノン大使館が入るビルの前には、31日午前から報道陣が集まった。ビル入り口のインターホンはスイッチが切られているのか呼び出し音は鳴らず、レバノン大使館の関係者とみられる男性が出入りしたが、記者の問いかけには一切応じなかった。 *3-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14317743.html (朝日新聞社説 2020年1月7日) ゴーン被告逃亡 身柄引き渡しに全力を 世界を驚かせた逃走劇から1週間が過ぎた。情報が交錯し、経緯にはいまだ不明な点が多いが、保釈中の日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告が、国籍をもつレバノンに違法に出国したことは間違いない。法秩序を踏みにじる行為であり、断じて許されるものではない。森雅子法相はきのう記者会見し、国際機関などと連携して、日本での刑事手続きが適正に行われるよう、できる限りの措置を講じる考えを示した。会社法違反などの罪に問われたゴーン被告は無罪を主張し、東京地検が日産関係者と交わした司法取引についても違法だと訴えていた。被告が不在のままでは裁判は開かれず、事件は宙に浮くことになりかねない。レバノン政府とねばり強く交渉するのはもちろん、日本の司法制度について丁寧に情報を発信するなど、あらゆる外交努力を尽くし、ゴーン被告の身柄の引き渡しを実現させる。それが政府の責務だ。あわせて、前代未聞の逃走を許してしまった原因は何か、究明を急ぐ必要がある。ゴーン被告はプライベートジェット機を使って関西空港から出国した可能性が高いとみられる。一連の審査手続きに不備や緩みはなかったか。国民に対する説明と適切な改革が求められるのは言うまでもない。ゴーン被告は起訴・保釈・再逮捕などの曲折を経て、昨年4月末から身体拘束を解かれていた。住居玄関への監視カメラ設置、パソコンや携帯電話の利用制限など、弁護側が示した条件を裁判所が認めた。にもかかわらず、結果として今回の事態を防げなかったことを、関係者は重く受け止めねばならない。15億円という保釈保証金は、富豪であるゴーン被告に対するものとして適切だったか。弁護士にすべて預けるはずだった複数の旅券を、途中から1冊に限ってとはいえ、被告が携帯することを認めたことに問題はなかったか――。他にも点検すべき事項はあるはずだ。日本では容疑を認めない人を長く拘束する悪弊が続き、国内外の批判を招いていた。それが裁判員制度の導入などを機に見直しが進み、保釈が認められるケースが増えてきている。ゴーン被告の処遇は象徴的な事例の一つであり、運用をさらに良い方向に変えていくステップになるべきものだった。その意味でも衝撃は大きいが、だからといって時計の針を戻すことはあってはならない。捜査・公判の遂行と人権の保障。両者のバランスがとれた保釈のあり方を模索する営みを続けるためにも、今回の逃走の徹底した検証を求める。 *3-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200109&ng=DGKKZO54192030Z00C20A1MM8000 (日経新聞 2020.1.9) ゴーン元会長「無実」強調 レバノンで会見 逃亡経緯語らず 保釈条件に違反して逃亡した日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告は日本時間の8日午後10時から、レバノンで記者会見した。一連の事件について「日本の検察や日産の経営陣が画策したもの」と無実だという従来の主張を繰り返した。事件は自らを引きずり下ろすクーデターだとしたが、検察など日本の関係者は事実と異なると反論した。ゴーン元会長が会見するのは、2018年11月に逮捕されて以来、初めて。元会長は会見で「日本の司法は非人道的。公正な裁判を受けられないと判断した」などと述べ、自らの逃亡を正当化。勾留の長さを強調するなど日本の刑事司法制度の批判を展開したが、逃亡方法などについては一切話すつもりはないとした。ゴーン元会長は起訴された一連の事件について「検察や日産の経営陣によるもの」とし、西川広人前社長兼最高経営責任者(CEO)ら日産の元幹部ら6人の名前を挙げた。元会長は逃亡後、米メディアの取材に対し日本政府の関係者の名前を会見で挙げる意向も示していたがレバノン政府への配慮を理由に見送った。森雅子法相は9日未明に会見し「刑事裁判そのものから逃避し、許されない」と批判。東京地検の斎藤隆博次席検事は「日本の刑事司法制度を不当におとしめる主張で到底受け入れられない」とのコメントを出した。日産の広報担当者は「当社はすでに(反論の)声明を出しており、新たなコメントは必要ない」と述べた。ある日産幹部は「茶番劇だ」などと反論。別の幹部も「不正の証拠もたくさんあり、ゴーン元会長の主張は議論のすり替えにすぎない」と厳しく指摘した。 *3-5:https://digital.asahi.com/articles/ASN142T3QN14UHBI00F.html?iref=comtop_8_05 (朝日新聞 2020年1月4日) ゴーン被告、プロが逃がす?元グリーンベレーの名前浮上 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)がレバノンに逃亡した問題で、米紙ウォールストリート・ジャーナルは3日、ゴーン前会長が米陸軍特殊部隊出身とみられる男性ら2人の助けを借り、音響機器を入れる箱に隠れて日本を出国したと報じた。同紙によると、ゴーン前会長は12月29日、プライベートジェットで関西空港を発ち、30日にトルコ・イスタンブールに到着。大雨の降る中、車で約90メートル移動してより小型のジェット機に乗り換え、レバノンにたどり着いた。いずれも機内にはゴーン前会長ら乗客の他にパイロット2人、乗務員1人が乗っていたという。トルコの航空会社は、ゴーン前会長の逃亡に際して記録を改ざんしたとして、従業員を刑事告訴。同紙はトルコ当局の捜査に詳しい関係者らの話として、この従業員が、ゴーン前会長が関空で飛行機に乗り込むまでに箱がどのように使われたかを捜査員に証言したと伝えている。同紙が写真で確認したこの箱は、角が金属で強化されており、機体後部近くの通路に押し込まれていた。もう一つの箱にはスピーカーが入っていたという。同紙はまた、関空からイスタンブールへの飛行計画書には、米国のパスポートを持つ男性2人だけが乗客として書かれていたと指摘。2人はその後、ゴーン前会長が乗った小型機ではなく民間機でレバノンまで向かったという。この米国人のうち1人は陸軍特殊部隊グリーンベレーの出身者で、2009年にアフガニスタンで武装グループに拉致された米紙ニューヨーク・タイムズの記者を救出したことで知られる人物と同姓同名。民間警備業界では著名だという。もう1人は、この男性と関係のある会社の従業員として働いたことがある人物だという。ゴーン前会長の米国の広報担当者は、朝日新聞の取材に「ゴーン氏の日本出国をめぐるいかなる報道についても、現時点ではコメントはしない」と回答した。 *3-6:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200109&ng=DGKKZO54192800Z00C20A1EA2000 (日経新聞 2020.1.9) ゴーン元会長、司法・日産批判に終始 日本メディア大半排除 日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告は8日のレバノンでの記者会見で改めて無実を主張した。事件は当時の日産経営陣の「策略」とし、日本の司法は「非人道的」だと非難。会見では日本メディアの大半を排除し、一方的に主張を展開した。国際手配を受けるなど不安定な立場が続くなか、国際世論を味方に付けたいとの思惑が透けた。ゴーン元会長は会見で、自身が日本で罪に問われた内容について「中傷のキャンペーンに過ぎず、想像の産物」「検察が日産の幹部と画策したものだ」などと批判した。元会長は、中東の知人側に資金を流出させるなどして日産に損害を与えた会社法違反(特別背任)の罪と、役員報酬の「未払い分」約91億円を有価証券報告書に記載しなかった金融商品取引法違反の罪で起訴された。元会長は特別背任罪に問われた資金の支出について、社内の適正な手続きを経ていたなどと主張。報酬の過少記載については「支払われていない報酬が容疑とは理解に苦しむ」と述べた。元会長が日本に戻らなければ裁判は始まらず、事件の真相解明は宙に浮く。元会長は「公正さが確保されればいかなる所でも裁判に臨む」としたが、「(日本は)有罪率が99%を超え、公正な裁判は受けられない」などと話した。この日の会見は元会長側の意向により「過去に関係を築いたメディア」だけを招待する形で行われた。フランスや中東のメディアが大半を占め、日本メディアの参加は数人にとどまった。元会長は会見で事件に関する日本メディアの報道も批判し、日本メディアの多くを排除した理由を問われると「客観的な見方ができると判断した人を選んだ」と答えた。日本の捜査当局は国際刑事警察機構(ICPO)を通じて元会長を国際手配し、7日に駐レバノン大使がアウン大統領と面会して協力を求めた。だが、元会長はレバノンの政財界に太いパイプを持ち、同国政府はこれまで一貫して元会長を擁護する立場を取ってきた。捜査関係者は「レバノン政府が元会長を日本に引き渡すとは思えない」と悲観的な見方を示す。元会長はレバノンに長期間滞在する考えを示し、「数週間以内に全ての証拠を開示し、嫌疑を晴らしたい。真実を明らかにしたい」とした。安倍晋三首相は8日夜、都内で自民党の河村建夫元官房長官らと会食した。河村氏によると、首相はゴーン元会長を巡る問題について「本来、日産の中で片付けてもらいたかった」と述べたという。 *3-7:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1052965.html (琉球新報社説 2020年1月7日) ゴーン被告国外逃亡 裁判で無罪主張すべきだ まるでスパイ映画を見ているような衝撃的な事件だからこそ、冷静に問題を見極める必要がある。会社法違反罪などで起訴され保釈中の前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告が日本を出国し、国籍があるレバノンに逃亡した。保釈の条件として海外渡航は禁止されていた。東京地裁は保釈を取り消し、保証金15億円を没収する。ゴーン氏は逃亡後、次のような声明を出した。「私はもはや有罪が前提で、差別がはびこり、基本的人権が否定されている不正な日本の司法制度の人質ではなくなる。日本の司法制度は、国際法や条約に基づく法的義務を著しく無視している。私は裁きから逃れたのではなく、不正と政治的迫害から逃れた」。否認すれば勾留が長引く「人質司法」は日本の司法制度の問題点として、かねて批判されてきた。早く解放されたいがために、やってもいない罪を認めてしまうなど冤罪の温床ともいわれる。裁判で有罪が確定するまで罪を犯していないものとして扱う「無罪の推定」原則にもとる人権上の問題も指摘されている。その意味でゴーン氏が指摘する「人質司法」の問題は、日本の司法制度の欠陥として改善すべき点が多い。その点は指摘を真摯(しんし)に受け止めるべきである。しかしその問題と、今回ゴーン氏が違法と知りつつ企てて実行した国外逃亡の責任は別の問題だ。ゴーン氏は日本の制度下で保障された権利でもって経済活動をし、多大な報酬と高い地位を得ていた。その中で日本の刑事法により罪に問われた以上、法の手続きにのっとって裁判で主張すべきだ。それが義務である。そうせずに国外に逃亡した責任は厳しく問われるべきだ。法的責任だけではない。金さえあれば違法行為もまかり通るという悪印象を世界に与えた責任も重い。逃亡の過程では、米国の警備会社やトルコの航空会社職員を含め組織的に違法行為を重ねた疑いがある。日本では入管難民法違反の疑いがあるだけでなく、出入国を巡る国際的な司法への挑戦とも受け取れる。ただ、今回の事件を保釈条件の厳格化につなげてはならない。国際的に批判を浴びている身柄拘束の在り方を是認する意見が強まることを危惧する。日本の保釈率は最近10年、わずかに上がる傾向にある。人権に配慮する流れを止めてはならない。重要なのは、ゴーン氏がなぜ国外へ逃亡できたかを詳細に検証することだ。関係当局にとっては、映画のような逃亡劇を現実に許した大失態である。重大に受け止め、再発防止を徹底する必要がある。ゴーン氏は、自身が「無罪だ」と主張するのなら、日本の裁判の場で身の潔白を証明すべきだ。そうしてこそ、日本の司法制度の欠陥に対する自身の指摘に説得力を持たせることもできる。国外逃亡は道理から外れた道だ。 *3-8:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/202001/CK2020011002000256.html (東京新聞 2020年1月10日) 森法相「誤った喧伝看過できない」 ゴーン被告「法相の発言は愚か」 レバノンに逃亡した前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告は九日、森雅子法相が被告の記者会見を受けて「わが国の法制度や運用について誤った事実を殊更に喧伝(けんでん)し、到底看過できない」などと批判したことに対し「非常に愚かだ」と反発した。レバノンのテレビインタビューに答えた。ゴーン被告は八日の記者会見で、日本の司法制度について「『推定有罪』の原則がはびこっている」と非難。森氏も九日に二回にわたって記者会見し「適正な手続きを定め、適正に運用されている」と反論するなど、非難の応酬となっている。被告は森氏の記者会見を受けた九日のテレビインタビューで「日本の司法制度は時代遅れだ」と主張。「有罪率は99・4%で、司法制度が腐敗している。(罪のない)多くの人が刑務所に入れられている」と述べた。法相が個別事件に関して会見すること自体が極めて珍しい。保釈がなかなか認められないとするゴーン被告の主張に欧米やレバノンの一部メディアが同調。日本政府は国際社会に被告への賛同が広がるのを打ち消そうと躍起になっている。 ◆3カ国語でHP掲載 法務省 法務省は九日、ゴーン被告のレバノン逃亡をめぐる森雅子法相の記者会見でのコメントを、日本語のほか、英語、フランス語でもホームページに掲載した。ゴーン被告が八日に開いた記者会見を受け、森氏は九日に会見を二回開催。「(逃亡は)どの国の制度でも許されない」などと批判した。 ◆被告が「無罪証明すべき」 法相、発言を訂正 森雅子法相は九日、日本の司法制度に対するゴーン被告の批判に反論するため、同日未明に開いた記者会見での発言内容の一部を訂正したとツイッターで明らかにした。「無罪を主張」と言うべきところを「無罪を証明」と言い間違えたとしている。森氏は会見で「潔白だと言うのなら、(日本の)司法の場で正々堂々と無罪を証明するべきだ」と発言。刑事裁判では、あくまで「推定無罪」の原則があり、その中で検察官が有罪を立証する仕組みになっているため、インターネット上で批判が出ていた。 <単なる情報戦ではなく、人権を求める戦いである> *4-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/202001/CK2020010102000104.html (東京新聞 2020年1月1日) ゴーン被告逃亡 海外報道は好意的 レバノンや仏メディア 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告の国外逃亡について、逃亡先のレバノンや国籍を持つフランスのメディアはおおむね好意的に伝えた。レバノン紙によると、ゴーン被告は三十日に首都ベイルートの国際空港に到着。大手紙アンナハル記者は「レバノン市民として合法的に入国した。アウン大統領と面会した」としているが、真偽は不明。レバノン政府は今のところ正式なコメントを出していない。両親の出身地で被告が少年時代を過ごしたレバノンでは、立身出世の「英雄」として被告を擁護する声が多い。友人の一人は「新年に訪れた奇跡だ」と歓迎し、「彼はいま、適切な保護下にある」と明かした。別の友人は本紙取材に「彼はレバノンだけではなく、日仏にとって偉大な経営者。母国で無実を証明すればいい」と話した。「ゴーン氏の華々しい新展開」と伝えた仏経済紙レゼコーは、未確認情報ながら「警戒が厳しい大きな空港を避け、人目につく機会が少ない小さな空港からプライベートジェット機で飛んだようだ」と解説。仏高級紙ルモンドは、再保釈された四月から監視下に置かれ「妻と会い、話す権利すらなかった」と一定の理解を示した。一方、仏左派紙リベラシオンは「裁判所による禁止に違反して出国した」「脱獄」などと表現するなど批判的な論調で伝えた。 ◆レバノンと引渡条約なし 外務省幹部「逃げ得の可能性」 外務省幹部は三十一日、前日産自動車会長カルロス・ゴーン被告が日本から逃亡し、国籍があるレバノンに入国したと表明したことに関し「事実関係を確認中だ」と取材に答えた。政府関係者は身柄引き渡しについて「さまざまな方策を考える必要がある」と述べ、レバノン政府への要請も視野に検討する考えを示した。外務省幹部は、日本とレバノンは犯罪人引渡条約を結んでいないとして「基本的には相手国の理解を得ないと被告人は引き渡されない」と説明。「現段階で、レバノン政府が協力的かどうかは不明だ」と語った。別の外務省幹部は一般論と断った上で「法務省と協議し、外交ルートを通じて引き渡しを求めることになるだろう。ただ、レバノン政府が応じず、『逃げ得』になる可能性がある」と述べた。自民党の葉梨康弘元法務副大臣は取材に対し「公的機関は被告人を監視できるわけではなく、信義則が破られた。想定外で、結果は言語道断だ」と強調した。 ◆楽器箱に隠れ日本脱出? レバノンの主要テレビMTV(電子版)は三十一日、カルロス・ゴーン被告が楽器箱に隠れ、日本の地方空港から出国したと報じた。出国に際し、民間警備会社のようなグループの支援を受けたとしている。情報源は明らかにしておらず、信ぴょう性は不明。レバノン紙アフバルアルヨウムも「警備会社を使い、箱に隠れて密出国した」と報じた。MTVによると、このグループはクリスマスディナーの音楽隊を装ってゴーン被告の滞在先に入り、楽器箱に隠して連れ出した。映画のような脱出劇で、日本の当局者は気付かなかったとした。その後に出国し、トルコ経由でレバノンに入国したが、その際はフランスのパスポートを所持していたと伝えた。 *4-2:https://digital.asahi.com/articles/ASN142HVZN14UHBI007.html?iref=comtop_8_06 (朝日新聞 2020年1月4日) ゴーン被告逃亡「正しかった」8割 仏紙読者アンケート 仏紙ルモンドは3日、日産自動車と仏自動車大手ルノーの会長だったカルロス・ゴーン被告(65)のレバノン逃亡についての論評を掲載し、「本当に汚名をすすぎたかったのなら、裁きから逃れた理由がわからない」として、日本で裁判を受けるべきだったと主張した。ゴーン前会長が声明で、逃亡の理由を「不正な日本の司法制度」から逃れるためとした説明に反論した形だ。同紙は「民主主義国家での裁きを拒み、裁かれる場所をもっとも自分の都合のいいように選ぶ可能性を不当に手に入れた」と前会長の逃亡を批判。「西欧人はゴーン氏の事件を通じて、日本の司法の特殊性、ある意味においてはその厳しさに気づくことになった」と伝えつつ、「彼が逃げ出せたのは、批判されていたほどは(保釈条件が)厳しくなかったからだ」とも指摘した。日本の犯罪率の低さといった要素を踏まえずに「中世のような(遅れた)司法システム」と非難するのは、「日本の文化の正しい理解にもとづかない」ものだと論じた。ただ、日本の司法システムを批判する論調が支配的なフランスでは、ゴーン前会長の逃亡容認論が根強い。仏紙フィガロが2日、「ゴーン氏が日本から逃げ出したのは正しかったか」と読者に尋ねたところ、そうだと応じた人が77%に上った。同紙は毎日、主要ニュースについてのアンケートを実施している。紙面にその日の質問を載せて同紙のサイトで投票してもらい、翌日の紙面で結果を伝える仕組みだ。ゴーン前会長の逃亡問題には、8万6798人が投票した。投票ページに寄せられたコメントには「有罪がまったく証明されていないのに非人間的な扱いをする日本人の爪から抜け出した。見事だ」「ゴーン氏は何年間もフランスの最も主要な企業の一つ(ルノー)に奉仕した偉大な人物だ」「日本の司法は全く偏っている。逃げ出せてようやくゴーン氏は説明の場を持てる」など、逃亡を肯定する書き込みが並ぶ。「この逃亡は、フランスのイメージを悪くするだろう。日本人は、どこかフランスを体現しているこの男(ゴーン前会長)の恥ずべき逃避を忘れないだろう」といった声も寄せられている。 *4-3:https://digital.asahi.com/articles/ASN132TS1N13UHBI009.html?iref=comtop_8_04 (朝日新聞 2020年1月3日) ゴーン被告、ハリウッド映画プロデューサーと面会 米紙 米紙ニューヨーク・タイムズは2日、レバノンに逃亡した日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(65)が昨年12月、東京都内の住居で、ハリウッドの映画プロデューサーと面会していたと報じた。ゴーン前会長は日本の司法制度への不満を語っていたといい、同紙は「2人の会話が、ゴーン前会長の当時の思考の一端を知るヒントになるかもしれない」としている。同紙によると、ゴーン前会長が面会したのは、米アカデミー賞作品賞などを受賞した「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)のプロデューサーを務めたジョン・レッシャー氏。ゴーン前会長はレッシャー氏に対して日本の司法制度を批判し、無実の証明に苦心していることを説明。映画をつくれば、人びとがより自らに同情的になってくれるかどうかを気にしていたという。ゴーン前会長を知る複数の人物の話として同紙が報じたところでは、ゴーン前会長は日本での初公判に向けた手続きが進む中、著名人の裁判について調べていた。極めて高い確率で有罪になる日本では、公正な裁判が受けられないと確信するようになったという。楽器を入れる箱に隠れ、プライベートジェットを使ったなどといわれるゴーン前会長の逃亡をめぐっては、欧米メディアが「スパイ映画のよう」などと報道。同紙も「ハリウッドらしい要素は全てそろっている」と伝えている。ただ、レッシャー氏との面会が、ゴーン前会長の逃亡方法に影響を与えたかは定かではない。レッシャー氏は、日本の新聞社に在籍していた米国人記者の体験記をもとにしたドラマの制作陣に名を連ねている。朝日新聞は、レッシャー氏が代表を務める米カリフォルニア州のプロダクションに連絡したが、2日夜時点でコメントは得られていない。 *4-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200110&ng=DGKKZO54227140Z00C20A1EA1000 (日経新聞社説 2020.1.10) ゴーン元会長の「情報戦」に有効な反論を 特別背任などの罪で起訴され、保釈中に密出国した日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告が逃亡先のレバノンで記者会見した。日本の刑事司法を批判し、逮捕は検察と日産の共謀によるもので自分は無実などと、これまでとほぼ同じ主張を繰り返した。これが日本の法廷の場であれば議論が深まったかもしれない。そう思うと残念だ。世界を驚かせた日産をめぐる事件の裁判は開かれず、真相は分からないままになってしまう可能性が高い。歴史、文化や国内の治安情勢が違うのだから、日本とレバノン、フランスなどとでは司法制度もそれぞれ異なる。異なる制度のもとで刑事訴追されたことへの驚きや失意は理解できなくもない。だが元会長が繰り返す日本異質論には誤解や一方的な思い込みが多い。自身の報酬に関する虚偽記載についても無実であれば、なぜ米証券取引委員会(SEC)からの同様の指摘には、争わず100万ドルの課徴金を支払ったのか。納得できるような説明はなく、一方的主張との印象が強い。保釈中に妻と会えなかった点も繰り返し批判している。だが捜査関係者によれば、妻は日産の資金が元会長側に流れたとされる企業の代表を務めていた。通常は「事件関係者」ということになり、接触の禁止は十分ありうる措置だ。東京地検は妻に対しても偽証の疑いで逮捕状を取っている。ゴーン元会長はこの先も、同じような批判をいろいろな場面で繰り返すだろう。元会長に共感する海外メディアも多く、「情報戦」に敗れれば誤ったイメージが定着し、日本の信頼を大きく傷つける。ひいては海外の人たちが、日本で生活することをためらうような事態さえ招きかねない。ゴーン元会長が会見した直後、森雅子法相が未明に会見を開いてすぐに反論したことは評価したい。だが国内だけでなく、あらゆる手段を使って海外に向け、日本の立場や考え方を正しく伝えていく必要がある。今回の問題では、日本の空港でのチェック体制に穴があることが明らかになった。出入国在留管理庁や税関、国土交通省などは深刻に受け止めるべきだ。今年は夏に東京五輪・パラリンピックの開催を控え、テロや不法行為の危険性が高まる。事件を受けて対策を講じたというが、本当に大丈夫なのか。一から見直すべきである。 <日本はこうして遅れていく> *5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191123&ng=DGKKZO52522790S9A121C1EA1000 (日経新聞 2019.11.23) トヨタ、中国2位に、1~9月新車販売、GM抜く 中国の1~9月の新車販売台数(乗用車)でトヨタ自動車が米ゼネラル・モーターズ(GM)などを抜き、前年同期の5位から2位に浮上した。中国政府との関係を強化し、環境技術の協力や販売店の整備などで攻勢をかけるなど中国を重視してきた戦略が実を結びつつある。「中国は国を挙げて電気自動車(EV)を推進している。需要にこたえる重要なモデルだ」。22日に開幕した広州国際汽車展覧会(広州モーターショー)で、トヨタのレクサス部門トップの沢良宏執行役員は力を込めた。レクサス初のEVを世界に先駆けて公開し、中国を重視している姿勢を印象づけた。トヨタと中国の合弁会社は多目的スポーツ車(SUV)の中国専用車も発表した。SUVは中国の乗用車市場の4割を占め、メーカーの勢力図を左右する。戦略車で現地の若者らを取り込む。トヨタの中国での勢いは著しい。英調査会社のLMCオートモーティブによると、1~9月の新車販売台数(乗用車)シェアは前年同期の5位(6.4%)から2位(7.8%)に浮上した。中国全体の新車販売台数は1~9月に1837万台と10.3%減った。好調だったEVを中心とする新エネルギー車も7月から前年同月比マイナスに転じ、10月は5割近く減った。政府が6月下旬から補助金を減らした影響が大きい。主要メーカーは規制対応で新エネ車の投入を増やしており、競争は激しさを増す。GMや同社と組む上海汽車集団の独自ブランド、民営最大手の浙江吉利控股集団などが販売台数を落とすなか「シビック」が若者をつかんだホンダは13%増、「カローラ」が人気のトヨタも8%増だった。LMCオートモーティブの康軍アナリストはトヨタは「現地の若者向けのデザインが成功し、販売価格や豊富な品ぞろえが顧客獲得につながった」という。足元では年間約50店のペースで販売店を増やし、販売店網も「レクサス」を含め約1300店舗(2019年1月時点)に広がった。また、中国系メーカーが7月に都市部などで施行された新排ガス規制「国6」対応で出遅れたのに対し、日本車の燃費の良さなどが評価されてきたことも大きい。米中貿易摩擦で米国車のイメージが悪化したという敵失もあった。 *5-2: https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191203&ng=DGKKZO52875480S9A201C1EA1000 (日経新聞 2019.12.3) 欧州車、生産も「CO2ゼロ」、VW、EV部品会社に義務付け 排出枠取得、新たな負担に 欧州の自動車大手が事業活動に伴う二酸化炭素(CO2)の純排出量をゼロにする「カーボンニュートラル」を相次いで宣言している。欧州連合(EU)が義務付けを目指し、消費者の環境意識も高まる中での各社の危機感が背景にある。自動車大手は部品や物流も含む排出ゼロをめざすが、部品などのサプライヤーには波紋が広がる。11月4日、独フォルクスワーゲン(VW)の電気自動車(EV)「ID.3」の量産が独東部ツウィッカウ工場で始まった。式典でメルケル首相が「独自動車産業の未来の礎石となる」と述べ、VWのヘルベルト・ディース社長は「VWの新しい歴史が始まる」と応えた。VWが自賛する理由は欧州最大のEV工場というだけではない。生産する車種はVW初のカーボンニュートラルだ。VWは使用電力に再生可能エネルギーを購入、車両輸送などで減らせないCO2分はインドネシアの熱帯雨林保存プロジェクトに投じ相殺する。走行時にCO2を出さないEVには「不都合な真実」がある。火力発電が多い地域では、走行のための電気や電池をつくる際にCO2を出す。生産やエネルギー生成、リサイクルまでを評価するライフサイクル評価(LCA)で見ると、ガソリン車より多くCO2を排出することもある。 ●「悪玉論」広がる そこで企業は行動に移した。VWは全体で2050年にカーボンニュートラル達成を目指して工場投資を決め、独ダイムラーも39年の実現を打ち出した。欧州以外の企業に先んじ、動いたのは2つ理由がある。一つはEUの欧州委員会が50年にEU全体でのカーボンニュートラル義務付けに向け動いていることだ。石炭火力発電に頼る東欧の加盟国は反発するが、西欧でコンセンサスになりつつあり企業は今から対応が必要だ。もう一つは「自動車悪玉論」の広がりだ。9月のフランクフルト国際自動車ショーでは環境団体「ザンド・イン・ゲトリーベ」が「自動車は悪」と訴え、会場の入り口のひとつを封鎖する過激な行動に出た。別の団体は自転車で1万2500人が会場に乗り付けるデモを実施した。自動車大手の中には将来の販売減につながるとの危機感も出始める。VWのディース社長は「ザンド」との対話にも乗り出し、負のイメージ払拭に躍起だ。もっとも自社だけでニュートラル達成は難しい。VWはID.3に部品を供給する企業から初めてカーボンニュートラルを義務付ける契約を結んだ。車載電池は韓国LG化学が再生エネを使い生産しているという。だがほとんどの部品メーカーが排出枠の購入などで辻つまを合わせているとみられる。環境の名の下の新たな負担だ。VWは手綱を緩めない。調達担当のシュテファン・ゾンマー取締役は「持続可能性は(サプライヤーとの)取引を決める要素となる」と述べ、義務化の対象を他の車種、工場に広げる計画だ。 ●素材産業厳しく 5月に車部品世界首位の独ボッシュが唐突に20年のニュートラル達成を宣言したのも、こうした背景があるもよう。同社はまず排出枠を購入し、30年までに2400億円超を省エネや再生エネに投資して実現する考えだ。独部品大手コンチネンタルも9月、40年に実現するとの目標を掲げた。苦しいのがCO2を多く排出する素材産業だ。樹脂大手の独コベストロは25年に09年比50%削減の目標を掲げるが、マルクス・シュタイレマン社長は「今はここまでしか宣言できない」と努力の限界を指摘する。電源構成や電力料金など外部要因に依存する部分が大きいからだ。鉄鋼もCO2を排出しない生産は基礎研究段階だ。EUでは車業界に対し、LCAで規制する議論が進む。世界で最も厳しい環境規制を導入し、他地域より企業の競争力を高めるのがEUの施策だった。日本では「夢物語」とも思われる話が現実のビジネスに影響を与え始めている。日本企業も無視できない。 *5-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200112&ng=DGKKZO54325530R10C20A1EA1000 (日経新聞社説 2020.1.12) 化石燃料を使い続けるなら 地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の本格運用が2020年から始まった。温暖化ガスの排出削減に向けた取り組みの強化が求められる中で、排出量が多い石炭火力発電所を使い続ける日本に向けられる視線は厳しい。国が掲げる中長期のエネルギー目標は脱炭素の要請に応えられているか、改めて点検が必要だ。ただし、18年度に国内で消費した1次エネルギーの約9割は、石炭を含む化石燃料だった。私たちの暮らしや経済活動はこれに支えられている現実がある。太陽光や風力など再生可能エネルギーは最大限伸ばしたい。だが再生エネだけでは需要を賄いきれないとすれば、温暖化対策を講じながら、化石燃料を効率的に使い続ける方法を考える必要がある。手掛かりの一つが、化石燃料から水素を取り出して使う技術だ。石炭や石油を、水素と二酸化炭素(CO2)に分離し、温暖化の原因となるCO2は地中に埋め戻したうえで水素を発電燃料などに使う。こうした活用法の実用化に向けた活動が始まっている。川崎重工業などの企業グループは、オーストラリアの低品位炭から水素を取り出し、これを液化して日本に運ぶサプライチェーンの構築に向けた実証事業を進めている。世界初となる液化水素の運搬船も19年12月に進水した。千代田化工建設などのグループは、天然ガスから取り出した水素を別の化学物質に変えて日本に持ち込む計画だ。国際石油開発帝石や日立造船は、CO2と水素を合成して都市ガスの主成分のメタンをつくる実証試験を開始した。実用化には水素の製造費用を大幅に下げるなど、高いハードルがある。燃料電池車の普及やCO2を出さない発電への転換に弾みをつけるためにコスト低減を急がなければならない。資源国にとっても保有資源を有効に使い続ける道になるはずだ。水素利用技術の確立に向けて、資源国と連携した取り組みを加速していかねばならない。 *5-4:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019121290135411.html (東京新聞 2019年12月12日) 温暖化対策 日本に厳しい目 パリ協定目標「極めて不十分」 海外の研究機関でつくる「クライメート・アクション・トラッカー」は、開催中の気候変動枠組み条約第二十五回締約国会議(COP25)の会場で、地球温暖化対策のパリ協定で三十余りの国や地域が掲げる目標や政策の評価を公表。日本については、国内外で石炭火力発電所を推進していることなどを理由に六段階評価で下から二番目の「極めて不十分」と判定した。パリ協定は産業革命前からの気温上昇を二度未満、できれば一・五度に抑えることを目指しているが、各国の目標の水準では今世紀末に約三度上昇すると予測。目標の引き上げを求めた。世界全体では、再生可能エネルギーが順調に普及しているものの、天然ガスの利用が拡大。二〇一七~一八年に化石燃料の燃焼で増加した二酸化炭素排出量の三分の二近くが天然ガスによるとして、歯止めをかけるよう警鐘を鳴らした。最高評価の「見本になる」に当たる国はなかった。それに次ぐ「一・五度に整合」がガンビアとモロッコ、「二度に整合」にインドやコスタリカなど六カ国が入った。天然ガスの利用が増えている欧州連合(EU)やオーストラリアなど十一カ国・地域は「不十分」と評価。それより低い評価の「極めて不十分」は日本や中国、韓国、ドイツなど十カ国だった。担当者は「日本は石炭や天然ガスへの依存から早急に脱却し、海外援助も中止するべきだ」とコメントした。パリ協定離脱を国連に正式通告した米国は、ロシアやサウジアラビアなど五カ国とともに最低の「決定的に不十分」とされた。 <意思決定と教育> PS(2020/1/13追加):*6-1のように、国連環境計画(UNEP)が、2008年から2017年までの10年間を「失われた10年だった」と厳しく総括する報告書をまとめたが、日本は国内で石炭火力発電所の新設を進め、海外でも石炭火力発電所の建設支援を続けている。日本には再エネ資源が豊富なのに、日本の意思決定権者が一昔前の化石燃料や原発から脱却できないのは何故かと考えると、科学的・論理的に思考して実行するための勉強(≒教育)ができていないからだ。そして、これはEVを世界最初に実用化したゴーン氏と、それにケチをつけることしかできなかった日本のメディア・行政との違いでもある。 日本は、1980年代に「ゆとり教育」と称する勉強しない方向への教育改革を進めたので、社会を構成する人々の知的判断力が低くなった。*6-2に書かれている思考力・判断力はもちろん重要だが、それには知識や論理的思考訓練が必要なのである。また、論理的思考には理数系科目の理解が不可欠であるため、「ゆとり教育」で理数系の内容を削減したのも間違いだった。 なお、何かしようとすると、*6-2・*6-3のように、「教員に時間的余裕がない」「長時間労働を是正すべき」「働き方改革が必要」という声が必ず聞かれるが、合理的に自分たちの問題を解決して必要な教育を遂行することのできない学校や教員が、生徒に思考力・判断力・問題解決力などを教えられる筈がなく、教員の質の低下は既に起こっているのではないかと思う。もし、教員の質が高く、教科に興味をわかせる教育ができたら、モンスターになる生徒や保護者はもっと減ると思われる。 世界は、*6-4のように、新たな「学歴社会」に突入しており、高度な知識や技能を要する仕事が多くなった。そのため、教員にも修士号・博士号を要求してよいのかもしれないが、日本は、“専門性より人間性”を重視する雇用慣行を維持したままである。しかし、実際には、専門性と人間性は二者択一の性格ではないため、これらを二者択一であるかのように言う文化が問題なのであり、専門性や技術力がなければ競争以前なのである。 *6-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/475644 (佐賀新聞 2020/1/12) 温室ガス排出量、増加続く、「失われた10年」と国連総括 2008年から17年までの10年間に世界の温室効果ガス排出量がほぼ一貫して増え続け、国連環境計画(UNEP)が「失われた10年だった」とこの間の地球温暖化政策を厳しく総括する報告書をまとめていたことが12日分かった。各国の削減対策は不十分としており、18年も排出量は増加。パリ協定の温暖化抑制目標を達成するには石炭火力発電所の新設中止など思い切った対策が急務だと指摘している。国内で石炭火力発電所の新設を進め、海外の建設支援も続ける日本に方針転換を求める圧力がさらに強まりそうだ。報告書によると、UNEPが世界の排出量の分析を始めた08年から17年までに世界の温室効果ガス排出量は平均で年1・6%増加し、17年には過去最高の535億トンに達した。約10年前に「目立った削減対策が取られず、成り行きのまま排出量が増える」とのシナリオで予測された排出の伸びとほぼ等しかった。18年はさらに増えて553億トンに上ったとみられている。それでも各国政府が再生可能エネルギーや省エネの大幅拡大、森林破壊の防止や植林などの対策を大幅に強化すれば「産業革命以来の気温上昇を2度より十分低くし、1・5度になるよう努力する」とのパリ協定の目標達成はまだ不可能ではないと分析した。一方で現在、建設中の石炭火力発電所が全て稼働すると気温上昇を1・5度に抑えることは不可能で「新設をやめ、既存の発電所も徐々に減らすことが目標達成に欠かせない」と指摘した。UNEPは08年から毎年、温暖化の被害防止に必要な温室効果ガスの削減量と実際の排出状況に関する調査報告をまとめている。今回、10年間の変化を改めて分析した。 *6-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/573435/ (西日本新聞社説 2020/1/6) 教育再生元年 学ぶ喜びを知ってほしい 新学習指導要領がこの4月から、小中高で順次実施され、戦後教育の転換点ともいわれる大改革がいよいよ本格化する。学年を問わず「主体的・対話的で深い学び」という新たな指導理念が導入される。知識を蓄えるだけでなく、それを活用する思考力や判断力、表現力などを育むことが主眼である。小学高学年では外国語(英語)が教科となる。論理的思考を学ぶプログラミング教育も始まる。グローバリズムやIT社会に対応するためとされる。高校ではいずれ、大規模な教科・科目再編も行われる予定だ。負担が確実に増えるだけに、子どもが「学ぶ喜び」と「考える楽しみ」を体得できるよう、教員は指導に知恵を絞ってほしい。学習の原動力は、何よりも知的好奇心である。 ■読解力向上が課題だ 戦後、日本の教育行政は「詰め込み」と「ゆとり」の間を振り子のように揺れてきた。米国流の自由で余裕のある教育から始まり、1960年代以降は学習量が増え、カリキュラムも過密化した。これが詰め込み教育と批判され、国は80年代に学習量を減らすゆとり教育を進めた。しかし、2000年代に入ると潮目が変わる。15歳の応用力や読解力を問うため、経済協力開発機構(OECD)が実施する学習到達度調査(PISA)で03年、日本は大きく順位を下げた。いわゆる「PISAショック」だ。この結果を受け、文部科学省は前回の指導要領改定で「脱ゆとり」にかじを切った。今回の改定はその流れを踏襲し、さらに深い思考力などの育成を目指している。昨年末発表されたPISA18年調査では、科学と数学の応用力は上位に踏みとどまったものの読解力は15位と低迷した。この順位に一喜一憂する必要はないが、読解力は学力の土台だ。読解力が伸び悩む要因に、若者に広がる会員制交流サイト(SNS)が短文中心である影響を指摘する識者もいる。授業で長文に親しむ機会を増やす工夫を求めたい。授業で新聞を活用するNIE(教育に新聞を)の推進も後押しになるだろう。家庭でも、SNSのルールをつくり、読書習慣を生活に定着させてほしい。 ■現場の声に耳を傾け 「主体的・対話的で深い学び」の実現には、教員にも授業を練る余裕が欠かせない。公立小学校の18年度教員採用試験の倍率は2・8倍で過去最低だった。九州では福岡県の1・3倍を筆頭に2倍未満が4県もある。定年による大量退職時代の到来と相まって、教育の質の低下を招きかねない深刻な事態と言えよう。民間への就職の堅調さが背景にあるようだが、教員という仕事を敬遠する風潮も広がってはいないか。深刻な長時間労働を是正するため、働き方改革を急ぐべきだ。まずは、各学校で教員が担う膨大な業務の削減に本気で取り組んでほしい。一連の改革は政府の教育再生実行会議が起点となってきた。大改革だけに、政治主導による強いリーダーシップが必要な場面もあろう。ただ議論が生煮えのまま「改革ありき」で強行しては、教育の現場に混乱を広げてしまう。大学入試改革を巡る騒動に、それは明らかだ。英語民間検定試験と国語・数学への記述式問題を導入する方針を検討した二つの会議の内容が昨年末公開された。16年の時点で、昨年問題となった地域格差や採点ミスの可能性は指摘されていた。文科省は仕切り直しの議論の中で、現場や識者の声に誠実に耳を傾けるべきだ。今年は「教育再生元年」とも呼ばれる。主体的に行動し、よく考えて判断する。異なる意見を持つ人と話し合い、問題を解決する-そんな力を養える教育環境を着実に整えたい。 *6-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1055817.html (琉球新報社説 2020年1月12日) 教員の長時間労働 働き方改革の道筋付けよ 長時間労働などで学校現場が疲弊し、教員にゆとりや将来への希望が見えなくなっている現状が改めて浮き彫りになった。県教職員組合(沖教組)が40歳未満の若手教職員に行ったアンケートで、定年まで現在のような働き方を続けられないとする人が55%に上った。月平均の時間外労働は平均55・7時間となり、持ち帰りの仕事も10・6時間あった。働き方改革関連法の施行によって、民間企業では時間外労働は原則月45時間と定められたが、それを大きく超える実態だ。教育現場はいじめや不登校などの課題が山積している。「モンスターペアレント」の対応に神経をすり減らす例があるのも事実だ。教員が多忙故に疲れ切っていては適切な対処ができない恐れがある。教員の残業を減らし、ゆとりある教育現場にするための具体的な対策が求められる。本紙が昨年12月に市町村の教育委員会へ聞いたアンケートでも、公立小中学校で月100時間を超える残業をした教員が延べ810人、「過労死ライン」とされる80時間超は少なくとも延べ2329人だった。学校現場の長時間労働は常態化している。文部科学省は昨年1月、働き方関連法に沿う形で公立校の教員の残業が月45時間を超えないようにする指針を出した。しかし、指針に罰則規定はなく、「臨時的な特別の事情」の場合は月100時間を超えない範囲で延長できるとしている。そもそも県内の公立小中学校でタイムカードやICカードなどで客観的に勤務時間を把握していたのはおよそ半数の21市町村だった。その他は教員自身がエクセルデータに記入したり、出勤簿に押印したりする方法で勤怠を管理していた。労働時間が正確に管理されず、月45時間の指針を守らなくても罰則もない状況では、指針が形骸化しているのも無理はない。沖教組のアンケートによれば、教員が本来時間をかけたいのは教材研究や補習指導、学年学級運営など子どもたちを指導する業務だが、時間外勤務が発生する理由は報告書作成や校務分掌などが上位となり、生徒と向き合う時間が取れていない実態も見えた。経済協力開発機構(OECD)の国際教員指導環境調査で日本の中学校教員の週当たりの仕事時間は56時間と世界最長だ。にもかかわらず、生徒が自ら考える力を育む授業を実践する教員は各国平均に比べて低い水準にある。多忙さが子どもの指導に向けられていないのだ。いま、学習指導は暗記中心の授業から表現力や深い思考を養う方向へ転換している。教員の指導法がより高度になるよう、授業の準備を充実させる時間が必要だ。教員の仕事の在り方を抜本的に見直し、働き方改革の道筋を付けたい。 *6-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191208&ng=DGKKZO53006550V01C19A2MM8000 (日経新聞 2019.12.8) 「博士」生かせぬ日本企業、取得者10年で16%減 世界競争、出遅れも 世界は新たな「学歴社会」に突入している。経営の第一線やデジタル分野では高度な知識や技能の証明が求められ、修士・博士号の取得が加速する。主な国では過去10年で博士号の取得者が急増したのと対照的に、日本は1割以上減った。専門性よりも人柄を重視する雇用慣行を維持したままでは、世界の人材獲得競争に取り残されかねない。「日本人だけでは定員を埋められない。経済学の修士課程は6割が留学生だ」。データ分析を駆使したミクロ経済学を研究する、東京大学の渡辺安虎教授は危機感を募らせる。今夏まで米アマゾン・ドット・コム日本法人で経済学部門長を務めた経験から「社会的なニーズは必ずある」と断言するが、日本人の大学院への進学意欲は乏しい。科学技術・学術政策研究所によると、米国や中国では2016年度までの10年間に博士号取得者が2割超増えた。修士号でも傾向は同じ。企業などで上級ポストを射止めるには高い学位が必要になる。グーグルなど米IT大手に先端分野の技術者として入社するには、修士・博士号が求められる。トランプ政権がビザ発給を厳格化するまで、中国からは年数千人が渡米して博士号を取得。民間企業の成長のけん引役になっていた。一方、日本の博士号取得者は16年度に1万5000人と10年間で16%減った。少子化は関係ない。この間に4年制大学の入学者は一貫して増えている。学生が専門課程への進学をためらい、日本は世界の中で相対的な「低学歴化」に沈んでいるのが実情だ。大学などの研究者の収入が不安定な面は否めないが、企業の機能不全も深刻だ。博士課程で人工知能(AI)を専攻した大山純さん(仮名)は今、国内電機大手でインフラ分野の営業と開発に従事する。採用面接では専門知識はほぼ問われず、逆にこう求められた。「学位取得より入社を優先してほしい」。結局、博士号は取らなかった。経団連は毎年、加盟各社が「選考時に重視した点」を調べている。上位を占めるのは「専門性」ではなく、「コミュニケーション能力」など人柄に関する項目ばかりだ。入社後も専門性は評価されにくい。30歳前後の平均年収を比べると、日本の学部卒人材が418万円なのに対し、修士・博士の大学院卒は524万円。その差は1.25倍だ。米国の修士の平均年収は763万円で、学部卒の1.4倍を稼ぐ。博士では915万円と1.68倍まで開く。高学歴者に高収入で報いるのは、世界の常識だ。社会学者の小熊英二・慶応義塾大学教授は「グローバルの人材評価基準から日本市場は隔絶されている」と指摘する。倍以上の年収で外資に転じる博士が後を絶たないのは、国内企業の待遇の悪さの裏返しだ。「社会」に出ても稼げないため、日本では博士号を保持する研究者の75%が大学などに所属する。日本では1990年代に政府主導で博士を増やしたが、雇用が不安定なポスドク問題を生み出した。科学技術振興機構の永野博研究主幹は「企業に採用される人材を、大学側が育ててこなかった面もある」と話す。米国では博士の4割が企業で働き、イノベーションの原動力になっている。高度人材の育成と確保は、国家の競争力も左右する。雇用慣行と教育現場。2つのアプローチで改革を急ぐ必要がある。 <警察の呆れた優先順位> PS(2020年1月14日追加):ゴーン氏の場合は刑事事件になるか否かもわからないようなことで長期間拘束したが、40代の女性を人質にとって立てこもった20代の日本人男性に対しては、*7のように、10時間経っても警察官が事務所内で男の説得を続けているのに呆れた。単独の現行犯なのだから、その男を拘束すると同時にさっさと女性を解放しなければ、その女性はたまったものではないだろう。つまり、警察は、日産のような組織は護るが、40代の女性のような個人はどうでもよいという価値観を持っているらしく、この価値観がおかしいのである。これなら、被害者になった場合でも、日本の警察に頼むより元グリーンベレーの人に頼んだ方が早そうだ。 *7:https://digital.asahi.com/articles/ASN1G571VN1GPTIB00D.html?iref=comtop_latestnews_02 (朝日新聞 2020年1月14日) 立てこもりの男が軽いけが 女性が人質、説得続く 出雲 14日午後2時半ごろ、島根県出雲市神西沖町(じんざいおきちょう)の運送会社「上田コールド」の従業員から「立てこもりたいという男が来て部屋の外に出された」と110番通報があった。島根県警によると、男は刃物のようなものを持っており、同日午後10時現在、事務所2階で40代の女性従業員を人質にとって立てこもっている。女性にけがはないが、男は軽いけがをしているという。県警によると、男は「社長に会わせろ」という趣旨の話をしており、警察官が事務所内で男の説得を続けている。男は階段に通じる廊下にいて、比較的落ち着いた状態だが、ブラインドをおろす時にけがをしたと話しているという。女性従業員は廊下の奥の部屋に入れられているという。県警によると、男は午後2時20分ごろ、事務所を訪れ、「今から立てこもる」と言って女性従業員を人質にとった。当時、7人ほどの従業員がいたが、ほかの従業員は外に出されたという。県警は、男は20代で、同社との雇用や取引の関係はないとみている。現場は、JR山陰線の出雲神西駅から北西約1・5キロで、周囲には住宅や田畑が広がる。40代の男性従業員は「配送から戻ってきたら事件が起きていた。会社ともめて辞めたような人は聞いていない。女性が心配だ」と話した。同社のホームページによると、同社は生鮮品の冷凍・冷蔵輸送に特化した運送会社。1973年の創業で出雲市や鳥取市に物流センターがある。上田コールド出雲物流センター(出雲市長浜町)の従業員によると、本社では普段、10人前後が働いているという。 <ゴーン氏の主張は正当である> PS(2020年1月17日追加):*8のように、日産は、ゴーン氏の不正を許してきたガバナンスの改善などに関する報告書を東京証券取引所に提出して、CEOリザーブ(CEOの交際費の筈)を利用した支出、仏ルノーとの統括会社を使った会社資金の私的流用等の不正に関する社内調査結果を新たに盛り込み、「ゴーン氏が事実を隠したため、取締役は不自然さを探知できず、監査役も是正できなかった」とし、ゴーン氏の方は、「CEOリザーブは多くの役員がチェックするもので、私のサインだけで支払われたCEOリザーブは1ドルもない」と主張しているそうだ。 しかし、①CEOリザーブを設けること自体 ②その金額 ③使い方 などについては、役員が了承し監査役もチェックしている筈で、チェックする立場の人は疑問があれば質問して妥当性を調べるのも仕事のうちであるため、「不自然さを探知できなかった」「ゴーン氏のすることに反対できなかった」と言うのは「仕事をしていなかった」と言うのと同義である。一方、ゴーン氏だけのサインで支払われたCEOリザーブが1ドルもないのであれば、思いついたように後付けでゴーン氏のみを批判するのは妥当ではない。 *8:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14329752.html (朝日新聞 2020年1月17日) 日産、東証に不正調査を報告 「ゴーン前会長への反論」 日産自動車は16日、カルロス・ゴーン前会長による不正を許してきたガバナンス(企業統治)の改善などに関する報告書を東京証券取引所に提出した。CEO(最高経営責任者)の裁量で使える予算「CEOリザーブ(予備費)」を利用した支出や、仏自動車大手ルノーとの統括会社を舞台にした会社資金の私的流用など、前会長の不正に関する社内調査結果を新たに盛り込んだ。逃亡先のレバノンで開いた会見で「無実」を主張した前会長と真っ向から対立する内容だ。報告書では、前会長がCEOリザーブを使って、海外の知人が経営する企業や、販売代理店に計4670万ドル(約51億円)の不正な支出をしたと認定。前会長をめぐる特別背任事件で、東京地検特捜部が起訴した内容に重なる。ルノーとの統括会社「ルノー・日産BV(RNBV)」を通じて、パリ郊外のベルサイユ宮殿でのパーティー費用やカンヌ映画祭への知人の招待費用などの私的な支出を含め、少なくとも計1137万ユーロ(約14億円)の不正支出があったとも認定した。これらの調査結果は、昨年6月に東証に提出した「改善報告書」の内容に付け加える形で盛り込んだ。日産幹部は「会見への反論にもなっている」と話す。ゴーン前会長はベイルートで8日に開いた会見で、CEOリザーブについて「多くの役員がチェックするものだ。私のサインだけで支払われたCEOリザーブは1ドルもない」と主張。日産は報告書でこうした支出の背景について、前会長が「事実を隠したため、取締役は不自然さを探知できず、監査役も是正できなかった」と指摘した。
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2019,12,16, Monday
![]() 気温の上昇 海水温の上昇 (図の説明:左図のように、地球の気温は1880年~2012年に0.85°C上昇し、中央の図のように、日本の気温は1900年~2017年に1.19°C上昇している。また、右図のように、海水温も上昇しており、これらは農業・漁業に影響を与えている) (1)米国とのFTA交渉における日本の敗北 1)農業は、自動車と引き換えにはできない 経済官庁が農業を差し出して確保しようとしてきた自動車の利益は確保されず、*1-1のように、日米貿易協定における米国の自動車関連の関税撤廃の約束はあることにされているが実際はなく、これは「ある」ことにしないと米国貿易額の92%をカバーしたとしているのが50%台に落ち込んで国際法違反の協定となり、国会批准ができないからだそうだ。 この日米貿易協定は、自動車・部品の関税撤廃が実現しないと800億円程度、農産物は9500億円程度の生産減少が生じる可能性があり、日本のGDPはマイナスになるそうだ。トランプ氏は強力なネゴシエーターで農産物も自動車も「勝ち」、日本は農産物も自動車も「完敗」であり、その上、日本は米国から大量の武器購入や基地負担の増大を要請されて、一部は既に行っているわけである。 こうなった理由は、日本の政治・行政には長期計画やそれに伴う戦略がなく、成り行き任せで国民のために必死の交渉を行わないことや、メディアが外国との交渉中に首相や政治家を批判して貶め、首相をレイムダックのようにさせることが大きいと、私は考える。 2)食料自給率低下と隙だらけの安全保障 TPPや日米貿易協定締結のために、経済官庁が農業を差し出して自動車の利益を確保しようとしたことを受け、日本政府が甘い想定に基づいて農業に厳しい条件を突きつけたため、農業を放棄したり、農業を承継しない人が増えた。 その結果、*1-2のように、耕作放棄や農地転用による農地面積の減少が農水省の想定を大きく上回り、2015~19年(5年間)に、荒廃農地は7万7000ha、農地転用は7万5000ha、合計15万2000haの農地が減少し、再生された農地は3万2000haに留まる。 しかし、*1-3のように、農業の生産基盤や担い手が減れば、1億人の人口を擁する我が国の食料自給率はますます下がり、いくら防衛費を増強しても兵糧攻めだけで結果が出て戦争は終わり、エネルギー自給率も7.4%なので、日本を責めるのに武器はいらないのである。その上、ミサイルに核弾頭など積まなくても、原発を狙えば勝手に自爆する状態だ。 なお、農林水産業は地方の重要な産業であるため、これを大切にせず、たたいて担い手をいためつければ、「地方創生」にも大きなマイナスなのである。 (2)農業の解決例 1)環境税を使う スペインのマドリードで開かれたCOP25は、*2-1のように、徹夜で協議したが対立が解けず、積み残されていたパリ協定の実施ルール作りの合意を断念して次回会合に先送りしたそうだ。私は、化石燃料に世界ベースで環境税をかけて資金を集め、CO₂を吸収する藻場や緑の面積(CO₂吸収力)に応じて公正にそれを配分するのが、どの国からも文句が出ず、エネルギーの転換が進むと考える。 この時は、日本国内の農地・山林・藻場も、その面積(CO₂吸収力)に応じて資金を受け取ることができるので、受け取った資金をその手入れに活かすことができる。 2)温暖化を活かす 地球温暖化が現在のペースで進むと、海面が上昇して陸地が減ったり、野生動植物の生息適地がなくなったりするのだが、日本では、*2-2のように、現在も暖かい地域はさらに暖かくなり、緯度の高い北海道でも米作が容易になり、標高の高い所まで何らかの作物ができるようになるため、自治体毎の影響を環境省のHPで確認できるよう準備を進めているそうだ。 農業分野は、将来のその地域の気候が現在のどの地域と同じになるかをそのHPで判断でき、転換する品目・品種や転換スケジュールの検討で参考になるため、果樹などの栽培や転換に時間がかかるものは、苗木の準備計画に役立ててもらいたいそうだ。 3)生産性を向上させる 農林水産業の全自動化につながる技術開発が進んでいるが、*2-3は、全自動化の技術開発と併せて、農村での雇用創出から定住化につながるような研究をしてもらいたいとしている。 高望みしたり、不可能に挑戦したり、解決の難しい社会の課題に挑んだりすることを「ムーンショット(月を撃つ)」と言うそうだが、そのような人たちのおかげで、現在は、ロケットで月の軌道まで行って実際に月を撃つことができるようになったのである。従って、ムーンショットは実現可能であり、他の技術も同様に進歩しているのだ。 もちろん、全自動化しても、機器を作ったり、使いこなしたり、維持管理したりすることができる人材が必要になるので新しい仕事が生まれるが、若い人が農村に定住したいと思う社会制度にしなければ、国として成り立たなくなることは明らかである。 4)付加価値を上げる ①米粉の例 米粉市場は伸びており、その理由は、*2-4のように、圧倒的な品質力(微細粉にする高い製粉技術、加工技術)の進展でパン・菓子・麺など多彩な商品化が実現し、和菓子やせんべいの原料だった従来の米粉の世界を一新して米粉新時代を開いたからだそうで、消費増で工場の稼働率も向上し、一部メーカーは小麦粉並みの製粉コストを実現して、伸びる需要に生産が追い付いていないとのことである。 実需側の在庫も少なく、このままでは3万トンを超す需要を満たせず、地域によっては原料確保に苦心する企業も出そうで、海外市場も「グルテンフリー市場」が急成長しているとのことだ。私は米粉で作るなら、ラーメンよりフォーだと思うが、今のところ、フォーの即席麺はないため、先入観のない加工品開発や販促活動に期待したい。 ②ゲノム食品の例 消費者庁は、*2-5のように、ゲノム編集技術で品種改良した農水産物の大半について生産者や販売者らにゲノム編集食品であると表示することを義務付けないと発表したが、表示がなければゲノム編集食品かどうか分からないため、消費者が選択できずに悪貨が良貨を駆逐する状況になる。さらに、このような規制は厳しくして対応した方が、付加価値が上がるのである。 (3)その他の地方産業 ①林業 林野庁は、*3-1のように、森林空間を活用した「森林サービス産業」の創出に乗り出し、森林空間そのものを活用して、木材生産・供給だけでなく、健康需要などを見据えて森林体験や商品開発で新たなビジネスを生み出し、山村地域に新たな雇用と収入を生み出すそうだ。 しかし、最も効果があるのは、子育て世代の多くが地方に住み、森林・田畑・海などを見ながら育つ子どもを増やして、自然に対する美意識を育てることだと、私は考える。 ②観光業(クルーズ船の寄港) 2019年の沖縄へのクルーズ船の寄港予定回数は、*3-2のように、過去最多を更新する719回に達するそうだ。経済成長著しいアジアでのクルーズ市場拡大がこの背景にあり、今後も寄港増や船舶の大型化が見込まれるとのことである。 沖縄へのクルーズ船寄港予定回数が過去最多の719回に達する背景には、クルーズ市場が拡大するアジア市場に近接しているという地理的な優位性があり、クルーズ旅行は比較的安価な「カジュアルクルーズ」の増加に伴って市場が拡大しており、沖縄以外の国内でクルーズ船が多く寄港するのはいずれも九州の博多、長崎で、地理的な近さが強みなのは明らかだそうだ。 ③漁業 農水省が、*3-3のように、水産資源保護のために新たな取引規制を作り、魚介類の水揚げ場所や出荷日を示す公的な証明書を作って、国が指定した魚や一部の輸入品を国内で取引するときに添付を求め、違法操業で証明書のない魚介類は事実上、市場で売買できなくするそうだ。 ただ、私は、水産庁の漁業対策は資源管理に偏っており、漁業資源が減少した本当の理由を科学的に追及していない点で不足だと考える。 このような中、*3-4のように、海水温が50年間で表層水温1.23度上昇した結果、朝鮮半島では食卓の魚が変遷し、「イシモチ→スケソウダラ→サバ」と国民魚が変わり、温暖化や乱獲の影響でスケソウダラの「国籍」も変わって、近年はカタクチイワシとサバが豊漁となり、この2~3年の1位はサバだそうだ。 日本でも似たようなことが起こっているため、地球温暖化や海水温上昇の影響は漁業にも大きな影響を与えているわけである。 ・・参考資料・・ <日本の農業と食料自給率> *1-1:https://www.agrinews.co.jp/p49324.html (日本農業新聞 2019年11月26日) 「完敗」 協定の深刻さ 国際法違反 責任重く 東京大学大学院教授 鈴木宣弘氏 このところ、「ある」ものを「ない」と言うのが話題になっているが、「ない」ものを「ある」と言うのもある。日米貿易協定における米国の自動車関連の関税撤廃の約束は、合意文書が示す通り「ない」が、その約束が「ある」ことになっている。それは、「ある」ことにしないと米国側の貿易額の92%をカバーしたとしているのが50%台に落ち込み、前代未聞の国際法違反協定となり、国会批准ができないからである。米国は大統領選対策として成果を急いだので、協定を大統領権限で発効できる(関税が5%以下の品目しか撤廃しない)「つまみ食い」協定と位置付けたから議会承認なしに発効できるが、国会で正式に承認する日本側は国際社会に対する顔向けとしても責任は重い。筆者も役所時代はもちろん、大学に出てから多くの自由貿易協定(FTA)の事前交渉(産官学共同研究会)に参加してきた中で、経済産業省や外務省、財務省が世界貿易機関(WTO)ルールとの整合性を世界的にも最も重視してきたと言っても過言ではない。しかも、経済官庁が農業を差し出して確保しようとしてきた「生命線」たる自動車の利益が確保されなかったのだから、心中は察して余りある。試算例でも明白だ。政府が使用したのと同じモデル(GTAPと呼ばれる)で、自動車関税の撤廃の有無を分けて日米協定の影響の直接効果を改めて試算し直した。「直接効果」とは、政府が用いた「生産性向上効果」(価格下落と同率以上に生産性が向上)、「資本蓄積効果」(国内総生産=GDP=増加と同率で貯蓄・投資が増加)などの、いわゆる「ドーピング剤」を注入する前の効果のことである。表が示す通り、自動車と部品の関税撤廃は日本の生産額を3400億円程度増加させる可能性があるが、関税撤廃が実現しないと800億円程度の生産減少に陥る可能性がある。一方、農産物は9500億円程度の生産減少が生じる可能性も示唆される。全体のGDPで見ても、自動車を含めても0・07%(政府試算の10分の1程度)、自動車が除外された現状ではほぼゼロという状況である。GTAPモデルにおける「労働者は完全流動的に瞬時に職業を変えられる」といった非現実的な仮定を修正すれば、日本のGDPはマイナスになる。日本にとっては農産物も自動車も「負け」、トランプ氏は農産物も自動車も「勝ち」という、日本の完敗の実態が数字からも読み取れる。国際法違反を犯してまで完敗の協定を批准する事態の深刻さを再認識したい。 *1-2:https://www.agrinews.co.jp/p49488.html (日本農業新聞 2019年12月14日) 農地減少 政府想定上回る 荒廃、転用2倍ペース 対策見直し必須 耕作放棄や農地の転用による農地面積の減少が農水省の想定を上回って進んでいる。2015~19年の5年間に発生した荒廃農地は7万7000ヘクタール、農地転用は7万5000ヘクタールに上った。それぞれ同省が想定した2・5倍、1・5倍のペースで増えた。農地の再生が一定程度進んだものの、新たな荒廃農地の発生や転用に追い付かない状況だ。農地は1961年をピークに一貫して減少し、2019年は439万7000ヘクタールまで落ち込んだ。政府が15年に策定した食料・農業・農村基本計画に掲げる25年の確保目標440万ヘクタールを既に下回った。19年までの5年間の減少面積は12万1000ヘクタールに及ぶ。同省が変動要因を分析したところ、5年間で新たに発生した荒廃農地と農地以外に転用された面積は、合計で15万2000ヘクタールに上る。一方、再生された農地面積は3万2000ヘクタールにとどまり、減少要因が増加要因を大きく上回った。基本計画では、荒廃農地と農地転用を合計で8万1000ヘクタールにとどめつつ、2万7000ヘクタールの農地を再生することで、農地の減少を5万4000ヘクタールに抑える想定だった。同省は、中山間地域等直接支払制度や多面的機能支払制度を使って農地保全に取り組んだ地域は耕作放棄が抑制され、農地の再生も想定以上に進み、政策が効果を発揮したとみる。一方、「高齢化の進展や担い手不足などで新たな荒廃農地の発生が大きく見通しを上回った」(農村振興局)と認める。現行の対策だけでは、農地減少が十分に食い止められていないことが明らかになった格好。将来にわたり農地を確保するため、より踏み込んだ対応が求められそうだ。 *1-3:https://www.agrinews.co.jp/p48934.html (日本農業新聞 2019年10月8日) 国会論戦に望む 弱る生産基盤「解」導け 安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党の代表質問を皮切りに国会論戦が始まった。現憲法下200回目の国会で、令和初の本格的な論戦となる。構造改革路線に偏った農政では農業・農村の未来を切り開けない。生産現場の声に耳を傾け、農家に寄り添う農政に軌道修正する節目の国会とすべきだ。謙虚な政権運営も求められる。首相は所信表明でこれまであまり使わなかった言葉を盛り込んだ。その一つが農業の「生産基盤の強化」だ。日米貿易協定について触れた部分で「それでもなお残る農家の皆さんの不安にもしっかり向き合い、引き続き、生産基盤の強化など十分な対策を講じる」と語った。ところが生産基盤の強化をどう進めるのか、何も語らなかった。一方で「地方創生」の項目で農産物輸出には字数を費やし、「それぞれの地方が誇る農林水産物の輸出をさらに加速」することや「農産品輸出拡大法の制定」を強調した。国内で需要が減る米を海外に輸出できれば、水田を守る手法の一つとはなる。だが、輸出拡大に向けた競争力強化だけでは従来の構造改革路線と何ら変わらない。農家の高齢化や担い手不足は深刻で、中山間地域を中心に集落消滅が起き始めている。規模拡大や競争力強化は必要だが、大規模農家だけでは農村や集落を守れない。中小規模の家族経営を含めて多様な担い手が共存できる農業・農村をどう実現するのか。国会で議論を深め、具体策を示すべきだ。安倍政権が中央集権的な官邸主導の政策決定を進める中で、地方自治体の農業部門は人員、財源とも縮小が進んだ。生産現場と密着した農政は、地方自治体やJAグループなどの農業団体の協力や連携なくして軌道に乗せられない。生産基盤の立て直しに向けは、こうした連携の強化も不可欠だ。首相は所信表明の「一億総活躍社会」の項目で、「多様性」の言葉も使った。農業や農村こそ多様性が重要となる。若い新規就農者から田舎暮らしで移住する定年退職者まで、さまざまな人を呼び込まない限り、生産基盤の強化は絵に描いた餅に終わりかねない。国会は、国民への説明責任を果たす重要な場である。首相は日米貿易協定について「ウィンウィン」と語ったが、それでは納得を得られない。情報開示の在り方も異様だった。日本政府は最終合意するまで公式な情報提供をしなかった。秘密交渉とされた環太平洋連携協定(TPP)でも節目で情報を一定に開示した。「安倍1強」で通商交渉の情報さえ開示されないのであれば、国会は空洞化する。新たな食料・農業・農村基本計画策定や正念場を迎えた米政策2年目、豚コレラ対策など農政を巡る課題は山積みだ。国会で熟議を尽くし、農家に寄り添う施策で国民の財産である農業の生産基盤を後世に引き継ぐのが農政の眼目だろう。 <農業の解決例> *2-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019121501001866.html (東京新聞 2019.12.15) COP25、合意断念し先送り パリ協定ルール、対立解けず閉幕 スペイン・マドリードで開かれた国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)は15日、一部積み残されていたパリ協定の実施ルール作りの合意を断念し、来年の次回会合に先送りする決議を採択し、閉幕した。会期を2日延長して徹夜で協議したが対立が解けなかった。来年に本格始動するパリ協定では、深刻な地球温暖化を踏まえて史上初めて、全ての参加国が自主的な目標を掲げて温室効果ガス排出削減を進める。ルールの大枠は過去の交渉で決まっており、完成しなくても協定は始動するが、出だしから課題を抱えることになった。来年の会議は11月に英国で開かれる。 *2-2:https://www.agrinews.co.jp/p49450.html (日本農業新聞 2019年12月10日) 温暖化で植物適地移動 VoCCで分析 果樹転換参考に 長野県など研究 地球温暖化が現在のペースで進むと、国内の高山帯に生息する野生動植物は、21世紀末に生息適地がなくなる可能性がある──。長野県環境保全研究所などでつくる研究グループが発表した。全国1キロ四方ごとに温暖化の影響を推計したのは初めて。影響は市町村ごとに閲覧できるようにし、農業分野では作物転換の検討に使ってもらう。推計には、気候変動速度(VoCC)という指標を用いた。現在のペースで温暖化が進むと、VoCCの全国平均は1年当たり249メートルとなる。樹木の移動は、最大で同40メートルといわれており、気候変動に追い付けない。これは、身近な自然が将来、緯度の高い所や標高の高い所でしか見られなくなるということを示唆する。都道府県ごとに影響を見ると、沖縄が同2174・3メートルで、最も速度が速かった。次いで千葉、長崎となった。自治体ごとの影響は、環境省のホームページ内で確認できるよう準備を進めている。農業分野では、将来の地域の気候がどの地域と同じになるのか判断でき、転換する品目・品種や転換のスケジュールの検討で参考になる。同研究所の高野宏平研究員は「果樹などの永年作物は栽培や転換に時間がかかる。苗木の準備計画に役立ててもらいたい」と話す。 <ことば> VoCC ある地点で気候が変化した場合、将来同じ気温になる場所の最短距離を、変化した時間で割った速度のこと。例えば、年平均気温15度の場所が100年間で100キロ北上したら、VoCCは1年当たり1キロとなる。 *2-3:https://www.agrinews.co.jp/p49317.html (日本農業新聞 2019年11月25日) 農業の完全自動化 農村への定住策視野に 農林水産業の全自動化につながる技術開発が進んでいる。過疎・高齢化で人手不足に悩む農村にとってありがたいが、農村への定住促進や雇用機会の創出など農村人口を増やす策を忘れてもらっては困る。全自動化の技術開発と併せ、農村での雇用創出から定住化につながるような研究が必要だ。 内閣府は昨年度から、解決が難しい社会の課題に挑むような研究開発を促すため「ムーンショット型研究開発」という制度を創設した。従来技術の延長にはない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究を進めるという。研究領域として少子高齢化対策や地球環境問題などを示し、目標例として「2040年までに農林水産業の完全自動化を実現」することを挙げる。ムーンショットとは「月を撃つ」ということ。米国のジャズシンガー、ノラ・ジョーンズさんの歌に、月を撃つという意味の歌詞がある。高望みをする、不可能に挑戦する、というような意味合いで使われた。内閣府では既存技術の組み合わせではない独創的なアイデアを取り入れた技術開発を進めるために、この表現を使ったようだ。「農林水産業の完全自動化」は「35年までに高齢者のQoL(生活の質)を劇的改善」「40年までに建設工事の完全無人化を実現」などとともに、野心的な目標例として掲げた。農業の現場では、ロボットトラクターのような自動化技術、圃場(ほじょう)の作業状況や作物の生育状態を遠隔地から確認できる情報通信技術(ICT)など、最先端の技術が瞬く間に広がっている。内閣府が目指す農業の完全自動化は、月を撃つような荒唐無稽な夢物語では既になくなりつつある。過疎化、高齢化で労働年齢人口が急速に減っている農業にあって自動化技術は魅力的だ。だが、果たしてそれだけでいいのか、あえて疑問を挟みたい。農村が美しいのは、棚田にしろ牧草地にしろ、人が手を入れいているからだ。ロボットが農業をすれば、農地の見た目の美しさは維持されるかもしれないが、生活の匂いは伝わらない。全自動化が求められているのは働き手がいなくなったからだ。しかし、この研究は対症療法でその場しのぎのように見える。完全自動化しても人手は要る。機器を使いこなす人材の教育や故障時の修理要員など、全自動化の普及に伴う新しい仕事が生まれるはずだ。人手不足の根本原因への対処が必要だ。月を撃つような斬新な発想で研究開発に取り組むなら、工学的な機械開発だけではなく、労働や人口などの社会科学と組み合わせ、農村への定住化対策も視野に入れた広い分野の研究として進めてはどうか。若い人が居つく農村像を描いてほしい。ノラ・ジョーンズさんの歌では「あなたは月を撃とうとして、完全に失敗した」と続く。国民の期待を見定め、的を外さない研究を求めたい。 *2-4:https://www.agrinews.co.jp/p49361.html (日本農業新聞 2019年11月30日) 伸びる米粉市場 実需と結び付き強化を 米粉の消費が伸びている。品質の向上で品ぞろえが増えたことが大きい。国の後押しで輸出機運も高まる。課題は生産の安定、実需との結び付き、製粉コストの低減、魅力的な商品開発だ。有望な米粉市場を安定軌道に乗せるため、官民一体で取り組みを加速させよう。米粉新時代を開いたのは、圧倒的な品質力だ。微細粉にする高い製粉技術、加工技術の進展で、パンや菓子、麺など多彩な商品化が実現。和菓子やせんべいの原料だった従来の米粉の世界を一新した。2018年からは、日本米粉協会が、健康食材の特性を生かす「ノングルテン米粉認証制度」、消費者が選びやすいよう菓子・パン・麺用の表示をする「米粉の用途別基準」の運用を始め、普及に一役買った。アレルギー対応食材として認知度も高まり、需要量は近年、堅調に推移。農水省などによると17年度2万5000トン、18年度3万1000トン、19年度は3万6000トンを見込む。消費増で工場の稼働率が向上し、一部メーカーは小麦粉並みの製粉コストを実現している。問題は、伸びる需要に生産が追い付いていないことだ。米粉用米は、水田活用の直接支払交付金による転作支援もあり、一定に定着した。過去2年は2万8000トンで推移。19年度も同水準になる見込みだ。主食用価格が堅調で、米粉用米の生産が足踏みしている状況だ。実需側の在庫も少なく、このままでは3万トンを超す需要を満たせず、地域によっては原料確保に苦心する企業も出そうだ。有望な米粉市場に生産現場が対応できないのはもったいない。専用品種や多収品種の導入で、主食用に近い収益性を上げている産地もある。米粉用米生産の政策目標は25年度までに10万トンにすること。伸びしろはある。官民挙げ、水田フル活用による転作誘導、生産と実需の結び付きを強めるべきだ。もう一つの活路は海外市場だ。欧米では、麦に含まれるグルテン由来の疾病が社会問題となっており、「グルテンフリー市場」が急成長している。日本の米粉・関連食品の輸出は過去2年間は、約50トン、約200トン。今年は約700トンを見込む。着実に増加しているが、まだ緒に就いたばかりだ。日本の強みは、グルテン含有量「1ppm以下」という世界最高水準の「ノングルテン表示」で日本産米粉をアピールできること。だがこの表示は民間認証で、これを早急に日本農林規格(JAS)に格上げして、農水省による「お墨付き」として海外市場での有利販売につなげてほしい。併せて、混載による流通コストの低減、米粉ラーメンなど付加価値の高い加工品の開発、現地での地道な販促活動を継続すべきだ。米粉の市場性、可能性を追求することは、日本の水田を生かし、世界の健康に貢献することにつながる。 *2-5:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019091901002102.html (東京新聞 2019年9月19日) ゲノム食品、表示義務なし ルール決定、年内にも流通 消費者庁は19日、ゲノム編集技術で品種改良した農水産物の大半について、生産者や販売者らにゲノム編集食品であると表示することを義務付けないと発表した。ゲノム編集食品は特定の遺伝子を切断してつくられるが、外部から遺伝子を挿入する場合と挿入しない場合があり、現在開発が進む食品の大半は挿入しないタイプという。厚生労働省は同日、同タイプの販売について安全性審査を経ずに届け出制にすると通知。今回の消費者庁の発表で流通ルールの大枠が決まった。早ければ年内にも市場に出回る見通しだが、表示がなければゲノム編集食品かどうか分からず、消費者から不満が出るのは必至だ。 <他の地方産業> *3-1:https://www.agrinews.co.jp/p49495.html (日本農業新聞 2019年12月15日) 「森林サービス」創出 健康需要で産業化へ 林野庁 林野庁は、森林空間を活用した「森林サービス産業」の創出に乗り出した。森林空間そのものを活用し、これまでの木材生産・供給だけでなく、健康需要などを見据えて森林体験や商品開発で新たなビジネスを生み出し、山村地域に新たな雇用と収入を生み出すのが狙い。どれだけ多くの民間団体・企業の参入を促し、定着させることができるかが鍵となりそうだ。同庁は、健康志向の高まりに加えて、企業が従業員の健康管理を考える「健康経営」の考え方が広まっていることや、インバウンド(訪日外国人)需要が伸びていることに着目。「健康」「観光」「教育」の観点で森林を活用して、新たな需要を取り込むのが「森林サービス産業」の狙いだ。子育て層を対象にした森林体験、企業の研修・保養利用などを想定する。具体策を検討するため、同庁は有識者らでつくる森林サービス産業検討委員会(委員長=宮林茂幸東京農業大学教授)を設置。①エビデンス(効果)②情報共有③香イノベーション──の専門部会で議論に着手。19年度中に報告書を取りまとめ、20年度以降、モデル育成を本格化させる。香イノベーション部会では、スギやヒノキなどを精油の原料として有望視。新たな市場形成を見据え、精油の効用やアロマテラピーでの使用状況などを調査する。エビデンス部会は、森林浴などが健康に与える効果のデータを集積し、事業化を後押しする。今年度は研究成果などの情報を集める。情報共有部会では、森林サービス産業に関心を持つ企業や団体、自治体などを引き合わせるプラットフォームの創設を構想。同庁は「Forest Styleネットワーク」を発足した。12月3日時点で63の企業や団体、地方公共団体などが加入。今後、新たな事業が生まれるきっかけを生み出す交流の場としたい考えだ。同庁は「民間や自治体と協力し、モデル地域の育成を進めていく」(森林利用課)としている。 *3-2:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-851348.html (琉球新報 2019年12月1日) 沖縄へのクルーズ船の寄港、過去最多の719回予定 2019年 アジアのクルーズ市場拡大が背景 2019年の沖縄へのクルーズ船の寄港予定回数が19日現在で、過去最多を更新する719回に達することが主要5港の港湾管理者への取材で分かった。18年は529回の見込みで、来年は1年で190回の大幅増となる。那覇港が67回増、平良港が63回増、石垣港が51回増でけん引している。719回寄港すれば130万人が訪れると試算でき、入域観光客数増加に寄与しそうだ。18年は12月31日までにクルーズ船の寄港数が2回以上あるのは5港で那覇243回、中城28回、本部2回、平良144回、石垣107回。その他が計5回で過去最多の合計529回となる見込み。19年の寄港予定は那覇310回(18年比67回増)、中城43回(同15回増)、本部1回(同1回減)、平良207回(同63回増)、石垣158回(同51回増)となっている。本部を除く4港で軒並み増える予定で、記録を塗り替えることになる。県がまとめたクルーズ船の寄港回数と海路入域観光客数をみると、17年は515回の寄港で94万1900人が訪れている。1回当たり1828人が訪れた計算となる。この数値と19年のクルーズ船寄港回数を単純に掛けた場合、19年の海路入域観光客数は131万5千人になると試算される。沖縄へのクルーズ船寄港数の増加は経済成長著しいアジアでのクルーズ市場拡大が背景にあり、今後も寄港増や船舶の大型化が見込まれる。県内の主要5港では岸壁の新設、整備、改良などが実施、計画されており、受け入れ態勢整備が進んでいる。そのためクルーズ船の寄港回数は今後さらに増加すると予想される。一方、クルーズ船は台風や寄港地変更などによってキャンセルされることもあり、実際の寄港数は予定数から減少することもある。 <解説>巨大市場近接で優位/交通渋滞解消など課題 2019年の沖縄へのクルーズ船寄港予定回数が過去最多の719回に達する背景には、クルーズ市場が拡大するアジア市場に近接しているという地理的な優位性がある。クルーズ旅行は比較的安価な「カジュアルクルーズ」の増加に伴い市場が拡大しており、1週間前後の短期間の旅行商品も増えている。特に中国は市場が伸びており、30年には1千万人市場になると見込まれている。巨大市場の上海、厦門、香港などから近い沖縄への寄港が多くなっているという。実際、沖縄以外の国内でクルーズ船が多く寄港するのはいずれも九州の博多、長崎。地理的な近さが強みなのは明らかだ。県内への寄港数を見ても09年は95回だったが、この10年で7倍に急増する見込みだ。そこで国も受け入れ態勢を強化しようと、民間資金を活用した「官民連携による国際クルーズ拠点」を指定している。現在、県内では本部港と平良港が指定されており岸壁が整備されている。那覇港も同制度への応募を準備。石垣港は国の方針で岸壁を延長している。市場取り込みの準備は着々と進む。一方、大型のクルーズ船寄港は一気に数千人が港から押し寄せることになる。那覇港では3隻が同時に寄港することもある。近隣の商業施設の混雑や交通渋滞などが引き起こされ、オーバーツーリズムだと指摘する声もある。観光客、地元住民の不満も低減し、持続可能な旅行形態として定着できるか。市場拡大に向けた受け入れ態勢整備が急務となっている。 *3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191126&ng=DGKKZO52596760V21C19A1MM8000 (日経新聞 2019年11月26日) 水産資源保護へ新規制 農水省、取引に産地証明、各国と協調、乱獲抑制 水産資源の枯渇を防ぐための新たな取引規制ができる見通しになった。魚介類の水揚げ場所や出荷日を示す公的な証明書を作り、国が指定した魚や一部の輸入品を国内で取引するときに添付を求める。違法操業で証明書のない魚介類は事実上、市場で売買できなくなる。米欧が先行する流通の規制を日本も取り入れ、国際的な水産物の資源管理(総合2面きょうのことば)の実効性を高める。魚介類は新興国を中心に消費が拡大し、乱獲による資源の枯渇が懸念されている。農林水産省によると2015年時点で世界の水産資源のうち約3分の1は、このままでは減少が止められない水準まで数が減った。とれる魚が減り、日本の漁業・養殖業の生産量は18年に439万トンと、ピークだった1984年の3分の1になっている。資源の管理に向け、海を回遊するマグロやサンマなどは各国で漁獲枠の設定が進む。沿岸漁業は地域ごとに禁漁期間がある。ただ、管理をすりぬける違法操業は後を絶たない。日本でも2017年の密漁の検挙数は20年前より3割増えた。違法操業を防がなければ、資源管理の実効性は保てない。このため農水省は漁獲段階だけでなく、流通でも乱獲の防止につながる対策をとる方針だ。具体的には魚介類に採取者や水揚げ港、出荷日を記した証明書をつける。漁業協同組合の組合員や国・地方から許可を受けた事業者による適法な漁による水揚げだけが証明書を得られる。証明書がない魚介類は市場で扱えないようにする。不正を防ぐため、証明書は国の登録を受けた漁協などが出す。ICタグなどデジタル化した形式も認める。証明書を義務化する対象は、密漁のリスクが高いナマコやアワビから始める見通しだ。輸入する水産物でも、一部では相手国の証明書を添付することを義務づける方針だ。対象は今後決めるが、輸入額が大きく密漁のリスクが高いイカやサンマなどが候補となる。日本は水産物では世界3位の輸入国。密漁でとった魚介類は受け入れず、海域全体で資源を守る。農水省は関連法案を早ければ20年の通常国会に提出する。法案の成立後、2年程度かけて対象とする魚介類を定め、制度の運用を始める。先進国では輸入する魚介類に証明書を求める動きが広がっている。農水省によると、09年に始めた欧州連合(EU)は養殖を除くすべての水産品が対象で、米国と韓国も乱獲が懸念される一部の魚で採用した。各国が証明書のある魚介類しか輸出入しなくなれば、乱獲された魚介類の流通を世界的に抑えることができる。日本は米欧と連携して、国際的な資源管理の議論を主導する考えだ。漁獲制限による資源管理はルールを守らない漁が後を絶たず、守る漁業者との間で不公平感が出る。岩手県漁業協同組合連合会の担当者は「流通面での対策が講じられなければ、密漁をなくすことはできない」と話す。 *3-4:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191103-00034824-hankyoreh-kr (Yahoo 2019/11/3) イシモチ→スケソウダラ→サバ…熱い海が「国民魚」変える ●朝鮮半島「食卓の魚」変遷史 50年間で表層水温1.23度上昇 全世界の水温変化の2.5倍超え 1人当たり年間水産物消費量59キロ 7年間で60%以上増加…世界1位 温暖化・乱獲でスケソウダラの「国籍」変わる 最近2~3年間の1位はサバ 「飲み水とおかずが切れて兵士たちが動揺した。林慶業(イム・ギョンオプ)将軍がいばらの木を持ってきて水に刺しておくと、イシモチの群れがかかったのでおかずにして食べた」。西海地域では朝鮮の仁祖(インジョ)の時代の林慶業将軍をイシモチ漁の始祖とする伝説が伝えられている。西海を渡る途中、飢えた兵士たちのために釣りをしたところ、木の枝と枝の間に挟まるほどイシモチが豊富に採れたという話だ。茶山チョン・ヤギョンの兄、チョン・ヤクチョンが全羅南道新安郡黒山島(シナングン・フクサンド)に島流しになっていた時に書いた魚類学書『チャ山魚譜』(1814)を改題した詩人のソン・テクス氏の本『海を抱いた本 チャ山魚譜』(2006)にも「イシモチの鳴き声が漢陽(ハニャン、現在のソウル)まで聞こえた」とある。こうした話は文字通り「伝説」としてのみ残った。1970年代には年間3万~4万トンに達していたイシモチの漁獲量は、40年後には半分に落ちた。イシモチを塩漬けにして干して作る干物「クルビ」も、秋夕(中秋節)のギフトセットでしか見られない状況だ。流通業界では2~3年前からニベやイシモチより大きさが3倍ほどある中国産フウセイでクルビ不足を補っている。かつては「国民魚」として東海を泳ぎ回っていたスケソウダラは国籍を変えた。1970年代には年間漁獲量が最大5万トンに達していたが、2010年代に入ってからは1~9トン程度だ。最近は市場に出回るスケソウダラは90%以上がロシア産だ。学界と業界では定着性魚種ではスケソウダラの幼魚の乱獲が、回遊性魚種では水温の変化が影響しているとみている。5年間にわたりスケソウダラの幼魚の放流などの「スケソウダラ再生プロジェクト」を推進してきた海洋水産部は、今年からスケソウダラの漁獲を年間を通じて禁止した。 ●スケソウダラ沈み、サバ浮上 韓国は年間1人当たりの水産物消費量が2017年現在59.3キロで世界第1位だ。「水産大国」ノルウェー(53.3キロ)や日本(50.2キロ)も抜いた。スピードも速い。2000年には36.8キロに過ぎなかったが、60%以上も増えたことになる。その間に「国民魚」も替わった。1990年の国民1当たり1日平均消費量が最も多い水産物はスケソウダラだったが、スルメイカに交替した。最近2~3年のアンケート調査ではサバが名実共に「好きな魚」第1位だ。韓国人の食卓の魚が替わったのには、何よりも朝鮮半島周辺海域の水揚げ推移が変わった影響が大きい。スケソウダラやイシモチだけでなく、東海岸の「常連」だったサンマやハタハタも滅多に見なくなった。一方、カタクチイワシとサバは豊漁だ。1970年には5万トン程度だったカタクチイワシの漁獲量は2017年には21万トンに、サバは3万トンから21万トンに大幅に増えた。1970~80年代には年間3万~4万トンだったスルメイカも2010年代には15万トンにまで跳ね上がった。まず、地球温暖化などによる水温の変化が原因の一つに挙げられる。国立水産科学院の集計によると、朝鮮半島海域の表層水温は1968年~2018年の間に1.23度高くなった。同期間の全世界の水温変化(0.49度上昇)を上回る数値だ。同院のハン・インソン研究士は、「水温上昇時は栄養塩類の量が減り、水産生物の成長が制限され得る。繁殖と生息地の移動も影響を受ける。ただし生息地と魚種によって影響に違いが出る可能性はある」と指摘する。最近、朝鮮半島海域に暖流性魚種のサバやカタクチイワシが大量に入ってきた一方、寒流性魚種のスケソウダラやハタハタは北上した。イカは南海から東海や西海に生息地を広げており、南海岸では亜熱帯魚種が多く見られるよるになっている。クロマグロが2010年に初めて漁獲量統計の対象になったのに続き、去年の統計によれば済州沿岸に現れた魚類の42%がキンチャクダイ、タカノハダイなどの亜熱帯種であった。 ●「幼魚の乱獲を規制すべき」 急激な魚種変化を異常気象だけで説明することは難しい。中国漁船中心の攻撃的な操業や無分別な乱獲などの方が影響が大きいという指摘もある。産卵もしていない幼魚を安値で売ったり生餌に使ったりして水産資源の枯渇を引き寄せているというのだ。スケソウダラ激減のきっかけも1970年の幼魚漁獲禁止令解除だという見方が支配的だ。1976年には、スケソウダラの漁獲量の実に94%が幼魚だった。イカの漁獲量が2016年の約12万トンから昨年の4万トンあまりに急減したことをめぐっても、同院のカン・スギョン研究士は「産卵場所の低水温現象で産卵資源が減少した上、多くの漁船による乱獲まで重なったため」と分析する。昨年発行された海洋水産開発院の報告書『幼魚乱獲の実態および保護政策の研究』によると、2016年の漁獲量のうち、幼魚の割合はタチウオが69~74%、イシモチが55%、サバが41%に達した。産地価格が1万ウォン(1キロ当たり)以上にもなるほど収益性の良いイシモチなどが未成魚(幼魚)のうちに捕獲され、飼料に使われていると報告書は指摘する。さらに「ノルウェーは1971年に30センチ未満のサバの捕獲を禁止した結果、2014年には北東大西洋のサバのうち成魚の割合は89%となった。タチウオ、イシモチなどの幼魚は販売場所や違法漁獲物の取引を規制すべき」と指摘する。 ●おまえ、どこの海から来たの 所得水準が上がり西欧の水産物に対する需要が拡大することにより、輸入品目が多様になった効果もある。サケ、ズワイガニ、ロブスターなど、かつては高級飲食店でしか扱われなかった輸入水産物は、いまや大手スーパーやコンビニでも簡単に買えるようになった。韓国農水産食品流通公社の統計によると、ズワイガニの輸入額は昨年1億2675万ドルで2年前と比べ3倍ほど増加した。サケの輸入の20%を占めるトンウォン産業の関係者は「2000年代に『ウェルビーイング』の流れに乗って大衆的需要が形成された。原価負担が分散し、価格も下がった」と語る。イーマートの関係者は「エビの産地を2015年の3カ所から昨年は10カ国に増やすなど、価格の合理化を図っている」という。水産物の消費の仕方や購買経路が多様化していることも関心が集まる部分だ。大型スーパーなどからからコンビニエンスストアやオンラインに目を向ける消費者が増えている。コンビニ「GS25」の資料によれば、去年1~9月の水産物の売上げは前年同期比で26.1%増え、ロブスターやサバなどの魚介類の売上比率も2017年の8.0%から今年上半期には10.2%に増加した。同社の関係者は「手軽に料理できる食品を求める流れが続いていているとともに良質の食事を求める20~30代が増えたことで、水産物の需要も増加傾向にある」と語った。 <エネルギーの国産化と地方創成> PS(2019.12.18追加):*4-1のように、「環境保護≒不便を我慢すること」と解している人は多いが、飛行機に乗らずに長時間かけて移動する方法を選べる人は限られている。そのため、航空機燃料を水素に変更したり、航空機を電動化したりするのが合理的で、そうすると「環境保護→進歩→経済発展」にできる。その理由は、①便利さを犠牲にしない ②CO₂はじめ排気ガスを出さない ③国産化可能な燃料であるため輸入する必要がなく、エネルギー自給率も上がる ④水素を作るための電力に再生可能エネルギーを使えば、地方振興に役立つ などが挙げられる。そのため、これまで作っていなかった航空機を日本企業が作る場合に、原油由来のジェット燃料を使う航空機を作る必要はないだろう。既に、IHIとIHIエアロスペースは、*4-2のように、2012年に米ボーイング社と共同で世界初の再生型燃料電池システムを民間航空機に搭載して飛行実証することに成功しており、経産省も電動飛行機を作ろうとしている。 ![]() *4-2より 2019.1.24News24 2019.2.17朝日新聞 (図の説明:左図のように、燃料電池航空機が既にできており、中央と右の図のように電動航空機の開発も始まっているので、早く実用化すべきだ) *4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191218&ng=DGKKZO53492300Y9A211C1MM0000 (日経新聞 2019.12.18) 先進国「飛び恥」じわり、環境意識、飛行機手控え 航空会社が陸路提供 欧州など先進国を中心に飛行機の利用を手控える動きが広がり始めた。温暖化ガスの排出増加による環境負荷への関心が高まっているためで、16歳の環境活動家、グレタ・トゥンベリ氏が交通手段として飛行機を回避していることでも注目を集める。短距離の移動に鉄道の利用を勧める航空会社や温暖化ガスの排出量の少ない燃料の使用を促す例も出てきた。グレタ氏は米誌タイムの2019年の「今年の人」に選ばれた。9月にニューヨークで開催された国連気候行動サミット、12月のマドリードでの第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)にそれぞれ参加するため、ヨットや鉄道で移動した。環境負荷が比較的小さいとの判断だ。海をまたぐような長距離の移動にも飛行機の利用を避けた。「気候変動の危機が実際に起きている問題であることを示したい」との考えからだ。グレタ氏の出身国のスウェーデンには、飛行機の利用が恥だと考える「フライトシェイム(飛び恥)」という造語がある。スウェーデンの国営空港運営会社によると、1~9月の国内線の利用者数は前年同期より約8%減少した。同社は景気減速に加え、気候変動を巡る議論を要因にあげた。スイス金融大手UBSが9日発表した欧米やアジアなど8カ国の消費者を対象とした調査によると、回答者の37%が環境への影響を懸念し、過去1年間に飛行機の利用回数を減らした。ほかに25%が「利用減を検討している」と回答した。回答者を欧米4カ国に限れば、利用回数を減らした割合は42%で、5月調査(21%)の2倍になった。国際航空運送協会(IATA)によると、18年の航空業界の二酸化炭素(CO2)排出量は約9億トンで、世界全体の約2%に相当した。米国の非営利団体、国際クリーン交通委員会(ICCT)によると、民間の飛行機のCO2排出量は過去5年で32%増えた。年平均では5.7%増で、国際民間航空機関(ICAO)の予測(約3.3%)よりもペースは速い。先進国発の飛行機のCO2排出量が全体の約6割を占める。一部の航空会社は対策を始めた。KLMオランダ航空は鉄道会社と連携し、20年3月からアムステルダムとブリュッセル間の便数を減らし、代わりに鉄道での移動を提供する。米ユナイテッド航空は10月末、CO2削減技術やバイオ燃料開発に4000万ドル(約43億円)投資すると発表した。フランスは20年、同国発の航空券を対象に環境保全のためのエコ課税を導入する方針だ。新たに得られる税収は鉄道などほかの輸送手段の強化にあてる。ドイツも20年、航空券への課税率を引き上げる。米西部カリフォルニア州は19年、輸送用燃料に適用する排出量取引制度を航空燃料にも広げた。UBSは、飛行機の利用を恥と思う動きが「勢いを増している」と指摘する。気候への影響に対する意識が高まれば、欧州における20年の飛行機の利用者の伸び率は19年の前年比約4.8%から3.4%に低下すると推測する。「飛び恥」の意識が急速に高まった場合は、飛行機の利用者の伸び率が前年より3.5%減る可能性があるとも試算している。英ビジネス・エネルギー・産業戦略省によると、英国における国内便の乗客1人当たりのCO2排出量は1キロメートル当たり133グラムと、長距離便(102グラム)や国内鉄道(41グラム)に比べて多い。 *4-2:https://response.jp/article/2012/10/05/182565.html (Response 2012年10月5日) IHI、世界初となる再生型燃料電池システムの民間航空機飛行実証に成功 IHIとIHIエアロスペースは、米ボーイング社と共同で再生型燃料電池システムを民間航空機に搭載し、飛行実証することに成功した。再生型燃料電池システムの飛行実証は、世界初の試み。再生型燃料電池は、充電可能な燃料電池で、エンジンからは独立して電力を供給することができる。また副産物は水のみであるため、省エネルギー化、二酸化炭素排出削減を可能とし、航空機の環境負荷を低減する。今回の飛行実証は、ボーイング社の環境対応技術実証を目的としたecoDemonstrator計画の一環として、米シアトル近郊においてアメリカン・エアラインのボーイング737型機を用いて実施。フライト試験では、航空機の離陸前から高度上昇中において、燃料電池からの発電による電力供給を行い、巡航飛行時に航空機の電源を用いて充電を実施。その後、再度、発電、充電、発電のサイクルを行うことに成功している。IHIは、今回得られた経験をもとに、再生型燃料電池の小型化、大出力化の改良を進め、航空機の低燃費及び環境負荷低減に寄与する民間航空機用補助電源の製品化に向けた検討を実施していく。 <大学入試共通テストでの国語・数学の記述式問題について> PS(2019.12.19追加):*5-1のように、50万人の受験生の採点をしなければならない大学入試共通テストへの国語・数学の記述式導入はしない方がよいと私も思うが、その理由は、①一人の採点者が採点してもブレが生じる記述式を50万人規模で多様な採点者が行えば、入試の質や公平性が確保できず ②そもそも思考力の育成には、学校だけでなく家庭やメディアなど一般社会の大人が論理的な議論を見せておくことが必要であり ③知識や科学に基づかない議論は無意味であるため、高卒段階では知識や理解力を測る方が重要であること などである。 しかし、国語・数学の記述式問題がないとなると、入試改革が漂流状態に陥ったとする論調も多く、*5-2のように、「情報をつなぎ合わせただけの文章を書く」「他の学生と同じような論点を書く」「検索で集めた情報の中から自分の意見を探す」などとも書かれてもいる。しかし、「ジョークを2つ示して、共通する笑いどころを考えて書かせる」よりも、インターネットで情報を集めて自分の意見をまとめた方がずっと高尚なものができそうであり、思考力・表現力・批評力は内容があって初めて意味があるものだ。従って、知識の活用力は大学入試で測るよりも、大学卒業後に持っておくべきものだと、私は考える。 なお、私がこのブログで記載している文章について、「新聞等の情報をつなぎ合わせただけの文章を書いた」と思う人がいたとすれば、それは甘すぎるし、女性を過小評価している。何故なら、これらの文章は、大学までに学んだ知識、公認会計士・税理士として持っている知識・経験・監査手法、国会議員として社会調査を兼ねて地元を廻りながら集めた問題点などを総合的に考慮して書いたもので、添付した新聞記事等は、情報の比較やup-date・証拠資料などとして使っているにすぎないからだ。このように、記述式の評価は採点者によって異なり、採点者は自分の知識・経験・想像力の範囲内でしか採点できず、最高でも7~8割しかとれないのである。 *5-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191208&ng=DGKKZO53091800X01C19A2EA1000 (日経新聞社説 2019.12.8) 記述式入試は抜本的に見直せ 何のための入試改革だったのか。原点に立ち返り、ゼロベースから仕切り直す時だ。政府・与党は、来年度の大学入試共通テストで導入予定の国語と数学の記述式問題を延期する方向で検討を始めた。受験生の混乱を招いた行政の責任は重い。記述式では、50万人規模の採点を民間事業者が担う。採点者には学生バイトも加わる。今国会の審議で文部科学省は、採点の信頼性をいかに確保するかについて説得力ある解決策を示せなかった。実施にこだわる同省は国立大に対し、国語の記述式を2次試験の受験者数を絞る「二段階選抜」に利用しないよう促す。これは、公平な採点が難しいことを認めたに等しい。不信感は募る一方で、政権への批判を恐れる与党が試合中断のタオルを投げ込んだ格好だ。一方、記述式を合否判定に使う予定の国公私立大は全体の半数にとどまった。こうした状況で来年度からの実施を急ぐ意味は実質的に失われた。導入を見送り、各大学が個別試験で受験生の思考力・表現力を測る独自の記述問題を充実するほうが合理的である。新テストでは、英語民間試験でも制度の不備で導入を見送った。入試改革は破綻しつつある。なぜこのような事態に至ったのか。真摯な検証が欠かせない。当初の構想は、一発勝負をやめて、複数回受験が可能な「到達度試験」への転換を目指した。急速な少子化により、大量の受験生を1点刻みでふるい落とす従来型試験の意味が薄れたからだ。共通テストはスリム化する一方、各大学が記述式を含む個別試験を拡充し、学力を丁寧に判定する改革を志向した。しかし、複数回実施は困難と判断。民間の協力で、英語力や思考力を問う方向にカジを切った経緯がある。記述式のみ大まかな到達度で評価し、残りはマーク式の1点刻みで選抜する。矛盾を抱えた新テストの構造自体を抜本的に見直す必要がある。その場しのぎの延期はさらなる混迷と不信を招く。 *5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191219&ng=DGKKZO53509930Y9A211C1CR8000 (日経新聞 2019.12.19) 思考力底上げ 重い課題 共通テスト、記述式見送り、漂流 大学入試改革(上) 2020年度に始まる大学入学共通テストの二本柱だった英語民間試験と国語、数学の記述式問題が消え、足かけ6年にわたった入試改革は先が見えない漂流状態に陥った。混乱の過程で浮かんだ日本の入試制度の課題とその解を探る。情報をつなぎ合わせただけの文章、ほかの多くの学生と同じような論点――。学生にリポートや論文の書き方を教える早稲田大ライティング・センターの佐渡島紗織教授(国語教育)は、学生の文章のそんな箇所に気づくことが少なくない。インターネットで情報が簡単に入手できる現代。「検索で集めた情報の中から自分の意見を探すような傾向もみられる」。このため指導の場面では、ネット上に答えがなさそうな課題を出す。例えばジョークを2つ示して「共通する笑いどころ」を考えて書かせる、といった具合だ。「考える学生を育てることに意識的に取り組む必要がある」と佐渡島教授。ベテランの高校教員からも「この10年間で生徒の思考力が急激に落ちた」「調べて発表するのは得意だが、自分の考えを聞くと答えられない」といった声が上がる。日本の10代の思考力に、黄信号がともっている。文部科学省は共通テストへの記述式問題の導入を、こうした現状を打開する切り札に位置づけた。答えを選択肢から選ぶのではなく、自分の力で書くことで思考力や表現力を測る――。「小中学校は学習指導要領の改訂を経て表現力などを重視する授業に変わっているのに、高校は大学入試に縛られて指導を改善できていない」という同省などの不満もあった。その理念は現実の壁に阻まれた。当初「最大300字程度」だった記述の上限は検討が進むにつれ、「80~120字程度」にしぼんだ。50万人規模の答案を約20日間で採点できるようにするためだが、それでも公平性への疑念を払拭できず、実施まで1年の土壇場で見送りに追い込まれた。「小中学校は指導改善の成果が出ている」という改革の前提も揺らぐ。経済協力開発機構(OECD)の18年の学習到達度調査(PISA)で、日本の15歳の読解力は参加国・地域中15位と過去最低の順位に沈んだ。特に記述式問題の正答率が落ち込み、批評的に考える力の弱さなどが指摘された。思考力の底上げは待ったなしだ。現場は模索する。大分県教育委員会は15年度から「深い学び研究会」と呼ぶ事業を始めた。大きな課題を共同作業で考え、答えを導く「知識構成型ジグソー法」という対話型学習を広め、学びの深化を目指す。6月、同県立大分鶴崎高で開かれた現代文の研究授業では3年生の生徒が哲学者の西谷修さんの評論を題材に「他者との関係があることで、人間が一つの存在として成り立つ理由は何か」をジグソー法で考えた。指導した佐藤秀信教諭は「これからの社会を生きていく力を育むには、本質的な問いに向き合う学習が欠かせない」と強調する。情報化やグローバル化が急速に進み、高校教育も変わる中で、大学入試が旧態依然の暗記中心型であってよいわけがない。知識の活用力や、自分の考えを伝える力を測るうえで記述式問題は有力な手段だが、私立大は実施が難しい大学も多い。次代に必要な学力をどう問うか。今後の制度設計の重い課題だ。 <地方で作れるエネルギー> PS(2019年12月20、23、25、27日、2020年1月5日追加):*6-1のように、COP25は「パリ協定」の実施ルール合意を見送って閉幕したそうだが、国を先進国と途上国に分けて「他国(“途上国”)への“技術支援”で削減できた温室効果ガスの排出量を自国の削減分として計算する」などという小賢しいルールは、“先進国”自体のCO₂排出量を減らすわけではないため、合意しなくてよかったと思う。それより、どの国も実際にCO₂排出量を減らす必要があり、それは可能で、そうした方が日本の地域振興にも役立つ。 例えば、*6-2の福岡県八女市の地域新電力会社「やめエネルギー」のように、地域の再エネを使って発電し、大手電力会社に支払っていた年間約53億円の電気料金の一部を地元で廻したり、もっと積極的にやるとすれば発電した電力を他の地域に売ったり、豊富な水資源を使って水素と酸素を作ったりなど、エネルギーを電力と水素に変えさえすれば、環境と両立させながら地域を潤すことが可能なのだ。 なお、*6-3のように、茨城大学、茨城県農業総合センターなどの研究グループによると、地球温暖化の影響で2040年代には「コシヒカリ」の白未熟粒が全国で2010年代の2倍に増え、その経済損失が351~442億円と見積もられるそうだが、これは佐賀県では既に起こって解決済のことで、高温耐性品種で特A評価のヒノヒカリやサガビヨリなどが開発済である。 「少子高齢化で支え手が不足するから、消費税増税と痛みの分配という難題と向き合うことが社会保障改革である」とする記載は、*6-4はじめ、財務省主導でメディアによってしばしば行われる。しかし、この議論に欠けているのは、①高齢者の生活に対する配慮 ②少子化した理由の正確な分析 ③公会計の導入による国の無駄遣いの排除 ④財源確保の手段に関する工夫 だ。このうち、①については、今回の消費税増税は反対が少なかったが、高齢者は何も言わずに(他に方法がないため)節約するだけであり、それによって財・サービスが売れなくなるのは当然で、実際に生活に困っている人は多いのだ。また、②のように、少子化したことがいけないかのような批判も多いが、日本国憲法で男女平等になった戦後も女性が仕事と子育てを両立できる社会を作らず、憲法施行から65年以上経過した今でも保育所や学童保育が足りず、教育に金がかかるシステムにしておきながら、何でも国民(特に女性)の責任であるかのように言って国民負担を増やそうとするのは不誠実で安易だ。そして、③については、日本は景気対策と称する無駄遣いが多いが、そもそも無駄遣いとそうでないものを区別して、国有財産をしっかり管理できる会計すら採用していないのが大きな問題なのである。さらに、④については、外国に高額の資源代金を払うことが目的のようなエネルギー政策をとって国民を貧しくさせながら、工夫もなくあちこちで金をばら撒いているのを改めればよいのだ。 なお、*6-5のように、唐津市馬渡島と平戸市的山あづち大島周辺の海に、東京都の民間企業が大規模な洋上風力発電を設置する計画があり、最大65基の風力発電機を設置して発電出力61万7500kwを見込むそうだ。私は、遮るものがないので安定した風が吹き、漁業以外の産業がないため地元の人も積極的であることから、離島が風力発電基地になるのはよいが、地元の会社がそれを行えば電力料金が地元で廻るので、さらによいと思う。また、景観や漁業との両立のためには、よくある風力発電機を立てるのではなく、環境影響評価の段階で鳥などの野生動物を巻き込まず、むしろ漁礁となったり養殖と併用させたりできる風力発電機を指定した方がよいため、漁協も出資してお互いに工夫しあう事業主体にしたらどうかと考える。 このような中、*6-6、*6-7のように、政府は、中東海域での情報収集態勢を強化するためとして海上自衛隊を中東に派遣することを閣議決定し、不測の事態(??)に日本船舶の護衛に当たり、武器使用も排除しないそうだ。しかし、エネルギーをいつまでも中東から輸入する高い石油に依存していることも化石の名にふさわしく、「調査・研究」名目なら国会の承認なく自衛隊を海外に派遣できるというのは都合よく拡大解釈しすぎである。さらに、日本の船舶を海賊等から護衛すべきは、日本の自衛隊ではなく、その海域を領有する国の海上保安庁であるため、日本はそのような無駄遣いで負の投資をする金があるのなら、速やかに必要な送電線を敷いたり、レアメタルを採掘したりした方が未来のためにプラスの投資になるのである。 ドイツでは、*6-8のように、太陽光・風力などの再エネ発電シェアが、2019年には前年から5.4ポイント上昇して46%となり、発電量に占める再エネ比率が化石燃料を上回ったそうだ。原子力発電所は海を温める上、事故時は化石燃料よりも深刻な公害をもたらすためお薦めでないが、自動車等の電動化とあいまって、再エネ発電によるクリーンなエネルギー社会を早く作ってもらいたいものである。 ![]() (図の説明:左の2つは、よくある風力発電機。右から2番目は大型の風レンズ風車、1番右は、カーボンファイバーを使った風レンズ風車が養殖施設に併設されている様子だ。右の2つがお薦めで、さらに発電量が増したり、鳥が飛びこまない工夫があったりすればよいと思う) *6-1:https://www.agrinews.co.jp/p49506.html (日本農業新聞 2019年12月17日) 温室ガス削減強化 世界が協調し踏み出せ 地球温暖化の対策を話し合う国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議「COP25」は、「パリ協定」の実施ルールの合意を見送って閉幕した。異常気象による災害が日本を含め世界で頻発している。各国は早期に合意し、二酸化炭素(CO2)をはじめ温室効果ガスの削減強化に協調して踏み出すべきだ。世界の温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す「パリ協定」は2015年に採択され、20年に始まる。運用ルールは昨年のCOP24でほとんど決まっており、今回の合意の見送りが与える影響は少ないとの楽観的な見方もある。しかし、完全な形で合意できなかったことは国際協調のきしみをうかがわせた。今回合意を目指したのは、途上国などへの技術支援で削減できた温室効果ガスの排出量を自国の削減分として計算するルール。実効力を高めるものとして期待された。ところが両方の国で二重計上しないルールを巡って難航。自国の実績が減らされることを懸念するブラジルやインドなどが反対し、合意は来年以降に先送りされた。世界最先端水準の削減技術を持つ日本は、東南アジアなどへの技術支援で温室効果ガスの削減に貢献できるはずだ。政府は、早期の合意に向けた合意形成に全力を挙げるべきだ。世界の環境団体でつくる「気候行動ネットワーク」は、地球温暖化対策に後ろ向きな国に贈る「化石賞」に日本を選んだ。石炭火力発電の利用にこだわる政府の方針を批判したものだ。不名誉で遺憾である。政府は、環境に優しいエネルギーに転換する姿勢を示すべきだ。世界の科学者などでつくる、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の特別報告書は、世界の平均気温は17年時点で産業革命前に比べおよそ1度上昇しており、「早ければ2030年には1・5度上昇し、異常気象がさらに増加する」とした。国連環境計画(UNEP)の報告書でも、世界の温室効果ガスの排出が今のペースで進めば、「破壊的な影響」が出ると警告した。削減のスピードを上げなければならない。国連のグテレス事務総長は、9月の温暖化対策サミットでこれまで以上の対策を取るように各国を促した。しかし、来年再提出することになっている削減目標の引き上げを表明した国は、80カ国ほどにとどまる。排出量が多い中国やインド、日本などの主要国の新たな削減への取り組みが鈍い。米国は、「パリ協定」からの離脱を通告したままだ。地球温暖化は世界の食料生産にも甚大な被害を与える。危機感を強めなければならない。今回の会議では、温室効果ガス削減目標の引き上げを各国に促す文言が成果文書に盛り込まれた。義務付けは見送ったとはいえ、各国は足並みをそろえて取り組むべきだ。日本は率先して目標を引き上げ、削減強化の世界的機運を高める必要がある。 *6-2:http://qbiz.jp/article/135441/1/ (西日本新聞 2018年6月10日) 電力料金地元で循環 事業開始から1年 「やめエネルギー」社長 本村勇一郎さん(40) 子育て支援メニュー構想も 福岡県八女市の地域新電力会社「やめエネルギー」が昨年5月に事業を開始してから1年。「電気料金として地域外に流れていた資金を地元で循環させる」ことを目的に、広川町を含む八女地域の73社の出資で設立された。本村勇一郎社長(40)に経営の現状、今後の事業展開について聞いた。 −この1年を振り返って。 「事業所を中心に既存の電力会社から切り替えをお願いして回りましたが、最初は私たちの取り組みを知ってもらう啓発活動のようなものでした。その中で理解をいただいて契約数も少しずつ増えていきました」 −小売り契約数は250件に達した。 「『やめのでんき』のブランド名で販売していますが、茶業、林業、ちょうちんや仏壇といった伝統工芸、酒蔵など八女ならではの事業者の方も契約を結んでくれました。契約容量も約5メガワットまで伸び、近く採算のめどが立ちそうです。当初、みやま市の新電力会社『みやまスマートエネルギー』に担ってもらっていた電力供給も、今年5月からは自社でしています」 −あらためて会社設立の目的は。 「八女市全体で年間約53億円の電気料金を大手電力会社などに支払っていますが、これまでそのお金は地元には残らなかった。電力自由化をきっかけに一部でも地域に残せないか、それを循環させ、八女を潤すことができないかという思いが私たちの原点です」。(以下略) *6-3:https://www.agrinews.co.jp/p49536.html (日本農業新聞 2019年12月20日)温暖化続けば― コシ白未熟粒倍増 年間損失442億円 茨城大学など2040年代予測 茨城大学、茨城県農業総合センターなどの研究グループは19日、地球温暖化の影響で2040年代には、米「コシヒカリ」の白未熟粒が全国で10年代の2倍に増える予測を発表した。これまでのペースで温室効果ガスの排出が増え続けた場合、21世紀末に気温が4度上昇し、40年代に全国の平均白未熟粒発生率は12・6%(10年代は6・2%)。経済損失は1年間で442億円で、10年代の5・15倍と推計した。高温耐性品種の開発など、長期的な戦略が求められる。白未熟粒は登熟期の高温で多発し、米の検査等級が下がるため農家収入が減る。研究グループは、これまで明らかになっていなかった発生率の増え方や経済損失を、主要品種である「コシヒカリ」で日本全国を1キロ四方ごとに区切って予測した。温室効果ガスの排出量は、パリ協定の目標量に抑えられた場合と、これまでのペースで増え続けた場合の二つの想定に基づいて行った。全国の白未熟粒発生率の平均は、パリ協定の目標量に抑えた場合(10年代は7・1%)でも、40年代に10・9%に増えることが分かった。これは10年代の約1・5倍に相当する。発生率が高い地域は、沿岸の平野部から広がり、偏りが予想される。さらに2等米以下の水田面積の割合は、40年代には低くて26・2%、高ければ32・9%と推定した。2等米の発生が増え年間の経済損失は低くて351億円、高ければ442億円と見積もった。同大学農学部の増冨祐司准教授は「温暖化へ長期的な戦略を立てるとともに、高温耐性品種の開発・導入が重要。同時に各地域で実行可能な対策を検討・確立・実施する必要がある」と警鐘を鳴らす。 *6-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019122002000138.html (東京新聞社説 2019年12月20日) 社会保障改革 難題と向き合わぬのか 政府の全世代型社会保障検討会議が中間報告をまとめた。政権主導の改革を担うはずだが、その推進力は心もとない。何より財源確保をはじめ負担の分かち合いという難題に向き合っていない。将来を見据え全世代が安心を得られる制度へのつくり直しができるのか、甚だ疑問だ。「人生百年時代の到来を見据えながら」「社会保障全般にわたる持続可能な改革を検討してきた」。報告書はそううたっている。だが、持続する制度の実現には、必要な財源をどう手当てするのか、その議論が欠かせない。なぜなら、今後直面する大きな課題が、高齢者数がピークを迎え、財源不足と介護などの人材不足が深刻化する二〇四〇年ごろに向けた制度の再構築だからだ。人口減の中で、これまでのように現役世代が保険料で支える力は弱まっている。だから、税財源の根本的な見直しという難題に今から取り組まねば間に合わないのではないか。政権が政治主導で検討会議を設置したのなら、四〇年を見据えた増税など「痛みの分配」こそ果敢に議論すべきだった。安倍晋三首相は消費税率の10%超への引き上げ議論を現政権では封印した。ならば、「将来の安心」を次世代に渡すための財源確保策を具体的に示すべきだろう。今回の改革案は雇用、年金、医療、介護の四分野だが、対策の射程は団塊世代が七十五歳を超え医療や介護ニーズが高まる二五年までだ。しかも、年金では厚生年金の適用拡大の対象となる企業規模の撤廃は盛り込まれなかった。医療の七十五歳以上の自己負担の引き上げもどこまで対象を広げるのか不明だ。業界や与党の反発から踏み込み不足の感は否めない。首相の言う「全世代型」とは、高齢者に偏っている給付を現役世代にも振り向けることのはずだ。だが、肝心の子育て支援策が見当たらない。一九年の出生数は想定より早く九十万人を下回りそうだ。実効性ある支援がなければ少子化を止められまい。気になる点がまだある。制度は「大きなリスク」に備える役割だという。小さいリスクは自己責任でという意味か。リスクの大小を誰が判断するのかも含め丁寧な説明が要る。どれだけの負担を引き受ければ納得できる給付を得られるのか、それを知りたい。政府は、その将来像を早く示すべきだ。 *6-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/470024 (佐賀新聞 2019/12/25) 唐津の馬渡島周辺に洋上風力発電計画 東京の企業が県に説明、最大65基設置 佐賀県唐津市の馬渡まだら島と長崎県平戸市の的山あづち大島周辺の海に、大規模な洋上風力発電を設置する計画があることが分かった。東京都の民間企業が計画し、最大65基の風力発電機を設け、総発電出力は61万7500キロワットを見込む。国内では実用例が少ない、海底に固定しない「浮体式」の発電機も導入する見通し。今後は2028年の運転開始を目標に、工事に必要な環境影響評価(アセスメント)への対応を進める。24日に県庁であった県環境影響評価審査会で、実質的な事業主体である再生可能エネルギーの発電事業会社「INFLUX」(インフラックス、東京都)が計画の概要を説明した。洋上風力発電機を設置する想定区域は、馬渡島と的山大島の周辺と中間の海域約1万9546ヘクタール。平均風速が毎秒7・63メートルと状況がよく、水深80メートル以内の比較的浅い区域を抽出した。東松浦郡玄海町の絶景ポイント「浜野浦の棚田」からの景観にも配慮するという。1基当たり9500~1万2千キロワットの風力発電機を最大65基設置する計画で、水深50メートル以内は海底に固定する「着床式」、50メートル以上は「浮体式」を採用する予定。アセスを経て、25年の着工、28年の運転開始を目指す。総事業費は4200~4500億円。今後は地元との調整を進め、渡り鳥など生態系への影響も詳しく調べる。インフラックスの担当者は「事業による環境への影響はあると思われるが、風車の配置などを考慮し、できる限り低減する。地元にも丁寧に説明したい」と話す。県内では同じ会社が唐津市の神集かしわ島近海に、大規模な洋上風力発電設備を設置する計画があり、別の事業者も唐津市肥前町の向島むくしま沿岸に数基の洋上風力発電を設置する計画がある。 *6-6:https://www.sankei.com/politics/news/191027/plt1910270009-n1.html (産経新聞 2019.10.27) 自衛隊中東派遣、ホルムズ海峡排除せず どうなる武器使用 政府は、緊張が高まっている中東海域での情報収集態勢を強化するため、早ければ年明けに自衛隊を独自派遣する方針だ。ただ、派遣の方法や法的整合性の検討、部隊への教育訓練の実施期間を踏まえると来春にずれ込む可能性がある。国家安全保障局を中心に外務省、防衛省などで活動場所や時期の調整を進めている。政府内には「与野党から反対や慎重な意見が相次いでいる。3カ月後(年明け)というのは難しいのではないか」(防衛省幹部)との声もある。自衛隊派遣の検討を具体化したのは、サウジアラビアの石油施設への攻撃、イラン国営会社所有のタンカーの爆発など情勢が緊迫化する中、石油輸入を中東に依存する日本が主体的に情報収集に関わらざるを得なくなったからだ。得た情報は米国主導の有志連合構想に加わる国などに提供する方向で調整している。菅義偉(すが・よしひで)官房長官は18日の記者会見で、派遣先として「オマーン湾」「アラビア海北部」「バべルマンデブ海峡東側」を中心に検討すると発表。事態が最も緊迫し、情報収集の必要性が高いホルムズ海峡には言及しなかった。河野太郎防衛相は25日の記者会見で「中東地域のどこかを特筆して排除していない」と述べ、ホルムズ海峡で活動する可能性も排除せずに検討する考えを示した。 ◇ 政府は自衛隊の中東派遣の具体的な方法について、海上自衛隊の護衛艦1隻を新たに派遣する案を軸に検討している。すでに中東近隣で海賊対処の任務についている海自のP3C哨戒機2機のうち1機の任務を今回の情報収集に変更することも選択肢に入る。防衛省の統合幕僚監部の検討チームでは、さまざまな事態を想定しながら必要な装備などについてケーススタディーを進めている。河野太郎防衛相は25日の記者会見で「新規の船(護衛艦)の派遣と、ジブチを拠点とするP3C哨戒機や護衛艦の活用も検討対象にしている」と説明した。すでにソマリア沖アデン湾での海賊対処のため、護衛艦1隻とP3C哨戒機2機がアフリカ東部のジブチを拠点に他国と連携して活動している。ジブチは情報収集を目的とする今回の派遣候補地に近い。このため、日本から護衛艦1隻を追加派遣して計2隻態勢とすれば、「1隻は既存の海賊対処を継続し、もう1隻は新たな情報収集」という2つの任務の両立が可能となる。海上自衛隊が保有する護衛艦は48隻で、能力や装備が今回の任務に適しているのは20隻余り。中国の海洋進出が強まる中、「東シナ海などに展開する護衛艦を減らして警戒監視を弱めるわけにいかない。現場のやりくりに余裕はない」(自衛隊幹部)と不安視する向きもある。ただ、海賊対処部隊は平成28年、海賊事案の減少に伴い2隻態勢だったのを1隻に減らした。防衛省関係者は「『もともと2隻だろう』といわれれば、その通りだ」と語る。一方、派遣済みのP3C哨戒機2機のうち1機を海賊対処から情報収集に転用する場合、活動場所はバべルマンデブ海峡東側の公海の上空になる公算が大きい。オマーン湾はジブチから2千キロ余り離れており、所要時間や航続距離を考えると往復するだけでほぼ終わってしまうからだ。今回の派遣は、防衛省設置法で定められる省の担当業務「調査・研究」を法的根拠としている。常日頃の日本周辺海域での警戒・監視の根拠規定にもなっている。つまり、中東派遣は通常の任務の延長線上に位置づけられる。正当防衛以外での武器使用はできず、日本関係船舶を武器を使用して護衛することは法的に難しい。 *6-7:https://www.jiji.com/jc/article?k=2019122700270&g=soc (時事 2019年12月27日) 官邸主導の自衛隊派遣、拡大する恐れ 中東シーレーン安全確保 中東に派遣される海上自衛隊は、不測の事態には日本船舶の護衛に当たり、武器使用も排除されない。本来なら立法措置を講じるべきだが、国会承認の必要がない防衛省設置法の「調査・研究」が派遣根拠になっている。国会のチェック機能が働かず、首相官邸が主導する形の海外派遣が今後、なし崩しに広がっていく恐れがある。調査・研究は学術的なイメージもあるが、「情報収集」と読み替えた方が分かりやすい。防衛相の命令で自衛隊を運用でき、日本近海での日常的な警戒監視活動の根拠になっている。地理的な制約がないとはいえ、中東の緊迫した海域で長期間、実任務に就く活動の根拠に調査・研究を用いるのは、拡大解釈と言わざるを得ない。調査・研究に基づく海外派遣の先例には、2001年の米同時テロ後、米艦などへの後方支援活動に先立ち、インド洋で護衛艦が情報収集に当たったケースがある。ただ、当時の派遣は旧テロ対策特別措置法の成立後で、準備を目的にしたものだった。今回、特措法は制定されず、テロ対策特措法に明記されたような国会承認の手続きは踏まれない。日本船舶を護衛する場合の海上警備行動への任務の切り替えも閣議決定で完結し、国民を代表する国会には結果を報告するにすぎない。首相官邸の裁量で実力部隊の自衛隊を海外で運用することが可能で、シビリアンコントロール(文民統制)や情報開示の面で大きな問題をはらんでいる。 *6-8:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20200104&ng=DGKKZO54032220U0A100C2NNE000 (佐賀新聞 2020.1.4) 独、再生エネ発電が逆転、昨年46% 化石燃料上回る ドイツの発電量に占める再生可能エネルギーの比率が2019年に初めて化石燃料を逆転した。太陽光や風力などの再生エネの発電シェアは18年から5.4ポイント上昇し、46%に達した。石炭などの化石燃料は約40%だった。英国でも原子力を含めた二酸化炭素(CO2)排出ゼロの電源が初めて化石燃料を上回り、欧州の脱炭素を裏付ける結果となった。独フラウンホーファー研究機構太陽エネルギー研究所(ISE)が2日、ドイツの19年の純発電量をまとめた。企業の自家発電は含まない。1年間の発電量5155億6千万キロワット時(515.56テラワット時)のうち24.6%を風力が占め、最大の電源となった。発電量は18年比16%増え、シェアは4.2ポイント上昇した。太陽光のシェアは0.6ポイント上がり9.0%だった。バイオマスと水力もそれぞれシェアを伸ばし、再生エネ全体で237テラワット時となり、化石燃料の207テラワット時を上回った。化石燃料では品質の悪い褐炭が4.4ポイント減、石炭が4.5ポイント減とそれぞれ大きくシェアを落とした。発電量でもそれぞれ22.3%、32.8%減った。天然ガスはシェアが3.1ポイント上昇し、10.5%、22年までに運転をすべて停止する原子力は0.5ポイント増の13.8%だった。フラウンホーファーISEは、再生エネの逆転の理由について「発電費用の安い再生エネの拡大で、欧州排出量取引制度(EU-ETS)の排出枠価格が上昇し、CO2排出の多い褐炭などの発電では利益が出なくなっている」と指摘する。英米ナショナル・グリッドによると、英国では19年に風力・太陽光・水力・原子力を合わせたCO2排出ゼロの発電量シェアが48.5%となり、化石燃料の43.0%を初めて上回った。欧州連合(EU)は19年12月、2050年に域内のCO2の純排出をゼロにする目標で合意した。自動車などの電動化が柱のひとつで、動力となる電気を生み出す発電の脱炭素が実現のカギを握っている。 <多様な人が考えれば、地方創生も可能> PS(2019.12.22追加):*7-1に、2018年に関東・関西にある主要6空港以外の地方空港から入国した訪日客は、前年比11.7%増の758万人と入国者数全体の25.2%に達し、客数は2008年の5.5倍になったと書かれている。しかし、福岡の人が欧州に行くには関東・関西の空港まで来て出国するのではなく、福岡空港で出国してソウル空港に行った方が飛距離が短く、乗り換えも便利なのである。つまり、福岡空港・仙台空港・千歳空港などは既にその地域の主要空港であるため、成田、羽田、中部、大阪、関西、神戸の主要6空港を除く57空港を地方空港と位置付けるのは東京目線だと思う。また、佐賀空港は九州佐賀国際空港と名前を変更して海外路線を開拓し、10年間で入国訪日客が70倍以上になったのである。そして、乗客にとっては各地の空港が網の目のように結ばれている方が便利だ。 政府は、*7-2のように、「まち・ひと・しごと創生会議」を開き、2020年度から5年間の第2期地方創生総合戦略を了承したそうだが、その内容は、①地方への移住・定着の促進 ②関係人口の創出 ③2024年度までの東京圏への一極集中是正 ④多様な人材の活躍を目標に据えてJAの参画も強調 などだそうだ。しかし、①には、都市と賃金格差のあまりない仕事の存在が不可欠で、地方の製造業・農林漁業の生産性向上が必要になる。また、③の東京圏への一極集中是正は、過密で狭すぎない住居で暮らせるKeyだが、実行には地方のインフラ・産業・教育・文化の向上が必要で、②④や第1期で行った事業の効果に関する検証が重要だ。 *7-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191222&ng=DGKKZO53672170R21C19A2MM8000 (日経新聞 2019.12.22) 空からの地方創生(上) 訪日客は地方直行、25%が主要6空港以外へ 西日本の伸び顕著 インバウンド(訪日外国人)の玄関口として地方空港(総合2面きょうのことば)が存在感を増している。2018年に成田や関西など主要6空港以外の地方空港から入国した訪日客は前年比11.7%増の758万人と入国者数全体の25.2%に達した。客数は08年の5.5倍となった。自治体の誘致などで直行便が増え、西日本の空港で伸びが目立つ。韓国や中国など東アジアからが中心だが、欧州便が就航する動きも出ている。16日午前9時すぎ、フィンランド航空の定期便の初便がヘルシンキから新千歳空港に着いた。同国の男性プログラマー(35)は来日17回目だが北海道は初めて。「友人が留学したことがあり来てみたかった」と話す。新千歳には同日、オーストラリアのカンタス航空も就航。タイからは18年に道内の空港を通じ10年前の約220倍の14万人が入国し、観光地は国際色を増す。全国の空港で入国した訪日客は2932万人と10年で3.5倍。地方空港の伸びはそれを上回る。国土交通省「空港管理状況」や法務省「出入国管理統計」などから空港ごとの利用者や入国者を集計。08年以降に訪日客が入国した63空港から成田、羽田、中部、大阪、関西、神戸の主要6空港を除く57空港を「地方空港」として独自に分析した。入国訪日客が最も伸びたのは山形空港。08年の2人が18年に6550人に膨らんだ。台湾からのチャーター便が18年度に123便と4年間で9倍以上増えた。山形県が航空会社の着陸料減免や旅行会社への助成などで支援し、山形を起点に東北の食や温泉を楽しむツアーが人気という。18年の入国訪日客は福岡の241万人を筆頭に17空港が5万人を上回り、うち11空港が西日本だ。東京や京都など「ゴールデンルート」以外を見たいという訪日リピーターを集める。政府も点から線へ訪日客の周遊を誘おうと自治体の広域連携を支援する。佐賀空港は10年間で入国訪日客が70倍以上。18年度のチャーター便は177便と地方空港では4位だった。佐賀県も着陸料などの優遇で訪日客の観光を促し、年間100億円規模の経済効果を見込む。足元での韓国便運休は痛手だが、中国の西安から新路線を招くなど手を打つ。地方発着の国際定期便は19年夏に週1132便と14年冬の1.8倍に増えた。ただ、訪日客は18年に韓国からが全体の4割強で台湾、中国、香港を加えた4カ国・地域が9割を占める。中国などが増え19年1~9月は前年同期を上回ったが、日韓対立の影響で9月にはほぼ全空港で韓国からが前年を下回った。空港経営に詳しい慶応義塾大学商学部の加藤一誠教授は地方空港の東アジア依存について「運航コストや効率面から距離の近い西日本への路線が多くなる」と指摘。「幅広い地域からの路線を誘致するとともに、地元から海外へのアウトバウンド需要の創出にも取り組むべきだ」と語る。19年に日本の12会場で開かれたラグビーワールドカップ(W杯)は訪日客の多様化で可能性を示した。出場17カ国(イングランドなど3チームは英国)からの入国は9月に地方空港で前年比40.6%増と全体の伸びを上回った。20年の東京五輪・パラリンピックでも地方にどう波及効果を呼び込むかが課題となる。 *7-2:https://www.agrinews.co.jp/p49535.html (日本農業新聞 2019年12月20日) 地方創生 第2期総合戦略 人材活用 JA参画を 政府は19日、まち・ひと・しごと創生会議(議長=安倍晋三首相)を開き、2020年度から5年間の第2期地方創生の総合戦略を了承した。関係人口の創出を柱の一つにし、24年度までに東京圏への一極集中の是正を目指す。多様な人材の活躍を目標に据え、JAの参画も強調した。20日に閣議決定する。第2期総合戦略では、最重要課題に東京一極集中の是正を掲げた。18年時点で13万6000人の地方から東京圏への転入超過数を24年度までに解消する。一極集中是正に向けて、地方への移住と定着の促進に加え関係人口創出に力を入れる。兼業や副業で、農山村で働いたり、祭りや草刈りを手伝ったりするなど、多様な形で農山村と関わる関係人口を広げ、地方と都市のつながりを強化する。政府は関係人口の拡大に取り組む自治体数で1000を目安にするが、数値目標(KPI)とはしない。数字ではなく関係づくりを重視したい考えだ。第2期総合戦略の共通目標として、「多様な人材の活躍推進」の他、持続可能な開発目標(SDGs)で持続可能な地域づくりを進める「新しい時代の流れを力にする」を提示した。JAの参画も強調した。具体的には、住民を中心に地域の課題解決に取り組む「地域運営組織」や住民の暮らしを支えるサービス、機能などを集約し、周辺集落と交通網で結ぶ「小さな拠点」の形成などでJAを明記した。国の地方創生総合戦略の決定を踏まえて、各自治体は今年度中にも第1期(15~19年度)の検証と併せ、第2期の地方版総合戦略策定を決定する。 <1カ月ではあてにできないこと> PS(2019年12月28、29日追加):*8-1のように、政府は少子化対策として男性国家公務員に1カ月以上の育児休暇を取得させる取り組みを2020年度から実施するそうだ。男性の育休取得が進まない理由は、①業務面の懸念 ②育休を取得しにくい雰囲気 ③育休中は無給扱いで標準報酬日額の50~67%にあたる手当金が出るが収入減になること などの背景があったからとのことだが、これは女性も全く同じで、男性なら問題にするが女性なら問題にしないという風潮は根強い性別役割分担意識に基づく女性差別だ。また、これを個人の福利を増すためではなく少子化対策としてやろうとしている点は個人を大切にしない全体主義の発想であるし、1カ月休んだくらいでは(何もしないよりはよいが)家事・育児を理解することすらできないと思う。 このような中、*8-2は、スーパーで肉や魚を買った客が、商品のラップを外して中身を包み、トレーは店内のごみ箱にポイとすてることが問題にされており、不便やコストアップを受け入れる意識改革が進んでいるのをよいことのように記載しているが、家事労働を効率化しなければ仕事と家事を両立することはできない。そして、このようなことを、主体として家事労働をした人でなければ想像もつかないのかと不思議に思う。この事例で(1995年頃にリサイクルを提唱した)私が気付くのは、④それから四半世紀経っても不便なままのゴミ収集やリサイクル方法を改善しない自治体や企業の怠慢 ⑤客のニーズに合わせない店舗 である。④については、(指定のごみ袋を買わせるなどして)ごみ収集に手数料をとってもよい時代になったため、分別しやすく、いつでも出せるゴミ収集に改めるべきだ。また、⑤については、私も、トレイに入っている肉が脂身が見えないようにトレイ側に折りたたまれて入っていて「まいったな」と思うことがあるし、確かにトレイはかさばりもするため、トレイに入れたものとビニール袋に入れたものの両方を準備して購入者が選択できるようにした方がよいと思う。 なお、家事の効率化には、*8-3のような加工野菜や調理済惣菜が便利で需要が増えるのは当然だが、これまで加工すると原産地表示が不要になった。そのため、(かなり遅いが)食品表示法改正によって2022年4月から全ての加工食品に原産地表示が義務化されるようになったのは、需要者の手を伸びやすくするだろう。 *8-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191228&ng=DGKKZO53963870X21C19A2EA3000 (日経新聞 2019.12.28) 男性公務員の育休「1カ月超」原則に 少子化対策男女共に手厚く 政府は27日、少子化対策として男性の国家公務員に1カ月以上、育児休暇・休業を取得させる取り組みを発表した。2020年度から実施する。部下の育休は上司の責任と位置づけ、全員取得を目指す。「月100時間残業」といった長時間労働の是正とセットで取り組む必要もあり、職場の意識や働き方を変えられるかが焦点となる。新制度では、既存の育児休業のほか、特別休暇「男の産休」(最長7日間)や年次休暇を活用し、1カ月以上休めるようにする。育休中は無給扱いだが、標準報酬日額の50~67%にあたる手当金が出る。有給の休暇とセットにすることで収入減の懸念を和らげる。このほか男性の育休取得が進まない背景に、業務面の懸念や取得しづらい職場の雰囲気もある。このため、上司が対象職員と相談しながら取得計画を作成し、育休中の職場の体制を事前に整えるとした。部下の取得状況を直属の上司や幹部の人事評価にも直結させて、職場が一丸となって取り組む姿勢を明確にする。今回、対象となる男性国家公務員は約44万人で、長時間労働を抱えるケースの多いキャリア官僚も含む。職場ごとに計画策定や取得状況を公表し、フォローアップすることも検討している。菅義偉官房長官は同日の女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議会で、各省庁の幹部に「男性の育児参加、女性活躍、少子化対策の観点から極めて重要だ」と強調した。菅氏の下で8月末から検討を始め、わずか4カ月で制度の発表にこぎつけたのは、少子化への危機感の表れだ。政府は15年に「希望出生率1.8」を目標に掲げたが、18年の合計特殊出生率は1.42と3年連続で下がった。厚生労働省が24日発表した19年の出生数(年間推計)は、予想よりも2年早く86万人まで落ち込んだ。国立社会保障・人口問題研究所によると、夫婦に聞いた「理想」の子どもの数は2.32人。都内の30歳代の女性会社員は「平日の夜は(家事や育児を1人でこなす)ワンオペ。2人目はためらってしまう」と語る。男性が子育てや家事に費やす時間は先進国中、最低の水準だ。一方で、夫の家事・育児時間が長いほど第2子以降の出生割合が高いという調査結果もある。共働き世帯が当たり前になった今、男女ともに仕事と子育てを両立できる職場環境づくりが欠かせない。もちろん育休の取得だけがゴールではない。男性が前向きに取り組めるように、出産前の「両親学級」といったスキルアップの機会を増やすことなども課題だ。政府は民間企業などへの波及も狙う。男性も保育所の送り迎えができるように、子どもと夕食を取れるように、政府と民間が一体となった継続的な取り組みを期待したい。 *8-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/571540/ (西日本新聞 2019/12/27) 食品トレーは必要?“くるりポイ”巡り議論広がる 消費者、店側の声 スーパーで肉や魚を買った客が、商品のラップをくるりと外して中身を包み、トレーは店内のごみ箱にポイ。この「くるりポイ」行為を報じた「あなたの特命取材班」の記事を受け、インターネット上で容器包装のあり方が議論になっている。プラスチックごみ削減が国際的な課題となる中、消費者は何を求めているのか。意見の一部を紹介する。記事をヤフーニュースで公開した11月、コメント欄には約4700件の意見が寄せられた。「私も見た」との目撃情報、マナー面や衛生面で問題視する声に加え、議論は「なぜ『くるりポイ』をする人がいるのか」にも及んだ。理由の一つに挙がったのが、トレーの分別収集の分かりにくさだ。容器包装リサイクル法は市町村に分別収集の「努力義務」を課しており、対応はさまざまだ。福岡市では燃えるごみだが、北九州市では資源ごみ。白色トレーを分別する自治体もあり、「洗浄や乾燥に手間がかかりすぎて、店に捨てる人もいるのだろう」と推測する意見も。来年7月からはレジ袋の有料化が義務付けられる予定だが、「トレーがかさばって持参した買い物袋に入りきらない」との不満も噴出していた。家庭ごみを減らしたい高齢者の事情も垣間見えた。「買った物をカートに積み、バスで家まで運ぶ。少しでも荷物を減らしたい」「有料のごみ袋がすぐ満杯になる。ごみ出しも大変」。商品の見栄えを良くする「上げ底トレー」、野菜や果物を保護する「念のためトレー」、個包装の菓子をさらに包む「おもてなしトレー」などの丁寧すぎる包装についても、店側に簡素化を求める意見が相次いだ。一方で、店側にも言い分があるようだ。「無駄な経費になるトレーなど、本来なら自分たちも使いたくない」。「レジを素早く通して客の待ち時間を短縮し、クレームを最小限にするための店側の気遣いでもある」。「消費者のニーズである衛生的で均一化された品質、安定価格を実現するために、中間センターで食材処理や包装をする仕組みができあがってきた。変えるには、不便やコストアップを容認する消費者の意識の変化も必要」。確かに「野菜が少しでも傷んでいると苦情が出るので、トレーに入れる」というコメントもあり、多様なニーズの板挟みとなっている様子だ。しかし、消費者からは「トレーか袋かを選べるといいのに」「簡易包装でトレーに載せて売り、トレーは店が回収を」などのアイデアも。容器持参で買いたいという声や、トレー価格の上乗せを容認する声も少なくなかった。不便やコストアップを受け入れる意識改革は、少しずつ進んでいる。 *8-3:https://www.agrinews.co.jp/p49580.html (日本農業新聞 2019年12月26日) 加工・業務野菜 需要捉え好機逃がすな 国内で消費する野菜の6割を加工・業務用が占める。高齢・単独世帯や共働き世帯の増加、個食化の進展、消費者の求める利便性・簡便性を背景に需要が伸びる。国内産地は、消費動向を分析し、きめ細かい対応で好機をつかむべきだ。2018年度のカット野菜・冷凍野菜・野菜総菜の小売販売動向調査(農畜産業振興機構)によると、09年から18年までの10年間の全国のスーパー約1000店舗の販売額は、いずれも10年前より増加した。1000人当たりの販売金額は冷凍野菜は5545円と10年前比22%増、野菜菜総菜は7215円と同50%増。カット野菜は7236円と3・3倍になった。伸びが大きいカット野菜を「サラダ」「キット」「カット」「総菜サラダ」に4分類したところ、サラダは同4倍、キットは同3・5倍、カットは同2・6倍、総菜サラダは同3倍だった。品目で見ると、消費動向の変化が分かる。多くの品目が増加する中、ゴボウはカットは減り、総菜サラダが増加。簡便性の高まりで、調理済みの総菜サラダの活用が多い。加工・業務用といったひとくくりの用途ではなく、末端の消費動向を詳しく分析した産地づくりが必要といえる。日本農業新聞は企画「ゆらぐ基~広がる危機」で、人手不足に悩む外食企業が、カット野菜の使用を増やしている事例を紹介。その需要に対し輸入野菜が浸透し、国産が需要を取りこぼしている点を指摘した。国内産地は今まで以上に加工・業務用に目を向けるべきだ。JAグループでは、JA全農が加工・業務用のブロッコリー産地づくりに乗り出した。東北から九州の10県の生産者に、加工時の歩留まりが良い通常の2倍の重さのブロッコリーを生産してもらい、コンビニのセブン―イレブンと取引。11月から国産サラダとして販売が始まった。全農によると、契約取引で農家は安定収益が見込め、調製作業の省力化といった利点もあるという。食品表示法の改正で、22年4月には全ての加工食品に原料原産地の表示が義務化される。国産ニーズが高まることは必至で追い風が吹く。この好機を商機に結び付けたい。農水省も来年度の概算要求で、加工・業務需要に対応した新事業を要求。安定的な生産・供給に向けて、生産事業モデルの育成を支援する計画だ。事業者にとって使い勝手のよい支援策となるよう求める。加工・業務用野菜の取引は「定時・定量・定品質・定価格」の「4定」が重要といわれる。青果物は天候不順に合いやすく「4定」を履行するには、需給調整が大きな鍵を握る。産地だけでなく、卸売会社などの流通業者の協力も不可欠だ。業界一丸で「4定」に挑戦し、加工・業務需要を取り込み、産地の活性化につなげよう。 <「日本産は安全」とも言えないこと> PS(2019年12月31日、2020年1月9日追加):*9-1のように、TPP発効から1年経過した現在、日本産を優遇してきた関税の削減・撤廃で食肉・果実を中心に輸入が増え、今後は日欧EPAや日米貿易協定も発効するので日本の農業は自由化の波に晒されている。しかし、日本産の肉は確かに美味しいが蛋白質を摂りたいのに同時に多量の脂肪を摂らされ、(米国産は安いが品質がイマイチというのと異なり)カナダ産の豚肉は美味しくて脂肪が少ない上に安く、ニュージーランド・オーストラリア産の牛肉は脂肪が少なく価格も安いため、私も普段使いはこちらに変更した。しかし、これらは、飼育方法を変えれば日本でもできることなのだ。また、ニュージーランド産のリンゴは手頃な大きさで一人暮らしや少人数の家族に適している上、価格も安い。一方、日本産は価格が高い上に大きすぎて少人数の家族には向かず、冷蔵庫にも入りにくい。つまり、日本産は、マーケットリサーチしてニーズに合わせた生産をすることが苦手で、その理由は、農業が国に頼りすぎているからなのである。そのため、農協始め農業関係の皆さまは、農業で勝っている国を訪ねて農業の「Best Practice」を実地に調査されるのがよいと考える。 それでは、日本産は安全なのかといえば、牛肉は米国に合わせてBSEの検査基準を引き下げたため米国並みになり、それなら安い方がよいことになった。また、*9-2・*9-3のように、経産省と(疫学の専門家ではない)原発の専門家が「基準値以下に薄めればよい」などという非科学的な理屈で、フクイチの汚染水を海洋放出か大気放出すると決めたような感覚だ。そのため、「日本産」の表示は安全性を保障しないことになり、安全性は地域の取り組みによって変わるものの、地域別の産地表示がなされていなければ選択することができないため、日本産全体を避けた方がよいことになるわけである。 このような状況の下、*9-4のように、立憲民主党と国民民主党が合流協議で焦点の一つとなっている原発政策で、「再稼働を認める条件を厳格化して原発ゼロを目指す方向」という玉虫色の決着をするそうだ。しかし、電力自由化が進んだ今、大手電力会社もグリーンエネルギー・全国展開・海外展開などの新しい選択肢ができたのだから、電力総連の組織内議員を抱える国民民主党がこのような対応をするのは、野党の弱さの原因の一つになるだろう。 *9-1:https://www.agrinews.co.jp/p49626.html (日本農業新聞 2019年12月31日) TPP発効1年 食肉、果実で輸入攻勢 日米控え警戒強まる 環太平洋連携協定(TPP)の発効から30日で1年。関税の削減・撤廃を機に、食肉や果実を中心に輸入攻勢が強まり、国内農業はかつてない自由化の波にさらされている。各国が対日輸出を強化する中、参加国と非参加国でのシェア争いも激化。日欧経済連携協定(EPA)に続き、年明けには日米貿易協定の発効も控える。国内では警戒感が広がっている。 ●豚肉・牛肉 カナダ産対日強化 「カナダにとって日本は最大の輸出相手国に成長した。TPPによってさらに新しいチャンスがきた」。カナダ産豚肉の輸出団体、カナダポーク・インターナショナルは11月、対日輸出増の手応えをこう表現した。財務省の貿易統計によると、1~11月期の豚肉の輸入量は、前年同期比4%増の88万6671トン。同5%増のカナダ産は、4月に単月の輸入量で初めてトップの米国を上回るなど勢いを増す。「品質には定評がある。関税削減で価格面でも優位性が高まった」(大手輸入業者)など、品質・価格の両面で攻勢をかける。国内での人手不足が深刻化する中、カットなど1次加工品を中心としたメキシコ産も同16%増と大幅に増えた。牛肉は、輸入量全体では前年同期並みだが、カナダ産が同95%増の3万9730トン、ニュージーランド産が同32%増の1万7368トンと、参加国からの輸入量は大きく伸びた。「関税削減で高価格帯の価格が下がり、米国産からシフトした」(食肉業者)という。主力のオーストラリア産は現地価格の高騰が影響したため、同5%減となった。輸入と競合するとされる乳用種の小売価格は、年明け以降、下落傾向が続いている。農畜産業振興機構の調べによると、2019年度の11月までの乳用種など「その他」の牛肉の小売価格は、ばら肉が100グラム当たり386円と前年度比9%安となっている。 ●ブドウ・リンゴ 店頭でも存在感大 スーパーなどの店頭で急速に存在感を高める輸入果実も、TPP参加国からの攻勢が鮮明になっている。発効国で関税が撤廃されたブドウは同27%増の4万3556トン。オーストラリア(25%増)やメキシコ(122%増)などからの増加が目立つ。卸売業者は「種なし皮ごとの手軽さが消費者に受けている。関税撤廃で価格が下がったことも大きい」と指摘する。リンゴも、同30%増えた。ニュージーランド産が同35%増と大きく伸ばした。異常気象や高齢化で国内産地が課題を抱える中、「国産リンゴの不足分を補う」(卸売業者)との声もあり、シェアを奪われる可能性がある。 ●ワイン・乳製品 低価格の競争激化 ワインは、同7%増の26万1359キロリットル。日欧EPAで関税が即時撤廃された欧州からの増加が中心だが、メキシコ(15%増)、ニュージーランド(7%増)などからの輸入も増えた。山梨県で「日本ワイン」の醸造に力を入れるワイナリーは「国内では、低価格帯のワインを選ぶ消費者の比率が高い」と、輸入増加による競争の激化を懸念する。乳製品は、ナチュラルチーズが同6%増の27万900トンとなった。もともと関税が低い野菜は、大幅な増加は見られなかった。 ●影響監視継続的に 農畜産物の貿易に詳しい北海道大学農学部の東山寛准教授の話 食肉やブドウといった果実など影響が懸念されていた品目では、確実に輸入量が増えている。国は、品目ごとの輸入量の動向や国内価格への影響を継続的に注視して、必要な国内対策に結び付けることが重要だ。今後、懸念されるのが、国内対策の財源確保になる。これまで安定的な財源となっていた関税やマークアップ(輸入差益)が年々減っていく中で、将来的にどう財源を捻出するのか。国は明確な枠組みを示すべきだ。4月以降、関税の削減率は3年目水準に下がり、輸入攻勢はさらに強まるだろう。産地には、価格ではなく、付加価値を高めるなどの対抗策が求められる。 *9-2:https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=600592&comment_sub_id=0&category_id=142 (中国新聞 2019/12/29) 福島原発の処理水 地元に我慢強いるのか 東京電力福島第1原発の汚染水は、いくら処理しても放射性物質が残る。タンクに保管され、増え続ける「処理水」をどうするか。政府の小委員会の議論が大詰めを迎えている。海洋放出と大気放出を軸にした取りまとめ案を先ごろ、経済産業省が示した。風評被害の懸念は根強く、タンクでの長期保管を望む声もある。技術面や時間的制約から選択肢を絞り込んだのは理解に苦しむ。未曽有の原発事故によって、深手を負った地域経済は今もなお復興の途上にある。追い打ちを掛けるような提案ではないのだろうか。小委員会では、他にも地層注入、放射性物質トリチウムの分離、地下埋設の3案を検討課題としていた。いずれも新たな技術や規制が必要だとして、「現実的な選択肢として課題が多い」と除外。前例が国内外にある、海洋と大気に放出する案だけを残した。廃炉作業では、溶融核燃料(デブリ)の取り出しという未知の技術開発に挑もうとしている政府の姿勢とは、落差があまりに大きい。処理水でも、地元が風評被害に遭わずに済む手だてを見いだすべきである。結論を急ぐのは、2022年夏ごろまでに保管タンクに収めきれなくなることと無関係でないだろう。背に腹は代えられないからと、手っ取り早い策を選んだように映る。取りまとめ案では、保管中の処理水全てを1年間で海洋や大気に捨てたとしても、一般の人が年間に被曝(ひばく)している線量の約1600分の1~約4万分の1にとどまるとしている。だからといって風評被害が起きないとは限るまい。地元にとって死活問題であるのに、風評被害の深刻さや規模は比べられないとして、経産省は各案での被害想定を示さなかった。福島県民からすれば、誠実さを欠く態度に受け取れよう。原発事故によって、県産米は今も、放射性物質濃度について全量全袋検査を続けている。農業や水産業にとどまらず、観光にも影響が及ぶ恐れもある。小委員会の委員から「社会的影響は極めて大きい、とはっきり書くべきだ」といった意見が相次いだのは当然だろう。最終的に処理方法を決めるのは政府である。小委員会からの提言書が、重要な判断材料になる。だからこそ、各案が及ぼす風評被害の程度も明記する必要があるのではないか。原子炉から抜け落ちたデブリは水で冷やし続けている。それに伴って生じる汚染水の量は、事故直後に比べて3分の1ほどに減ったとはいえ、1日当たり170トンに上る。おととい公表された最新の廃炉工程では、25年までに汚染水を100トン以下にするとした。それで目いっぱいというのが、安倍晋三首相の言う「アンダーコントロール(制御できている)」の実態に他ならない。福島県内の漁業は、魚種や海域を限定した試験操業がほそぼそと続き、先行きは見通せていない。畜産業でも、避難指示が解除された地域でさえ牛農家の95%が立ち直れていない。地元から上がっている不安や懸念に丁寧に耳を傾け、支援してこそ「復興」は近づく。これまでの苦境を思えば、新たな我慢を強いるべきではない。 *9-3:https://www.kobe-np.co.jp/column/shasetsu/201912/0012996958.shtml (神戸新聞社説 2019/12/29) 原発処理水処分/「安全神話」に頼りすぎだ 東京電力福島第1原発の敷地内で保管する処理水の処分について、経済産業省が政府小委員会に海洋と大気への放出を軸とする3案を示した。いずれも放射性物質による健康不安や風評被害への懸念が大きい。社会的影響を無視した強引な絞り込み方には地元で反発の声が高まっている。ゼロベースで再考すべきだ。第1原発では、事故で溶け落ちた核燃料を冷やす際に生じる汚染水が増え続けている。多核種除去設備(ALPS)で浄化した後の処理水を、敷地内にタンクを増設して保管している。東電は2022年夏ごろに満杯になるとしており、小委員会で検討を続けてきた。ALPSでは放射性物質のトリチウムを除去できない。しかし海水や空気で基準値以下まで薄めれば健康上の問題はないというのが東電や政府の見解だ。国内外の原子力施設で海洋放出されていることも今回の経産省案の根拠になっている。しかし公聴会などでは人体の内部被ばくや、食物連鎖によって濃縮される問題を研究者らが指摘した。トリチウムの「安全神話」が生まれているとの科学的な批判を受け止め、議論を丁寧にやり直す必要がある。そもそも第1原発内だけで保管するのもおかしな話だ。人が住めなくなった原発の周辺地など、候補はある。それなのに、不明確な根拠で保管継続を選択肢から外したのは乱暴と言わざるを得ない。近畿大学などのチームは、トリチウムの除去技術を開発している。こうした研究の実用化を支援することが、事故を起こした東電や国の責任ではないか。処理水にトリチウム以外の放射性物質が残っていたことを東電は公表しなかった。隠蔽(いんぺい)体質への反省も十分でないまま、放出に地元の理解が得られると考えているなら甘過ぎる。自然界に放出した場合の漁業などへの風評被害についても、経産省案は十分に検討していない。住民の実害への不安にも寄り添う態度が見られない。政府案は、コストが低い海洋放出の優位性を強調する文言が並ぶ。リスクを軽んじれば最大の被害を招くという警鐘を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。 *9-4:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/381853?rct=n_politics (北海道新聞 2020/1/9) 立憲と国民、原発再稼働厳格化で調整 立憲民主党と国民民主党が合流協議で焦点の一つとなっている原発政策を巡り、再稼働を認める条件を厳格化し、原発ゼロを目指す方向で最終調整していることが分かった。昨夏の参院選を前に両党など4野党が合意した事実上の共通政策に基づき、避難計画や地元合意を条件付け、再稼働が困難な内容とする。立民の枝野幸男、国民の玉木雄一郎両代表が7日夜の会談で一致。関係者が9日、明らかにした。立民が「一日も早い原発ゼロ実現」を掲げ、再稼働を認めないのに対し、国民は「2030年代」を目指し、再稼働を容認する電力総連などの組織内議員を抱える。このため政策は原発が主な論点となっている。 <風と流れをとらえるグリーン&ブルーインフラ> PS(2020年1月3日追加):*10のように、ノーベル化学賞を受賞された吉野彰さんが言われるまでもなく、今後は環境を護る経済でなければ持続可能ではない。しかし、それを実現する技術革新・地域資源の利用などの脱炭素の要請は、実は日本にも地方にも追い風なのである。そのため、国が無駄遣いをする余裕などない人口減時代の新たな国土計画には、いつまでも直接支払いをあてにする農業ではなく、農林水産業を生業とする場所で同時にエネルギーを創出できるような投資をしてもらいたいわけだ。 ![]() (図の説明:1番左は、農業施設に設置できる発電機例、左から2番目は農業用水路に設置した小水力発電機、右の3つは農業地帯に建てられた風力発電機だが、風力発電機は進歩が望まれる。なお、中央の図のように、田畑が小さく区切られているのをよく見かけるが、もっと大きな区割りにしないと大型機械が入らず、生産性が上がらないだろう) *10:https://www.agrinews.co.jp/p49627.html (日本農業新聞論説 2020年1月3日) [風をとらえる] 緑の資本論 農と自然の力で世直し グリーンパワーが日本を再生へと導く。今年は、農業や自然環境が持つ豊かな恵みを国土や地域づくりに生かす「グリーンインフラ(緑の社会資本)」推進の年。人口減、地方衰退、気象災害などの課題を克服し、持続可能な社会へ踏み出す時だ。成長から成熟へ、競争から共創へ。大転換期を生き抜く「緑の資本論」を提唱する。「グリーン公共事業」「グリーン経済」「グリーン資本主義」。より良い経済や社会のためのキーワードは「グリーン」。総称して「緑の資本論」と名付け、社会課題の「解」を探る。まずグリーンインフラの実例から──。 ●大地潤す命の水 その人は人生を懸けて「命の水」を求めた。昨年12月、アフガニスタンで凶弾に倒れた中村哲医師。享年73。中村さんは「百の診療所より1本の用水路」を信条に、内戦と干ばつに苦しむ不毛の地で「緑の大地計画」を進めた。生きるための水は、大地を緑の沃野(よくや)に変えた。17年かけて27キロに及ぶ農業用水路を通し、1万6500ヘクタールの土地を潤した。その水は今、65万農民の営農と暮らしを支える。平たんな道ではなかった。資金、機材、技術、労力、どれも乏しい。生態系もこれ以上壊したくない。答えは中村さんの足元、郷里の福岡県にあった。筑後川の中流、朝倉市に江戸時代から伝わる「山田堰(ぜき)」。大小の石を斜めに敷くことで暴れ川の流れを和らげ、用水路に導くせきである。今も現役で、一帯を有数な水田地帯に変えた。この技術を中村さんに橋渡ししたのが「山田堰土地改良区」の前理事長・徳永哲也さん(72)。昨春、中村さんから「ぜひ現地を見てほしい」と誘われ、アフガンに赴いた。「目にしたのは山田堰そのものでした」。胸が詰まった。中村さんも満面の笑み。その笑顔が最後になるとは思いもよらなかった。「山田堰は世界に誇れる技術」と言ってくれた中村さんの思いが今は分かる。「先生の遺志を継ぐのが私たちの務めです」。江戸の知恵が時空と国境を越え、人々の暮らしとなりわいを支える。 ●共生・循環経済を ダムや橋をハードインフラとするなら、今求められているのは「緑の社会資本」。1次産業や自然の持つ多様な力を地域づくりや国土計画、防災・減災に生かすこと。「緑の大地計画」は、その生きたお手本である。国交省は昨年を「グリーンインフラ元年」と位置付け、今年から官民連携のプラットフォームを始動させる。引き金は、深刻化する気候変動と環境破壊、1次産業や地方の衰退だ。食、農、環境など17分野で、2030年までに国連が各国に問題解決を求めた「持続可能な開発目標」(SDGs)。今年から運用が始まる温暖化防止のパリ協定。「持続可能社会」が世界の共通語になった。その有効な解決策となったのがグリーンインフラ。欧米では1990年代後半から、都市緑化による雨水管理、自然環境を利用した減災・防災対策が始まった。特に欧州は生物多様性の保全を重視。水質や大気の浄化で気候変動を和らげる「生態系サービス」の考えを取り入れる。造園家で東京都市大学特別教授の涌井雅之さんは「日本こそが、自然共生と再生循環の歴史を持つ」と指摘。里山などの知恵を引き、日本人は自然を「手入れ」することで、その恩恵を最大化し、災害を最小化してきたという(総合情報誌『地域人』)。 ●農山村は先進地 グリーンインフラは、農業の多面的機能そのものだ。だが生産基盤の弱体化は、災害への抵抗力を弱め、集落機能の喪失は環境破壊の悪循環を招いている。国土管理と防災の視点で、森林・河川、水田、里山・里海、農業水利、都市農地などの役割を再評価し、先端技術と組み合わせ、維持・修復のために直接支払いや公共投資を大胆に行うべきだ。いわば日本版「グリーン・ニューディール」政策である。自然環境の「保全」と併せ、農山村の資源を宝に変える「攻め」でも投資、雇用、人材を呼び込みたい。営農型大型太陽光発電、バイオマス(生物由来資源)や小水力発電によるエネルギーの地産地消、小型電動車の「グリーンスローモビリティ」、人工知能(AI)を活用した「スマートため池」など、農山村は課題解決の先進実験場だ。そこで大事なのは住民の参加。地域内外の多様な人材が、それぞれの持ち場で、課題に関わりを持つことだ。棚田の復活、生き物が集うビオトープや水辺の再生、市民農園参加など、身近なところから一歩踏み出してみよう。ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんは言う。「環境と経済を調和させる技術革新が持続可能な社会を開く」。地域資源や先端技術を活用し、社会や経済の仕組みを変えるのは脱炭素時代の要請だ。各省庁も発信を強める。国交省のグリーンインフラ戦略のほかに、環境省の「地域循環共生圏」、農水省の「農林水産業×環境・技術×SDGs」構想などがある。新たな国土のグランドデザインに向け、関係省庁を横断的につなぐ国家戦略と体制が必要だ。経済界も変わり始めた。環境や社会課題に配慮した「ESG」投資が広がる。社会貢献が企業価値となる時代だ。「グリーン・キャピタリズム」(緑の資本主義)が企業活動の新潮流になるだろう。国連環境計画(UNEP)は、環境リスクや生態系への影響を減らし、人々の生活の質を向上させて不平等を解消するための「グリーン経済」を提唱する。「緑の資本論」で、環境と調和した持続可能な社会をどうつくるか。国連が求めた「大胆な変革」へ。残された時間は多くない。国家も個人も問われている。 <次の農業基本計画は・・> PS(2020年1月4、9日追加):私は、①食料自給率の向上 ②農業の多面的機能の発揮 ③農業の持続的発展 ④農村の振興 という農業基本計画には賛成だが、「若者が田園回帰し始めても農業者や農地の減少が止まらない」背景には、農業を始めるには「自然や農業が好きであること」以外のさまざまなハードルが存在することがあると思う。そのハードルとは、i)世襲でなければ用地を確保しにくい ii)個人企業なので、資金を要しリスクを伴う iii)機械の値段が高い iv)家族労働を強いるので配偶者に仕事の選択の余地がなく、1人当たりの年収が少ない v)家制度を前提としたムラ社会に溶け込まざるをえない vi)ただ働きが多い などであるため、求められる農業のスタイルは、世襲制度・家制度・家族労働・ムラ社会・共同作業という価値観を共有しなくても安心して農業を選択できる方法を準備すること、農業機械や農業資材の高額すぎる価格付けをやめること、融資やリスク回避の方法を充実することなどだと考える。 上のi) ii)iii)iv)については、*11-2のように、よい承継相手を見つけることができれば世襲でない方法もあるが、譲渡(もしくは賃貸)の範囲や公正な価値について書面で契約しなければ不満が残る。日本では不動産評価に売却価値を用いて収益還元価値を使わないため、立派な果樹等が評価されないことになり易いが、これらは事業承継や企業価値評価に慣れた公認会計士・税理士等に任せればよいと思う。また、引退者が園地を現物出資して承継者と農業生産法人を作り、貢献分の利益を配分してもらえば、引退者は園地と縁が切れる寂しさもなく、承継者にスムーズに技術移転することが可能だ。なお、*11-3のように、若者が推進力となって「田園回帰」が起こっているそうだが、*11-4のように、多様な移住者が活躍できる地域づくり、交通網・病院・学校などのインフラの確保は必要で、全国町村会の食料・農業・農村基本計画の改定に向けての政策提言に期待される。ただし、「交付金」は、既得権益化するのではなく、離陸するための滑走期間の投資として使って欲しい。 *11-1:https://www.agrinews.co.jp/p49633.html (日本農業新聞 2020年1月4日) [風をとらえる] 転換期の基本計画 後世意識し使命果たせ 農家の営農と生活、農村の風景は10年後の2030年にはどうなっているか。国民の食料はしっかり守られているか。目指すべき姿を描く新たな食料・農業・農村基本計画の検討が詰めに入る。時代状況が激変、価値観が多様化しつつある転換期にふさわしい、後世に恥じない基本計画を打ち立てるべきだ。農業者や農地の減少が止まらず、追い打ちを掛けるように国際化を受け入れた。一方で、若者の田園回帰に見られる農業への新たな期待も広がる。その中で迎えた今回の基本計画の改定は、政府の段取りでは3月。審議日程は残りわずかしかない。議論が尽くされているかというと、疑問だ。正式な審議開始は昨年9月で、駆け足の印象を拭えない。だが、基本計画の使命は大きい。原点にさかのぼりたい。初の基本計画は2000年。前年に制定された食料・農業・農村基本法の①食料の安定供給の確保②多面的機能の発揮③農業の持続的な発展④農村の振興──という基本理念に沿った政策を具体化し着実に進めるためだ。当時は、世界貿易機関(WTO)農業交渉が始まるという時期。国際化の荒波から、国民合意の下に農業をどう守るかという切迫した状況認識があった。国民の食料安全保障として食料自給率目標を基本計画で定め、洪水防止をはじめとする多面的機能の維持へ中山間地域等直接支払制度を導入するなど、新たな局面に対応した農政転換を果たしたのもこの時である。今の状況はどうか。環太平洋連携協定(TPP)、日欧経済連携協定(EPA)と日米貿易協定が相次ぎ発効。WTO交渉で想定していた水準をはるかに超える自由化を受け入れた。本来なら経営・所得安定の在り方を抜本的に検討すべきところだったが、基本計画の審議では全く踏み込んでいない。ただ、生産基盤の維持・強化が欠かせないという共通理解は深まった。特に家族経営や中小規模農家に目配りすることを、政府が方向性として示したことは大いに歓迎したい。どう具体化するかが今後の焦点だ。事業の補助要件を緩和するだけで終わらせてはならない。一人一人の力を集め、地域として大きな力を発揮してもらうことが重要だ。その手だてを考えることが、今後の審議に欠かせない。地域の姿が変わりつつあることにも目を向けたい。若者らが農村に移住する動きがある。地域の外から農業を応援する都市住民も増えている。どのようなビジネススタイルや生活のにぎわいが生まれるか、農業・農村の新しいイメージを描く作業も手付かずで残っている。時代の転換期に直面する今回の基本計画は、背負う課題があまりに多い。過去の審議に当たった委員は本紙取材に「いま振り返り、使命を果たしたと言える」(森本一仁氏=農業)と語った。今回も胸を張れるように論議を尽くしてほしい。 *11-2:https://www.agrinews.co.jp/p49678.html (日本農業新聞 2020年1月9日) [新たなバトン 世襲ではない継承へ](2) 果樹園に新規就農 契約巡り食い違い 壁乗り越え信頼感 (山口県周南市) 山口県周南市須金集落。細い1車線の道路を進むと急傾斜のブドウ園が見えてくる。見谷勇さん(86)、朝子さん(83)夫妻が45年前から育ててきた1・2ヘクタールの観光果樹園だ。2年前、見ず知らずの田中友和さん(43)、和歌子さん(42)夫妻が受け継いだ。他人への継承はいくつもの壁があったが、田中夫妻は独立して2年、ほぼ営農計画通りで売り上げも順調だ。友和さんは「消費者に喜んでもらえるブドウを作り、農家の仲間を増やしたい」と見据える。朝子さんは「以前のお客さんが今も喜んで買っている。丁寧な仕事だから、これからも大丈夫」と園を託す。2人とも県外出身の公務員だった田中夫妻。友和さんは働きながら農家への夢を温めてきた。40歳を間近に控えた頃、行楽で見谷夫妻のブドウ園を訪れ、観光農業と果樹に興味を感じた。一方、見谷夫妻の子どもたちは農業を継ぐ気はなく、夫妻も自宅から30分離れた園地に続く細い山道の運転が高齢で難しくなってきたことなどから、離農を考えていた。「あんなに美しい園地は他にない」(県農業会議所)といわれるまでにした園地の荒廃は辛い──。そこで、知人の勧めで県農業会議所の後継者を募集する農家のリストに登録した。2015年、就農先を探していた田中夫妻はリストで三谷夫妻の果樹園を見つけ、会議所に問い合わせた。その後、勇さんと田中夫妻、市など関係機関が集まり、継承に向けた会議を何度も開いた。16年に田中夫妻は退職し、子どもを連れて同集落に移住。2年後の継承に向けて見谷夫妻の元で研修を始め、草刈りや配達などに励んだ。しかし、研修半ばに契約問題が浮上。友和さんは資産の売買額を園地全体のものとして、合意できたと思っていたという。見谷夫妻は金額は農地とブドウの木230本分と捉え、農機や作業所、トイレなどは別途契約すると考えていたため、齟齬(そご)が生じてしまった。当事者同士での話し合いが続いた。ブドウの木が育つまで7年間ほぼ無収入という苦難を乗り越えてきた勇さんは、当初の金額では「納得できなかった」という。他にも、研修内容など意思疎通が難しい局面が何度かあった。勇さんは人に教えた経験がなく、親子以上の年齢差での研修は手探り。特に繁忙期は教える余裕もなかった。肝心の売買金額が合意できず、田中夫妻は研修をやめることも考えたが、未収益期間の長い果樹の新規就農は難しく、最終的には当初の金額から上乗せして契約した。勇さんから過去2回分の青色申告を見せてもらい、経営内容が良好だったことも決断を後押しした。県農業会議所は「契約問題は大きな反省点」とし、教訓とする考えだ。朝子さんは「田中さんたちが折れてくれた」と感じる。見谷夫妻も田中夫妻も「金額面は最初に書面で残すべきだった」と後悔する。だが、継承を果たした今は、互いに感謝する。「懸命に働く姿を間近で学べた」と和歌子さん。友和さんも、棚や農地だけでなく販路も継承できたことは「見谷さんのおかげ」と感じる。勇さんは「山間部で土地は最高。高品質のブドウを作り続けてほしい」と願う。見谷夫妻は継承後、果樹園は見に行かないと決めている。朝子さんは「私たちが行ったら気を使わせてしまう。人柄が優しい2人だから、お客さんとの関係もうまくいく」と見守る。見谷夫妻は心の中で応援し続ける。 *11-3:https://www.agrinews.co.jp/49644?page=2 (日本農業新聞 2020年1月5日) 「田園回帰」着々と 本紙独自調査 28府県移住最多 若者が推進力 都道府県の移住施策担当者に移住者の数や傾向、施策などを聞いた。移住者数の全国調査は政府統計になく、17年度実績から本紙が調べている。17年度は26府県で移住者数が過去最多だった。ただ、各県で移住者の定義が大きく異なり、単純比較はできない。そのため都道府県ごとの過去の調査と比べた。岩手など、調査手法を変えたなどで17年度以前と比較できない県もあった。東京や大阪など都市の都府県は調査しておらず、新潟や熊本は公表していない。長崎県は、移住者を「県と市町村の相談窓口を通じて県外から移住した人」として調べ、06年度からの調査で18年度は初めて1000人を突破した。県によると、16年度に「ながさき移住サポートセンター」を発足させたことなどが奏功し、飛躍的に伸びている。高知県は、「転勤や進学は除き、定住する意志を持って県外から県内に生活拠点を移す」と定義する。県と市町村の相談窓口で把握した数は18年度が934組1325人で、12年度から8倍に増えた。新規就農を希望して移住する若者も目立つ。07年度から調査し、移住者を順調に増やす福井県は、就農相談を定期的に行い、農家希望者向けのバスツアーなど移住と農業部門が連携して進める。専業農家だけでなく、直売所や兼業農家、週末農業など、多様に農との関わりを求める移住者が多いとした県の回答が多かった。一方、移住者数が減り「頭打ち」とする県もあった。島根県は、県外からの転入者に5年以上居住する意志を持っているかを市町村の窓口で調べ、全市町村からの報告から把握する。18年度は3900人で、17年度に比べ200人以上減った。同県は「移住者が減ったことは重く受け止めているが、関係人口の拡大なども力を入れていく」とする。移住者数が減少した他の県も「県の認知度を高めることが重要で、移住者の増減だけで一喜一憂していない」「移住者数の正確な把握は難しく、定住を重視する」などと答えた。 *11-4:https://www.agrinews.co.jp/p49640.html (日本農業新聞 2020年1月5日) [風をとらえる] 農村価値創生 格差解消と両輪で築け 農村に可能性や価値を見いだす移住者らが増えている。この機運を生かし、多様な主体が活躍できる地域づくりを進めたい。それは生産面だけでなく交通網や病院、学校など生活基盤の確保が前提だ。田園回帰を広げ都市との格差解消と向き合い農村価値創生の時代を開こう。移住者に関する日本農業新聞の調査では、以前と比較可能な28府県で2018年度の移住者数が過去最高を記録した。住んでいなくても地域や住民と継続的に関わる「関係人口」や、農村を訪れる訪日外国人(インバウンド)も増えている。人々のつながりや里山の暮らし、食文化、山や田畑といった農村の価値に魅了されている。地元の農家や地域住民だけでなく、世代や仕事、立場などの垣根を越えて連携、融合していくことが農村価値創生の鍵となるだろう。そして価値の土台をつくるには、都市と農村の格差と真剣に向き合わなければならない。農村の価値創生は、効率性や目先の財政にとらわれては実現できない。政府は学校統廃合や病院の再編を進めるなど、地方創生を進めるとしながら矛盾した政策を続けている。また、選果場の閉鎖や、農業施設や水利施設の老朽化、人手不足など生産基盤の弱体化も深刻だ。新しい考えや仲間を受け止める包容力の向上や、多世代が集う場の仕組みづくりなどのソフト面と共に、学校や病院、通信網、農業施設など生活・生産基盤の充実は両輪で考える必要がある。学校や病院がない農村をあえて目指す移住者はいないだろう。全国町村会は食料・農業・農村基本計画の改定に向けて、「新たな価値を創造する舞台としての農村」をつくることを柱とした政策提言を行った。農村の価値を持続的、安定的に高めるための「農村価値創生交付金」の必要性を主張している。地域独自の多様な取り組みが展開できるよう、国が使途の大枠を決め自治体に客観的な基準で配分する仕組みだ。財源は既存の補助金の移行などで確保するとしており現実的な提案だ。交付金は、移住者らの呼び込みや道路や学校、通信など都市と農村の格差解消でも期待される。産業政策や各府省の地域政策と連動させ、政府は総力を挙げて具体化すべきだ。今年は、3月の策定に向けて基本計画の改定論議が大詰めとなる。21年度の施行を目指す新たな過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)も、策定への論議が本格化する。また、20年度から5年間の地方創生の基本方向を示した第2期総合戦略が昨年末に閣議決定され、これを受けて各自治体は地方版総合戦略を策定する。こうした農業・農村振興の中長期的なビジョンづくりとその取り組みに向け、田園回帰を後押しする政策と基盤の格差解消を両輪として考え、農村価値創生を実現させたい。 <ごみ処理と給電・給湯> PS(2020.1.6追加):*12の鳥栖市真木町の広域ごみ処理施設建設予定地は、災害リスクのみならず人口密度から考えても適地ではないだろう。ゴミ処理施設建設は周辺住民に嫌がられるわけだが、少し離れた高い場所にある山林を拓いて作り、ゴミ処理で発生する熱で発電したり湯を作ったりして、迷惑をかける地域の住民に低価格で販売すれば、マイナスとプラスが相殺されるのではないだろうか。発生するCO₂は、それだけなら山林の成長にプラスだ。 ![]() (図の説明:左図のように、ゴミの焼却熱で発電するのは普通になりつつあり、右図のように、再エネ発電に占める割合も高い。また、ゴミ処理時に発生する熱で給湯するシステムもある) *12:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/473078 (佐賀新聞 2019年1月6日) 鳥栖ごみ処理施設予定地「災害の危険」 島谷・九大大学院教授が講演 鳥栖市真木町の次期広域ごみ処理施設建設予定地の災害リスクについて考える講演会が5日、同市内で開かれた。河川工学の専門家で土木学会九州北部豪雨災害調査団長などを務めた島谷幸宏・九州大学大学院教授は「筑後川流域で最も災害の危険性がある地域」と語り、適地ではないとの見解を示した。島谷教授は、国土交通省が2016年に公表したハザードマップで予定地の浸水想定が最大5メートル未満に見直され、地形的にも河川が集中している点に注目。国交省が昨年10月、気候変動で気温が4度上昇した場合、九州北西部は短時間雨量が1・5倍、洪水発生頻度は4倍になると発表したことに触れ、「毎年氾濫が起きる可能性がある。常識的には選ばない場所」と指摘した。福岡県朝倉市などを襲った17年7月の豪雨後に現地調査をした経験などを踏まえ、「仮に大きな水害が発生すれば、1軒当たり2トンの水害ごみが出る。施設をかさ上げして造っても周辺道路が水没し、土砂などが流れてきたら簡単に復旧できないのではないか。ごみが運べず大混乱する恐れがある」などと語った。講演会は予定地周辺の住民らでつくる「ハザードを考える会」(代表=馬場祐次郎・鳥栖市あさひ新町区長)が主催し、同市や久留米市、みやき町などから約100人が参加した。 <これが日本の林野庁のレベルだ> PS(2020/1/10追加):森林の間伐が行われない等の問題点を指摘したら、*13のように、山肌をまるごと伐採する皆伐をしはじめたのが日本の林野庁である。このやり方が、大規模な土砂崩れを発生させると同時に、山の保水力をなくし、流れ出した土で川やダムが浅くなって、水害が起こりやすくなるのは誰でもわかることである。それらを総合的に考えることもできず、単に現在の木材生産量を増やすことだけを目的として、戦後せっかく植えたスギ・ヒノキなどの森林資源を数十ヘクタールにもわたって皆伐するのに補助金を出すなど、専門家のすることとはとても思えず、呆れるわけである。 *13:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/574555/ (西日本新聞 2020/1/10) 「皆伐」から「自伐」減災林業 九州の業者が連絡会結成へ ●小規模作業、土砂崩れ拡大防止に 小規模な林道や作業機械を使って、スギやヒノキなどの人工林を伐採する「自伐型林業」を推進するため九州の自伐型林業者が今月、連絡会を結成してネットワーク化を図る。国は木材生産量を増やすために、山肌まるごと伐採する「皆伐」を推進している。林業研究者は、このやり方が「土砂崩れなどの災害を拡大させる」と問題視しており、山への負荷の小さい自伐型林業の推進により減災を進める狙いだ。自伐型林業は、山林所有者や中山間地の住民が、山の斜面や水の流れを考慮した上で、自らパワーショベルを使って山の中に軽-小型トラックが1台通れる幅2メートル程度の道を高密度に整備し、木材を搬出するやり方。小規模だが、伐採作業を森林組合などに委託する委託料がかからないため利益を出しやすい。一部の木は伐採せずに残して100年超えの優良材に育て、持続可能な林業へつなげる。国内の山林では、戦後の造林政策で植えられたスギやヒノキが利用に適した時期を迎えている。そうした木を数十ヘクタールにわたり高性能林業機械を使って切り出す皆伐が主流となっている。林野庁は2018年度から初めて皆伐(再造林も含む)作業にも補助金を適用する補助事業を始めた。木材生産量を増やし「成長産業化」する狙いだ。自伐型林業を推進するNPO法人、自伐型林業推進協会の中嶋健造代表理事は、17年の九州豪雨で33人が死亡した福岡県朝倉市を調査。その結果、「調査した皆伐地域のすべてで崩落を確認した。地形を考慮せずに林道が築かれ、そこから崩れた場所も目立った」と指摘する。林野庁は九州豪雨の原因調査で「雨量が原因」としたが、中嶋氏は「林業にも大規模災害となった一因がある」と訴える。九州大の佐藤宣子教授(森林政策学)は「皆伐後しばらくたつと広く根を張った木がなくなり、山が最ももろくなる。地形などを踏まえて伐採をしないと災害につながる恐れがある」と話す。連絡会には現段階で、宮崎県、熊本県などで活動する自伐型林業者のグループなど6団体が加入予定。26日に福岡市早良区の九大西新プラザで設立記念講演会を開く。
| 農林漁業::2019.8~ | 04:43 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2019,11,25, Monday
大日本帝国憲法との比較 2018.3.22朝日新聞 (図の説明:1番左は、日本国憲法成立時の原本で、左から2番目は、大日本帝国憲法との要点の比較である。また、右から2番目は、2018年の自民党改憲案で、1番右は、日本国憲法が成立から72年間改憲していないとする図だが、「長く改憲していないから」というのは「連合国から押し付けられた憲法だから」というのと同様、改憲する理由にはならない) 私が表題に、「護憲が保守で憲法変更勢力が革新の筈だが・・」というコメントをつけたのは、現在、「保守」を標榜する人々が改憲を主張し、現行憲法を護ろうとする人々を「革新」と呼ぶ逆の事態になっているからで、これは、現在では、「保守」「革新」という言葉で国民を色分けすることが無意味になっていることを意味すると同時に、現行憲法が少なからず無視されてきたことを意味している。 (1)自民党改憲案について 1)憲法9条(戦争放棄)に、9条の2を創設する案 *1-1の自民党改憲案は、9条全体を維持した上で、次に9条の2を追加して、「①1項:前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」「②2項:自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」としている。 しかし、①は9条と比較して冗長で、目的と行動に論理的整合性があるとは言えない。また、②は、内閣総理大臣が戦争を始めてしまった後では、戦争反対や自衛隊の行動制限は国益に反するため国会も言い出しにくくなり、追認せざるを得ないだろう。 太平洋戦争の時は、戦争に反対する内閣総理大臣は殺されたり、失脚させられたりして、戦争に反対しない人が内閣総理大臣になるまで交替させられた。外務省の重要ポストも、戦争推進派が占めるまで人事異動が続いたそうだ。つまり、それらの反省の上に立っている現行憲法の方が、より平和を担保している上に、文章としてもずっとスマートなのである。 そのため、「時代とともに状況が変わったから」「現行憲法は外国の押し付けだから」などとして改憲を主張するだけでなく、*1-2-1・*1-2-2・*1-2-3・*1-2-4・*1-2-5等の根源的な問いに論理的に答えた上に、現行憲法よりも改憲案の方が優れている理由を明快に説明できなければ、改憲の提案はできないと考える。 2)73条(内閣の職権)に、73条の2・第64条の2の緊急事態条項を新設する案 *1-1の自民党改憲案は、内閣の事務を定める第73条の次に第73条の2「①1項:大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる」「②2項:内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない」を追加している。 しかし、①は、「特別の事情がある時は、内閣は国会による法律の制定によらずに、政令を制定することができる」としているのであり、自然災害によるものだけに限定される保証はない。これは、*1-3-1のように、緊急事態条項が、大規模災害や戦争など国家そのものの存立が脅かされる可能性がある場合に、全体の利益のために個人の権利を抑制する考え方である「国家緊急権」の思想に基づいていることから明らかだ。 緊急時とは、2012年の自民党改憲案では「外部からの武力攻撃」「内乱」なども入っていたため、次第に拡大解釈されたり、強制になったりすることが想定内だ。これは、*1-3-2のマイナンバーカードが、最初は個人情報保護の観点から「取得は自由だ」と言って導入されながら、今では国民監視の目的を現し始めて次第に取得を強要しだしており、同じような流れであるため要注意なのである。 さらに、*1-1の自民党改憲案は、国会の章の末尾に、特例規定として64条の2「③大地震その他の異常かつ大規模な災害に議員より、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる」を追加している。 しかし、*1-3-1のように、2011年の東日本大震災では被災地の地方選を延期した経緯があり、改憲しなくても災害時には臨機応変に対応できる。それよりもむしろ、国会の審議を経ない緊急の政令により、国民の権利が堂々と損なわれる状況を作る方が危いのである。 3)参院選「合区」解消のために、47条を変更する案 *1-1の自民党改憲案は、「参院選における合区を解消するため」として、47条を「①1項:両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる」「②2項:前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める」と変更しようとしている。 しかしながら、現行憲法の47条は、「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める」としか書かれておらず、詳細は公職選挙法で定められているため、改憲ではなく公職選挙法を変更すれば済む上、憲法としては現行憲法の方が簡潔で読みやすく、スマートでもある。また、選挙制度の変更なら、民主主義を実効あるものにするために、参議院議員の合区解消だけでなく、衆参両議院の選び方を総合的に考慮する必要があると考える。 4)地方自治の基本原理である第92条を変更する案 *1-1の自民党改憲案では、92条を「地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」と変更することになっているが、この文章にも憲法にそぐわない稚拙さがある。 現行憲法の92条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」とだけ書いてあり、その法律が地方自治法であるため、変更した方がよい点があるのなら地方自治法を変更すればよい。そして、現在では、重要なことは、既に定められている憲法や地方自治法を護っているかどうかになっているのだ。 5)教育の充実のためとして、26条3項、89条を変更する案 *1-1の自民党改憲案は、教育の充実のため、26条1、2項は現行のまま、3項を加えて「①3項:国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない」と変更し、さらに89条を「②公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない」となっている。 しかし、①は、憲法には書かれていないが、教育基本法には既に書かれていることであり、それでも足りない部分があれば教育基本法を変更すればよいため、改憲する必要はない。さらに、②は、現行憲法では「公の支配に属しない」とされている文言を「公の監督が及ばない」としてむしろ支出の制限を甘くしており、これは私立学校や私立の幼稚園・保育所に補助するための変更だろうが、その意図とそれによって生じる結果をしっかり議論して明確にすべきだ。 (2)主権在民を徹底するために、やるべき改憲はこれである *2の日本国憲法の第7章の財政を見ればわかるとおり、予算に関しては、第83条~第89条まであるが、決算に関しては、90条の「①国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める」と91条の「②内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政状況について報告しなければならない」しかない。 そして、①によれば、毎年会計検査院が検査し、内閣が次年度に検査報告とともに国会に提出しなければならないのは国の収支だけで、国の財政状況については提出する必要がなく、国民への報告も義務付けられていない。また、②によれば、内閣は、国会や国民に対して少なくとも年に1回、国の財政状況について報告しなければならないが、会計検査院の検査は義務付けられておらず、収支の報告はしなくてよい。つまり、これは、条文数の問題ではなく、内容の不十分さの問題であり、政府の非効率な支出(無駄遣い)と国民負担増の温床となっているものだ。 そのため、90条は「1項:国の財政状態及び収支の状況は、複式簿記で記帳した上で、毎年決算を行って財務諸表を作成し、会計検査院が検査するとともに、監査法人がこれを監査しなければならない。」「2項:会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。」と変更し、91条は「内閣は、国の財政状態及び収支の状況を示す財務諸表を、その検査報告書、監査報告書とともに、次年度には国会及び国民に提出しなければならない。」と変更すべきだ。これに伴って、*2-2の財政法も、当然、現金主義・単年度主義から発生主義に変更しなければならない。 これを一般企業に例えれば、会計検査院は内閣総理大臣の支配下にあるため内部監査人の位置づけで、監査法人が外部監査人の役割を果たすことになり、国の会計情報に本物のチェックが働いた後に、毎年、納税者である国民に開示されることになる。そして、予算は、前年度の決算書を見ながら議論すべきであり、それは可能だ。 ・・参考資料・・ <自民党改憲案> *1-1:http://www.sankei.com/politics/news/180325/plt1803250054-n1.html (産経新聞 2018.3.25) 【自民党大会】「改憲4項目」条文素案全文 【9条改正】 第9条の2 (第1項)前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。 (第2項)自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。 (※第9条全体を維持した上で、その次に追加) 【緊急事態条項】 第73条の2 (第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。 (第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。 (※内閣の事務を定める第73条の次に追加) 第64条の2 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。 (※国会の章の末尾に特例規定として追加) 【参院選「合区」解消】 第47条 両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる。 前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。 第92条 地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。 【教育の充実】 第26条 (第1、2項は現行のまま) (第3項)国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。 第89条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。 *1-2-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115360S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日) 自衛隊明記、与野党で対立、自民改憲案、衆参憲法審へ 与野党による今後の憲法改正論議は、自民党が3月にまとめた改憲案がたたき台になる。柱は(1)自衛隊の明記(2)緊急事態条項(3)参院選の「合区」解消(4)教育充実――の4項目。自民党は衆参両院の憲法審査会で説明し、各党と議論する。自衛隊の明記などで与野党が対立する構図だ。自民党案のポイントを読み解いた。自民党憲法改正推進本部がまとめた9条の改正条文案は、現在の9条を維持して、「9条の2」を新設する内容だ。新たな条文を追加する「加憲」とすることで、公明党の理解を得たい考えだ。自民党にとっての最大のポイントは「自衛隊」の保持を明記することだ。憲法に「自衛隊」を明確に位置付けて、自衛隊違憲論を解消する狙いがある。政府はこれまで、自衛隊は国の自衛に必要な必要最小限度の実力組織であり、2項で保持を禁じる「戦力」には当たらないと解釈してきた。しかし、一部の憲法学者はこの解釈を疑問視し、安倍晋三首相は「ほとんどの教科書に自衛隊は違憲の疑いがあるという記述がある」と指摘する。自衛隊については「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織」と定義した。首相が自衛隊の「最高の指揮監督者」と明記。自衛隊の行動は「国会の承認その他の統制に服する」とも記し、自衛隊の任務や予算が国会の管理の下にあることも盛り込んだ。自衛隊法の規定を引用する形で、文民統制(シビリアンコントロール)の考え方を明示した。今後の与野党協議では、自衛隊の任務と活動範囲が論点になりそうだ。首相は自衛隊を明記しても、これまでの自衛隊活動に関する憲法解釈を変える考えはないと説明する。野党は自民案にある「自衛の措置」との表現が曖昧であり「集団的自衛権の行使拡大につながる」と懸念する。「後法は前法に優越する」という法解釈の基本原則を念頭に、戦争放棄や戦力不保持の今の規定が「空文化する可能性は排除できない」(立憲民主党の福山哲郎幹事長)との批判もある。そもそも自民党改憲推進本部が当初示した条文案は「必要最小限度の実力組織」として「自衛隊を保持する」と表現していた。党内から「誰が『必要最小限度』を判断するのか」などと異論が相次ぎ、最終案では「必要最小限度」の文言を削った経緯がある。これまでの政府解釈を踏襲した表現を削除したことで「公明党が乗りづらい案になった」(党幹部)との見方も出ている。 *1-2-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115480S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日)9条の扱い焦点 問われる専守防衛 自民党がまとめた4項目の憲法改正案のうち焦点となるのが9条だ。条文の書きぶり次第で、自衛隊に認められる武力行使の範囲や保有できる防衛装備品が際限なく広がりかねないからだ。日本が掲げる「専守防衛」との整合性が問われる。政府は現行の9条に基づく専守防衛のもと、防衛力を自衛のための必要最小限度に限っていた。自衛権は、日本が直接攻撃を受ける「個別的自衛権」だけを認めてきた。2015年成立の安全保障関連法で、日本が直接攻撃を受けていない場合の「集団的自衛権」も使えるようにした。年末に改定する防衛大綱の議論も絡む。自民党案は「必要な自衛の措置をとることを妨げず」と明記する。これまで保有していなかった空母や爆撃機といった攻撃型兵器も「必要な自衛の措置」とみなして解禁する可能性を野党は警戒する。政府は護衛艦を事実上の空母として使えるよう改修する案を検討する。防衛省幹部は「防御目的の空母なら専守防衛の範囲内。現行の9条のままでも保有は認められる」と語る。 *1-2-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/561422/ (西日本新聞 2019/11/21) 憲法と安保法 司法は逃げずに判断示せ 安全保障法制の大転換、それも違憲性を帯びた政策の是非を問う訴訟である。裁判所が内閣や国会の立場を忖度(そんたく)して及び腰になる必要はなかろう。正面から憲法判断に踏み込み、司法の独立性を示してこそ、国民の信頼が得られるのではないか。集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法は違憲として、市民約1500人が国家賠償を求めた訴訟で東京地裁は請求を全面的に棄却した。原告側はきのう、これを不服として東京高裁に控訴した。九州を含め全国22地裁・支部で提起された同種訴訟では、今春に札幌地裁で初の判決(原告敗訴)が示され、原告側が同じく控訴している。残念なのは東京、札幌両地裁が肝心の憲法判断を避けたことだ。原告側は3年前に施行された安保関連法により(1)憲法の前文や9条に基づく平和的生存権が侵害された(2)自衛隊の活動領域の拡大でテロや戦争に巻き込まれる危険も増した‐ことで精神的苦痛を受けたとして、1人10万円の賠償を求めていた。判決は、平和について「抽象的概念で個人の思想や信条で多様な捉え方が可能」「手段も国際情勢に応じて多岐多様にわたる」とし、平和的生存権は国民に保障された法的権利とは言えないと断じた。また「戦争やテロの切迫した危険は認め難い」「原告の苦痛は受忍限度内で義憤ないし公憤とみるほかない」と述べ、安保関連法の違憲性に関する判断は示さなかった。日本の司法は違憲審査について消極的といわれる。一般に具体的な権利の侵害がない場合や外交・防衛などの統治行為に関しては判断を避ける例が多い。国民の代表で構成する立法府の決定は民意の反映でもあり、極力介入しないという立場だ。しかし、今回の訴えをこの論理で退けるのは疑問だ。安保関連法は一内閣の独断による憲法解釈の変更に端を発し、国会では与党が憲法学者らの違憲の指摘を半ば無視するように成立させた。その結果、専守防衛の理念は揺らぎ、国の行く末に不安を抱く人は原告だけにとどまらない。であれば、司法がここで厳しいチェック機能を果たしてこそ、三権分立は成り立つ。判決は、戦争やテロの恐れを否定したが、仮に危険が切迫した段階で司法が機能しても、もはや手遅れになりかねない。全国の訴訟原告7千人余りの中には多くの戦争体験者や自衛官を家族に持つ人も含まれている。憲法前文は「政府の行為で再び戦争の惨禍が起こることがないよう決意し、主権が国民に存することを宣言する」としている。司法はこの重みを踏まえ、今後も続く審理や判決で、真摯(しんし)に役割を果たしてほしい。 *1-2-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/562371/ (西日本新聞 2019/11/25) ローマ教皇、長崎で核廃絶訴え 「核なき世界は実現可能」 ローマ・カトリック教会の頂点に立つ教皇(法王)フランシスコが24日、被爆地・長崎市を訪れた。教皇として初めて爆心地に立ったフランシスコは原爆落下中心地碑を背に演説し「核兵器のない世界は実現可能であり、必要不可欠であると確信している」と発言。各国の指導者に対し「核は安全保障への脅威から守ってくれるものではないと心に刻んでください」と訴え、長崎を最後の被爆地にするため、核廃絶に向けて動くよう求めた。教皇の長崎訪問は38年前の故ヨハネ・パウロ2世以来2度目。24日午前、教皇は爆心地公園に到着し、被爆者から受け取った花輪を碑にささげた。演説では長崎を「核が破滅的な結末をもたらすことの証人である町」と表現。核兵器の製造や改良を「テロ行為」と非難し、大量破壊兵器によって実現させようとする平和や安全を「恐怖と相互不信を土台とした偽り」と言い表した。元首を務めるバチカンが批准した核兵器禁止条約を挙げて「国際法の原則にのっとって迅速に行動し、訴えていく」と宣言、米国の「核の傘」に依存し条約に参加しない日本などをけん制した。歴代教皇と同様に、フランシスコも核について繰り返し発言してきた。これまでにも広島と長崎の被爆の歴史から「人類は何も学んでいない」と述べ、2017年末には被爆後の長崎での撮影とされる写真「焼き場に立つ少年」を広めるよう教会関係者に指示。この日も教皇のそばにはこの写真のパネルが置かれた。激しく雨が降る中、参列者約千人は雨がっぱ姿で教皇の声に耳を傾けた。爆心地に続き、国内でキリスト教信仰が禁じられた時期に宣教師や信者が処刑された日本二十六聖人殉教地に足を運び、午後は長崎県営野球場で3万人規模のミサを執り行った。夕方からは、もう一つの被爆地・広島市に移動し、平和記念公園で集いに出席。原爆ドームの前で、戦争を目的とした原子力の利用を「犯罪以外の何ものでもない」と指弾した。教皇は26日までの滞在中、東京都内で東日本大震災被災者との交流を行い、天皇陛下との会見や安倍晋三首相との会談を予定している。 *1-2-5:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14269133.html?iref=comtop_shasetsu_01 (朝日新聞社説 2019年11月25日) ローマ教皇 被爆地からの重い訴え 平和の実現にはすべての人の参加が必要。核兵器の脅威に対し一致団結を――。核軍縮の国際的な枠組みが危機にある中、被爆地から発せられた呼びかけをしっかりと受け止めたい。13億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会のトップ、フランシスコ教皇が長崎と広島を訪れ、核兵器廃絶を訴えた。教皇は2年前、原爆投下後の長崎で撮られたとされる写真「焼き場に立つ少年」をカードにして教会関係者に配った。今回、長崎の爆心地に立って「核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすと証言している町だ」と語り、「記憶にとどめるこの場所はわたしたちをハッとさせ、無関心でいることを許さない」と力を込めた。ローマ教皇の来日は1981年以来、38年ぶり2度目だ。前回来日したヨハネ・パウロ2世が平和外交を展開して東西冷戦の終結に影響を与えるなど、教会は核廃絶を含む平和への取り組みを重ねてきた。フランシスコ教皇も米国とキューバの国交回復で仲介役を務める一方、自らが国家元首であるバチカンは、核兵器の製造や実験、使用を禁じる核兵器禁止条約が2年前に国連で採択された後、いち早く条約に署名・批准した。ただ、国際協調より自国第一主義が優先される現実のなかで、核軍縮への取り組みは後退している。米ロの中距離核戦力(INF)全廃条約は8月に失効。2021年に期限を迎える両国間の新戦略兵器削減条約(新START)も存続が危ぶまれる。来年には核不拡散条約(NPT)再検討会議が開かれるが、核保有国と非保有国の溝は深まる一方だ。「わたしたちの世界は、手に負えない分裂の中にある」「相互不信の流れを壊さなければ」。そう危機感を訴え、世界の指導者に向かって「核兵器は安全保障への脅威から私たちを守ってくれるものではない」と説いた教皇の思いにどう応えるか。唯一の戦争被爆国である日本の責任と役割は大きい。安倍政権は、日本が米国の「核の傘」に守られていることを理由に核禁条約に背を向け続けているが、それでよいのか。核保有国と非保有国の橋渡し役を掲げるが、成果は見えない。政府の有識者会議は10月、日本がとりうる行動を記した議長レポートをまとめたが、非保有国が多数賛同した核禁条約を拒否するだけでは実践は望めまい。教皇は広島でのスピーチで「戦争のために原子力を使用することは犯罪」「核戦争の脅威で威嚇することに頼りながら、どうして平和を提案できようか」と述べた。この根源的な指摘を無駄にしてはならない。 *1-3-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115540S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日)緊急事態条項 災害時、内閣が政令 緊急事態条項は「国家緊急権」の思想に基づく。大規模災害や戦争など国家そのものの存立が脅かされる可能性がある場合に、全体の利益のために個人の権利を抑制できるとする考え方だ。緊急時とは「大地震その他の異常かつ大規模な災害」を想定する。2012年の自民党改憲案に盛った「外部からの武力攻撃」「内乱」などは外し、対象を絞った。64条の2で国会議員の任期延長、73条の2で政府の緊急政令を規定する。国会議員の任期延長は、選挙の「適正な実施が困難であると認めるとき」が対象。11年の東日本大震災では被災地の地方選を延期した経緯があり、国政選挙でも同様の事態を想定したものだ。緊急政令の制定は供給が不足する生活物資の買い占めを禁じて配給制にしたり、災害復旧に必要な物資の価格を統制したりすることを想定する。野党からは憲法改正をしなくても緊急時に対応できるとの指摘が出ている。緊急政令で国民の権利が損なわれる可能性を懸念する。 *1-3-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14269201.html (朝日新聞 2019年11月25日) マイナンバーカード「取得強要だ」 省庁全職員の家族まで調査 国家公務員らによるマイナンバーカードの取得を進めるため、各省庁が全職員に対し、取得の有無や申請しない理由を家族(被扶養者)も含めて尋ねる調査をしている。内閣官房と財務省の依頼を受け、氏名を記入して上司に提出するよう求めている。職員からは、法律上の義務でないカード取得を事実上強要されたと感じるとの声が出ている。政府はカードを2021年3月から健康保険証として使えるようにする計画で、6月に閣議決定した「骨太の方針」に、公務員らによる今年度中のカード取得の推進を盛り込んだ。22年度末までに国内のほとんどの住民が保有するとも想定し、「普及を強力に推進する」としている。朝日新聞は各省庁などに送られた7月30日付の依頼文を入手した。内閣官房内閣参事官と国家公務員共済組合(健康保険証の発行者)を所管する財務省給与共済課長の役職名で、各省庁などの部局長から全職員に、家族も含めてカード取得を勧めるよう依頼。10月末時点の取得状況の調査と集計・報告、12月末と来年3月末時点の集計・報告を求めている。調査用紙には個人名の記入欄、家族を含む取得の有無や交付申請の状況、申請しない場合は理由を記す欄があり、「部局長に提出してください」ともある。財務省給与共済課によると、調査対象は国家公務員ら共済組合員約80万人と被扶養者約80万人。同課は「回答に理由を記載するかは自由で、決して強制ではない。人事の査定に影響はない」と話している。調査は取得に向けた課題を洗い出すためで、今後は各省庁などを通じて取得率の低い部局に取得を促すという。マイナンバー法で、カードを取得するかは任意だ。経済産業省の関係者は「公務員は政府の方針に従い、カードを持つべきだというのは分かるが、記名式で家族の取得しない理由まで聞かれ、強要と感じた」。財務省の関係者は「取得を迫るようなやり方に違和感を覚える。ほぼ全住民が保有すると閣議で風呂敷を広げたせいで、普及に必死になっている」と漏らす。マイナンバーカードは16年1月に交付が始まった。利便性の低さや個人情報の漏洩(ろうえい)への懸念などから、交付枚数は約1823万枚、取得率は14・3%にとどまる。総務省所管の団体は7月、普及が進むとの政府の想定に基づいて5500万枚分の製造を発注している。 *1-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115600S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日) 「合区」解消 参院、都道府県単位で 参院選の「合区」は、隣接県を1つの選挙区にすることだ。「1票の格差」を是正するため、2016年から「鳥取・島根」と「徳島・高知」で導入した。地元出身者を送り出せない県ができ地方の声が国政に届きにくくなったとして改憲による解消をめざす。衆参両院議員の選挙の選挙区や投票の方法の根拠となっている47条に新たな規定を追加した。参院の選挙区は改選ごとに各都道府県から少なくとも1人を選出できるように改める。参院議員を「都道府県代表」と位置づければ国会議員を「全国民の代表」と定めた43条と矛盾しかねないという指摘もある。公明党は「参院の大幅な権限見直しにつながる」と慎重だ。 *1-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180503&ng=DGKKZO30115660S8A500C1M10900 (日経新聞 2018年5月3日) 教育充実 環境整備に努力義務 自民党の改憲案は「教育充実」について、教育を受ける権利を定めた憲法26条に3項を設け「国は教育環境の整備に努めなければならない」とする努力義務を明記した。「各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保する」と書き込み、家計負担の軽減を打ち出した。かねて憲法への「教育無償化」明記を目指してきた日本維新の会への配慮がにじむ。同党の改憲原案の一部を取り込むことで改憲に賛同を得たい考えがある。ただ、財源確保が難しいことなどから自民党案は「無償化」の明記は見送った。幼児教育から大学までの教育無償化を訴える維新の協力が得られるかは不透明な状況だ。私立学校に補助金を出す「私学助成」が合憲であることも明確にする。憲法89条が公の財産の支出を禁じる「慈善、教育、博愛の事業」の対象について「公の監督が及ばない」事業とする。 <財政> *2-1:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 (日本国憲法 昭和21年11月3日 抜粋) 第七章 財政 第八十三条 国の財政を処理する権限は、国会の議決に基いて、これを行使しなければ ならない。 第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の 定める条件によることを必要とする。 第八十五条 国費を支出し、又は国が債務を負担するには、国会の議決に基くことを 必要とする。 第八十六条 内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出して、その審議を受け 議決を経なければならない。 第八十七条 予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、 内閣の責任でこれを支出することができる。すべて予備費の支出については、 内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。 第八十八条 すべて皇室財産は、国に属する。すべて皇室の費用は、予算に計上して 国会の議決を経なければならない。 第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益 若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の 事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。 第九十条 国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、 次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。 会計検査院の組織及び権限は、法律でこれを定める。 第九十一条 内閣は、国会及び国民に対し、定期に、少くとも毎年一回、国の財政 状況について報告しなければならない。 *2-2:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000034 (財政法 昭和二十二年法律第三十四号) 第一章 財政総則 第一条 国の予算その他財政の基本に関しては、この法律の定めるところによる。 第二条 収入とは、国の各般の需要を充たすための支払の財源となるべき現金の収納をいい、 支出とは、国の各般の需要を充たすための現金の支払をいう。 ○2 前項の現金の収納には、他の財産の処分又は新らたな債務の負担に因り生ずるものをも 含み、同項の現金の支払には、他の財産の取得又は債務の減少を生ずるものをも含む。 ○3 なお第一項の収入及び支出には、会計間の繰入その他国庫内において行う移換による ものを含む。 ○4 歳入とは、一会計年度における一切の収入をいい、歳出とは、一会計年度における一切の 支出をいう。 第三条 租税を除く外、国が国権に基いて収納する課徴金及び法律上又は事実上国の独占に 属する事業における専売価格若しくは事業料金については、すべて法律又は国会の議決に 基いて定めなければならない。 第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。 但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内 で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。 ○2 前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を 国会に提出しなければならない。 ○3 第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければ ならない。 第五条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入に ついては、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合に おいて、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。 第六条 各会計年度において歳入歳出の決算上剰余を生じた場合においては、当該剰余金の うち、二分の一を下らない金額は、他の法律によるものの外、これを剰余金を生じた 年度の翌翌年度までに、公債又は借入金の償還財源に充てなければならない。 ○2 前項の剰余金の計算については、政令でこれを定める。 第七条 国は、国庫金の出納上必要があるときは、財務省証券を発行し又は日本銀行から一時 借入金をなすことができる。 ○2 前項に規定する財務省証券及び一時借入金は、当該年度の歳入を以て、これを償還しな ければならない。 ○3 財務省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額については、毎会計年度、国会の議決を 経なければならない。 第八条 国の債権の全部若しくは一部を免除し又はその効力を変更するには、法律に基く ことを要する。 第九条 国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、 又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない。 ○2 国の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も 効率的に、これを運用しなければならない。 第二章 会計区分 第十一条 国の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終るものとする。 第十二条 各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければ ならない。 第十三条 国の会計を分つて一般会計及び特別会計とする。 ○2 国が特定の事業を行う場合、特定の資金を保有してその運用を行う場合その他特定の 歳入を以て特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に 限り、法律を以て、特別会計を設置するものとする。 第三章 予算 第一節 総則 第十四条 歳入歳出は、すべて、これを予算に編入しなければならない。 第十四条の二 国は、工事、製造その他の事業で、その完成に数年度を要するものについて、 特に必要がある場合においては、経費の総額及び年割額を定め、予め国会の議決を経て、 その議決するところに従い、数年度にわたつて支出することができる。 ○2 前項の規定により国が支出することができる年限は、当該会計年度以降五箇年度以内と する。但し、予算を以て、国会の議決を経て更にその年限を延長することができる。 ○3 前二項の規定により支出することができる経費は、これを継続費という。 ○4 前三項の規定は、国会が、継続費成立後の会計年度の予算の審議において、当該継続 費につき重ねて審議することを妨げるものではない。 第十四条の三 歳出予算の経費のうち、その性質上又は予算成立後の事由に基き年度内に その支出を終らない見込のあるものについては、予め国会の議決を経て、翌年度に繰り 越して使用することができる。 ○2 前項の規定により翌年度に繰り越して使用することができる経費は、これを繰越明許費 という。 第十五条 法律に基くもの又は歳出予算の金額(第四十三条の三に規定する承認があつた金額を 含む。)若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外、国が債務を負担する行為を なすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。 ○2 前項に規定するものの外、災害復旧その他緊急の必要がある場合においては、国は毎会計 年度、国会の議決を経た金額の範囲内において債務を負担する行為をなすことができる。 ○3 前二項の規定により国が債務を負担する行為に因り支出すべき年限は、当該会計年度以降 五箇年度以内とする。但し、国会の議決により更にその年限を延長するもの並びに外国人 に支給する給料及び恩給、地方公共団体の債務の保証又は債務の元利若しくは利子の補 給、土地、建物の借料及び国際条約に基く分担金に関するもの、その他法律で定めるもの は、この限りでない。 ○4 第二項の規定により国が債務を負担した行為については、次の常会において国会に報告 しなければならない。 ○5 第一項又は第二項の規定により国が債務を負担する行為は、これを国庫債務負担行為 という。 第二節 予算の作成 第十六条 予算は、予算総則、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為 とする。 第十七条 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長は、毎会計年度、その 所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を 作製し、これを内閣における予算の統合調整に供するため、内閣に送付しなければなら ない。 ○2 内閣総理大臣及び各省大臣は、毎会計年度、その所掌に係る歳入、歳出、継続費、繰越 明許費及び国庫債務負担行為の見積に関する書類を作製し、これを財務大臣に送付しな ければならない。 第十八条 財務大臣は、前条の見積を検討して必要な調整を行い、歳入、歳出、継続費、繰越 明許費及び国庫債務負担行為の概算を作製し、閣議の決定を経なければならない。 ○2 内閣は、前項の決定をしようとするときは、国会、裁判所及び会計検査院に係る歳出の 概算については、予め衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官及び会計検査院長に 対しその決定に関し意見を求めなければならない。 第十九条 内閣は、国会、裁判所及び会計検査院の歳出見積を減額した場合においては、国 会、裁判所又は会計検査院の送付に係る歳出見積について、その詳細を歳入歳出予算 に附記するとともに、国会が、国会、裁判所又は会計検査院に係る歳出額を修正する場合 における必要な財源についても明記しなければならない。 第二十条 財務大臣は、毎会計年度、第十八条の閣議決定に基いて、歳入予算明細書を作製 しなければならない。 ○2 衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、会計検査院長並びに内閣総理大臣及び 各省大臣(以下各省各庁の長という。)は、毎会計年度、第十八条の閣議決定のあつた 概算の範囲内で予定経費要求書、継続費要求書、繰越明許費要求書及び国庫債務 負担行為要求書(以下予定経費要求書等という。)を作製し、これを財務大臣に送付しな ければならない。 第二十一条 財務大臣は、歳入予算明細書、衆議院、参議院、裁判所、会計検査院並びに 内閣(内閣府を除く。)、内閣府及び各省(以下「各省各庁」という。)の予定経費 要求書等に基づいて予算を作成し、閣議の決定を経なければならない。 第二十二条 予算総則には、歳入歳出予算、継続費、繰越明許費及び国庫債務負担行為に 関する総括的規定を設ける外、左の事項に関する規定を設けるものとする。 一 第四条第一項但書の規定による公債又は借入金の限度額 二 第四条第三項の規定による公共事業費の範囲 三 第五条但書の規定による日本銀行の公債の引受及び借入金の借入の限度額 四 第七条第三項の規定による財務省証券の発行及び一時借入金の借入の最高額 五 第十五条第二項の規定による国庫債務負担行為の限度額 六 前各号に掲げるものの外、予算の執行に関し必要な事項 七 その他政令で定める事項 第二十三条 歳入歳出予算は、その収入又は支出に関係のある部局等の組織の別に区分し、 その部局等内においては、更に歳入にあつては、その性質に従つて部に大別し、且つ、 各部中においてはこれを款項に区分し、歳出にあつては、その目的に従つてこれを項に 区分しなければならない。 第二十四条 予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める金額を、 歳入歳出予算に計上することができる。 第二十五条 継続費は、その支出に関係のある部局等の組織の別に区分し、その部局等内に おいては、項に区分し、更に各項ごとにその総額及び年割額を示し、且つ、その必要の 理由を明らかにしなければならない。 第二十六条 国庫債務負担行為は、事項ごとに、その必要の理由を明らかにし、且つ、行為を なす年度及び債務負担の限度額を明らかにし、又、必要に応じて行為に基いて支出を なすべき年度、年限又は年割額を示さなければならない。 第二十七条 内閣は、毎会計年度の予算を、前年度の一月中に、国会に提出するのを常例 とする。 第二十八条 国会に提出する予算には、参考のために左の書類を添附しなければならない。 一 歳入予算明細書 二 各省各庁の予定経費要求書等 三 前前年度歳入歳出決算の総計表及び純計表、前年度歳入歳出決算見込の総計表及び 純計表並びに当該年度歳入歳出予算の総計表及び純計表 四 国庫の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度末における 見込に関する調書 五 国債及び借入金の状況に関する前前年度末における実績並びに前年度末及び当該年度 末における現在高の見込及びその償還年次表に関する調書 六 国有財産の前前年度末における現在高並びに前年度末及び当該年度末における現在高 の見込に関する調書 七 国が、出資している主要な法人の資産、負債、損益その他についての前前年度、前年度 及び当該年度の状況に関する調書 八 国庫債務負担行為で翌年度以降に亘るものについての前年度末までの支出額及び支出 額の見込、当該年度以降の支出予定額並びに数会計年度に亘る事業に伴うものについ てはその全体の計画その他事業等の進行状況等に関する調書 九 継続費についての前前年度末までの支出額、前年度末までの支出額及び支出額の見込、 当該年度以降の支出予定額並びに事業の全体の計画及びその進行状況等に関する調書 十 その他財政の状況及び予算の内容を明らかにするため必要な書類 第二十九条 内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、 これを国会に提出することができる。 一 法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に 基づき特に緊要となつた経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを 含む。)又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合 二 予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合 第三十条 内閣は、必要に応じて、一会計年度のうちの一定期間に係る暫定予算を作成し、 これを国会に提出することができる。 ○2 暫定予算は、当該年度の予算が成立したときは、失効するものとし、暫定予算に基く 支出又はこれに基く債務の負担があるときは、これを当該年度の予算に基いてなした ものとみなす。 第三節 予算の執行 第三十一条 予算が成立したときは、内閣は、国会の議決したところに従い、各省各庁の長に 対し、その執行の責に任ずべき歳入歳出予算、継続費及び国庫債務負担行為を配賦する。 ○2 前項の規定により歳入歳出予算及び継続費を配賦する場合においては、項を目に区分 しなければならない。 ○3 財務大臣は、第一項の規定による配賦のあつたときは、会計検査院に通知しなければ ならない。 第三十二条 各省各庁の長は、歳出予算及び継続費については、各項に定める目的の外に これを使用することができない。 第三十三条 各省各庁の長は、歳出予算又は継続費の定める各部局等の経費の金額又は 部局等内の各項の経費の金額については、各部局等の間又は各項の間において彼此 移用することができない。但し、予算の執行上の必要に基き、あらかじめ予算をもつて 国会の議決を経た場合に限り、財務大臣の承認を経て移用することができる。 ○2 各省各庁の長は、各目の経費の金額については、財務大臣の承認を経なければ、目の 間において、彼此流用することができない。 ○3 財務大臣は、第一項但書又は前項の規定に基く移用又は流用について承認をしたときは、 その旨を当該各省各庁の長及び会計検査院に通知しなければならない。 ○4 第一項但書又は第二項の規定により移用又は流用した経費の金額については、歳入 歳出の決算報告書において、これを明らかにするとともに、その理由を記載しなければ ならない。 第三十四条 各省各庁の長は、第三十一条第一項の規定により配賦された予算に基いて、 政令の定めるところにより、支出担当事務職員ごとに支出の所要額を定め、支払の計画に 関する書類を作製して、これを財務大臣に送付し、その承認を経なければならない。 ○2 財務大臣は、国庫金、歳入及び金融の状況並びに経費の支出状況等を勘案して、適時に、 支払の計画の承認に関する方針を作製し、閣議の決定を経なければならない。 ○3 財務大臣は、第一項の支払の計画について承認をしたときは、各省各庁の長に通知する とともに、財務大臣が定める場合を除き、これを日本銀行に通知しなければならない。 第三十四条の二 各省各庁の長は、第三十一条第一項の規定により配賦された歳出予算、 継続費及び国庫債務負担行為のうち、公共事業費その他財務大臣の指定する経費に 係るものについては、政令の定めるところにより、当該歳出予算、継続費又は国庫債務 負担行為に基いてなす支出負担行為(国の支出の原因となる契約その他の行為をいう。 以下同じ。)の実施計画に関する書類を作製して、これを財務大臣に送付し、その承認を 経なければならない。 ○2 財務大臣は、前項の支出負担行為の実施計画を承認したときは、これを各省各庁の長 及び会計検査院に通知しなければならない。 第三十五条 予備費は、財務大臣が、これを管理する。 ○2 各省各庁の長は、予備費の使用を必要と認めるときは、理由、金額及び積算の基礎を 明らかにした調書を作製し、これを財務大臣に送付しなければならない。 ○3 財務大臣は、前項の要求を調査し、これに所要の調整を加えて予備費使用書を作製し、 閣議の決定を求めなければならない。但し、予め閣議の決定を経て財務大臣の指定する 経費については、閣議を経ることを必要とせず、財務大臣が予備費使用書を決定すること ができる。 ○4 予備費使用書が決定したときは、当該使用書に掲げる経費については、第三十一条 第一項の規定により、予算の配賦があつたものとみなす。 ○5 第一項の規定は、第十五条第二項の規定による国庫債務負担行為に、第二項、第三項 本文及び前項の規定は、各省各庁の長が第十五条第二項の規定により国庫債務負担 行為をなす場合に、これを準用する。 第三十六条 予備費を以て支弁した金額については、各省各庁の長は、その調書を作製して、 次の国会の常会の開会後直ちに、これを財務大臣に送付しなければならない。 ○2 財務大臣は、前項の調書に基いて予備費を以て支弁した金額の総調書を作製しなけれ ばならない。 ○3 内閣は、予備費を以て支弁した総調書及び各省各庁の調書を次の常会において国会に 提出して、その承諾を求めなければならない。 ○4 財務大臣は、前項の総調書及び調書を会計検査院に送付しなければならない。 第四章 決算 第三十七条 各省各庁の長は、毎会計年度、財務大臣の定めるところにより、その所掌に係る 歳入及び歳出の決算報告書並びに国の債務に関する計算書を作製し、これを財務大臣に 送付しなければならない。 ○2 財務大臣は、前項の歳入決算報告書に基いて、歳入予算明細書と同一の区分により、 歳入決算明細書を作製しなければならない。 ○3 各省各庁の長は、その所掌の継続費に係る事業が完成した場合においては、財務大臣 の定めるところにより、継続費決算報告書を作製し、これを財務大臣に送付しなければ ならない。 第三十八条 財務大臣は、歳入決算明細書及び歳出の決算報告書に基いて、歳入歳出の 決算を作成しなければならない。 ○2 歳入歳出の決算は、歳入歳出予算と同一の区分により、これを作製し、且つ、これに 左の事項を明らかにしなければならない。 (一) 歳入 一 歳入予算額 二 徴収決定済額(徴収決定のない歳入については収納後に徴収済として整理した額) 三 収納済歳入額 四 不納欠損額 五 収納未済歳入額 (二) 歳出 一 歳出予算額 二 前年度繰越額 三 予備費使用額 四 流用等増減額 五 支出済歳出額 六 翌年度繰越額 七 不用額 第三十九条 内閣は、歳入歳出決算に、歳入決算明細書、各省各庁の歳出決算報告書及び 継続費決算報告書並びに国の債務に関する計算書を添附して、これを翌年度の十一月 三十日までに会計検査院に送付しなければならない。 第四十条 内閣は、会計検査院の検査を経た歳入歳出決算を、翌年度開会の常会において 国会に提出するのを常例とする。 ○2 前項の歳入歳出決算には、会計検査院の検査報告の外、歳入決算明細書、各省各庁 の歳出決算報告書及び継続費決算報告書並びに国の債務に関する計算書を添附する。 第四十一条 毎会計年度において、歳入歳出の決算上剰余を生じたときは、これをその翌年 度の歳入に繰り入れるものとする。 第五章 雑則 第四十二条 繰越明許費の金額を除く外、毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを 翌年度において使用することができない。但し、歳出予算の経費の金額のうち、年度内に 支出負担行為をなし避け難い事故のため年度内に支出を終らなかつたもの(当該支出 負担行為に係る工事その他の事業の遂行上の必要に基きこれに関連して支出を要する 経費の金額を含む。)は、これを翌年度に繰り越して使用することができる。 第四十三条 各省各庁の長は、第十四条の三第一項又は前条但書の規定による繰越を必要 とするときは、繰越計算書を作製し、事項ごとに、その事由及び金額を明らかにして、 財務大臣の承認を経なければならない。 ○2 前項の承認があつたときは、当該経費に係る歳出予算は、その承認があつた金額の 範囲内において、これを翌年度に繰り越して使用することができる。 ○3 各省各庁の長は、前項の規定による繰越をしたときは、事項ごとに、その金額を明らか にして、財務大臣及び会計検査院に通知しなければならない。 ○4 第二項の規定により繰越をしたときは、当該経費については、第三十一条第一項の規定 による予算の配賦があつたものとみなす。この場合においては、同条第三項の規定に よる通知は、これを必要としない。 第四十三条の二 継続費の毎会計年度の年割額に係る歳出予算の経費の金額のうち、その 年度内に支出を終らなかつたものは、第四十二条の規定にかかわらず、継続費に係る 事業の完成年度まで、逓次繰り越して使用することができる。 ○2 前条第三項及び第四項の規定は、前項の規定により繰越をした場合に、これを準用する。 第四十三条の三 各省各庁の長は、繰越明許費の金額について、予算の執行上やむを得ない 事由がある場合においては、事項ごとに、その事由及び金額を明らかにし、財務大臣の 承認を経て、その承認があつた金額の範囲内において、翌年度にわたつて支出すべき 債務を負担することができる。 第四十四条 国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。 第四十五条 各特別会計において必要がある場合には、この法律の規定と異なる定めを なすことができる。 第四十六条 内閣は、予算が成立したときは、直ちに予算、前前年度の歳入歳出決算並びに 公債、借入金及び国有財産の現在高その他財政に関する一般の事項について、印刷物、 講演その他適当な方法で国民に報告しなければならない。 ○2 前項に規定するものの外、内閣は、少くとも毎四半期ごとに、予算使用の状況、国庫の 状況その他財政の状況について、国会及び国民に報告しなければならない。 第四十六条の二 この法律又はこの法律に基づく命令の規定による手続については、行政 手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成十四年法律第百五十一号) 第三条及び第四条の規定は、適用しない。 第四十六条の三 この法律又はこの法律に基づく命令の規定により作成することとされている 書類等(書類、調書その他文字、図形等人の知覚によつて認識することができる情報が 記載された紙その他の有体物をいう。次条において同じ。)については、当該書類等に 記載すべき事項を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚に よつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報 処理の用に供されるものとして財務大臣が定めるものをいう。次条第一項において 同じ。)の作成をもつて、当該書類等の作成に代えることができる。この場合において、 当該電磁的記録は、当該書類等とみなす。 第四十六条の四 この法律又はこの法律に基づく命令の規定による書類等の提出については、 当該書類等が電磁的記録で作成されている場合には、電磁的方法(電子情報処理組織を 使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて財務大臣が定めるものを いう。次項において同じ。)をもつて行うことができる。 ○2 前項の規定により書類等の提出が電磁的方法によつて行われたときは、当該書類等の 提出を受けるべき者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に 当該提出を受けるべき者に到達したものとみなす。 第四十七条 この法律の施行に関し必要な事項は、政令で、これを定める。 附 則 抄 第一条 この法律は、昭和二十二年四月一日から、これを施行する。但し、第十七条第一項、 第十八条第二項、第十九条、第三十条、第三十一条、第三十五条並びに第三十六条の 規定は、日本国憲法施行の日から、これを施行し、第三条、第十条及び第三十四条の 規定の施行の日は、政令でこれを定める。 ○2 第四条及び第五条の規定は、昭和二十三年度以後の会計年度の予算に計上される 公債又は借入金について、第七条、第三章の規定(第十七条第一項、第十八条第二項、 第十九条、第二十八条、第三十条、第三十一条並びに第三十四条乃至第三十六条の 規定を除く。)及び第四章の規定は、昭和二十二年度以後の会計年度の予算及び決算 について、これを適用する。 第一条の二 内閣は、当分の間、第三十一条第一項の規定により歳入歳出予算を配賦する 場合において、当該配賦の際、目に区分し難い項があるときは、同条第二項の規定に かかわらず、当該項に限り、目の区分をしないで配賦することができる。 ○2 前項の規定により目の区分をしないで配賦した場合においては、各省各庁の長は、 当該項に係る歳出予算の執行の時までに、財務大臣の承認を経て、目の区分をしな ければならない。 ○3 財務大臣は、前項の規定により目の区分について承認をしたときは、その旨を会計 検査院に通知しなければならない。 第三条 この法律施行前になした予備費の支出並びに昭和二十年度及び同二十一年度の 決算に関しては、なお従前の例による。 第四条 従来予算外国庫の負担となるべき契約に関する件として帝国議会の協賛を経た 事項は、日本国憲法施行後においては、国庫債務負担行為となるものとする。 但し、この場合においては、改正後の第十五条第三項の規定は、これを適用しない。 第五条 左に掲げる法令は、これを廃止する。 明治四十四年法律第二号(公共団体に対する工事補助費繰越使用に関する法律) 明治五年太政官布告第十七号(政府に対する寄附に関する件) 附 則 (昭和二四年四月一日法律第二三号) 抄 1 この法律は、昭和二十四年四月一日から施行する。但し、第二十三条及び附則第一条の 二の改正規定は、昭和二十四年度の予算から適用する。 附 則 (昭和二四年五月三一日法律第一四五号) 抄 1 この法律は、昭和二十四年六月一日から施行する。 附 則 (昭和二五年三月三一日法律第六〇号) 抄 1 この法律は、公布の日から施行し、昭和二十五年度の予算から適用する。 附 則 (昭和二五年五月四日法律第一四一号) 抄 1 この法律は、公布の日から施行する。 附 則 (昭和二六年六月一日法律第一七三号) 抄 1 この法律は、公布の日から施行する。 附 則 (昭和二七年三月五日法律第四号) 抄 1 この法律中継続費、歳出予算及び支出予算の区分並びに繰越に係る部分は、公布の日 から、その他の部分は、昭和二十七年四月一日から施行する。但し、改正後の財政法、 会計法等の規定中継続費、歳出予算及び支出予算の区分並びに支出負担行為の 実施計画に係る部分は、昭和二十七年度分の予算から適用する。 附 則 (昭和二七年七月三一日法律第二六八号) 抄 1 この法律は、昭和二十七年八月一日から施行する。 附 則 (昭和二九年五月八日法律第九〇号) 抄 1 この法律は、公布の日から施行する。 2 改正後の財政法の規定は、昭和二十九年度分の予算から適用する。 附 則 (昭和三七年五月八日法律第一〇八号) 抄 1 この法律は、公布の日から施行する。 附 則 (昭和四〇年四月一二日法律第四六号) この法律は、公布の日から施行し、改正後の附則第七条の規定は、昭和四十年度分の 予算から適用する。 附 則 (昭和五三年五月二三日法律第五五号) 抄 (施行期日等) 1 この法律は、公布の日から施行する。 附 則 (平成三年九月一九日法律第八六号) 抄 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から施行する。 附 則 (平成九年一二月五日法律第一〇九号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、公布の日から施行する。 附 則 (平成一一年七月一六日法律第一〇二号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)の施行の 日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。 一 略 二 附則第十条第一項及び第五項、第十四条第三項、第二十三条、第二十八条並びに 第三十条の規定 公布の日 (委員等の任期に関する経過措置) 第二十八条 この法律の施行の日の前日において次に掲げる従前の審議会その他の機関の 会長、委員その他の職員である者(任期の定めのない者を除く。)の任期は、当該会長、 委員その他の職員の任期を定めたそれぞれの法律の規定にかかわらず、その日に 満了する。 一から十三まで 略 十四 財政制度審議会 (別に定める経過措置) 第三十条 第二条から前条までに規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要となる 経過措置は、別に法律で定める。 附 則 (平成一一年一二月二二日法律第一六〇号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律(第二条及び第三条を除く。)は、平成十三年一月六日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。 一 第九百九十五条(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律の一部を 改正する法律附則の改正規定に係る部分に限る。)、第千三百五条、第千三百六条、 第千三百二十四条第二項、第千三百二十六条第二項及び第千三百四十四条の規定 公布の日 附 則 (平成一四年一二月一三日法律第一五二号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律(平成 十四年法律第百五十一号)の施行の日から施行する。 (その他の経過措置の政令への委任) 第五条 前三条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で 定める。 附 則 (平成一八年六月七日法律第五三号) 抄 (施行期日) 第一条 この法律は、平成十九年四月一日から施行する。 <主権在民を侵害する報道とその理由> PS(2019年11月27、28、29日、12月1日追加):これだけ多くの政治的事象が起こっているのに、TVは全局で、*3-1の「桜を見る会」を政治家のスキャンダルに仕立てあげ、*3-2の沢尻エリカさんの「大麻中毒」もまた、全局でしつこく報道している。しかし、「桜を見る会」の予算は、過去5年間は約1766万円、来年度予算の概算要求も約5700万円と、他の無駄遣いに比べると重箱の隅をつついたような数字で重要性が低い。野党は、国会議員70人余りからなる追及本部を立ち上げ、不法行為にはならないことについて「安倍首相や昭恵夫の推薦だった」と追求しようとしているが、「お友達だけを大切にしている」と言うのは、生徒が「先生がえこひいきする」と言っているのと同じレベルで情けない。それとも、政策に関する議論もしているのだが、TVがスキャンダルしか取り上げないのだろうか?さらに、沢尻エリカさんたちの薬物中毒のしつこい報道も「国民がいかにくだらないか」を国民に印象付けている。 しかし、それらは、「国民が選挙で選んだ政治家はろくなことをせず、国民も愚かなので、民主主義(主権在民)はやめて天皇を元首とし、官が主導するのがよい」という結論を導き出す前哨戦となるため、メディアが真に民主主義の媒体として機能しなかった代償は大きい。だから、メディアは真実かつ倫理的でまともな報道をすることが求められるのである。 また、*3-3のように、週刊文春が「安倍首相の事務所スタッフが『桜を見る会』のツアーに参加する地元支援者らに同行して上京する旅費を政治資金で支払った疑いがあり、事実なら事務所や後援会に『収支が発生していない』と説明した首相の説明と矛盾する可能性がある」などと報じているが、事務所スタッフが後援会の人に付き添って同行するのは仕事による出張であるため、これらのスタッフに政治資金から出張旅費を支払うのは何の問題もなく、むしろ必要なことで、いちゃもんが過ぎるのである。なお、事務所スタッフが後援会の人に付き添っても、後援会の人は旅行会社やホテルに旅費等の支払いをしているため、何ら問題はない。 このような中、*3-4のように、佐賀新聞が「10兆円規模の経済対策は過剰だ」と指摘しているが、私は、これらの中身を精査して災害対策や景気対策名目のその場限りの支出を排除したり、より低コストで将来性の高いものに変更したりする必要があると考える。何故なら、これらは、結局は、さまざまな形で国民負担に繋がるからである。 さらに、東京新聞はじめメディアが、*3-5のように、内閣府が共産党の宮本衆議院議員による関連資料要求の後に安倍首相主催の「桜を見る会」の招待者名簿を廃棄したと書いているが、①どこに行ったか ②選挙で誰を応援したか については個人情報であるため、名簿を廃棄していなかったとしても本人の同意なく開示すれば個人情報保護法(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=415AC0000000057)違反になる。にもかかわらず、しつこく廃棄の時間を調べたり、「デジタルデータを復元せよ」「情報開示は・・」などと言っているのは、与野党・メディアとも個人情報保護の意味がわかっていない。さらに、招待者の中に“反社会的勢力(定義が疑問)”が入っていたそうだが、首相が招待者の1人1人をチェックするわけもなく、首相はもっと大きな仕事をするものだ。 なお、*3-6に、佐賀新聞が既に私が上記で答えたこと以外に、「①後ろめたいことがないのなら、なおさら国会に出て可能な限り関係書類を示して野党の質問に答えるべき」「②安倍首相が、各界において功績・功労のあった方々という招待基準を無視し、後援会関係者というだけで招いていたとすれば公費を使って後援会関係者をもてなしたことになる」「③できるはずの潔白の証明をしようとしないのは、自ら潔白ではないと認めたことになる」などを記載しているが、このうち①③については、安倍首相を辞めさせるために野党が追及しているため、いろいろ説明して合理的であったとしても、別の事案を探して汚いかのように言うと思われる。また、②についても、叙勲(これにはおかしな基準が多いと思うが)ではあるまいし、「(どこにでも咲いている)桜を見る会」に、それほど厳格な招待基準が必要とは思われず、招待客に会を主催するホストの好みが入るのは自然だろう。また、価格はホテル側と合意していれば問題なく、立食パーティーなら人数分の食事を準備しているケースの方がむしろ少ない上、価格交渉するのも普通だ。つまり、国の正確な財務諸表やその明細書がないため、金額や性格の重要性に応じて予算委員会・決算委員会で質問時間を割り当てることができず、重箱の隅をつついて政権闘争するのが野党ということになっているのが国民にとって最大の不幸なのである。 *3-1:https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191125/k10012190551000.html (NHK 2019年11月25日) 「桜を見る会」野党側が追及本部立ち上げ 山口県訪問し調査へ 総理大臣主催の「桜を見る会」をめぐり、野党側が追及本部を立ち上げ、ことしの招待者のうち1000人程度が安倍総理大臣からの推薦だったことなどについて、地元の山口県下関市を訪れるなどして調査を進めることになりました。立憲民主党、国民民主党、共産党など野党側は25日、「桜を見る会」の追及チームの体制を強化して国会議員70人余りからなる「追及本部」を立ち上げ、初会合を開きました。本部長に就任した立憲民主党の福山幹事長は、「真相究明を進め、倒閣に向けた運動を進めていく。安倍政権は、自分たちのお友達だけを大切にして、国民生活はほったらかしだ。追及の手を緩めず一致結束して頑張りたい」と述べました。 そして、ことしの招待者のうち1000人程度が安倍総理大臣からの推薦だったことや、昭恵夫人からの推薦もあったこと、それに招待者名簿が野党議員が資料請求したのと同じ日に廃棄されたことなどについて、8つの班に分かれて調査を進めることを決めました。今後は、安倍総理大臣の地元の山口県下関市などを訪れて関係者から話を聞きたいとしているほか、引き続き安倍総理大臣に国会で説明責任を果たすよう求めていくことにしています。 *3-2:https://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/entertainment/news/CK2019111602100052.html (中日新聞 2019年11月16日) 過去に「大麻中毒」など薬物使用疑惑報道 逮捕された“エリカ様“沢尻エリカ容疑者の横顔 東京都内の自宅で合成麻薬MDMAを所持したとして、警視庁は16日、麻薬取締法違反容疑で女優の沢尻エリカ容疑者(33)を逮捕した。沢尻容疑者は、2005年に出演した映画「パッチギ!」で日本アカデミー新人賞をはじめ、映画賞に多数輝き、フジテレビ系ドラマ「1リットルの涙」での演技も高く評価され、一躍人気女優の座に上り詰めた。だが、07年9月、自身が主演した映画「クローズド・ノート」の舞台あいさつで、「別に…」と答え、自由奔放な振る舞いが批判されるなど話題になり、“エリカさま”と呼ばれた時期もあった。小学6年でモデルとして芸能界デビュー、少女ファッション誌「ニコラ」のモデルも務めた。03年、TBS系「ホットマン」で連続ドラマに初出演し、04年に「問題のない私たち」で映画初出演を果たした。演技力が買われ、以降映画出演が続き、「シュガー&スパイス 風味絶佳」(06年)「手紙」(同)、「新宿スワン」(15年)、「不能犯」(18年)などで主演した。12年の主演作「ヘルタースケルター」ではヌードを披露。転落していく女優を演じ話題になった。「億男」(18年)、「人間失格 太宰治と3人の女たち」(19年)でも存在感のある役を演じたばかりだった。プライベートでは、09年にはクリエイター高城剛さんと結婚したが、その後、夫婦関係をめぐり、迷走の末、13年に離婚した。女優としてのキャリアを重ねていく一方、薬物との接点もこれまで指摘され、「大麻中毒」など薬物使用疑惑が週刊誌などで報じられていた。 *3-3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/369062 (北海道新聞 2019/11/27) 首相事務所、桜見る会旅費を政治資金から支出か 週刊文春報道 2015年の「桜を見る会」を巡り、安倍晋三首相の事務所スタッフがツアーに参加する地元支援者らに同行して上京する旅費を、政治資金で支払った疑いがあると、週刊文春が27日、ウェブサイトで報じた。事実なら事務所や後援会に「収支が発生していない」とする首相の説明と矛盾する可能性があり、野党が追及を強めそうだ。ウェブサイトなどによると、ツアーには地元事務所のスタッフが多数同行しており、約89万円はスタッフの旅費だった疑いがあるとしている。首相はこれまで、旅費や宿泊費などは参加者が直接旅行代理店に支払ったと説明。違法ではないとの考えを示している。 *3-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/458775 (佐賀新聞 2019年11月27日) 経済対策:10兆円規模は過剰だ 政府は来週にも経済対策を取りまとめ、2019年度補正予算、20年度当初予算にその経費を計上する。20年早々から切れ目なく執行する「15カ月予算」として、自然災害からの復旧・復興を加速させ、海外経済の下振れリスクへ備える方針だ。与党幹部らの要請も背景に、総額は10兆円規模に膨らむ見通しとなっている。堤防の強化や被災者の生活再建に向けたケアなど台風などによって大規模な被害を受けた地域への迅速な支援は必要だ。日米貿易協定による米国産牛肉の輸入増に直面する畜産農家への補助なども、一定程度は考えなければならないだろう。米中貿易摩擦による企業業績への圧力も高まってきた。英国の欧州連合(EU)離脱問題も企業活動を萎縮させている。こうした情勢に対する警戒は強めなければならない。しかし、広範囲に景気を喚起する大型対策が急務となっている局面ではない。実際、政府の景気認識も「緩やかに回復している」との判断を維持している。そんな中で、経済対策に10兆円を費やすのは過剰と言うしかない。むしろ、景気の安定を利用して、後退を続けてきた財政再建に向けた取り組みを立て直す方が、政策の方向性としては合理性があるだろう。消費税増税の負担軽減に向けた追加対策は既定路線だが、そのほかの対策は、対策名目の「間口」の広さに乗じて、詰め込んでいる感さえある。自動ブレーキなどの先端的な安全機能を備えた「安全運転サポート車(サポカー)」普及に向けた助成、小学5年生から中学3年生がパソコンを1人1台使える環境の整備、ドローンなど先端技術を使ったスマート農業の促進など、政府が盛り込もうとしている対策は、政策自体としては今の経済社会情勢に合致したものだろう。反対する理由はない。しかし、経済対策として直ちに予算計上して迅速に実施していく必要性については首をかしげざるを得ない。この間、幹事長ら自民党幹部らが相次いで補正予算を巡り10兆円規模を求めて発言、不要不急と思える事業が次々と対策に紛れ込んでいった。2閣僚辞任や「桜を見る会」問題で政権に対する逆風が強まっていることが背景にあると見るのは、うがちすぎだろうか。政府は対策に盛り込む予定の全ての政策について、早急な予算計上が必要かどうか改めて点検し、必要性が薄ければ採用を見送り、規模を絞り込むべきだろう。経済対策を盛り込む19年度補正、20年度当初予算は国会で審議に付される。政府が説明責任を果たすのは当然だが、政府を追及する野党の責任も重いことは指摘しておきたい。今回の対策では、財政投融資も活用される。成田空港の新滑走路や新名神高速道路の6車線化などに少なくとも3兆円を投じるという。財投は一般会計予算と違い、政府が財投債を発行して市場から資金を調達、それを長期間、低利で貸し付ける制度だ。国債のように税収で償還する仕組みではなく、国の借金には含めないため、対策規模を拡大する手段としては使い勝手がいいのかもしれない。だが、資金が計画通りに返済されなければ、国民負担につながることは言うまでもない。 *3-5:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201911/CK2019112702000148.html (東京新聞 2019年11月27日) 桜を見る会 名簿廃棄、資料要求後 「別の担当課、知らず」 安倍晋三首相が主催した「桜を見る会」の今年の招待者名簿を巡り、内閣府は二十六日、野党の追及本部が国会内で開いた会合で、五月九日に名簿を廃棄した時間帯が、共産党の宮本徹衆院議員による関連資料要求よりも後だったことを明らかにした。廃棄と資料要求を担当した課が別だったため「廃棄の時点で、資料要求は知らなかった」と説明した。野党は「証拠隠滅だ」と改めて批判した。内閣府によると、名簿の廃棄は大臣官房人事課が担当し、五月九日午後の早い時間帯に行った。一方、宮本氏の資料要求は同日正午すぎに大臣官房総務課が把握した。総務課は資料要求について速やかに人事課に伝えず、人事課の担当者が要求を知らないまま名簿を廃棄したという。今年の招待者名簿については、内閣府が宮本氏から資料要求があった五月九日に廃棄したことを明らかにしていたが、廃棄の時間帯が資料要求よりも前か後かには言及していなかった。自民党の二階俊博幹事長は二十六日の記者会見で招待者名簿について「後々の記録、来年の参考にもなるから、いちいち廃棄する必要はない」と苦言を呈した。菅義偉(すがよしひで)官房長官は記者会見で、桜を見る会の招待客を巡り、首相や官房長官らの推薦が二〇一四年の約三千四百人から今年は約二千人に減っているのは過少説明との野党の指摘に対し「招待者名簿を既に廃棄しており、確認できていない」と釈明した。菅氏は、首相や官房長官らの推薦について「自民党関係者からの推薦も多く入っていたのではないか」との見方も示した。 *3-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/460110 (佐賀新聞 2019年11月30日) 桜を見る会、首相は国会で説明を 安倍晋三首相主催の「桜を見る会」を巡る問題がなかなか収束しない。新たな疑問点が次々と指摘される一方、政府側の説明は納得できるものではなく、公的行事を私物化していたのではないかという疑いは深まる一方だ。特に、真相解明に必要な招待者名簿が、共産党議員から提出を求められると、開催から1カ月もたっていないのにもかかわらず、大型シュレッダーで細断、破棄された事実は、公的行事私物化の事実を隠そうとしたのではないかとの深刻な疑念を生んでいる。招待者推薦の内訳から後援会が「桜を見る会」の前日に開いた前夜祭の収支、そして名簿破棄に至るまでの詳細を把握でき、また説明する責任があるのは当事者でもある安倍首相以外にいない。後ろめたいことがないのであれば、なおさら国会に出て、可能な限り、関係書類を示して野党の質問に答えるべきだ。次から次に疑わしい新事実が出てきて、「桜を見る会」を巡る問題は拡散気味だが、大きく三つに分類することができる。まず焦点になったのは安倍首相が「各界において功績、功労のあった方々」という招待基準を無視して、後援会関係者を招いていたのではないかという問題だ。桜を見る会は公費で賄われ、酒食も振る舞われる。仮に後援会関係者というだけで招いていたのだとすれば公費を使って後援会関係者をおもてなししていたことになり、まさに私物化に当たる。次が、桜を見る会前日に後援会関係者向けに開いた「前夜祭」の夕食会とその会費の金額だ。会場が東京都内の高級ホテルだったにもかかわらず会費が相場より安い5千円だったことから、安倍首相の議員事務所が実費不足分を補った公選法違反の可能性や政治資金収支報告書への不記載の疑いが指摘されている。桜を見る会を私物化したとの批判に対して安倍首相は11月20日の参院本会議での答弁で、「招待者の基準が曖昧で、結果として招待者の数が膨れあがった」と主張したが、厳格に解釈すべき基準を曖昧に解釈していたのが実態で、答弁は論点をすり替えている。また、前夜祭については「夕食会を含め、旅費、宿泊費など全ての費用は参加者の自己負担で支払われている。安倍事務所や後援会としての収入、支出は一切ないことを確認した」と強調。金額に関しては「(参加者の)大多数がホテルの宿泊者という事情を踏まえ、ホテル側が設定した価格との報告を受けている。毎年使っているとか、規模であるとか、宿泊をしているかをホテル側が総合的に勘案して決めることだ」と述べたが、根拠となる資料は示されなかった。さらに深刻で、説明に説得力がないのは招待者名簿を破棄してしまったことだ。共産党議員の提出要求の1時間後に大型シュレッダーで細断されており、名簿に安倍首相にとって都合の悪い部分があり、国会に提出されないよう「証拠隠滅」したのではないかとみられている。通常は可能なはずの電子データの復元についても菅義偉官房長官は「事務方からできないと聞いている」と説明にならない答弁を繰り返すだけだ。できるはずの潔白の証明をしようとしないのでは自ら潔白ではないと認めていることになる。 <憲法が守られていない事例(その1)-健康で文化的な生活> PS(2019年11月28日追加): *4-1・*4-2のように、パートなど非正規で働く人たちの厚生年金の加入要件は、現在は「従業員501人以上の企業に勤務し、週20時間以上働いて、月給8万8千円以上」に限られているが、2022年10月に「101人以上の企業」、2024年10月に「51人以上の企業」に順次引き下げる案が有力だそうだ。対象拡大を目指す背景には、国民年金だけの人が低年金に陥らないようすることと、現在の年金保険料収入を増やす狙いがあるが、労働時間や賃金要件は現状を維持し、50人以下の企業も対象から外れ、政府は「中小企業の負担感や生産性向上に配慮し、助成金等の支援策も検討する」としている。 しかし、*4-3のように、日本国憲法では「25条:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」「27条:すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」と規定されており、要件に満たない労働者は不十分な社会保障でよいとしてきたのが誤りである上、いつまでも専業主婦世帯をモデルとするのも、憲法27条及び男女雇用機会均等法違反だ。 さらに、中小企業(定義不明)の生産性が低いとは限らず、むしろ厚労省始め役所の生産性の方が低そうで、社会保険料くらいは負担できるシステムにするのが筋であるし、その方が誰にとっても福利が増すわけである。 *4-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/458871 (佐賀新聞 2019年11月27日) 厚生年金加入要件、2段階で拡大、22年に101人以上の企業 パートなど非正規で働く人たちの厚生年金で、政府、与党が加入対象となる企業要件を2段階で拡大する検討を始めたことが27日、分かった。現在、加入が義務付けられている企業の規模は「従業員501人以上」。これを2022年10月に「101人以上」、24年10月に「51人以上」に順次引き下げる案が有力だ。厚生年金の保険料は労使折半。51人以上に引き下げれば新たに65万人が加入対象となる一方、企業の保険料負担は1590億円増える見通し。政府は将来的な企業要件の撤廃を目指しているが、中小企業の経営面への配慮などから、今回の制度改正では撤廃の時期は明記しない方向。これまで一度に51人以上に引き下げる方向で検討してきたが、経営への打撃を最小限に抑えたい中小企業が慎重な対応を求めていた。来年の通常国会に関連法案を提出する。対象拡大を目指す背景には、国民年金だけの人が将来、低年金に陥らないよう年金額を手厚くする狙いがある。パートやアルバイトで働く人は現在、(1)従業員501人以上の企業に勤務(2)労働が週20時間以上(3)月給8万8千円以上―などの要件を満たせば、厚生年金の加入対象となる。今回の制度改正では企業要件を引き下げる一方、労働時間や賃金の要件は現状を維持する。26日に開かれた政府の全世代型社会保障検討会議では、議長を務める安倍晋三首相が「中小企業の負担感や生産性向上に配慮しつつ、厚生年金の適用範囲を考える」と述べていた。 *4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14274047.html (朝日新聞 2019年11月28日) パート厚生年金、2段階拡大 従業員51人以上に 厚労省調整 厚生労働省は、厚生年金が適用されるパートらの範囲を2段階で広げる方向で調整に入った。今は勤め先の企業規模が「従業員501人以上」であることが条件だが、2022年10月に「101人以上」、24年10月から「51人以上」に引き下げる。新たな保険料負担が生じる中小企業に配慮し、一定の準備期間を設けて理解を得たい考えだ。厚生年金には、正社員などフルタイムで働く人のほか、「501人以上の企業で週20時間以上働き、月収8万8千円以上」などの条件を満たすパートらも加入できる。今は約40万人だが、厚労省の試算では、適用対象の企業規模を51人以上にすると約65万人増える。政府は、厚生年金の方が国民年金よりも年金額が高いため、適用拡大によって低年金・無年金になる人を減らせるとしている。保険料収入が増え、年金財政が改善する効果も見込む。厚労省によると、企業規模を51人以上にした場合、モデル世帯の将来の年金水準は0・3ポイント上がる。一方、厚生年金の保険料は労使折半で払う。パートの加入者が1人増えると、一緒に生じる健康保険料とあわせて、年約25万円の負担増になるとの厚労省の試算もある。中小企業側は、最低賃金の引き上げなども課題になる中、保険料負担まで増えれば「経営に大きなインパクトを及ぼしかねない」などと慎重論を展開。また、パート自身が保険料負担を避けようと働き方を調整すれば、人手不足が加速する恐れもあると指摘している。ただ、政府は来年の通常国会に適用拡大の法案を提出する方針。中小企業側の理解を得るため、助成金などの支援策も検討している。 *4-3:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?id=174 (日本国憲法より抜粋) 第25条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上 及び増進に努めなければならない。 第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。 <憲法が守られていない事例(その2)-違憲立法審査権> PS(2019年11月29日、12月5日追加):日本国憲法は、「81条:最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と定めており、これは最高裁判所が違憲法令審査権を有する終審裁判所であることを規定したものであるため、違憲立法か否かを判断するには、(よく必要と言われる)憲法裁判所は不要だ。 さらに、民事訴訟・行政訴訟など下部の法律で要求される当事者適格(特に原告適格)や訴えの利益などの訴訟要件を満たした訴訟でなければ違憲立法を提訴する資格がないとし、訴えの利益を狭く解釈しているのも、実質的に国民が違憲立法審査権を行使するのを困難にしている。 そのような中、*5-1のように、戦後の憲法裁判記録が多数廃棄され、自衛隊や基地問題に関する当初の議論が検証不可能になったのは、大きな問題だ。 また、日本政府は、*5-2のように、米国主導の「有志連合」には参加しないが、国会承認がいらず防衛大臣の判断のみで派遣可能な「調査・研究」という名目で、もともとは日本と友好関係を持っていた中東イランに自衛隊を派遣するそうだ。しかし、危機の迫った日本の船舶を護衛するわけでもないのに、単なる情報収集態勢強化のために自衛隊を遠方に派遣するのは、違憲の可能性が高い安全保障関係法令からもはみ出している。そのため、敵を増やす結果しか招かなそうなこの自衛隊派遣について、国会はその理由・目的・結果をよく検討すべきだが、この件に関しては「桜を見る会」ほどにも議論できないのが、我が国の深刻な問題なのである。 *5-1:https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019080401001662.html (東京新聞 2019年8月4日) 戦後憲法裁判の記録を多数廃棄 自衛隊や基地問題、検証不能に 自衛隊に一審札幌地裁で違憲判決が出た長沼ナイキ訴訟や、沖縄の米軍用地の強制使用を巡る代理署名訴訟をはじめ、戦後の重要な民事憲法裁判の記録多数を全国の裁判所が既に廃棄処分していたことが4日分かった。代表的な憲法判例集に掲載された137件について共同通信が調査した結果、廃棄は118件(86%)、保存は18件(13%)、不明1件だった。判決文など結論文書はおおむね残されていたが、歴史的裁判の審理過程の文書が失われ検証が不可能になった。裁判所の規定は重要裁判記録の保存を義務づけ、専門家は違反の疑いを指摘する。著名裁判記録の廃棄は東京地裁で一部判明していた。 *5-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14281400.html (朝日新聞社説 2019年12月4日) 中東へ自衛隊 国会素通りは許されぬ 緊張が高まり、不測の事態も想定される中東に自衛隊を派遣することの重みを、安倍政権はどう考えているのか。政府・与党だけの手続きで拙速に決めることは許されない。国会の場で、派遣の是非から徹底的に議論すべきだ。中東海域への自衛隊派遣について、政府が年内の閣議決定をめざしている。早ければ年明けにも、護衛艦1隻を向かわせるほか、海賊対処のためソマリア沖で活動中のP3C哨戒機1機の任務を切り替える。米国のトランプ政権が核合意から一方的に離脱し、米国とイランの対立は深まるばかりだ。政府は米国が主導する「有志連合」への参加を見送り、独自派遣を強調することで、イランを刺激しまいとしている。だが、有志連合とは緊密に情報共有を進める方針であり、状況次第で、米国に加担したと見られても仕方あるまい。朝日新聞の社説は、関係国の対話と外交努力によって緊張緩和を図るべきだと、繰り返し主張してきた。米国の同盟国であり、イランとも友好関係を保つ日本が、積極的に仲介役を果たすことも求めてきた。こうした取り組みに逆行しかねない自衛隊派遣には賛同できない。法的根拠にも重大な疑義がある。日本関係の船舶を護衛するわけではなく、情報収集態勢の強化が目的として、防衛省設置法の「調査・研究」に基づく派遣だという。国会承認がいらないだけでなく、防衛相の判断のみで実施可能だ。自衛隊の活動へのチェックを骨抜きにする拡大解釈というほかない。政府が今回、閣議決定という手続きをとることにしたのは、公明党などにある懸念に応え、政府・与党全体の意思統一を図る狙いがあるのだろう。しかし、先に派遣ありきの議論で、数々の問題が解消されるとは思えない。政府は現地の情勢について、船舶の護衛がただちに必要な状況ではないと説明している。それなのに、派遣の決定を急ぐのはなぜか。活動を始めた有志連合と足並みをそろえ、米国への協力姿勢をアピールする狙いがあると見ざるをえない。だが、いったん派遣すれば、撤収の判断は難しくなる。立ち止まる機会は、今しかない。この節目に、国会論議を素通りすることは許されない。9日に会期末を迎える今国会では、いまだ中東派遣を巡る突っ込んだ質疑が行われていない。だとすれば、国会の会期を延長し、日本が採るべき選択肢を議論すべきではないか。そのことこそ、政治に課せられた国民への責任である。 <無駄のない安価で本質的な公共事業をすべき> PS(2019年12月1、2、3日追加):*6-1のように、気候変動による海面上昇で、ガンジス川下流のインド・バングラデシュ国境地帯にある汽水域のマングローブが浸食され、この地域の鹿が減ってベンガルトラも姿を消す恐れがあるそうだ。また、人間も海面上昇で海辺の自宅に海水が入ってくるようになり、人間を含む生態系全体が内陸に移動せざるを得なくなった。しかし、*6-2のように、日本の標高は東京湾の平均海面が基準となっており、日本水準原点の高さは明治6年6月(1931年)から明治12年12月(1937年) までの東京湾の平均海面を見て決められたままだそうで、標高は海面上昇とともに一律に下がった筈なので、“歴史”“伝統”“前例”と称して惰性で同じことをやり続けるのは、日本の非科学的な点である。 なお、近年は、*6-3のように、気候変動によって豪雨が増加し、水位超過が年を追うごとに増えて「氾濫危険水位」を超える事例が、2018年に日本全国で474件に達するそうだ。この原因には、海面上昇・気温の上昇による頻繁で強い豪雨・長期にわたる河川管理の不適切・住宅適地選定の誤りなどが考えられ、さんざん無駄遣いをしてきた上げ挙句の予算不足は言い訳にならない。そのような中、日頃からの治水対策はもちろん重要だが、人口減にもかかわらず海に面した大都市に人口を密集させ、土地価格の高騰から地下鉄・地下街さらには地下貯水池などの地下施設を作り、浸水すれば莫大な被害が生ずるという都市計画自体を考え直す必要がある。 では、どういう土地の使い方をするのが合理的かと言えば、*6-4及び東日本大震災の津波被害を参考にすれば、「①人は高台に住む」「②工場もゆとりを持つ高台に移動する」「③農地を低い土地に作って遊水地の働きを持たせ、遊水地部分には水害にあっても1年で回復できる作物を植え、水害復旧には国から補助をする。トラクター・コンバイン・大型乾燥機などの農機具は十分な高さのある場所に保管する」などが考えられる。そのため、以前どおりに復旧したり、むやみに仮設住宅を立てたりするのは、無駄遣いの中に入るわけだ。 ただ、*6-4に書かれている大町町の灰塚さんの場合は、順天堂病院周辺の農地約6haであるため、県・町・順天堂病院・その他の適切な会社が買い取って介護等のサービスを受けやすいマンションや公営住宅を建て、高齢者や病院のスタッフはじめそのような住宅に住みたい人を住まわせるのが便利だと思う。そのため、灰塚さんは、この土地を耕作者のいなくなった他のよい土地と交換すればよいのではないか? 佐賀県には、*6-5のように、九州新幹線長崎ルートが開業すると並行在来線が不便になるという問題があるが、これはJR九州に依存しすぎているからかもしれない。何故なら、埼玉県ふじみ野市(私の自宅)は、東武東上線・有楽町線(地下鉄)・東急東横線・みなとみらい線が相互乗り入れして直通運転になったため、池袋・永田町・有楽町がもともと直通だったのに加えて新宿・渋谷・横浜・元町中華街などが直通で繋がり、便利になった。*6-5のケースなら、並行在来線の運行を他の鉄道会社に移管してJR九州と相互乗り入れさせたり、ディーゼル車両ではなく蓄電池電車や燃料電池電車にしたりなど、もっと希望が持てる前向きな案が考えられる筈で、私鉄は九州にこだわらず東急など沿線の街づくりが得意な会社の方がよいかもしれない。 *6-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14274014.html (朝日新聞 2019年11月28日) (世界発2019)気候変動、ベンガルトラ窮地 200頭生息のガンジス川下流、海面上昇 絶滅が心配されるベンガルトラの最大の生息地の一つで、インドとバングラデシュの国境地帯にあるマングローブが、気候変動による海面上昇の打撃を受けている。50年後にはベンガルトラが姿を消してしまう恐れがあるという。 ■飲み水・えさピンチ、絶滅危惧に追い打ち 野生生物の宝庫と言われ、ベンガル語で「美しい森」を意味するシュンドルボン。青森県とほぼ同じ総面積、約1万平方キロメートルのマングローブは世界最大級で、ガンジス川下流のデルタ地帯にある。数千の川や入り江が複雑に入り組む。海水の混じった汽水がマングローブの生育に適し、ベンガルトラのほか、ワニや鹿、カワイルカなど様々な生物が生息する。主要部分は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界自然遺産に登録されている。だが、約100の島からなる現地を小型船でめぐると、豊かだったはずの自然環境は変わり果てていた。岸辺の木々は消え、泥が積み上がっている。高さ2メートルほどの急ごしらえの堤防も、少しずつ浸食されている。海面上昇が進んでいるのだ。「年間約550ヘクタールの土地が失われている。海面上昇で土中に海水が混じり降雨量の減少も加わって、土中の塩分の濃度が上がっている。ベンガルトラの飲む淡水が少なくなってしまう」。ベンガルトラの保護活動に取り組んでいる地元NGOのアニル・ミストリ代表はそう心配する。すでに二つの島が沈んだ。えさとなる鹿にも影響が出ている。世界自然保護基金(WWF)によると、世界で生存するトラは1900年からの100年間で密猟の影響などで95%減り、4千頭を切った。インドやバングラデシュ、中国などに生息するベンガルトラは、昨年時点でシュンドルボンに202頭いることが確認されている。バングラデシュ・インディペンデント大学のシャリフ・ムクル氏は、環境変化で「2070年までにベンガルトラはシュンドルボンから完全に姿を消してしまう可能性がある」と予測している。 ■家・田畑に海水、1万人移住/トラ襲撃被害 シュンドルボンには人が住む集落が50カ所ほどあるが、海面上昇で生活も脅かされている。農家のブロゲン・マンダルさん(44)は「米の収量は昨年の600キロから180キロも減った」と嘆いた。海水が森林や田畑に入り込み、土壌を変えてしまったためだ。一帯の水も海水が混じる量が増え、取れる魚の量が減っている。モハン・マンダルさん(56)一家は、海辺の自宅に海水が入ってくるようになったため、地元政府がつくった堤防の内側に移住した。「5年後には堤防が壊れてしまうかもしれない。そうなったらどこに住めばいいのか」。この数年、暑い夏が長くなり、冬が来るのが遅く短くなったと感じる。「夏は暑すぎて、太陽が地上にあるようだ」。地元報道によると、一帯では海面上昇などですでに約1万人が移住を余儀なくされている。シュンドルボン一帯は雨期になるとベンガル湾の方角からサイクロンが直撃する。島の一つで、約4万人が暮らすバリ島にはサイクロンによって大量の海水が流入することもしばしばで、土壌の塩分が多くなってしまった。住民は生活や農業のため地下30メートルほどから水をくみ上げ続け、すでに枯渇してしまった地域が相次いでいる。シュンドルボンの巨大マングローブは、04年のインド洋大津波で大きな被害を防いだこともあり、自然災害から人間を守る天然のフェンスだった。マングローブが失われれば、植物や野生動物だけでなく、人間の生活も危うい。地元NGOのミストリ氏は「人間もこの自然の一部だという認識で生態系を守らなければならない」と話す。トラが人間を襲う事故も頻発する。生息域が狭まり、えさが減っているのが原因とみられている。インド・西ベンガル州政府はトラの生息地にネットを張り巡らせ、トラの封じ込めに努めている。それでも事故は起きてしまう。蜂蜜を採集していた夫をベンガルトラに殺されたというコイシャラさん(60)は「トラは私たちにとって恐ろしい存在だったが、安全を願って共に生きてきた。その調和が壊れてしまった」と話す。 *6-2:https://www.jk-tokyo.tv/zatsugaku/107/ (東京さんぽ) 日本の標高を決める水準原点 日本の標高は東京湾の平均海面が基準となり、それが標高ゼロメートルと決まっているそうです。その正確な高さを定めた水準原点は東京湾にあるのではなく、湾岸より地盤のよい国会議事堂前の憲政記念館(東京都千代田区永田町1-1)の庭にあります。この日本水準原点の高さは、明治6年6月(1931年)から明治12年12月(1937年) までの東京湾霊岸島で測定した東京湾の平均海面を見て決められました。水準原点は小豆島産の花崗岩でつくられた原点標石に水晶板が埋め込んであり 、この水晶板の目盛ゼロの線(法令では零分画線の中点)が基準となります。 ○標高は24.4140m。 明治24年(1891年)この場所に日本水準原点が初めて設置されたときの標高は 24.5mでしが、1923年の関東大震災によって日本水準原点の地盤が86.0mm沈下したため、その標高が24.4140mと改められました。水準原点を保存している建物は工部大学校(東京大学工学部前身)。第1期生佐立七次郎(さたち・1856~1922)さんの設計で、建物は石造りで平屋建になります。建築面積は14.93㎡で軒高4.3mローマ風神殿建築にならい、トスカーナ式 オーダー(古典建築の構成原理)をもつ本格的な模範建築で、明治期の数少ない近代洋風建築として貴重なものだそうです。また、建物正面には「大日本帝国」「水準原点」の凝った文字が右から横書きで書かれてあり、「大日本帝国」の文字が残っている建物としても貴重であり 、現在は東京都指定有形文化財(建造物)に指定されています。 *6-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/563324/ (西日本新聞 2019/11/28) 「氾濫危険水位」超過河川4年で5.7倍 18年474事例、28%が九州 河川の水位がいつ氾濫してもおかしくない「氾濫危険水位」を超える事例が2018年に全国で474件に達し、うち3割近い136件を九州7県が占めたことが、国土交通省への取材で分かった。水位超過はこの数年で顕著に増加しており、都道府県が管理する河川での発生が大半を占めた。台風の強大化や豪雨の頻発が背景にあるとみられ、国交省は気候変動を見据えた治水対策の検討に乗り出した。国交省によると、水位超過は年を追うごとに増えており、全国の件数は14年(83件=うち九州8件)の5・7倍に増え、九州7県が28%を占めた。国交省は「気候変動による豪雨の増加で、河川の安全度が相対的に低下している恐れがある」と分析。九州は他地域より豪雨が多かったため、全国に占める割合が高まった可能性が高い。河川の管理主体別では、都道府県が全国で86%(412件)、九州7県で82%(112件)を占めた。九州の県別の内訳は、福岡29件▽佐賀14件▽長崎4件▽熊本16件▽大分25件▽宮崎18件▽鹿児島6件。都道府県管理は、洪水時などに甚大な被害が想定されている国管理と比べ、氾濫対策が遅れているとみられる。関東や東北で甚大な被害が出た今秋の台風19号でも、堤防が決壊した71河川140カ所のうち64河川128カ所が都道府県管理だった。群馬大大学院の清水義彦教授(土木工学)は「都道府県管理河川は予算不足などで対策が遅れがちで、(降雨時間や範囲の)規模が小さい豪雨であふれる河川もある」と指摘。水位低下につながる遊水池の設置や河道の掘削といった対策について「早急に進める必要がある」と訴える。気象庁によると、1時間に50ミリ以上80ミリ未満の降雨量を示す「非常に激しい雨」の回数は、約30年前の約1・4倍に増えた。気候変動が豪雨増加の要因と指摘され、国交省の有識者検討会は気温が2度上昇すれば洪水頻度が2倍になるとの試算をまとめ、7月末に対策強化を提言した。国交省は、社会資本整備審議会(国交相の諮問機関)の小委員会で気候変動を踏まえた治水対策の見直しの検討に入っており、国管理河川の治水計画を改定する方針。自治体にも温暖化の影響を考慮するよう促しており、都道府県管理河川の計画見直しにつながる可能性がある。 *6-4:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/563318/ (西日本新聞 2019/11/28) 「つらい」臭う田畑、油に奪われた実り…農家の無念 九州大雨3カ月 九州北部を襲った8月の記録的大雨から28日で3カ月。鉄工所から流れ出た油混じりの水に田畑が漬かった佐賀県大町町の農家灰塚晃幸さん(64)は今季、収穫と作付けを断念した。県は土壌調査を終えて来春の営農再開を目指す方針を打ち出したが、灰塚さんの田畑には油の臭いが残り、農機具修復の見通しも立たない。「精魂込めて長年向き合った農業を奪われた」と無念さを募らせる。「今ごろは田んぼを耕して、麦をまく時期やったのに」。灰塚さんは、稲の切り株が残る田んぼを見つめた。近くのブロッコリー畑には雑草が生い茂る。4トンの収量を見込んでいた大豆は立ち枯れしたままだ。会社勤めから専業農家になって約35年。亡くなった父、安清さんが広げた順天堂病院周辺の農地約6ヘクタールを耕してきた。この夏、病院周辺の田畑の大半が大雨で冠水し、油が作物と土に付着した。自宅も床上1・3メートルまで浸水。大雨から1カ月間、避難所に暮らしながら、いても立ってもいられずに田畑を回った。10月、茶色に変色した稲穂を廃棄するために刈り取った。トラクターとコンバイン、大型乾燥機など農機具は全て修復不能に。「米に触れる部分は油が付着したらだめ。使ったら風評被害を生む」と諦めた。今月25日、大町町役場で開かれた被災農家の説明会。県と町の土壌調査では、農地153カ所のうち4カ所で水稲の生育に影響を及ぼすレベルの油を検出したと報告を受けた。灰塚さんの農地15カ所は、自然分解や石灰散布で営農再開できるレベルだった。それでも不安は消えない。「油はゼロではなく今も臭いがする。来年6月に田植えができるかどうか」。農機具の損失は4千万円相当に上る。国などの補償を受けても4割程度は自己負担になる。自宅の再建も見通しは立っていない。「全壊」判定の母屋には住めず、隣の農業小屋2階に家族3人で寝泊まりしている。いつもなら年末が近づくと自家栽培のもち米を蒸して、餅をつき、親戚に配っていた。今年のもち米は、捨てるしかなかった。正月には親戚一同が自宅に集まってカラオケ大会でにぎやかに過ごしてきたが、すでに断りを入れた。「3カ月たっても、状況は何も変わらん。何の作業もできんのがつらい」。農家の営みを失った重さが日々のしかかる。 ◇ ◇ ●罹災証明受け付け2300件 8月の記録的大雨で被災した佐賀県。全20市町にあった避難所は10月20日までに全て閉鎖されたものの、自宅の浸水被害で戻れない人々が公営住宅67戸で仮住まいを続け、民間物件を借り上げて公費負担する「みなし仮設住宅」14戸の入居も決まっている。罹災(りさい)証明書の申請受け付けは13市町で2302件に上る。県によると、県内6市町に設置された災害廃棄物の仮置き場のうち、大町町と白石町は廃棄物を全て搬出。福岡、長崎両県の施設などと連携して広域処理が進んでいる。今月26日時点で住宅被害は全壊87棟、大規模半壊106棟など。農林水産関係や商工業など被害総額は約355億円に上る。 *6-5:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/461153 (佐賀新聞 2019年12月3日) 並行在来線ディーゼル化、速度遅く長崎線に乗り入れできず? <新幹線長崎ルート>肥前山口で乗り換えか 九州新幹線長崎ルートの2022年度暫定開業に伴い、並行在来線となる肥前山口-諫早間を走る普通列車が、佐賀方面の長崎線に乗り入れできない可能性があることが分かった。並行在来線の一部区間は経費削減で非電化となり、速度が遅いディーゼル車両で運行するため、肥前山口駅での乗り換えが必要になる見通し。佐賀県は利便性が損なわれるとして、JR九州との協議で現行の乗り入れ本数の維持を求めている。肥前山口-諫早間は、佐賀、長崎両県が鉄道施設を維持管理し、JR九州が運行を担う「上下分離」方式を採用する。2016年の6者合意で、長崎ルートの暫定開業から23年間は普通列車を「現行水準維持」することが決まった。ただ、特急が走る肥前鹿島までは電車で運行できるが、肥前鹿島-諫早は経費を抑えるため、非電化区間となる。普通列車はディーゼル車両になり、肥前山口-諫早間で運行する。県によると、JR九州は速度が遅いディーゼル車両の長崎線への乗り入れはダイヤ編成上、困難との見方を示しているという。現行で1日に上下約30本程度の普通列車が運行し、半数以上が乗り換えを必要とせずに佐賀駅や鳥栖駅まで走っている。沿線住民の通勤通学の足として重要な役割を果たしているが、暫定開業後は一切乗り入れできなくなる可能性が出てきた。佐賀県は、JR九州や長崎県と進めている並行在来線の協議の中で、普通列車の在り方について問題提起している。JR九州が試験走行しているスピードが出る新型ディーゼル車両の導入を提案するなどしている。県交通政策課は「6者合意の『現行水準維持』は本数だけでなく、利便性も含まれる。通勤通学の時間帯の乗り入れを実現できるよう申し入れていきたい」と話す。JR九州は取材に対し、「ダイヤは需要や経営資源を考慮し、可能な限り利便性を確保するよう開業直前に決めるもので、現時点のコメントは差し控える」と回答した。 <発生主義会計採用の必要性を示す重大な事例(その1)-年金> PS(2019/12/6追加): 政府は、公的年金制度に関し、消費税を引き上げ、金利を下げてマネーサプライを増やすというインフレ政策をとりつつ、物価スライド制を導入して、公的年金の実質受給額を減らすことに熱心だった。長寿命化により、*7-1のような中小企業で働く非正規労働者の厚生年金加入や高齢者の就業促進のための改革は必要だが、メディアや日本総研の西沢氏が、「①将来世代に目配りする改革が不十分」「②高齢者から反発が出るような制度改革がなければ、若年層からの信任は得られない」「③マクロ経済スライドの強化策を見送ったので、世代間の格差縮小という点で課題が多い」などとしているのは不適切だ。 何故なら、③は、年金や介護保険制度が不十分だった時代に親の生活の世話や介護を行った現在の高齢者とそれを社会に任せることのできる若者との世代間格差の方がずっと大きいことを無視しており、①②は、現在の日本を造ってきた高齢者に感謝するどころか高齢者を馬鹿にする発言で、このような良識のない発言が「オレオレ詐欺」のような高齢者にたかる若者を作る温床となっているからだ。そして、現在の高齢者に対するこのような扱いが続けば、将来の年金制度は、制度が持続しても価値の小さなものになるだろう。なお、介護保険制度も介護保険料の支払者・受給者とも、全世代の働く人にすべきだ。 それでは、「年金については、どうすればよかったのか」と言えば、厚生省(当時)が積立方式だった年金制度を1985年に賦課課税方式とし、単年度主義にしてその年の収支しか気にしなくなったため、*7-2のように、公的年金の給付水準が現役世代の負担に依存することとなり、散々、無駄遣いした上で「積み立てられた厚生年金の運用資産総額が200兆円に達している」などと呑気なことを言うようになったのが問題なのである。従って、積立方式を変更する必要はなかったのだが、今からなら発生主義に基づいた積立金を準備する必要があり、その金額の計算方法は民間企業が使っている退職給付会計と同じだ。現在の積立金と発生主義に基づいて計算された積立金の差額については、国民には全く責任がないため痛み分けする必要はなく、国債を発行して長期間で返済するしかない。 *7-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52982720V01C19A2EA1000/ (日経新聞 2019/12/5) 75歳から受給も可能 政府の改革案まとまる 政府が検討を進めてきた公的年金制度の改革案が5日、固まった。中小企業で働くパート労働者も厚生年金への加入を義務づけるほか、75歳から受け取り始めると月あたりの年金額を最大で84%増やせる仕組みに変える。制度の支え手拡大や高齢者の就業促進に重点を置く。ただ現在の高齢者への給付を抑え、将来世代に目配りする改革はなお不十分だ。自民党が5日開いた社会保障制度調査会を受け、まとめた。2020年1月から始まる通常国会への改正法案の提出をめざす。公的年金改革は5年に1度実施する将来見通し(財政検証)を受け、19年夏から本格的な議論が始まった。議論の土台になる財政検証で示されたのは経済が順調に推移しても、将来の給付水準は今より2割弱下がるという先細りの将来像だ。政府は厚生年金の支え手拡大で、年金制度の持続性を高めることを重視した。高齢になるとパートや嘱託など短時間勤務に切り替える人も多く、働き方が変わっても厚生年金に加入できるようにする。現状は(1)従業員501人以上の企業に勤務(2)週20時間以上働く(3)賃金が月8.8万円以上――などの条件を満たす短時間労働者が対象。政府案では企業規模の要件を見直し、まず22年10月に従業員101人以上の企業に対象を拡大。24年10月には51人以上まで基準を下げる。厚生年金には18年度末で4440万人が加入するが、厚生労働省の試算では新たに65万人が加入する見通しだ。企業規模の要件を101人以上に見直すと、将来世代の所得代替率(現役会社員の手取りに対する高齢夫婦世帯の年金額の割合)は約0.2%改善する。対象を51人まで拡大すると改善幅は約0.3%まで広がる。将来不安に備えるには65歳を過ぎても健康な間はできるだけ長く働いて、公的年金はいざという時まで取っておけるようにもする。その中核になるのが年金の受け取り開始年齢の引き上げだ。今は原則65歳が受給開始年齢で、60~70歳の間で時期を選べる。これを75歳まで延ばす。受取時期を1カ月遅らせるごとに月あたりの年金額は65歳で受け取るより0.7%増える。75歳まで遅らせると84%増だ。19年度の厚生年金は夫婦2人のモデル世帯で月22万円。賃金や物価などの変動を考慮しなければ、75歳まで繰り下げた際の年金額は40万円強に増える。海外では平均寿命の延びに合わせて支給開始年齢を遅らせる国もあるが、選択肢の拡大で対応する。働く高齢者の年金を減らす「在職老齢年金」も見直す。今は60~64歳の場合、厚生年金と賃金の合計が月28万円を超えると年金の一部が支給停止になる。働いても収入が変わらず、就労意欲をそぐとの批判があった。この基準額を47万円に上げる。19年度末の試算では、新たに46万人に対して約3000億円の財源が必要だ。公的年金の支給額を抑えて制度の持続性を高める「マクロ経済スライド」の強化策は見送った。物価や賃金が低迷している時は機能せず、04年の導入から発動したのは2回のみ。調整が機能しなければ、高齢者の年金は維持されるが将来世代の給付水準は下がる。日本総合研究所の西沢和彦氏は「高齢者から反発が出るような制度改革をしなければ、若年層からの信任は得られない」と指摘する。世代間の格差縮小という面でみると課題は多い。 *7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191204&ng=DGKKZO52929710T01C19A2EN2000 (日経新聞 2019.12.4) 厚生年金のあるべき資産構成 公的年金について、5年に1度の財政検証が行われた。これに伴い、厚生年金の運用資産構成の見直し、すなわちモデルポートフォリオの新たな検討が進んでいる。現在、厚生年金の運用資産総額は200兆円に達しつつある。公的年金の給付水準維持が現役世代の負担に依存するとはいえ、現時点で積み立てられた膨大な資産とその運用収益がクッションとなる。この意味で、資産運用の枠組みとしてのモデルポートフォリオは重要である。それにもかかわらず、モデルポートフォリオに関する議論が密室で行われているようだ。専門家にしか理解できない議論なのか。そうだとしても、素人からも意見がある。第1に、各資産の収益率に関して。今後の国内債の利率がほぼゼロであり、当面その上昇は期待薄だ。だとすれば、ポートフォリオでの国内債割合を低くし、その分を他の資産に移すべきだろう。第2に、資産を移管する先としての株式について。ひとつに、株式を国内と海外に分ける意味である。国内で元気な企業は、海外でも元気であり、利益の相当部分を外で稼いでいる。これは国内企業の海外化であり、株式を内外に分ける合理性を消滅させている。さらに、海外株の投資パフォーマンスが国内株を上回って久しい。海外経済の成長率が日本を上回っているためである。以上からすれば、内外の株式の区分をなくし、株式全体としての資産配分を考えるのが正しい。第3に、株式投資のベンチマークとしてのインデックスの再考である。国内株式について、上場区分とともに、インデックスの構成企業を見直そうとの議論が本格化する。これまで公的年金が信奉してきた東証株価指数(TOPIX)が絶対ではなくなった。第4に、50年、100年に一度のリスクへの対応である。公的年金のそもそもの目的は国民の安定的な老後生活にある。このことから、経済的な変動だけではなく、自然災害への目配りが必須となる。とくに、間近に迫っていると政府が注意喚起している南海トラフ大地震である。ポートフォリオの基本は分散投資である。大地震のリスクにさらされた日本に置くべき資産を調整するのは当然だろう。密室であってもいいが、以上に留意した議論を期待したいものだ。 <発生主義会計採用の必要性を示す重大な事例(その2)-固定資産> PS(2019/12/9追加):*8-1・*8-2のように、国や地方公共団体のインフラ老朽化が進んだとして、事故が起きてからあわてて維持・管理を議論し、予算の獲得合戦をし、原因を専門スタッフの不足・無駄な公共事業の削減・人口減などに結び付けて誤った“解決策”に導かないためには、固定資産台帳を整備して存在する固定資産は網羅的に取得価額・耐用年数・減価償却・修繕等の状況を把握し、物理的・金額的に管理しておく必要があった。しかし、地方公会計の統一基準が採用された地方公共団体の固定資産台帳でさえ、現在は整備済17.9%、整備中35.9%、未整備46.2%であり(新地方公会計統一基準の完全解説P51~93など参照)、国はもちろん未整備である。そして、漏れなく重複なく金額の重要性に応じて必要な維持管理を行うには、複式簿記による会計を行って資産・負債・引当金などを正確に把握していることが必要であり、民間企業は、皆そうしているのだ。そして、それらの正確な資料を基に、例えば上下水道・ごみ処理・道路・橋などのインフラの維持管理をどう効率化するか、広域化して地方公共団体が所有するか、民営化するか、どのくらい国の助成を求めるかなどを議論する必要があるわけだ。 なお、中央自動車道笹子トンネルで、ずさんな点検により老朽化を見落とし、天井板が崩落して9人が死亡した事故は、目視や音で老朽化の診断をしていたというので驚いた。医療に例えれば、年齢も考えず、顔色を見て聴診器で音を聞いただけで、検査はしなかったのと同じで、21世紀の維持管理や検査からはほど遠い。つまり、固定資産のメンテナンスは、鉄道会社や工場と同様、それを獲得した瞬間から効率的に行っておくべきものなのである。 ![]() 地方公会計の導入経緯 地方公会計の完成度 国の会計 (図の説明:左図のように、2020年3月末までに、統一基準による地方公会計が全国の地方公共団体で適用されるが、中央の図のように、複式簿記による発生主義会計は、単式簿記による現金主義会計の補完という位置づけだ。その理由は、日本国憲法及び財政法が、単式簿記による現金主義会計を前提としているからだそうで、これが計画性のない無駄遣いの原因になっている。しかし、膨大な資産・負債や収支を伴う国の会計基準は、右図のように、未だ単式簿記による現金主義会計のみであり、税金と保険料や収入と借入金などをごっちゃにしている状況だ) *8-1:https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20190718-OYT1T50341/ (読売新聞 2019/7/19) 地方のインフラ 進む老朽化への対策急ぎたい 老朽化が進む地方のインフラ(社会基盤)をどのように維持・管理していくか。重い課題の克服へ有効策を探りたい。全国の道路や橋、トンネル、水道管などは高度成長期に集中的に整備された。このため、多くが一斉に耐用年数を迎えつつある。地方自治体は人口減などで財政が厳しく、更新や補修に十分対応できていない。自民党は参院選の公約で、防災や減災のための「国土強靱きょうじん化」を掲げる。ただ、老朽化への対応策は具体性を欠く。立憲民主党や国民民主党は、地方インフラの維持に言及していない。喫緊の問題で論戦が低調なのは残念だ。2012年に起きた中央自動車道・笹子トンネルの天井板崩落事故を受け、国と自治体はインフラの点検を強化している。読売新聞が今年、国と自治体に行った調査では、点検で損傷度合いが最も深刻だと判定された580か所のうち、4割近くで修繕や撤去の見通しが立っていない。大きな事故が起きてからでは遅い。優先順位を付け、効率的に改修したい。損傷前にこまめに補修する「予防保全」が有効となる。ドローンなどの先端技術による点検の省力化も進めるべきだ。水道管は、総延長の約15%が40年の耐用年数を過ぎている。多額の更新費用が重荷となる。現状でも、水道事業の経営は危機的だ。全国の公営上水道事業は、約3割が赤字である。さらに人口が減れば収益は先細りとなる。水道法改正で、今秋から運営権を民間に売却する「コンセッション方式」が導入しやすくなる。民間ノウハウを活用して効率化を図る狙いだが、安全面の不安などを理由に自治体は消極的だ。利用者の理解なしには実施できまい。事態を打開する方策として、公営事業の広域連携がある。給水人口の少ない公営事業者が、施設の共有や工事の一括発注などを進めれば、経費を削減できる。積極的に取り組んでもらいたい。すでにゴミ処理や消防、公立病院の再編などで広域化の動きが広がっている。利害を調整しつつ、共助の動きを広げるには、都道府県の役割が重要になる。人口減少への対策では、中心部に都市機能を集約する「コンパクトシティー」の推進も有力な選択肢といえる。住居や商業施設などに加え、公共施設などのインフラも集中させることで、行政のコストを抑えることができる。各地方の実情に合わせ、具体策を練り上げる必要がある。 *8-2:https://www.sankei.com/west/news/170710/wst1707100006-n1.html (産経新聞 2017.7.10) 迫りくる崩壊(1)老朽化「いずれ橋は落ちる」20年後、7割が建設50年超 高度経済成長期に整備が進んだインフラが老朽化している。人命に関わるこの危機に国や自治体などがどう立ち向かおうとしているのか、その現状を探る。1967(昭和42)年12月、米国のウェストバージニア州とオハイオ州を結ぶ吊り橋「シルバー橋」が突然崩壊し、46人が犠牲となった。約40年前に建設されたこの橋は補修や点検が十分に行われず、老朽化に伴う金属疲労が進んだことが原因だった。日本より30年早く1920~30年代に急速に道路や橋の整備が進んだ米国。しかし、十分な維持管理費が投入されなかった結果、耐用年数の目安とされる50年が経過した80年代には道路や橋の老朽化によって事故が相次ぐようになる。「荒廃するアメリカ」といわれ、社会問題になった。「米国再興のためインフラ整備に1兆ドル(約113兆円)を投じる」。昨年の大統領選では、そんな公約を掲げたドナルド・トランプ氏が当選を果たした。 ■ ■ ■ 日本でも平成24(2012)年12月、恐れていた事故が起きた。山梨県の中央自動車道笹子(ささご)トンネルで、ずさんな点検によって老朽化を見落とした結果、約140メートルにわたって天井板が崩落。車3台が下敷きとなり、9人が死亡した。米国での事故と日本での惨事。国土交通省の徳山日出男・道路局長(26年当時)は部下にこう檄を飛ばした。「いずれ必ず橋も落ちる。住民が巻き込まれて自分が刑事被告人になったつもりで書け」。26年4月、国交省の社会資本整備審議会道路分科会で「道路の老朽化対策の本格実施に関する提言」がとりまとめられた。「最後の警告-今すぐ本格的なメンテナンスに舵(かじ)を切れ」との副題がついたこの提言の前文にはこうある。「今や、危機のレベルは高進し、危険水域に達している。ある日突然、橋が落ち、犠牲者が発生し、経済社会が大きな打撃を受ける…そのような事態はいつ起こっても不思議ではない」。戦後から高度成長期にかけて多くの整備が進んだ道路や橋、トンネル、上下水道。それらのインフラが耐用年数の目安である50年を経過しつつある今、かつて米国で起きた落橋事故も現実味を帯びる。もし、同様の重大事故が発生すれば一体誰が責任を負うのか。 ■ ■ ■ 笹子トンネルの事故では、責任追及の矛先は道路を管理する中日本高速道路と子会社に向けられた。犠牲者9人のうち20代の男女5人の遺族らが原告となった訴訟では、横浜地裁が「目視だけの点検を選択した過失があった」として会社側の過失を認め、総額4億4千万円余りの賠償を命じる判決を言い渡した。この事故では高速道路会社が責任を負ったが、国道や都道府県道、市町村道などの道路や、それらにかかる橋の場合、管理者の国や自治体が責任を負うことになる。 ■ ■ ■ 危機感を募らせた国交省は、26年から自治体などに対し5年に1度の定期点検を義務づけた。その結果、28年3月までに点検を終えたもののうちトンネルの46%、橋の12%で修繕が必要と判断された。建設50年を超える割合は、今から20年後にはトンネルが57%、橋が71%にまで達する。昭和45年の大阪万博前後にインフラ整備が進んだ近畿地方でも今から20年後には橋の約7割(約4万4千橋)が建設50年を超えるが、全国の橋の7割以上を管理する市町村では慢性的な財政難に陥っている。同省が平成28年、全国の自治体に現在の予算規模で修繕が可能か尋ねたところ、約6割の市町村が「不可能」と答えた。さらに、人口減に伴う技術者不足が追い打ちをかける。同省の調査では、市町村の土木部門の職員数は8年度から25年度までに約3割減少。特に道路の維持・管理業務を担当する職員が「5人以下」の市は全体の約2割、村では9割以上にも及んでいる。「このままでは対応しきれない」。衝撃的な数字に同省幹部らは頭を抱えた。 <発生主義会計採用の必要性を示す重大な事例(その3)-原発> PS(2019/12/10、12追加):*9-1のように、原発の本当のコストは、電力会社が支払う建設費のほかに、フクイチ事故後の損害賠償・廃炉・除染等の費用を国が支えて国民負担になっているが、一般企業の場合は、汚染物質は外に出さず、外に出したらその企業が回収するのが原則だ。さらに、汚染土の放射能濃度が8千ベクレル/kg以下なら公共事業の盛り土などに使えるようにするというのも、該当する地域の住民を犠牲にする行為だ。また、原発立地地域には、電源三法交付金制度(1974年制定:電源開発促進税法・電源開発促進対策特別会計法・発電用施設周辺地域整備法、https://www.fepc.or.jp/nuclear/chiiki/nuclear/seido/index.html)により、国民から集められた資金が政府から約3500億円(2015年のケース)配賦されており、使用済核燃料の保管場所も未だ決まっていないが、いずれも国民負担になるものだ。なお、これらは、本来は発生主義で費用を認識し、負債性引当金を積んでおかなければならないものである。 一方、*9-2のように、2020年に「パリ協定」の本格始動を控える中、日本はCO₂を排出する石炭火力発電所の建設計画が10基以上あり、開発途上国に石炭火力発電所の輸出も行っているため、「化石賞」を贈られる事態となっている。しかし、「化石燃料を燃やす代わりに原発にする」というのは、海水温の上昇を促進させる上、原発事故による深刻な環境汚染とも隣り合わせであるため、薦められないわけだ。 そのため、環境問題解決のためのエネルギー革命期を迎えている現在、*9-4のノーベル化学賞受賞者の吉野さんが記念講演で述べられたとおり、再生可能エネルギーと電池がエネルギー革命の中心になることは明らかだ。日本は、化石燃料もウランも乏しい国だが、再生可能エネルギーは豊富で、これに電気自動車を組み合わせれば、環境・経済・利便性・エネルギー自給率の向上という要件をすべて満たして発展することが可能で、いずれも日本発の技術なのである。 なお、水素はロケット燃料として使われているエネルギーで、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解すればCO₂を出さずにいくらでもできるので、*9-3のように、「①川崎重工が世界初の液化水素運搬船の進水式を実施し」「②オーストラリアで採った安価な石炭から水素をつくって日本に輸入する予定で」「③JXTGホールディングスはLPGを原料に水素を生産してFCV向けに水素を供給している」「④水素で発電するよりLNGや石炭で発電した方がコストが安い」などと言っているのには呆れる。何故なら、日本は水と再生可能エネルギーは豊富な国で、海の水を電気分解すれば水素・酸素・塩が同時にでき、その時にCO₂その他の排気ガスは全く出さず、液化水素運搬船は水素の輸出用に使った方がよいくらいだからだ。なお、水素による燃料電池も、自動車だけでなく航空機・船舶・列車等々に応用可能な日本発の技術である。 ![]() (図の説明:左図のように、2017年の日本のエネルギー自給率は7.4%で、他の先進国と比較して著しく低い。また、中央の図のように、世界の発電コストは、2018年には原子力が最も高く、風力・太陽光が安くなっている。このほか、日本は、右図のような地熱も豊富だ) *9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASM1L4W0PM1LULFA013.html (朝日新聞 2019年1月23日) 原発の本当のコストは? 経産省の「安い」試算に異論 ●エネルギーを語ろう 日立製作所が英国での原発計画を凍結したことは、原発がもはや安い電源と言えなくなった現実を私たちに突きつけました。原発や事故処理のコストをどう考えたらいいのでしょうか。電力のコスト分析に詳しい大島堅一・龍谷大教授に聞きました。 ●経産省のコスト試算「甘すぎ」 ―経済産業省が2015年に示した2030年時点の発電コスト(1キロワット時)で、原発は10・3円となっていて、天然ガス火力(13・4円)や石炭火力(12・9円)より安く試算されていました。 「原発の建設費の想定が甘すぎます。福島の事故以前に建設されたような原発を建てるという想定で建設費を1基4400億円とし、そこに600億円の追加的安全対策を加算するというものです。設計段階で安全性の高い原発を想定しないという非常に奇妙な試算です」 ―試算に使われた事故の発生確率にも疑問を呈していますね。 「経産省の試算では、追加的な安全対策を施すので、(福島第一原発のような)『過酷事故』が起きる発生確率は半分になるとしています。素朴な疑問ですが、なぜ、半分になるのでしょうか?」 ●原発建設費 2基で3・5兆円も ―原発の建設費は世界的にみても高騰しています。 「英国で計画中の『ヒンクリーポイントC原発』(160万キロワット級×2基)の建設費245億ポンド(欧州委員会の14年の想定。直近の為替レートで日本円に換算すると約3・5兆円)です。それが大事なファクトです。メルトダウンした核燃料を受け止めるための『コアキャッチャー』や、大型航空機の衝突に耐える二重構造の格納容器など、安全性能を高めたためです。経産省の試算のように安くできるはずがありません」 ―こうした状況を踏まえた場合、原発の発電コストはいくらになるのですか? 「私は、原発の1キロワット時あたりの発電コストは17・6円になると試算しています。米電力大手エクセロンの経営幹部は昨年4月、『新しい原発は米国内では高くてもう建てられない』と発言しています。日立製作所も想定した収益が見込めないとして、英原発輸出計画を凍結しました。そんな現実からしても17・6円は外れていないと思います。もはや原発にコスト競争力はありません。斜陽産業として、いかに『たたむか』を考える時です」 ●重い国民負担 東電の責任は ―福島第一原発事故後、当時の民主党政権は東京電力を潰さずに国有化し、損害賠償の支払いなどを国が支える枠組みをつくりました。この枠組みをどうみますか? 「残念なのは、東電の責任について議論を尽くさず、あいまいにしてしまったことです。それで国がずるずると事故費用を出す形になり、結果的に国民負担を大きくしています。環境汚染の費用は汚染者が負担する『汚染者負担原則』がありますが、それから逸脱しており、大問題だと思います」 ―損害賠償に加え、廃炉や除染などの費用が膨らんだ結果、事故費用の総額が21・5兆円に倍増したとして、経産省は16年に新たな負担の割り振り策をまとめました。 「これも大問題です。経産省は賠償費用の新たな増大分についても電気料金から払うことにしました。福島の事故以前に電気料金の中にその費用を組み込んでいなかったので、国民にはそのツケがある、という理屈ですが、それは違います。東電のツケですよ。もしJRが事故を起こしたら、国民にツケがあるといって運賃から事故費用を徴収しますか?」 ―廃炉費用は東電の送電部門の合理化益を充てる、除染費用は東電株の将来の売却益を充てる、ということになりました。 「これもおかしな仕組みです。(電力会社がコストを電気料金に上乗せする)『総括原価方式』の理念からすれば、仮に送電部門で合理化益が出たら、料金を下げるべきです。除染費用でアテにする東電株の売却益も、元々は国費を使っているので、売却益が出たら国庫に戻すべきです」 ―では、どのように事故費用を捻出すればいいのでしょうか。 「『汚染者負担』が原則ですが、もしそれでは対応できないということなら、国会で東電の責任問題をしっかり議論し、『国にも責任があった』と見える形にして、税金でまかなうという判断はあってもいいと私は考えます。しかし今の負担の割り振り策では、事故費用を電気料金から、『こっそり』取るようなやり方だと言わざるを得ません」 ●実態に合ってない「復興」 ―一方、政府は放射能濃度が1キロあたり8千ベクレル以下となった汚染土を公共事業の盛り土などに使えるようにしました。 「汚染土の最終処分の量を減らしたいからでしょう。それは、ひいては東電の費用負担を減らすことになります。さらに新たな除染を国の公共事業とみなす措置もできました。これも東電が支払うべき費用を軽くしているのです」 ―政府が進めている避難者の帰還政策をどう見ていますか。 「避難指示の解除を受けて避難者が帰ったかというと、実際には様々な理由で帰れない方が多いのです。でも解除したので賠償は打ち切ります、と。実態に合っていないのです。復興の実態が伴っていないのに『問題はもうなくなりました』とされてしまうことを私は恐れています」 ◇ 大島 堅一(おおしま・けんいち)龍谷大学教授(環境経済学)。1967年福井県生まれ。一橋大大学院経済学研究科博士課程単位取得。著書に「原発のコスト」(岩波新書)、共著に『原発事故の被害と補償』(大月書店)など。脱原発社会に向けた政策提案を続けるシンクタンク「原子力市民委員会」の座長も務める。 *9-2:https://www.fnn.jp/posts/00049284HDK/202001311454_reporter_HDK (FNN PRIME 2019年12月6日) 「地球は大幅に温暖化」の衝撃報告書!日本は“批判の的”…小泉大臣は何を語る?COP25開幕 ・「パリ協定」の本格始動を2020年に控える中、「COP25」開幕 ・各国の削減目標では大幅な気温上昇は不可避 ・石炭火力推進の日本は批判の的…積極的な発信ができるか ●「大幅な気温上昇不可避」報告書 国連事務総長は危機感あらわ 地球温暖化対策を話し合う国連の会議「COP25」が12月2日からスペイン・マドリードで開幕した。 △国連 グテーレス事務総長;今のままの努力では不十分なのは明らかだ 国連の事務総長は、開幕を前にした記者会見で各国に対し、温室効果ガスの削減目標を引き上げるなど対策の強化を表明するよう求めた。この発言のもととなったのは、COP25開幕前に公表された、国連環境計画(UNEP)の衝撃的な報告書。各国が、パリ協定で目標として現在提出している温室効果ガスの排出削減量を達成したとしても、『世界の気温は産業革命前から3.2度上昇する』というのだ。つまり現在の各国の削減目標では、大幅な気温上昇は避けられない危機的な事態だという。仮に、気温を1.5度上昇に抑えるためには、現在年1.5%ほど増えている排出量を、毎年7.6%減らす必要があると分析している。パリ協定では各国に対し、2020年2月までに、現在提出している削減目標を引き上げたうえでの再提出、もしくは更新することを求めている。一方で、数値目標の引き上げも再提出も義務ではなく、求められているだけという状況がある。そのためグテーレス事務総長は、COP25の会合のなかで、各国が温室効果ガスの削減目標の引き上げを表明することで、気候変動問題の機運を世界全体で高めていくことを求めているのである。 ●”日本は温暖化対策に消極的”国際的な批判も・・・ では、日本はどうなのか。国連環境計画の報告書では、各国の取り組みに対しても言及していて、日本についての記述もある。「石炭火力発電所の建設を中止するほか、再生可能エネルギーを利用することで石油の利用を段階的にやめていくこと」。日本では、二酸化炭素を排出する石炭火力発電所の建設計画が現在も10基以上ある。そのうえ、途上国へ石炭火力発電所の輸出を行っていることで、国際的な批判を受けている。しかし、梶山経済産業大臣はCOP25が開幕した後の12月3日の会見でこう述べた。 △梶山経済産業大臣;石炭火力発電など、化石燃料の発電所は選択肢として残していきたい 国際的な環境NGOのグループは、温暖化対策に消極的だと判断した国や地域に、皮肉をこめて「化石賞」を贈っている。梶山大臣の発言を受けて、早速 日本は12月3日、COPの会場内で「化石賞」を贈られる事態となってしまった。 ●日本の発信に世界が注目 ギリギリの調整続く 日本は、国際的な批判をどのように巻き返せるのか。「気候変動問題は、クールでセクシーに取り組むべきだ」と発言して、国内外から注目された小泉進次郎環境大臣もCOP25に出席する。そして、11日には閣僚級会合でスピーチを行う予定だ。ここで日本の石炭火力発電所に対する姿勢、そして数値を引き上げたうえでの削減目標の再提出について言及があるのか、世界は注目している。小泉大臣はこれまで、会見で「数値目標の引き上げは検討していきたい」としながらも、「関係機関の調整があるので、数値の引き上げ以外の方法も考えたい」とも話している。11日のスピーチについても、石炭火力発電についても言及する方向で調整しているが、どこまで発言できるのか。政府内の調整がギリギリまで行われているのが現状だ。2020年からパリ協定が本格的に始まるのを前に、アメリカは正式に離脱を通告。世界的な機運に水を差しかねない状況の中、気候変動問題で日本が孤立しないためにも、今回のCOP25で積極的な発信・行動力を求めたい。 *9-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191212&ng=DGKKZO53243570R11C19A2TJ2000 (日経新聞 2019.12.12) 川重、世界初の水素運搬船 進水 来秋に完成 豪で液化し日本に 川崎重工業は11日、世界初となる液化水素運搬船の進水式を実施した。2020年秋に完成させる。同社は丸紅やJパワー、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルなどと組み、オーストラリアで採った安価な石炭から水素をつくり、日本に輸出するプロジェクトに取り組んでいる。今回の運搬船を使い、オーストラリアで生産した水素を日本に運ぶ実証を20年度に始める。11日、川重の神戸工場(神戸市)で行われた進水式にはリチャード・コート駐日オーストラリア大使や、トヨタの内山田竹志会長らの関係者を含め計4千人程度が出席。「すいそ ふろんてぃあ」号と名付けられた全長116メートルの運搬船は今後、水素を格納するタンクなどをつける。水素はセ氏マイナス253度まで冷して液化すれば体積を800分の1に圧縮でき、大量に輸送できる。水素はこれまでロケットの推進燃料などとして使われてきたが、用途は広がっている。トヨタ自動車は10月に水素を使う燃料電池車(FCV)「ミライ」の新モデルを公開。国内石油元売り最大手のJXTGホールディングスは横浜市の拠点で液化石油ガス(LPG)を原料に水素を生産。全国41カ所のステーションでFCV向けに水素を供給している。調査会社の富士経済は、30年度の水素関連市場は18年度比50倍以上の4085億円に膨らむと試算。燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は、低炭素社会を実現する切り札として期待が高まっている。中東情勢が緊迫化する中、化石燃料に依存するリスクが浮き彫りになっていることも背景にある。課題はコストだ。現状では水素で発電するよりも、液化天然ガス(LNG)や石炭で発電した方が大幅に安い。LNGと同じくらいのコスト競争力を実現するには、国際的な供給網(サプライチェーン)の確立と大量輸送の実現がカギを握る。川重は30年ごろの商用化を目指し、大型船の開発も進める方針だ。 *9-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53100260Y9A201C1I00000/ (日経新聞 2019/12/8) ノーベル賞吉野彰さん講演 「電池がエネ革命の中心に」 ノーベル化学賞を受賞する吉野彰・旭化成名誉フェローは8日午前(日本時間8日夜)、ストックホルム大学で記念講演した。授賞理由となったリチウムイオン電池の開発経緯や展望を紹介。環境問題解決のためのエネルギー革命の時代を迎えていると説明し、「リチウムイオン電池がその中心になる」と話した。記念講演は「ノーベルレクチャー」と呼び、10日夕に開く授賞式の関連行事になっている。吉野氏は「リチウムイオン電池の開発経緯とこれから」というタイトルで、化学賞を同時に受賞する3氏の中で最後に講演した。吉野氏は、過去の発火の危険を調べる実験の映像などを映し出しながら、「電極に炭素を使う実験がうまくいき、安全な電池として市場に出せると確信した」と語った。リチウムイオン電池は環境問題の解決に重要な役割を果たすとし「特に電気自動車が世界の市場を大きく変えていく」と力を込めた。「環境、経済、利便性が同じように発展していくことが重要だ」と訴え、電気自動車や人工知能(AI)が人々の生活を支える未来社会の映像を流した。「これからのエネルギー革命にリチウムイオン電池が中心的な役割を果たす」という言葉で講演を締めくくると、会場からは大きな拍手が起こった。終了後にはノーベル化学賞を受賞する3氏が壇上に並び、会場からの祝福に応えた。
| 日本国憲法::2019.3~ | 09:45 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2019,11,04, Monday
![]() 2019.10.31TBS 札幌のマラソンコース 大通り公園 (図の説明:1番左の番組を始め、全国版のメディアでもマラソン・競歩の札幌移転を批判する声が多かったが、それは東京人の目線にすぎない。左から2番目は札幌のマラソンコースで、右の2つは大通り公園だが、大通り公園は美しい道路だ。2020年のYOSAKOIソーラン祭りのチーム等が、街にくり出てオリンピックの閉会式に花を添えると、翌年からその地域への観光客や祭りへの海外チーム参加が増えそうだ) ![]() 時計台 北海道大学 北海道庁 (単調と言われている)新川通 (図の説明:それぞれの場所で塗り替えしたり、植栽を充実したりして手を入れれば、東京とは違った美しさが見られるだろう) ![]() ![]() (図の説明:上の段の左の3つは、YOSAKOIソーラン祭りチーム、下の段の左の4つは、徳島の阿波踊りチーム、一番右の上下は沖縄エイサー祭りチームだが、他地域の祭りの友情出演があればさらに華やかになり、日本の民族衣装と踊りが外国人に喜ばれると思う) (1)マラソン、競歩の開催地移転への批判について 2020年東京オリンピックのマラソン、競歩を東京から札幌に移して開催することを国際オリンピック委員会(IOC)が決定した時、私は意外な気がしたが、尤もだと思った。 その後、メディアは、*1のように、「出発時刻を早めたり、ミストを出すベンチを備えたり、遮熱性舗装をしたりして努力したのに・・」「IOCは強権だ」「不平等条約だ」等の批判をしていたが、弥縫策の「対策したふり」では間に合わないような猛暑になる可能性も大きかったため、この批判は当たらない。それよりも、「オリンピックの開催都市になるためのプレゼンテーションで『日本は温暖な気候だ』と言っていたのは虚偽だった」と言われそうである。 (2)遮熱性舗装について 表面に遮熱財を塗布して赤外線を反射させ路面温度の上昇を抑える遮熱性舗装は、*2のように、人が立つ高さでは逆にアスファルト舗装より気温や紫外線が高くなるという研究結果がまとまったそうだ。しかし、“遮熱性舗装”の仕組みについて考えればわかることだが、遮熱性舗装をしたからといって熱エネルギーがなくなるわけではなく、アスファルトに吸収されずに反射されるだけなので、この結果は当然なのである。 このことについて、樫村東京農業大教授(運動生理学・環境生理学)の研究チームは、「路面温度はアスファルトより約10度低かったが、高さ50センチ、150センチ、200センチではいずれもアスファルトより遮熱性舗装の方が高く、遮熱性舗装は熱中症のリスクを高める」と日本スポーツ健康科学学会で2019年8月30日に発表されたそうだ。 国土交通省や東京都の担当者は、東京でのマラソンや競歩を可能にするため結果を矮小に評価し、日本独特の根性論で切り抜けようとしていないだろうか? それよりも、アスファルトやコンクリートで覆われた地面を減らし、緑地を増やして、本当に過ごしやすくて豪雨に強い街を作るべきである。 (3)札幌のオリンピック、マラソンコースについて 札幌のマラソンコースについては、新川通(北区、手稲区)が日陰が少なく単調だというクレームが多かったため、*3のように、新川通を他の地区に変更する方向で検討しているそうだが、私は、北海道の大自然が放映されるのもよいと考える。 日陰の少なさは中央分離帯や両側に大きな並木(白樺・イチョウ・桜など)を植樹し、単調さは低層に3kmづつ異なる花(この時期に咲く花)を植えれば、市街地にはない北海道らしい自然の美しさが見られる。大自然に比べればおもちゃのようなビルやテレビ塔のある景色が一番よいと感じるのは、都会のコンクリートの中で育った人の感受性にすぎない。 なお、オリンピックのマラソンで大きな高低差を許されるのなら、大通り公園から40km以内に支笏湖や中山峠が入るので、中山峠付近を出発点として下りながら札幌市内の大通り公園を目指すのも美しいコースになるだろう。 ・・参考資料・・ *1:https://digital.asahi.com/articles/ASMB00GWXMBZUTQP01S.html (朝日新聞 2019年11月1日) マラソン騒動で見えたIOCの強権ぶり「不平等条約だ」 2020年東京五輪のマラソン、競歩の開催地を東京から札幌に移す国際オリンピック委員会(IOC)の案について話し合うIOC、東京都、大会組織委員会、国の4者によるトップ会談が1日正午、都内で始まった。 ●マラソン札幌開催が正式決定 小池知事「合意なき決定」 開催都市・東京の小池百合子知事は移転に反対してきたが、この会議の冒頭で「IOCの下した決定を妨げることはしない。合意なき決定だ」と述べた。なぜ「合意なき決定」ができたのか。組織委幹部はささやく。「都や組織委は、不平等条約を結ばされているようなものだから」。日本側が嘆くのは、東京都や組織委などがIOCと結ぶ「開催都市契約」だ。いったいどのような内容なのだろうか。「IOCは、オリンピック・ムーブメントの最高の権威で、五輪はIOCの独占的な財産である」。序文で、IOCの立場が明確に宣言されている。別の大会関係者は、こう解説する。「東京都は自らの意思で立候補して大会の開催場所をIOCに提供した立場。組織委はIOCの意向で動く手足で、いわばイベント屋だ」。組織委自体も、開催都市契約に基づいて設立された。1日に最終日を迎えた調整委員会は準備状況を確認し、話し合う場だが、意見が対立した場合の最終決定権は日本側にない。それを示す条文がある。「調整委が解決できない問題がある場合、あるいは、調整委の勧告に従って行動することをいずれかの当事者が拒否した場合、IOCが最終的な決定を行う」。さらに、こんな記述もある。「IOCは指針およびその他の指示を修正し、かつ新たに出す権利を留保する。開催都市(東京都)、NOC(日本オリンピック委員会=JOC)、及びOCOG(組織委)は、これらの修正、および新しい指針および指示の全てに対応するものとする」。今回の例に当てはめると、契約上、東京都も組織委も「マラソン、競歩の札幌開催」というIOCの「指示」に逆らえない。IOCが「決定事項」と強気だったのは、こうした裏付けがあるからこそだ。組織委や都も、IOCの要求を無条件にのんできたわけではない。経費を抑えるために、立候補ファイルにあった競技会場の新設を一部取りやめ、既存会場を利用することにした。それでも、IOCや国際競技団体を説得するのに、1年以上の時間を要した。マラソンの暑さ対策も、昨夏から深夜の開催などを模索していたが、IOCから「テレビ映りが悪い」などの理由で、却下された経緯がある。組織委幹部は「五輪開催に興味のある都市は、どう思うだろうか。開催都市とIOCの関係は、考え直すべき時が来ているのでは」と言う。契約の内容は過去大会を踏襲し、今回が特別というわけではない。IOCに強い権限を定める「五輪憲章」に沿い、その順守を求める内容になっている。五輪憲章には「IOCは五輪開催都市契約が定める拠出金のほかは、それと異なる内容の合意が書面でなされていない限り、大会の組織運営と財政、開催について財政的な責任を負うことはない」との文言もある。契約はIOC総会で開催都市に決まった直後に結ぶことになっており、東京の場合、13年9月に東京都、JOC、IOCの3者の間で結ばれた。組織委も14年に契約を結んでいる。契約内容は当初は非公開だったが、17年5月に公表された。組織委の公式サイト(https://tokyo2020.org/jp/news/notice/20170509-01.html別ウインドウで開きます)などから確認できる。 ●IOCの権限が強い開催都市契約 五輪憲章に基づき、IOCは、オリンピック・ムーブメントの最高の権威であって、これを主導し、また、オリンピック競技大会は、IOCの独占的な財産であって、IOCはこれに関するすべての権利とデータ(特に、組織、運営、利用、放送、記録、表現、複製、アクセス、流布に関する、あらゆる形態、手法またはメカニズムのすべての権利であるが、これらには限定されるわけではない)を、既存のものか将来開発されるものかを問わず、全世界を通して永続的にこれを所有する(序文)。遅くともIOCが選手村の開村を求める公式日から本大会終了までの間、開催都市および本大会におけるイベントを開催する他の都市全体におけるすべての会場の出入り口と大通りを、オリンピックシンボルおよびその他のオリンピック関係の言葉とイメージで装飾する(第22条)。IOCは、オリンピック憲章に基づき、また、IOCがその単独の裁量にて本大会にとって最も利益になると考えた場合、いかなる時でも、競技、種別および種目に変更を加える権利を留保する。上記第6条(略)の規定に基づき、組織委は、本大会プログラムに関する競技、種別および種目の追加および/または削除を含め、これらの変更についての全費用を負担するものとする(第33条)。メダルおよび記念メダルを含めたすべてのメダルと賞状は、厳格な監督の下、またIOCの書面による事前承認を得た上で、制作し、配布されるものとする(第40条) *2:https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/201908260000658.html (日刊スポーツ 2019年8月27日) 五輪マラソン、猛暑対策の「遮熱性舗装」は逆効果 路面温度の上昇を抑える効果があるとして、東京オリンピック(五輪)の猛暑対策に国や都が導入を進めている「遮熱性舗装」が、人が立つ高さでは逆にアスファルト舗装より気温や紫外線が高くなるという研究結果がまとまった。樫村修生東京農業大教授(運動生理学・環境生理学)の研究チームが30日の日本スポーツ健康科学学会で発表する。樫村教授は「遮熱性舗装は熱中症のリスクを高める」としている。 ◇ ◇ ◇ 16年8月31日、東京・青山通りの実験コースを試走した瀬古利彦さんが「明らかに涼しい」と太鼓判を押し、導入が決まった遮熱性舗装が、猛暑対策としては逆効果になるという研究がまとまった。樫村教授らは五輪開催期間(7月24日~8月9日)に重なる今年7月26日、路面、50センチ、150センチ、200センチの高さで気温、紫外線強度などを計測した。路面温度はアスファルトより約10度低かったが、高さ50センチ、150センチ、200センチではいずれもアスファルトより遮熱性舗装の方が高かった。7月26日は暑さ指数28~31度だった。暑さ指数31度以上と条件が厳しかった8月8日の計測では、遮熱性舗装はアスファルトより最大で4度高かった。「日射が強くなればなるほど遮熱性舗装の方が高くなります」(樫村教授)。五輪の暑さ対策として遮熱性舗装の研究を進めていた国は15年7月15日~9月27日に検証実験をしている。75日間の平均で、高さ50センチでは遮熱性舗装の方が0・2度低く、150センチでは0・1度高かったが、「有意差はない」としていた。樫村教授は「五輪期間中は暑さ指数が30度を超えます。平均値ではなく、暑さ指数が高いときはどうなるのかを計測しないといけない」と指摘する。樫村教授らの計測では、高さ50センチが最もアスファルトとの差が大きかった。「小さな子ども、ベビーカーに乗った赤ちゃん、車いすの人が特に影響を受けるということです。もうひとつのリスクは紫外線で、遮熱性舗装ははね返りが大きく、アスファルトの4倍以上です。傘をさしても紫外線は防げない。熱中症のリスクを高めるだけではなく、目や肌への障害も高めます」。樫村教授は<1>遮熱性舗装は路面温度を下げる<2>夜間の放射熱を軽減し、熱帯夜を少なくすることは認める。しかし、問題は晴れた日の強い日射だ。7月24日~8月9日の気象データでは、晴れが75%。「4日に3日は晴れるんです」。マラソンコースは道路延長20・2キロ(都道・区道14・6キロ、国道5・6キロ)。都道・区道は75%、国道は52%、遮熱性舗装工事が終了している。 ◆遮熱性舗装 表面に遮熱財を塗布し、赤外線を反射させて路面温度の上昇を抑える舗装。もともと屋根など建築に用いられていたが、ヒートアイランド対策として02年、道路舗装に使われるようになった。東京五輪の猛暑対策として「アスリート・観客にやさしい道の検討会」が16年、導入を提言した。 ◆暑さ指数 <1>気温<2>湿度<3>日射・地面や建物からの放射熱から算出する。25~28度が「警戒」、28~31度が「厳重警戒」、31度以上が「危険」で、日本スポーツ協会は31度以上では「運動は原則禁止」、28~31度では「激しい運動は中止」と定めている。気温に単純換算できないが、日本スポーツ協会では気温31度以上が「厳重警戒」、気温35度以上が「危険」。 〇…国土交通省と東京都の担当者は今月20日、樫村教授を訪ねた。「おうかがいし、データを見せていただきました」(国交省道路局・武藤聡沿道環境専門官)。武藤氏は「ひとつの研究成果だと思います」と話しながらも「我々もさまざまな実験、シミュレーションをしています。これまで遮熱性舗装の方が特別高くなるという結果は出ていません」として、暑さ指数31度以上など悪条件下での計測は「今のところ特に考えていない」としている。 *3:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/361315 (北海道新聞 2019/11/4) 五輪マラソンコース、新川通の変更検討 日陰少なく単調 札幌での移転開催が正式に決まった2020年東京五輪のマラソンを巡り、大会組織委員会がベースとしている北海道マラソンのコースから、新川通(北区、手稲区)について他の地区に変更する方向で検討していることが3日、関係者の話で分かった。新川通は日陰が少なく、選手らの暑さ対策に課題が残ることなどが主な理由。組織委は詳細について今後詰めの作業を急ぐ方針。東京五輪マラソンのベースとされる北海道マラソンのコースのうち、新川通は高低差が少ない直線で、18・5~31・5キロ地点の往復13キロある。ただ、日陰や目標となる建物が少なく、選手らが直射日光を長く浴びるリスクがあり、直線で景色の変化に乏しい。ランナーの間では「精神力が問われる」と言われ、北海道マラソンの難所になっている。関係者によると1日のマラソンの札幌移転決定を受け、組織委の担当者らが3日道内入り、札幌市内を訪れてコースの検討のために現地視察を行ったという。 猛勉強しているため、ブログの記載をしばらく休みます。 資料持ち込み可だったため、何とか90点以上とれました(2019年11月9日)。 <日本は長所を活かして頑張らないと> PS(2019/11/11追加):*4-1のように、大会組織委の武藤事務総長が、男女マラソンコースの発着点候補になっている大通公園は、「重要な夏のイベントが同時期にあり、調整が課題」とされたそうだが、オリンピックも世界に向けて発信できる重要なイベントであるため、これまでのイベントをオリンピック終了後に行えば、オリンピック関係者も続きに楽しめてよいだろう。 また、*4-2のように、道議会全会派のうち自民会派のみが新庁舎での喫煙所の設置を決めており、北海道医師会の長瀬会長が、来年1月に完成予定の新しい道議会庁舎を完全禁煙とするよう自民党道連の吉川会長に要望されたそうだが、自民党は、男性中心でかつ煙草栽培農家やたばこ販売組合の応援を受けているため、煙草に甘いのである。 なお、日本はインフレ政策(→賃金上昇)・貿易黒字による円高・頑張らない方向への改革により、加工貿易の比較優位性が新興国より低くなっているため、*4-3のように、貿易収支が赤字に転じ、この傾向は今後も続くだろう。そのため、国内消費や旅行収支は重要なのであり、これまでの蓄積を生かし発展させて、アジアの奥座敷としての地位を獲得する必要がある。 *4-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/363115?rct=s_tokyo2020_marathon (北海道新聞 2019/11/9) 発着点3案「それぞれ課題」 組織委が視察 五輪マラソン 東京五輪マラソン・競歩の札幌開催に向け、大会組織委の武藤敏郎事務総長は8日、札幌市を訪れ、男女マラソンコースの発着点として組織委が検討する市内3カ所を視察した。武藤氏は「発着点は早期に決めなくてはならない。12月初旬の国際オリンピック委員会(IOC)理事会に向け実務者会議で協議したい」「施設整備や運営は簡素化、効率化を図る」と述べた。会場(発着点)は北海道マラソンの発着点である大通公園(中央区)が最有力とされる。同日に市と道、組織委で発足した実務者会議は、この大通案に、札幌ドーム(豊平区)、円山公園(中央区)を加えた3案で検討を始めた。武藤氏は視察後に市役所で記者会見し、「それぞれ素晴らしい施設だがデメリットもある」と指摘。札幌ドームではアリーナ出入り口の改修の必要性やコースの高低差を問題視し、円山公園は「丘陵地帯のため競歩コースには難しい」などとした。有力視される大通公園については「重要な夏のイベントが同時期にあり、調整が課題」とした。 *4-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/363470(北海道新聞 2019/11/11) 道議会新庁舎の完全禁煙を 道医師会長、自民党道連会長に要望 北海道医師会の長瀬清会長は10日、来年1月完成予定の新しい道議会庁舎を完全禁煙とするよう、自民党道連の吉川貴盛会長に要望した。吉川氏は「道連として真摯(しん し)に受け止める」と述べ、新庁舎の会派控室に喫煙所を設置することを決めている自民党・道民会議に対し、要望内容を伝える考えを示した。長瀬氏は、札幌市内で吉川氏に要望書を手渡し「公共(施設)の道議会には市民も子どもも入る。他の県に及ぼす影響も大きい」と喫煙所設置を撤回するよう求めた。吉川氏は「最終的には道議会自民党が決めることになるが、今の話を(自民会派に)しっかり伝える」と応じた。要望後、長瀬氏は記者団に対し「(問題が)1歩も2歩も進んだ。道連会長として手腕を発揮してほしい」と話した。道議会全5会派のうち、自民会派のみが新庁舎での喫煙所の設置を決めており、他会派から全会派での協議を求める声が上がっている。 *4-3:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/452341 (佐賀新聞 2019年11月11日) 経常黒字10兆3382億円、19年度上半期、3・3%減 財務省が11日発表した2019年度上半期(4~9月)の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支の黒字額は、前年同期比3・3%減の10兆3382億円だった。半期ベースでの黒字は11期連続。中国向け自動車関連部品や半導体製造装置の輸出が減少したことが影響し、経常収支の黒字幅は縮小した。経常収支のうち、輸出から輸入を差し引いた貿易収支は、前年同期の1兆1245億円の黒字から241億円の赤字に転じた。輸出は6・1%減の37兆5796億円、輸入は3・3%減の37兆6038億円だった。旅行や貨物輸送を含むサービス収支は2711億円の赤字となった。旅行者のお金の出入りを示す「旅行収支」の黒字は1兆3451億円だった。韓国からの旅行者は減った一方、外国人旅行客全体は増加した。海外投資で生じた利子や配当の動向を表す第1次所得収支の黒字は、ほぼ前年同期並みの11兆3079億円だった。同時に発表した9月の経常収支の黒字額は前年同月比12・5%減の1兆6129億円だった。黒字は63カ月連続。中国向け自動車関連部品などの輸出が落ち込み、黒字幅が縮小した。ラグビー・ワールドカップ(W杯)の開催により訪日客が増え、旅行収支は拡大した。 <再エネの利用と送電について> PS(2019年11月13、15日):私は、北海道の自然や雄大さが好きで、札幌・定山渓、支笏湖・洞爺湖、昭和新山、摩周湖、函館、知床・釧路・根室などのいろいろな場所に何回か行った。そのため、*5-1のように、JR北海道がJR札幌駅南口に高さ約230mの新幹線と各交通機関との結節点となる新ビルを建設して、バスターミナルも整備するのは良いと思うが、空港と鉄道の便利な連結も必要だ。 また、北海道は観光や農林漁業だけでなく再エネ発電にも向いているため、*5-2のような太陽光・風力・地熱発電による電力を集め、鉄道に最新の電線を敷設することによって本州に送電することも可能だ。それらの工夫により、*5-3のように、何でも高コストのため、要するに何もできない我が国のインフラが少しは更新しやすくなると思われる。 赤羽国土交通相は、*5-4のように、九州新幹線長崎ルートを佐賀空港経由のルートでフル規格整備することについて、「地盤の問題などもあり難しいのではないか」と述べられたそうだが、他の新幹線が建設されている地盤と比較すれば根拠がなく、佐賀駅経由の結論を導くための言い逃れにすぎない。しかし、新大阪駅と同様、新佐賀駅を作ることも可能である上、大きな荷物を持って移動するのに国交省の航空(国際・国内も!)・港湾・鉄道の非連結政策が不便で仕方ないのは事実であり、どういう人の移動を前提としているのかと思うことが多いのである。 ![]() (図の説明:1番左は、釧路湿原のタンチョウ《冬》、左から2番目は釧路湿原のハマナス《夏》、右の2つは羅臼のシャチで、自然がすごいわけである) *5-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/363806 (北海道新聞 2019年11月12日) 札幌駅新ビル 道内一230メートル 創成川東に新幹線改札 JR計画 JR北海道の島田修社長は11日の記者会見で、JR札幌駅南口の札幌市中央区北5西1、西2の両街区に一体的に整備する新ビルのうち、西1街区の高層棟は地上47階建てを目指すことを明らかにした。JRによると、高さ約230メートルで、現時点で道内で最も高いJRタワー(38階建て、173メートル)を超え、道内一の高層ビルとなる。両街区を一体的に開発する札幌市とJRなどは同日、準備組合を設立し、島田社長と秋元克広市長が札幌市内で記者会見した。島田社長は、高層棟について「JRタワーより高層のビルを目指したい」と述べ、今月1日に東京・渋谷に開業した渋谷駅直結の高層ビル「渋谷スクランブルスクエア」をモデルに、新ビルを新幹線と各交通機関との結節点としたい考えを示した。市によると、新ビルは2030年度末の北海道新幹線札幌延伸に向けて、29年秋の完成を目指す。高層棟には、世界展開する高級ホテルやオフィス、商業施設を併設。西2街区の低層棟には商業施設をつくる。両街区1階部分にはいずれもバスターミナルを整備。2階には両街区をつなぐ歩行者用デッキをつくり、バスの待合所などを配置し、災害時には帰宅困難者を受け入れるスペースとする。また、北海道新幹線札幌延伸を踏まえ、創成川東地区に新幹線用の東改札を開設することも検討。その際、創成川を横断し、西1街区の新幹線駅舎と結ぶ歩行者用デッキの設置についても調整する。 *5-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191113&ng=DGKKZO52098720S9A111C1TJ1000 (日経新聞 2019年11月13日) 道路舗装で太陽光発電、ミライラボ、EV給電も 中日本高速など、CASE対応 「眠れる資産」とされた道路に、最新テクノロジーを実装する動きが広がっている。新興企業のMIRAI-LABO(ミライラボ、東京都八王子市)は太陽光パネルを装備した道路舗装を開発した。中日本高速道路は道路に埋め込んだセンサーを使い、自動運転で必要なデータを発信するシステムを開発している。車の電動化など「CASE」の普及をにらみ、総延長約128万キロメートルに及ぶ道路の価値の掘り起こしが本格化する。2006年設立のミライラボは非常用電源など省エネ機器を手がけ、全国の警察や自治体に販売する新興企業。今回、太陽光で発電する道路舗装「ソーラーモビウェイ」を開発した。太陽光パネルを特殊な樹脂で覆い道路の舗装材の代わりに使う。現在、道路舗装大手NIPPOと性能試験を進めており、2022年の実用化を目指す。通常の太陽光パネルは衝撃に弱く割れやすい。今回、ミライラボは柔軟性のある素材を使い衝撃に強いパネルを採用した。舗装面にパネルが露出していると車がスリップしたり路面が摩耗したりする。これを防ぐためセラミック片を混ぜた透明な樹脂でパネルを覆う。ビル屋上などの太陽光パネルは光の角度が浅いと発電効率が落ちる。開発した舗装材はセラミックが太陽光の角度を変え、1日を通した発電量を高める効果が期待できるという。電気は地中の電線を通じ蓄電池にためる。電気自動車(EV)などで使ったバッテリーの再利用も想定する。国内には総延長約128万キロメートルの道路が走っているが、車や人の移動用途が中心の「眠れる資産」だ。ミライラボの平塚利男社長は「高速道路と国道の半分を発電型の舗装にすれば日本の消費電力の16.5%を賄える」と試算する。ミライラボがにらむのは、車の電動化や自動運転など「CASE」の本格到来だ。発電した電力は街灯や道路表示板に加え、将来は走行中のEVへの無線給電や、自動運転に必要な道路状況に関するデータ通信の電力源としての活用を想定している。停電で自動運転車に情報が送れなくなると事故につながる恐れもあり、電源を道路で賄えるメリットは大きい。道路を発電基地にする利点はほかにもある。平地の少ない日本では森林を伐採してパネルを設置するケースが多く、道路を活用すれば環境破壊を防げる。災害で停電が起きてもパネルで発電すれば信号や街灯を維持できる。再生エネルギーの送電網不足が問題となるなか、道路での発電は「地産地消」につながる。国内の道路は老朽化が進み、今後大規模な改修時期を迎える。国土交通省の試算では今後30年間、高速道路や一般道で年2兆円超の工事が必要になる。老朽化対策の時期がCASEの大波と重なることから、道路に最新テックを埋め込む技術開発が広がる。中日本高速道路(NEXCO中日本)は高速道路にセンサーやカメラを整備する。すでに東名高速など主要道に地磁気センサーを埋め込み、渋滞情報などのデータを集めている。今後、高精度カメラを短い間隔で設置し、道路の運行状況を絶え間なく監視できるようにする。同社は管轄する道路の約6割が建設から30年たち、「来年度から首都圏の主要道路が改修時期を迎える」(担当者)。次世代通信規格「5G」が実用化すれば大容量の映像データをスムーズに送受信でき、自動運転車へのデータ送信など道路の付加価値を高める。大成建設は豊橋技術科学大学と共同でEVのワイヤレス給電システムを開発している。地面に電極を敷設し、受電装置を備えたEVが上を走ると電気が送られる。ブリヂストンも東京大学などと共同でタイヤを通じて道路から充電する技術開発を進めている。道路から給電できれば搭載するバッテリー量を減らし車体の軽量化にもつながる。普及に向けた課題はコストだ。ミライラボとNIPPOが試験を進める発電型の舗装材は「まだ価格を設定する段階ではない」(NIPPO)というが、大幅なコスト増は避けられない。生産規模の拡大によるコスト低減や、道路の付加価値向上による新しい収益モデルの構築が必要になる。海外でも政府や企業がCASE対応を急いでおり、今後は国際競争も激しくなる。例えば道路での太陽光発電は米国やフランスなどで開発が進むが、現時点で明確な成功例は出ていないという。 *5-3:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20191113&c=DM1&d=0&nbm=・・・ (日経新聞 2019年11月13日) 最新技術、課題はコスト インフラ老朽化契機に改修 国土交通省によると、建設後50年以上の道路や橋の割合は2018年の25%から33年に6割に高まる。最新技術はコスト低減が課題になるが、低コスト化やノウハウ蓄積で海外に先行できれば、新たなインフラ輸出の商材になる可能性もある。国交省は2月、インフラの定期点検要領を改正した。従来は橋やトンネルの状態を人の目で確認する必要があったが、同等の情報が得られればカメラやドローン(小型無人機)などの活用も認めた。これを受け、ゼネコン以外の異業種が最新技術を応用する動きが活発になっている。リコーは複数台のステレオカメラを搭載した一般車両を走らせ路面の状態を調査する技術を開発。デジタルカメラで培った画像処理技術を応用する。カシオ計算機は時計「G-SHOCK」の技術を応用しセンサーを搭載したネジを開発。構造物のゆがみなど経年変化の情報をリアルタイムで解析できる。国交省は今後30年で必要になるインフラの更新費用が最大で194兆円に上ると推計する。単にインフラを更新するのではなく、CASE対応のような付加価値向上や新技術の育成に結びつける工夫が不可欠になる。 *5-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/450863 (佐賀新聞 2019/11/7) 「佐賀空港ルート難しい」九州新幹線の整備で国交相 赤羽一嘉国土交通相は5日の参院国交委員会で、九州新幹線長崎ルートの整備方式見直しに関し、佐賀空港を経由するルートでフル規格で整備する考え方について「地盤の問題などもあり難しいのではないか」と述べ、実現性は低いとの認識を示した。立憲民主党の野田国義議員(福岡県)の質問に答えた。赤羽氏は佐賀空港の立地状況を念頭に、空港経由に難色を示した上で「関係者の皆さんが意見を腹蔵なく言いながら結論に導かなければならない」と話した。10月28日の山口祥義知事との面談内容も問われ「高規格ネットワークを張ることが国益に沿う。知事は若いから長期に県知事を行うと思うので、中長期的な視野で結論を出していただきたいという話をした」と説明した。水嶋智鉄道局長は佐賀新聞社のインタビューで、フル規格は佐賀駅経由が合理的との見解を示している。 <問題だらけの大学入学共通テスト> PS(2019年11月13、14、16、21、22日):*6-1の国語記述式問題は、誰が採点するかで結果が変わり、標準回答を作るため問題と正答例をテスト実施前にベネッセ子会社の「学力評価研究機構」の数人が閲覧するのも問題であるため、国語の記述式テストをやるとすれば大学毎の二次試験に限った方がよいと、私も思っていた。そのため、国語の記述式問題の成績を判断材料から外すより、大学入学共通テストから記述式問題を無くすのが無駄な費用を省けてよい。 また、*6-2のように、英語も複数の民間試験を利用すれば受験生の成績を比較できないため、「2020年度実施の入試で民間試験を出願資格として使うことは難しい」という東大の判断に賛成だ。さらに、「複数の民間試験のどれを使ってもよい」などとという入試はあり得ないため、この方式は中止すべきだ。なお、これまで勉強した人は、勉強したことに損はないと思う。 このような中、*6-3のように、首都圏の高校生グループが、「記述式の是非を巡る議論をするには客観的データが必要だ」と感じ、中高生や教師らにインターネットで呼び掛けて大学入学共通テストに導入される国語の記述式問題の自己採点の再現実験を実施し、正誤の判断が大きく分かれることを証明して出題中止を訴えたそうで、Over Expectation(期待以上)の思考力を持つ生徒たちだ。また、「誰が判断してもばらつきが出る」「思考力を測る目的なのに型にはまった答えを導き出そうとしている」等の指摘も、全くそのとおりで感心した。 2019年11月16日、*6-4・*6-5のように、「①大学入学共通テストの国語・数学の記述式問題は、50万人規模の試験で採点にバラツキが出る」「②記述式の採点はベネッセのグループ会社が約61億円で受託している」「③入試改革の背景に官民癒着がある」「④英語の民間試験の実施団体であるベネッセの関連法人には、旧文部省や文科省の幹部らが再就職していた」「⑤文科省も共通テストで記述式を出題する意義を否定している」等の理由により、共通テストの記述式問題の導入は断念するのが妥当な選択だという声が多い。ただでさえ団塊の世代の1/2の人数になっている若い世代が論理的思考力・科学的創造力などを身に付けるには、各段階での教育内容の充実や入試の正確性・公平性・公正性が不可欠であるため、私は、50万人規模の大学入学共通テストは広い知識をマークシート方式で問い、コンピューターで短時間に採点するのが合理的だと思う。そして、その結果を受けて進む各大学の二次試験で、受け入れ大学が要求する受験生の科学的思考力、論理性・判断力などを記述式の出題も含めて問うのが合理的だろう。 私は、英語で仕事をすることが多く、読み書きだけでなく聞く話すも必要だったのでよくわかるが、Broken Englishでも話せないよりましではあるものの、知識人が話す場合にはBrokenでは尊敬されない。そのため、日本でしか通用しない検定試験を受けてもあまり意味がなく、英語を母国語とする国の検定試験のうち(大学入試なら留学を意識して)TOEFLEなら意味があると思っていた。そのような中、*6-6のように、ベネッセのGTECが主流になりつつあったというのは驚きで、民間企業に利益を上げさせるための入試制度に見えるが、教育は真面目に考えないと対象世代を不幸にする。従って、唐津東高がGTECの「模擬試験」を取りやめたのはよいと思うが、だからといって「部活があるから受けたくない」というのは英語の勉強をさぼることになるため、しっかり勉強はさせておくべきだ。また、日本は、数学・物理・化学・生物・世界史・日本史・地理等の英語以外の科目をすべて日本語で学ぶため、外国人とコミュニケーションするには英語で覚えなおすことが必要で、日本人の総合的英語力は同じアジアのインド・香港・シンガポールなどに大きく劣る。従って、他の科目の教科書で使う単語や熟語にも英語を併記しておき、試験の一部を英語で行うのがよいと思う。 *6-7のように、メディアは2019年10月に始まった幼児教育・保育の無償化に関する財源が足りなくなり、中高所得層や単価の高い保育所の利用者が想定を上回ったため「金持ち優遇策」だとしているが、私は、児童手当と幼児教育・保育の無償化が実現した現在、むしろ所得税における子どもの扶養控除を廃止してよいのではないかと考える。何故なら、これこそ高額の所得税を支払う人(高所得者)ほど有利で、非課税世帯にはメリットのない制度だからだ。さらに、幼児教育・保育はサービスであるため、所得によって値段を変えると二重課税になる上、学ぶことが多い現在の子どもは3歳から義務教育として語学・音感・ダンス等のできることを前倒しして教えるとともに、既に保険料を支払い収入はなくなっている高齢者への社会保障給付を減らすのではなく、生産年齢人口の期間に景気対策や補助金を要する人を減らすのがよいと思う。 ![]() *6-3より 18歳人口の推移 (図の説明:インターネットでアンケートをとってあっと言う間に統計処理した結果を出せるのは今だからこそできることだが、これをやった高校生は偉いと思う。そして、左図のように、正誤判断にバラツキがでている。また、多様性のある民主主義社会では、言語で明確に内容を伝えることが大切であり、どこの国でも人を指さすのは失礼とされる場合が多いため、中央の図の問題もよくない。さらに、現在の18歳人口は団塊の世代の約半数であり、一人一人が充実した教育を受ける必要性が増しているのだ) *6-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/364439?rct=n_topic (北海道新聞 2019年11月13日) 二段階選抜で国語の記述式除外を 国公立大に要請へ、文科省 2021年1月が初回となる大学入学共通テストを巡り、文部科学省が全国の国公立大に対し、合格可能性が低い受験生を門前払いする二段階選抜で、国語に導入される記述式問題の成績を判断材料から外すように要請する検討に入ったことが13日、文科省への取材で分かった。記述式問題は国語と数学で出題されるが、国語は自己採点が難しく、採点ミスも起きやすい懸念がある。文科省は、二段階選抜後に何らかの問題が判明すると救済が難しいことや、自己採点と実際の成績のずれによる混乱を防ぐ観点から、マークシート式の結果のみを判断材料とするよう配慮を求めたい考えだ。 *6-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2019111202000206.html (東京新聞 2019年11月12日) 東大20年度入試 副学長見解「民間試験利用 難しい」 文部科学省が大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入を延期したことを受け、東京大の入試担当の福田裕穂(ひろお)副学長は十一日の記者会見で、二〇二〇年度実施の入試で民間試験を出願資格として使うことは難しいとの見解を示した。英語民間試験は、共通テストへの導入は見送られても各大学が独自の判断で利用することは可能。各大学の対応が注目されている。東京大は昨年、共通テストへ民間試験を導入することについて学内で検討し、公平性への不安や責任の所在の不明確さなど、さまざまな問題点を文科省へ指摘。林芳正文科相(当時)は東京大の五神真(ごのかみまこと)学長と会談し、関係者の意見交換の場を設置して意見を聞くことなどを約束していた。福田副学長は「文科省の延期の発表は、受験生の安心を得るに至っていないという判断だと理解する。われわれがそのまま民間試験を出願資格とすることは難しいと私自身は考える」と語った。正式な対応は学内の入試監理委員会で決め、ホームページで公表する。英語民間検定試験については、四年制大学の約七割が大学入試センターのシステムを通じて利用する予定だった。システムは延期になったが、独自に民間試験の結果を受験者に提出してもらうことは可能なため、予定通り利用するのか、取りやめるのか、方針を明確にする必要がある。国立大学協会(国大協)は二十九日に各大学がホームページなどで公表することを決めている。福田副学長は「国大協の日程に合わせるかは決めていないが、できるだけ早く公表したい」と話した。 *6-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2019111402000185.html (東京新聞 2019年11月14日) 国語記述式 採点ばらつき「公平性欠く」 高校生ら再現実験 二〇二〇年度実施の大学入学共通テストに導入される国語の記述式問題について、首都圏の高校生グループが中高生や教師らにインターネット上で呼び掛けて自己採点の再現実験を実施した。十三日に開いた会見で、同じ解答を巡り正誤の判断が大きく分かれる結果を公表。「現行のシステムでは公平な判定や自己採点が難しいことが裏付けられた」とし、出題中止を訴えた。自己採点は、受験生にとって二次試験で出願する大学を最終的に決める材料。実際の得点と乖離(かいり)すると、適切に出願先を選べなくなる。そのため高校生らは、記述式の是非を巡る議論をするには客観的なデータが必要だと感じ、アンケート形式による再現実験を思い立った。今月九~十一日の三日間にインターネットで呼び掛け、高校生八百十五人、中学生二十人、大人六百十人の計千四百四十五人が参加。大人のうち八十六人は現職の教員、予備校講師やその経験者だった。実験では、昨年度大学入試センターが行った共通テストの試行調査の出題を利用した。参加者にセンターが示した正答の条件、満点解答例を提示した上で、生徒A、B、Cの三つの答案例を採点してもらった。その結果、どの答案でも判断がばらついた。中高生八百三十五人のグループと教員ら八十六人のグループに分けて分析すると、生徒Aの答案では、両グループとも約二割が満点正解の評価a、約七割が部分正解のbとなった。一方、答案Bでは、aが中高生は二割なのに対し、教員らは四割に上った。さらに、センターが条件とする語句を直接含まない答案Cについては、両グループとも四分の一が、正答か誤答か判断がつかない「判定不能」とした。代表の高校生(16)は「誰が判断してもばらつきが出る。現状の採点システムに問題があるということだ」と指摘、中止を訴えた。別の生徒(17)は「よりよい試験へ改革するのはいいことだが、十分準備して実施するべきだ。いったん立ち止まり、当事者の声を聞き入れて」と思いを語った。再現実験に参加したうち約九百人が寄せた感想も一部紹介。「人によって表現が異なり、解答の解釈も一通りではない。公平性、確実性に欠ける」「思考力を測る目的なのに型にはまった答えを導き出そうとしている」「五十万人規模の採点は不可能。民間業者への委託は論外」など、すべて否定的な意見だったという。 <国語記述式問題> 思考力などを問うとして共通テストに導入。3問出題、各解答を正答の条件を全て満たしているかなどによりa、b、cで採点。さらに3問の結果を掛け合わせて5段階で総合評価する。マークシートと違い、採点者によって判断がぶれることや、受験生が正確に自己採点できないことが心配されている。自己採点は出願する大学を選ぶ最後の材料で、実際より高く自己採点すると難易度の高い大学に出願し2次に進めなかったり、低く自己採点して志望先をあきらめることが起きる可能性がある。 *6-4:https://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2019111602000177.html (東京新聞社説 2019年11月16日) 記述式試験 腰を据えて仕切り直せ 二〇二〇年度開始の大学入学共通テストで、国語や数学の記述式問題でも、採点のばらつきなどの不安が膨らんでいる。もう一つの柱の英語民間試験導入は延期された。見切り発車で良いのか。東京大学は記述式の利用方法の公表を留保している。「政治的な動きがあり、見極めたうえで判断せざるを得ない」(福田裕穂副学長)というのがその理由だ。新テスト導入が一年余後に迫る中、国会の争点と化す異常事態に教育現場には戸惑いも広がる。五十万人規模の試験で採点にばらつきが出る懸念は一八年に行われた試行調査では拭えなかった。採点ミスは0・3%あった。採点結果と受験生の自己採点が一致しない割合も約三割に上っている。本番の採点者は一万人以上になるとみられ、学生アルバイトが含まれる可能性もある。政治主導の入試改革の背景に官民癒着があるのではないかという疑念が、記述式への批判を増幅している側面もある。英語の民間試験を巡る国会での議論の中で、試験の実施団体の一つであるベネッセの関連法人に旧文部省や文部科学省の幹部らが再就職していたことも明らかになった。記述式の採点はベネッセのグループ会社が約六十一億円で受託している。大学入試センターは今月、二万人の高校生の答案などを使い、複数の採点者でミスを防ぐなど、採点の精度を上げるための検証作業を始めた。ただ、どこまで改善できるかは不透明なうえ、自己採点との食い違いは検証の対象外だ。問題を容易にすれば、採点のばらつきなどは少なくなるだろう。だが思考力や表現力を測るという本来の目的からは遠ざかり、かかる費用と得られる効果は見合うものになるのかという別の課題が生じる。記述式の導入自体に無理があるのではないか。文科省は、一定水準に満たない志願者を二次試験の対象から外す二段階選抜の判断材料に、国語の記述式の成績を使わないよう国公立大学に要請する検討に入っているという。必要なのは表面的な取り繕いで批判をかわそうとすることではなく抜本的な見直しだろう。人口減少など困難な社会の課題に取り組む若い世代に、未来を切り開いていく力を身に付けてほしい。それが思考力などに重きを置く入試改革の原点のはずだ。高校や大学がその理念を共有し、二次試験のありようを含め、腰を据えて仕切り直しをするべきだ。 *6-5:https://www.kahoku.co.jp/editorial/20191116_01.html (河北新報 2019年11月16日) 大学入学共通テスト/記述式導入は中止の決断を 2021年からの大学入学共通テストでの記述式問題の導入を巡って、文部科学省が迷走している。全国の国公立大に対し、受験生を門前払いする二段階選抜では、国語の記述式の成績を判断材料にしないように要請する検討を始めたという。これでは、共通テストで記述式を出題する意義を文科省が自ら否定しているのと同じだ。懸念されるさまざまな混乱の回避のためだというが、共通テストの記述式問題の導入は、きっぱりと断念するのが妥当な選択だ。制度的欠陥が幾つも指摘され、公平な採点への疑念も持たれながら、膨大な費用をかけてまで、導入する意味に乏しい。野党4党は既に中止法案を衆院に提出しており、原点に戻ってあるべき制度を議論し直してもらいたい。記述式の出題に関して強い違和感が残るのは、採点業務に受験産業を担う企業グループが携わる点だ。受験教材の販売から大学入試の採点まで、一私企業のグループが関与するのは好ましくない。批判と懸念が寄せられるのは当然だろう。問題や解答の漏洩(ろうえい)の危惧ばかりではなく、採点の公平性と正確性にも疑問が残る。業者側は「公平でぶれない採点を行う」としているが、採点者は学生アルバイトが中心となる。客観的な採点マニュアルを整備したとしても、やはり不安は募る。文科省は採点基準を明確化し、機械的に採点ができるような記述式問題を出題するとしている。しかし、機械的に採点可能な問題を出題するのであれば、マークシート方式がふさわしい。この点でも文科省の説明は矛盾している。記述式の出題は、受験生の思考力、判断力、表現力を問う重要性が入試改革の議論の中で指摘され、導入が決まった経緯がある。各大学が実施する2次試験で記述式の問題があまり出題されていないという現状批判もあった。大学入試センター試験の過去の問題を見れば、そうした指摘は事実誤認に基づくのは明らかだ。長い実績を積んできたセンター試験の問題は練り上げられた良問が多く、受験生の学力を適切に測れないことは決してない。また、各大学が実施する2次試験では、各教科で記述式の問題が出題されてきた。センター試験で基礎的な学力、記述式や小論文を含む2次試験で応用的な学力を見るという効果的な役割分担がなされてきたと言える。数学の記述式問題は、国語に比べれば、採点の客観性は一応は担保できよう。しかし、採点の期間がわずかに約20日と短く、約50万人の答案を全くミスなく果たして採点できるのか心もとない。幾つもの制度的欠陥と運営の不安を抱える記述式問題の導入である。受験生の心情を考えれば、中止の決断は一刻も早い方がよい。 *6-6:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/456411 (佐賀新聞 2019年11月21日) 県立高「模試」対応分かれる 英語民間検定試験導入見送りで 2020年度の大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入見送りを受け、佐賀県内の県立高校で、本番に備えたトレーニングと位置付けて12月に受ける予定だった民間検定試験をそのまま実施するかどうか対応が分かれている。唐津市の唐津東高は12月7日のGTEC(ジーテック)検定版の受験を保護者の負担軽減などを理由に取りやめた。別の10校では大学が個別試験(2次試験)で採用する可能性や学力向上を考え、予定通り実施する準備を進めている。英語の民間検定試験については、20年度に実施される検定試験が共通テストで活用される予定になっていた。県内の高校は今年12月のジーテックの検定を本番に向けた「模擬試験」のように位置付けていた。学校関係者によると、ベネッセコーポレーション(本社・岡山県)が実施するジーテックの受験料は1人1回6380円で、3千円程度の同社の模試と比べて倍近くの金額という。共通テストへの導入見送りが決まり、唐津東高は「保護者に負担をかけてまで受けさせる必要性はない」と考え、12月の検定を取りやめ、保護者にも13日に通知した。対象になる2年生は既に昨年1回、今年1回受けており「大学での活用が正式に決定した時点でさらに検定を受けるかどうかを決める。仮に必要になったとしても、来年以降の検定で対応できる」と話す。一方、予定通りに検定を受ける佐賀北高や小城高は「英語の学力や『読む・聞く・書く・話す』の4技能を測る上では意味がある」と説明している。ジーテックなどの英語民間検定試験は、20年度の共通テストには導入されないが、国立大は同年度の個別試験に採用するかどうかを29日に公表する予定。別の県立高校の担当者は、ジーテックの点数に応じて個別試験に加点してきた大学がある経緯を踏まえ「従来のように個別試験に生かされるなら、12月も受けた方がいい」という考えを示す。県西部の高校では、保護者や生徒から「本番が見送られたのなら12月の試験も取りやめ、返金してほしい」「部活があるから受けなくていいなら受けたくない」などの声も出ているというが、試験をキャンセルするには至っていない。ベネッセコーポレーション広報部は12月の検定のキャンセル状況について「日々、状況が変わっている。不確定な情報を公表することは誤解につながる」とし、件数などは明らかにしていない。受験を取りやめた学校への対応については「(受験料を)既に振り込んでいる場合は全額を返金する」と話している。 *6-7:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191122/KP191121ETI090006000.php (信濃毎日新聞 2019年11月22日) 幼保無償化 抜本的改定をためらうな 早速ほころびが生じている。10月に始まった幼児教育・保育の無償化の財源が足りなくなっている。数百億円を借金もして賄うという。財政の安定化と引き換えに消費税増税分の一部を財源に充てていながら、費用を子どもたちに付け回すのでは意味がない。真に必要な保育政策は何か、保護者や現場の意見を基に練り直すべきだ。政府は制度の抜本的な改定をためらってはならない。無償化は3〜5歳児が原則全世帯、0〜2歳児は住民税非課税世帯を対象とする。認可外保育の利用者には上限を設け、一定額を補助している。国は本年度予算に3882億円を計上した。ふたを開けてみれば、中高所得層の利用者と単価の高い保育所の利用者が想定を上回った。本年度の税収は法人税の下振れで大幅な減額が見込まれる。赤字国債などで穴埋めせざるを得ない。通年となる来年度の予算7800億円にも、1千億円ほどの上乗せが避けられないという。予算の半分が年収640万円超の世帯に回ることから「金持ち優遇策だ」との批判が出ていた。無償化の予算をむしろ、保育士の待遇改善や研修費に充て「保育の安全性を高めてほしい」との保護者の訴えも強かった。安倍晋三政権はまともに取り合わず、ずさんな制度設計のまま実施を半年前倒しした。対象から漏れた世帯、給食費の負担が生じた世帯を自治体が独自に支援し、住む市町村によって受けられる恩恵が異なる状況を招いている。全国の待機児童数は4月時点で1万6700人余と減少に転じている。半面、希望先の保育園に入れないといった「潜在的な待機児童」は7万4千人と、昨年を6千人も上回っている。働きながら育児をする女性は増加傾向にある。無償化によって来春からの需要が高まり、待機児童が再び増え、保育士の不足が深刻化する懸念が拭えない。認可保育所の利用料には元々、低所得世帯の減免措置があり、所得が多いほど高額になる応能負担が取り入れられていた。無償化の所得制限をきめ細かくし、残る予算を保護者の要望に沿った施策に振り向ける方法もあろう。子育て支援が急務とはいえ、体系立てた少子化対策に位置付けなければ効果は期待できない。受けのいい“大盤振る舞い”を仕掛けた結果、社会保障の借金がさらに膨らむのでは、何のための消費税増税なのか分からなくなる。 <スポーツ教育について> PS(2019年11月15、17、21日追加):私が衆議院議員をしていた時に、アトランタ五輪のセーリング女子で銀メダルを獲得した*7-2の重由美子さんが唐津市のヨットハーバーで後進の指導に当たっておられ、そこに招かれて「トップアスリートを目指して日本全国から集まった選手の就職が厳しく、選手が経済的に苦しい」という話を聞いたことがある。 そのため、*7-1のように、九経連佐賀地域委員会(委員長・陣内佐賀銀行会長)で、SAGAスポーツピラミッド推進グループ推進監の日野氏が佐賀ゆかりのトップアスリート育成を目指すSSP構想について講演され、現在でも佐賀県が働きながら練習し競技が続けられる就職支援を行っているのは極めて重要なことだ。しかし、新人選手の育成のためには引退したトップアスリートを指導者として招いたり、アスリート候補者を就職で支援したりすることが不可欠であるため、中学・高校のクラブ活動指導者や放課後児童クラブの指導員としての職を与えれば、双方にとってメリットが大きいのではないかと考える。 なお、*7-3のように、教員には長時間労働の問題があると言われながら長く改善されていないが、その理由は、①部活動指導 ②授業準備 ③事務・報告書の作成 ④学校行事 ⑤学習指導 ⑥成績処理などだそうだ。このうち、②④⑤⑥はプロの教育者しかできない仕事だろうが、③の事務の多くは雑用係がやればよく、報告書の作成もITを使えば効率化が容易だ。さらに、①については、スポーツクラブなら教員よりもアスリート引退者、文化クラブなら大学教授・研究所・報道関係の引退者などの専門家が加わった方がうまく教えられると思う。また、*7-4のように、佐賀県の場合はサッカー・J1サガン鳥栖があるため、このチームの引退選手にクラブ活動の指導をしてもらうのも名案だ。コーチが外国人だとユニバーサルな意識も養われそうである。 *7-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/453655 (佐賀新聞 2019年11月14日) アスリート支援に協力を 九経連委員会 県SSP推進監が講演 九州経済連合会佐賀地域委員会(委員長・陣内芳博佐賀銀行会長)がこのほど、佐賀市で開かれた。県文化・スポーツ交流局SAGAスポーツピラミッド推進グループ推進監の日野稔邦氏が佐賀ゆかりのトップアスリート育成を目指すスポーツピラミッド構想(SSP構想)の取り組みについて講演した。会員ら約60人が参加した。日野氏は「2024年のパリ五輪・パラリンピックでは佐賀ゆかりのアスリートを10人出したい」と述べ、高校レスリングや柔道などで成果を上げている現状を示した。「継続的に佐賀ゆかりのトップアスリートを育て、効果を広げていきたい」と話し、アスリートの就職やビジネス創出などで企業関係者の協力を呼び掛けた。県は、トップアスリートが働きながら練習し、競技が続けられるよう就職の個別支援を行っており、雇用アスリートの練習時間に応じて企業に支援金を用意している。23年に佐賀で開かれる国民スポーツ大会と全国障害者スポーツ大会に向けて整備するSAGAサンライズパークは、スポーツと他産業の融合によるビジネス創出などに活用する構想も説明した。 *7-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/312596 (佐賀新聞 2018/12/9) セーリング銀の重由美子さん死去、アトランタ五輪で日本初メダル 1996年アトランタ五輪セーリング女子470級で銀メダルを獲得し、同競技の日本勢初のメダリストとなった重由美子(しげ・ゆみこ)さんが9日午前3時15分、佐賀県唐津市の病院で死去した。53歳。唐津市出身。日本連盟関係者らが明らかにした。親族によると、死因は乳がんという。葬儀・告別式は13日午後1時から唐津市鏡3528の1、パインフィールド・ホールで。喪主は父五十男(いそお)さん。佐賀・唐津東高出身。2人乗りヨットのかじを取るスキッパーとして活躍し、アトランタ五輪では木下アリーシアさんと組んで快挙を果たした。五輪は3大会連続出場で、92年バルセロナ大会は5位、2000年シドニー大会は8位だった。近年は唐津市の佐賀県ヨットハーバーで後進の指導などに当たっていた。 *7-3:https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-1026841.html (琉球新報社説 2019年11月17日) 教員の長時間労働 業務内容の抜本見直しを 県立の中学、高校、特別支援学校の教職員を対象にした2018年度の勤務実態調査で、厚生労働省が過労死の目安とする月80時間の残業時間を上回った教員が、延べ3078人にも上った。このうち月100時間を超えたのは延べ1314人を占める。教員の生命や心身の健康を脅かす長時間労働は、直ちに解消しなければならない。小学校を含めた県内教職員の17年度の病気休職者数は前年度比11人増の424人で、在職者に占める割合は2・8%と全国の0・85%より約2ポイントも高い。業務負担と疾患発生との関連が考えられる。教員は、児童生徒と直接向き合い、必要な知識を身に付けさせ、豊かな人間性を育成する立場にある。日々の業務をこなすだけで疲労困憊(こんぱい)していく職場環境では、子どもたちのためにもならない。働き方改革関連法の4月施行によって、民間企業では時間外労働は原則月45時間、年間360時間以内を守らなければならなくなった。現在は大企業だけだが、来年4月から中小企業にも適用される。文部科学省は今年1月、働き方関連法に沿う形で、公立校の教員の残業時間を1カ月45時間を超えないようにするという指針を出した。民間企業で月45時間が上限となる中で、教員の働き方にも同じ条件が求められるのは当然だ。ただ、文科省の残業上限の指針に罰則はない。「臨時的な特別の事情」の場合は月100時間を超えない範囲で延長できるともしており、実効性に疑問がある。そもそも公立校の教員に時間外手当は支給されていない。教職員給与特別措置法(給特法)によって基本給に一律4%の手当が上乗せされているだけだ。まずはサービス残業の温床となる給特法を改め、労働基準法の働き方のルールを教員にも適用することの検討が必要だ。県教育庁の勤務実態調査の残業理由を見ると、最も多いのが部活動指導で、授業準備、事務・報告書作成、学校行事、学習指導、成績処理が続く。早朝や放課後、土日に行われる講座の残業は調査の対象外となっており、現場から「実態はもっと深刻」と指摘されている。子どもたちの学習や育成に関わる広範な業務は、簡単に削減や合理化をするわけにはいかない重責だ。個人情報保護の関係で、家に持ち帰れない業務もある。現状の半分以下に残業を削るといっても、簡単なことではない。教師の負担軽減を図り、ゆとりある働きやすい職場環境を実現するには、教員定数の増員が根本的な対策だ。ただし、そのためには財源の裏付けが必要になる。増員が無理なら、教員の業務内容を抜本的に見直すしかない。最も負担が重い部活動指導などの在り方にメスを入れるべきだ。業務の見直しに向けては保護者や地域の理解と協力が不可欠となる。 *7-4:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/456588 (佐賀新聞 2019年11月21日) (動画)元サガン鳥栖のF・トーレス氏が豪雨被災地の小中一貫校を訪問、「大好きな佐賀が被災して胸が痛んだ」 8月にサッカー・J1サガン鳥栖で現役を引退した元スペイン代表のフェルナンド・トーレス氏(35)が21日、佐賀県大町町の小中一貫校・大町ひじり学園を訪問した。同町は8月の佐賀豪雨で大きな被害を受けており、児童生徒約350人に励ましの言葉を送った。トーレス氏は佐賀県が災害に見舞われたことをニュースで知り、被災地の様子を映像や写真で見て、「大好きな佐賀が被災して胸が痛んだ。自分に何ができるかずっと考えていた」とこの間の心境を打ち明け、「みんなの元気な顔を見て少し安心したが、見えないところで疲労や苦労もあると思う」と慰めた。さらに佐賀県のSAGAスポーツピラミッド(SSP)構想のアンバサダー(大使)としての立場から、「スポーツを通して佐賀を元気にしたい」と語った。学校には、トーレス氏のサインが入ったユニホームやサガン鳥栖の試合観戦チケットなどが贈られた。児童代表で6年生の堤大虎(たいが)君が「憧れのトーレスさんに会えるとは思っていなかった。励みになります。グラシアス(スペイン語でありがとう)」とお礼を述べた。 <食育について> PS(2019/11/16、18追加): *8-1のように、広島市の市立小の7割で、「『いただきます』から約10分間おしゃべりしてはいけない」という時間帯があるそうだ。そして、この間は、①昼食を残さず食べて栄養を十分取らせる ②食べ物を大事にする気持ちを育む ③食事マナーを定着させる ④そしゃくの推進 を目的として、クラシック音楽を流し、児童に黙って食べさせ、これを食育と呼んでいるのだそうだ。 2008年の「食育の推進」は、当時衆議院議員だった私も関わっていたので説明すると、食育に黙って食べさせることを推進する目的はなく、*8-2のように、⑤家庭の経済力格差に拘わらず、子どもが成長するのに必要な栄養を与え ⑥なるべく地域の食材を使って ⑦本当に美味しい給食を食べさせることにより、(家庭では乏しくなった)日本の味や調理の技を次代に引き継ぐ という意図がある。 そのため、「口から食べ物を飛ばしながら食べる」「おしゃべりに夢中になると箸が動かない」「立ち歩いて人にちょっかいを出す」ということが起こるのなら、全員に黙って食べさせるのではなく、そういう行動そのものをきちんと理由を説明してやめさせるのが食育なのだ。テレビ番組でも「食事中にしゃべるな」と親が怒るセリフが聞かれることがあるが、食事は家族団欒や家族間のコミュニケーション・情報交換の貴重な時間であるため、「食事中にしゃべるな」というのは逆の躾である。なお、子どもの教育は歯磨きから始まって強制が多く、美味しい給食を出しているのに食べない子がいるのなら、「空腹になる」という経験をさせることも必要だ。 また、焼き物の盛んな佐賀県では、子どもの感性を育てる機会である食育には、食事の栄養バランスや味だけでなく食器も含まれるとして、給食用食器に強化磁器を使用しており、ペットの餌入れのような金属製食器からは10年以上前に卒業している。 さらに、学校給食のために開発した軽くて強い磁器は、*8-3の公民館や病院・高齢者施設・社員食堂などでも求められるものであるため、需要に合った絵柄や値段をつければ営業次第で大量に売れる可能性がある。 ![]() *8-2より 有田の強化磁器製 室蘭のプラスチック製 金属製 (図の説明:左の2つは、優勝《埼玉県越生町立越生小学校》、準優勝《奈良県宇陀市立学校給食センター》の献立、中央は、壊れにくいように強化磁器で作った有田の給食用食器、右から2番目は、室蘭市のプラスチック製給食用食器、1番右は、よくある金属製の給食用食器だ。私は、強化磁器の給食用食器に軍配を挙げたいが、子どもの食器としてかわいい絵柄は室蘭市のプラスチック製給食用食器だ。さらに、室蘭市の食器の中央のものには海産物の絵とその名前が日本語で書かれているが、これには野菜・果物・花・樹木・動物などのいろいろなシリーズやデザインが考えられ、日本語と英語の両方で名前を記載しておけば覚えやすいだろう) *8-1:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/559528/ (西日本新聞 2019/11/14)給食、おしゃべり禁止の10分 広島市、市立小の7割 「楽しくない」「息苦しい」児童も 「もぐもぐタイムって知っていますか」。広島県内の小学校に子どもを通わせる40代の女性から、中国新聞の「こちら編集局です あなたの声から」にこんなメールがあった。カーリングで話題になったおやつの時間のことではない。この学校では「給食中におしゃべりしてはいけない時間帯」を指すらしい。「給食は会話しながら楽しんでほしいのに」と女性は言う。黙って食べるのはどうしてなのだろう。まずはこの学校を訪ねた。ちょうど昼時。子どもたちが元気いっぱいランチルームに集まってきた。もぐもぐタイムは「いただきます」から約10分間で、クラシック音楽が流れる。教室は静まり、みんなひたすら食べている。音楽がやんだ途端、またにぎやかになった。「ごちそうさま」までの残り分はおしゃべりを楽しんでいいそうだ。「食育は大切。きちんと味わい、嫌いな食材も成長に必要な量は頑張って食べてほしい。マナーも学ばせたい」と、校長は説明する。「だから落ち着いて食べる時間が要るんです」。他の学校はどうなのか。広島市立の全142小学校にアンケートした。回答した106校のうち、給食中に私語をしない時間を「設けている」「一部の学年、学級で設けている」としたのは71・7%の76校。浸透ぶりに正直、驚いた。低学年を中心に5~10分間とする学校が目立つ。呼び名は他に「かみかみタイム」「ぱくぱくタイム」など。狙いを問うと、残さず食べきり、栄養を十分取らせる▽食べ物を大事にする気持ちを育む▽食事マナーを定着させる▽そしゃくの推進-など、盛りだくさんの答えが返ってきた。確かに、文部科学省の「食に関する指導の手引」を見ると、これらを身に付けさせるよう求めている。1954年施行の学校給食法では「栄養改善」だった給食の主目的が、2008年の大幅改正で「食育の推進」に転換したことが背景にある。 ◆ ただ、給食指導はそう一筋縄ではいかないらしい。教員に個別に尋ねてみると、こんな本音も。「口から食べ物を飛ばしながら食べる」「おしゃべりに夢中になると一切、箸が動かない」「立ち歩いて人にちょっかいを出す」…。悪戦苦闘する姿が見えてきた。しかも、給食に充てる時間として市教委が示す目安は50分。準備と片付け時間を含むから、食べる時間はせいぜい20~25分だ。おしゃべりを楽しむ時間を担保しながら、集中して食べる時間も設ける-。もぐもぐタイムは、こうした課題に立ち向かうための工夫と言えそうだ。振り返れば昭和の教室では、掃除の時間になっても泣きながら給食を食べさせられていた子どもがいた。心の傷になりそうな光景に比べれば時間内に集中して食べる実践の方が子どもも受け入れやすいだろう。ただ、もぐもぐタイムも押し付けになっていないか、現場も見直す必要がありそうだ。実際にこの取材中、市内の40代男性から「娘は『給食が楽しくなくなった』と不満ばかり言う」との声が寄せられた。もぐもぐタイムは前の学年でもあったが苦ではなかった。それが今の担任は食べる間中、ただただ私語を厳しく禁じて息苦しいと。子どもが強制と感じ、負担になれば逆効果。これも教員の腕次第と言えるだろう。家庭も、学校に任せきりではいられない。文科省の手引には前置きがあった。「食に関する問題は言うまでもなく家庭が中心となって担うもの」。学校は、共働きなどで忙しい家庭を支えるという立ち位置だ。学校が培う食育のノウハウを家庭も共有できたら-。もぐもぐタイムを1分でも短くできるかもしれない。 *8-2:https://cookbiz.jp/soken/news/kyusyoku_koushien2017/ (クックビズ総研 2018年1月5日) おいしい給食日本一を決める「全国学校給食甲子園®」 2017年12月2、3日の2日間、「第12回全国学校給食甲子園®」の決勝大会が、東京の女子栄養大学(駒込キャンパス)で開催されました。これは、実際にこどもたちが食べている学校給食の中から日本一を決める大会です。大会ルールには、実際に学校給食として提供したことのある献立でなければならないこと(複数日分の単品を組み合わせた献立は不可)、文部科学省学校給食摂取基準に基づいていることなどが定められています。また、大会名に「地場産物を活かした我が校の自慢料理」というサブタイトルがついているように、応募する給食の献立は地場産物を使用し、その特色を活かしたものでなくてはなりません。つまり、学校給食の献立内容、調理技術、衛生管理、チームワークなど、トータルで評価される大会なのです。決勝大会には、第4次審査までで選ばれた全国6ブロックの代表12校・施設が参加。応募献立をその場で作り、食味審査が行われます。また、今回初めての試みとして、審査委員をこどもたちに見立てて食育授業を行う「応募献立食育コンテスト」も実施されました。今年は全国から2025校の応募があり、学校給食現場からの意気込みを感じることができました。 ●決勝スタート!制限時間1時間で6食分の給食を調理 「こどもたちのおいしい笑顔のためにベストを尽くすことを誓います」という選手宣誓で大会の火ぶたが切られ、熱い戦いがはじまりました。制限時間は1時間。各出場校・施設から栄養教論(または学校栄養職員)と調理員の計2名が協力して給食6食分を作りあげ、片付けまで終わらせなくてはなりません。(中略) ●甲乙つけがたい!審査委員一同がうなった食味審査 完成した給食は、こども特別審査委員2名を含む、計16名が「食味審査」をします。決勝に残った全12校・施設の給食が審査会場に並べられ、仕上がりと味がチェックされました。主菜・副菜・デザートと献立のバランスも考えられた彩りのよい給食を前に、「一生懸命作ってくれたのだから全校のを食べなくちゃ」「実際にこんなに工夫された献立を食べられるこどもたちはきっと給食が好きでしょうね!」と、審査委員たちからも審査への意気込みが感じられます。おいしそうに試食をしていた審査委員たちに話を聞きました。「今年は地場産物をアピールした献立が多い傾向にありました。とくに野菜をたくさん使っていたのが印象的でしたね。生産者さんの思いまでも伝わるような気がしました」(審査委員長・東京国立博物館長 銭谷眞美さん)。「1996年にO157による集団食中毒が発生して、学校給食がさみしくなり、どうすればいいかわからない時期がありました。それからこの20余年でずいぶん華やかになり、味も質もレベルアップしましたね。非常にうれしく、すばらしいことだと思います」(審査委員・東京医科大学微生物学分野兼任教授 甲斐明美さん)。「地域のものが盛りだくさんで、おいしく食べてほしいという愛情がひしひしと伝わってきます。色もカラフルですし、苦手な食材はこどもたちの好きな味つけにするなど、工夫がされているなと感じました。兵庫県の給食にはもち麦麺を使っていましたが、これは麺を切りそろえるときに出る切れ端だそうですね。フードロス問題の解決にもつながって非常にいいなと思いました」(審査委員・農林水産省食料産業局食文化・市場開拓課長 西経子さん)。「嫌いな大根があったけど、おいしく作ってくれていたから食べられました」(こども特別審査委員) ●いよいよ「日本一の給食」が決定!受賞者は…… 「第12回全国学校給食甲子園®」では、優勝と準優勝以外にも、味のバランスがよい、地場産物をうまく使っているといったさまざまな角度から見た優秀賞が4校に、特別賞が3校に授与されます。また、もっとも優秀な食育授業をした栄養教諭1名に授与される、応募献立食育部門賞も今回初めて設けられました。審査結果の発表時間が近づくと、会場は人で埋め尽くされ、熱気を帯びてきました。選手たちが入場し、審査委員長の講評に続き、いよいよ審査結果の発表です。まずは、決勝に出場した12校・施設すべてに入賞が授与されます。続いて優秀賞、特別賞が発表。呼ばれた学校・施設の選手は喜びいっぱいで壇上し、中には涙ぐむ選手も。審査委員から賞状とトロフィー、メダル、記念品が授与されました(全受賞一覧は、記事末尾を参照ください)。各賞の授与が終わると、いよいよ残すは準優勝と優勝のみとなり、会場にも緊張が走りました。準優勝と優勝は写真・コメントとともにご紹介します。 ◎準優勝 奈良県宇陀市立学校給食センター(学校栄養職員・辰己明子さん、調理員・宇良章子さん) <準優勝校の献立> 宇陀の黒豆ごはん、大和肉鶏のグリル 宇陀産自家製ブルーベリーソース、大和まなのかみかみ酢の物 ゆずの香り、かぶの雪見汁、黒豆を使ったずんだもち風あんもち、牛乳。 地産地消を積極的に推進する宇陀らしい、地域食材がふんだんに使われた献立です。 <準優勝者>辰己明子さん(左)と宇良章子さん 名前が呼ばれたときは、ふたりとも「やったー!」という気持ちでいっぱいだったそう。「食材を届けてくれる農家のみなさん、市民のみなさんのおかげです。こどもたちが『がんばって!』と送り出してくれたので、喜んでくれると思います。」(辰己さん)。「給食センターのみんなといっしょに勝ち取った賞です」(宇良さん)。実は、調理員の宇良さんは、第8回と11回にも参加し、入賞、特別賞を経ての今回の準優勝でした。来年には定年を迎えるため、チャンスはあと1回。「もちろん来年もトライします。目指すのは優勝です!」と意気込んでいました。準優勝校の給食は、食味審査でも大変よい評価を受けていました。「地鶏にブルーベリーソースを合わせるなんて、もはやフランス料理ですね。味も非常にレベルが高かった」と審査委員の中野博さん(元ハイランドリゾートホテル&スパ名誉総料理長)が大絶賛するほどの味だったようです。 ◎優勝 2025校・施設の頂点に輝いたのは、埼玉県越生町立越生小学校(栄養教諭・小林洋介さん、調理員・三好景一さん)。唯一の男性ペアでしたが、栄養教諭、調理員ともに男性のペアで出場し、優勝したのは史上初めてとのこと。 <優勝校の献立> 山吹の花ごはん、越生うめりんつくね、五大尊つつじあえ、上谷の大クス汁、ゆずの里ゼリー、牛乳。 地場産物の米や野菜、特産品の梅やゆずを使うだけなく、観光名所の山吹を表現したごはんや、つつじをイメージさせるあえものなど、食欲をそそる楽しいひと工夫が光る献立です。 <優勝者>小林洋介さん(中央左)、三好景一さん 応援に来ていた同僚調理員の方々も輪に加わって、喜びを分かち合っている姿が印象的。小林さんの熱い思いにまわりが刺激されて食の意識が高まり、いい関係を築いていることが、見てとれる一場面でした。「地元の特産物を活かしたことが評価されたのだと思います。食育は、保護者が関心をもてば、こどもたちも自然と興味を抱くので、保護者も巻き込むようにしています。この優勝によって町の食の意識が高まると思うので、町全体の食育を盛り上げていくのが今後の目標です」(小林さん)。「小林先生の、こどもたちと越生町への愛の大きさでいただいた賞です。先生は給食のことだけでなく町の発展まで考えていて、いつも刺激をもらっています。実は、同い年で同じ血液型。会ったときから、うまくやれると思っていました(笑)。明日からもがんばります!」(三好さん) 。決勝に出場した12校・施設の計24名から各賞が選出されています。各賞の受賞者は次の通りです。 •応募献立食育部門賞(食育コンテストでもっとも優秀な食育授業) 福井県春江坂井学校給食センター(坂井市立東十郷小学校) 栄養教諭・越桐由紀子さん •21世紀構想研究会特別賞 群馬県川場村学校給食センタ- 学校栄養職員・阿部春香さん、調理員・桑原敦志さん •女子栄養大学特別賞 岡山県新見市立新見学校給食センター 栄養教諭・西村香苗さん、調理員・徳永日登美さん •こども審査員特別賞(こどもたちがもっとも食べたい給食) 佐賀県神埼市学校給食共同調理場 栄養教諭・阿部香理さん、調理員・岡健一さん •優秀賞(藤江賞=とくに優れた調理技術を発揮) 愛媛県西条市立神拝小学校 栄養教諭・武方美由紀さん、調理員・川名良子さん •優秀賞(船昌賞=とくに地場産物をうまく活用) 新潟県新潟市立女池小学校 栄養教諭・金永雅美さん、調理員・石塚恵海さん •優秀賞(三井製糖賞=とくに味のバランスに優れていた) 福島県立相馬支援学校 学校栄養職員・服部恵未子さん、調理員・横山千秋さん •優秀賞(武蔵エンジニアリング賞=とくに有効に調理器具を活用) 兵庫県芦屋市立精道小学校 栄養教諭・奥瑞恵さん、調理員・浦口正義さん •準優勝(家族の笑顔 株式会社日本一賞) 奈良県宇陀市立学校給食センター 学校栄養職員・辰己明子さん、調理員・宇良章子さん •優勝(久原本家グループ本社賞) 埼玉県越生町立越生小学校チーム 栄養教諭・小林洋介さん、調理員・三好景一さん <まとめ> 学校給食への意欲ある取り組みと、創意工夫が見られる献立がそろった第12回大会でした。きっと、この大会が現場の栄養教諭や調理員の士気を上げ、ひいては学校や保護者の食育への関心も高めるきっかけになっているのでしょう。また、12回を通してみても、年を追うごとに学校給食の献立内容が進化しており、この大会が現場の技術レベルを押し上げる一助となっているとも言えるのではないでしょうか。海外からも注目される日本の学校給食と「全国学校給食甲子園®」から今後も目が離せません。 *8-3:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1027771.html (琉球新報 2019年11月19日) 心もお腹も満たされる! 地元食材で安くおいしい料理提供 沖縄本島北部で広がる地域食堂 ゆんたくで住民同士につながり 住民が主体となった「地域食堂」の取り組みが本島北部で広がりつつある。いずれも住民同士の交流などを目的に、地域の女性たちが地場産食材を活用して手料理を安価で集落民に提供しており、高齢者を中心に「安くておいしい」「みんなと話すのが楽しい」と好評を得ている。11日、本部町豊川公民館では、住民がおしゃべりを楽しみながら鶏肉の照り焼き、かき揚げ、五目ご飯などに舌鼓を打っていた。地域食堂「キッチンとうばる」は2016年3月から月3回、公民館で月曜正午から1時間開店している。午後に高齢者の体操教室が開かれるのに合わせて日程を決めた。運営スタッフは10人。住民から提供される野菜などを活用し1食200円で40人分用意する。調理と配膳、車のない利用者の送迎を分担している。開設当初から携わる阿波根明子さん(78)は「ご飯食べてゆんたくして体操。これが流れよ」と笑う。喜納曙さん(69)は「1人暮らしの高齢者や独身男性も多い。何か役に立つことを、と那覇市の真地団地の百金食堂を参考に始めた」と振り返り「最初は客が集まらなかったが、今では毎週やってほしいとの声もある。喜ぶ声が励み。今後はスタッフを増やせれば」と語った。よく利用するという60代男性は「1人暮らしで調理が面倒。インスタントで済ませることもあるから、安くで作ってくれると助かる」と話した。兼城昌一区長は「ゆんたく目的の人も多く、交流の場にもなっている」と目を細めた。今帰仁村玉城の「キッチンたも~し」は、メンバー約10人で17年5月から月1回、夕食を大人300円、子ども200円で提供している。スタッフの榎本広枝さん(47)は「昔と比べると『あの子どこの子?』というような顔が見えない状況が生まれていて、地域の横のつながりをつくろうと始めた。子どもを連れて家族で来店する人もいる」と話す。メニューは皆で話し合い、時期ごとにおせちやおでん、クリスマスチキンを出したりもする。10月21日、夫婦で訪れた高良道子さん(87)は「料理は栄養満点。話したことがない人と知り合う機会になっていて、毎回楽しみ」と話し、笑みがこぼれた。地域食堂はこのほか本部町伊野波、今帰仁村の今泊と崎山、国頭村桃原、大宜味村の津波、喜如嘉などの集落で開かれている。 <練習場所や監督・コーチのポストが少ないのが原因なのでは?> PS(2019年11月18日追加):*9-1・*9-2のように、フィギュアスケーターの織田信成氏(32)が関西大アイススケート部監督を辞任し、部員の学力向上などを目指して練習時間の変更に取り組むとコーチの浜田美栄氏(60)から無視されたり、「監督に就任してから偉そうになった」等の陰口を言われたりして、大阪地裁にモラハラの損害賠償請求を提訴されたそうだ。 私は状況を知らないので明確には言えないが、女性フィギュアの経験がなく、女性フィギュアのコーチとしての経験や実績の少ない織田氏が、男性フィギュアで五輪7位に入賞しただけで浜田コーチの上司にあたる女性フィギュアの監督に就任したのは変であるし、練習のさせ方について意見の相違があったのだろうと推測はできる。しかし、女性コーチをモラハラとして提訴するのは、上に立つ女性に対する東アジア独特のよくある批判のようにも見える。 それではどうするのかについては、日本のフィギュアスケート選手はカナダで練習する人が多いが、既に豊かな国になっている日本なら、フィギュアはじめさまざまなスポーツをきちんと習って練習できる大学や施設がもっと多くてよい筈で、それらの競争によって練習方法も切磋琢磨して進歩すると思う。また、大学の方は、ロシア・中国・カナダ・アメリカ・韓国などのフィギュアに強い国が、どのように選手を育てているのかについて研究する必要があるだろう。 *9-1:https://digital.asahi.com/articles/ASMCL4W6LMCLPTIL00Z.html (朝日新聞 2019年11月18日) 織田信成さん、関大コーチを提訴「モラハラあった」 プロフィギュアスケーターの織田信成さん(32)が18日、関西大アイススケート部監督を辞任したのは無視や陰口などのモラルハラスメント(モラハラ)があったからだとして、同部コーチの浜田美栄さん(60)に慰謝料など1100万円の損害賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。訴状によると、同部出身の織田さんは現役引退後、2017年4月に監督に就任した。就任前の同年2月ごろに浜田さんのレッスン方法を注意した後、無視されるなどのモラハラを受け始めたと主張。今年になって部員の学習時間確保のために練習時間を変更したり、部則に学業成績を考慮する規定を設けようとしたりした後、モラハラが激しくなったとしている。織田さんは体調を崩して入院するなどして5月末から指導が難しくなり、9月に退任せざるを得なかったとして、慰謝料などを求めている。提訴後に会見した織田さんは「学生や選手がよりよい健全な環境で練習できるように、との思いで提訴した」と話した。関西大は「アイススケート競技がシーズンに入り、多くの選手が練習に懸命に取り組んでいる時期に提訴がなされたことは大変残念」とするコメントを発表した。浜田さんは18日夜、朝日新聞の取材に「まだ訴状が届いていないので詳細は分かりかねます。シーズン中であり、生徒の大事な大会も控えておりますので、現時点でのコメントは差し控えさせていただきます」と答えた。 *9-2:https://www.nikkansports.com/sports/news/201911180000317.html (日刊スポーツ 2019年11月18日) 織田信成氏「監督で偉そうに」浜田Cのモラハラ提訴 プロスケーターで9月まで関大(大阪・吹田市)のアイススケート部監督を務めた織田信成氏(32)が18日、同大学の施設(高槻市)で指導する浜田美栄コーチ(60)からモラルハラスメントを受けたとして、1100万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴した。大阪市内で行われた記者会見に臨んだ織田氏の思いを、担当の弁護士は「フィギュアスケート界の悪弊に一石を投じたい」と代弁。織田氏自身は時折声を詰まらせながら「(浜田コーチと)30歳近く離れていて、僕から何かを言うのは難しい環境だった」と語った。現役時代に10年バンクーバー五輪7位入賞を果たした織田氏は、17年4月に母校である関大のアイススケート部監督に就任。訴状などによるとコーチが「(織田氏が)監督に就任してから、偉そうになった」などと陰口をたたき、今年に入って部員の学力向上などを目指して練習時間の変更に取り組むと、無視などの対応をされたと主張。その結果、40度を超える発熱や筋肉の震えなどで3月26日~4月2日にかけて大阪・高槻市内の病院に入院。以降も恐怖や不安から変調が続いたという。
| 教育・研究開発::2016.12~2020.10 | 09:34 PM | comments (x) | trackback (x) |
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2019,10,03, Thursday
![]() 2019.7.19東京新聞 (図の説明:左図のように、初期化されて何にでも分化できる細胞は、卵細胞《ES細胞or胚性幹細胞》とiPS細胞が有名だが、このほかにも成人の体内に幹細胞は多い。これを、中央の図のように、成人から採取して臓器等に成長させ、移植するのが再生医療だ。また、右図のように、既に分化した細胞を増やして、似た組織に移植する方法もある) (1)公立病院の赤字拡大と病院再編 1)公立病院はどうして赤字拡大したのか 日経新聞は、*1-1-1で、「①地方自治体が運営する公立病院の赤字拡大が止まらず、本業の赤字総額が2017年度に4782億円となり2012年度比で5割増えた」「②公立病院は民間病院が手がけたがらない救急・小児科などの不採算医療を提供したり、過疎地の医療水準を維持したりする役割がある」「③赤字を公費で埋め続けると自治体財政が悪化し、保育や介護などの公的サービスにしわ寄せがいく」「④非効率な医療が温存され入院や治療を増やそうとしてムダに医療費が膨らむ」としている。 このうち②は正しく、黒字化だけを考えれば民間病院のように不採算部門は切り捨てて採算がとれる診療科だけを残せばよいのだが、そうすると救急や小児科だけでなく産婦人科のない地域もでき、誰もが速やかに先端医療にアクセスできる状態が保てない。そのため、①になる理由を精査すべきなのであり、④のように非効率な医療が温存されていると単純に言うのは危険だ。さらに、③については、自治体は、医療・介護・保育費用だけを支出しているのではなく、他に節約すべき無駄遣いが多いため、血税を単なる景気対策に使っていないかをこそ確認すべきだ。 なお、*1-1-2のように、医療費は消費税が非課税になっているため、病院が支払った消費税は患者に転嫁できず、病院の自己負担になってしまう。これが公立病院に限らず病院の赤字拡大の大きな原因で、医療費を非課税にすることは消費税導入時から問題になっていた。そのため、非課税ではなく0税率にすれば、支払った消費税が還付され、消費税増税が病院経営に影響しない公正な条件が整うわけである。 さらに、*1-1-1は、公立病院の看護師は民間病院より賃金が高いので無駄遣いだと言わんばかりだが、看護師は労働量や責任と比較して労働条件が悪すぎるのが問題なのであるし、医師にも、*1-3-1のような無給医がおり、無給医でなくとも残業時間の多くは残業代を請求しておらず、労働基準法違反の状態で病院経営がやっと成り立っているのが現状だ。そのため、まず労働条件を一般労働者並みにしてから、病院の本当の赤字額を算出すべきである。 まさか、*1-3-2のように、いい加減で形だけの仕事をしているお役人や人の顔色を見て同調しているだけの人よりも、人の命を助けるために一刻を争う3Kで責任の重い仕事をしている医師・看護師・介護福祉士の賃金の方が安くてよいと言う人はいないと思うが、*1-3-3のように、相応の報酬を支払わなければ真面目で優秀な人がその分野に来ず、医療の場合は、それが私たちの命に直結するのである。 2)それでは、どうすればよいか 厚労省が発信しているのか、メディアの理解がその程度なのかはわからないが、*1-1-3のように、「①診療実績が少なく非効率な医療を招いている」として公立病院と公的病院の25%超にあたる全国424の病院について「②ベッド数や診療機能の縮小なども含む再編統合について議論が必要」として、厚労省が病院名を公表したそうだ。 しかし、①については、どこに住んでいても助かる時間内に治療できる病院にアクセスができるためには、診療実績が少ない病院も出るだろうし、それを非効率と決めつけることもできない。ただ、②のベッド数や入院日数が先進諸外国と比較して多いのなら、それは改善すべきだ。 そのため、その地方自治体の医療計画の下で、地域内の病院がネットワークを作って必要な医療を最小のコストで行うように再編することは必要だが、病院の統合・病床数の削減・診療機能の縮小などを自己目的化してしまうと、日本の医療水準を下げることになる。 そのような中、「団塊の世代の全員が75歳以上になる2025年度をターゲットに、病気が発症した直後の急性期患者向けの病院ベッドを減らす」というのは、「助けないから、早く死んでくれ」と言っているのと同じであり、良識が疑われる。急性期の患者に医療スタッフを手厚く配置するのは当然のことで、これに関して医療費がかさむから病床数を減らすというのは、算術しかできず医療を知らない人の主張であるため、そういう人は、即刻、医療政策の議論から退出してもらいたい。しかし、慢性期の患者を収容するベッド数を適正化して、訪問介護・訪問看護による自宅療養や介護施設での収容に移行するのは、そのインフラを整備してからならよいと思う。 これらについて、北海道新聞は社説で、*1-2-1のように、「病院再編リストは、地域の事情に配慮が足りない」としており、南日本新聞も社説で、*1-2-2のように、「公的病院の再編は、地域実態踏まえて議論せよ」として、日本の南北から反論が出ている。私は、同等以上の治療のできる病院が「助かる時間内のアクセス」で行ける場所にあればよいと思うが、離島・山間部ではドクターヘリを使っても助かる時間内に病院に辿りつくのが困難な場所もあるため、各地域が主導して判断すべきである。 (2)先進医療を使って完治させる方法もある 1)癌の免疫療法 これまでの癌治療は、副作用が激しい割には余命を伸ばす程度の効果しかなかったことを素直に認めるべきだ。その状況の下で、*2-1の癌の免疫療法のように、人間がもともと持っている自然治癒力を強化して癌細胞だけを殺す方法が出てきたのである。これは、癌細胞だけを狙って殺せるため、これまでの化学療法や手術よりも副作用が小さく、効き目も確かだ。 しかし、厚労省は癌の標準治療を今でも「手術」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線治療」としており、この方法では患者が幸福にならない上、要介護者が増えるばかりだ。にもかかわらず、これが科学的根拠に基づいているとして免疫療法を劣後させているのは、理屈がわかっていないため臨機応変に対応することができない人の判断である。私は、他の副作用の多い治療法よりも免疫療法を優先して速やかに保険適用し、癌を治癒させる同様の方法の開発を奨めるべきだと考える。 2)iPS細胞を使った再生医療 東京医科歯科大の武部教授らの研究で、*2-2のように、前腸組織から出るレチノイン酸という物質が、肝臓・胆管・膵臓のもとになる細胞ができるのを促し、ヒトのiPS細胞から肝臓・胆管・膵臓が同時にできたのは快挙だ。これまで、iPS細胞から神経細胞を作っていたが、これにiPS細胞ではなく自分の幹細胞を使えば、「いつまでも分裂し続けるかも知れない」「他人の細胞なら自分の免疫が排除する」というような副作用がなく、*2-4-1のような「どこまで部品交換したら、自分でなくなるか」という問題も起きない。 3)自分の細胞を使った再生医療 東京医科歯科大大学院の岩田教授らが始めた、*2-3の「抜いた親知らずの歯根膜細胞を培養して三層にした細胞シートを歯周ポケットのある歯根面に移植すると、歯根膜が歯根と歯槽骨をつないで歯を支えて細菌の侵入を防ぐとともに、シートから骨形成を促すサイトカイン(タンパク質)が出て骨を再生する」という親知らずを使った新しい再生医療も快挙だ。 このくらいなら、他人の抜いた歯を使った細胞シートを移植しても良いし、「全国の歯周外科にこの治療法が普及すれば、歯周病が引き起こす糖尿病・脳血管疾患・脳梗塞・心臓疾患・関節リウマチ・アルツハイマー病などが減り、医療費の削減効果も大きい」というのは福音だ。 さらに、本人の抜いた親知らずの歯髄を増やせば、脊髄損傷も治療できるのではないかと考えるため、医科と歯科の交流が望まれる。 4)再生医療による臓器移植 ア)3Dプリンターを使うケース 日本は、精密機械の製造技術が進んでいるため、(消毒できない)細胞から無菌で臓器を作るのに適していると言われている。 そのような中、*2-4-1のように、リコーが3DプリンターでiPS細胞から育てた神経細胞を敷いて20層ほど積み重ね、約1cm角のサイコロ形をした神経細胞の塊を作った。このプリンターの技術で様々な形をした細胞の塊を作ったり、異なる細胞を混ぜ合わせたりし、将来は大脳皮質の一部をつくって、脳の治療にも役立てるそうだ。「患者が必要としている機能を提供する」というコンセプトもよいし、応用範囲が広そうだ。 また、イスラエルのテルアビブ大学が3Dプリンターでヒトの細胞を積み上げて血管まで備えたミニ心臓をつくったというのも素晴らしい。この分野は、世界で研究競争が進んでおり、高い目標を掲げれば実現する時代が来ている。そして、これは、臓器移植が臓器不足に直面している中で、より優れた解を与えているのだ。 なお、ブタの身体を使って臓器を作る研究も進んでおり、「どこまで臓器を取り換えても自分でいられるか」については、自分の幹細胞を使えば全く問題はないだろう。しかし、他人のiPS細胞を使う場合は、少なくとも脳が置き換えられない限りは「自己」の意識は存在するものの、そのiPS細胞はドナーの性質を持つため、ドナーを厳選すべきということになる。 イ)ブタを使って腎臓と膵臓の再生を行うケース 慈恵医大と大日本住友製薬が、*2-4-2のように、iPS細胞とブタの胎児組織を使って人の体内で腎臓を作る再生医療の共同研究を始めたそうだ。腎臓は、尿管や糸球体などの複雑な構造を持つためiPS細胞から作るのは難しいとされてきたが、再生医療による人工腎臓を移植できるようになれば完治して透析せずにすむため、患者の福利と医療・介護費用の節約に大きく資するだろう。 また、東京大の中内特任教授は、*2-4-3のように、移植医療用として、人のiPS細胞を使ってブタの体内で人の膵臓をつくる研究を実施する方針を明らかにしたそうだ。 ウ)臓器の骨格だけを使うケース 京都大学の森本教授と国立循環器病研究センターの山岡部長らは、*2-4-4のように、再生医療では幹細胞を目的の細胞に育てて移植する研究が多いが、臓器まで作るのは難しいため、組織の細胞を薬などで除去する脱細胞化技術を使って残った骨格を移植することで早期の臨床応用につなげる治療を行って成功しているそうだ。 また、慶応義塾大学の北川教授らは、肝臓を界面活性剤などで脱細胞化して洗い流して臓器の立体構造を支える骨格だけにし、そこに人のiPS細胞から育てた肝細胞や血管内皮細胞などを入れて大型の立体臓器が作り血管をつなぐ方法を考えているそうだ。 しかし、脱細胞化するのなら、ブタではなく亡くなった方の臓器を使ってもよいため、厚労省は日本製品を作れるよう、速やかにガイドラインを見直すべきだと考える。 5)再生医療に関する倫理 日経新聞は、*2-4-5で、「①創造的破壊の陰には、端緒となる大発見や研究成果がある」「②人類が肉体を補い続ける新たな手段を獲得し、さらに高みに上らんとできるのは、あらゆる細胞に育つiPS細胞が登場したからだ」「③iPS細胞は、京都大学の山中伸弥教授が2007年にヒトの細胞での作製に成功し、12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した」と記載している。 しかし、①は正しいものの、最初に発見されたあらゆる細胞に育つ細胞は受精卵(ES細胞)であって、iPS細胞ではない。「受精卵はあらゆる細胞に育つことができるのに、成長すると決まった組織にしかならないのは何故か」という命題を研究して発見されたのが所定の場所では所定の組織にしかならないという法則で、その原理は、*2-2の前腸組織から出るレチノイン酸が、肝臓・胆管・膵臓のもとになる細胞ができるのを促すような、調和を保ちながら合目的的に分化させる遺伝子(DNA)による制御である。そして、そのDNAに傷ついた箇所があると、調和を保ちながら細胞分裂することができずに癌細胞になるわけだ。 そして、他人の卵細胞を使うのは倫理に反するため、既に分化した細胞を初期化する方法を研究している中でiPS細胞が発見され、③のノーベル生理学・医学賞に結び付いたと記憶しているが、その後の研究で、成人の体内にも初期化された細胞は多く存在することがわかった。 そのため、③のみに焦点を当てるのは、既に評価され権威を与えられたものしか評価できない文系のドアホだ。さらに、「人の臓器を量産する試みには、期待や畏怖の念などさまざまな反応が寄せられる」「異次元のイノベーションで、それまでの時代との軋轢がある」という感情論も無駄な悩みだ。その理由は、レントゲンで人の体を透視できるようになったり、抗生物質の出現で治らなかった病気が治るようになったりして人類の寿命が延びたことも異次元のイノベーションだったが、これらがそれまでの時代と軋轢があったかどうかを考えればわかるだろう。 <厚労省の病院再編> *1-1-1:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43736670V10C19A4SHA000/?n_cid=DSREA001 (日経新聞 2019/4/25) 公立病院、膨らむ「隠れ赤字」 税で穴埋め増える懸念 地方自治体が運営する公立病院の赤字拡大が止まらない。自治体の補填を除いた本業の赤字総額は2017年度に4782億円となり、12年度比で5割増えたことが日本経済新聞の調べでわかった。最終的な損失も膨らんでおり、公的負担が急増する恐れがある。公費投入が増えると、過剰病床の縮小・集約など医療の効率化が遅れる懸念が強まる。 ■本業の赤字は5年で5割増 公立病院は都道府県や市町村がつくり、国立や大学の病院と異なる。民間病院が手がけたがらない救急や小児など不採算の医療を提供したり、過疎地の医療水準を維持したりする役割があり、公費投入に意義はある。ただ赤字を公費で埋め続けると自治体財政は悪化し、保育や介護などの公的サービスにしわ寄せがいく。さらに非効率な医療が温存され、入院や治療を増やそうとしてムダに医療費が膨らむ恐れがある。総務省が集計する公立病院決算は医業収入にも自治体の補助を含み、本業の実態が見えにくい。日経新聞は本業の力を見るため、公費を除く「純医業収支」を独自に算出した。対象は都道府県や市町村が持つ783病院のうち、12~17年度に比較できる671病院。その結果、損益悪化が止まらない状況が判明した。純医業収支が黒字の病院数は12年度の45から17年度は19に減り、全体に占める割合は7%から3%に下がった。合計赤字額は5割増えたのに対し、公費投入額は5%増にとどまり、15年度以降は借入金に頼っている。 ■経営のプロ育たず 環境が厳しいのは民間病院も同じだが、公立病院は非効率な業務構造が温存されている。全国公私病院連盟によると、民間は医業の費用が収入と均衡するが、公立は費用が1割多い。公務員の看護師は人員配置や給与体系を柔軟に変えられない。事務職は短期で異動するため経営のプロが育たず、無駄遣いが生まれやすい。建設費単価は公的な日赤病院などよりも1割ほど高い。厚生労働省の調べでも、17年度の一般病院の経常利益率は民間が2.3%、公立はマイナス1.5%との結果が出た。埼玉県立がんセンター(伊奈町)は典型例だ。13年に建て替えて病床を増やしたものの、患者数は想定を下回り赤字が急増。18年度予算は同センターを含む県立4病院への一般会計からの繰入額が建て替え前の1.8倍に膨らんだ。県病院局は「見通しが甘かった」と認める。 ■首都圏で目立つ公費投入 過大な公費投入は民間との競合が激しい首都圏で目立つ。17年度の1ベッドあたり公費投入額の首位は東京都の617万円で、全国平均の約2倍。総額で見ると都立8病院だけで400億円と、全国の1割近い公費を使った。都病院経営本部は「都立しかできない機能がある」と訴えるが、広尾病院(渋谷区)と大塚病院(豊島区)は空きベッドが増え、外来患者数は全国平均を下回る。日本総合研究所の河村小百合上席主任研究員は「都は財政規模が大きいため、巨額の公費投入が見過ごされている」と指摘する。千葉県も病院に過大投資し、損失の穴埋め額が膨らんだ。国内の病床は過剰感が強く、公立は全国の病床の15%弱に達する。病床を埋めるために入院患者を増やそうとすれば、ムダに医療費が膨らむ。総務省は07年に公立病院改革の指針を作り、全国の公立病院に施設・診療機能の再編を促した。すでに60を超す再編例があるが、多くの地域では再編の取り組みが様々な壁に阻まれている。 ■病院再編、年収減に強い抵抗感 4月1日、兵庫県川西市の市立川西病院の運営者が医療法人・協和会に変わった。赤字脱却を目指すための民間委託だ。3年後に別の場所に新病院を建て、協和会の別病院と統合する。2病院の医師を新病院に集めて救急体制を充実させる。現在の病院跡地には診療所と介護施設を整える。ハードルは市立病院の看護師らの処遇だった。民間運営になると年収が平均153万円、率で3割近く下がる。当初4年は市が差額を補うが、半数の職員は退職か市役所事務職に異動した。「公務員でなくなることに抵抗感は強い」(同病院経営企画部)。川西市はなんとか乗り越えたが、往々にして労務問題は公立病院改革にブレーキをかける。「都立病院は独立行政法人化すべきだ」。2018年1月、東京都は有識者委員会から提言された。実現すれば人事や予算を柔軟に決められる。7千人超が非公務員になるが、都立病院労働組合は「労働条件を悪化させる」と反対を表明。都は「23年度までに検討を進める」(病院経営本部)と、結論を出すかどうかも不透明だ。 ■自治体間の責任分担、調整が難航 複数の自治体が絡むと、運営責任や資金分担を巡り綱引きが生じる。千葉県香取市にある県立病院と国保小見川総合病院(市と東庄町で開設)。数年前に2病院の建て替えとセットの再編案が浮上した。県は市主導で赤字額が大きい県立病院を小見川病院に統合する案を推した。市は責任を押しつけられると警戒し、逆に県主導の建て替えを求め、小見川病院を市単独で建て替えた。これで再編案は消え、県立病院の赤字は膨らんだ。公立病院再編は縦割り意識を脱した発想が要る。08年に地方独立行政法人として発足した日本海総合病院(山形県酒田市)の前身は近接する市立と県立の2病院。県立の赤字が膨らみ、建て替えを控えていた市立病院が統合を提案した。原動力は「このままでは共倒れになる」との危機感だった。県と市、病院間で厳しい調整を重ね、県立は規模を拡大し重症者向け拠点病院、市立は縮小してリハビリ病院とする役割分担を決定。職員には業績手当てを入れた。中小病院との連携も進め、開業以来、黒字を続ける。栗谷義樹理事長は「個々の病院ではなく地域全体の医療を効率的に提供する経営が必要だ」と説く。サービス水準を落とさずに効率化するには、自治体や職員が既得権益にしがみつくのをやめる必要がある。 ■民間との連携がカギ そのためには民間病院をまじえた医療体制の見直しもカギを握る。神奈川県は16年度に、総合病院の汐見台病院(横浜市)を医療法人に譲渡した。知事が「県立は小児科などに特化すべきだ」と判断した。従来の医療を続けることを条件に譲渡先を公募し、毎年7億円超あった公費繰入額はゼロになった。医療情報を分析するケアレビューの加藤良平代表は「都市部は公立病院が民間との役割分担を徹底し、規模を縮小すれば公費に依存する問題は改善する」と指摘する。 【集計方法】総務省がまとめる地方公営企業法が適用される公立病院の「病院事業決算状況」の項目に基づく。医業収益から医業費用を差し引いた医業収支から、さらに自治体の補助金のうち医業収益に含まれる「他会計繰入金」(救急医療と保健衛生行政費)を除いて「純医業収支」を独自に算出した。自治体の公費負担は医業内と医業外の合計額。期間中に再編統合した病院や独立行政法人化した病院は除外した。 *1-1-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/547177/ (西日本新聞 2019/9/30) 増税、負担じわり 非課税の医療費も値上げ 「軽減税率」導入 混乱は必至 消費税率が10月1日から10%に引き上げられる。増税は2014年4月に現在の8%になって以来、5年半ぶり。低所得者の負担軽減や増税に伴う消費の落ち込みを防ぐため、政府は飲食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率制度を初めて導入するのに加え、キャッシュレス決済へのポイント還元など手厚い対策を用意している。ただ、制度が複雑化しており、混乱は必至だ。私たちの暮らしはどう変わるのか。改めてまとめた。電気やガス料金は経過措置で11月分から増税分が上乗せされる。九州電力と西部ガスによると、原燃料価格の変動も加味したモデル家庭の11月料金は、九電の電気料金が10月より93円高い6508円、西部ガスのガス料金が110円高い5827円になる。公共交通の料金も上がる。JR九州は1円単位を四捨五入し、10円単位で値上げ。在来線の初乗り運賃は10円高い170円となる。値上げの割合を示す平均改定率は1・850%。西日本鉄道の路線バスは、区間に応じて10~30円値上げ。100円の区間など、値上げしない区間もある。高速バスは、子会社を含む6社で運行する全34路線のうち31路線で10~400円を値上げする。銀行の手数料は10月1日に引き上げられる。主な銀行の現金自動預払機(ATM)の時間外手数料は108円から110円に。ATMを使って他行に3万円未満を現金で振り込んだ場合の手数料は、540円から550円になる。郵便や宅配の料金も増税の対象だ。通常はがきは1円値上がりして63円に、手紙(25グラム以内の定形郵便物)は2円高い84円になる。8月から新料金に対応したはがきや切手を販売しており、現行のものは今月30日で販売を終了する。ヤマト運輸は10月1日から、宅急便の料金を現金払いは1円単位を切り上げた価格にする。電子マネーやスマートフォンによるキャッシュレス決済の場合は切り上げをしない。一方、消費税が非課税で値上げにならないものもある。住宅の家賃や土地の売買、商品券やプリペイドカードの売買などだ。学校の授業料や火葬料も非課税取引に当たるため今回の増税の影響は受けない。ただ、公的医療保険でカバーされる医療費は消費税の課税対象外だが、医療機関が業者から仕入れる物品などは消費税がかかるため、国は10月から診療報酬を増税分引き上げる。初診料は60円、再診料は10円高くなる。 *1-1-3:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50232120W9A920C1MM8000/ (日経新聞 2019/9/26) 424病院は「再編検討を」 厚労省、全国のリスト公表 厚生労働省は26日、市町村などが運営する公立病院と日本赤十字社などが運営する公的病院の25%超にあたる全国424の病院について「再編統合について特に議論が必要」とする分析をまとめ、病院名を公表した。診療実績が少なく、非効率な医療を招いているためだ。ベッド数や診療機能の縮小なども含む再編を地域で検討し、2020年9月までに対応策を決めるよう求めた。全国1652の公立・公的病院(2017年度時点)のうち、人口100万人以上の区域に位置する病院などを除いた1455病院の診療実績をもとに分析した。がんや救急など高度な医療の診療実績が少ない病院や近隣に機能を代替できる民間病院がある病院について「再編統合について特に議論が必要」と位置づけた。424病院の内訳は公立が257、公的が167だった。今後、厚労省は地域の医療計画をつくる各都道府県に対し、地域内の他の病院などと協議しながら20年9月末までに対応方針を決めるよう求める。他の病院への統合や病床数の削減、診療機能の縮小などを25年までに終えるよう要請する。ただ罰則規定や強制力はなく、権限は各地域に委ねられている。特に公立病院の再編や縮小には住民の反発も予想される。改革が進むかは不透明で、実効性を高める施策が必要になりそうだ。政府は団塊の世代の全員が75歳以上になる25年度をターゲットに、病気が発症した直後の「急性期」の患者向けの病院ベッドを減らす「地域医療構想」を進めている。看護師などを手厚く配置するため医療費もかさむのに、病床数は過剰となっているためだ。ただ各地域が医療計画で示した急性期病床の削減率は公立病院全体で5%にとどまっている。このため厚労省は縮小する余地のある過剰な医療の実態を明らかにするため、この春から分析を進めていた。 厚労省が再編の検討を求めた公立・公的病院 【北海道】北海道社会事業協会函館、木古内町国保、国立病院機構函館、市立函館南芽部、函館赤十字、函館市医師会、森町国保、松前町立松前、厚沢部町国保、奥尻町国保、長万部町立、八雲町熊石国保、せたな町立国保、今金町国保、北海道社会事業協会岩内、国保由仁町立、市立三笠総合、国保町立南幌、国保月形町立、栗山赤十字、市立芦別、北海道社会事業協会洞爺、地域医療機能推進機構登別、白老町立国保、日高町立門別国保、新ひだか町立三石国保、新ひだか町立静内、市立旭川、国保町立和寒、JA北海道厚生連美深厚生、町立下川、上富良野町立、猿払村国保、豊富町国保、利尻島国保中央、中頓別町国保、斜里町国保、小清水赤十字、JA北海道厚生連常呂厚生、滝上町国保、雄武町国保、興部町国保、広尾町国保、鹿追町国保、公立芽室、本別町国保、十勝いけだ地域医療センター、清水赤十字、町立厚岸、JA北海道厚生連摩周厚生、標茶町立、標津町国保標津、町立別海、市立美唄 【青森】国保板柳中央、町立大鰐、国保おいらせ、国保南部町医療センター、国保五戸総合、三戸町国保三戸中央、青森市立浪岡、平内町国保平内中央、つがる西北五広域連合かなぎ、黒石市国保黒石 【秋田】大館市立扇田、湖東厚生、市立大森、地域医療機能推進機構秋田、羽後町立羽後 【岩手】国立病院機構盛岡、岩手県立東和、岩手県立江刺、奥州市国保まごころ、一関市国保藤沢、洋野町国保種市、岩手県立一戸、岩手県立軽米、盛岡市立、奥州市総合水沢 【宮城】蔵王町国保蔵王、丸森町国保丸森、地域医療機能推進機構仙台南、国立病院機構仙台西多賀、国立病院機構宮城、塩竈市立、宮城県立循環器・呼吸器病センター、栗原市立若柳、大崎市民病院岩出山分院、公立加美、栗原市立栗駒、大崎市民病院鳴子温泉分院、美里町立南郷、湧谷町国保、石巻市立牡鹿、登米市立米谷、登米市立豊里、石巻市立、南三陸 【山形】天童市民、朝日町立、山形県立河北、寒河江市立、町立真室川、公立高畠、酒田市立八幡 【福島】済生会川俣、地域医療機能推進機構二本松、三春町立三春、公立岩瀬、福島県厚生連鹿島厚生、福島県厚生連高田厚生、福島県厚生連坂下厚生総合、済生会福島総合 【栃木】地域医療機能推進機構うつのみや、国立病院機構宇都宮 【群馬】群馬県済生会前橋、伊勢崎佐波医師会、公立碓氷、下仁田厚生 【茨城】笠間市立、小美玉市医療センター、国家公務員共済組合連合会水府、村立東海、国立病院機構霞ケ浦医療センター、筑西市民 【千葉】千葉県千葉リハビリテーションセンター、国立病院機構千葉東、地域医療機能推進機構千葉、千葉市立青葉、銚子市立、国保多古中央、東陽、南房総市立富山国保、鴨川市立国保、国保直営君津中央病院大佐和分院 【埼玉】蕨市立、地域医療機能推進機構埼玉北部医療センター、北里大学メディカルセンター、東松山医師会、所沢市市民医療センター、国立病院機構東埼玉、東松山市立市民 【東京】国家公務員共済連九段坂、東京都台東区立台東、済生会支部東京都済生会中央、東京大学医科学研究所付属、東京都済生会向島、地域医療機能推進機構東京城東、奥多摩町国保奥多摩、国立病院機構村山医療センター、東京都立神経、国民健康保険町立八丈 【神奈川】川崎市立井田、三浦市立、済生会平塚、秦野赤十字、国立病院機構神奈川、相模原赤十字、東芝林間、済生会神奈川県、済生会若草、横須賀市立市民 【新潟】新潟県立坂町、新潟県立リウマチセンター、新潟県厚生連新潟医療センター、国立病院機構西新潟中央、豊栄、あがの市民、新潟県立吉田、三条総合、新潟県立加茂、見附市立、国立病院機構新潟、厚生連小千谷総合、新潟県立松代、新潟県立妙高、上越地域医療センター、新潟県立柿崎、新潟県厚生連けいなん総合、魚沼市立小出、南魚沼市立ゆきぐに大和、町立湯沢、労働者健康福祉機構新潟労災、佐渡市立両津 【富山】あさひ総合、富山県厚生連滑川、富山県リハビリテーション・こども支援センター、かみいち総合、地域医療機能推進機構高岡ふしき 【石川】国保能美市立、国家公務員共済組合連合会北陸、津幡町国保直営河北中央、町立富来病院、町立宝達志水、公立つるぎ、地域医療機能推進機構金沢 【福井】国立病院機構あわら、坂井市立三国、越前町国保織田、地域医療機能推進機構若狭高浜 【山梨】地域医療機能推進機構山梨、北杜市立塩川、韮崎市国保韮崎市立、北杜市立甲陽、山梨市立牧丘、甲州市立勝沼、身延町早川町国保病院一部事務組合立飯富 【静岡】JA静岡厚生連リハビリテーション中伊豆温泉、伊豆赤十字、国立病院機構静岡てんかん・神経医療センター、JA静岡厚生連清水厚生、JA静岡厚生連静岡厚生、地域医療機能推進機構桜ケ丘、菊川市立総合、市立御前崎総合、公立森町、浜松赤十字、市立湖西、JA静岡厚生連遠州、労働者健康福祉機構浜松労災、共立蒲原総合 【長野】川西赤十字、佐久穂町立千曲、長野県厚生連佐久総合病院小海分院、東御市民、国保依田窪、長野県厚生連鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯、長野県厚生連下伊那厚生、下伊那赤十字、国立病院機構まつもと医療センター松本、国立病院機構まつもと医療センター中信松本、安曇野赤十字、飯綱町立飯綱、長野県立総合リハビリテーションセンター、信越、飯山赤十字 【岐阜】岐阜県厚生連岐北厚生、羽鳥市民、岐阜県厚生連西美濃厚生、県北西部地域医療センター国保白鳥、国保坂下、市立恵那、岐阜県厚生連東濃厚生、国保飛騨市民、厚生会多治見市民 【愛知】津島市民、あま市民、一宮市立木曽川市民、愛知県心身障害者コロニー中央、みよし市民、碧南市民、中日、国立病院機構東名古屋、ブラザー記念 【三重】三重県厚生連三重北医療センター菰野厚生、三重県厚生連大台厚生、済生会明和、町立南伊勢、市立伊勢総合、桑名南医療センター、亀山市立医療センター 【滋賀】地域医療機能推進機構滋賀、大津赤十字志賀、守山市民、東近江市立能登川、長浜市立湖北 【奈良】済生会中和、奈良県総合リハビリテーションセンター、済生会御所、南和広域医療企業団吉野、済生会奈良 【京都】国立病院機構宇多野、市立福知山市民病院大江分院、舞鶴赤十字、国保京丹波町 【大阪】大阪市立弘済院附属、仙養会北摂総合、市立藤井寺市民、冨田林、済生会支部大阪府済生会新泉南、和泉市立、生長会阪南市民、健保連大阪中央、高槻赤十字、市立柏原 【和歌山】海南医療センター、国保野上厚生総合、済生会和歌山、国保すさみ、那智勝浦町立温泉 【兵庫】兵庫県立リハビリテーション中央、国家公務員共済連六甲、高砂市民、明石市立市民、多可赤十字、公立豊岡病院組合立豊岡病院出石医療センター、公立香住、公立豊岡組合立豊岡病院日高医療センター、公立村岡、国立病院機構兵庫中央、兵庫県立姫路循環器病センター、相生市民、たつの市民、加東市民、柏原赤十字 【鳥取】岩美町国保岩美、日南町国保日南、南部町国保西伯、鳥取県済生会境港総合 【島根】国立病院機構松江医療センター、地域医療機能推進機構玉造、出雲市立総合医療センター、津和野共存 【岡山】備前市国保市立備前、岡山市久米南町組合立国保福渡、総合病院玉野市立玉野市民、せのお、備前市国保市立吉永、労働者健康安全機構吉備高原医療リハビリテーションセンター、瀬戸内市立瀬戸内市民、赤磐医師会、笠岡市立市民、矢掛町国保、国立病院機構南岡山医療センター、井原市立井原市民、鏡野町国保 【広島】北広島町豊平、国家公務員共済連吉島、広島市医師会運営・安芸市民、広島県済生会呉病院、呉市医師会、国家公務員共済連呉共済病院忠海分院、日立造船健保組合因島総合、三原市医師会、府中北市民、国立病院機構広島西医療センター、総合病院三原赤十字、府中市民、総合病院庄原赤十字 【山口】岩国市立錦中央、岩国市立美和、光市立大和総合、周南市立新南陽市民、地域医療支援病院オープンシステム徳山医師会、光市立光総合、美祢市立美東、美祢市立、小野田赤十字、下関市立豊田中央、岩国市医療センター医師会、厚生連小郡第一総合、国立病院機構山口宇部医療センター、山陽小野田市民 【徳島】国立病院機構東徳島医療センター、徳島県鳴門、阿波、海陽町国保海南、国保勝浦、阿南医師会中央 【香川】国立病院機構高松医療センター、香川県厚生連滝宮総合、さぬき市民、済生会支部香川県済生会 【愛媛】国立病院機構愛媛医療センター、宇和島市立吉田、宇和島市立津島、西条市立周桑、鬼北町立北宇和、愛媛県立南宇和 【高知】JA高知、佐川町立高北国保、地域医療機能推進機構高知西、いの町立国保仁淀、土佐市立土佐市民 【福岡】福岡県立粕屋新光園、嶋田、嘉麻赤十字、飯塚嘉穂、労働者健康安全機構総合せき損センター、川崎町立、中間市立、遠賀中間医師会おんが、北九州市立総合療育センター、芦屋中央、宗像医師会、国立病院機構大牟田、飯塚市立 【佐賀】小城市民、国立病院機構東佐賀、地域医療機能推進機構伊万里松浦、町立太良、多久市立 【長崎】日本赤十字社長崎原爆、国保平戸市民、平戸市立生月、市立大村市民、日本赤十字社長崎原爆諫早、長崎県富江、北松中央 【大分】杵築市立山香、臼杵市医師会立コスモス、竹田医師会 【宮崎】地域医療機能推進機構宮崎江南、国立病院機構宮崎東、五ケ瀬町国保、日南市立中部、えびの市立、都農町国保、国立病院機構宮崎 【熊本】国保宇城市民、国立病院機構熊本南、小国公立、天草市立牛深市民、熊本市医師会熊本地域医療センター、熊本市立植木、熊本市立熊本市民 【鹿児島】済生会鹿児島、鹿児島市医師会、鹿児島厚生連、鹿児島赤十字、枕崎市立、南さつま市立坊津、肝付町立、公立種子島 【沖縄】なし *1-2-1:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/349451 (北海道新聞社説 2019.9.29) 病院再編リスト 地域事情に配慮足りぬ 厚生労働省は、全国1455の公立病院や日赤などの公的病院のうち、診療実績が乏しく、再編・統合の議論が必要とする424の病院名を初めて公表した。高齢化により膨張する医療費を抑制する狙いがあるという。そのうち道内は111病院中54病院と全都道府県で最も多く、道民生活に与える影響が大きい。道内は面積が広大で、公共交通機関に恵まれず、通院に時間がかかる人も多い。とりわけ冬季はままならなくなる。大都市と過疎地に一律の基準を当てはめ、再編・統合を促すのは無理があろう。対象となった病院や自治体などから反発や戸惑いの声が挙がるのも当然だ。無年金や低年金で暮らす高齢者もいる。弱者の切り捨てにつながる再編・統合は許されない。厚労省は、来年9月までに結論を出すよう都道府県を通じて対象病院に求める方針だ。道は各地の実情を十二分に考慮し、住民一人一人に寄り添い、丁寧に議論を進めてもらいたい。今回、厚労省は2017年度のデータを基に、がんや脳卒中、救急など9項目の診療実績と、競合する病院が車で20分以内の場所にあるかで分析し、判断した。機械的にリストを作成し、一方的に名指しするのは、乱暴だと言わざるを得ない。18年度の医療費は42兆6千億円と過去最高を記録し、団塊の世代が全員75歳以上になる25年度にはさらに大きく膨らむ。医療費削減のため、政府は25年時点の望ましい病床数が全国で約119万床になると推計し、都道府県に計画を策定させた。この通り進めるには、現状より5万床以上減らす必要がある。手術や救急に対応し医療費のかかる「急性期」の病床数を減らし、在宅医療やリハビリ向け病床への転換を促すという。広い道内で急性期病床を減らせば、道民の命に関わりかねない。公立・公的病院は地域コミュニティーの核となる存在だ。強引に再編・統合を進めれば、過疎地の人口減に拍車がかかり、地域崩壊を招く懸念が拭えない。道は、21の医療圏ごとに協議会を設け、再編・統合など地域医療のあり方を検討中だ。医師不足は深刻で、公立・公的病院の多くが赤字経営になるなど課題は山積している。住民の声に耳を傾け、安心できる医療体制の将来像を示してほしい。 *1-2-2:https://373news.com/_column/syasetu.php?storyid=110686 (南日本新聞社説 2019.9.28) [公的病院の再編] 地域実態踏まえ議論を 厚生労働省は、診療実績が乏しく再編・統合の議論が必要と判断した全国424の公立・公的病院名を公表した。鹿児島県内では鹿児島市医師会病院など8病院が対象となった。年々増加の一途をたどる医療費の抑制は待ったなしの課題である。団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者になる2025年が目前に迫り、医療提供体制の見直しは避けられない状況だ。だが、再編されれば適切な医療サービスを受けられなくなるという住民の不安は大きい。政府、都道府県は数字によって機械的に進めるのではなく、地域の実態に十分配慮すべきだ。今回、17年度のデータを基に重症患者向けの「高度急性期」、一般的な手術をする「急性期」に対応できる1455病院を調査。がんや救急医療といった9項目の診療実績と、競合する病院が「車で20分以内」の場所にあるかを分析した。再編・統合検討が必要とされたのは全体の約3割だった。厚労省によると、対象の病院には、廃止や病床(ベッド)削減、機能転換、他の病院への診療科移転などを検討してもらう。来年9月までに結論を出すよう、都道府県を通じて対象病院に要請するとしている。政府は自宅など住み慣れた地域で暮らせるよう「地域包括ケアシステム」の構築を目指している。一方、医療提供体制の見直しでは、民間を含めて全国で124万6000床(18年)ある病院のベッド数を25年に119万1000床まで減らす方針だ。病院のベッドに関しては、少子高齢化などに伴う人口構成の変化に合わせた機能転換が求められている。現状では「高度急性期」「急性期」のベッド数が多く、高齢者にニーズの高いリハビリ向けは不足しており、ミスマッチ是正が課題となってきた。今回、病院名公表に踏み切ったのは、特に停滞している公立・公的病院の再編・統合の議論を加速させる狙いがある。ただ、懸念される問題点は多い。そもそも、へき地や離島にある病院の役割を考えれば、経済合理性重視で評価を下せるものではない。長年頼みにしてきた地域の病院が遠隔地に統合されるとなると住民の不利益は計り知れない。県内で対象となった病院の地元からは反発の声が出ている。公立種子島病院(南種子町)は島中南部の医療拠点だが、再編されれば車で1時間以上かかる西之表市に行かなければならなくなる。交通手段のない高齢者にとっては深刻な問題だ。国の借金や将来世代の負担を考えれば、再編に切り込むのは理解できる。だが、数字を挙げて指摘するだけでは地元は納得しまい。行政と共に住民も加わり、地域医療のあるべき姿について真摯(しんし)に議論することが重要である。 *1-3-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201906/CK2019062802000276.html (東京新聞 2019年6月28日) 無給医、50病院に2100人 大半雇用契約なし 大学病院、研究名目で診療 文部科学省は二十八日、労働として診療を行っているのに給与が支払われない「無給医」が、五十の大学病院に計二千百九十一人いたと発表した。調査対象とした医師約三万二千人の7%に上るが、まだ各大学が精査中の医師が千三百四人いて、人数がさらに増える可能性がある。無給医の多くは雇用契約を結ばず、労災保険も未加入だった。各大学は文科省の指導に基づき、給与の支払いや雇用契約の締結を進める。大学病院には、大学院生らのほか、自己研さんや研究目的の医師が在籍し、その一環で診療に携わる場合には給与を支払わない慣習が広く存在する。今回の調査では、診療のローテーションに組み込まれていた場合などを実質的な労働だったとし、給与の支払いがない医師を無給医とした。判断は各大学が専門家らに相談して行った。調査は一~五月、国公私立九十九大学の百八付属病院に在籍する医師と歯科医師を対象に実施。昨年九月に診療に従事した計三万一千八百一人(教員や初期研修医を除く)について、同月の給与の支給状況などをまとめた。無給医と確認された二千百九十一人のうち、合理的な理由なく給与を支払っていなかったのは五十病院のうち二十七病院の七百五十一人。契約上は週二日なのに実際は週四日診療しているような例も含まれ、最大二年間さかのぼって支払う。残る千四百四十人は五十病院のうち三十五病院に所属し、無給の合理的な理由はあるが、診療の頻度や内容を踏まえて今後は給与を支給する。これらとは別に、六十六病院の三千五百九十四人が、ほかの所属先から大学病院で働いた分も含めて給与を受け取っているなど、合理的な理由があり給与を支給しない現状を維持するとした。病院別では、無給医が最も多かったのは順天堂大順天堂医院の百九十七人(対象者の46%)で、北海道大病院百四十六人(同24%)、東京歯科大水道橋病院百三十二人(同62%)が続いた。昭和大歯科病院は百十九人、愛知学院大歯学部病院百十八人で、それぞれ対象者全員が無給医だった。無給医かどうか精査中の千三百四人の内訳は、日本大板橋病院三百二十一人、東大病院二百三十九人、日大歯科病院二百十一人、慶応大病院二百人など。全対象者のうち、合理的な理由なく雇用契約を結んでいなかった医師は千六百三十人、労災保険の対象外だったのは千七百五人だった。多くの無給医は深夜や休日に、別の医療機関でアルバイトなどをして生活費を得ており、過重労働による診療への悪影響などが懸念されている。 ◆医療事故の責任あいまいに <全国医師ユニオンの植山直人代表の話> 文部科学省の調査は大学病院に報告を求める形で実施され、病院によって調査手法や無給医かどうかの判断に違いがある。今回明らかになった結果は氷山の一角で、実際はもっと多いだろう。いくら研修や研究のために病院にいるといっても、免許を持つ医師が診療をし、病院が報酬を得ている以上は賃金が払われるのが当然だ。加えて、雇用契約がなければ、労働時間の管理もなされず、医療事故が起きた際に責任の所在があいまいになることで患者の不利益にもなりかねない。早急な改善が必要で、国もフォローアップしていくべきだ。 <無給医> 大学病院などで実質的に労働の実態があるのに、給料が支払われていないと判断された医師。病院の人件費が限られているため、便宜的に無給とされたり、一部しか支払われなかったりするケースがある。(1)大学院生らが教育や研修名目で働かされる(2)契約した以上に勤務に入れられる-など、形態はさまざま。病院で診察や病棟管理を担う一方、生活費を稼ぐために深夜や休日にアルバイトをして、過労死した医師もいる。 *1-3-2:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201909/CK2019093002000231.html (東京新聞 2019年9月30日) 調査手法を情報公開 統計不正 総務省が再発防止策 政府の統計不正の再発防止策を話し合う総務省の統計委員会は三十日、会合を開き、毎月勤労統計の重点的な検証結果を盛り込んだ報告書を正式決定した。統計の調査手法などを積極的に情報公開し、透明性の高い作業環境づくりを促すことが柱。外部の目を光らせることによって再発防止につなげる。報告書では、毎月勤労統計を所管する厚生労働省に対して詳細な調査手法の公開に加え、業務マニュアルを整備して全ての職員が作業内容を把握できるようにすることを求めた。特定の職員が長期に業務を担い、不正が見過ごされてきた反省を踏まえた。外部の研究者にとって調査データを利用しやすくする環境整備も促している。不正が発覚した後、過去のデータが一部で保存されておらず再集計が困難になった。このため、必要な情報を電子化して永久保存することを要請。八月に大阪府の調査員による虚偽報告が発覚したことを受け、調査員が業務上の困り事を相談できる窓口も設ける。報告書を受け取った高市早苗総務相は記者団に「統計の品質の向上と信頼性の確保に取り組みたい。厚労省が二度と同じ過ちを繰り返さないのはもちろんだが、統計は国民が合理的な判断をするための重要な情報で全ての府省が対策を進めてほしい」と述べた。 <勤労統計不正> 企業の賃金や労働時間を把握する「毎月勤労統計」で、厚生労働省が不正な調査手法を取っていた問題。2004年から東京都の500人以上の事業所で、本来の全数調査でなく抽出した3分の1程度しか調べていなかった。統計を基に算出する雇用保険や労災保険、船員保険の給付額が本来より低くなり、延べ約2000万人が過少支給になった。雇用形態や学歴など労働者の属性別に賃金を把握する「賃金構造基本統計」でも計画と異なる郵送調査をしていた。 *1-3-3:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20190929&ng=DGKKZO50303850X20C19A9MM8000 (日経新聞 2019.9.29) 米IT人材獲得戦 異状あり、インド系半減 囲い込むGAFA 米国のIT(情報技術)人材の争奪戦に異変が起きている。世界から人材を引き寄せるのが米IT産業の強みだったが、トランプ政権がビザ(査証)発給を厳格にして相対的に賃金が低い案件の承認を一気に絞った。インド系のIT大手での承認が急減した一方、グーグルなど「GAFA」は高報酬をテコに承認を増やし、むしろ人材の囲い込みに拍車をかけている。米国は「H1B」ビザでIT人材などを受け入れてきた。受給者はインド出身が7割に及ぶ。米国での起業を夢見る若者。世界の優秀な人材を選べる企業。米国発のイノベーションの「舞台装置」だ。「オバマ政権なら3週間でとれるといわれていたのに」。インターネットを使った教育事業をシリコンバレーで始めようとした日本人起業家、真田諒さん(35)は頭を抱えた。インド出身の技術者を採用しようとしたが、H1Bの申請がいっこうに受理されない。当局と4カ月にわたるやり取りの末、技術者の年収を当初の8万ドル(約860万円)から13万ドル弱に引き上げ、やっと承認にこぎつけた。トランプ政権は2017年の大統領令でH1Bビザの審査を厳しくした。移民局によると、18年度(17年10月~18年9月)の承認件数は新規と更新の合計で約33万5000件と前年度から1割減った。雇用主企業別では、システム構築や保守を請け負うITサービス企業の急減が目立つ。インドに本社を持つインフォシスとタタ・コンサルタンシー・サービシズ、同国を開発の主力拠点とするコグニザント・テクノロジー・ソリューションズのいわゆる「インド系」大手3社は承認上位の常連だったが、18年度の承認は3社合計で59%減った。かねて「高度人材の名のもとに割安な賃金で労働者を呼び、米国人の職を奪う」との批判もあった。「高学歴の申請を優先する仕組み」(米法律事務所)に変え、米国人と競合しそうな「中技能・中所得」に狙いを定めて発給を絞り込んだ可能性が高い。「成果」は出ているようだ。インフォシスは19年半ばまでの2年間に米国内で新たに1万人を雇用した。インドから大勢のIT人材を連れてくることが難しくなり、代わりに米国に拠点をつくって地元の大学で採用を増やした。対照的に、グーグルなどのGAFAはH1BでのIT人材の獲得を加速させている。4社合計の承認件数は18年度に28%増え、インド系との差が急縮小している。GAFAがビザの申請対象者に示した年収(中央値)は12万~15万ドルとインド系の8万ドル前後を上回り、「賃上げ」も続く。動画配信のネットフリックスも報酬を引き上げて人材獲得を急ぐ。「高技能・高収入」なら審査が通りやすい状況を活用し、したたかに動く姿が浮かぶ。ビザ申請の年収をみると、日本勢はインド系に近い位置にとどまる。世界で人事・報酬制度を見直している日立製作所。カリフォルニア州のデジタル子会社では高報酬の用意を整えつつあるが「日本の本社への配慮もあって制度全体としては踏み込めていない」と人事担当者は漏らす。米国の異変は他の国々にはIT人材を得る好機にもなる。カナダや英国はすぐに人材の囲い込みに動いた。日本も柔軟な給与体系づくりや待遇の改善を急がないと、せっかくの機会を逃しかねない。 <先進医療> *2-1:https://mainichi.jp/articles/20190227/ddm/005/070/039000c (毎日新聞 2019年2月27日) がん新免疫療法 公的保険でどう支えるか 新たながん免疫療法として期待される「CAR-T細胞療法」に使われる製剤の製造・販売が、厚生労働省の専門部会で承認された。今夏にも公的医療保険が適用される。効果は高いが、治療費も超高額なことでも注目されていた新薬だ。こうした薬を医療保険制度にどう組み込んでいくのか。国民皆保険の日本が直面する大きな課題と言える。承認されたのは製薬大手ノバルティスファーマの「キムリア」だ。患者から取り出した免疫細胞に遺伝子操作を加え、がん細胞への攻撃力を高めた製剤で、点滴で体内に戻す。これがCAR-T細胞療法で、キムリアは特定の白血病とリンパ腫の患者の一部が対象となる。 患者数は年間約250人と予測されている。臨床試験では白血病患者の8割で症状が大幅に改善した。 他の病気でも同種の技術を使う治療法の開発が進んでおり、がん治療の新たな柱になる可能性を秘める。ただ、キムリアの臨床試験では重い副作用が出るケースも報告されている。体制が整った医療施設で、慎重に効果を見極める必要がある。キムリアの日本の薬価はこれから決まるが、米国では1回の治療に約5200万円かかる。巨額の開発費に加え、製造工程も複雑だからだ。日本には高額療養費制度があるため、超高額な新薬でも、患者の自己負担には上限がある。一方で、高額な薬の保険適用が拡大すれば、医療財政の圧迫は避けられない。超高額な薬価で話題になったがん免疫治療薬「オプジーボ」の価格引き下げ騒動を教訓に、厚労省は、市場規模が拡大した薬については、薬価の改定時期を2年に1回から年4回に見直した。適切に運用していく必要がある。米国では、キムリアの投与から1カ月後に治療効果が上がった場合に限り、製薬企業に費用が支払われる。企業の新薬開発意欲を保ちつつ、薬剤費の膨張を抑える方策として、日本でも検討の余地がある。貧富の差を問わず、一定の医療が受けられることが皆保険の利点だ。高額だが有効性の高い薬に保険を適用するため、症状の軽い病気に使う薬は患者負担を増やして財政のバランスをとる。そんな観点での国民的な議論も深めるべきだ。 *2-2:https://digital.asahi.com/articles/ASM9M567MM9MULBJ00H.html?iref=comtop_list_sci_f02 (朝日新聞 2019年9月26日) iPS細胞から「ミニ多臓器」初成功 東京医科歯科大 ヒトのiPS細胞から、肝臓と胆管、膵臓(すいぞう)を同時につくることができたと、東京医科歯科大の武部貴則教授らの研究チームが発表した。iPS細胞から、それぞれの臓器がつながった「ミニ多臓器」をつくったのは初めてという。論文は25日付の英科学誌ネイチャーに掲載される。iPS細胞を使ったこれまでの研究は、神経や心臓の細胞といった特定の細胞をつくるものが多かった。武部さんらは2013年、iPS細胞から初めての臓器となる「ミニ肝臓」をつくった。しかし、一つの臓器をつくって移植したとしても、機能が十分に発揮されなかったり長く働かなかったりするという課題があった。研究チームは、iPS細胞から複数の臓器を同時につくれないかと考えた。まず、iPS細胞から前腸組織と中腸組織という消化器系の臓器のもとになる二つの組織をつくった。これをくっつけたところ、境界部分に肝臓、胆管、膵臓のもとになる細胞が出現した。この細胞を培養すると、肝臓と胆管と膵臓がつながったミニ多臓器ができた。受精から1~2カ月の胎児の臓器ほどの大きさという。チームは前腸組織から出るレチノイン酸という物質が、肝臓、胆管、膵臓のもとになる細胞ができるのを促したとみている。実際にヒトに移植するには臓器とともに血管なども同時につくらなければならない。武部さんは「まだ基礎研究の段階だが、10年以内に今回開発した技術を実用化させて患者に届くようにしたい」と話している。 *2-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201907/CK2019071902000182.html (東京新聞 2019年7月19日) 細胞シートで歯周病治療 抜いた親知らず捨てずに活用 親知らずが歯周病患者を救う-。抜いた親知らずなどから採取した細胞を培養して細胞シートを作り、患部に貼り付けて歯周病を治療する治験(臨床試験)を、東京医科歯科大大学院の岩田隆紀教授(46)らが始めた。医療廃棄物として捨てられていた親知らずなどを使った新しい再生医療。高齢になっても多くの歯が残れば、生活の質の向上が期待できそうだ。歯周病は歯と歯肉の間に細菌が増え、歯こうが蓄積することで歯茎に腫れや出血を起こす。進行すると歯と歯肉の境目(歯周ポケット)が深くなり、歯を支える歯槽骨を毒素が溶かす。新しい再生医療は、抜いた歯の歯根膜細胞を培養して三層にした細胞シートを、歯周ポケットのある歯根面に移植する。歯根膜は、歯根と歯槽骨をつないで歯を支え、細菌の侵入を防ぐ。シートからは骨形成を促すサイトカイン(タンパク質)が出る。つまりシートが歯根膜の役割をして骨を再生する。移植手術では、歯槽骨が欠けた部分に顆粒(かりゅう)状の骨補填(ほてん)材を入れて歯肉を縫合する。手術は一時間程度。外来で済む。岩田さんらは二〇一一年から、患者自身の抜いた歯で細胞シートを培養して移植する臨床研究に着手した。重症七人を含む十人(三十三~六十三歳の男女各五人)に行った移植では、現在も拒絶反応や痛みなどは起きていない。歯周ポケットの深さは術前の平均五・六ミリから正常範囲の同二・四ミリに。歯槽骨の再生も維持できているという。これを受け、岩田さんらは東京女子医科大歯科口腔(こうくう)外科の安藤智博教授のグループと昨年末から、他人の抜いた歯を使った細胞シートを移植する治験を始めた。既に六十四歳女性など三人に実施。本年度中にさらに三例の移植を行い、二〇年度中に安全性と有効性を検証する。岩田さんによると、抜いた歯一本から一万シートの生産が可能で、一シートで二、三本の移植ができる。現在は七本の歯から培養した約七万製品分の細胞を凍結保存中。岩田さんは「全国の歯周外科にこの治療法が普及すれば、歯周病が引き起こす糖尿病や脳血管疾患が減り、医療費の削減効果も大きい」と話す。 ◆歯磨き、食生活…予防も大切 歯を失う原因として最も多い四割を占めるとされる歯周病。厚生労働省の患者調査では二〇一七年に約三百九十八万人に達する。日本歯周病学会理事の専門医で、東京都内で開業している若林健史さん(62)に、どう防ぐかを聞いた。予防の決め手はフロスや歯間ブラシなども使った歯磨きの励行。菓子や炭酸飲料など糖分の多い食生活を見直すことも重要で、三、四カ月に一回は歯科で歯石の除去をするとよい。喫煙は歯周病のリスクを五~八倍高めるという。「女性には歯周病リスクが三回ある」と若林さん。まず、思春期はホルモンバランスが変化し、口中の細菌が増えやすい。女性ホルモンが増える妊娠・出産期も注意が必要。唾液が減って乾燥しやすい更年期も歯周組織が劣化するという。糖尿病と肥満は歯周病の危険因子であり、逆に歯周病は糖尿病や肥満を悪化させる。歯周病菌は血液を通じて脳梗塞や心臓疾患、誤嚥(ごえん)性肺炎、早産や低体重出産、関節リウマチを招くことが知られている。最近ではアルツハイマー病との関連も指摘される。 *2-4-1:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191002&ng=DGKKZO50376970Q9A930C1TL1000 (日経新聞 2019年10月2日) 心臓が量産品に変わる日、第7部 医ノベーション(1) 自らの肉体を自在につくる技術を人類がひとたび手にしたら、どんな未来が待っているのだろうか。そんな想像を膨らませ、取材は始まった。羽田空港の駐機場を望む川崎市の研究開発拠点。リコーの研究室で、両手で持てそうな小型プリンターがせわしなく動く。左右に走るヘッド部分から、ぽたぽたとしずくが落ちる。漏れ出たインクではない。1滴ずつが神経細胞を含む液体だ。ヘッドが小刻みに行き来し、絵や文字を印刷する代わりに神経細胞を丁寧に敷き詰める。1~2時間で最大20層ほど積み重なり、約1センチメートル角のサイコロ形をした塊になる。神経細胞は、再生医療の切り札とされるiPS細胞から育てた。この3Dプリンターの技術を使えば、細胞の塊を様々な形に変えたり、異なる細胞を混ぜ合わせたりできる。将来は大脳皮質の一部をつくり、病気やケガで傷んだ脳の治療に役立てる。事務機器のインクジェットプリンターを担当した開発員も加わり、研究は熱を帯びている。 ■1万人の患者が移植を待つ リコーは、必ずしも完全な臓器をつくろうとはしていない。「患者が必要としている機能を提供する」(バイオメディカル研究室の細谷俊彦室長)方針だ。だが「交換可能な臓器」の開発が焦点になっているのは明らかだ。2019年春、イスラエルのテルアビブ大学が3Dプリンターでヒトの細胞を積み上げ、血管まで備えたミニ心臓をつくったとのニュースが伝わった。佐賀大学も、ヒトの細胞から血管を組み立て、人への移植を目指している。本物そっくりの臓器をいかに実現するかは大きな課題だ。3Dプリンターの活用は有力な手立てで、すでに先陣争いが始まっている。3Dプリンターはまず、ものづくりの現場で脚光を浴びた。樹脂などを熱や光で加工し、いとも簡単に立体部品に仕立てる。臓器すらもつくれる時代が間近に迫り、遠くない未来に臓器は「量産品」に変わる。衰えたり傷んだりした臓器は、スペア(予備)の臓器と取り換え、命あるかぎり補える。そうなれば、私たちの肉体は朽ちるだけのものではなくなる。フランス生まれの外科医アレクシス・カレルが血管をつなぎ合わせる技術を究め、臓器移植への道を開いてノーベル生理学・医学賞を受賞したのが1912年。60年代から始まったとされる移植医療は、深刻な臓器不足に直面する。腎不全患者などが望む腎臓移植は、国内では年間1500件前後。約8割が健康な人からの提供で、1万人以上の患者が移植を待つ。量産臓器が既存の移植医療を一変させるのは確かだ。ディスラプション(創造的破壊)のインパクトはそれだけにとどまらない。研究者の一人はいう。「私は歯を器具(インプラント)に置き換えたが、臓器だって同じ。どこか壊れたら取り換えるだけだ。おかしなことではない」。国内外で、肝臓や心臓など内臓の8割以上が臓器再生の研究対象になっている。最先端技術は、肉体をどこまでも入れ替えるだけの潜在力を秘めている。人類は幾多の技術進歩を目の当たりにしてきた。いつの時代も、生まれ落ちた本来の体を取り戻すことが医療の最大の使命だった。今の臓器移植も自らの体の一部を補うだけだ。ところが、これからは自分の肉体が新たな肉体に次々と置き換わる。自分の肉体の大半が新しい臓器で満たされたら、私自身でありえるのか。生まれながらの私ではないのだから、私と名乗ってはいけないのだろうか。人類史上、ほとんど意識したことのなかった問いにさいなまれる。新たな肉体が私でないとしたら、私が私でなくなる日は近づいている。東京大学の中内啓光特任教授は「今から30年もすると、長生きしている人の多くは新たな技術で体を補い、生まれた時のままの体でいる人は少数派になっているだろう」とみる。そして、量産した臓器は、治療の選択肢として珍しくはなくなる。 ■どこまで「自分」でいられるか 中内特任教授は、驚くような方法で自然な臓器をつくろうとしている。ブタの受精卵にヒトのiPS細胞を仕込み、本来はブタの胎児が持つ膵臓(すいぞう)や腎臓をヒトのものに置き換える計画を温める。生まれたブタからヒトの臓器を取り出し、移植を待ちわびる患者を救うのだという。19年秋からはマウスの受精卵にヒトのiPS細胞を入れ、きちんと育つかどうかを調べる実験に取りかかった。私が少しでも私であり続けるため、本人のiPS細胞でできた臓器の作製が最終目標だ。あなたはどこまであなたでいられるのだろうか。哲学に詳しい京都大学の沢井努特定助教は、臓器移植が思うがままにできるようになったとき「外から取り込んだ組織が一定割合を超えたころから、自然(な自分)かそうじゃないかの議論が起こりうるのではないか」と推測する。ただ「心臓の働きを補うペースメーカーを埋め込むと、機械であるにもかかわらず自分の肉体の一部のように愛着をもつ人もいる」とし、臓器を交換しながらも私は私のままと感じる人はいると考えている。東大の中内特任教授の答えはこうだ。「体の大部分が他人から提供された臓器や機械に取り換えられても、脳が置き換えられない限り『自己』の意識は存在する」。防衛医科大学のチームは最近、血小板や赤血球の働きをする人工血液を開発した。大量出血で死にそうな10匹のウサギに「輸血」したところ、6匹の命が永らえたという。人工なので血液型とは無縁だ。研究成果が公になると「血液型占いはどうなっちゃうの?」「輸血したら自分じゃなくなっちゃう?」と多くの反響を呼んだ。技術の進歩によって現代人が自問自答しなければならないテーマがまた1つ増えた。 *2-4-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/500209/ (西日本新聞 2019/4/5) ブタを使って人の腎臓再生 慈恵医大、iPS細胞で 東京慈恵医大と大日本住友製薬は5日、人工多能性幹細胞(iPS細胞)とブタの胎児組織を使って、人の体内で腎臓を作る再生医療の共同研究を始めたと発表した。サルで安全性や効果を確認した後、3年後に人での臨床研究に進み、2020年代に実用化を目指す。慈恵医大の横尾隆教授は「将来的に臓器移植に代わる治療法にしたい」と話している。ただブタの細胞を体内に入れることから予期せぬ問題が起こる懸念があり、慎重な実施を求める声もある。腎臓は、尿管や糸球体など複雑な構造を持つため、iPS細胞から作るのは難しいと考えられてきた。 *2-4-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/o/506443/ (西日本新聞 2019/4/28) ブタ体内で人の膵臓、iPS利用 東大が年度内にも実施、国内初 東京大の中内啓光特任教授は28日までに、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って、ブタの体内で人の膵臓をつくる研究を実施する方針を明らかにした。将来、移植医療用として使うのが目的。学内の倫理委員会と国の専門委員会による2段階審査で認められれば、2019年度中にも国内で初めて人の臓器を持つ動物をつくる実験に着手する。臓器移植を希望する人に対して、提供者が少ない状態は慢性的に続いており、中内氏は「まずは品質を確かめる。10年以内に治療に役立てたい」と話している。 *2-4-4:https://www.nikkei.com/paper/related-article/tc/?b=20191002&bu=・・・ (日経新聞 2019/9/16) 再生医療 細胞除去し「骨格」だけ活用 京大は皮膚/慶大が肝臓 再生医療などによる病気治療に、組織や臓器の骨組みだけを活用する研究開発が進んでいる。再生医療では幹細胞を目的の細胞に育てて移植する研究が多いが、臓器まで作るのは難しい。このため組織の細胞を薬などで除去する脱細胞化技術を使い、残った骨格を移植することで早期の臨床応用につなげる狙いだ。京都大学の森本尚樹教授と国立循環器病研究センターの山岡哲二部長らは生まれつき大きなほくろを持つ「先天性巨大色素性母斑」患者の皮膚を再生する臨床研究を実施中だ。放置すると悪性黒色腫になる恐れがある母斑は皮膚の真皮部分にあるが、細胞培養技術でも真皮の再生は難しい。新手法は患部を切り取り2000気圧で10分間処理する。母斑も含め細胞は死ぬが真皮組織の骨格は残る。これを患部に戻す。後日、患者の培養した表皮を移植する。「真皮がないと表皮は定着しないため、母斑組織を殺した上で真皮を再利用する」(森本教授)。現在までに10例実施。真皮に血流が復活し皮膚全体も機能しているのを確認した。1年の経過観察を終え、治療効果を評価中だ。慶応義塾大学の八木洋専任講師、北川雄光教授らは肝臓の新しい再生医療の実現を目指す。肝臓を界面活性剤などで脱細胞化して洗い流すと、臓器の立体構造を支える骨格だけが残る。肝臓内の血管や管の構造も維持されている。そこに人のiPS細胞から育てた肝細胞や血管内皮細胞などを入れれば大型の立体臓器が作れ、血管をつなぐことができると考えた。日本人の肝臓と大きさや構造が似ているブタの肝臓から骨格を作る想定で10~15年後の実用化が目標だ。現在は日本医療研究開発機構の支援を受け実験を重ねている。iPS細胞から肝臓細胞を作る技術を持つ大阪大学の水口裕之教授の協力も得て進めている。八木講師は「重症の肝硬変患者向けに、生体肝移植とは異なる新たな移植治療を普及させたい」と話す。阪大の澤芳樹教授らは心臓移植を受けた患者などから不要になった元の心臓弁を提供してもらい、脱細胞化し弁の構造だけを残して別の患者に再利用する手術を臨床研究として実施している。動物の弁などを利用する人工心臓弁に比べて耐久性が高いと考えられる。移植した患者自身の細胞が脱細胞化弁に入り込んで自己組織化されるため拒絶反応も起きにくい。医師主導臨床試験(治験)を計画中だ。脱細胞化技術は死亡した人から提供された臓器や骨、皮膚などを治療に用いる移植医療が盛んな米国で進んでいる。東京医科歯科大学の岸田晶夫教授は「約20年前から製品化され始めた」と話す。日本でも厚生労働省が2019年5月に製品評価のためのガイドラインを公表した。作成に携わった岸田教授は「海外製品が数多く入ってきたときに評価しやすいような枠組みを作った」と話す。そのうえで「自国製品を作らないと海外に後れを取る」と危機感を募らせる。iPS細胞や免疫研究など日本が強みを持つ分野と組み合わせた研究開発が競争力につながると訴える。 *2-4-5:https://www.nikkei.com/paper/related-article/?b=20191002&c=DM1&d=0&nbm=・・ (日経新聞 2019年10月2日) 可能性と倫理のはざまで 創造的破壊の陰には、端緒となる大発見や研究成果がある。人類が肉体を補い続ける新たな手段を獲得し、さらに高みに上らんとできるのは、あらゆる細胞に育つiPS細胞が登場したからだ。iPS細胞は、京都大学の山中伸弥教授が2007年にヒトの細胞での作製に成功し、12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。全国約1800人を対象とした内閣府の調査(17年)では、iPS細胞など再生医療に関するイノベーションによって病気やケガなどの治療技術が進歩すると考える人が9割を超えた。14年には、日本の理化学研究所などが目の難病「加齢黄斑変性」の患者にiPS細胞から育てた細胞を初めて移植した。一般の人々の目に映る医療の姿は、iPS細胞の誕生前後でがらりと変わった。異次元のイノベーションは破壊や急速な変化を伴うだけに、それまでの時代とのあつれきは避けられない。人の臓器を「量産」する試みには、期待や畏怖の念などさまざまな反応が寄せられる。東京大学の中内啓光特任教授の研究は今でこそ国も認めるが、10年に構想を発表したときは世界で議論が巻き起こった。京都大学iPS細胞研究所上広倫理研究部門の藤田みさお特定教授は「動物を使ってヒトの臓器の作製を目指す研究は新しく、議論すべき対象になっている」と指摘する。地殻変動を引き起こしたiPS細胞の「生みの親」である山中教授はどんな思いなのだろうか。山中教授が監修した書籍「科学知と人文知の接点」(弘文堂)に、複雑な心境が垣間見える。ヒトのiPS細胞をつくった後の苦悩を明かし、「大きな倫理的課題を生み出したことに気づき茫然(ぼうぜん)としたことを覚えている。(中略)どのような研究にも、光と影がある。うまく使えば人類の福音となるが、使い方を誤ると人類の脅威となる」と吐露した。イノベーションは、その後の新しい時代を生きる人類に相応の責任と覚悟を迫っている。 <精神医療における過剰診断と人権・教育> PS(2019年10月4日追加):*3-1の発達障害という言葉を近年よく聞くようになったが、これらが“病気”として統計に現れるようになったのは、下の図の上の段の左図のように平成18年以降であり、それまではなかった。さらに、*3-1は、診断レベルとされていないが本来は診断レベルの「グレーゾーン」があるとしており、その障害の中には外見上は健常者にみえるタイプがあり、「彼らは他者との違いが理解できるため最もつらい思いをしている」などとしているが、外見上、健常者に見えるのなら何ら問題はない上、DNAが違うのだから他者と違うのは当然だ。さらに、上の段の中央の図のように小学生の数が減っているのに、上の段の右図のように、“障害者”を増やして特別支援教育をすることの方が大きな問題である。 なお、*3-1は、ASDの特性を①物事や手順へのこだわりが強い ②コミュニケーションが苦手 ③予想外のことが起こるとパニックを起こす ③ADHDには、落とし物・忘れ物が多い ④じっとしているのが苦痛 ⑤感情を抑えられない ⑥全てにバランスのとれた人はいないので、誰もがグレー としているが、この特性の捉え方自体が躾や習慣の悪さを正当化しながら、“普通(バランスよく不完全?)”が最善だという信仰のような考え方をしている。しかし、このようにして特別支援教育を受ける子どもを増やせば、“普通”の人には理解できない突き抜けた才能を活かすことはできないし、その子の機会を奪うことにもなる。 このように何でも精神障害に仕立てた結果、日本は精神病患者の在院日数が下の段の左図のように先進諸外国と比較して飛びぬけて長く、さらに、*3-2のように身体拘束もしており、これは人権侵害である。また、下の段の右図のように、日本は人口当たりの精神科ベッド数が先進国最多であり、問われるべきは日本人の良識・精神障害者に対する差別意識・日本の精神医療の在り方・精神科ベッド数の多さなのだ。 ![]() 障害別通級指導の児童生徒数 小学校児童数の推移 段階別特別支援学校在籍者数 ![]() 精神病床の平均在院日数推移国際比較 精神ケア病床数推移国際比較 *3-1:https://www.sankei.com/west/news/190824/wst1908240003-n1.html (産経新聞 2019.8.24) 発達障害の「グレーゾーン」 実際には診断レベルも 見落とされやすいタイプのASD 発達障害をめぐり、近年、「グレーゾーン」という言葉がよく使われるようになった。一般的に、発達障害の傾向はあるが診断レベルではないことを意味する。だが専門家からは、本来であれば診断レベルにありながら見落とされているケースもあると指摘する声も。特に発達障害の一つ、自閉症スペクトラム障害(ASD)の中には、外見上は健常者にみえるタイプがあり、「彼らは他者との違いが理解できるために、最もつらい思いをしている」と訴える。 ■ある意味、誰もがグレー 発達障害は、ASDや注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの総称。主な特性として、ASDには、物事や手順へのこだわりが強い▽コミュニケーションが苦手▽予想外のことが起こるとパニックを起こす。ADHDには、落とし物・忘れ物が多い▽じっとしているのが苦痛▽感情を抑えられない-などがあるが、人によってさまざまだ。「人はだいたい、ASDかADHDのどちらかだ」と話すのは、発達障害を専門とする「どんぐり発達クリニック」(東京)の宮尾益知(ますとも)院長。誰もがASDやADHDの素質を部分的に持ち、それが特技や仕事の向き不向きにつながるもので、「全てにバランスのとれた人はいない。そういう意味では、誰もがグレーといえる」。ただし、その素質のために社会生活に支障をきたしている場合は「障害」と診断され、必要な支援を受けることができるようになるとする。 ■ASDの中の3タイプ だが、実際に医師らからグレーゾーンとされている人について、発達障害に詳しい京都大の十一元三教授は「専門医が診れば発達障害、特にASDの診断がつく人が多い」と指摘する。 *3-2:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20190218_4.html (京都新聞 2019年2月18日) 精神科の拘束 医療の在り方見直しを 精神科病院で手足をベッドにくくりつけるなどの身体拘束を受けた入院患者が、10年間で2倍近くに急増していることが厚生労働省の調査で分かった。2017年度の年次調査によると、全国で1万2千人強にのぼる。調査方法が変わったため単純比較はできないものの、03年度の5千人強から増加の一途だ。施錠された保護室に隔離された患者も1万3千人近くに増えている。本来は極めて限定的な場合だけに認められる身体拘束が、安易に行われている可能性がある。拘束は、患者がさらに精神的に不安定になる悪循環を招く。人権侵害の恐れにとどまらず、長期間の拘束によるエコノミークラス症候群などで死亡し、訴訟になるケースも起きている。問われているのは、日本の精神医療の在り方である。日本は人口当たりの精神科ベッド数が先進国で最多であり、必要がないのに長期入院を続ける「社会的入院」が生じやすいとされる。平均入院日数も、身体拘束の期間も突出して長い。諸外国では施設を脱して地域で暮らしながら治療する流れが一般的だ。イタリアのように精神科病院をなくした国もある。身体拘束が増えるのは逆行している。厚労省は「増加の原因は分析できていない。不要な拘束などをしないよう引き続き求めていく」としている。だが、実態を詳しく調査し、状況の改善に本腰を入れるべきではないか。拘束が適切かどうかを第三者が検証できる仕組みが求められる。「閉鎖的」と言われがちな日本の精神医療を見直し、透明化するきっかけとしてほしい。現場の人手不足が身体拘束の一因との声もある。一般病床と比べて少ない医師や看護師の配置を増やす必要がある。さらに気になるのは、患者に対する意識の問題だ。「(患者への対応のため)精神科医に拳銃を持たせてくれ」。昨年6月、日本精神科病院協会の会長が機関誌に、部下の医師のそんな発言を引用して載せていたことが問題となった。精神疾患はいつ、だれが発症してもおかしくない。認知症による入院も増えている。それなのに、日本では患者に対する差別意識が残り、精神医療の問題をタブー視して遠ざける感覚も根強いとされる。身体を拘束される人が増える社会は健全とはいえない。一人一人が関心を持ちたい。 PS(2019年10月5、6、7日追加):*4-1のように、佐賀県基山町に対馬藩の藩校名をとった東明館中高一貫校があり、佐賀県が教育に力を入れているのはよいことだ。その生徒数が中高で370人しかおらず定員(900人)を大きく割り込んだのは、近くに佐賀西高校・弘学館高校などの進学校が多く、生徒や保護者がより進学実績の高い高校を選択するのが原因であって、つめ込み教育をするのが原因ではない。早稲田佐賀中高一貫校は、一定割合の生徒が早稲田大学に入試なしで進学できるのが人気を博している大きな理由だ。しかし、知識も理論も、初等中等教育で学ぶことはしっかり身に着けておかなければ大学に行っても授業内容を吸収できない。つまり、知識をつめ込むのがいけないのではなく、知識を背後にある理屈も考えずに丸暗記するのが理解も応用的展開もできないためいけないのであり、これでは優れた研究開発など望むべくもない。従って、先生の要件は、知識を背後にある理屈とともにわかりやすく解説でき、生徒にも自ら考えることを促せる人で、そのための実力と識見を有していること になるのである。 このような中、*4-2のように、目黒虐待死事件で、父親が「①理想を押しつけた」などと弁解しているが、「②勉強してなかった」「③食事をいっぱい食べてた」と聞いて、5歳の子どもに食事制限を始め、死ぬほどの暴力を振るったのがこの事件である。このうちの②については、まだ5歳であることを考えれば文字を書けるだけでも上出来で、③については、幼児や成長期の児童・生徒に栄養バランスを考えて食事を多く食べさせるのが基本中の基本であるため、食事制限をするのは母親も含めて無知すぎる。そのため、①のように、「理想を押しつけた」とするのは、「理想」の内容が疑問である上、「理想」という言葉に失礼だ。つまり、このような栄養学の基礎知識は中学・高校の家庭科で教えているため、きちんと勉強して理解し覚えておくことが、判断を間違わないため誰にとっても必要なことなのだ。 しかし、児童相談所も「忙しかった」「引っ越して前の児童相談所から情報が来なかった」等の弁解が多く役に立っていなかったが、*4-3のように、改正児童福祉法で2022年4月(先の話)から全ての児童相談所に医師の配置が義務付けられて医療と連携することになり、法医学者が関わって虐待を早期発見できるようになったのは進歩だ。今後は、親に育てる力がなく危うい目にあっている子を親から引き離した場合に、きちんと育てられるシステムの整備が必要だ。 この子育てシステムには、現在は乳児院・児童養護施設(86.6%利用)と里親制度(13.3%利用)があり(https://npojcsa.com/foster_parents/index.html 参照)、「里親制度」とは、育てることができない親に代わって一時的に家庭内で子を養育する制度で里親と子の間に法的な親子関係はなく、実親が親権を持ったまま里親に里親手当てや養育費が自治体から支給されるものだ。一方、「養子縁組」は民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度で、養親が子の親権を持ち養育費等は支給されない(https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/happy_yurikago/infographics 参照)。私は、親に子を育てる能力や判断力がない場合には、「養子縁組」の方が子のためになると思うし、自分の子は既に家を離れて部屋も空いているのでもう1~2人養子を育ててもよいと思う夫婦は少なからずいると思うが、そのためには幼保無償化・義務教育の無償化をはじめ高等教育の低コスト化が必要なのである。そのため、*4-4のように、たいした所得でもないのに「所得が高い」とターゲットにして小さな“不公平”を言い立てるのではなく、子を育てるのに多額の金がかからない社会にすべきだと考える。 なお、*4-5には、「①これまで保育料に含まれていた副食費が無償化対象外になった」「②自治体が担ってきた徴収業務を直接保育園が行うことになった」「③これまでも絵本代など保護者から月千円前後を徴収してきた」「④副食費の徴収に口座振替を活用する園がある」「⑤副食費を巡っては『子育て支援の充実』『施設側の負担軽減』を理由に自治体が独自に助成するケースもある」等が書かれているが、食事は栄養バランスが大切なのに、食費を主食費と副食費に分けたり、主食を家から持参させたりするというのには呆れた。何故なら、子の成長にはむしろ“副食”の蛋白質・カルシウム・ビタミン類の方が重要であるし、“主食”を家から持参させれば保護者は手を省けないからである。さらに、③がこれまで保育料に含まれていなかったというのにも驚いたが、保育園も③のように集金していたのなら集金はできるので、②は問題なく、④のように口座振替を使う方法もある。また、ふるさと寄付金を活用して、⑤のように子育て支援を充実させるのも地域色が出てよいだろう。 さらに、*4-6のように、北海道新聞が社説で、「質の悪い保育の悪影響は成人後にも及び、国の基準は3~5歳では先進国の水準に及ばないため、子どもの健全な発達を保障する幼児教育や質の確保も緩みなく」としており、今後は質の高い幼児教育という視点も重要である。 *4-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14206205.html (朝日新聞 2019年10月5日) (けいざい+)続・奇跡の高校:4 学校再建、佐賀でも託され 「お願いがあるのですが……」。札幌新陽高校(札幌市)校長の荒井優(44)に5月、旧知の立命館慶祥高校(北海道江別市)の校長から連絡が入った。佐賀県基山町にある私立東明館中学、高校の理事長になってくれないかという。新陽高校を再建した手腕を買われてのオファーだった。札幌から佐賀まで1700キロ、片道6時間。新陽はようやく黒字化が見えたばかり。相談すると新陽の全員が反対だった。だが荒井は「むげにできない」と7月、東明館の理事長を兼務した。福岡県境にある基山町は旧対馬藩の飛び地で、東明館は対馬藩の藩校名をとって1988年に開学。中高6年制の進学校で、卒業生の1割は医師だ。しかし、この10年余は生徒数が減り、進学実績も振るわない。周辺の久留米大附設(福岡県久留米市)や弘学館(佐賀市)が男子校から共学になって人気を集め、早稲田佐賀(佐賀県唐津市)や上智福岡(福岡市)など有名大の系列校もできた。東明館の生徒数は中高合わせ370人で、定員(900人)を大きく割り込む。2015年から立命館の支援を受けてきたものの、危機的な状況は、荒井が新陽の校長に就任したときと似ている。荒井にとって縁がある土地だ。基山町の隣の鳥栖市は、かつて仕えた孫正義の故郷。ソフトバンク時代には、福島第一原発事故の被災者を九州に避難させる計画作りにもかかわった。孫は子どものころ、ほかの子に解き方を教えるのが得意で、先生になるのが夢だった。荒井は偶然にも、かつてのボスの夢を追う。東明館理事長に就いたことを孫にメールで伝えると、「すごいね! 頑張って」と返信がきた。まず生徒を増やさなければならない。荒井は9月21日、東明館のオープンスクールで「21世紀型進学校をめざします」と来場者に語りかけた。九州の進学校では、朝からの補習や1日7コマの授業など「つめ込み教育」をするところが珍しくない。そこで来年度に新設するのが、新陽でも採用した「探究コース」。暗記重視の座学ではなく、生徒が自主的にテーマ設定し、課題解決を目指す学習だ。従来の教育熱心な保護者だけでなく、今までの教育に飽き足らない層を取り込むことも狙っている。見学に来た小5の父は「つめ込み式じゃないのが魅力」と荒井にひかれた。小6の孫の進学先として検討する祖父母も「Tシャツ姿の理事長さんが面白そう」。知名度も実績もこれからだが、荒井に助言する京都造形芸大副学長の本間正人は「いろんな人を巻き込む魅力と引力が桁外れ。今後の教育界を背負う五指に入る」と彼を買う。「折り入ってお話が……」。荒井のもとに学校再建を託したいという依頼がその後も舞い込んでいる。 *4-2:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14206334.html (朝日新聞 2019年10月5日) 父「理想、押しつけた」 目黒虐待死、法廷で謝罪 東京都目黒区で船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5)が虐待死したとされる事件の裁判員裁判が4日、東京地裁であった。保護責任者遺棄致死などの罪に問われた父親の雄大被告(34)は、亡くなる直前の結愛ちゃんの気持ちを検察官に問われ、「言い表せない深い悲しみ、怒りの中にいたんじゃないか」と陳述。「親になろうとしてごめんなさい」と泣きながら謝罪した。雄大被告は「思い描いた理想を結愛に押しつけてきた。エゴ(自分勝手)が強すぎた」と事件の原因を分析。結愛ちゃんが「ゆるしてください」などと書いたノートを見た感想を問われると、「私の機嫌をとるためだけに書かされたという印象」と答えた。雄大被告によると、2016年4月、公園でシーソーの乗り方も知らず、さびしそうな表情を見せた結愛ちゃんに「父親が必要だ」と思い、母親の優里(ゆり)被告(27)と結婚。「笑顔の多い明るい家庭に」と理想を描いたが、血のつながりがないことを負い目に感じ、それをはね返そうと必要以上にしつけを厳しくした。歯磨きや「食事への執着」について結愛ちゃんを直接しかるようになり、改まらないと「焦りやいらだちが暴力に向かった」。雄大被告は仕事を求めて香川県から東京都に転居。18年1月に東京で母子と合流した後、結愛ちゃんから「勉強してなかった」「食事をいっぱい食べてた」などと聞いて怒りが爆発し、食事制限を始めたという。2月下旬には、勉強を命じたのに無視して寝ようとしたことに激怒。馬乗りになって騒がないように口をふさぎ、「謝れ」と怒鳴ってシャワーで水を浴びせ、顔を複数回殴ったと説明した。死亡直前、嘔吐(おうと)を繰り返した結愛ちゃんを病院に連れて行かなかったことについては、「虐待の発覚を恐れる保身の気持ちが強かった。ありえない判断だった」と反省の弁を述べた。一方で、香川の児童相談所の職員から面会時に「血がつながってないから(実子の弟と)差別しているのでは」と言われたと不満をあらわに。児相を信頼できず、転居先の東京の住所を教えなかったと明かした。 *4-3:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/548492/ (西日本新聞 2019/10/4) 法医学の目 虐待見逃さない 傷の原因を見極め/人手不足が課題 児童虐待が深刻化する中、遺体解剖のイメージが強い法医学者が関わり子どもの命を救おうとする取り組みが始まっている。傷やあざから原因を特定する専門性を生かし、虐待が疑われる子どもの早期保護や支援につなげる。6月に成立した改正児童福祉法では、2022年4月から全ての児童相談所に医師の配置を義務付けるなど、医療との連携は欠かせなくなっている。児相関係者は「虐待の見逃しを防ぐため、科学的視点で助言をくれる心強い存在」と期待を寄せる。 * 「園児の顔にあざがある」。長崎県内の保育施設から、長崎市の県長崎こども・女性・障害者支援センター(児相)に通告があった。幼児は「パンチしたの」と話すばかりで要領を得ない。児相は虐待を疑い、幼児を一時保護した。父親は「寝ぼけて家具にぶつけたのだろう」と説明したが、児相は不審に思い長崎大法医学教室に連絡した。幼児のあざを確認した法医学者の意見は「歩いている時に打ってできるものではない。押されたり蹴られたりした反動で何かにぶつかるなどしてできた可能性がある」。大人の力が加わっている疑いが強まった。児相は身体的虐待があったと判断して支援を継続。定期的に面会する中で、父親は暴力を認めたという。近所の住民から「泣き声が激しい」と通告を受けた別のケースでは、児相職員が保育施設で幼児の体を確認すると、あざのような皮膚の変色が複数あった。写真を撮り、同教室にメール送信。法医学者が写真を見た上で、施設に駆け付け目視すると、あざではなく悪化した湿疹と分かった。 ** 今年6月に札幌市で2歳女児が衰弱死、8月には鹿児島県出水市で4歳女児が溺死した事件があった。児相などの行政機関が傷やあざを把握しながら一時保護につながらず、幼い命が失われるケースは後を絶たない。幼児は自ら説明できず、学齢期でも親から口止めされたりかばったりして虐待の痕跡を隠そうとしがちだ。大人が正しく見極める必要があるが、児相職員も含め経験が十分ではない。見逃しを防ごうと、長崎県では約10年前から長崎大法医学教室と2カ所の児相が連携し始めた。病院や保育施設などから通告を受けた児童相談所が判断に迷ったら、法医学者に傷の写真を見てもらったり、目視で確認してもらったりする。昨年は22人、今年は8月末までに17人の子どもが対象になった。「軽傷で『自分でぶつけた』などと保護者に流ちょうに説明されると、職員は納得してしまいがちだ。法医学者の科学的な見解があると、確信を持って支援や保護を始められる」と柿田多佳子・同センター所長(60)は意義を強調する。同教室の池松和哉教授(48)は「子どもは傷の治りが早く、悠長に様子を見ていては虐待の兆候を見落とし、支援のタイミングを逃してしまう。親子を支えるきっかけになれば」と話す。福岡市こども総合相談センター(児相)も、九州大と福岡大の法医学者に診察を委嘱する形で同様の取り組みを行い、昨年は26人の子どもについて意見を聞いた。福岡県久留米児相(久留米市)や同県大牟田児相(大牟田市)なども年に数件、法医学者の力を借りることがあるという。千葉大病院(千葉市)は昨年7月、児相や警察が虐待の疑いで保護した子どもを法医学専門の医師が診察する「臨床法医外来」を、全国で初めて開設した。 *** 今年3月に閣議決定された新たな虐待防止策には、児相と法医学者などとの連携強化も盛り込まれた。ただこうした取り組みを全国に広げるには課題がある。日本法医学会によると、司法解剖などの実務に携わる法医学者は約200人。警察が、18年に事件事故や自殺で死亡し「異状死」として取り扱った遺体約17万体のうち、死因究明のために解剖されたのは約2万体で約12%(警察庁調べ)。“本業”も十分カバーできていない中で、「虐待予防に人手を割く余裕はない」との声が現場から上がることもあるという。児相に協力している同学会前理事長の池田典昭九州大教授(63)によると、親が「風呂場で熱いお湯がかかった」と説明しても、服の上から熱湯をかけなければできないやけどの特徴が見られたりする。傷痕から受傷の経緯を分析するのは、小児科医や外科医では難しい。池田教授は「まず人手不足を解消する必要があるが、命を救うために法医学ができることはたくさんある」と話している。 *4-4:https://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20191006_3.html (京都新聞 2019年10月6日) 幼保無償化 不公平をなくす見直しを 幼児教育・保育の無償化が始まった。消費税率10%への引き上げに合わせ、増収分の一部を活用した少子化対策だ。安倍晋三政権が掲げる「全世代型」社会保障の看板政策といえる。認可保育所や幼稚園、認定こども園に通う全ての3~5歳児と、住民税非課税世帯の0~2歳児の保育料が原則無料になった。子育て費用が軽くなるのは保護者にとって助かるだろう。ただ、政権主導で急ごしらえした制度と保育現場にずれが多く、不安を残したままのスタートとなったのは否めない。象徴的な問題の一つが、給食の副食(おかず)費の扱いだろう。副食費はこれまで保育料に含まれていたが、国は無償化の対象外として非課税世帯などを除いて実費負担を求めたからだ。保育料は、収入に応じて段階的に設定されてきた。低所得者は以前から減免されており、無償化の恩恵は小さいのに定額の実費が増えると負担感は重い。かえって出費超となる「逆転現象」の恐れもある。こうした事態を防ぐため、京都府は9月議会で新たに市町村による副食費支援への助成費を設けた。どこまで負担軽減をするかは市町村の判断で、地域格差が広がる可能性もある。無償化される幼保施設の線引きにも不満が根強い。インターナショナル校や民族学校は「各種学校」だとして対象外にされたが、保護者らは「同じ権利を認めて」と訴えている。希望しても認可施設に入れない待機児童は恩恵がないばかりか、状況の悪化が危惧される。全国の待機児童は4月時点で約1万6千人、「潜在的」な待機も約7万4千人いる。さらに無償化が新たな保育需要を掘り起こし、自治体による受け皿拡大が追いつかない恐れが高い。このため国は無償化から当初は外していた無認可保育施設を5年期限で補助対象に加えた。独自財源で補助上限額を引き上げるなどする自治体も多い。だが、保育士の数や設置面積などが不十分な無認可に広げることで、子どもの安全や保育の質の低下が懸念されている。京都市は補助期間を1年半に短縮し、無認可施設が早期に国基準を満たすよう促す方針だ。保育士不足は全国的に深刻さを増している。資格を持つ「潜在保育士」の掘り起こしなど官民挙げた確保策が必要だろう。一部の保育所や幼稚園では無償化に合わせ、「便乗」が疑われる値上げも見られた。理由に挙げられる保育士の待遇改善や環境整備に使われているか、行政はしっかり監視してほしい。不安が拭えないのは、どんな保育の受け皿や「質」が必要かの検討がなおざりのまま進められた結果といわざるをえない。幼保無償化には年間約7760億円が充てられる。財源となる消費増税は全ての人が負担するのに、一律の無償化は所得の高い人ほど受益が大きいという根本的な矛盾に不公平感が渦巻いている。本当に必要とする子育て世帯に恩恵が行き渡るよう不断の見直しが必要だろう。 *4-5:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/549108/ (西日本新聞 2019/10/7) 無償化対象外、おかず代不安 保育園、新たに徴収業務 「未納でも食べさせないと」 消費税率10%への引き上げを財源として1日から始まった幼児教育・保育の無償化では、これまで保育料に含まれていた副食費(おかず代など)は無償化の対象から外れ、自治体が担ってきた徴収業務を直接保育園が行うことになった。新たに滞納への対処が必要になるほか、事務負担増も見込まれており、現場からは不安の声が上がっている。「滞納した子の給食を出さないわけにはいかない。これまでも絵本代などで保護者から月千円前後を徴収してきたが、集める金額も大きくなる。問題なくできるだろうか」。約160人の児童を預かる福岡市城南区の信明保育園の高山英樹園長は頭を悩ませる。昼食の主食(ごはんなど)は各園児が持参し、副食を給食として提供する。今月からは副食費として同園が月4500円を実費徴収することになった。最大の懸念は「滞納への対応」。これまでは副食費は保育料に含まれて市が徴収していた。滞納があった場合でも市から園に渡される委託費は減額されず、保育や給食の質は確保されてきた。 ▼「自腹」負担も だが、今後は副食費の滞納分がそのまま園の負担となる。「督促することによって保護者との関係が悪くなる恐れもあり、なかなか言いにくい。1年間滞納すると1人5万円ほど。決して小さな金額ではない」。市によると保育料の未納は年間1億円ほどに上る。国は、無償化から副食費を外した理由について「食費を保護者が負担してきた幼稚園や義務教育の学校給食との公平性確保」「在宅で子育てする場合でも必要な費用だ」などと説明する。従来通り自治体が徴収を代行することは「制度上できない」という。福岡市内では、副食費の徴収に口座振替を活用する園があるなど、各園が模索する。福岡市保育協会の篠原敬一理事長は「大規模な制度改革で国の対応は遅れた面もあるが、無償化自体はとても良いこと。試行錯誤しながらやっていくしかない」と話す。 ■自治体の独自助成じわり 副食費を巡っては、「子育て支援の充実」や「施設側の負担軽減」を理由に自治体が独自に助成するケースもある。福岡県内では田川市や大任町などが幼稚園、保育園問わず副食費として1人月4500円を上限に施設側に助成している。九州各県によると、長崎県で21市町中6市町、宮崎県で26市町村中3町村が無償化にする方向という。秋田県内では半数以上の15市町村が県との共同事業に自治体独自の助成を上乗せして全面的に無償化する。県の担当者は「秋田は全国一の人口減少県。歯止めをかけるための経済的支援になればと力を入れている」と話す。一方、人口規模の大きな自治体では今のところ助成の動きは広がっていない。福岡市は第3子以降の副食費は免除しているものの、全児童を対象とした財政支援は行わない方針。市によると、幼稚園、保育園の副食費を全て無償化した場合の費用は年間10億円ほどで「負担が重い」としている。 *4-6:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/352065 (北海道新聞社説 2019.10.7) 幼保無償化 「質」の確保も緩みなく 消費税率引き上げに伴い、幼稚園や保育所などが無償化された。増収分から年間約8千億円を投じ、全ての3~5歳児と低所得世帯の0~2歳児について、利用料の全額または上限まで補助する。一昨年の衆院選の看板政策で「無償化ありき」で実施に至った。待機児童解消は道半ばで、保育士の待遇改善も進んでいない。無償化で需要の掘り起こしが見込まれる上、保育士不足の中で「量」の確保を急いだため、保育の「質」への不安が拭えない。子育て世帯の負担軽減に異論はないが、誰もが安心して公平に享受できることが大前提だろう。既に便乗値上げとみられる動きもある。国と自治体は、待機児童解消を緩みなく進めながら、制度の穴を確実にふさぐ必要がある。無償化の緊急性には、当初から疑問が出ていた。低所得世帯には既に減免制度があり、高所得世帯ほど恩恵が大きくなるからだ。そもそも保育所に入れない待機児童数は4月時点で1万6千人、入所を諦めた潜在的待機児童数は7万人を超え、不公平感は強い。無償化は本来、認可施設が対象だが、反発を受けて国の指導監督基準を満たさない認可外にも広げ、是正に5年間の猶予を認めた。認可外施設は体制が手薄なところも少なくなく、死亡事故の発生率は認可を大きく上回る。このため国は、自治体が条例で無償化対象を制限できるとしたが、認可外が待機児童の受け皿になっている現状では難しかろう。ましてベビーシッターなどは、行政の立ち入り検査もない。やみくもに無償化を急ぎ、安全に疑問のある保育サービスが増える余地を生んだといえる。せめて札幌市のように、認可外施設への指導内容の公表など、情報発信を進めてもらいたい。待機児童対策で、国は次々に基準緩和を進めてきた。だが、切り札とした企業主導型保育所は、手厚い補助を当て込んだ新規参入が相次ぎ、甘い審査で助成金詐取や破綻を許した。一方で、給食費を巡り国の負担が増したとして、肝心の保育士の人件費加算を直前で見送った。ずさんな制度設計のしわ寄せを受けるのは子どもたちだ。質の低い保育の悪影響は成人後にも及ぶとの海外の研究もある。ただでさえ、国の基準は3~5歳では先進国の水準に及ばない。幼児教育をうたう以上、子どもの健全な発達を保障するだけの余裕を現場につくらねばならない。 <介護保険とその財源、エネルギーの再エネ化など> PS(2019年10月13日追加):*5-1のように、「①高齢化で増加する医療費を抑えるため、医療提供体制の見直しが避けられない」「②地域住民の安心を確保できるよう見直す際は地域事情に十分配慮すべき」「③病院ベッド数は人口減少と少子高齢化に伴う人口構成の変化に合わせた機能転換が必要」「④若い世代に多いとされる急病・大けがの手術の際に入院する『高度急性期』『急性期』のベッド数の必要性は低くなる」「⑤脳血管障害・骨折の手術後のリハビリに対応する『回復期』のベッド需要が高まる」「⑥急性期ベッドは看護師配置が手厚く診療報酬が高いが、現状では回復期ベッドが足りずリハビリ中の高齢者が入院している例も多い」「⑦地域医療の将来像は住民本位で」と書いたメディアは多い。しかし、(私が大学で習って衆議院議員時代に始めた)病院ネットワークの充実は、①の高齢化による医療費の増加を抑えるためではなく、最小のコストで充実した医療を提供するために行うものだ。そのため、②③は当然であるものの、高齢者が増えれば脳血管疾患・心疾患・骨折などが増えて急性期患者の絶対数が増えるため、④は事実でない。また、⑤は事実だが、現在は理学療法士を配備したリハビリ病棟が少ない上、回復期には縦割りの病院間の引っ越しをしなければならないというのも患者にとっては負担であるため、そのまま急性期病棟にいることが多いわけである。また、診療報酬は診療内容によって決まり、急性期の方が高いため、病院は急性期の患者を多く入れた方が利益が多いので、⑥も誤りである。つまり、高齢化に対応するための給付抑制と病院の悪徳性を先入観として持った上で考えると事実と異なる認識で誤った結論を導くのであり、⑦の住民のニーズに合った治療を最低コストで行うためにこそ、病院の再編やネットワーク化は行うべきなのである。 このような中、*5-2のように、つしま医療福祉グループ・江別市・北海道が北海道のモデル事業として「生涯活躍のまち」を整備したり、*5-3のように、JAが主体となって介護保険事業の種類ごとにWGを設置し、現場の情報やノウハウを共有したり、課題解決策を探って事業改善に生かし介護を底上げしたりして地域の声を反映した介護保険制度の充実に繋げようとしたりしているのは、正攻法で期待が持てる。そのため、介護の対象者を組合員だけではなく、一般市民にも開放して欲しいくらいだ。 しかし、厚労省は、*6-1のように、「⑧65歳以上の高所得世帯の介護保険サービスの自己負担月額上限を2~3倍に引き上げる」「⑨介護サービスを利用する時の自己負担は年収に応じて1~3割」「⑩これは介護保険制度の維持が目的」としている。しかし、年収に応じて保険料の支払額を変え、⑧⑨のように、年収に応じて利用料まで変えるのは、食料品の値段を年収に応じて変えるのと同じくらい馬鹿の一つ覚えの応能負担思考だ。また、介護が保険制度である以上、不公正に制度を複雑化させる。さらに、介護状態になり、これから高い年収が入るわけのない人の利用料を上げるという発想は、⑩の介護保険制度の維持どころか介護保険制度の意味を失わせるものである。つまり、*6-2のように、今でも不足している介護保険制度の利用をさらに控えさせることになるため、全世代型社会保障と言うからには、何歳であっても必要な介護を受けられ、介護保険料の支払者は所得のある人全員にすべきなのだ。 この介護サービスは20世紀から必要性が指摘され、21世紀始めの2000年4月1日に、日本で最初に施行されたもので、現在は韓国で2008年から、台湾で2019年からなど公的介護保険制度の運用を開始している国が多い。それにもかかわらず、このような新しいサービスは邪魔者扱いにしてまともに育てることすらできないのが、(特定の首相ではなく)我が国の政府なのである(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/2gou_leaflet.pdf 参照)。そして、主権者は国民自身だ。 なお、介護はじめ社会保障サービスの原資は、(これも馬鹿の一つ覚えのように)消費税だと唱えて決して疑問を持たないメディアが多いが、*7-1・*7-2のようなリチウムイオン電池・太陽光発電・EV(どれも日本発の技術)を組み合わせれば、日本は外国に多額の燃料費を支払うことなく、CO₂を排出しないクリーンなエネルギー体系を作って国民を豊かにすることができた。にもかかわらず、経産省・経団連・原発推進派などの既得権者が逆風を吹かせて予算を無駄遣いしつつ、先駆的企業の経営を危うくし、先駆的企業の技術が日本ではいかされずに海外に先を越されたのである。そのため、そういう状況を変えることなくノーベル賞受賞だけをいくら騒いでも、科学技術創造立国になったり、先進技術を使ったベンチャー企業の育成ができたりするわけはないのだ。ただ、世界の中ではかなり遅れたが、*7-3のように、「再エネ100%のネットワーク」が始動したのは、日本政府の愚かさと比較すれば少しは希望が持てる。 ![]() 2018.4.4朝日新聞 (図の説明:左図のように、65歳以上の被保険者から集める介護保険料は増加の一途を辿り、提供される介護サービスは減少している。また、中央の図のように、介護サービスには、半額の公費が投入されているが、介護保険料を支払っているのは65歳以上と40~64歳のみであり、意味なく複雑である。また、右図のように、団塊の世代が75歳を超える2025年には介護保険料の上昇と介護人材の不足が懸念されているとのことだが、まず所得のある人全員が介護保険料を負担し、全世代が介護を受けられる単純な全世代型社会保障にし、外国人労働者を活用すれば多くの問題が解決しているだろう) ![]() 2019.10.6東京新聞 (図の説明:左図のように、介護を受けた時に支払う介護保険料の割合は、物価高の中ではたいして多くもない所得で2割・3割と増加する。また、右図のように、毎月の上限支払額も所得によって段階的に増えるが、介護と医療は同時に受ける場合が多いため、合わせて一定以下に抑えなければ生活できなくなるのである) *5-1:http://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_41417.html (宮崎日日新聞社説 2019年10月9日) 公的病院再編 ◆地域事情に十分配慮せよ◆ 厚生労働省による再編・統合の検討が必要な全国の公立・公的病院の公表が波紋を呼んでいる。全国1455病院のうち、対象になったのは本県7病院を含む計424病院。高齢化に伴い増加の一途をたどる医療費を抑えるには医療提供体制見直しが避けては通れない。地域住民の安心を確保できるよう、地域事情に十分配慮すべきだろう。病院のベッドに関しては、人口減少と少子高齢化に伴う人口構成の変化に合わせた機能転換が必要だと指摘されてきた。つまり、比較的若い世代に多いとされる急病、大けがの手術の際に入院する「高度急性期」「急性期」ベッドの必要性は低くなる。一方で、脳血管障害や骨折の手術後のリハビリに対応する「回復期」ベッドの需要が高まるとされている。急性期ベッドは看護師配置が手厚く診療報酬が高く支払われる。だが現状では、回復期ベッドが足りず、リハビリ中の高齢者が入院している例も多いとされ、ミスマッチ是正が課題になってきた。この方向に沿って医療提供体制を見直すため、国が各都道府県に策定を求めたのが地域医療構想だ。全国の病院のベッド数は2018年で約125万床だが、同構想では25年に必要なのは約119万床で、削減が可能と思われた。ところが厚労省が全国の病院に報告を求めたところ消極姿勢が目立ち、公立・公的病院はほぼ削減が進まない見通しであることが分かった。このため今回、病院側や都道府県に対し再検討を促すため、病院名の公表に踏み切った。しかし、全国知事会など地方3団体が「地域の不安が増す」などとして反発を強めている。確かに懸念される問題点は多い。第一に、山間へき地、離島への立地や、がんの先進治療など民間病院では限界がある医療を提供するという公立・公的病院ならではの役割は、経済合理性重視で評価を下せるものではない。そもそも患者一人一人の立場になれば、長年頼みの綱にしてきた地域の病院が遠隔地に統合されるなどすれば、不安、不利益は計り知れないだろう。さらには、公立・公的病院の再編・統合により、現状でも深刻な地方の医師不足に拍車が掛かりかねない。それが引き金になって人口減少、過疎化がさらに進む可能性も否定できない。地域医療構想は都道府県が複数の自治体単位で策定し、それを受けて各病院側が具体的なベッド数削減を決めていく。その過程では、地元の医療関係者のほか住民代表らも加わった会議で協議することになっている。地域医療の将来像は住民本位で探っていくべきだ。地域の不安解消に丁寧な議論が必要だ。 *5-2:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/351158?rct=n_hokkaido (北海道新聞 2019年10月3日) 共生のまちづくりへ つしまグループ、江別市、道が協定締結 道は3日、つしま医療福祉グループ(札幌、対馬徳昭代表)と江別市が同市大麻地区で進める「生涯活躍のまち」整備について、全道のモデル事業としての成功に向け、同グループと同市とで3者協定を締結した。事業は、同市が構想を策定。同グループが約3万平方メートルの敷地に、サービス付き高齢者向け住宅や保育所、住民の交流拠点など9種類の施設を建設する。予算は40億円超の見通しで、2021年4月完成予定。道は運営手法などを全道に波及させ、人口減少対策につなげたい考えだ。道庁での締結式で、対馬代表、三好昇市長、鈴木直道知事が協定書に調印。道と同グループは人事交流などを行う。鈴木知事は「全国に誇る先駆的なプロジェクト。成果を全道に広げたい」と述べた。 *5-3:https://www.agrinews.co.jp/p48848.html (日本農業新聞 2019年9月29日) JA主体 介護底上げ 高齢者福祉ネット体制強化 情報やノウハウ6WGで共有へ 介護事業に取り組むJAなどで構成し、高齢者福祉対策を担ってきた「JA高齢者福祉ネットワーク」が、10月から運営方式をJA主体に見直し、活動を強化する。居宅介護支援など介護保険事業の種類ごとに六つのワーキンググループ(WG)を設置。各JAはWGに参加し、情報やノウハウの共有、課題解決策を探り、事業改善に生かす。WGで出た意見や要望は政策提言し、地域の声を反映した介護保険制度の充実につなげていく。ネットワークは、介護事業を展開する全国の約260JA、約50の県中央会と厚生連、12の全国機関で構成し、JAの介護保険事業の中心的な役割を果たしてきた。JA全中が事務局を務め、研修会などを開いてきたが、ネットワーク非会員JAへの全中のアプローチが難しいことや、介護保険事業の収支が厳しさを増していることなどが課題だった。課題解決も含めて、ネットワークの役割などを再検討。従来の参加型の協議会方式から、JAが結集する方式へ転換し、全体で介護保険事業の底上げを目指す。全中は、情報提供や研修会の開催などでJAを後方支援する体制に変更する。介護事業に取り組む全JAに参画を促していく。WGは①経営管理②居宅介護支援③訪問・定期巡回④通所介護⑤小規模多機能⑥介護・医療連携──で構成する。各JAは、それぞれが展開する事業内容と課題に応じてWGに所属する。より濃密で鮮度の高い情報を入手でき、県域を超えたつながりによる新たな事業展開のヒントを得ることに期待がかかる。WGで出た現場の声は、JAグループの政策提言にもつなげる。全中営農・くらし支援部は「WGでは現場からの意見を最優先に吸い上げ、政策提言に生かしたい」と話す。JAグループ全体の介護保険事業の収益は年間で約300億円。業界でも上位規模になる。 *6-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201910/CK2019100602000119.html (東京新聞 2019年10月6日) 高所得者 介護負担増へ 65歳以上、月額上限2~3倍 厚生労働省は五日、膨張する社会保障費抑制のため、主に六十五歳以上の高所得世帯を対象に、介護保険サービスを受ける際の自己負担の月額上限を引き上げる方針を固めた。現在の月額上限は低収入の世帯を除くと四万四千四百円だが、年収約七百七十万円以上の世帯は九万三千円、約千百六十万円以上は十四万百円に増やす。政令改正し二〇二一年度にも導入する。介護保険制度の維持が目的で、比較的余裕がある高齢者に相応の負担を求める。介護サービスを利用した人の自己負担は一~三割。利用者の負担が過重にならないよう「高額介護サービス費」という仕組みがあり、月ごとの自己負担額に上限を設け、超えた分は払い戻してもらえる。現在、上限は住民税課税世帯であれば収入額に関係なく四万四千四百円。今回、これを見直す。具体的には(1)年収約七百七十万円までの世帯の月額上限は四万四千四百円(2)年収約七百七十万~千百六十万円の世帯は九万三千円(3)年収約千百六十万円以上は十四万百円-とする。対象となる六十五歳以上の世帯は数%の見込み。住民税非課税の場合の上限は、現行の世帯二万四千六百円、個人一万五千円を維持する。 *6-2:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/480560 (沖縄タイムス社説 2019年10月7日) [介護保険見直し]「利用控え」広げないか 果たして、これまでのように支援を受けることができるのか。来年の通常国会での法案改正を目指し、政府内で介護保険見直しに向けた議論が進んでいる。並ぶのは利用者の負担を引き上げるいくつもの項目だ。3年に1度実施している制度改正で、厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の部会は、自己負担2割の対象者拡大▽ケアプラン作成の有料化▽自己負担の月額上限引き上げ-などを論点に挙げている。社会保障費を抑制するため、年末までに結論を出すという。65歳以上の全ての高齢者を対象に2000年にスタートした介護保険は、年収に関係なく1割負担でサービスが受けられ、「介護の社会化」に貢献してきた。だが15年に年収280万円以上の人を対象に2割負担が導入され、18年に340万円以上の人は3割に引き上げられた。財務省などは2割負担を原則とするよう求めており、今度の改正で年収要件を引き下げ、2割負担の対象が広がる可能性がある。ただ既に2割に引き上げられた人のうち、3・8%がサービス利用を減らしたり、中止したりしたことが同省の調査で分かっている。「利用控え」の割合は、1割に据え置かれた人の3倍に上った。例えば月2万円の負担が4万円に跳ね上がれば、サービスをためらう人が間違いなく増えるだろう。支援が受けられず重症化しないか心配だ。 ■ ■ ケアプラン作成の有料化も焦点の一つである。ケアプランはサービスに詳しいケアマネジャーに依頼するのが一般的で、誰もが公平にサービスを受けられるよう現在は全て保険からの給付で賄われている。仮に1割負担となった場合、高い人で月に1400円ほど支払うことになる。毎月のことであり決して小さくない額だ。月ごとの自己負担額に上限を設ける「高額介護サービス費」の引き上げも検討されている。住民税課税世帯なら収入に関係なく4万4400円の現行から、年収約770万円以上の世帯は9万3千円、約1160万円以上は14万100円に増やす方針だ。比較的余裕がある層とはいえ、税金などを引かれた後、月5万円から10万円近い支出増は家計へ影響を及ぼす。十分な調査と説明を求めたい。 ■ ■ 18年度の介護保険給付費は10・7兆円で制度開始時の3倍に増加した。団塊世代全員が75歳以上となる25年度は15兆円を超える見込みだ。高齢化の進展に伴う社会保障費の伸びを抑える狙いがあることは理解するものの、利用者の負担が限界に近づいているのも事実である。老後資金2千万円問題などで公的年金制度への不安が高まっている。消費税も10%にアップされたばかりだ。今は健康でも介護を必要とする時期は、多くの人にやってくる。制度が維持されても、生活が成り立たなければ本末転倒である。 *7-1:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14212779.html (朝日新聞 2019年10月10日)電池ビジネス、急拡大 日本メーカーが牽引、競争激化 吉野さんノーベル化学賞 今年のノーベル化学賞に決まった吉野彰・旭化成名誉フェローらが開発したリチウムイオン電池は、用途を広げながら市場拡大を続けている。牽引(けんいん)してきたのは、日本の素材や電機メーカーだ。ただ近年は中国勢が台頭し、競争は激しさを増している。リチウムイオン電池は、電気自動車(EV)やスマートフォンなど向けの需要が伸び、市場規模の拡大が見込まれる。調査会社の富士経済の予測では、2022年の世界市場は7・4兆円で、17年の2・3倍に伸びるという。旭化成は、電池の正極と負極を隔てる膜の「セパレーター」の生産能力が世界一で、市場シェアの約2割を握る。吉野氏の研究成果と同社独自の技術を組み合わせ、1990年代に量産化に着手。20年度までに生産能力を16年度比で8割増やす方針で、工場の増強を計画する。小堀秀毅社長は「リチウムイオン電池が、今後ますます世界の人々の暮らしに役立つものになっていくと期待している」との談話を出した。ほかの主要部材でも日本勢は強い。日立化成は、EV用電池の負極材で世界有数のシェアを誇る。宇部興産は、電気の通り道になる電解液で、耐久性を高める独自の技術を持ち、こちらも世界有数のシェアだ。電池そのものの生産にも、電機メーカーなどが力を入れてきた。東芝は自社のリチウムイオン電池を、スズキの簡易ハイブリッド車や東京メトロの車両の非常用電源向けに納入している。パナソニックは自動車向けに注力し、いまや電池事業の年間売上高は数千億円規模と、冷蔵庫や洗濯機を上回るまでに成長。EV大手の米テスラと組み、米国に電池工場も構えている。ただ、日本勢の地位は揺らいでいる。中国の新興メーカー、寧徳時代新能源科技が、中国政府の支援を受けて急成長し、EV向けの出荷量ではパナソニックを抜いたとされる。17年には日本法人を設立し、営業攻勢をかけている。電気の通り道に液体を使わず、発火のリスクを抑える次世代技術「全固体電池」の開発競争も始まっている。トヨタ自動車はパナソニックと提携し、20年代前半の実用化をめざす。一方、激しい競争の中で撤退に追い込まれる動きも相次ぐ。日産自動車とNECは昨年、共同出資する電池メーカーを中国企業に売ると決めた。世界に先駆けてリチウムイオン電池を実用化したソニーも17年に電池事業を村田製作所に売却した。関連技術や市場環境は大きく変化しており、この先も再編含みの競争が続きそうだ。 *7-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191010&ng=DGKKZO50809460Z01C19A0EA1000 (日経新聞社説2019年10月10日)電池の革命がノーベル賞を手にした 今年もまたうれしいニュースが飛び込んできた。ノーベル化学賞が旭化成の吉野彰名誉フェローに贈られることが決まった。授賞の理由はリチウムイオン電池の開発。97歳と過去最高齢となるジョン・グッドイナフ博士らとの共同受賞だ。パソコンから携帯電話、スマートフォン、それに電気自動車。現代の暮らしは、これらに使われる電池の革命なしには考えられない。文句なしの受賞といえる。充電すれば繰り返し使える電池の性能は電極にどんな材料を選ぶかで決まる。1980年代半ば、吉野氏はグッドイナフ氏が開発した正極にあう負極を探した。最初は電気を通すプラスチックに着目したが、実用に見合う性能が引き出せない。試行錯誤の末、たどり着いたのが旭化成が得意としてきた炭素材料。85年にリチウムイオン電池の基本構造を確立した。リチウムイオン電池は従来の電池より小さく軽くて電圧も高い。ソニーが91年に初めて製品化し、当初は安全性に課題もあったが、携帯機器で普及した。2010年ごろまでは日本メーカーがリードしたが、その後、韓国勢などが台頭し市場での立場は逆転した。産業での日本の優位性が長続きしなかったことを悔やむ声があるが、それだけ世界が求めていた革新的テクノロジーだった。日本企業に所属する研究者の受賞は2002年に化学賞をとった田中耕一島津製作所シニアフェローに次ぐ2人目だ。吉野氏も田中氏も1980年代の業績で、大手メーカーが中央研究所を設け、将来の応用を見据えて基礎研究にも力を入れていた時代だった。科学研究の実力は国力を映し出す鏡ともいわれる。成果から受賞までに20年、30年かかることを考えると、2000年以降、今回で19人を数える日本の科学者の受賞ラッシュは、80年代の日本の豊かさと余裕のたまものだろう。喜んでばかりはいられない。足元で日本の研究力は元気がない。優れた論文の数からみる実力は各分野で低下。知の拠点となる大学のランキングもじり貧だ。1901年に始まったノーベル賞は1世紀以上たった今も「科学界の最高の賞」とされる。人類への貢献にこだわり息の長い基礎研究を顕彰してきたからだ。吉野氏が今後何を語るのか注目しよう。そこから科学技術創造立国への復活のヒントを得たい。 *7-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14212804.html (朝日新聞 2019年10月10日) 再エネ100%のネットワーク 再生可能エネルギーの利用を100%にすることを宣言する、日本の企業や教育機関、病院などのネットワーク「再エネ100宣言 RE Action(アールイーアクション)」が9日、設立された。遅くとも2050年までに消費電力の100%を再エネ化する目標を設けて、毎年、比率を公表する。再エネ100%を宣言する国際的な企業連合「RE100」には現在、日本企業25社が加盟しているが、参加できるのは消費電力の規模が大きな企業に限定されている。規模の小さな国内企業・団体からも同様のネットワーク設立を求める声が上がっていた。RE Actionは日本気候リーダーズ・パートナーシップなど4団体によって発足、まず28企業・団体が参加した。 <生物の進化をつかさどるDNAの変異> PS(2019年10月16日追加):同じ厳しい気候や感染症に晒されても生き残る個体とそうでない個体があり、*8には、有性生殖が多様性を生んだと書かれているが、有性生殖によるDNAの組み替えだけではそれまでになかった全く新しい性質は獲得できない。しかし、無性生殖する細菌やウイルスもDNAが変異して環境に適した性質を持つ個体が生き残り、進化は無数に起こるDNA変異の中から、より環境に適した個体がより多くの子孫を残す形で起こると言われている。 そして、最近、日本でもカムイサウルスが発見され下のように展示されているが、この恐竜の骨格は飛べない鳥エミューの骨格と類似しているため、骨格の並べ方が違うのではないかと、私は思う。歩く時は下のエミュー型、走る時は下のロードランナー型になったのではないだろうか。つまり、“恐竜”の多くは、飛べない鳥に進化していたのだろう。 ![]() カムイサウルスの骨格 エミューの骨格と生体 走るロードランナー (図の説明:1番左のカムイサウルス《むかわ竜》の骨格は、左から2番目のエミューの骨格に似ているため、生きていた時の姿は右から2番目のエミューに似ており、走る姿は1番右のロードランナーのようだっただろう。それを明らかにするには、カムイサウルスが立ったり走ったりする時の重心の位置と、その大きな骨格を動かす筋肉の大きさを現生動物から推定する必要がある) ![]() anchiornisの化石と想像図 ガチョウ ペンギン シラサギ (図の説明:1番左のanchiornisは翼のある恐竜の化石で、左から2番目はその想像図だ。そして、中央のガチョウの嘴にも歯のようなギザギザがあり、顔も似ている。さらに、右から2番目のペンギンの口の中は恐ろしい歯並びで、泳ぐ魚を捕獲して丸呑みしながら切り裂くのに適していそうだ。また、1番右のシラサギは美しい鳥だが、首の曲がり方が蛇を思わせる) *8:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/549199/ (西日本新聞 2019/10/7) <33>多様性を生む有性生殖 性教育といっても月経や精通、妊娠や出産、性感染症や望まない妊娠の話ばかりではありません。理科や生物の授業で習った「有性生殖」も大切な性の話です。有性生殖は雄と雌、男と女という性別があり、それぞれの精子と卵子を授精させて命をつなぐこと。子どもは、両親から半分ずつ受け継いだ新しい遺伝子を持つので、性格や体質は両親とは異なります。このように有性生殖は遺伝子を混ぜ合わせて、人が多様になるように命をつなぐ方法です。今年も猛暑の夏でした。もし気温が40度になって、みんなが熱中症になってしまうと大変です。けれども高温にも強い体質の人が必ずいます。その人は熱中症で倒れている人に「大丈夫?」と声を掛け、水を与えることができます。エイズは比較的新しい病気ですが、感染の機会があってもエイズを発症しない人たちがいます。その体質は、エイズの登場以前に獲得した遺伝子の働きによるものだと分かってきました。この人たちの体質から、新しい薬や予防法が開発されようとしています。地球の大きな寿命に比べれば、人間の寿命は約100年。私たちは自分の特徴に気付くことはないかもしれません。しかし気候が大きく変化したり、未知の病気が流行したりしたときに多様な人がいれば、それに対処し乗り越えられる誰かがいるはずです。こんなことを話した性教育の出前授業の後でいただいた、とっておきの感想文を紹介します。 <僕が一番心に残ったことは、人が有性生殖をするのは、命を多様にしてさまざまな人が生まれてくるからということです。いろいろな長所や短所を持った人がいることで、その人の長所が別の人の短所を助けることができるという点がすごく良いなと思いました。自分にないものを持っている人をうらやましがったり、ねたんだりするのではなく、その人がいつか自分を助けてくれるかもしれないんだという気持ちを持ちたいと思いました。また、自分の長所が他の人をどのように助けることができるのか考えようと思いました> 有性生殖で命をつなぐ意味は「誰かが誰かを助けるために」。このように考えてくれる高校生がいると、未来も安心だと思えます。 <外国籍の人の教育に関する取り扱い> PS(2019年10月20日追加): *9-1・*9-2のように、学齢期でも小中学校に通えない外国籍の子どもが日本国内に約2万人おり、外国人労働者の受け入れを拡大すれば数が増える。国際人権規約では、小中学校教育を「義務的なもの」として「すべての者」に「無償とする」と規定しているが、日本国憲法が定める義務教育の対象は「国民」となっており、外国人は対象外で法律上は就学させる義務がないことが問題の背景にあるそうだ。 確かに、*9-3の日本国憲法26条は2項で「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ」と定めており、日本国民以外には義務を課していないが、外国籍の子も教育を受ける権利があり、国際人権規約では小中学校教育を「すべての者に義務」としている上、外国籍の子にも教育を受けさせた方が質の良い労働力が増えて生活保護受給者を増やさず日本にとってもプラスだ。そのため、これまで外国籍の子を軽視していたのは国・地方自治体の配慮不足が過ぎる。 また、*9-4の教育基本法も、日本国憲法を受けて日本国民しか対象にしていないが、第4条に教育の機会均等を掲げ、「人種・信条・性別・社会的身分・経済的地位又は門地によって教育上差別されない」とし、国・地方自治体に義務教育の機会保障・その水準確保・適切な役割分担と相互協力による責任ある実施を要請しているため、外国籍の子にもこれを準用すればよかったのだ。そのため、教育基本法の前文に、「国内に在住する外国人には、この法律を準用する」という一文を付け加え、教育基本法の理念をしっかり実現すればよいだろう。 *9-1:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/443320 (佐賀新聞 2019年10月19日) 外国人の不就学 学ぶ権利は平等だ 学齢期なのに、小中学校に通えない外国籍の子どもが国内に2万人近くいる可能性がある。文部科学省の初の調査で分かった。少子高齢化対策で政府が外国人労働者の受け入れを拡大し、外国籍の子は確実に増える。子どもが学ぶ権利は国籍に関係なく平等だ。国が主導し、自治体と共に早急に対策を講じるべきだ。文科省が「不就学」の可能性があるとした外国籍の子は1万9654人。この年代は住民基本台帳には約12万人登録されており、16%を占める。このうち、就学していないことが明らかなのは千人で、残りは状況の把握すらできていないといい、その事実が事態の深刻さをうかがわせる。実際には住民登録していない子どももいるだろう。日本も批准した国際人権規約は小中学校の教育を「義務的なもの」とし、「すべての者」に無償とするとしている。ただ、憲法が定める義務教育の対象は「国民」。外国人は対象外で、法律上は就学させる義務がないことが問題の背景にある。調査から浮かぶのは、外国人への就学案内が不親切という実情だ。多くの市区町村が、保護者の希望があれば入学させるという待ちの姿勢で、積極的に働き掛けていない。住民登録時に全員に就学案内をする自治体は半数。義務教育年齢の子どもを登録する「学齢簿」に準じる書類を外国人全員に作る所も半数に満たない。小学校新入学の年齢の子がいる家庭に案内を送るのは63%、中学校は48%にとどまる。多くが日本語で記しており、理解が危ぶまれる。驚くのは、就学状況が不明な場合の対応について、65%もの自治体が「特に実施していない」と答えたことだ。国は「通知などで対応を促してきた」というが、責任を押し付け合って済む問題ではない。文科省は今年に入ってようやく実態把握や対策を検討し始めたが、遅きに失した感がある。外国人が住むのは東京都、大阪府、神奈川県、愛知県など都市部が多い。人数が多い自治体は把握が不十分な一方、国際結婚などで外国人が散在する地域は受け入れの経験が少なく、人手や予算もないという課題がある。国がこの問題を自治体任せにしてきたために地域ごとの差が大きい。外国人労働者の多い浜松市は積極的に家庭への訪問を繰り返してきた。文科省はこうした先進事例を一刻も早く全国に紹介し、きめ細かな対応を促すべきだ。さらには制度を整え、自治体の財政支援に力を入れる必要がある。文科省の別の調査では、日本語指導が必要な高校生の中退率は平均の7倍以上。卒業しても就職者の40%が非正規労働で、進学も就職もしない比率も高い。日本語が不自由なまま働いたり、きょうだいの世話をしたりする子どもの将来が心配だ。制度からこぼれ落ちた子どもたちが犠牲になっていいわけがない。読み書きもままならずに大人になれば、貧困状態に陥る恐れが大きい。教育を受けて就職し、生活が安定すれば、結局は日本社会全体が利益を得る。4月の改正入管難民法施行による新たな在留資格創設で、外国人労働者とその子どもは一層の増加が見込まれる。門戸を開いた以上、国として責任を持つべきだ。こんな恥ずかしい状況を放置したままでは安倍政権は国際社会に顔向けできまい。直ちに対策を実行する必要がある。 *9-2:https://www.sakigake.jp/news/article/20191020AK0015/ (秋田魁新報社説 2019年10月20日) 外国人不就学問題 国主導の対策が急務だ 日本で暮らす外国籍の子どものうち、約16%に当たる1万9654人が小中学校に通っていない不就学の可能性があることが、文部科学省による初の調査で分かった。外国人労働者の受け入れが拡大する中、外国籍の子どもは確実に増える。不就学の子どもをなくすためにも、国は早急に就学環境を整える対策を講じる必要がある。調査は5~6月に全1741市区町村の教育委員会を通じて実施した。調査対象としたのは住民基本台帳に住民登録する外国籍の子ども12万4049人。このうち実際に不就学を確認したのは千人で、残りは調査時に自宅に不在だったり、学籍簿に名前が無かったりして、状況の把握すらできていないという。文科省はこれら全てを合計した人数について、不就学の可能性があると判断した。まずは実態把握を急がなくてはならない。日本は、外国籍の子どもが公立小中学校への就学を希望すれば、国際人権規約などを踏まえて無償で受け入れている。ただ日本人と違い就学義務はない。加えて働いたり、家できょうだいの面倒を見たりしている不就学の子どももいる。こうした子どもたちを孤立させてはならない。学ぶ権利は国籍に関係なく平等にある。調査からは自治体の対応や支援態勢にばらつきがあることも浮き彫りとなった。就学を促す取り組みを特に行っていない自治体は65%に上り、4割が就学案内を送っていなかった。送付したとしても日本語のみの記載といった案内も多くある。日本語指導が必要な子どもに特段の対策をしていない自治体は半数余りで、「人員や予算が不足」「どのような支援を行うべきか分からない」などを理由に挙げていた。せっかく就学しても日本語が分からなければ、学校に居づらくなり、退学となるケースも少なくない。将来の進学や就職などにも影響する。国は「通知などで対応を促してきた」としている。しかし自治体任せにするのではなく、自ら主導して、外国籍の子どもたちが安心して学校に通えるようにするべきである。積極的に家庭への訪問を繰り返している自治体や、民間と連携して日本語教育を推進している自治体もある。文科省はこうした先進事例を広く紹介することで、きめ細かな対応を促してほしい。外国人の不就学問題の解消は日本の子どもたちにとってもメリットがある。同じ教室で多様な言語や文化に触れながら学ぶことはコミュニケーション力を高め、寛容性や柔軟性を育むことにつながる。本県で不就学の可能性がある子どもは2人とされたが、県による再調査ではゼロだった。ただ本県でも在留外国人の増加に伴い、外国籍の子どもは増えている。今後を見据えて、今から準備を進めておくことが重要である。 *9-3:http://www.mext.go.jp/b_menu/kihon/about/a002.htm (日本国憲法 教育関係の条文抜粋 昭和二十一年十一月三日) 第二十三条 学問の自由は、これを保障する。 第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。 2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。 *9-4:http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?re=&vm=01&id=2442) (教育基本法 平成十八年十二月二十二日法律第百二十号 我々日本国民は、①たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、②世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。 第一章 教育の目的及び理念 (教育の目的) 第一条 教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。 (教育の目標) 第二条 教育は、その目的を実現するため、学問の自由を尊重しつつ、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。 一 ①幅広い知識と教養を身に付け、②真理を求める態度を養い、豊かな情操と道徳心を培うとともに、健やかな身体を養うこと。 二 個人の価値を尊重して、その能力を伸ばし、創造性を培い、自主及び自律の精神を養うとともに、職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養うこと。 三 正義と責任、男女の平等、自他の敬愛と協力を重んずるとともに、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。 四 生命を尊び、自然を大切にし、環境の保全に寄与する態度を養うこと。 五 伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。 (生涯学習の理念) 第三条 国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。 (教育の機会均等) 第四条 すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない。 2 国及び地方公共団体は、障害のある者が、その障害の状態に応じ、十分な教育を受けられるよう、教育上必要な支援を講じなければならない。 3 国及び地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由によって修学が困難な者に対して、奨学の措置を講じなければならない。 第二章 教育の実施に関する基本 (義務教育) 第五条 国民は、その保護する子に、別に法律で定めるところにより、普通教育を受けさせる義務を負う。 2 義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。 3 国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。 4 国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料を徴収しない。 (学校教育) 第六条 法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。 2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよう、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教育が組織的に行われなければならない。この場合において、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を高めることを重視して行われなければならない。 (大学) 第七条 ①大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、②深く真理を探究して新たな知見を創造し、③これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。 2 大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない。 (私立学校) 第八条 私立学校の有する公の性質及び学校教育において果たす重要な役割にかんがみ、国及び地方公共団体は、その自主性を尊重しつつ、助成その他の適当な方法によって私立学校教育の振興に努めなければならない。 (教員) 第九条 法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない。 2 前項の教員については、その使命と職責の重要性にかんがみ、その身分は尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない。 (家庭教育) 第十条 父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。 2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。 (幼児期の教育) 第十一条 幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない。 (社会教育) 第十二条 個人の要望や社会の要請にこたえ、社会において行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない。 2 国及び地方公共団体は、図書館、博物館、公民館その他の社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会及び情報の提供その他の適当な方法によって社会教育の振興に努めなければならない。 (学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力) 第十三条 学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。 (政治教育) 第十四条 良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない。 2 法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。 (宗教教育) 第十五条 宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。 2 国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。 第三章 教育行政 (教育行政) 第十六条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。 2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。 3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。 4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。 (教育振興基本計画) 第十七条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。 2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。 第四章 法令の制定 第十八条 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。 附 則 〔抄〕 (施行期日) 1 この法律は、公布の日から施行する。 <教員の質と労働条件など> PS(2019年10月21、24、28、29日追加):*9-4の教育基本法第9条に、「①教員は崇高な使命を深く自覚して絶えず研究と修養に励み、職責の遂行に努めなければならない」「②教員は使命と職責の重要性に鑑み、身分が尊重され、待遇の適正が期せられるとともに、養成と研修の充実が図られなければならない」と記載されている。一般社会でもいじめやハラスメントは多発しているが、*10-1のように、教員自身がいじめを行っているようでは、児童生徒にいじめを行わないよう指導することはできず、首謀者か追随者かは問わず、いじめを止めるのではなく加担する側に立つのは勇気や公正な態度の見本を示すどころか逆を行っていて、①からほど遠い。 また、*10-2は、「③忙しい時期は勤務時間を延長して夏休み中に休暇を取るような『変形労働時間制』を公立校の教員にも適用できる法改正案を政府が閣議決定した」「④夏休み中も部活動や研修があり、必ず休みが取れるとは限らない」「⑤過労死労災認定の基準となる月80時間を超えて残業をしている教員は、文科省の16年度の調査で小学校で3割余・中学校で6割近くに上り、日本の教員の勤務時間は欧米各国に比べると突出して長い」「⑥順次導入される次期学習指導要領では、思考力や表現力を引き出す授業の工夫が一層求められる」等が書かれているが、企業と比較して教員は休みが多いので、私は③は妥当だと思う。そして、いつまでも④⑤を主張しているようでは思考力がなく、⑥を行うことができる教員が何割いるのか考えさせられる上、自分が上手くない人から教わっても上手くはなれないため、部活や外国語指導を従来の教員に担当させるのが効果的かどうかも疑問だ。さらに、学校も組織であるため教員が雑用に翻弄されずに本当の教育を行える体制を作ることはできるし、とっくの昔に作っていなければならない。つまり、②は、質の高い教育を行うために定めたもので、教員の数のみを問題にするのではなく待遇の適正化によって質の高い人材を確保しようとしているのである。 なお、*10-3のように、関東では2019年度当初時点で公立小中学校に配置すべき教員が少なくとも503人不足しており、産休・育休取得者や病気休職などが出た場合に代わりの教員を確保できない現状が覗えたそうだ。しかし、そのリストの人材が枯渇した理由は、少なくなった新卒者を多くの企業が奪い合っているからで、それでも定年を60~65歳に保たなければならない理由はない上、待遇が悪ければ教員免許を持っていても教員という職業を選択する人は少なくなることを忘れてはならない。 インドネシアでは、*10-4のように、ジョコ大統領が米ハーバード大経営大学院を修了してゴジェックを創業したマカリム氏を教育・文化相に任命し、先進国入りを目指して高度産業を担える人材育成を最重要課題の一つに掲げて教育改革をするそうだ。日本は、最終学歴こそインドネシアより高いが、頑張らない方向への改革を続ければ、2045年には先進国に入っていないかもしれない。 2019年10月28日、*10-5のように、日本私立大学連盟の鎌田会長が、「⑦高等教育の無償化は『国私格差』拡大の恐れがある」「⑧私大の増収に寄与しない」「⑨新制度は受給対象者を2浪、20歳までに限っている」「⑩国立大学と私立大学の卒業生が国や社会全体にもたらす便益にこれほど大きな差があるとは考えられない」と批判されているが、日本の高等教育の問題は国私格差を無くすために国公立大学の授業料を上げて学生の高等教育負担を増やし、志のある学生に高等教育を受けにくくさせたことに由来する。また、私大は入試科目が少なく(=学生の知識や理解度はそれだけ狭くて浅い)、建学の精神に基づいて学生の選抜方針や教育方針を自由に決めることができ、巨大マスプロ教育(=議論したり、考えたりする教育が僅少)によって⑩も十分でないため、⑦のように、授業料の国私格差だけを問題にするのは、志ある学生を育てようとしている高等教育無償化の趣旨とは異なる。また、教育は人材育成のためにあり、大学の増収のためにあるのではないため、高等教育無償化に関する⑧の批判には驚いた。さらに、⑨の受給対象者を2浪に限っているのは、就職もせず大学受験で何浪もできる人はそれだけ裕福な家庭の子であることから当然で、年齢制限については、社会に出た後で再び大学で学ぶ意欲のある人は、働いている期間にそのくらいの貯金はしておけということだ。 また、*10-6のテレビ番組(プライムニュース)は私も見ていたが、キャスターが「受験生の経済状況や居住地で不利が生じて不公平ではないか」と言ったので、萩生田氏が「『あいつ予備校に通ってずるい』と言うのと同じだ(≒不公平に当たらない)」と答えたのであり、私は同意だ。だが、大学入学共通テストで導入される民間検定試験がいくつもあると比較できないため、留学に影響するTOEFL一本にするのがよいと考える。中学・高校でTOEFL試験を何度も行えば、不公平はなくなり、受験生も慣れる。そして、それだけでは受験生間に差がつかないとか、大学教育に不十分だと考える大学は、東大のように二次試験を行えばよいだろう。 なお、2019年10月29日、*10-7のように、朝日新聞が、大学入試改革として2020年4月から英検やGTECなど7種類の英語民間試験を活用することについて、「⑪塾に通わずに受験勉強をしている母子家庭の子や離島の生徒を例に出して教育機会均等と全く逆としている」「⑫教育基本法は『すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならない』とする」「⑬大臣が地域・経済格差が教育格差に繋がるのを容認したことが問題」「⑭都会の裕福な家の子が何回も受験の練習をするのを妨げられない」等を記載しているが、7種類の英語民間試験を活用することこそ比較可能性をなくして公正な評価を不可能にするため問題なのである。そのため、大学入試なら、各大学が入試として認定する民間試験を指定し、例えば留学に役立つTOFLEの結果のみを採用することとして、中学・高校から学校でTOFLEの試験を繰り返せば、すべての問題を前向きに解決できるが、そのためには延期が必要だろう。 また、教育は、“身の丈”を伸ばすために行うものだが、⑪は、公立の初等・中等教育の教育内容が不十分で、塾に通わせなければ高等教育の受験もおぼつかない現状が問題なのであり、それは英語だけの問題でもないため、なったばかりの文科大臣の発言の問題に帰するのは小さすぎる。さらに、⑫や*9-4の教育基本法4条に定められた教育の機会均等は、入試の機会均等や奨学金などで一応は達せられており、結果平等を求めるものではない。⑬⑭については、地域間格差や経済格差が教育格差に繋がっているのは事実だが、これは地域間の産業格差や教育に対する意識格差が密接に関係しており、首都圏や都会だから有利とも限らないため、教育基本法13条、17条のように、国と地域で総合的な基本計画を立てて進めなければならないのである。 *10-1:https://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20191020502333.html (新潟日報社説 2019年10月20日) 教員のいじめ 本分忘れた許し難い暴走 子どもの教育という自らの職責を忘れた、信じられない暴走である。あまりの荒廃ぶりにあぜんとする。これでは、子どもも保護者も学校に不信と不安を抱く。再発を防ぐためにも、なぜ問題が起きたのか、歯止めを掛けられなかったのかを徹底的に解明しなければならない。神戸市立小学校の教諭4人が同僚に対して、度重なるいじめ行為をしていた。加害者は30代の男性教諭3人と40代の女性教諭1人である。集中的に被害に遭っていた20代の男性教諭は精神的に不安定になり、9月から欠勤した。羽交い締めにして激辛カレーを食べさせる。無料通信アプリLINE(ライン)で別の女性教員に性的なメッセージを送るよう強要する。訴えられたいじめの内容は極めて悪質だ。男性教諭は50種類以上のいじめがあったと申告している。熱湯の入ったやかんを顔に押し付けられる暴行、灰皿に入れた水を車内でまき散らされる嫌がらせなどもあったという。ほかに20代の教員3人が暴言やセクハラを受けていた。「反抗しまくって学級つぶしたれ」。加害教員が児童にこう言っていたとの訴えも明らかになっている。事実であれば、子どもたちをいじめに加担させようとしたとも受け取れる。常軌を逸しているというほかない。問題が発覚し、ショックを受けた児童が学校を休んだケースもあった。子どもへの心理的影響もとても心配だ。学校でのいじめは増加し続けている。文部科学省の最新の発表によると、全国の小中学校や高校、特別支援学校での2018年度のいじめ認知件数は54万3933件、心身に深刻な被害が生じる「重大事態」は602件。ともに過去最多だった。いじめ防止は今や学校や教員にとって最大の課題だろう。にもかかわらず、教員同士の間でもいじめがあったことにやりきれない思いに駆られる。神戸市教委によると、欠勤している男性教諭は昨年以降いじめを受けていた。それを市教委が確認したのは今年9月。男性教諭の家族が訴えたからだ。この間、校内で問題はどう扱われていたのか。今春異動した前校長と現校長はいじめの相談を受けても、市教委に詳細を伝えなかった。それが、問題を深刻化させた面もあろう。市教委が設置した調査委員会による調べはこれから本格化する。管理職の対応の問題点も掘り下げ、理由や背景を明らかにしなければならない。このところ本県でも、教員の不祥事が相次いでいる。9月には長岡市の小学校校長が買春の疑いで逮捕され、十日町市内の中学校教諭が児童買春で書類送検された。モラルの低下は目を覆うばかりである。子どもたちや地域を裏切ることのないよう、教育界は自らに課せられた責任の重さを改めて肝に銘じてもらいたい。 *10-2:https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191021/KT191018ETI090016000.php ( 信濃毎日新聞 2019年10月21日) 教員変形労働制 根本的な是正にならない 年度初めや学校行事が立て込む忙しい時期は勤務時間を延長し、代わりに、夏休みの期間中に休暇を取る―。働く時間を年単位で調整する「変形労働時間制」を公立校の教員にも適用できるようにする法改正案を政府が閣議決定した。長時間労働が常態化した教員の働き方改革の一環と位置づけている。ただ、休暇をまとめて取れるようにしても、労働時間が全体として減るわけではない。むしろ、学期中の長時間労働を追認することになりかねない。定時が延びると会議などが入り、家に持ち帰る仕事がかえって増えないか…。心配する声が現場から出ている。夏休み中も部活動や研修があり、必ず休みが取れるとは限らない。表向き残業時間は減っても、どこまで過重労働の是正につながるのか疑問だ。文部科学省は、教員の残業時間の上限を月45時間とする指針を1月に定めている。この指針の位置づけも条文で明確にするが、変形労働制は月ごとの上限をなし崩しにする恐れがある。日本の教員の勤務時間は欧米各国に比べると突出して長い。経済開発協力機構(OECD)の2018年の調査では、5年前よりさらに増えた。過労死の労災認定の基準となる月80時間を超えて残業をしている教員は、文科省の16年度の調査で、小学校で3割余、中学校では6割近くに上る。順次導入される次期学習指導要領では、思考力や表現力を引き出す授業の工夫が一層求められる。小学校では英語が教科になり、授業時間も増える。教員の負担が増すのは目に見えている。一方で、子どもを取り巻く問題は深刻化している。18年度に全国の学校で確認されたいじめは54万件を超え、心身に重大な被害が及ぶ事態も600件に達した。自殺した小中高校生は330人余に上り、ここ30年で最も多い。親から虐待される子も増えている。教員に時間と気持ちの余裕がなければ、子どもと丁寧に向き合うことはできない。発しているサインや異変を見過ごすことにもなる。過重な負担を減らすには、十分な教員数を確保するとともに、学校や教員が担ってきた仕事を見直し、分担する仕組みや補う態勢を整えていく必要がある。法改正により一律に変形労働制が取られるわけではなく、導入するかどうかは自治体が判断する。国会での法案審議に加え、地方議会や地域で、学校現場の実情を踏まえた議論が欠かせない。 *10-3:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201910/CK2019102002000144.html (東京新聞 2019年10月20日) 教員不足 公立小中500人 本紙1都6県アンケート 本紙が関東1都6県の計39の自治体の教育委員会に行ったアンケートで、2019年度当初時点で、公立小中学校に配置すべき教員が、少なくとも503人不足していたことが分かった。教員不足の自治体は16で4割に上った。回答からは、産休・育休取得者や病気休職などが出た場合に、代わりの教員を確保できない現状がうかがえ、児童生徒への影響も懸念される。教員の採用や配置は都道府県と政令市の各教委が行う。本紙は今年六~七月、神奈川、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬の各県と横浜、川崎、相模原、さいたま、千葉の五つの政令市の教委にアンケートした。東京都内は二十三区と人口二十万人以上の五市の教委に調査した。調査結果によると、小学校では十三自治体で常勤三百四十四人、非常勤三十九人が不足。中学校も十三自治体で、常勤八十三人、非常勤三十七人が不足していた。小学校では学級担任十三人が、中学校は教科担任二十三人が不足していた。教員が配置できない理由で多かったのは、産育休などの教員の代役となる非正規教員の不足だ。教員の欠員が出た場合、学校などはまず都道府県教委などが持つ登録リストに載っている人の中から後任を探す。しかし近年、このリストの人材は枯渇気味。登録しているのは「教員採用試験の不合格者」が多く、二〇一〇年ごろからは、かつて大量採用されたベテランが退職期を迎え、正規採用が増えたことで登録者が減った。教員志望者自体も減少傾向にあり、新たな登録も減っている。一方で欠員を埋めるための需要は増加している。「大量退職、新規採用増」の影響で、公立学校では教員の年齢が若返っており、ここ数年はその世代が産休や育休を取ることが多い。教員確保が難しい理由として「若手教員が増えて産休・育休取得者が増加しているため」(千葉県)という回答も目立った。「病気休職が日々発生している」(東京都八王子市)との回答もあるように、過密労働による精神疾患などで休んだり、辞めたりするケースも少なくない。 *10-4:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51299530T21C19A0FF1000/ (日経新聞 2019/10/23) インドネシア、教育相にゴジェック創業者、競争力強化へ人材育成急ぐ インドネシアで23日、配車サービス大手、ゴジェック創業者のナディム・マカリム氏(35)が教育・文化相に就任した。2045年の先進国入りを目指すジョコ大統領は高度な産業を誘致するために人材育成を2期目の最重要課題のひとつに掲げている。ゴジェックで200万人の運転手を教育して職を生み出したナディム氏の経験を生かし、産業界に必要な人材育成を急ぐ。ジョコ大統領が23日発表した新内閣の目玉はナディム氏の教育・文化相就任だった。ナディム氏は早速、5千万人の児童・生徒を対象に、IT(情報技術)教育などを充実させる考えを示した。ジョコ氏は「産業界で役立つ人材育成の突破口を作ってほしい」として、教育機関と産業界の懸け橋としての役割も期待するとした。ナディム氏は1984年生まれで、米ハーバード大経営大学院を修了した。ゴジェックを起業し、15年にスマホを使った配車や宅配、金融などのサービスを本格的に始め、わずか3~4年でインドネシア人の生活に不可欠なサービスに育てた。ゴジェックは世界に20社ほどしかない巨大未上場企業「デカコーン」(企業評価額100億ドル=1.1兆円=以上の未上場企業)となった。ナディム氏は21日、入閣要請を受諾し、ゴジェックの最高経営責任者(CEO)を退任した。ナディム氏は23日、従業員に宛てた電子メールで、ゴジェックが配車などで人々の生活を改善してきたことに触れ、「インドネシアが(ゴジェックにいるような)高度な人材をもっと生み出すためには教育システムを変える必要がある」と入閣の理由を述べた。もともとは得意分野のデジタル担当相やイノベーション担当相などとして登用する案も出ていたが、最終的に教育・文化相という重要閣僚で起用することが決まったのは、ナディム氏がゴジェックで運転手を教育して職を与えたことを高く評価したためだ。就職につながる国の教育システム作りを託した。ジョコ氏は早い段階からナディム氏の事業に注目して支援してきた。15年12月に配車サービスを禁止する通達が出た際には「誰のための規制だ」と運輸相を叱責し、事実上撤回させた。19年4月にはゴジェックの運転手向けのイベントにジョコ氏が参加するなど、ジョコ政権とナディム氏の関係は深かった。ジョコ氏は組閣にあたって、ミレニアル世代(1980年から2000年ごろ生まれの若者)の代表として、有力スタートアップ経営者や大手財閥の若手経営者らの入閣を検討していた。なかでもナディム氏には4月の大統領選で再選を決めた直後から接触しており、意中の人物として早くから決めていたようだ。ただ、ナディム氏の前には大きな壁が立ちはだかる。インドネシアの労働人口のうち、最終学歴が小学校卒以下の人が約4割で、中学校卒以下も合わせれば約6割に達する。産業界からは「即戦力として使える人材が少ない」(日系企業)といった不満が出ていて、海外からの投資が周辺国に流れる一因となっている。ジョコ氏は23日、閣僚に対して「具体的な成果を意識して仕事をするように」と訓示し、早期に結果を出すことを求めた。教育は一朝一夕で改善するものではないが、ナディム氏は短期間で教育の抜本的な改善と、産業界への人材の送り出しという困難な課題に答えを出さなくてはならない。 *10-5:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191028&ng=DGKKZO51395670V21C19A0CK8000 (日経新聞 2019年10月28日) 高等教育の無償化、「国私格差」拡大の恐れ、前日本私立大学連盟会長 鎌田薫氏 私大の増収寄与せず/現行補助廃止なら改悪 2020年4月から低所得世帯の学生が対象の高等教育の無償化が始まるが、日本私立大学連盟の鎌田薫前会長(早稲田大学前総長)は私立大学には問題が多い制度だと批判する。来年4月から、大学、短大、高専、専門学校に在学する住民税非課税世帯およびそれに準ずる世帯の学生を対象として、新たな授業料減免制度が始まり、給付型奨学金も拡充されることになった(高等教育の就学支援新制度)。初年度の予算は7600億円が予定されている。600校を超える4年制私立大学全体に対する助成金総額が3000億円弱だから、この金額は画期的に大きなものといえる。ただし、この授業料減免制度は学生の授業料を国が代わって大学に支払うものであるから大学の収入増にはつながらず、国の負担分は消費税引き上げによる財源を用いた内閣府の社会保障関連予算に位置づけられる。グローバル化、情報化と少子高齢化が急速に進む現代日本社会においては、国民一人ひとりが高度の知識・技能を身につけ、新たな価値を創造していくことが強く求められている。一方で、教育費負担が子どもを持つことに対する最大の抑制要因となっている。実際にも、低所得者層の大学進学率は漸減傾向にあり、経済格差と教育格差の悪循環が懸念されている。これらのことを考えれば、市民生活の安定と国の繁栄を維持発展させるためには、高等教育費負担の軽減を図ることが必要であり、新制度がその第一歩を踏み出したこと自体は高く評価しなければならない。しかし、その制度設計には私立大学として看過できない問題点があり、私学団体も一貫して批判的な意見を述べてきた。ここでは、特に国私間の格差を拡大させる恐れについて私見を述べたい。 □ □ □ 国の高等教育費支出は、学生1人あたり、国立大学202万円、私立大学15万円であって、13倍を超える格差がある。これらはいずれも平均額であり、国立大学生の3割は授業料減免の恩恵を受けているし、私学助成の交付額は大学によって様々であるから、一人ひとりについて見れば、より多様な比率になる。その意味では精密さに欠ける比較ではあるが、国立大学と私立大学の卒業生が国や社会全体にもたらす便益にこれほど大きな差があるとは考えられず、国費の投資効率や納税者間の平等という観点からは正当化が難しい格差といえよう。本来なら、こうした異常な格差を解消した上で、個々の学生の能力と経済状況に応じて幅広く柔軟な支援策を講ずるべきであって、大学の設置形態によって支援内容に差を設けることは合理的でなく、不当な格差を拡大させる恐れもある。例えば、ある受験生が強く進学を希望する私立大学の特定学部の授業料が160万円であるとすると、新制度による支援は70万円を上限としているから、90万円の自己負担を覚悟しなければならない。この受験生が第一希望を断念して国公立大学に進学すれば、学費全額を国が負担するという今回の制度が本人と国の将来にとって果たして有益なのだろうか。現状でも国立大学生の世帯収入が私大生のそれを上回っており、受験準備に十分な投資ができなければ難関大学に進学できない傾向が顕著になっている。新制度が国は国公立大学への進学を強く奨励しているというメッセージと受け止められれば、この傾向はさらに強まり、制度目的とは逆に受験準備のために十分な投資をする余裕のない受験生はますます進学が困難になる恐れがある。学部学生の約8割に対する教育を担っている私立大学には、低所得者層を含む多様な学生が在籍している。そのため、各私立大学は独自の支援措置をとっており、その総額は毎年900億円規模に上っている。現在は、年収841万円以下の世帯の学生に対する各私大独自の授業料減免額の2分の1について国庫補助を受けられるものとされている。実際の交付額は90億円程度に留まっているが、就学支援新制度の導入に伴って、従来の補助は廃止されるといわれる。最も多くの学生が属する年収400万~900万円の世帯に対する授業料減免への公的支援がなくなったとしても、各大学は従来の減免措置を取りやめることはできないだろうし、新制度の影響で支援策の拡充を迫られるかもしれず、私立大学にとっては改悪としかいいようがない。しかも、その原資には学生からの授業料も含まれるため、実際上は学生相互間の所得移転による社会保障の肩代わりを拡大させるものであり、本来あるべき方向性とは逆行している。 □ □ □ 新制度は受給対象者を2浪、20歳までに限っている。さらに、現行制度では補助対象としていた大学院生の授業料減免が廃止されるとすると、教育再生実行会議や人生100年時代構想会議などが、生涯を通じて何時でも必要なときに必要なことを学べる体制を整えることや、博士学位取得の促進などを提言してきたが、そうした政策と矛盾することになる。新法付則の定める施行後4年の見直しに向けて、国私間格差の抜本的解消、諸外国で行われているような国公立大学に低所得者層の学生を一定数入学させる制度の導入、中間所得層を含む幅広い学生に対する支援措置の拡充などについて深く真剣に検討されることを切に期待する。 *10-6:https://www.hokkaido-np.co.jp/article/358826?rct=n_society (北海道新聞 2019年10月28日) 萩生田文科相、「身の丈に合わせて」発言謝罪 萩生田光一文部科学相は28日、大学入学共通テストの英語で導入される民間検定試験に関して「自分の身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」とテレビ番組で述べたことについて、報道陣の取材に応じ「国民、特に受験生に不安を与えかねない説明だった。おわびしたい」と謝罪した。民間試験導入を巡っては、受験生の経済状況や居住地によって不利が生じるのではないかと懸念の声が高まっており、全国高等学校長協会は2020年4月開始の延期を求めている。番組は24日に放映され、萩生田氏は不公平への懸念について「『あいつ予備校に通ってずるい』というのと同じだと思う」との見方も示していた。 *10-7:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14235380.html (朝日新聞 2019年10月29日) (時時刻刻)「格差を容認」批判噴出 英語民間試験、文科相「身の丈に合わせがんばって」 2020年度から始まる大学入学共通テストで活用される英語の民間試験について、萩生田光一文部科学相が「身の丈に合わせてがんばって」と発言し、28日、謝罪に追い込まれた。教育格差を容認するような教育行政トップの発言に、受験生や教育関係者から憤りの声が上がった。野党は大臣の辞任を求め、追及を強める考えだ。 ■謝罪、発言は撤回せず 「国民の皆様、特に受験生の皆さんに不安や不快な思いを与える説明不足な発言であった」。28日、萩生田氏は文科省内で謝罪した。問題の発言は、24日の報道番組で、大学入試改革の目玉として来年4月から活用が始まる英語民間試験に言及した際に飛び出した。現在の高2が主に受ける共通テストでは、英検やGTECなど7種類の民間試験を使って、英語の「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測る。国のシステムで各人の成績を集約し、出願先の大学に提供する。練習のために何度受けてもいいが、大学に提供されるのは高3で受けた2回までの試験の成績だ。住む場所や家庭の経済状況によって不公平が生じないか――。こんな質問に、「『あいつ予備校通っててずるい』というのと同じ」などと反論。生徒の境遇により本番までの受験回数に差が出るのを認めた上で、「身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負してがんばってもらえば」と述べた。ただ、萩生田氏は28日の取材では不公平を容認しているとの指摘に対して、「どんなに裕福でも2回しか結果は提出できないので、条件は平等」と強調。発言は撤回せず、「民間試験なので、全ての人が(本番の)2回しか受けてはいけないというルールにはできない」などと釈明した。受験料が2万5千円を超える試験や、会場が都市部の10カ所に限られる試験もあり、地域格差や経済格差の問題は、導入が決まった当初から指摘されてきた。文科省は、低所得世帯の受験料減免を業者に求めたり、離島の受験生に交通費や宿泊費の一部を補助する支援策を来年度予算の概算要求に盛り込んだりした。一方で、萩生田氏は1日の会見で、新制度について「初年度は精密さを高めるための期間」などと発言。「生徒を実験台にするのか」などと批判を浴びた。今回の発言で、さらに批判が強まりそうだ。文科省幹部は「『なぜあんな発言を』と考える職員はいるだろう。高校などに説明する際に悪影響が出るのが心配だが、立ち止まる余裕はない」と語った。 ■教育機会均等と「全く逆」 萩生田氏の発言はSNSなどを通じて広がり、「地方の貧乏人は身の程を知れという姿勢?」などと反発が相次いだ。都内の高校2年の男子生徒(17)は母子家庭で、塾に通わずに受験勉強をしている。「与えられている条件が人によって違うのに、『身の丈に合った』と言われると、自分の可能性を抑え込まれた感じがする」と言う。「そもそも身の丈に左右されてしまうような制度。それを止めるどころか推進するような発言だと腹が立ちました」。都立高校の50代教諭は「教育を担当する大臣として、あり得ない発言」と憤る。離島の都立高校に赴任したことがある。受験料や船代、宿泊代をこつこつためていた生徒の家族をいくつも知っている。「格差を追認するような発言を大臣がしていいのか」。識者からも批判の声が上がる。小林雅之・桜美林大教授(教育社会学)は「国がすべきことと全く逆の発言であり、問題だ」と言う。教育基本法には「すべて国民は、ひとしく、その能力に応じた教育を受ける機会を与えられなければならず」とある。小林教授は「国はもっと支援策を講じるべきだ。全国高校長協会が延期を求めるなど、試験への批判も強い。再検討した方がよい」と言う。萩生田氏の発言に対し、野党は強く反発する。大臣の辞任を求め、厳しく追及する構えだ。英語民間試験を巡っては、野党統一会派と共産党が24日、「経済的な状況や居住地域に左右される」などとして、導入を延期する議員立法を衆院に提出した。その後、飛び出した萩生田氏の発言に、野党国対幹部は「憲法で保障された教育の機会均等なのに大臣自らが不平等を容認している。国会でも取り上げざるを得ない」。一方、菅義偉官房長官は28日午前の記者会見で萩生田氏の文科相としての資質について問われると、「適材適所だと思っている」と述べた。 ■<視点>制度自体に問題、浮き彫り 英語民間試験の活用について「身の丈に合わせてがんばってもらえば」と発言した萩生田光一文科相が「説明不足だった」と謝罪した。だが問題は「説明不足」だったことではない。まず、大臣が「身の丈に合わせて」と格差を容認する言葉を口にしたことだ。地域・経済格差が教育格差につながるのを防ぐのが大臣の責務だ。課題を受験生に押しつけ、開き直ったとも受け取れる。こんな姿勢では、教育政策を預かる資格はない。さらに深刻なのは、制度自体が「身の丈入試」であることを拭えない点だ。民間試験を使う以上、都会の裕福な家の子が何回も受験の練習をするのを妨げられない。萩生田氏の発言は、この問題を改めてあぶり出した。11月1日から受験用の「共通ID」の申し込みが始まる。受験生の不安はすでに限界を超えている。 <一般社会であった有名ないじめ> PS(2019年10月23、24日追加): *11-1は、「①メーガン妃の『個人的な手紙』を報じたのは著作権侵害・データ保護法違反などにあたるとして、ハリー王子夫妻が英大衆紙と親会社を提訴した」「②王子は『こうした攻撃的な報道は他人の人生を台無しにするいじめだ』と強く非難している」としている。しかし、“血統書付きの家庭”の出身でないのはメーガン妃の責任ではなく、それでも公爵夫人になれたのはメーガン妃の実力であるため、これらの報道は「人種差別」「いじめ」に入るだろう。また、「③服装やふるまいが伝統破りだと頻繁に指摘され」「④側近の退職が相次ぎ、『気難しい公爵夫人』とあだ名を付けられ」「⑤一部メディアで激しい批判にさらされた」のも、肌の色や経歴が異なれば似合う服や行動が異なるのは当然であるため、(頭の固い)側近が退職したからといってメーガン妃のせいと決めつけるわけにはいかない。つまり、この種の報道は「言論の自由」「表現の自由」よりも「名誉棄損」や「人権侵害」に当たるのだ。そして、イギリス国民は、メーガン妃の肌の色や経歴をメリットとして活かした方が賢いし、私はデザイナーの実力でメーガン妃の容姿をぱっと輝かせる服装を見たいと思っている。 また、*11-2は、日本の現皇后雅子妃の話で、2003年に「⑥適応障害(そういう精神病はない)」という変な病名で“療養”に入られて後、皇后になってから輝きを増したと言われている。しかし、私は結婚1年目に中東を訪れた時と比較して現在のファッションは顔立ちを活かせないぼーっとしたもので、これが日本の皇室に“適応”した姿とは情けなく思う。さらに、日本のマスコミは「笑顔」「笑顔」と繰り返し、意味もなく笑うことを強要しているが、(女優じゃあるまいし)外国人から見ると本物の喜びからくるのではない意味のない笑いはむしろ気味が悪いのだ。また、「⑦エリート中のエリートで美しい女性は相当に鼻持ちならない人格」「⑧ミーミーミーでは無く、自己主張が少なく、人に合わせる」等は、日本で女性に対してよく使われる評論だが、⑦は女性蔑視に由来し、⑧のように自己主張が少なく他人に合わせるだけの人は存在感や魅力がない上、こういう仕草を強要するのは女性差別であることがわかっているだろうか。 私も、Fairでなく女性蔑視を含む過小評価や意図的に歪められた批判をメディアやネットで吹聴されて大きな損害を受け、「こういう社会の雰囲気を変えることが唯一の解決策だ」と思って提訴したが、勝訴しても意図的に歪められネットに掲載された誹謗中傷は消されなかった。そのため、息子がネットで中傷被害を受けて加害者を特定するために法廷で闘うことを決めた*11-3のような母親がいるのに、違法行為になるネット上の匿名の誹謗中傷の犯人を明らかにしなかったり、それらの記載を削除しなかったりするプロバイダーは、犯罪幇助者か犯罪者本人だと考える。しかし、子の方は、サッカーを辞めて他のことをしたり、不登校や自傷行為などで自分が学べない状況を作るよりは、もっとよい学校に転校して自分の道を開いた方がよさそうだ。 ![]() (図の説明:上の写真は、2019年10月22日に行われた即位礼正殿の儀で、左から雅子皇后、天皇・皇后両陛下、秋篠宮ご一家、ご親戚の順に並べた。十二単衣は平安時代の装束だが、制服のように全員同じ色ではなく、人ごとに異なる色にしたり、比翼仕立てにしたりして工夫すると、色合いやシルエットがもっと美しくなると思う) ![]() (図の説明:1番左の写真は、即位礼正殿の儀を見つめる国賓の夫人たちで、凛としながらすっきりしておしゃれだ。左から2番目の写真は、即位礼饗宴の儀の様子だが、雅子皇后の服のフリルが大きすぎるのは、かえっておしゃれでない。さらに、右の2つは皇居に到着する国賓たちで、このような中、通訳を介さずにおもてなしできるのは誰にでも真似できるわけではない長所だが、誰にとって鼻持ちならないと言うのだろうか?) *11-1:https://digital.asahi.com/articles/ASMB22HJGMB2UHBI00C.html?iref=pc_extlink (朝日新聞 2019年10月3日) ハリー王子夫妻、大衆紙を提訴 「今度は妻が犠牲に…」 英王室のハリー王子とメーガン妃は1日、メーガン妃が書いた「個人的な手紙」の内容を報じたのは著作権侵害やデータ保護法違反などにあたるとして、英大衆紙と親会社を提訴したと発表した。王子は声明で、こうした報道は「他人の人生を台無しにするいじめだ」と強く非難した。英メディアによると、「個人的な手紙」は、メーガン妃が実父トーマス・マークルさんに宛てた手書きのものだとみられる。英大衆紙メール・オン・サンデーが今年2月に写真付きで報じていた。同紙によると、手紙は昨年8月に書かれた。手紙の中でメーガン妃は、トーマスさんが娘に金銭的な支援を求めたことも受けたこともないとメディアに語ったのはウソだと断じ、「どんな金銭的支援も申し出てきた。愛し、味方してきた」とつづっている。トーマスさんの作り話が自分たち夫婦を傷つけたとし、「私の心はばらばらに砕かれた」と書いていたという。トーマスさんは昨年5月の夫妻の結婚式直前、心臓手術を受けたとされる。健康上の理由で式を欠席すると英王室が発表していた。だがその前に、式に着る礼服を採寸する様子を金銭と引き換えに芸能カメラマンに撮影させた「やらせ」が発覚。物議を醸していた。ハリー王子は長文の声明で、メーガン妃に対する攻撃的な報道がエスカレートしていると指摘。今年5月に長男アーチー君を出産し、育休に入って姿を見せないのをいいことに、タブロイドがウソを書き立てていると非難している。「一番恐れているのは歴史が繰り返されることだ。愛する人が商品化され、実在する人間として扱われなくなった時に何が起きるか知っている」と、パパラッチに追われた末に事故死した母のダイアナ元妃にも触れた。「私は母を亡くし、今度は妻が、同じ強力な力の犠牲になるのを見ている」と怒りをにじませた。メーガン妃は英王室入りにあたり、米国出身の元女優で、男女平等や人権問題に積極的に発信し、母親がアフリカ系であることなどが注目された。その後は服装やふるまいが「伝統破り」だと頻繁に指摘され、側近の退職が相次いだことから「気難しい公爵夫人」とあだ名を付けられるなど、一部メディアで激しい批判にさらされている。 *11-2:https://news.yahoo.co.jp/byline/saitokaoru/20190628-00131842/ (Yahoo 2019/6/28) 雅子さまが突然輝きを増した理由 16年ぶりの「衣装映え」が物語る変化 (齋藤薫:美容ジャーナリスト・エッセイスト) ●あまり知られていない、雅子皇后の意外な人柄 使命感なのだろうか、それとも解放感なのだろうか、きっと誰もが気づいたはず。雅子妃が、皇后になられるやいなや、見事に輝きを増したこと。マスコミは「輝くばかりの笑顔!」を連発した。存在感が増すのは当然としても、まるで別人のように生き生きとした表情を見せてくれたのは一体なぜなのか?単純に考えれば、輝きを増した理由はやはり劇的なまでの環境変化。いわゆる適応障害の原因は、一般的に“環境の変化”にあると言われるが、じつはその解決策もまた、基本的には環境の変化が決めてになるというのが、大方の見方。言うまでもなく、一般女性が皇室に入るほどのドラスティックな環境変化は他にない。でも、皇太子妃が皇后になることもまた、ひょっとすると同じ規模の激変なのかもしれない。つまり今、私たちの想像が全く及ばないほどの圧倒的な変化が、雅子妃に訪れているということなのだ。ちなみに、“適応障害”になりやすいのは、心の弱い人でもなければ、ストレスを溜めやすい人でもないという説がある。むしろ完璧主義で、有能かつ、真面目、負の要素が少ない人ほど、そのリスクが高いと言われるのだ。何よりも、気配りがあって、人の心が読める人に意外にも多く見受けられると言うのが特徴だ。そういう人に突如大きな環境変化が訪れると、360度へ必死で対応してしまうから、知らぬ間にストレスが限界を超える。どうもそういうことらしい。かつて、雅子妃の「人となり」について、皇室に近い人の話に基づくこんな記事を見たことがある。あまりに立派なキャリアから、どうしても“強い女性”をイメージしてしまいがちだが、その記事はむしろ逆であると指摘していた。雅子妃は自我を通すタイプでは決してない。どちらかと言うと周囲に合わせ、協調しようとするタイプだと言うのである。皇室を孤軍奮闘、開かれたものにしようとしてきた美智子妃の方が、よほど自分の意見を明確に語り、きちんと通そうとする人であると。また数々の報道によれば、紀子妃も比較的モノを言う人であり、そういう意味では雅子妃がいちばん軋轢を避けようとするメンタリティーの持ち主と言うことになる。でも逆を言うならそれは、対応の難しさが限界を超えなければ、非常にスムーズに新しい環境に順応できる人であることを示している。だから皇后という立場には見事に順応し、一気に長いトンネルから抜け出られたとも言えるのだ。おそらくは、くすぶっていた使命感の蛇口を目一杯開けることができたことと、ある種の解放感が相まってのことなのだろう。もちろん想像に過ぎない。しかし人間の心の内は意外なほど明快に姿形に現れるもの。即位の儀前後から、雅子妃の顔が明らかに変わった。こんなに自然な笑顔を目にしたのは久しぶり。単純に輝きの量が増えている。瞳からも皮膚からも。その発光こそ、一気に回復に向かった証。今の自分の環境をそのままに受け入れたことの証ではないのか? またそのオーラの正体、光の内訳は、“生命力”であることもはっきり見てとれた。それぐらい強い煌めきが体内から発せられているのが感じられたのだ。 ●16年ぶりに戻ってきた「ファッションセンスと衣装映え」 さらに「衣装映え」が認められるのも、それこそ体調を崩された2003年以来。いや、実際にはご成婚数年目から、「衣装映え」は影を潜めていた気がする。着る服がよく映えているさまを「化粧映え」ならぬ「衣装映え」と呼ぶなら、そもそもが雅子妃ほど「衣装映え」する人は珍しいほどなのに、体調を崩されてからは、着る意欲をも失われたかに見えていたから、久しぶりの「衣装映え」、それがこの上なく印象的だ。服を着るのにも、生命力が必要。生きるエネルギーが減退していると、人間は不思議にどんな服を着ても、単にハンガーにかけたように、体に馴染んでは見えないのだ。以前このコラムでも書いたように、雅子妃はもともと大変にお洒落で、天性センスの良い人である。外務省時代のファッションをほんの数種類見るだけで、知的で上品だけれど華やかな、絶妙なバランスのお洒落ができる人であることがよくわかる。比較するのもなんだが、当時バブルに沸いた時代の徒花“ボディコン・ワンレン”にも全く引けを取らない程の力強い存在感を放っていた。またその品格ある美しさと華やかなセンスは、ご成婚後も、そのままロイヤル・ファッションに生かされたかに見えた。それこそ結婚1年目、中東を訪れたときのファッションは未だ鮮烈な記憶として映像ごと残っている。グリーンと黒のストライプをあしらったつば広帽、同じグリーンと黒のコントラストも艶やかなロングジャケットとパンツのスーツ。そう簡単には着こなせない、ハイファッションだ。これを見た時、あまりのクール・ゴージャスに息を飲むと同時に、ついに新しい日本の女性像を世界にアピールしていく存在が現れたとちょっと興奮したもの。この女性こそが日本に新しい時代をもたらすキーパーソンになるのだと、無性にワクワクしたものだった。ふと脳裏をよぎったのが、ケネディ大統領が新しいアメリカを築く時、実は揺るがぬキーパーソンとなっていたジャクリーン・ケネディという存在。まさしく何ヶ国語をも操り、「ジャッキー・スタイル」と言う言葉を生むほどそのファッションセンスが絶賛を浴びた人である。いやひょっとすると、世界的に注目を集めたダイアナ妃的な存在感を生むことになるかもしれないとまで思ったもの。しかしその後、雅子妃流の華やかなスタイルはいきなり影を潜め、もう二度と見られなくなる。あるいは中東諸国ご訪問の直後から、そのファッションについて、皇后様よりも目立ってしまわれないか? 少々華やか過ぎるのでは? などという、皇室的な忖度が周囲からなされたのではないか。皇太子による、のちの“人格否定”発言の時も、その一部は“ファッションセンスも一緒に否定されたこと”を指しているのではないかと思ったほど。以前も書いたように、本来センスのある人がセンスを否定され、お洒落を奪われるのは、それこそ人格を否定されたような格別の苦痛を伴うもの。その後のファッションの弱々しさは体調のせいもあるかもしれないが、どう考えても意図的に地味な、物静かな服が選ばれていた。あれほど美しく華やかで、誰より「衣装映え」した人が……と、なんだか胸が締め付けられるような思いがしたのである。ところが不思議なことに、即位の儀から、突然その「衣装映え」が戻ってきたのである。体調はまだ回復されたわけではないと言われるが、そういう意味ではこれまでにないレベルの回復が見られたことを確信した。それこそ“誰か”より目立ってはいけないという足かせも完全になくなり、長いブランクを経て、名実ともに心置きなく“持ち前のセンス”を生かせるようになったのではないか?ロイヤル・ファッションは、単に“皇室の人々の装い”に留まらない。ある意味“国民の誇り”となり、理屈を超えた国家的エネルギーになるもの。ファッションの意味を超え、服の役割を超えて、人々を動かし活力を与える不思議なパワーを宿すのだ。でなければ、キャサリン妃やメーガン妃のファッションの詳細や是非が、英国で連日ニュースになるわけがない。そういう意味でも、雅子妃にセンスと「衣装映え」が同時に戻ってきた事は、日本にとって特別なニュースとなるのだろう。そして、本人が外交の場で通訳だったのだから当然のことなのに、「通訳のいらない外交」に喜びを感じるのは、私たち日本国民は語学に対して苦手意識が強いからだろうけれど、ともかくファッションと語学は外交の鍵。我慢の時を経てもう一度、「何につけてもこの人を見ていたい」と言う“雅子皇后ブーム”が来るのかもしれない。正直、量的にも質的にも、今の小室圭氏の比ではないほどネガティブな報道が続く中にあっても、心静かに回復を願ってきた“潜在的な雅子妃支持者”は、おそらく驚くほど多いはずだ。公務でもほとんど姿を見られなかった中で、なぜ支持者の心が変わらなかったのか? 考えてみれば不思議だが、潜在的な雅子妃ファンが少なくない理由は、それだけじゃない、もう一つ別のところにある気がする。 ●あの逆風の中での支持は、「アンバランスなまでの有能さと人間性への共感」 言うまでもなく、この人ほど見事な経歴を持つ日本女性はそうはいないのだろう。ハーバード大学卒、東大大学院編入、外務省入省後オックスフォード大学にも留学と言う、エリート中のエリート。そういう女性がどんな人格を持つのか、まぁ想像もつかないなりに決めつけもでき、おまけにここまで美しいとなれば、普通に考えると相当に鼻持ちならないタイプとなる。そういう風になることを世間も許容せざるを得ないレベルの女性である。にもかかわらず、前述したように、ミーミーミー(私が私が)なタイプでは全く無い。むしろ自己主張が少ない、人に合わせるタイプ。日本の高校時代は自らソフトボール部を作り、ハーバード大学在学中は自ら日本の文化を伝える財団などを作って積極的に活動していたと言うから、単に控えめとは違う。しかし時と場合で控えめにさえなれるって、このキャリアから考えると何か奇跡的である。ともかく、そういうアンバランスなまでの有能さと人間性を持ち合わせた女性。とてつもない経歴に反して、謙虚で奥ゆかしくもある、精神的にはどこかとても古風な女性であると言われるのだ。そのアンバランスこそまさに日本女性の理想。改めてこの人を新しい規範として、日本女性のイメージを再構築したいと思う人が多いのではないか。“お言葉”の多くもリアルに報道されない日本では、皇族一人ひとりの人柄までを伺い知ることはできないのに、それでも伝わってくる人間性、その質の高さを感じ取る人が少なくなかったということだろう。現在の天皇陛下が、結婚前「雅子さんでないと結婚は考えにくい」と語ったことが、今更ながらに思い出され、そして深く納得させられる。やはり特別な女性なのだ。皇后であることを差し引いても。とりわけ笑顔の美しい人であるという最初のインパクト、そこから読み取れる人間性に、人々は本能的に惹きつけられ、表面的ではない共感が生まれた。皇族であるかどうかを超えて、何があろうと変わらない“人間の本質”を見つめつつ、だから適応障害に見舞われたことも納得の上で、密かに応援し続ける支持者が多かったのかもしれない。人への支持は、本来そうあるべきだ。言い換えれば、雅子妃への穏やかな人気は、従来の皇族女性へのものとは少し違う。あくまで1人の女性としての才能と、皇室に生きること自体に戸惑いを見せた“普通の人の感性”に対してのもの。つまり体調を崩されたことにより、逆にシンパシーが揺るがぬものとなり、だから長い沈黙も耐えられたのかもしれない。もちろんその間、もどかしくもあった。でも体調の回復により、より強固になったシンパシーが今まさに息を吹き返し、ある意味内向的でありながらも、同時にグローバルな才能に溢れた、“新皇后”の真の覚醒を、ワクワクしながら待っている。ついに輝きを取り戻した笑顔に、もう一度、日本女性の未来像を託し、“日本の誇り”にしたいから。 *11-3:https://digital.asahi.com/articles/ASMBS5Q4TMBSUTFL00F.html?iref=comtop_8_03 (朝日新聞 2019年10月25日) 息子がネット中傷被害、加害者特定へ裁判「命が危ない」 「根っからのうそつき体質」「自作自演」――。中学に入学後、いじめにあった埼玉県の男子生徒や家族を苦しめたのは、学校での無視や暴力にとどまらない、ネット上での中傷だった。子どもの命の危機を感じた母親は、加害者特定のため、法廷で闘うことを決めた。「根っからのうそつき体質」「一生いじめられっ子」……。2017年10月、埼玉県川口市の市立中学校に通っていた当時3年の男子生徒は、ネットの掲示板に実名がさらされ誹謗(ひぼう)中傷を受けた。母親によると、生徒は15年の中学入学直後から入部したサッカー部内で無視されたり殴られたりするようになった。母親は学校側に対応を求めていたが、有効な対策がないまま、16年秋から不登校に。自傷行為もあり、断続的に学校に行けない状況が続いたという。実名をあげられるほどにネットでの中傷が激化したのは、こうした中で学校側が全校を対象に初めて開いた保護者会がきっかけだった。学校側は対応の遅れを認め、保護者や生徒に反省の弁を述べたものの、事実関係を簡略化したり、事実と異なる説明をしたりした。そのため、「そのくらいでいじめって言われるのか」「学校の謝罪があっても黙らない被害者側は何が目的なの」「自作自演だ」など、むしろ生徒側に批判的な書き込みが目立つようになった。中には「自転車に乗っている○○を××(場所)で見た」など居場所を事細かに載せたものもあり、生徒は恐怖で外に出られなくなってしまったという。母親は「ネット上で悪口やデマがさらされると24時間心の休まる時がなく、避難場所がないのと同じ。特に相手が誰だか分からないのは恐怖しかなかった」と振り返る。 ●加害者3人を特定 どうすれば事実無根の書き込みを止められるのか――。母親は18年1月、弁護士に相談。書き込んだ相手を特定するために裁判を起こすことにした。12月には東京地裁がプロバイダーに開示を命じ、加害者側の氏名が明らかになった。ただし、個人の特定に結びついたのは、多くの書き込みの中の3人による4件のみ。担当した荒生(あらお)祐樹弁護士によると、発信者(加害者)を特定する場合は通常、①掲示板のサイト管理者などに、書き込んだ人物のIPアドレス(ネット上の「住所」)の開示を求める裁判手続きをする②IPアドレスから経由したプロバイダーを割り出し、氏名などの開示を求めてプロバイダーを提訴する、という大きく2段階を踏む。しかし、利用者すべてのIPアドレスの接続記録は膨大なので、プロバイダーが保存しているのは3~6カ月間が一般的だ。それ以前の書き込みについては接続記録自体が残らないため、加害者側にたどり着くのは困難。しかも、接続記録の保存はプロバイダーが任意で行っている。荒生弁護士は「プロバイダー責任制限法に発信者情報の開示請求権はあるのに、接続記録が消去されてしまうと権利行使ができない」と指摘する。また、発信者情報の開示を命じる判決を得るには、原告側が「プライバシー侵害」や「名誉毀損(きそん)」などの権利侵害が明らかだと主張・立証しなければならない。そのため、今回も実名が記載されていた書き込み4件に絞って裁判を起こした。さらに、弁護士をたててサイト管理者に連絡したり、プロバイダーと裁判したりするのは、費用も時間もかかる。海外に本社があるサイトの場合だとなおさらだ。母親は「放置すれば子どもが命を絶ってしまうという危機感があり、自分で闘うしかなかった」と話す。荒生弁護士は「ここまで闘える人は少なく、途中であきらめてしまう人も多い。しかし、ネットでの中傷は、加害者特定の手段もあるし、名誉毀損罪や侮辱罪などの刑法上の罪にもなり得る。抑止のためにも、このことが社会に広く認識されることが大事だ」と話す。生徒側はその後、訴訟前に和解が成立した1人を除く2人の加害者に対し、損害賠償を求め提訴。30万円の支払いなどで和解が成立した。 ●誰もが被害者に ネットのトラブルは子ども同士のいじめに限らず、誰もが被害者になり得る。ネット中傷の被害回復や風評対策に詳しい河瀬季(とき)弁護士によると、①リアルな世界でのいざこざ②暴走族に入っていた過去や「バイトテロ」など自らの軽はずみな行為が残り続ける③勝手に盗撮された画像がアップされるなど自分と無関係に巻き込まれる、などがパターンとしてあるという。①は、いじめのほか、特定の企業・人物をおとしめようとしてライバルが悪評を書き込む例も目立つ。被害回復の手段としては、ハードルの高い加害者特定よりも書き込みの削除が一般的だという。ただ、ネットは転載・拡散が容易なため、膨大な量の中傷ページが残ってしまいやすい。削除には問題のページを探し、それぞれのサイト管理者に削除依頼を出す必要があり、法律面だけでなくIT知識も求められる。河瀬弁護士は「行政の人権窓口などに、こうした分野に強い人材を置くなど、対策が必要な時期に来ている」と指摘する。被害者支援に乗り出す市民団体も出てきた。17年に発足した「ネット被害を考える協議会」(前川恵会長)。被害者家族やボランティアが中心となり、ネットで中傷された被害者からの相談を受け、書き込みを監視したり、被害者に代わって加害者のアカウントに書き込みをやめるようメッセージを送ったりするなどの活動をしている。会では今後、ネットのルール作りについて提言活動を行う予定で、10月末まで広く一般から被害対策案を募集している。前川会長は「『投稿者の身元を確認しやすくする』『加害サイトの広告主に注意を呼びかける』なども考え得るのでは。広く意見を募りたい」と話している。送付先はファクス(03・6434・5539)またはメール(info@net-higai.org)へ。 ●最近の被害例 2009年 お笑い芸人・スマイリーキクチさんのブログに、スマイリーさんが殺人事件に 関与したかのような事実無根の書き込みをしたとして、容疑者6人を書類送検 12年 大津市立中学校で前年に起きたいじめ自殺にからみ、「加害者の祖父が県警 OB。病院に天下り」などの誤情報が広まる 17年 SNSに事実と異なる書き込みをして男子高校生を中傷したとして19歳の少年 を名誉毀損容疑で逮捕 17年 神奈川県の東名高速でワゴン車があおり運転を受けた末に停車させられ、 トラックに追突されて夫婦が死亡した事故で、無関係の建設会社が「容疑者 の勤務先」などと名指しされて中傷 19年 茨城県の常磐自動車道で男性会社員があおり運転を受けた後に殴られた 事件で、無関係の女性が「同乗していたガラケー女」と名指し <柿くへば 鐘がなるなり 法隆寺> PS(2019/10/24追加): *12に「柿の収穫が終わった木に一つ実を残しているのは、来年はもっと実ってほしいというおまじないか、自然に対する礼節か」と書かれているが、柿の木のある農家の方に尋ねたところ、柿の実を食べる野鳥のために残してやっており、「来年はもっと実ってほしい」という人間の利己心からではないそうで感心した。私も、柿・桃・ビワなどは大好きだが、皮をむかなければならないというよりは、遠慮なく食べられる手頃な値段でないのが問題なのだと思う。さらに、干し柿が一つ一つ袋に入っていたり、高価すぎたりしているのは、その出世ぶりに呆れるくらいだ。 *12:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14229306.html (朝日新聞 2019年10月24日) (天声人語)柿くへば…… 柿の収穫が終わった木に、ぽつんと一つ実が残っているのをご覧になったことはないだろうか。それは「木まもり」というのだと白洲(しらす)正子の随筆に教わった。来年はもっと実ってほしいというおまじないかも……と書きつつ、思いを巡らせている▼「それは、自然に対する一種の礼節ともみられるし……実も葉もふるい落としたあとはさぞかし淋(さび)しかろうと、想像した人間のやさしい思いやりのようにも見える」。秋の青い空にある小さな朱色に、正子は心引かれた▼夏が長く、秋が短くなった気がしてならないこの国だが、季節を彩ってくれる恵みの数々がある。なかでも柿は、奈良時代にはすでに食べていたというから、ずいぶん長いお付き合いである▼数年前に九州の柿の産地で農協の人と話したとき、消費の伸び悩みを嘆いておられた。今や皮をむく果物は、それだけで敬遠されがちだと。少しの手間を惜しんであの甘さを味わえないとすれば、もったいない話である▼正岡子規は食いしん坊で柿も好物だったがゆえに〈柿くへば……〉の名句を生んだ。奈良の宿で山盛りの柿を食べていたら、鐘が鳴る音が聞こえたと随筆にある。「柿などというものは従来詩人にも歌よみにも見放されておるもので……」と得意そうに書いている▼あの句なかりせば、後の人々が柿にこれほど趣を感じることもなかったか。最近はその色ゆえにハロウィーンにちなんだ果物として並べるお店もあるという。それもまた新たな趣だと考えてみる。 <他の惑星の水・空気・気温> PS(2019年10月26、31日追加):*13-1のように、「①火星には、かつて温暖で地球の表面のような液体の水(=海)に覆われていた時代があった」「②大量に火星表面にあった液体の水は、今は火星の地下に蓄えられている可能性が高い」ということが火星探査で明確になり、火星の表面は酸化鉄を含む砂で覆われ、気温は20℃~-130℃、大気は殆どCO2、気圧は地球の0.6%、南極冠の近くの地下では液体の水からなる湖も見つかり、オリンポス山は高さ約25km、マリネリス峡谷は深さ5~10kmだそうで、これはコロンブスのアメリカ大陸発見に匹敵する大発見だ。また、*13-2には、35億年前の火星には生命の誕生や生存に向いた環境の塩湖があったとする研究結果を、金沢大の福士准教授(環境化学)らのチームが英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表し、生物のパーツになる有機物も見つかったが、火星の直径は地球の半分程度で重力が小さいため、水蒸気を含む大気を留めておくことができずに水が蒸発して失われたらしいとしている。さらに、*14のように、月の南極にも氷が存在し、月では太陽光が届かないクレーター内などに水が氷の状態で存在するとみられており、水は、飲み水だけでなく、水素と酸素に分解すれば呼吸ができロケットの燃料としても使えるため、NASAはどれくらいの水が利用できるか調べるそうだ。しかし、日本のメディアはラグビーワールドカップやくだらない事件ほどにもこれらを取り上げず、これが日本における教育の大きな問題点である。 そのような中、日本では、*15-1・*15-2のように、台風19号による千曲川の堤防決壊で、最新鋭の北陸新幹線全編成の3分の1にあたる120両が長野新幹線車両センターで水没し、車両の床下にモーター制御等の電気設備を集中させているため、乾かしても通電すればショートする危険があり、被害額は300億円超だそうだ。しかし、ハザードマップで最大10~20mの浸水が予想されていた場所を用地買収し、たった2mの盛土をして、車両を高い場所に移動させることもなかった上、復旧(??)すればよいと考えるのは、事前・事後の両方に甘さがある。また、ルールやマニュアルへの記載がなかったから災害時に臨機応変な対応をしなかったというのも、日本における教育の緩さの結果だろう。 なお、*15-3のように、河川の氾濫等で浸水する恐れがある場所に設置されながら浸水対策がされていない浄水場が全国で578カ所にのぼり、福島県いわき市の平浄水場が水没して最大約4万5千戸が断水したそうだが、これも復旧すればよいのか? この浄水場は2000年に市のハザードマップで浸水想定区域に入ると判断されたが、現実的にこのような被害が起きるとは想定していなかったため(??)、対策が取られなかったのだそうだ。しかし、無駄遣いも多い目先だけしか見ていない予算の編成替えを行い、根本的解決をすべきだ。 2019年10月31日、*15-4のように、日経新聞が「③全国の1/4、580カ所の工業団地に浸水の恐れがある」「④堀江パーツ工業は台風19号襲来で膝上まで浸水し、社員は『浸水経験がなく、雨風が吹き込まないように工場の窓に目張りをする程度だった』と述べた」「⑤最大想定2m以上5m未満が220カ所、5m以上が35カ所あった」「⑥計測器のアンリツは生産設備を2階に移していたため、被害が殆どなかった」などが記載されている。このうち③⑤は、昔は沼地だった田を埋め立てたり、川の中州や扇状地に工業団地や高齢者施設を造ったりなどの安全性を無視した土地利用が原因なので、早急に土地利用規制を見直すべきである。何故なら、企業の不注意に発する被害にいちいち国の予算を費やしていては、いくら税金を上げても教育・科学・福祉などに予算が廻らないからで、中でも④は、台風や豪雨災害が続いている中で、あまりに呑気だ。⑥は既に建設している建物を何とか安全に使っているようだが、今後も継続していく企業は、もっと安全な場所に立地すべきだ。 ![]() (図の説明:一番左は「http://karapaia.com/archives/52243174.html」に掲載されている月の表面にある水、中央は「https://newspicks.com/news/1195435/body/」に掲載されている火星の表面を流れる水、右は火星のクレーターの中にある氷で、素晴らしい発見だ) ![]() (図の説明:左は火星最大の火山であるオリンポス山で、中央は水が流れたような跡がある火星の地表、右は太古と現在の火星の様子だ。太古は水が豊富だったのに、火星の水が表面から消えた理由とその水がどこへ行ったのかが現在の最大の謎だが、地球では水が戻ってくるだけ有難いと思って、土地の割り振りを考え直すなどの対策を採る必要があろう) *13-1:https://news.yahoo.co.jp/byline/hidehikoagata/20180730-00091150/ (Yahoo 2018/7/30 抜粋) 火星大接近 -火星に生命は存在するのか? 2018年7月末現在、火星に限らず地球以外の天体から生命、または確実な生命の痕跡は何一つ見つかっていません。火星においても、20世紀前半まで人々が想像していたような火星人(=知的生命体)が存在しないことは今では明らかです。火星について分かっていることは、火星にはかつて温暖な時代があり、地球の表面のように液体の水(=海)に覆われていた時代があったことと、かつて大量に火星表面にあった液体の水は、今日では火星の地下に蓄えられている可能性が高いことが、今日までの火星探査で明確になったことでしょう。これらのことから、表面近くの火星地下に微生物程度なら存在するのではないか?または、表面や地下に、かつて生命が存在していた痕跡(=化石)があるのではないかと期待が膨らみます。火星は地球のすぐ外側を公転している太陽系第4番惑星で、地球から観察すると、2.2年毎に地球に接近します。夜空に赤く不気味に輝く火星。火星が赤く見えるのは、その表面が鉄さび、すなわち酸化鉄を含む砂で覆われているからです。火星では、地軸が約25度傾いているため、地球のように四季の変化が起こります。気温は、時期と場所により20℃~-130℃と幅があり、大気の成分はほとんどが二酸化炭素ですが、気圧は地球のおよそ0.6%しかありません。火星の表面は起伏に富んでおり、太陽系でもっとも高い火山、オリンポス山は高さ約25km、また、マリネリス峡谷は長さ約4000km、深さ5~10kmにもおよぶ巨大な峡谷です。表面を覆い尽くすような、大規模な砂嵐が周期的に発生するのも火星の特徴です。今年も運悪く、5月以降、火星全体を覆う砂嵐が発生しており、火星の表面の様子が詳しく分からない状況が続いています。火星の北極と南極には、ドライアイスと氷からできた極冠があり、その地下には永久凍土の形で多量の水が存在するのではと考えられています。南極冠の近くの地下に液体の水からなる湖が見つかったという最新の研究成果も発表になっています。火星は質量が地球の1/10と小型の地球型惑星です。その分、地球より早く進化した惑星と考えられ、かつては大量の水がその表面を覆っていました。果たして火星の地下には生命が存在しているのでしょうか。 *13-2:https://www.saga-s.co.jp/articles/-/445937 (佐賀新聞 2019年10月25日) 太古の火星に塩湖存在、生命に好適、土壌分析 35億年前の火星に塩湖があったとする研究結果を、金沢大の福士圭介准教授(環境化学)らのチームが25日、英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。水はほぼ中性、塩分は地球の海の3割程度でミネラルも豊富。生命の痕跡は確認されていないが、誕生や生存に向いた“ほどよい”環境だったという。火星の表面に液体の水があったことは確実とされているが、水質が分かったのは初。チームは「生命の存在可能性を議論するには、水に何が含まれていたかも明らかにする必要がある」と話す。場所は赤道付近にあるゲールクレーター。米航空宇宙局(NASA)の火星探査車キュリオシティーが得た土壌の組成データを分析した。層状の結晶が積み重なったスメクタイトという鉱物に注目すると、層の間に水から移ったとみられるカルシウムやマグネシウム、カリウムなどが残っており、かつて水中にあった量が推定できた。同じクレーターからは生物のパーツにもなる有機物が見つかっている。火星の直径は地球の半分ほど。重力が小さいため水蒸気を含む大気をとどめておきにくく、水が早々に蒸発し、失われたとみられている。 *14:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191026&ng=DGKKZO51447530W9A021C1CR0000 (日経新聞 2019年10月26日) 月の南極の氷を探れ NASA、22年に探査車 米航空宇宙局(NASA)は25日、月の南極に存在する氷の分布を調べる無人探査車「バイパー」を2022年に月面に送ると発表した。24年に飛行士の月面着陸を目指す「アルテミス計画」に先立ち、将来の有人探査で飲み水などに利用できる可能性を探る。バイパーはゴルフカートほどの大きさ。民間企業が開発する輸送手段で22年12月に月の南極に着陸させる。約100日かけて数キロ走行し、センサーで地下に氷がありそうな場所を探す。太陽光の当たり方や温度の異なる数カ所で地中1メートルまでドリルで掘り、土壌を採取して搭載装置で成分を調べる。月では太陽光が届かないクレーター内などに水が氷の状態で存在するとみられる。飲み水だけでなく、水素と酸素に分解すればロケットの燃料として使える。NASAはどれくらいの水が利用できるか調べる狙いだ。 *15-1:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201910/CK2019101802100028.html (東京新聞 2019年10月18日) 水没した北陸新幹線 どうなるの? 全損なら被害300億円超 ◆ 水没新幹線・再利用困難か 台風19号による千曲川の堤防決壊で水浸しになった北陸新幹線の長野新幹線車両センター(長野市)。最新鋭の車両が並んで水没した光景に、衝撃が広がった。残った車両で一~二週間後には全線運転再開となる見通しだが、水に漬かった車両は再び走ることができるのか。 ◆全編成の3分の1、120両が水没 「何でこんなことが起きるのか」。東海道新幹線の運転士を長年務めた中村信雄さん(81)は、今回の事態に驚く。車両センターで水に漬かったのは、北陸新幹線全編成の三分の一に当たる十編成。JRの東日本と西日本が所有し、七編成は屋外、三編成は車庫の中にあった。一編成は十二両で、被害車両は計百二十両に上る。JR東日本によると、一車両の製造費は約三億円。十編成で計約三百二十八億円とされる。同社は水が引いた十五日から被害状況の調査を始めたが、全貌はまだ分かっていない。 ◆床下電気設備に泥水 今後どうなるのか。鉄道アナリストの川島令三氏は「全損で廃車ということにはならないのでは」とみる。 車両の床下には、モーター制御などの電気設備が集中している。「機器類はそれぞれ箱に入っている。一つ一つ開けて水が入ってないか確認し、使えないなら箱ごと交換する。座席も汚れてしまったのならきれいにするか、交換する。車体そのものは使えそうだ」 ◆ 乾かしても通電でショートの危険 一方、再利用に悲観的なのは工学院大の高木亮教授(電気鉄道システム)だ。「床下の機械類のうち、電気で動いているものが一番泥水に弱い。泥水には電気を通す成分が入っていて、付着してしまうときれいにするのは難しい。乾いても絶縁が効かなくなっているから、電気を通すとショートし、場合によっては火災が起きる」と話す。さらに、「車両の外壁と内側の壁の間に配線を埋め込んでおり、端子類に泥水がかかっていても拭き取ることはできない。水に浮き、他の車両にぶつかってできたであろう車両のへこみの写真も見たが、アルミ製車両の修理は極めて難しい」とし、新品に買い直すしかないとみる。 ◆120両を陸路で運ぶのは非現実的 鉄道ジャーナリストの梅原淳氏は、修理自体が事実上不可能との見方だ。「浸水した車両センターでは修理できる設備がなく、JR東日本新幹線総合車両センター(宮城県利府町)や、JR西日本白山総合車両所(石川県白山市)に運ぶ必要がある。どちらに向かっても、急勾配のある線路にブレーキも利かない車両を移動させるのをJRは嫌がるだろうし、百二十もの車両を陸路で運ぶことも現実的ではない」 ◆ハザードマップで浸水予想 「移動しておけば…」 長野新幹線車両センターは独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が建設し、JRの東日本と西日本に貸し付けている。長野市のハザードマップでは最大で十メートル以上二十メートル未満の浸水が予想されていた場所だが、なぜここに造ったのか。同機構の担当者は「一九九七年の供用開始時には、ハザードマップはできていなかった」と説明。「長野駅から近く、広い平たん地があり、用地買収に支障が少ないことを考慮して建設地を選定。長野県が作製した洪水浸水被害実績図を参考に、約二メートルの盛り土をした」とする。前出の中村さんは、六七年、大阪府摂津市の東海道新幹線鳥飼車両基地に大雨で近くの川の水が流れ込んだ際、車両を本線に移動させ、浸水から守った事例を指摘。「北陸新幹線も何とか助けることはできなかったのか。浸水しないように移動させるべきだったのでは」と話している。 *15-2:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191024&ng=DGKKZO51301000T21C19A0EA1000 (日経新聞社説 2019年10月24日) 新幹線の水没が残した課題 台風19号による打撃は新幹線にも及んだ。千曲川の堤防決壊でJR東日本の長野車両センターが浸水し、北陸新幹線の全車両の3分の1にあたる10編成120両が水没した。新幹線は地域経済を支える大動脈だ。復旧作業を急ぐとともに、事前の対策に甘さはなかったか、検証作業と再発防止策の導入をJR東には求めたい。ズラリと並んだ新幹線が泥水につかる映像を見て、言葉を失った人は多いだろう。だが、被害はそれだけではない。同センターにある変電所や車両の検査庫にも水が押し寄せ、検査の途中で建物の中にあった車両も浸水した。台風当日に同センターにいた36人の社員らは水かさの上昇で退避できず、翌日、ボートで救出されたという。まずJR東が全力を挙げるべきは速やかな復旧だ。台風以降運行を見合わせていた長野―上越妙高間の安全確保にメドが立ち、北陸新幹線全線の運行を25日から再開する。水没した車両は当面使えないが、他の車両をやりくりして列車本数は通常の約8割、東京―金沢の直通列車は同9割の本数を走らせるという。運行停止や大幅な減便が長期化すれば北陸の地域経済はじめ影響が広範に及ぶ可能性があっただけに、復旧の取り組みが進み始めたことは歓迎したい。一方で事前の備えが十分だったかについては厳しいチェックが必要だ。長野市の洪水ハザードマップによると、同センターのある一帯は最大10メートル以上の洪水被害が予想されている地域だ。まさかの事態に備え、車両を高架線上や浸水の恐れのない他の基地に移しておく対応はとれなかったのか。同じJR東でも東北新幹線の那須塩原の基地のように、今回、事前に車両を避難させておいた例もある。長野の教訓を踏まえ、今後同様の事態にどう備えるかのルールづくりや設備の強化が欠かせない。他のJR各社も自分たちの体制を点検する契機にしたい。 *15-3:https://digital.asahi.com/articles/DA3S14229300.html (朝日新聞 2019年10月24日) 浸水想定578浄水場、対策せず 台風19号、福島では被害も 河川の氾濫(はんらん)などで浸水する恐れがある場所に設置されながら、浸水対策がされていない浄水場は全国で578カ所にのぼっている。台風19号の大雨では、福島県いわき市の平(たいら)浄水場が水没し、最大で約4万5千戸が断水した。災害からの復旧を支えるインフラの備えが遅れている。厚生労働省は、2018年9月に公共施設や病院などにつながる全国の主要な浄水場3521カ所を調査。その結果、22%に当たる758カ所が浸水想定区域にあり、そのうち76%の578カ所は入り口のかさ上げや防水扉の設置などの対策がされていなかった。土砂災害警戒区域にも542カ所あるが、うち496カ所が未対策だという。厚労省は各自治体の承諾が得られていないとして、個別の施設名を公表していない。いわき市では13日午前1時半ごろ、市内を流れる夏井川が氾濫して平浄水場の1階に水が流れ込み、電気を各設備に流す心臓部が約80センチ浸水。段階的な通水が22日に始まり、27日ごろに断水は解消する見通しだが、浸水家屋の掃除や洗濯が出来ず、深刻な影響を与えている。市内で最大の同浄水場は00年、市のハザードマップで浸水想定区域に入ると判断された。しかし、防水扉設置などの対策は取られなかった。市水道局の加藤弘司局長は「現実的にこのような被害が起きるとは想定していなかった。財源も限られるなか、具体的な対策を検討できていなかった」と話す。豪雨で水道施設が被災し、断水する例は近年、全国で相次ぐ。11年7月の新潟・福島豪雨では約5万戸で最長68日間、18年7月に広島県などを襲った西日本豪雨では約26万3千戸で最長38日間の断水が続いた。名古屋大の中村晋一郎准教授(土木工学)は「浸水対策などハード面の対策も必要だが、限られた予算の中で、すぐに実施することは難しい。断水のリスクに備え、住民側の事前の対策も合わせて必要だ」と話す。 *15-4:https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20191031&ng=DGKKZO51614510R31C19A0MM8000 (日経新聞 2019年10月31日) 工業団地580カ所浸水恐れ 全国の4分の1、本社調査、供給網寸断リスク 全国各地に甚大な浸水被害を与えている大型台風。福島県や栃木県で一部の工業団地が冠水し、水害に対するモノづくりの現場のもろさが浮き彫りになった。官民挙げて全国各地でつくった工業団地にどれほど浸水リスクが潜んでいるのか。日本経済新聞が調べたところ、4分の1の工業団地に浸水の恐れがあることがわかった。栃木県足利市の毛野東部工業団地。金属部品加工の堀江パーツ工業では、12日の台風19号襲来で膝上まで浸水し、プレス機や完成部品が水につかった。ラインの一部が動いたのは17日。ある社員は「浸水経験がなく、雨風が吹き込まないように工場の窓に目張りをする程度だった」と明かす。工場が被災すれば深刻な供給網の寸断が起きかねない。自然災害が頻発する中、足元に潜む水害リスクを把握し、対策を講じる必要性が増す。日経新聞は国土交通省が公表している地理データベースを活用。全国の洪水浸水想定区域(総合2面きょうのことば)と、2181カ所の工業団地(10万平方メートル以上)を照合したところ、27%にあたる580カ所が浸水想定区域と重なっていた。浸水レベルも調べた。最大想定が「2メートル以上5メートル未満」は220カ所と1割に達し、「5メートル以上」は35カ所あった。一戸建ての場合、2メートル以上は1階、5メートル以上は2階が水没する。冒頭の工業団地は2メートル以上5メートル未満の想定だった。日本の製造業が伸び盛りだった1960~80年代。全国の自治体や土地開発公社が工業団地整備にまい進した。災害リスクを今ほど意識せず、平たんでまとまった用地が多い河川流域が選ばれることが少なくなかった。法律で浸水想定区域を定めるようになったのは2001年からだ。それ以前の工業団地は河川氾濫を十分想定せず、リスクが高いところが多い。千曲川の氾濫で水没した長野市の北部工業団地も2メートル以上の浸水リスクがあった。市の主導で造成したのは90年。一角にある調整池は排水路や下水管があふれる内水氾濫に備えたもので、今回は貯留上限を軽く超えた。対策次第では同じ場所でも明暗が分かれる。福島県郡山市の郡山中央工業団地では多くの企業が浸水被害に遭ったが、計測器のアンリツは過去の浸水被害を教訓に生産設備を2階に移していたことで、被害はほとんどなかった。国内外の工業団地に詳しい東大の新宅純二郎教授は「進出企業は事業継続計画(BCP)の見直しが重要だ」と説く。11年の東日本大震災のときは、半導体大手ルネサスエレクトロニクスの工場が被災し、自動車向けなど世界のサプライチェーンに打撃を与えた。中小の部品企業でも高いシェアを持っていれば、取引先は世界に広がる。日本企業は世界への影響を念頭に置き、水害の多発という新たな難問に対処していく必要がある。 <農業こそ再エネと蓄電池だ> PS(2019年11月1、2日追加):*16-1のように、台風15号の被害を受けた千葉県は、北海道地震を教訓に発電機導入の動きが広がり、酪農家の6割が燃料系の自家発電機を保有しており、停電時も搾乳できたのはよかった。しかし、燃料供給が途絶えて苦労した農家もいたそうで、農家は太陽光や風力などの再エネ発電による潜在力が高いため、日頃から蓄電池を備えて電力販売を副収入にしていれば電力を供給する側に回れた筈だ。従って、農業に対するエネルギー補助は、国富を外国に移転する軽油・ガソリンではなく、再エネ発電と蓄電池にすべきだ。 しかし、分散型発電を行って電力を供給するには、大手電力会社から独立した送電網がなければならない。そのため、私は、*16-2のように、水道を民営化するのではなく、地方自治体が上下水道部門を分社化して外に出し、新インフラを利用したい発電会社・送電会社・ガス会社・通信会社などにも出資してもらって、最新技術を使った上下水道管の更新と電線の地中化を(共同溝として)速やかに行い、送電線や通信線を道路並みに公共化するのがよいと思う。 *16-1:https://www.agrinews.co.jp/p49113.html (日本農業新聞 2019年10月30日) 自家発電機導入広がる 燃料の備蓄不可欠 千葉県酪連調査 9月の台風15号によって大きな被害を受けた千葉県で、酪農家の6割が燃料系の自家発電機を保有していることが千葉県酪農協連合会の調べで分かった。北海道地震などを教訓に発電機導入の動きが広がり、多くの農家が停電時も搾乳できた。一方、発電機を動かす燃料の調達に苦労した酪農家もおり、一定の燃料を備蓄する必要性も浮かび上がった。県酪連では台風の直撃を受けた後、生乳を出荷する県内の酪農家496戸を対象に、自家発電機の導入状況を調査した。その結果、279戸が発電機を所有していると回答。レンタルやリースしているケースも合わせると304戸に上った。県酪連は「東日本大震災や北海道地震以降、県や国の補助事業などを活用して発電機を導入する農家は増えている」とみる。農家の減災対策への意識が高まっているためだという。ただ、発電機を保有していても、倒木などの影響で燃料供給が途絶え、搾乳の合間に燃料を探し回るなど、苦労した農家もいた。乳牛100頭を飼育する鴨川市横尾地区の「カスヤファーム」では停電が1週間以上続いた。同ファームでは計5台の発電機を活用し、台風が上陸した2日後の9月11日には出荷を再開した。生乳約4・2トンを廃棄するなど被害はあったが、発電機の備えで被害を軽減できた。同社代表の糟谷英文さん(52)は、給油所の停電が続き通常通り機能しない中、空いている給油所を探して市外まで車を走らせた。高齢者や遠出できない周辺の酪農家に燃料を分けることもあった。鴨川市酪農会の会長も務める糟谷さんは「発電機の備えだけでなく、事前にある程度(軽油やガソリンを自己保有できる上限分)の燃料を買っておく必要性を痛感した。周辺農家にもその重要性を伝えていきたい」と話している。 *16-2:https://www.nishinippon.co.jp/item/n/553072/ (西日本新聞 2019/10/22) 水道民営化検討せず 九州10市 災害対応、高騰懸念 市町村を基本単位とする水道事業の運営権を民間企業に委託する「コンセッション方式」の促進を盛り込んだ改正水道法が今月、施行された。水道事業の基盤強化が目的だが、西日本新聞が九州の政令市、県庁所在市、中核市の計10市に同方式の導入について尋ねたところ、全ての市が「導入予定はない」と回答した。最も身近なインフラで命に直結する水の「民営化」への懸念の大きさを裏付けている。10市の水道事業担当部局によると、導入しない理由として、長崎市は「コンセッションは官と民の役割やリスク分担の整理がいる。海外では再度公営化した事例もあり、安全安心な水を民間に委ねることには、市民の理解を見極める必要がある」と強調。佐賀市も「水道事業にまったく知識がない事業者が災害が起きたときに責任を果たせるのか」と懐疑的な見方だ。北九州市は「選択肢は広がったが、検討もしていない。現時点では広域連携を重視している」と回答。熊本市も「地下水で全ての水源を賄っており、効果的に運用する独自のノウハウが求められる」とした。給水人口約156万人(2017年度)を抱える福岡市は「市民に無理な負担を求めることなく安定的に黒字を確保できる」と説明。大分市も現行の直営での安定経営を理由に挙げた。一方で、鹿児島市は「当面検討もしないが、老朽化施設が増えるなどして経営状況が悪化するとなると、検討することもあり得る」と述べた。厚生労働省によると、上水道でコンセッションの導入例はこれまでなく、宮城県などが導入を検討中。ただ民営化による水道料金の高騰や水の安全性の確保、災害時の対応を民間企業ができるかといった点で市民にも不安の声は根強い。浜松市は導入の可能性を検討し、市民向け出前講座などで説明を重ねてきたが「市民、国民全体としても理解が進んでおらず、導入を進めるのは困難と判断した」として今年1月に検討も含めて導入を当面延期した。水道事業の民間委託の是非は、あくまで自治体の判断だ。民営化の動きが広がっていないことについて、厚労省水道課は「コンセッションは(官民連携の)選択肢の一つ。地域の状況に合わせて検討されるものと考えている」と話した。 【ワードBOX】改正水道法 人口減に伴う水需要減少や水道施設の老朽化、深刻化する人手不足で経営が厳しい水道事業の基盤強化が目的。昨年12月の臨時国会で成立し、今月1日施行された。自治体が浄水施設など資産を保有したまま運営権を民間企業に売却できる「コンセッション方式」の促進を盛り込み、民営化しやすくした。自治体間の広域連携や官民連携の推進も掲げる。
| 科学・医療 | 01:04 PM | comments (x) | trackback (x) |
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